JP4782518B2 - 鉛含有化合物の熱処理に用いられる部材 - Google Patents

鉛含有化合物の熱処理に用いられる部材 Download PDF

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Description

本発明は、主に電子材料部品等を焼成などの熱処理する際に用いられる焼成冶具への応用に関し、例えば、セラミックコンデンサーやセラミックフィルター、セラミックレゾネータ、燃料噴射用インジェクター用アクチュエータ、インクジェットプリンターヘッド用アクチュエータ、圧電共振子、発振器、超音波モータ、加速度センサ、ノッキングセンサ、またはAEセンサ等の圧電センサなどの圧電素子の焼成等の熱処理する場合に好適に用いられる焼成冶具に応用できるものである。
従来から、圧電磁器を利用した製品としては、例えば、アクチュエータ、フィルタ、圧電共振子(発振子を含む)、超音波振動子、超音波モータ、圧電センサ等がある。
これらの中で、アクチュエータは、電気信号に対する応答速度が10−6秒台と非常に高速であるため、半導体製造装置のXYステージの位置決め用アクチュエータやインクジェットプリンタのインク吐出用アクチュエータ等に応用されている。
このようなアクチュエータに用いられる圧電磁器には鉛を含有する化合物、例えばチタン酸ジルコン酸鉛(以下、単にPZTと言うことがある)等の鉛系セラミックスが用いられている。このような鉛化合物においては、鉛の揮発性が高いため、焼成中に成形体から蒸発して、焼結体の組成変動を引き起こし、組成が不均一になるという問題があった。特に、表面の組成変動は内部に比べて大きかった。
そこで、Pbのような揮発成分を含む成形体の焼成には、成形体と同一又は類似で、成形体に含まれる揮発成分を含む組成物(以下、共材と言う)を、成形体と共に容器内に入れ、成形体から揮発成分が蒸発することを抑制し、成形体の組成変動、特に表面付近での組成変動や組織変化を防止し、特性の均一化を行うことが提案されている(例えば、特許文献1)。
即ち、多孔質セッターの上に成形体を載置して容器に装填するとともに、成形体の周囲に共材を配置して焼成する。従って、特許文献1に用いられた焼成治具は、容器と、成形体を載置するために該容器内に置かれた多孔質セッターを具備している。
ところが、厚みが数百μm以下のセラミックグリーンシートの積層体を焼成する場合、表面が内部に比べて組成が変化しているため、表面の変質相を除去しようとしても、厚みが薄いために機械加工が困難であるという問題があった。
また、焼結時の組成変動により、部位によって収縮率が異なるため、うねり、反りといった変形を生じ、或いはまた、局部的に凹凸が発生し平滑な圧電磁器を得ることが困難であるという問題があった。
さらに、組成変動により、圧電特性が部位によって異なるという問題があり、インクジェットプリンタの印刷ヘッドに用いた場合には、インクの吐出ばらつきが大きくなり、画質が低下するという問題があった。
このため、焼成治具自体圧電セラミックスとの反応性の低い材料が用いられてきた。例えば、PZTとの焼成時の敷物としてジルコニア(ZrO)が反応性の低いことが開示されている(例えば、非特許文献1参照)。
特開平10−29872号公報図1 学献社出版"セラミック誘電体工学"P154
しかしながら、PZT成形体を焼成する際に単にZrOを焼成治具を用いても、わずかながらPZTとZrOとが反応し、焼成治具の組成変動が発生するという問題があった。このような組成変動が発生すると、焼成治具の表面組成が不均一になり、焼成するPZT焼結体の特性がばらついてしまう。例えば、圧電磁器としてPZTを焼成する場合、得られた焼結体の圧電特性がばらつくため、特に1枚の圧電磁器に複数の圧電変位素子を形成した場合に圧電変位素子間で圧電特性が異なっていた。
また、同じ焼成治具を用いて鉛を含む成形体を繰り返し焼成すると、焼成治具表面における鉛との反応部位における反応が次第に進み、焼成治具の表面組成のばらつきが顕著となり、焼成ロット毎間で圧電特性が変動するという問題も生じていた。
