本発明に係る連結クリップパッケージおよびクリップ装填方法を、添付の図面に示す好適実施例に基づいて、以下に詳細に説明する。
まず、本発明の連結クリップパッケージを用いる、連発式クリップ処置具について説明する。
図1(A)および(B)は、連発式クリップ処置具の一例を示す模式的断面図であり、図1(B)は、図1(A)と90度異なる角度から見た図である。
図1に示すクリップ処置具10は、クリップを連続して使用できる連発式のクリップ処置具であり、複数のクリップ12(12A、12B、12C、12D)と、最後尾のクリップ12Dに接続されたダミークリップ18と、接続部材19を介してダミークリップ18に接続された操作ワイヤ20と、隣り合うクリップ12の係合部を覆ってクリップ12の連結状態を維持する連結リング14(14A、14B、14C、14D)とを有し、これらがシース16内に嵌入されている。図1(A)および(B)は、先頭のクリップ12によるクリップ処置動作開始直前の初期状態を示している。
1つのクリップ12と1つの連結リング14は、1つの内視鏡用止血クリップ体を構成し、クリップ処置具10は、この止血クリップ体が長尺なシース16の先端内部に複数装填されたものである。連続する止血クリップ体の終端は、ダミークリップ18に噛み合い結合し、操作ワイヤ20は、シース16の基端部まで延びて、後述する操作部につながっている。操作部から操作ワイヤ20を所定の長さだけ牽引し、ダミークリップ18を一方向に所定長さ移動させることで、一連のクリップ12が同量だけ移動し、先頭のクリップ12がそれを保持する連結リング14によって締め付けられて、先頭のクリップ12による止血やマーキング等のためのクリップ処置(クリッピング)が行われる。先頭のクリップ12によるクリップ処置が完了した後、シース16を操作部側へ所定の長さだけ引くことで、次のクリップ12が使用可能な状態(スタンバイ状態)となり、続けてクリップ処置を行うことができる。
図1(A)および(B)は、先頭のクリップ12Aがシース16の先端から突出した状態の図としてあるが、クリップ12等をシース16へ装填するときは、後述する図5(A)に示すように、先頭のクリップ12Aがシース16の内部に完全に納まった状態でセットされる。また、図1ではクリップ12を4つとし、4連発式のクリップ処置具としてあるが、クリップ12の数は、2つ以上いくつであってもよい。
図2は、クリップ12の斜視図である。クリップ12は、爪部22に対して180度ターンしたターン部24を有するクローズクリップである。すなわち、クリップ12は、一枚の長細い板を180度湾曲させて閉塞端を作った後、その両片を交差させ、かつ、2つの開放端に、端部が対向するように屈曲させて爪部22,22を形成した形状をしている。この交差部26を境にして、開放端側が腕部28,28であり、閉塞端側がターン部24である。腕部28,28の中央部分には、部分的に広幅とされた凸部30,30が形成されている。クリップ12には、生体適合性のある金属を用いることができ、例えば、ばね用ステンレス鋼であるSUS631を用いることができる。
クリップ12は、その交差部26に嵌められた連結リング14の先端部分(後述する締付部40)が、腕部28,28を押圧しながら爪部22,22の方へ向かって所定量移動することにより、その腕部28,28および爪部22,22が閉じ、爪部22,22において所定の嵌合力を発揮する。
爪部22,22は、対象部を確実に摘むために、V字のオス型とメス型に形成されている。また、図2に示すように、クリップ12の腕部28は、交差部26から凸部30に掛けて徐々に幅が広くなっている。
凸部30は、連結リング14の先端側の開口および基端側の開口の、凸部30が当接する部分よりも広い幅とされている。したがって、クリップ12の凸部30以外の部分は、連結リング14の内部に侵入できるが、凸部30は、連結リング14の先端側からも基端側からも、その内部に侵入できない。
図1(A)および(B)に示すように、第1クリップ12Aと第2クリップ12Bは、第2クリップ12Bの爪部22が第1クリップ12Aのターン部24に係合して閉じた状態で連結リング14Aに保持されることで、連結状態とされる。図1(A)に示すように、第2クリップ12Bの爪部22,22は、第1クリップ12Aのターン部24に直交方向に噛みあって結合し、第1クリップ12Aと第2クリップ12Bは、90度異なる向きで連結される。同様に、以下の各クリップ12C、12Dは、90度ずつ交互に向きを変えて連結される。
連結リング14は、2つのクリップ12,12の係合部を覆って連結状態を維持しつつ、シース16に進退可能に嵌入されている。すなわち、連結リング14は、外径がシース16の内径とほぼ等しく、クリップ12の移動に伴ってシース16内をスムーズに進退移動することができる。図3(A)〜(C)に、連結リング14の概略構成を示す。図3(A)は、連結リング14の正面図、図3(B)は断面図、図3(C)は、底面図である。
連結リング14は、締付部40と保持部42とから成る。連結リング14は、樹脂製の保持部42の先端に、金属製の締付部40を固定し、2部材で一体構造とされている。樹脂製の保持部42が連結状態の維持およびクリップの連結リング内での保持を担当し、金属製の締付部40がクリップの締め付けを担当する。なお、連結リング14は、締付部40および保持部42の両機能を発揮できれば、1部材で形成してもよい。
締付部40は、連結リング14の先端側に取り付けられた金属製の円筒状(リング状)の部品であり、クリップ12の交差部26近傍の幅よりも大きく、凸部30の幅よりも小さい内径の穴が形成されている。したがって、締付部40は、保持するクリップ12の交差部26の近傍を移動することができるが、凸部30を超えて先端側へは抜けられない。すなわち凸部30が、クリップ12に対して前進する連結リング14の移動限界を決めるストッパーとして機能する。
