JP4779205B2 - 燃料電池用微短検出方法 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、燃料電池、とくに固体高分子電解質型燃料電池の、単セルまたは複数セルの、アノード、カソード間の微短(電気的微量短絡またはマイクロショートともいう)の発生、または発生微短のレベルを検出する、燃料電池用微短検出方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
固体高分子電解質型燃料電池は、イオン交換膜からなる電解質膜(基本的には電気絶縁体)とこの電解質膜の一面に配置された触媒層および拡散層からなる電極(アノード、燃料極)および電解質膜の他面に配置された触媒層および拡散層からなる電極(カソード、空気極)とからなる膜−電極アッセンブリ(MEA:Membrane-Electrode Assembly )と、アノード、カソードに燃料ガス(水素)および酸化ガス(酸素、通常は空気)を供給するための流体通路を形成するセパレータとからセルを構成し、複数のセルを積層してモジュールとし、モジュールを積層してモジュール群を構成し、モジュール群のセル積層方向両端に、ターミナル、インシュレータ、エンドプレートを配置してスタックを構成し、スタックをセル積層体積層方向に延びる締結部材(たとえば、テンションプレート)にて締め付け、固定したものからなる。
固体高分子電解質型燃料電池では、アノード側では、水素を水素イオンと電子にする反応が行われ、水素イオンは電解質膜中をカソード側に移動し、カソード側では酸素と水素イオンおよび電子(隣りのMEAのアノードで生成した電子がセパレータを通してくる、または外部電気的負荷を通してくる)から水を生成する反応が行われる。
アノード側:H2 →2H+ +2e-
カソード側:2H+ +2e- +(1/2)O2 →H2
電解質膜は電気絶縁性を維持しなければならない。しかし、電極構成要素である炭素粒子のうち比較的大きな粒子が電解質膜をクリープさせてアノードとカソードとの間に微短を生じさせたり、燃料電池の使用中にガス流路配管からのイオン成分等(Feイオン、Niイオン等)が溶出して電解質膜中にブリッジを形成してアノードとカソードとの間に微短を生じさせることが起こり得るので、燃料電池は、初期品質検査や経時劣化の検査で、電解質膜の微短発生の有無や発生微短のレベル(微短抵抗の大きさ)が検出される。
従来の電解質膜の微短検出には、特開昭63−117277号公報に開示の方法や、図8に示すような4端子法(電流計(A)101と直流電源(E)102の直列回路を接続するための2つの端子104、105と電圧計(V)103を接続するための2つの端子106、107の合計4つの端子をもつ回路によってセルの微短抵抗を測定する方法)による微短抵抗測定がある。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
しかし、上記の従来方法の何れの方法も、燃料電池のセルに外部から電圧(E)を印加し、回路に流れる電流を測定して微短抵抗(=電圧÷電流)を求める方法である。その場合、抵抗値が小さい(たとえば、100オーム以下)微短の場合、検出できる電流変化を生じさせるには、セルにかける外部電圧(E)を1セル当りの理論最大電圧(=1.23V)以上に上げてセルに大きな電流を流すことが必要であり、セルに大きな電流を流すと電解質膜形成されていた微量短絡のブリッジが切れて、微短があったにもかかわらず微短無しと測定しまうので、精度の高い微短検出ができないという問題がある。また、外部電圧(E)を1セル当りの理論最大電圧(=1.23V)以上に上げて大きな電流をセルにかけると、MEAを破壊するおそれもある。
本発明の目的は、セルに大きな電流をかけることなくセルの微短を精度よく検出できる燃料電池用微短検出方法を提供することにある。
【0004】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成する本発明はつぎの通りである。
) アノードに燃料ガスを流し、カソード側は、1セル当り100mV以下にならないように制御しつつ、セルに電気的負荷をかけた場合は酸化ガスを閉塞してセル内の酸化ガスを消費するか、またはセルに電気的負荷をかけない場合は不活性ガスを流す工程と、