従って、本発明の目的は、PZTなどの鉛化合物との反応性をさらに低減し、圧電体を焼成しても圧電特性ばらつきの小さい焼結体を得ることが可能な鉛含有化合物の熱処理に用いられる部材を提供することにある。
本発明の鉛含有化合物の熱処理に用いられる部材は、ジルコニアを主成分、カルシアおよびイットリアを第2成分、さらにCaを除く周期律表第2a族元素およびYを除く周期律表第3a族元素の元素群のうち少なくとも1種の酸化物を第3成分として含有し、立方晶ジルコニアを主結晶相とし、ジルコニア以外の粒界結晶相を実質的に含まないジルコニア焼結体からなり、前記第3成分の含有量が、前記主成分と前記第2成分との合計量を100モル部としたときに、0.1〜0.35モル部であり、下記式1及び式2で表される
ジルコニア焼結体の立方晶比率Xcが0.97以上であるとともに、ジルコニア、イットリアおよびカルシアのモル比による組成比が、ZrO −YO 1.5 −CaOの3元組成図における下記点のA−B−C−D点を結ぶ線分で囲まれる範囲内であることを特徴とする。
ZrO CaO YO 1.5
A点: 0.65 0.03 0.32
B点: 0.61 0.07 0.32
C点: 0.72 0.18 0.10
D点: 0.79 0.11 0.10
Figure 0004782518
Figure 0004782518
また、本発明の上記の鉛含有化合物の熱処理に用いられる部材は、前記ジルコニア焼結体の平均結晶粒子径が10〜40μmであることが好ましい。
また、本発明の上記の鉛含有化合物の熱処理に用いられる部材は、前記ジルコニア焼結体に含まれるジルコニア結晶中に、前記第2成分および前記第3成分が固溶限界近くまで固溶していることが好ましい。
また、本発明の上記の鉛含有化合物の熱処理に用いられる部材は、鉛含有化合物を載置するための載置面を具備し、焼成冶具として用いられることが好ましい。
本発明は、カルシア及びイットリアと共に第3の安定化剤を含有する立方晶ジルコニアが鉛含有化合物に対して極めて低い反応性を示すという新規な知見に基づいてなされたものである。
すなわち、ジルコニアの安定化剤として、カルシアおよびイットリアからなる第2成分に加えて、Caを除く周期律表第2a族元素およびYを除く周期律表第3a族元素の元素群のうち少なくとも1種の酸化物からなる第3成分含有せしめ、ジルコニア焼結体の立方晶比率を0.97以上とすることで、ジルコニア自体が鉛含有化合物との反応性を実質的に無視できる程度に顕著に低減することができる。これにより、PZTなどの鉛化合物との反応性をさらに低減し、圧電体を焼成しても圧電特性ばらつきの小さい焼結体を得ることが可能な鉛含有化合物の熱処理に用いられる部材を提供することができる。
本発明の鉛含有化合物の熱処理に用いられる部材を、ジルコン酸チタン酸鉛(以下、PZTと言う)を焼成するための焼成治具を例として説明する。
なお、本発明における焼成治具とは、成形体を焼成する際に使用する治具を意味するもので、焼成する際に成形体を載置するセッターや成形体およびセッターを入れる焼成鉢を例示できる。換言すれば、セッターのように成形体と直接接し、あるいは焼成鉢のように成形体から蒸発した鉛蒸気と反応する、または反応する可能性のある部材を焼成治具と称している。
本発明は、ジルコニアを主成分として含み、カルシアおよびイットリアを第2成分として含むとともに、さらに、Caを除く周期律表第2a族元素およびYを除く周期律表第3a族元素の元素群のうち少なくとも1種の酸化物を第3成分として含有することが重要である。
ここで、Caを除く周期律表第2a族元素とは、Be、Mg、Sr、Baであり、Yを除く周期律表第3a族元素とは、ScとランタノイドのLa、Ce、Nd、Sm、Eu、Gd、Tb、Dy、Ho、Er、Tm、Yb、Luを示すものである。
本発明によれば、CaOを10〜20モル%添加して安定化したジルコニア焼結体は、高温時にはCaがジルコニア結晶中に固溶しているが、降温時にCaの一部が粒界部へ析出して鉛との反応を引き起し、鉛との反応を防止することができなかった。
