JP4779102B2 - 匂い提示装置および匂い提示方法 - Google Patents

匂い提示装置および匂い提示方法 Download PDF

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Description

この発明は匂い提示装置および匂い提示方法に関し、特にたとえば、人間のような生体の臭覚器に匂いを提示するような匂い場を生成する、匂い提示装置および匂い提示方法に関する。
背景技術の一例が特許文献1に開示される。この特許文献1の匂い提示装置によれば、空気砲を用いて、たとえば人間の鼻めがけて所望の匂いが提示される。
特開2004−81851号
しかし、特許文献1に開示される背景技術では、空気砲から放出された匂い粒子を含む空気(渦輪)を人間の鼻または顔に当てて、渦輪を崩壊させるようにしてあるため、人間の顔の向いている方向からしか渦輪を当てることができない。これは、空気砲から放出(射出)された渦輪はほぼ直線状に飛行(進行)し、また、決められた位置で停止することができないためである。このため、人間(鼻)の真横や後ろから空気砲を撃つことにより、匂いを提示することができないという制約があった。
また、匂い粒子を含む渦輪を顔に当てるようにしてあるため、匂いを提示される人間は匂いのみならず風を感じてしまう。つまり、匂いのみを提示することができなかった。
それゆえに、この発明の主たる目的は、新規な、匂い提示装置および匂い提示方法を提供することである。
また、この発明の他の目的は、所望の場所に局所的に匂い場を生成できる、匂い提示装置および匂い提示方法を提供することである。
請求項1の発明は、匂いを提示すべき目標位置を算出する目標位置算出手段、匂い粒子を含む渦輪を目標位置算出手段によって算出された目標位置に向けて放出する空気砲を備える匂い提示装置において、空気砲は、第1匂い粒子を含む渦輪を第1速度で目標位置に向けて放出し、続いて、第1匂い粒子または第1匂い粒子とは異なる第2匂い粒子を含む渦輪或いは渦輪を第1速度よりも速い第2速度で放出して、渦輪を目標位置で強制的に崩壊させることを特徴とすることを特徴とする、匂い提示装置である。
請求項1の発明では、匂い提示装置は、目標位置算出手段および空気砲を備える。目標位置算出手段は、たとえば3次元空間に存在する生体(人間)の臭覚器(鼻)のような目標位置(3次元位置)を算出する。ただし、厳密には、匂いを提示すべき目標位置は、鼻の位置の少し前である。空気砲は、目標位置に向けて匂い粒子を含む(匂い粒子の混入された)渦輪を放出する。この空気砲は、第1匂い粒子を含む渦輪を第1速度で目標位置に向けて放出し、続いて、第1匂い粒子または第1匂い粒子とは異なる第2匂い粒子を含む渦輪或いは渦輪を第1速度よりも速い第2速度で放出して、渦輪を目標位置で強制的に崩壊させる。つまり、匂い粒子が拡散される。
請求項1の発明によれば、目標位置で匂い粒子を含む渦輪を崩壊し、匂い粒子を拡散させるので、所望の位置に局所的に匂い場を生成することができる。
請求項2の発明は、匂いを提示すべき目標位置を算出する目標位置算出手段、および匂い粒子を含む渦輪を目標位置算出手段によって算出された目標位置に向けて放出する空気砲を備える匂い提示装置において、空気砲から放出された匂い粒子を含む渦輪を目標位置で強制的に崩壊させる別の空気砲、一方の空気砲を、当該空気砲から一度に押し出す空気量または当該空気砲から押し出す空気の速度についての第1パラメータに従って駆動し、他方の空気砲を、第1パラメータと同じ値または異なる値の第2パラメータに従って駆動する駆動手段、一方の空気砲から放出される第1渦輪の第1到達時間を当該一方の空気砲から目標位置までの距離に応じて算出するとともに、他方の空気砲から放出される第2渦輪の第2到着時間を当該他方の空気砲から目標位置までの距離に応じて算出する時間算出手段、および時間算出手段によって算出された第1到達時間と第2到達時間とを比較し、その差を無くすように、第1渦輪または第2渦輪の放出時間を調整する調整手段を備え、駆動手段は、調整手段によって調整された放出時間に従って、一方の空気砲を第1パラメータに従って駆動し、他方の空気砲を第2パラメータに従って駆動することにより、当該一方の空気砲から第1匂い粒子を含む第1渦輪を目標位置に向けて放出し、当該他方の空気砲から第1匂い粒子または第1匂い粒子とは異なる第2匂い粒子を含む第2渦輪或いは第2渦輪を目標位置に向けて放出することを特徴とする、匂い提示装置である。