前記セルのアノード端子、カソード端子に外部測定回路を接続し、前記アノード端子に対し前記カソード端子の電位を120mV〜1230mVの範囲で2点以上で定電位状態に変化させ、それぞれの定電位状態で前記外部測定回路に流れる電流を測定し、定電位状態間の電流変化/電圧変化の傾きを求める工程と、
前記傾きが所定値以上の場合に前記セルに微短が生じたと判定する工程と、
からなる燃料電池用微短検出方法。
) アノードに燃料ガスを流し、カソード側は、1セル当り100mV以下にならないように制御しつつ、セルに電気的負荷をかけた場合は酸化ガスを閉塞してセル内の酸化ガスを消費するか、またはセルに電気的負荷をかけない場合は不活性ガスを流す工程と、
前記セルのアノード端子、カソード端子に外部測定回路を接続し、前記アノード端子に対し前記カソード端子の電位を120mV〜1230mVの範囲で2点以上で定電位状態に変化させ、それぞれの定電位状態で前記外部測定回路に流れる電流を測定し、定電位状態間の電流変化/電圧変化の傾きを求める工程と、
既知の抵抗の値と、該既知の抵抗を短絡抵抗にみたて該既知の抵抗を微短の無いセルに並列接続した場合の電流変化/電圧変化の傾きの値とから、検量線図をあらかじめ作成しておき、前記検量線図から前記定電位状態間の電流変化/電圧変化の傾きに対応する抵抗値を求めて微短のレベルを求める工程と、
からなる燃料電池用微短検出方法。
【0005】
上記(1)、(2)の燃料電池用微短検出方法では、外部測定回路でアノード端子に対しカソード端子の電位をセルの最大起電力以下の範囲で変位させその時に外部測定回路に流れる電流を検出するので、微短のような微量な短絡でも直接電流値として検出できる(微短があれば電流が流れ、微短がなければ電流は流れない)。この場合は、セルにかかる電圧は120mV〜1230mVの範囲であって燃料電池運転時にかかる電圧程度以下であるため、セルに微短があってもその微短に、燃料電池運転時に微短に流れる電流以上の電流は流れず、従来の電流を変えて電圧を測定する場合のようにセルに大きな電流を微短にかけることがなく、したがって大きな電流によって微短が切れる(微短を飛ばす)ことがないので、セルの微短(の有無位)を精度よく(確実に)検出できる。
上記()の燃料電池用微短検出方法では、定電位状態間の電流変化/電圧変化の傾きを求める。この傾きとセルの微短抵抗との間にはある相関関係がある。そして、該傾きが、所定値(許容微短抵抗に対応する傾き値)以上の場合にセルに微短が生じていると判定する。この方法では、上記(1)、(2)の作用に加えて、セルに発生している微短の抵抗値が、予め定めた許容微短抵抗値以上か未満かまで判定できる。
上記()の燃料電池用微短検出方法では、定電位状態間の電流変化/電圧変化の傾きを求める。この傾きとセルの微短抵抗との間にはある相関関係がある。そして、予め作成しておいた検量線図から前記傾きに対応する微短抵抗の大きさを求める。この方法では、上記(1)、(2)の作用に加えて、セルの微短発生時の微短のレベル(微短の抵抗値の大きさ)まで求める(推定する)ことができる。
【0006】
【発明の実施の形態】
以下に、本発明実施例の燃料電池用微短検出方法を、図1〜図7を参照して、説明する。
本発明実施例の燃料電池用微短検出方法が適用される燃料電池は、固体高分子電解質型燃料電池10であり、燃料電池を分解することなく組立てられたままで(オンボードで)適用される。この燃料電池10は、たとえば燃料電池自動車に搭載される。ただし、自動車以外に用いられてもよい。
【0007】
固体高分子電解質型燃料電池10は、図6、図7に示すように、イオン交換膜からなる電解質膜11(基本的には、電気絶縁体)とこの電解質膜11の一面に配置された触媒層12および拡散層13からなる電極14(アノード、燃料極)および電解質膜11の他面に配置された触媒層15および拡散層16からなる電極17(カソード、空気極)とからなる膜−電極アッセンブリ(MEA:Membrane-Electrode Assembly )と、電極14、17に燃料ガス(水素)および酸化ガス(酸素、通常は空気)を供給するための反応ガス流路27(単に、ガス流路ともいう)および燃料電池冷却用の冷媒(通常は冷却水)が流れる冷媒流路26(冷却水流路ともいう)を形成するセパレータ18とからセル30を形成し、該セル30を複数積層してモジュール19とし、モジュール19を積層してモジュール群を構成し、モジュール19群のセル積層方向両端に、ターミナル20、インシュレータ21、エンドプレート22を配置してスタック23を構成し、スタック23を積層方向に締め付けスタック23の外側で燃料電池積層体積層方向に延びる締結部材24(たとえば、テンションプレート)とボルト25で固定したものからなる。