逆に、カルシアの添加量を少なくするとジルコニア中にカルシアが固溶するものの、カルシアの添加量が10モル%より少ないと立方晶ジルコニアが熱的に不安定になって冷却時に立方晶から単斜晶ZrOへの相変態が発生し、単斜晶ZrOが鉛と反応するため、鉛含有化合物の熱処理に用いられる部材として十分機能することができなかった。
一方、イットリア(Y)やマグネシア(MgO)などの他の安定化剤を用いたジルコニアも、PZTとの反応が生じるものであり、特にイットリアで安定化したジルコニアは、繰り返し焼成しているうちにジルコニア中に鉛が浸透し、鉛を含有する成形体との反応性が焼成回数と共に変化し、焼結体表面のPb量がその面内で顕著にばらつくため、圧電特性のばらつきが生じていた。特に焼成ロット毎に圧電特性が変動した。
例えば、Yなどの周期律表第3a族元素で安定化したジルコニア焼結体では、結晶粒界に析出した周期律表第3a族元素の化合物を介して鉛が内部まで容易に拡散し、結果的に反応性が高くなる。
しかし、安定化剤として、CaO、YおよびCaを除く周期律表第2a族元素およびYを除く周期律表第3a族元素の元素群のうち少なくとも1種の酸化物を同時に含有せしめることによって粒界へのCa析出を効果的に抑制することができ、且つZrOに対してCaの均一な固溶を促進することができる。また、立方晶ZrOの熱的な安定度を向上させることが可能となりPZTなどの鉛含有化合物との反応を顕著に抑制することができる。
このように周期律表第2a族元素と周期律表第3a族元素を組み合わせることによって、粒界への第二相の析出を効果的に抑制することができる。すなわち、Pb含有物質と容易に反応しやすいジルコニア以外の結晶相を析出させないことである。特に、カルシア、イットリアを含有させ、さらに上記の第3成分を組み合わせることで、添加元素が粒界に析出することを防止するという効果を奏することができる。
また、本発明の鉛含有化合物の熱処理に用いられる部材は、上記の組成からなり、立方晶ジルコニアを主結晶相とするジルコニア焼結体からなり、ジルコニアは結晶構造として、立方晶、単斜晶、正方晶を取り得る。このうち、単斜晶はPbOと反応しやすく、PbZrOを生成する原因となるため鉛含有化合物の熱処理に用いられる部材としては含まれない方が良い。また、正方晶もジルコニア内に物質を固溶させる余裕が多く、Pbとの反応の原因となるため結晶相は立方晶のみの方が良い。立方晶ジルコニアを主結晶とすることで、ジルコニア内への添加物、不純物の固溶を抑制してPbとの反応を抑制するという効果を奏することができる。
一方、立方晶は高温安定相であるため、PbOとの反応性も低く、鉛含有化合物の熱処理に用いられる部材中に含まれることが重要であり、主結晶相として含まれることが必要である。特に、X線回折による回折強度で表される下記の立方晶比率Xcが0.97以上のジルコニア焼結体は、鉛との反応性をより一段と低下させることができ、鉛含有化合物の熱処理に用いられる部材として好適であり、焼成治具として用いた場合には、圧電特性等の特性ばらつきの小さい焼結体を得ることが可能となる。
特に、ジルコニア焼結体の立方晶比率Xcが0.98以上、さらには0.99以上であることが鉛との反応性をより低減するために好ましい。なお、ジルコニアは単斜晶、正方晶及び立方晶の順に高温安定相となる。
本発明における立方晶比率XcはX線回折分析によるスペクトル解析から、下記式1及び式2を用いて算出することができる。
Figure 0004782518
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なお、単斜晶のピークは実質的にないことが好ましい。また、ここでいうX線回折強度が実質的にないというのは、XRDのメインピーク強度を100とした際に0.1以下の強度であることを示す。