締付部40は、クリップ12の交差部26の近傍の所定位置にセットされる。締付部40は、その初期位置から、クリップ12の腕部28が幅広になる、交差部26から凸部30の側へ移動することで、拡開しているクリップ12の両方の腕部28,28を閉じさせて固定する締め付け機能を有している。締付部40には、生体適合性のある金属が用いられ、例えばステンレス鋼SUS304を用いることができる。締付部40を金属製としたことで、金属製のクリップ12に対して締付力となる摩擦力を発揮させることができる。
保持部42は、樹脂成形された概略円筒状(リング状)の部品である。保持部42は、先のクリップ12を保持する第1領域32と、先のクリップに連結した状態で次のクリップ12を保持する連結保持領域である第2領域34とを有している。
第1領域32には、クリップ12のターン部24を収容可能な、締付部40の穴よりも大きな円形の穴が形成されている。第1領域32の先端部の外面には、締付部40を嵌めるための段付き部が形成されており、締付部40と保持部42とは、シース16に装填された状態およびクリッピング操作時において外れない程度の締まり嵌めで嵌め合わされている。また、第1領域32は、連結リング14本体の軸に対してスカート状に傾斜して広がるスカート部38を有している。
スカート部38は、先端側、すなわち図3における上方の付け根が保持部42の本体につながっており、下方の広がり部分が、本体から一部切り離されて、半径方向に広がったり閉じたりするようになっている。スカート部38は、クリップ12の牽引方向、すなわち図3の上下方向において同じ位置に、180度離れた2箇所に形成されている。
スカート部38,38は、外力が付与されない自然状態では、図3(A)に示すように、スカート状に広がる。このとき、保持部42の第1領域32の内部は、図3(B)に示すように、円柱状の空間となっている。一方、連結リング14がシース16内へ装填されるときは、例えば、図1(B)の2つめの連結リング14Bに示すように、スカート部38が内側に押し込まれて内部空間へ入り込み、スカート部38の内周側の部分が、第1領域32に保持されるクリップ12Bのターン部24の側面(エッジ部)を押圧して、クリップ12Bが連結リング14B内で回転方向および進退方向に移動しないように保持する。なお、スカート部38が、第2領域34に保持されるクリップ、すなわち後ろ側のクリップを押圧して保持するようにしてもよい。
スカート部38,38は、図1(A)の1つめの連結リング14Aに示すように、シース16の先端から抜け出ると同時に、それ自体の弾性によって開き、クリップ12Aの保持を解除するとともに、シース16の内径よりも広幅となって、連結リング14Aのシース16内への後退を阻止する。この状態で操作ワイヤ20が引かれ、クリップ12Aが後退することで、連結リング14Aがクリップ12Aに対して相対的に前進し、クリップ12Aを締め付ける。
したがって、スカート部38は、シース16の内部では内側へ閉じることができ、シース16の先端から出て外力から解放されるとスカート状に広がるように、弾性を有していることが必要である。それとともに、スカート部38は、シース16の内部でクリップ12を保持できる剛性と、シース16の先端でクリップ12の締付力の反力に耐える剛性とを有していることも必要である。
これらの観点から、保持部42には、生体適合性があり、かつ、スカート部38に要求される弾性および剛性を満たす材料が用いられる。また、その形状は、スカート部38に要求される弾性および剛性を満たすように定められる。このような保持部42の材料としては、例えば、PPSU(ポリフェニルサルホン、polyphenylsulfone)を用いることができる。製造の容易さから、保持部42は、一体成形されるのが好ましい。
第2領域34は、第1領域32の基端側に設けられており、第1領域32に保持されるクリップ12に係合する次のクリップ12を、その爪部22,22が先のクリップ12のターン部24の閉塞端(尾部)を挟んで閉じた状態で保持する。
第2領域34は、領域長さとして、クリップ12に対して初期位置にセットされた締付部40が、クリップ12の締め付けを完了するまでに要する移動長さとほぼ等しい長さを有している。すなわち、連結リング14の第2領域34は、クリップ12が連結リング14に対して相対的に後退して締め付けられていく間、その内部に保持する2つのクリップ12,12の連結を保持して、後ろのクリップ12の牽引力が先端のクリップ12へ伝達されるようにするとともに、締め付けが完了したときには、2つのクリップ12,12の係合部が第2領域34から外れることにより、そのクリップ12,12の連結を解除する。
第2領域34には、図3(C)に示すように、第1領域32の基端側部分と同じ内径の穴43が形成され、さらに、その対向する2箇所に、溝(凹部)43aが形成されている。溝43a,43aは、第2領域34に保持されるクリップ12の腕部28,28を、爪部22,22が閉じた状態で収容可能である。また、第2領域34には、図3(A)〜(C)に示すように、その基端から切り込むスリット44が2箇所に形成されている。
溝43a,43aは、第2領域34に保持されるクリップ12の爪部22の開閉方向(図3中、左右方向)の2箇所に設けられている。第2領域34に保持されるクリップ12の腕部28,28の板面は、溝43a,43aの内壁に当接する。溝43aの幅(開口幅)は、クリップ12の腕部28の最大幅よりわずかに大きく、一方の溝43aの壁面から他方の溝43aの壁面までの距離は、クリップ12の2つの爪部22,22の長さ(拡開方向の長さ)を足し合わせた長さにほぼ等しい。また、溝43aの幅は、腕部28に形成された凸部30の幅よりは小さい。したがって、第2領域34に保持されるクリップ12の凸部30は、溝43aに進入できない。
なお、両溝43a,43aの壁面から壁面までの距離は、先のクリップ12のターン部24と、次のクリップ12の爪部22,22との係合が外れない寸法にすればよく、2つの爪部22,22の長さと、ターン部24の爪部22,22が係合する部分の幅とを足し合わせた長さよりも短くすればよい。
例えば、第2領域34に保持されるクリップ12の爪部22,22は、少し重なった状態となっていてもよいし、爪部22,22の間にわずかな隙間がある状態で、先のクリップ12との連結が維持されるようにしてもよい。