請求項2の発明では、匂い提示装置は、目標位置算出手段、および空気砲を備える。目標位置算出手段は、たとえば3次元空間に存在する生体(人間)の臭覚器(鼻)のような目標位置(3次元位置)を算出する。ただし、厳密には、匂いを提示すべき目標位置は、鼻の位置の少し前である。空気砲は、目標位置に向けて匂い粒子を含む(匂い粒子の混入された)渦輪を放出する。
別の空気砲は、上記の空気砲から放出された匂い粒子を含む渦輪を目標位置で強制的に崩壊させる。駆動手段は、一方の空気砲を、当該空気砲から一度に押し出す空気量または当該空気砲から押し出す空気の速度についての第1パラメータに従って駆動し、他方の空気砲を、第1パラメータと同じ値または異なる値の第2パラメータに従って駆動する。時間算出手段は、一方の空気砲から放出される第1渦輪の第1到達時間を当該一方の空気砲から目標位置までの距離に応じて算出するとともに、他方の空気砲から放出される第2渦輪の第2到着時間を当該他方の空気砲から目標位置までの距離に応じて算出する。そして、調整手段は、時間算出手段によって算出された第1到達時間と第2到達時間とを比較し、その差を無くすように、第1渦輪または第2渦輪の放出時間を調整する。
したがって、駆動手段は、調整手段によって調整された放出時間に従って、一方の空気砲を第1パラメータに従って駆動し、他方の空気砲を第2パラメータに従って駆動することにより、当該一方の空気砲から第1匂い粒子を含む第1渦輪を目標位置に向けて放出し、当該他方の空気砲から第1匂い粒子または第1匂い粒子とは異なる第2匂い粒子を含む第2渦輪或いは第2渦輪を目標位置に向けて放出する。このため、一方の空気砲から放出された第1渦輪と、他方の空気砲から放出された第2渦輪とが目標位置で衝突し、渦輪が崩壊して、匂い粒子が拡散される。
請求項2の発明においても、請求項1の発明と同様に、所望の場所に局所的に匂い場を生成することができる。
請求項の発明は、匂いを提示すべき目標位置を算出する目標位置算出手段、および匂い粒子を含む渦輪を目標位置算出手段によって算出された目標位置に向けて放出する空気砲を備える匂い提示装置の匂い提示方法において、空気砲は、第1匂い粒子を含む渦輪を第1速度で目標位置に向けて放出し、続いて、第1匂い粒子または第1匂い粒子とは異なる第2匂い粒子を含む渦輪或いは渦輪を第1速度よりも速い第2速度で放出して、渦輪を目標位置で強制的に崩壊させることを特徴とする、匂い提示方法である。
請求項の発明においても、請求項1の発明と同様に、所望の場所に局所的に匂い場を生成することができる。
この発明の上述の目的,その他の目的,特徴および利点は、図面を参照して行う以下の実施例の詳細な説明から一層明らかとなろう。
<第1実施例>
図1を参照して、この第1実施例の匂い提示装置10は、汎用のPC或いはワークステーションのようなコンピュータ12を含む。コンピュータ12はCPU14を含み、CPU14にはメモリ16および入出力インターフェイス(以下、入出力I/F)という。)18が接続される。メモリ16は、ハードディスク、RAMのような書き換え可能な記憶媒体およびROMのような書き換え不能な記憶媒体を含む。入出力I/F18は、図示は省略するが、A/D変換器およびD/A変換器を含み、カメラ20,22、モータドライバ24,26およびバルブコントローラ32,34が接続される。
28および30は空気砲であり、モータドライバ24,26およびバルブコントローラ32,34によって、その動作が制御されるが、その詳細は後述する。
カメラ20および22は、たとえばステレオカメラを構成し、このステレオカメラによって撮影された画像(撮影画像)は、入出力I/F18(A/D変換器)でディジタルデータ(撮影画像データ)に変換された後、CPU14に与えられる。CPU14は撮影画像データをメモリ16に記憶し、画像解析処理などを施して、たとえば生体(人間)の臭覚器(鼻)の位置(3次元位置)を特定(計算)する。3次元位置の特定については後述するため、ここではその詳細な説明は省略することにする。