【0008】
本発明実施例の燃料電池用微短検出方法は、図2、図3に示すように、セル30のアノード端子36(アノードに導通するセパレータ、または該セパレータに設けられた端子)、カソード端子37(カソードに導通するセパレータ、または該セパレータに設けられた端子)に外部測定回路31を接続し、外部測定回路31でアノード端子36に対しカソード端子37の電位を変位させて、望ましくはセルの最大起電力以下の範囲(120mV〜1230mVの範囲)で変位させてその時に外部測定回路31に流れる電流を測定することにより、セル30の微短を検出する方法からなる。
「1230mV以下」とする理由は、セル30に理論電圧以上の電圧をかけないようにするためであり、もしもそれ以上の電圧をかけると燃料電池運転時に存在した電解質膜中の微短を微短測定時に飛ばすおそれがあるので、それを防止するためである。セル30の発電電圧は実際には約1Vであるから、燃料電池運転時に存在した電解質膜中の微短を微短測定時に飛ばすおそれがないようにするには、1Vに対してさらにマージンを見込んで、「1230mV以下」を「900mV以下」に設定することが望ましい。
また、「120mV以上」とする理由は、たとえばセルのカソードに不活性ガスを流してセルの発電条件を止めた場合、カソードのアノードに対する電位が120mV程度で安定する(不活性ガス中に酸素等の不純物がなければさらに低下するであろう)ので、それ以上とするためである。ただし、下限に対してマージンを見込んで、「120mV以上」は「200mV以上」に設定することが望ましい。
したがって、上限、下限にマージンを見込んだ場合は、上記の「120mV〜1230mVの範囲」は、「200mV〜900mVの範囲」となる。
【0009】
外部測定回路31は単一のセル30の電解質膜両側のアノード端子36、カソード端子37に接続されてもよいし、あるいは複数セル積層体の両端のアノード端子、カソード端子に接続されてもよい。単一のセル30に接続される場合は、その単一セルの微短が検出され、複数セル積層体に接続される場合は、その複数セル積層体を構成するセルの微短抵抗の合計が検出される。
外部測定回路31は、出力電圧可変の直流電源32(出力電圧可変バッテリ)と、電流計33の直列回路からなる。出力電圧可変の直流電源32は、セルのカソード端子37のアノード端子36に対する電位を、セル当り、120mV〜1230mVの範囲で変位させることができ、上記のように上限、下限にマージンを見込む場合は、200mV〜900mVの範囲で変位させることができる。
また、本発明の方法は、従来の4端子法のように、電流を変化させてその時の電圧を測定するのではなく、外部電源32の出力電圧(セル30に外部から印加される電圧)を変化させてその時に外部測定回路31に流れる電流を測定する方法である。
【0010】
さらに詳しくは、本発明実施例の燃料電池用微短検出方法は、
図1に示すように、燃料電池のアノードに燃料ガスを流し、カソード側は、1セル当り100mV以下にならないように制御しつつ、セル30に電気的負荷34をかけた場合は酸化ガスを閉塞してセル内の酸化ガスを消費するか、またはセルに電気的負荷をかけない場合は不活性ガスを流す第1工程と、
図2に示すように、セル30のアノード端子36、カソード端子37に外部測定回路31を接続し、出力電圧可変の直流電源32の出力電圧を変えることによりアノード端子36に対しカソード端子37の電位を120mV〜1230mV(マージンを見込む場合は、200mV〜900mV)の範囲で2点以上の定電位状態に変化させ、それぞれの定電位状態で外部測定回路31に流れる電流を測定し、定電位状態間の電流変化/電圧変化の傾き(x)を求める第2工程と、
傾き(x)が所定値以上の場合にセル30に微短が生じたと判定する第3工程と、
からなる。
【0011】