例えば、図は本発明の鉛含有化合物の熱処理に用いられる部材のX線回折スペクトルを示すもので、横軸は2θ、縦軸はX線回折強度である。この図によれば、Xm=0、Xc=1.0が得られる。このように、立方晶比率Xcが0.97以上の場合には、PZTなどの鉛含有化合物との反応を顕著に抑制することが可能となり、本発明の鉛含有化合物の熱処理に用いられる部材を焼成治具として用いた場合には焼成した焼結体表面の圧電特性ばらつきを小さくすることができ、さらに、繰り返し使用しても焼成ロット間で圧電特性ばらつきを小さくすることができる。
また、図は本発明の範囲外の鉛含有化合物の熱処理に用いられる部材のX線回折スペクトルを示すものであり、この図によれば、Xm=0.039、Xc=0.716が得られる。このように、立方晶比率Xcが0.97よりも小さい場合には、斜方晶や粒界結晶相等との反応が起こり、焼結時に成形体との反応が発生する。
なお、図及び図は、2θが10〜80°の範囲で測定を行っているが、Xcの算出に当っては、該当する面のピーク付近の領域を、狭いステップ幅に設定し、各ステップにおけるサンプリング時間を長くした精密測定を行って、ピーク付近の拡大ピーク(不図示)を用いて算出することが好ましい。
結晶粒界にジルコニア以外からなる粒界結晶相を実質的に含まないジルコニア焼結体であることが重要である。本発明において、結晶粒界にジルコニア以外からなる粒界結晶相を実質的に含まないジルコニア焼結体とは、X線回折スペクトルにおいてジルコニア以外の結晶相が検出されないものを示す。つまり、本発明のジルコニア焼結体は、立方晶ジルコニア結晶、正方晶ジルコニア結晶及び斜方晶ジルコニア結晶のいずれかの結晶相で構成されるものである。
ジルコニアからなる主結晶相の粒界に第2成分であるCaおよびYの析出がないことが好ましい。これらの析出を十分に抑制することによって、PZTなどの鉛含有化合物との反応をより一層減少させることが容易になる。
本発明において、第2成分の析出がないとは、XRD分析によって、立方晶ジルコニアメインピーク強度を100とした場合それ以外の回折ピーク強度が0.1以下であり、また、FE−SEMで倍率3000倍で走査した際、析出相が見られないことを意味するものである。
例えば、ジルコニア主結晶相の粒界に、Alを実質的に含まないことが好ましい。アルミナは粒界に析出するCaと反応し、Caに対するAlの比Al/Caが6の化合物(ヘキサアルミネート)が形成され、これが鉛と反応してジルコニア結晶表面の鉛含有率が不均一になり、この表面と接する鉛含有化合物の表面の鉛量が不均一となる。
本発明において、Alを実質的に含まないとは、Alをアルミナ(Al)換算で約300ppm以下であることを意味するものである。
また、Siも実質的に含まないことが好ましい。その理由は、SiO2はPbOと反応しやすく1000℃以下のごく低温で液相を生成するためである。
本発明において、Siを実質的に含まないとは、Siをシリカ(SiO)換算で200ppm以下であることを意味するものである。
第2成分および第3成分は、ジルコニア焼結体のジルコニア結晶中にほぼ固溶限界まで固溶していることが好ましい。これにより、ジルコニア結晶をより安定化せしめるとともに、立方晶以外の結晶相を容易に少なくでき、鉛含有化合物に対する反応性をさらに改善することができる。
なお、ジルコニア結晶中への固溶割合は、リードベルト結晶構造解析という測定によって確認することができる。すなわち、X線回折データを元にしてリードベルト結晶構造解析を行って格子定数の数値を算出すると、固溶量が増えて固溶限界まで固溶してしまうとそれ以上添加元素量を増加させても格子定数は一定となる。したがって、固溶限界近くとは、格子定数の最大値よりもわずかに小さい値の状態とすることができる。
第2成分の含有量が、主成分の含有量と第2成分の含有量との合計に対して20〜43モル%、特に25〜40モル%であることが好ましい。これにより、立方晶ジルコニアは十分に安定して単斜晶ジルコニアの生成を抑制することが容易になるとともに、添加元素がジルコニア中に全量固溶することがさらに容易となり、第2成分が粒界に析出するのを抑制し反応性をより効果的に低減することができる。