2つのクリップ12,12の係合部は、第2領域34の、第1領域32との境目に近接する部分に保持される。先のクリップ12(例えば、図1(B)の連結リング14Bにおけるクリップ12B)は、シース16の内部においては、ターン部24が第1領域32の閉じたスカート部38によって保持されているので、進退移動および回転移動が抑えられている。また、先のクリップ12に係合する次のクリップ12(例えば、図1(B)の連結リング14Bにおけるクリップ12C)は、第2領域34の溝43aによって先のクリップと90度異なる方向に保持されることにより、回転移動が抑えられ、進退移動が抑えられた先のクリップに係合することにより、進退移動が抑えられている。すなわち、前後のクリップの係合部は、遊びが非常に小さい状態で、連結リング14によって保持される。
スリット44は、スカート部38,38から90度ずれた2箇所に、第2領域34の上端よりも浅い位置まで形成されている。言い換えれば、スリット44は、第2領域34に保持されるクリップ12の拡開方向から90度ずれた位置に設けられている。
スリット44を設けることにより、連結リング14のフレキシブル性を向上させることができ、クリップ処置具10は、曲率の小さい湾曲部を通過することができる。また、スリットを設けることにより、連結リング14の裾(基端部)が一部めくれるようになるため、シース16へのクリップ12の装填前に前後のクリップ12,12を連結させる際に、連結リング14の裾をめくることで容易に連結させることができるという利点もある。
スリット44の深さは、スカート部38よりも浅い位置までとされており、連結リング14の強度が大幅に低下するのが防止されている。また、スリット44の深さは、第1領域32に保持されるクリップ12の後端の位置、すなわちクリップ12,12の係合位置よりも浅い位置までとされており、シース16に装填される前の連結クリップユニットにおいても、連結リング14の第2領域34におけるクリップ12の保持を保つことができる。
図1に示すように、第1クリップ12Aのターン部24に第2クリップ12Bの爪部22,22が係合し、その係合部を連結リング14Aが保持する。連結リング14A(その第2領域34)の内壁によって、第2クリップ12Bの爪部22,22は閉じた状態に保持されている。それにより、第1クリップ12Aと第2クリップ12Bの連結状態が維持される。同様に、第2クリップ12Bと第3クリップ12Cとの連結状態は、連結リング14Bによって、第3クリップ12Cと第4クリップ12Dとの連結状態は、連結リング14Cによって、第4クリップ12Dとダミークリップ18との連結状態は、連結リング14Dによって維持される。
最後尾のクリップ12Dには、クリップ処置には用いられないダミークリップ18が係合している。ダミークリップ18は、先端部に、クリップ12の交差部26から開放端側半分の部分と類似の形状をしたバネ性を持つ部分を有しており、爪部を閉じた状態でクリップ12Dのターン部に係合し、爪部を開くとクリップ12Dを開放する。ダミークリップ18の基端部には接続部材19があり、この接続部材19に操作ワイヤ20が接続されている。
シース16は、例えば、金属ワイヤを密着巻きした可撓性のコイルシースである。シース16の内径は、先のクリップ12のターン部24と、次のクリップ12の爪部22,22との係合が解除される寸法とされている。すなわち、シース16の内径は、2つの爪部22,22の長さと、ターン部24の爪部22,22が係合する部分の幅とを足し合わせた長さよりも大きい。
操作ワイヤ20およびシース16の基端は、操作部に取り付けられている。図4は、操作部の一例の概略構成を示す部分断面図であり、図4(A)は平面図、図4(B)は正面図である。図4(A)および(B)において、左側がクリップ処置具10に接続する先端側、右側が後端側(または基端側)である。操作部50は、ワイヤ操作ハンドル52と、シース操作ハンドル54とを有している。
ワイヤ操作ハンドル52は、円筒状のケース58と、ケース58の先端に軸を一致させて固定された位置決めパイプ56と、ケース58の内部に保持されたレバー60およびスプリング62とを有している。
レバー60は、ケース58の内部において、前後方向(ワイヤ操作ハンドル52の軸方向)に移動可能に保持されている。レバー60の後端側の一部は、ケース58の中央部分に設けられた貫通窓59に現れており、操作者が指を掛けてレバー60を後端側に引けるようになっている。レバー60の後端にはスプリング62が取り付けられている。スプリング62は、レバー60が後方へ引かれることによって圧縮され、レバー60を引く力が解除されると、反発力によって、レバー60を前方へ押し戻す。それにより、レバー60は、元の位置(ホームポジション)へ戻る。
レバー60の後方への移動限界は、貫通窓59によって規定される。すなわち、レバー60の指が掛かる面60aが、貫通窓59の後端に一致する位置が、レバー60の移動限界である。なお、レバー60の後方に規制板を設け、レバー60の後端がその規制板に当たることにより、レバー60の後方への移動限界を規定するようにしてもよい。
一方、レバー60の前方には、規制板61が設けられており、レバー60のホームポジションを規定している。レバー60は、スプリング62に付勢されて前方へ移動し、規制板61に当たって停止してホームポジションに戻る。
図4では、スプリング62をコイルスプリングとして示しているが、スプリング62は、レバー60を前方へ付勢できればよく、板ばねやその他の弾性体を用いても良い。
レバー60の先端には、クリップ12を牽引するための操作ワイヤ20が固定されている。操作ワイヤ20は、シース操作ハンドル54および位置決めパイプ56の内部を通過して、レバー60に到達している。
操作者が貫通窓59に指を挿入してレバー60を引くことで、レバー60が後方へ移動すると、レバー60の先端に取り付けられた操作ワイヤ20も同様に移動して、操作ワイヤ20の先端が後方へ移動する。また、レバー60を引く力が解除されてレバー60が元の位置に戻ると、操作ワイヤ20も同様に移動して、その先端が元の位置に戻る。