第1工程は、酸化ガスが供給されるとセル30が発電体として作動して微短測定不能となるため、測定中にセル30が発電体として作動することを止める工程である。電気的負荷34がある場合は、カソードへの酸素の供給を閉塞することにより、セル内の酸素が消費されて、発電体として作動しなくなり、不活性ガスが利用できる場合はカソードに流しているエアを不活性ガスに切り替えることにより、セルは発電体として作動しなくなる。電気的負荷34がある場合は、酸化ガスの閉塞と電気的負荷34により、酸素が消費されて、セル30の端子電圧は低下していくが、100mVに近づくと電気的負荷34を絞って、または電気的負荷34を切って、1セル当り100mV以下にならないように制御しつつ、約120mV程度にする。電気的負荷34がない場合は、カソードに不活性ガスを流すが、その場合はセル30の端子電圧は低下していき、やがて約120mVで安定する。理論上は0Vまで低下する筈であるにかかわらず約120mVで安定する理由は、不活性ガス中に不純物として酸素が存在しているからであると思われる。
第1工程中に1セル当り100mV以下にならないようにするのは、100mV以下になると、測定中に外部電圧をかけた時にセル30に負の電圧がかかって水の電気分解が生じ、セルの電解質膜を壊すおそれがあるので、それを防止するためである。
第1工程における「100mV」、「120mV」は、セルのアノード端子、カソード端子間に図示略の電圧計(図2の可変電圧電源32とは別物)を接続して測定する。
【0012】
第2工程は電流測定による微短検出工程である。第2工程では、セルのアノード端子36(アノードに導通するセパレータ、または該セパレータに設けられた端子)、カソード端子37(カソードに導通するセパレータまたは該セパレータに設けられた端子)に外部接続回路31を接続し、120mV程度に低下している端子間電圧を、出力電圧可変の直流電源32の電圧を変化させることにより、カソードのアノードに対する電位を、120mV〜1230mV(マージンを見込む場合は、200mV〜900mV)の範囲で、少なくとも2点(図4の(i) (ii)、・・・の点)の定電位状態を作り、それぞれの定電位状態で外部接続回路31を流れる電流を測定する。
セル30の端子間電圧を、セル当り120mV〜1230mV(マージンを見込む場合は、200mV〜900mV)の範囲とする理由は、セル30に燃料電池運転中にかかる電圧以上の電圧をかけないようにするためであり、これによって、電解質膜に生じているかもしれない微短に大きな電流がかかって微短を破壊しないようにするためである。
各々の定電位状態の維持時間は、安定した測定値を得るために、10秒以上が望ましい。その理由は、電位を変化させると、電位、電流が大きくなってやがて安定するが、安定するのに数秒かかるので、10秒以上定電位状態に維持し、安定したところで測定して信頼度のある測定結果を得るためである。
ついで、測定点(i) (ii)、・・・間での、定電位状態間の電流変化/電圧変化の傾き(x)を次式(1)により求める。
傾き(x)=(電圧(ii)の時の電流−電圧(i) の時の電流)/(電圧(ii)−電圧(i) ) ……… (1)
この傾き(x)を求める理由は、後述するように、傾き(x)と微短抵抗との間に相関関係があるので、傾き(x)を介して測定電流を微短抵抗に関係づけるためである。
なお、微短がない場合(微短抵抗値が無限大の場合)は、定電位状態間の電流変化/電圧変化の傾き(x)は0である。
【0013】
第3工程は、微短判定工程である。第3工程では、第2工程で求めた定電位状態間の電流変化/電圧変化の傾き(x)が、所定値以上の場合に、セル30に微短が発生していると判定する。後述するように、傾き(x)と微短抵抗との間には相関関係があるので、上記の所定値は許容微短抵抗値に対応する傾き値としておく。たとえば、傾き(x)が0.09以上の時に微短抵抗が100オーム以下で、100オームを許容微短抵抗値とした場合、所定値は0.09で、傾き(x)が所定値0.09以上の時に微短が発生していると判定する。傾き(x)と微短抵抗との相関関係は、セルの形状、構造が変わると変化するので、セルの形状、構造が変わった場合には、所定値の0.09を新たに求める。
【0014】
本発明実施例の燃料電池用微短検出方法は、上記第3工程をつぎの第3’工程のように変えることにより、微短のレベルまで求めることができる燃料電池用微短検出方法(以下、微短レベル判定可能燃料電池用微短検出方法という)とすることができる。
この微短レベル判定可能燃料電池用微短検出方法は、アノードに燃料ガスを流し、カソード側は、1セル当り100mV以下にならないように制御しつつ、セル30に電気的負荷34をかけた場合は酸化ガスを閉塞してセル内の酸化ガスを消費するか、またはセルに電気的負荷をかけない場合は不活性ガスを流す第1工程と、