モータドライバ24は、CPU14から出力され入出力I/F18を介して与えられる駆動パルスに従って、各種モータを駆動するための駆動パルスを出力する。図示は省略するが、モータドライバ24は、空気砲28に連結される俯仰モータおよび旋回モータの少なくとも一方を駆動する駆動パルスを出力したり、空気砲28に設けられるシャッタを開閉するためのモータ(シャッタモータ)やクランク機構のモータ(クランクモータ)を駆動するための駆動パルスを出力したりする。モータドライバ26もまた、図示は省略するが、モータドライバ24と同様に、CPU14から出力され入出力I/F18を介して与えられる駆動パルスに従って、空気砲30に連結される俯仰モータおよび旋回モータの少なくとも一方を駆動する駆動パルスを出力したり、空気砲30に設けられるシャッタモータやクランクモータを駆動するための駆動パルスを出力したりする。
なお、各種モータとしては、ステッピングモータのようなパルスモータを用いることができる。
バルブコントローラ32は、図示は省略するが、空気砲28に設けられるバルブの電磁弁の駆動を制御する。また、バルブコントローラ34は、図示は省略するが、空気砲30に設けられるバルブの電磁弁の駆動を制御する。
図2は空気砲28(空気砲30も同じ。)の機械的な構成の一例を示す図解図である。この図2を参照して、空気砲28は、筐体40および小筒42を含み、筐体40は脚44によってターンテーブル46に支持される。図示は省略するが、筐体40と脚44との連結部、およびターンテーブル46には、それぞれ、駆動部を介してモータ(俯仰モータおよび旋回モータ)が設けられる。したがって、空気砲28の旋回(パン)および俯仰(チルト)が制御され、小筒42の放出口42aを所望の方向に向けることができる。
また、図示は省略するが、小筒42の放出口42aおよび筐体40と小筒42との連結部には、それぞれ、シャッタが設けられる。詳細な説明は省略するが、シャッタの構造およびその開閉方法としては、本件出願人が先に出願し、既に出願公開された特開2004−81851号公報に開示された構造および開閉方法を採用することができる。
さらに、筐体40には、蛇腹状の胴体40aが設けられ、この胴体40aは、クランク機構48によって急速に縮められ、小筒42側に空気を放出させる。ただし、図2では、クランク機構48が収納される直方体の筐体のみを示してある。なお、胴体40aとクランク機構48とによってポンプが構成(形成)される。図3は第1実施例のクランク機構48の一部を示す図解図である。この図3を参照して、クランク機構48では、胴体40aの一方端面(小筒42とは反対側の面)に連結され、当該胴体40aを伸縮させる円盤状の板48aが設けられる。この板48aには、その面の中心から垂直に伸びるピストン軸48bが固定される。このピストン軸48bには、クランクシャフト48cにその軸が固定的に設けられるカム48dを案内するためのガイド48eが固定される。図示は省略するが、クランクシャフト48cには、ステッピングモータのようなモータの回転軸が連結されている。したがって、モータの回転軸の回転に従ってクランクシャフト48cが回転すると、カム48dがガイド48e内を左右に移動し、このとき、ピストン軸48bがピストン運動(図3の上下方向に移動)する。つまり、板48aが胴体40a側に移動されたり、胴体40aとは反対側に移動されたりする。このため、胴体40aの容積が変化される。
なお、図示は省略するが、ピストン軸48bは軸方向(長手方向)にピストン運動する際に、その中心(軸心)がぶれないように、軸受によって支持されている。
図2に戻って、筐体40の上部には、匂い源50が備えられる。この第1実施例では、4種類の匂い粒子が用意されている。ただし、図2においては、簡単のため、各匂い粒子を収容した容器は省略してある。各容器には図示しないバルブが接続され、各バルブにはチューブ50aの一方端が接続され、チューブ50aの他方端は小筒42に接続される。したがって、上述した2つのシャッタが閉じられた状態で、つまり小筒42が密閉された状態で、バルブが開放されると、匂い粒子が小筒42の内部に充填される。なお、匂い源50には、図示しないコンプレッサが接続されており、当該コンプレッサから空気を供給することにより、匂い粒子が小筒42の内部に充填される。続いて、シャッタが開放され、胴体40aから空気が押し出されると、匂い粒子の混入した空気が放出口42aから放出(射出)される。
なお、この図2、図3に示す構成のみならず、上述した特開2004−81851号公報に開示される、匂いの選択方法も採用することができる。ただし、本件でいうバルブがその公報におけるヘッド(第1ヘッド、第2ヘッド、第3ヘッド)に相当する。