なお、クリップ処置における操作ワイヤ20の牽引量は、例えば3.1mmなどの非常に小さい量なので、操作部50における確かな操作感覚を与えるために、操作ワイヤ20の牽引量とレバー60の操作量との間に、操作ワイヤ20の牽引量の変倍機構を設けてもよい。
位置決めパイプ56は、中空のパイプ状の部材であり、その中を操作ワイヤ20が通過する。また、位置決めパイプ56の内径はシース16の外径よりも大きく、位置決めパイプ56の内部にシース16を挿入可能である。図4(B)に示すように、位置決めパイプ56の上側表面には、軸線方向に所定の間隔で刻まれた複数のノッチ66が形成されている。また、位置決めパイプ56の先端部は、シース操作ハンドル54の中に挿入され、その先端部に抜け止めリング64が取り付けられている。
図4(A)に示すように、抜け止めリング64の中心部には、シース16の外径よりわずかに大きい穴が形成されている。抜け止めリング64は、シース16を軸線方向に移動可能に保持する。
シース操作ハンドル54は、円筒状のケース68と、支持ブロック70と、シース保持リング72とを有する。
支持ブロック70は、シース操作ハンドル54の後端部分に配置されており、シース操作ハンドル54に挿入された位置決めパイプ56を支持する。また、支持ブロック70は、図4(B)に示すように、その先端側の面が、位置決めパイプ56の先端に取り付けられた抜け止めリング64に当接して、位置決めパイプ56がシース操作ハンドル54から外れるのを防止する。
シース保持リング72は、ケース68の先端に、シース操作ハンドル54の軸線上に設けられており、シース操作ハンドル54に挿入されたシース16の外周を固定的に保持する。したがって、シース操作ハンドル54が移動すると、シース16も共に移動する。
シース操作ハンドル54は、さらに、ケース68の外部に突出するボタン74と、ケース68の内部に設けられ、ボタン74の動きに連動する爪76を有している。爪76は、位置決めパイプ56に押し付ける方向に付勢されており、位置決めパイプ56のノッチ66に引っ掛かって、ワイヤ操作ハンドル52に対するシース操作ハンドル54の位置を決め、かつ、その移動を止める。
ボタン74が押されると、爪76が持ち上げられてノッチ66から乗り上げ、シース操作ハンドル54がシース操作ハンドル54に対して移動可能となる。ボタン74から手を離してシース操作ハンドル54をワイヤ操作ハンドル52に対して移動させると、爪76が次のノッチ66に引っ掛かった時点で移動が止められる。したがって、シース操作ハンドル54およびシース16は、ノッチ66の間隔を1ストロークとして、その1ストロークの長さ単位で移動できる。
なお、図4の操作部50は、位置決めパイプ56にノッチ66が6個形成されており、5連発のクリップ処置具にも適用可能なものである。
シース操作ハンドル54の移動に伴ってシース16が移動すると、シース16の基端側端部は、抜け止めリング64の穴を進んで、位置決めパイプ56の内部に侵入する。
次に、連発式のクリップ処置具10の作用について、図5を参照して説明する。図5(A)〜(E)は、クリップ処置具10のクリップ処置動作時における段階的な状態を示す部分断面図である。
まず、図5(A)に示すように、シース16にクリップ12A〜12Dおよび連結リング14A〜14Dからなる4つの止血クリップ体(以下単にクリップ体という。)が装填された後、シース16が内視鏡の鉗子チャンネルに挿入される。クリップ体の装填は、例えば、予め4つのクリップ体(クリップ12に連結リング14を嵌めたもの)とダミークリップ18を連結させておき、ダミークリップ18をシース16の先端から突出させた操作ワイヤ20の先端に取り付け、その後、シース16を操作ワイヤ20に対して相対的に前進させて、先頭のクリップ12Aを完全にシース16内に収容することで行うことができる。この方法については、後に詳述する。
図示例では、図5(A)に示すように、クリップ12Aの先端がシース16の先端にほぼ一致している。なお、先頭のクリップ12Aは、シース16の先端から所定量引っ込んだ位置にセットするようにしてもよい。
先頭のクリップ12Aは、シース16の内壁によって閉じた状態に保持される。各連結リング14A〜14Dは、その締付部40がクリップ12A〜12Dの交差部26の近傍の初期位置に来るように嵌め込まれている。このとき、クリップ12B〜12Dの凸部30の上端が、それぞれ、連結リング14A〜14Cの直下に位置する。
シース16の先端が、生体内に挿入された内視鏡の挿入部の先端まで到達し、内視鏡先端から突出すると、図4に示した操作部50において、シース操作ハンドル54の爪76が1番目のノッチ66から2番目のノッチ66へ移動するように、シース操作ハンドル54が引かれる。シース操作ハンドル54にはシース16が固定されているので、シース操作ハンドル54の移動量と同じ量だけシース16が後退する。この操作により、操作ワイヤ20は移動せず、シース16のみが操作部側に引かれる。
シース16が1番目のノッチ66と2番目のノッチ66の間隔に対応する所定量だけ引っ張られると、シース16の先端が、先頭の連結リング14Aのスカート部38が開く位置まで下がり、シース16から突出したクリップ12Aの爪部22,22は付勢力によって広がって、図5(B)の状態となる。これにより、1発目のクリップ12Aが使用可能な状態となる。なお、図5(B)では、連結リング14Aのスカート部38は紙面垂直方向にあるため、図に表れていない。
クリップ12Aとクリップ12Bの結合部は、連結リング14Aのスカート部38の直下に位置しているため、図5(B)の状態のとき、クリップ12Bの先端が、シース16の先端にほぼ一致している。
シース16を引くとき、シース16とシース16に嵌入されている連結リング14A〜14Dとの間に摩擦力が働く。しかし、連結リング14A〜14Dとクリップ12A〜12Dとの間には、閉じたスカート部38の内側部分によるクリップ12の押圧力、および、後ろ側のクリップ12の爪部22が開こうとするバネ力による連結リング14(その第2領域34、図3参照。)の内壁面への押圧力が働いている。さらに、クリップ12B〜12Dの凸部30が連結リング14A〜14Cの基端に当接し、連結リング14の穴43(図3参照)には進入できない。そのため、シース16を引いても連結リング14A〜14Dは不要に移動することがない。したがって、連結リング14A〜14Dは、それぞれ、クリップ12A〜12Dを保持した状態を維持することができる。