セル30のアノード端子、カソード端子に外部測定回路31を接続し、アノード端子に対しカソード端子の電位を120mV〜1230mV(マージンを見込む場合は、200mV〜900mV)の範囲で2点以上の定電位状態に変化させ、それぞれの定電位状態で外部測定回路31に流れる電流を測定し、電流変化/電圧変化の傾き(x)を求める第2工程と、
図3に示すように、既知の抵抗35の値と、該既知の抵抗35を短絡抵抗にみたて該既知の抵抗35をセル30に並列接続した場合の電流変化/電圧変化の傾きの値とから検量線図(図5に示した線図)をあらかじめ作成しておき、検量線図から上記第2工程の定電位状態間の電流変化/電圧変化の傾き(x)に対応する抵抗値(y)を求めて微短のレベルを求める第3’工程と、
からなる。
【0015】
第1、第2工程は、前記の第1、第2工程と同じである。
第3’工程における、あらかじめ作成する検量線図は、つぎのようにして作成される。
すなわち、抵抗値yが既知の抵抗35を短絡抵抗にみたててセル30に図3に示すように並列接続し、120mV〜1230mV(マージンを見込む場合は、200mV〜900mV)の範囲で2点以上の定電位状態に変化させてそれぞれの定電位状態での電流を測定し、電流変化/電圧変化の傾き(x)を求め、この抵抗値yと傾き値(x)に対応する点を、図5に示すように、y/xグラフ上にプロットする。これを、抵抗値yを種々に変えて複数回行い、複数の点をy/xグラフ上にプロットし、プロットした点を線で結んで検量線を得る。図5の例では、プロットした点を結んだ線(検量線)の式は、y=0.8449x-1.4812 として得られる。ただし、セル形状が異なれば、検量線の式が変わるので、セル形状が変わる毎に、検量線を作り直す。
【0016】
そして、第2工程で求めた電流変化/電圧変化の傾き(x)を図5のグラフの横軸上に入れ、その点から横軸に垂直に上方に直線を延ばし、該直線と検量線との交点から横軸に平行に直線を縦軸まで延ばして縦軸との交点のy値(抵抗値)を求めると、そのy値(抵抗値)が今測定しているセル30の微短抵抗値を示す。これによって、微短のレベル(微短抵抗の大きさ)まで測定可能となる。
なお、図5からわかるように、傾き(x)と微短抵抗との間には相関関係(検量線で示された関係)がある。第3’工程のように検量線まで求めなくても、許容微短抵抗値に対応する傾き値を求めてそれを所定値としておくことにより、第2工程で求めた傾きの値が該所定値以上であれば、微短が発生していると判定でき、その判定が前記の第3工程である。
【0017】
本発明実施例の燃料電池用微短検出方法の作用はつぎの通りである。
本発明実施例の燃料電池用微短検出方法では、カソードのアノードに対する電位を外部測定回路31で120mV〜1230mVの範囲で変化させその時に外部測定回路31に流れる電流を検出するので、微短のような微量な短絡でも直接電流値として検出できる。微短がなければ外部測定回路31に電流は流れず、微短があれば流れる。この場合、電位を120mV〜1230mVの範囲で変化させるので、従来の電流を変えて電圧を測定する場合のようにセル30に、電極間に燃料電池運転時より大きな電流をかけることがなく、したがって大きな電流によって微短が切れることがないので、セル30の微短を確実に(精度よく)検出できる。
【0018】
また、定電位状態間の電流変化/電圧変化の傾き(x)を求め、傾き(x)が、所定値(許容微短抵抗に対応する傾き値)以上の場合にセルに微短が生じたと判定するので、外部測定回路31に電流が流れる場合に、セル30に発生している微短の抵抗値が、予め定めた許容微短抵抗値以上か未満かまで判定できる。
【0019】
また、抵抗値既知の並列抵抗と電流変化/電圧変化の傾きとの関係から予め作成しておいた検量線図から、定電位状態間の電流変化/電圧変化の傾き(x)に対応する微短抵抗の大きさが求められ、微短のレベルまで求められる。
【0020】
【発明の効果】
請求項1、2の燃料電池用微短検出方法によれば、外部測定回路でアノード端子に対しカソード端子の電位を変位させ、詳しくはセルの最大起電力以下の範囲(120mV〜1230mVの範囲)で変位させその時に外部測定回路に流れる電流を検出するので、微短のような微量な短絡でも直接電流値として検出できる。また、セルにかかる電圧はセルの最大起電力以下の範囲(120mV〜1230mVの範囲)であるため、従来の電流を変えて電圧を測定する場合のようにセルに大きな電流をかけることがなく、したがって大きな電流によって微短が切れることがなく、セルの微短を精度よく検出できる。