なお、第3成分の含有量は、主成分と第2成分の合計量を100モル部としたときに、0.1〜1モル部、特に0.15〜0.8モル部、更には0.2〜0.5モル部が好ましい。
ZrOに対して安定化剤としてCaO、Yを用いることが重要であるが、その組成は、ZrO−YO1.5−CaOの各成分のモル比による組成比が、図のZrO−YO1.5−CaOの3元組成図における下記点
ZrO CaO YO1.5
A点: 0.65 0.03 0.32
B点: 0.61 0.07 0.32
C点: 0.72 0.18 0.10
D点: 0.79 0.11 0.10
のA−B−C−D点を結ぶ線分で囲まれる範囲内に設定することが好ましい。これにより、PZTなどの鉛含有化合物との反応をより一層減少させることも可能となり、ジルコニア焼結体の表面の組成変動をさらに小さくせしめることができ、得られる鉛含有化合物からなる焼結体の特性バラツキをさらに小さくせしめることができる。したがって、焼成冶具等の加熱、熱処理冶具に対してより好適に用いることが可能となる。
ジルコニア焼結体の平均結晶粒子径は、10〜40μm、特に25〜38μm、さらには30〜35μmであることが好ましい。これにより、繰り返し高温に曝されてもクリープ変形を起こしにくく薄相化が容易になる。なお、平均結晶粒子径は、走査型電子顕微鏡(SEM)を用いて測定した。
以上のようなジルコニア焼結体は、鉛含有化合物の熱処理に用いられる部材として好適に使用することができ、特に、Pb雰囲気や600℃以上の高温などの条件下で熱処理を
行う場合に鉛含有化合物との反応を少なくすることができるため、鉛含有化合物を載置するための載置面を具備する熱処理用治具として好適に使用することができる。このような焼成治具を用いれば、均質な焼き上げのPZT磁器を容易に作製することが可能である。
特に、圧電磁器を作製するための鉛を含み、厚みが数百μm以下の薄い成形体を焼成する場合には、上記の焼成治具の載置面に載置して熱処理を行っても成形体と焼成治具との反応が実質的に無いため、焼成によって得られた圧電磁器は反りやうねりの極めて少ない焼結体を作製することができる。
本発明の鉛含有化合物の熱処理に用いられる部材は、焼成治具のみではなく、600℃以上、特に700℃以上、さらには800℃以上の熱処理に用いる熱処理用治具に好適に使用できることは言うまでもない。例えば、鉛含有化合物のアニール処理、酸化や還元等の反応処理、接合処理等の熱処理において、鉛含有化合物を含む非処理物に接触するように、例えば非処理物をセッターに載置して熱処理する場合においても、また一対の平板状の鉛含有化合物の熱処理に用いられる部材で非処理物を挟むように配置する場合等においても、熱処理時に非処理物からの揮発性元素である鉛の影響を低減でき、非処理物は熱処理後に表面の組成変動を抑制することができる。
特に、振動板の上に共通電極及び圧電体層をこの順に積層し、該圧電体層の上に複数の表面電極を形成して、表面電極と該表面電極に対向する共通電極とこれらの電極間に挟まれた圧電体層で構成される圧電変位素子が複数形成されてなるインクジェットプリンタの印刷ヘッド用アクチュエータの熱処理を行っても、複数の圧電素子間の変位ばらつきを容易に制御でき、また、熱処理ロット間の変位ばらつきを抑制できる。
本発明の鉛含有化合物の熱処理に用いられる部材の作製方法を以下に説明する。
まず、原料粉末を準備する。ジルコニア粉末としては、立方晶ジルコニアからなるジルコニア粉末を用いることが好ましい。単斜晶ジルコニアや正方晶ジルコニアはその一部が焼結時に立方晶ジルコニアに相転移するが、ジルコニア焼結体のXc値を0.97以上とするためには原料のジルコニア粉末の立方晶比率Xcを少なくとも0.95とすることが好ましい。
ジルコニア粉末の平均粒径が0.1〜1μm程度のものを使用するのが好ましい。