次に、図5(B)の状態のクリップ処置具10を移動させて、拡開したクリップ12Aの爪部22,22をクリップ処置したい部位に押し付けて、操作部50(図4参照)のレバー60を引くことにより、操作ワイヤ20を所定量引っ張る。操作ワイヤ20を引くことで、ダミークリップ18から順に係合している全クリップ12A〜12Dが、一様に引っ張られる。
このとき、図5(B)および(C)の状態では、シース16の先端に出た連結リング14Aは、スカート部38が開いており、スカート部38によるクリップ12Aの押圧保持は解除されている。また、連結リング14Aは、スカート部38がシース16先端で開いていることにより、シース16内への後退が阻止されている。そのため、図5(C)に示すように、先頭のクリップ12Aは連結リング14Aに対して後退する。連結リング14Aの先端、すなわち締付部40が、クリップ12Aの凸部30の直下まで押し込まれることにより、連結リング14Aによるクリップ12Aの締め付けが完了する。
それと同時に、クリップ12Aと次のクリップ12Bとの係合部が連結リング14Aの後端から抜け出る。クリップ12Aとクリップ12Bの係合部が連結リング14Aから外れると、クリップ12Bのバネ力によって腕部28がシース16の内壁に当たるまで拡開し、爪部22,22の間がクリップ12Aのターン部24の幅よりも広く開いて、クリップ12Aとクリップ12Bとの連結が解除される。それにより、クリップ12Aおよび連結リング14Aは、シース16から離脱可能となり、クリップ12Aおよび連結リング14Aによるクリップ処置が完了する。
一方、後続のクリップ12B〜12Dは、スカート部38が閉じた連結リング14B〜14Dによって、連結リング14B〜14Dに対して回転方向および進退方向に移動しないように保持されている。さらに、クリップ12B〜12Dに係合するクリップ12C、12Dの爪部22およびダミークリップ18の爪部の広がろうとする力(付勢力)によって、爪部22が連結リング14B〜14Dの第2領域34(図3参照)の内壁に押し付けられており、クリップ12B〜12Dと連結リング14B〜14Dとの間の摩擦力が高まっている。そのため、連結リング14B〜14Dは、クリップ14B〜14Dの移動とともに移動する。
すなわち、先頭クリップ12Aおよびそれを保持する連結リング14A以外のクリップ12B〜12Dと連結リング14B〜14Dは、シース16に対して一体的に進退移動し、クリップ14B〜14Dおよびダミークリップ18の連結状態は、連結リング14B〜14Dによって維持される。
操作ワイヤ20は、初期状態から一定量引けるように構成されている。この一定量とは、連結リング14の第2領域34の領域長さに等しいか、それよりもわずかに大きい量であると同時に、クリップ12の凸部30の下端からそのクリップ12を保持している連結リング14の先端までの長さと等しいか、それよりもわずかに小さい量である。この一定量は、図4(A)の操作部50において、レバー60のホームポジションから後方への移動限界までの長さによって定められる。
操作ワイヤ20は、操作部50のレバー60を付勢するスプリング62により、一定量引いた後、すぐにその一定量だけ戻るようになっている。図5(B)の状態から図5(C)の状態まで引っ張った操作ワイヤ20は、操作部50においてレバー60の引っ張り力を解放すると、レバー60が元の位置に戻り、それにより、操作ワイヤ20が元の位置に戻って、図5(D)の状態となる。すなわち、2発目のクリップ12Bの先端は、図5(B)のときと同様の、シース16の先端にほぼ一致する位置に戻る。
次に、2発目のクリップ12Bを使用可能な状態とするために、シース16が所定の1ストローク分引っ張られる。図4(A)の操作部50において、シース操作ハンドル54が、2番目のノッチ66から3番目のノッチ66へ動かされる。それにより、シース16の先端が、次の連結リング14Bのスカート部38が開く位置まで下がり、シース16から突出したクリップ12Bの爪部22,22は広がって、図5(E)の状態となる。
シース16を引く1ストローク分の長さは、シース16に装填された前後2つのクリップ12の先端の距離にほぼ等しい。また、シース16を引く1ストローク分の長さは、操作部50のノッチ66間の長さで定められる。
その後、上述のクリップ12Aのときと同様に、クリップ処置したい部位にクリップ12Bの爪部を押し付けて、操作ワイヤ20を所定量引っ張る。これにより、連結リング14Bによるクリップ12Bの締め付けが完了すると同時に、クリップ12Bとクリップ12Cとの連結が解除され、クリップ12Bによるクリップ処置が完了する。
以上に説明したように、本発明のクリップ処置具10では、連結リング14でクリップ12の連結部を覆って保持するため、複数のクリップ12の連結状態が確実に維持される。そして、操作ワイヤ20でダミークリップ18およびそれに連結する複数のクリップ12を所定長分だけ一方向に牽引することで、連結リング14の締付部40による先頭のクリップ12の締め付けと、次のクリップ12との連結解除とを同時に行って、先頭のクリップ12によるクリップ処置を行うことができ、さらに、シース16を操作部側へ所定長分だけ引くことで、次のクリップ12が使用可能となり、続けてクリップ処置を行うことができる。
また、クリップ12の連結部を連結リング14で覆っているため、クリップ処置操作時等にクリップ12の連結部の角部などでシース16の内壁を傷付ける心配が無く、シース16を内視鏡に挿入する時などにも、連結部において、クリップ12にこじれや歪みを生じる可能性が極めて小さい。
次に、本発明の連結クリップパッケージについて説明する。