請求項の燃料電池用微短検出方法によれば、電流変化/電圧変化の傾きを求め、該傾きが、所定値(許容微短抵抗に対応する傾き値)以上の場合にセルに微短が生じたと判定するので、請求項1、2の効果に加えて、セルに発生している微短の抵抗値が、予め定めた許容微短抵抗値以上か未満かまで判定できる。
請求項の燃料電池用微短検出方法によれば、電流変化/電圧変化の傾きを求め、予め作成しておいた検量線図から前記傾きに対応する微短抵抗の大きさを求めるので、請求項1、2の効果に加えて、セルの微短のレベルまで推定することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明実施例の燃料電池用微短検出方法の、セルの発電体としての作動を止める工程の、斜視図である。
【図2】 本発明実施例の燃料電池用微短検出方法の、セル端子間の電圧を変化させた時の電流を測定する工程の回路図である。
【図3】 本発明実施例の燃料電池用微短検出方法の、抵抗値既知の抵抗をセルに並列接続した場合における、セル端子間の電圧を変化させた時の電流を測定する工程の回路図である。
【図4】 本発明実施例の燃料電池用微短検出方法の、セル端子間の電圧を変化させた時の電流を測定する工程における、2点以上の定電位状態を作る時の電圧/時間のグラフである。
【図5】 本発明実施例の燃料電池用微短検出方法の、電流変化/電圧変化の傾きと並列抵抗との相関を示す検量線図である。
【図6】 本発明実施例の燃料電池用微短検出方法が適用される燃料電池の正面図である。
【図7】 本発明実施例の燃料電池用微短検出方法が適用される燃料電池の、一部拡大断面図である。
【図8】 従来の4端子法による燃料電池用微短検出用回路図である。
【符号の説明】
10 (固体高分子電解質型)燃料電池
11 電解質膜
12 触媒層
13 拡散層
14 電極(アノード、燃料極)
15 触媒層
16 拡散層
17 電極(カソード、空気極)
18 セパレータ
19 モジュール
20 ターミナル
21 インシュレータ
22 エンドプレート
23 スタック
24 テンションプレート
25 ボルト
26 冷媒流路
27 燃料ガス流路
28 酸化ガス流路
30 セル
31 外部測定回路
32 可変電圧計
33 電流計
34 電気的負荷
35 並列抵抗
36 アノード端子
37 カソード端子

Claims (2)

  1. アノードに燃料ガスを流し、カソード側は、1セル当り100mV以下にならないように制御しつつ、セルに電気的負荷をかけた場合は酸化ガスを閉塞してセル内の酸化ガスを消費するか、またはセルに電気的負荷をかけない場合は不活性ガスを流す工程と、
    前記セルのアノード端子、カソード端子に外部測定回路を接続し、前記アノード端子に対し前記カソード端子の電位を120mV〜1230mVの範囲で2点以上で定電位状態に変化させ、それぞれの定電位状態で前記外部測定回路に流れる電流を測定し、定電位状態間の電流変化/電圧変化の傾きを求める工程と、
    前記傾きが所定値以上の場合に前記セルに微短が生じたと判定する工程と、
    からなる燃料電池用微短検出方法。
  2. アノードに燃料ガスを流し、カソード側は、1セル当り100mV以下にならないように制御しつつ、セルに電気的負荷をかけた場合は酸化ガスを閉塞してセル内の酸化ガスを消費するか、またはセルに電気的負荷をかけない場合は不活性ガスを流す工程と、
    前記セルのアノード端子、カソード端子に外部測定回路を接続し、前記アノード端子に対し前記カソード端子の電位を120mV〜1230mVの範囲で2点以上で定電位状態に変化させ、それぞれの定電位状態で前記外部測定回路に流れる電流を測定し、定電位状態間の電流変化/電圧変化の傾きを求める工程と、
    既知の抵抗の値と、該既知の抵抗を短絡抵抗にみたて該既知の抵抗を微短の無いセルに並列接続した場合の電流変化/電圧変化の傾きの値とから、検量線図をあらかじめ作成しておき、前記検量線図から前記定電位状態間の電流変化/電圧変化の傾きに対応する抵抗値を求めて微短のレベルを求める工程と、
    からなる燃料電池用微短検出方法。
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