第2成分粉末としては、CaO粉末を直接用いても良いが、Caの水酸化物、炭酸塩または硝酸塩などを熱処理してCaOを形成しても良い。CaO粉末は0.3〜1μm程度のものが好ましい。また、Y粉末は平均粒径が0.1〜1μm程度のものを使用するのが好ましい。
第3成分粉末としては、Caを除く周期律表第2a族元素とし、周期律表第2a族元素の酸化物、水酸化物、硝酸塩などを使用することができる。また、Yを除く周期律表第3a族元素として、周期律表第3a族元素の酸化物を使用することができる。
上記のジルコニア粉末と添加物粉末と、IPA等の有機溶媒、ジルコニア製ボールとを樹脂製ポットに投入し、混合・粉砕する。得られた混合粉末を熱処理して第1成分と第2成分と第3成分とを含む合成粉末を作製する。例えば、混合粉末を1000〜1400℃で熱処理することができる。
得られた合成粉末を、ジルコニアボールを用いて平均粒径が0.3〜0.8μm程度になるまで粉砕する。この粉砕原料粉末に対して、有機バインダ、溶媒を混合してスラリーを作製し、得られたスラリーをテープ成形、鋳込み成形または射出成形などの周知の成形方法によってグリーンシートを作製する。得られたグリーンシートは所望の大きさに切断し、所望により切断した複数のグリーンシートを積層して成形体を作製する。なお、スラリーを乾燥して乾燥原料を作製し、この乾燥原料をプレス成形等の方法で所望の形状の成形体を作製しても良い。
得られた成形体は、所望の温度、例えば300〜500℃で脱脂を行い、その後所望の温度、例えば1200〜1700℃、特に1300〜1600℃の温度で焼成して鉛含有化合物の熱処理に用いられる部材を得ることができる。
鉛含有化合物の熱処理に用いられる部材を作製した。
出発原料として立方晶化率が0.95以上のZrOと表1記載の添加物を樹脂製ポットにIPA、φ2mmジルコニア製ボールと共に投入し、16Hr混合・粉砕した。その後、粉末を純度99.9%のアルミナ坩堝に入れ、1200℃×2Hr熱処理して合成粉末を作製した。合成粉末は、φ2mmジルコニアボールにて20Hr粉砕し、得られた粉末にパラフィンワックスを5wt%混合した後#40のナイロンメッシュを通して造粒した。造粒後30mm×20mm×2mmにプレス成型した。成形体は、400℃×2Hrで脱バインダを行い、その後、1550℃×2Hrで大気中で焼成し、ジルコニア焼結体からなる鉛含有化合物の熱処理に用いられる部材を得た。
得られた鉛含有化合物の熱処理に用いられる部材は、蛍光X線分析によって組成分析を行った。定量分析には、予めZrO、CaO、Y及びCa以外の周期律表第2a族元素酸化物及びY以外の周期律表第3a族元素酸化物を用いた検量線を作製しておき、その検量線を用いて実施した。
ジルコニア焼結体の結晶粒径は走査型電子顕微鏡(SEM)を用いて測定した。
また、下記の反応テストで使用する鉛含有化合物の熱処理に用いられる部材については、表面粗さRaが0.01〜0.05となるように表面加工を行った。
次に、作製した鉛含有化合物の熱処理に用いられる部材の評価を行った。
鉛含有化合物の原料として、純度99%以上のチタン酸ジルコン酸鉛を含有する圧電セラミックス粉末を準備した。
グリーンシートは、ジルコン酸チタン酸鉛を主成分とする圧電用のセラミック材の粉末に、水系バインダーとしてブチルメタクリレート、分散剤にポリカルポン酸アンモニウム塩、溶剤にイソプロビルアルコールと純水を各々添加して混合し、このスラリーをドクタープレード法によりキャリアフィルム上に、厚さ30μm程度のシート形状にて作製した。
また、各種の圧電用のセラミックス材の粉末を用いて同様にグリーンシートを作製した。また、内部電極ペーストを作製した。得られた内部電極ペーストを、グリーンシートの表面に厚さ4μmで印刷し、内部電極を形成した。更に、内部電極が印刷された面を上向きにしてグリーンシートの2枚の間に内部電極ペーストを印刷しないグリーンシート1枚づつ積層し、加圧プレスし、積層成形体を得た。