本発明の連結クリップパッケージは、上述のような連発式クリップ処置具10において用いられるクリップ体(クリップ12に連結リング14を嵌めたもの)を、予め所定数が連結された状態でケースに収納し、パッケージ化したものである。
図6(A)〜(C)は、本発明の連結クリップパッケージの第1実施形態を示す図であり(A)は正面図、(B)は断面図、(C)はケースの軸に直交する面の断面図である。以下では、図6(A)および(B)における左側を先端、右側を後端と呼ぶ。
上記のクリップ処置具10の説明では、4つのクリップ体が連結されている例について説明したが、ここでは、5つのクリップ体が連結されている例について説明する。
図6(A)に示すように、連結クリップパッケージ80は、ケース82と、上キャップ84と、下キャップ86とから成る。
ケース82は、円筒状であり、内部にクリップ12および連結リング14からなるクリップ体を収容する。このケース82は、図6(A)および(C)に示すように、半円筒状でほぼ同形状の2つのケース部品82a,82bを組み合わせて構成されている。2つのケース部品82a,82bの先端には上キャップ84が、後端には下キャップ86が嵌められており、ケース82を閉じた状態に保っている。
ケース82は、内部が見えるように、透明または半透明とするのが好ましい。また、耐衝撃性、扱い易さ、および成形の容易さから、周辺温度の変動範囲(例えば5℃〜38℃)で変質しない樹脂によって形成するのが好ましい。なお、本実施形態では、ケース82を円筒状としているが、ケース82の外形は、円柱状には限定されず、角柱であってもよい。
連結クリップパッケージ80は、医療用のクリップを収納するため、ケース82内を密閉に保つことが必要である。そのため、ケース82は、ケース部品82a,82bの外表面を透明樹脂製のカバー88で覆っており、ケース82内の密閉性を確保している。あるいは、ケース82は、ケース部品82a,82bを弾性のある材料で作り、ケース部品82aおよび82bを、合わせ面で押し付けた状態で上キャップ84および下キャップ86で保持し、密閉性を確保するようにしてもよい。また、ケース部品82aおよび82bの間にパッキンを設けて密閉性を確保してもよい。
上キャップ84および下キャップ86は、ケース部品82a,82bを密閉状態で封じる物であればよく、ゴム製や樹脂製とすることができる。下キャップ86は取り外し可能である。ケース82内のクリップ体をシースへ装填するときは、下キャップ86が外されて内部のクリップ体が連結状態のまま引き出される。上キャップ84は取り外し可能でもそうでなくてもよい。また、ケース82で先端部分を構成し、上キャップ84を設けない形態としてもよい。
図6(B)に示すように、ケース82には、連結リング14の外径よりわずかに大きく、クリップ体が装填されるシースの内径とほぼ等しい内径の穴が、ケース82全体を貫いて形成されており、その穴に、連結された5つのクリップ12A〜12Eおよびダミークリップ18と、その連結部分を覆う5つの連結リング14A〜14Eが収容されている。先頭のクリップ12Aの先端は、上キャップ84からケース82内に突出する部分に保護されている。また、最後尾のクリップ12Eにつながるダミークリップ18の後端の接続部材19は、下キャップ86によって保持される。
ケース82の後端部分には、シースが挿入可能なシース嵌合部98が形成されている。シース嵌合部98は、クリップ12A〜12Eおよび連結リング14A〜14Eを装填するシースの外径にほぼ等しい径を有している。シース嵌合部98の径は、ケース82の穴のストレート部90の径よりも、シースの肉厚分程度大きいので、シース嵌合部98の先端にはその分の段差ができている。ケース82内のクリップ体をシースへ装填するときは、シース嵌合部98の先端までシースが挿入される。
図7は、図6(B)の部分拡大図である。図7に示すように、ケース82の内面には、連結リング14A〜14Eが収容される位置に、スカート部38の形状に対応する凹部96が設けられている。この凹部96は、ストレート部90から、自然状態におけるスカート部38の傾斜とほぼ同じ角度で、スカート部38の広がりにほぼ一致して、外側へ半径方向に広がる第1斜部92と、第1斜部92の広がった端部(後端)から半径方向に狭まる第2斜部94とによって形成される。
上述したように、クリップ12A〜12Eは90度ずつ向きを変えて連結されており、それに対応して、連結リング14A〜14Eも前後の連結リング14と90度向きを変えてクリップ12A〜12Eに嵌められている。したがって、ケース82における凹部96の位置も、各連結リング14A〜14Eに対応する位置において、周方向に90度ずつずれている。図6(B)には、連結リング14A,14C,14Eのスカート部38に対応する凹部96が上下2箇所に示されている。連結リング14B,14Dのスカート部38に対応する凹部96は、図6(B)の紙面に垂直な方向の2箇所に形成されている。
なお、凹部96は、前後方向(図中左右方向)のスカート部38に対応する位置に、全周に亘って形成してもよい。
この凹部96の第1斜部92により、連結リング14A〜14Eは、スカート部38が外力を受けずに広がった状態でケース82に収納される。そのため、ケース82に保管されている間にスカート部38の弾性が劣化することを防止でき、連結リング14A〜14Eの性能を維持することができる。
また、ケース82からクリップ12A〜12Eおよび連結リング14A〜14Eが引き出されるときは、凹部96で開いているスカート部38は、第2斜部94に案内されて徐々に閉じるので、凹部96を出るときにめくれてしまうことがなく、ストレート部90に収まってケース82内を移動することができる。
クリップ体のケース82への収納は、次のように行う。
まず、クリップ12A〜12Eを順に連結させる。クリップ12A〜12Eの連結は、クリップ12に嵌められた連結リング14のスリット46をめくり、クリップ12のターン部24に次のクリップ12の爪部22を係合させて、係合部を連結リング14の所定位置にセットすることで行う。最後のクリップ12Eには、同様の方法でダミークリップ18を連結させる。
予め連結させた状態に組み立てられた連結クリップを、ケース82の一方のケース部品82aに収納する。その後、もう一方のケース部品82bをケース部品82aに被せて、上キャップ84および下キャップ86を嵌めることで、連結クリップパッケージ80を得る。
次に、図8(A)〜(C)を参照して、連結クリップパッケージ80からシース16へのクリップ体の装填方法について説明する。
まず、図8(A)に示すように、連結クリップパッケージ80の下キャップ86を外し、シース16の先端から突出させた操作ワイヤ20を、ケース82内のダミークリップ18の後端部の接続部材19に接続する。
操作ワイヤ20は、図4の操作部50の操作によって、シース16から突出させることができる。すなわち、図1のクリップ処置具10において、全てのクリップ12を使用した後は、図4の操作部50は、シース操作ハンドル54がワイヤ操作ハンドル52の側へ移動している。例えば、シース操作ハンドル54の爪76は、一番後ろのノッチ66に掛かっている。その状態において、ワイヤ操作ハンドル52とシース操作ハンドル54との間には、所定の間隔が空いており、シース操作ハンドル54をその間隔分だけ引いて、シース16を操作ワイヤ20に対して引くことにより、操作ワイヤ20をシース16の先端から突出させることができる。位置決めパイプ56に、操作ワイヤ20を突出させる位置に対応するノッチを設けておいてもよい。
既に使用したクリップ12の最後尾に係合していたダミークリップ18は、シース16から操作ワイヤ20を突出させた状態で、予め取り外される。
ダミークリップ18の後端部(接続部材19)と操作ワイヤ20の先端は、着脱可能であり、かつ、操作ワイヤ20の進退移動によっては外れない構成となっている。例えば、接続部材19は接続用環を有し、操作ワイヤ20には鉤状部材が取り付けられており、操作ワイヤ20の鉤状部材を接続部材19の接続用環に引っ掛けて、ダミークリップ18と操作ワイヤ20とを接続する。
操作ワイヤ20をケース82内のダミークリップ18に接続したら、図8(B)に示すように、シース16をシース嵌合部98の先端まで挿入して、ケース82と嵌合させる。操作者がシース16とケース82を持って、シース16の端部をケース82のシース嵌合部98に挿入した後、操作部50(図4参照)のシース操作ハンドル54を、ワイヤ操作ハンドル52に対して前進させることで、シース16を操作ワイヤ20に対して前進させて、シース16をシース嵌合部98の先端まで挿入することができる。
ケース82のシース嵌合部98にシース16を嵌合させた状態において、ケース82のストレート部90の内径と、シース16の内径は、ほぼ等しくなっている。
次に、図8(C)に示すように、操作ワイヤ20の位置はそのままで、シース16だけを先端側へ移動させ、それと一緒にケース82を先端側へ移動させる。シース16の移動は、操作部50のシース操作ハンドル54をワイヤ操作ハンドル52に対して先端側へ移動することによって行う。このとき、図8(B)および(C)に矢印で示した、シース嵌合部98の先端部近傍を押さえながら、シース16およびケース82を移動させるのが好ましい。シース16およびケース82の移動により、ケース82内のクリップ12A〜12Eおよび連結リング14A〜14Eが、後端側から順に、シース16内へ装填される。
なお、クリップの装填には、シース16を操作ワイヤ20に対して相対的に前進させて、先頭のクリップ12Aを完全にシース16内に収容する位置まで移動させればよく、シース16およびケース82を移動させずに、操作ワイヤ20を引っ張って、クリップ体をシース16内に引き込んで装填するようにしてもよい。
ケース82において、連結リング14A〜14Eのスカート部38は、開いた状態で凹部96に収容されているが、ケース82が先端側へ移動するときには、スカート部38は、凹部96の第2斜部94に案内されながら閉じていき、ストレート部90に収まって、そのままシース16内へ引き込まれる。連結リング14A〜14Cのスカート部38は、後端側の他の凹部96を通過するが、その際に、第1斜部92でスカート部38が一端開いても、第2斜部94で再び閉じて、ストレート部90へ案内される。
連結リング14A〜14Eは、その後端側の第2領域34(図3参照)の内壁が、後ろ側のクリップ12B〜12Eおよびダミークリップ18の爪部22が広がろうとする付勢力によって、押圧されている。そのため、ケース82内において、クリップの連結状態、および、クリップ12A〜12Eと連結リング14A〜14Eとの位置関係が維持される。
さらに、シース16への装填時には、スカート部38が凹部96からストレート部90へ移動して閉じることで、連結リング14A〜14Eの内部のクリップ12A〜12Eがスカート部38の内側の部分によって押圧され、連結リング14A〜14Eがクリップ12A〜12Eおよびダミークリップ18の連結状態を保持する。そのため、シース16への装填時に、クリップ12A〜12Eおよびダミークリップ18の連結が外れたり、連結リング14A〜14Eとの位置関係がずれるのを防止することができる。
シース16の先端が、先頭のクリップ12Aの先端を収容する位置まで移動して、シース16へのクリップの装填が完了する。装填完了時、操作部50(図4参照)は、シース操作ハンドル54が先端側へ移動し、爪76が最初のノッチ66に掛かった状態となる。
このように、連結クリップパッケージ80は、クリップを連結した状態で流通および保管することができ、さらに、その連結状態を保ったまま、簡単な操作でシース16へ装填できる。そのため、操作者の作業負担が小さく、短時間で簡単にクリップの装填をすることができる。
また、連結クリップパッケージ80は、連結リング14のスカート部38が開いた状態で保管できるので、スカート部38の弾性を損なうのを防止でき、クリップ12の使用時(クリップ処置時)に、クリップ12および連結リング14が十分な性能を発揮することができる。
さらに、連結クリップパッケージ80は、その内部で開いた状態のスカート部38を、シース16への装填時には自動的に閉じさせながら装填することができるので、装填操作が容易である。