このようにして、厚みが45μm(No.1〜10及び14〜27)、80μm(No.12)、125μm(No.13)、300μm(No.11)の積層成形体を作製した。この積層成形体を脱脂処理した後に、積層成形体を表1に示される組成の鉛含有化合物の熱処理に用いられる部材で挟持するようにして焼成炉に配置した。これを900℃、酸素99%以上の雰囲気中で2時間保持して焼成し、圧電振動層と内部電極とからなる積層体を作製した。
これを表1に示す温度、酸素99%以上の雰囲気中で2時間保持して焼成し、圧電振動層と内部電極とからなる積層体を作製した。
焼成に使用したセッター表面のX線回折スペクトルを評価し、上記式1及び式2を用いてXcを算出した。
また、粒界析出相の有無もX線回折スペクトル及びFE−SEMによって確認した。
次いで、焼成1回、5回、10回、50回、100回及び500回行った後でそれぞれ反応層の有無を確認した。なお、反応層の有無は、鉛含有化合物と接触した鉛含有化合物の熱処理に用いられる部材の表面を走査型電子顕微鏡(SEM)及びEDSによる表面分析を行って鉛を検出し、検出された場合は×、検出されなかった場合には○として表示した。結果を表1に示す。
Figure 0004782518
本発明の試料No.1〜17は、少なくとも50回の焼成を行っても反応相を観察できず、積層成形体との反応が抑制されていた。
一方、立方晶比率Xcが0.95と0.97に満たない本発明の範囲外の試料No.18は、1回目の焼成では反応相が観察されなかったが、5回目で観察された。また、立方晶比率Xcが0.92以下と0.97に満たない本発明の範囲外の試料No.19〜21は、焼成1回目でセッター表面が部分的に反応相が観察された。さらに、粒界結晶相が検出された本発明の範囲外の試料No.22〜27は、焼成1回目でセッター表面の一部に反応相が観察された。
本発明の鉛含有化合物の熱処理に用いられる部材の組成範囲示すZrO−YO1.5−CaOの3元組成図である。 本発明の鉛含有化合物の熱処理に用いられる部材のX線回折スペクトルを示す図である。 本発明の範囲外の鉛含有化合物の熱処理に用いられる部材のX線回折スペクトルを示す図である。

Claims (4)

  1. ジルコニアを主成分、カルシアおよびイットリアを第2成分、さらにCaを除く周期律表第2a族元素およびYを除く周期律表第3a族元素の元素群のうち少なくとも1種の酸化物を第3成分として含有し、立方晶ジルコニアを主結晶相とし、ジルコニア以外の粒界結晶相を実質的に含まないジルコニア焼結体からなり、
    前記第3成分の含有量が、前記主成分と前記第2成分との合計量を100モル部としたときに、0.1〜0.35モル部であり、
    下記式1及び式2で表されるジルコニア焼結体の立方晶比率Xcが0.97以上であるとともに、
    ジルコニア、イットリアおよびカルシアのモル比による組成比が、ZrO −YO 1.5 −CaOの3元組成図における下記点のA−B−C−D点を結ぶ線分で囲まれる範囲内であることを特徴とする鉛含有化合物の熱処理に用いられる部材。
    ZrO CaO YO 1.5
    A点: 0.65 0.03 0.32
    B点: 0.61 0.07 0.32
    C点: 0.72 0.18 0.10
    D点: 0.79 0.11 0.10
    Figure 0004782518
    Figure 0004782518
  2. 前記ジルコニア焼結体の平均結晶粒子径が10〜40μmであることを特徴とする請求項1に記載の鉛含有化合物の熱処理に用いられる部材。
  3. 前記ジルコニア焼結体に含まれるジルコニア結晶中に、前記第2成分および前記第3成分が固溶限界近くまで固溶していることを特徴とする請求項1または2に記載の鉛含有化合物の熱処理に用いられる部材。
  4. 鉛含有化合物を載置するための載置面を具備し、焼成冶具として用いられることを特徴とする請求項1〜のいずれかに記載の鉛含有化合物の熱処理に用いられる部材。
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