なお、連結クリップパッケージ80において、ケース82のケース部品82a,82bを弾性を持つ材質とし、シース16へのクリップの装填時に、シース嵌合部98の先端部分を押さえたときに、ケース82の先端部分を支点としてケース部品82aとケース部品82bとが接触面で押さえあって、互いにわずかに変形するようにしてもよい。ケース部品82a,82bが潰れることにより、対向する凹部96の間隔が狭まって、その凹部96に収容されたスカート部38を閉じさせるように働き、スカート部38をよりスムーズに閉じさせることができる。
また、連結クリップパッケージ80において、ケース部品82a,82bは剛性とし、ケース部品82aとケース部品82bとの間にパッキンを設けた場合にも、シース16へのクリップの装填時に、シース嵌合部98の先端部分を押さえることで、ケース82の先端部分を支点としてパッキンが潰れて、対向する凹部96の間隔が狭まって、その凹部96に収容されたスカート部38を閉じさせるように働き、スカート部38をよりスムーズに閉じさせることができる。
次に、本発明の連結クリップパッケージの第2実施形態について説明する。図9(A)〜(C)は、本発明の連結クリップパッケージの第2実施形態を示す図であり(A)は正面図、(B)は断面図、(C)はケースの軸に直交する面の断面図である。
図9の連結クリップパッケージ100は、ケース102が内筒104および外筒106の2層構成になっている。内筒104および外筒106の先端に嵌められた上キャップ84および後端に嵌められた下キャップ86は、上述の連結クリップパッケージ80の上キャップ84および下キャップ86と同様のものである。
内筒104は、弾性材料からなる筒状の部材である。内筒104の穴の形状は、上述の連結クリップパッケージ80のケース82の穴の形状と同じであり、ストレート部90に、連結リング14A〜14Eのスカート部38に対応する位置に設けられた凹部96が形成されている。また、内筒104の後端部分には、ストレート部90よりもわずかに径が大きく、シース16の外径にほぼ等しい径の、シース嵌合部98が形成されている。
外筒106は、内筒104を覆う筒状の部材である。外筒106は、弾性を有しているが、その軸方向に平行に、複数の棒部材108が配置されている。図9の例では、図9(C)に示すように、4本の棒部材108が90度間隔で配されている。また、棒部材108は、連結リング14A〜14Eのスカート部38の位置、すなわち、内筒104の凹部96の位置に対応して配置されている。
棒部材108は、その両端に上キャップ84および下キャップ86が嵌められることで、ケース102の半径方向の位置が固定されている。この棒部材108は、流通および保管の間に、弾性体であるケース102(内筒104および外筒106)が外力を受けて折れ曲がったり、押し潰されたりすることがないように、ケース102を支持し、その内部のクリップ体を変形や破損などから保護する。
また、棒部材108は、下キャップ86が外れた状態で押圧されると、軸方向に全体的にケース102を押して、その径を小さくする。
連結クリップパッケージ100のクリップをシース16へ装填するときには、上述の連結クリップパッケージ80のときと同様に、下キャップ86を外して、操作ワイヤ20をダミークリップ18の後端部の接続部材19に接続し、シース16の先端をケース102の内部に挿入してシース嵌合部98に嵌合させ、そのシース嵌合部98を操作者が手で押さえながら、操作部50を操作してシース16とケース102とを操作ワイヤ20に対して先端側へ移動させる。
ここで、4本の棒部材108を押さえることで、ケース102が軸方向に全体的に、4方向から押圧される。それにより、弾性体のケース102が潰れて、対向する凹部96の間隔が狭まって、その凹部96に収容されたスカート部38を閉じさせるように働く。その状態でシース16およびケース102を前進させることで、スカート部38をよりスムーズに閉じさせることができ、クリップ12A〜12Eおよび連結リング14A〜14Eを、スムーズにシース16に装填することができる。
なお、さらに上キャップ84も外して棒部材108を押さえてもよい。その場合は、ケース102が軸方向にほぼ均一に押圧される。また、4本の棒部材108のうち、対向する2本ずつを交互に押すようにしてもよい。
他の方法として、内筒104および外筒106の弾性が大きく、棒部材108を押さえることで、ケース102を十分に変形させ、連結リング14A〜14Eのスカート部38を閉じた状態にできる場合であって、内筒104の内側にシース16を挿入可能である場合には、棒部材108でケース102を押さえた状態で、シース16を内筒104とクリップ12A〜12Eおよび連結リング14A〜14Eとの間に進入させて、シース16へのクリップの装填を行ってもよい。
この場合には、凹部96は、第2斜部94は有さなくてもよく、例えば、第1斜部92の後端を、スカート部38の形状と同様に、軸方向にほぼ垂直な面としてもよい。
上記の連結クリップパッケージ100においても、クリップを連結した状態で流通および保管することができ、さらに、その連結状態を保ったまま、簡単な操作でシース16へ装填できる。
なお、上記の各例ではクリップ12を90度ずつ向きを変えて連結するものとしているが、本発明はこれには限定されない。例えば、爪部22,22とターン部24との間の部分で90度だけ捻った形状のクリップを使用し、連続するクリップを同じ向きで連結するようにしてもよい。
また、ターン部を有するクローズクリップを用いることで、ターン部を押圧して腕部に拡開するバネ力(付勢力)を与えることができる点で好ましいが、本発明は、ターン部を有さないオープンクリップ(U字状のクリップ)を用いるものに適用することもできる。
以上、本発明に係る連結クリップパッケージおよび連結クリップの装填方法について詳細に説明したが、本発明は上記の実施例に限定されず、本発明の主旨を逸脱しない範囲において、種々の改良や変更をしてもよいのはもちろんである。また、本発明の連結クリップパッケージおよび連結クリップの装填方法を用いる連発式クリップ処置具は、軟性鏡のほか、硬性鏡にも用いることができる。