ここで、胴体40aから押し出される(排出される)空気の量(体積)は、小筒42の体積以上であり、小筒42に充填された匂い粒子はすべて排出される。したがって、或る匂い粒子の混入した空気(渦輪)を放出した直後に、異なる種類の匂い粒子を小筒42に充填した場合であっても、前回の匂い粒子と今回の匂い粒子とが混ざってしまうことがない。つまり、意図しない匂いが提示されることはない。また、一度に2種類以上の匂い粒子を小筒42に充填するようにすれば、それらが混合された匂いを提示することができる。
このような構成の匂い提示装置10は、たとえば、匂いを提示する(匂い場を生成する)部屋のような3次元空間(自由空間)に設定される。図4は匂い提示装置10を3次元空間に設置し、その状態を3次元空間の上方(真上)から見た図解図である。この図4に示すように、匂いを提示する3次元空間内に、カメラ20,22および空気砲28,30が配置される。
なお、図4では、簡単のため、コンピュータ12、モータドライバ24,26およびバルブコントローラ32,34は省略してある。
このような3次元空間内に存在する人間は、カメラ20および22によって撮影され、撮影画像に基づいて、コンピュータ12で認識される。図示等は省略するが、カメラ20および22はパンおよびチルト可能であり、カメラ20および22の位置情報(3次元位置)、パンおよびチルトのための機構の制御情報(角度)および撮影画像に基づいて、人間を認識し、さらには、人間の特定部位(この第1実施例では、鼻)の3次元位置を決定(算出)することができる。
具体的に説明すると、まず、カメラ20および22の撮影画像から背景差分法によって人間の全身画像を抽出し、抽出した全身画像から顔領域を認識する。顔領域は、全身画像の輪郭線抽出処理、輪郭線からの特徴点検出処理を経て認識される。続いて、顔領域から肌色領域を抽出し、肌色領域の中心(重心)を臭覚器(鼻)として特定する。また、コンピュータ12は、その内部のメモリ16に、カメラ20および22の設置位置(3次元位置)を記憶しており、カメラ20および22を結ぶ線(基線)も予め記憶している。カメラ20および22が撮影したときの方向に基づいて、特定した鼻の位置が基線に対してなす角度を求めることにより、カメラ20および22のそれぞれと鼻との距離および方向(角度)を算出することができる。したがって、世界座標(3次元座標)における鼻の3次元位置が検出(特定)される。ただし、人間(顔)の後方から、匂い粒子の混入された空気を放出する場合があり、また、顔(鼻)に空気(渦輪)が当たらないようにするため、厳密には、鼻の少し前の位置を、匂いを提示すべき目標位置として算出するようにしてある。
さらに、空気砲28および30のそれぞれの3次元位置も予め記憶しておくことができるため、人間の鼻の3次元位置が特定されると、空気砲28および30と鼻との距離(または、渦輪の到達時間)が決定されるとともに、鼻に対する空気砲28の向きおよび同じく鼻に対する空気砲30の向きが決定される。また、空気砲28および30の各々について、撃つタイミング(放出時間)または渦輪の飛行速度が決定される。たとえば、空気砲28と30とは同じ構成であるため、渦輪の飛行(進行)速度を同じ速度にする場合には、空気砲28から鼻までの第1距離と空気砲30から鼻までの第2距離との違いによって、異なるタイミングが決定される。一方、空気砲28および30を同じタイミングで撃つ場合には、第1距離と第2距離との違いによって、異なる速度で渦輪が飛行するように、渦輪の飛行速度が決定される。
渦輪の飛行速度は、主として、一度に空気砲28(30)から放出される(排出される)空気の量(空気の体積およびその体積速度)に応じて決定され、空気の量が多い程もしくは空気の体積速度が速い程、渦輪の飛行速度が速くなる。ここで、一度に放出される空気の量とは、図3に示す板48a(ピストン軸48b)の移動(ストローク)により、胴体40aから一度に押し出される空気の量である。したがって、板48a(ピストン軸48b)が胴体40aを一度に押し込む量(後述する「ストローク量」)が大きい程または押し込みの速度(後述する「ストローク速度」)が速い程、渦輪の飛行速度が速くなるとも言える。このことは、発明者等の実験により得られた結果であり、その内容については、電子情報通信学会の論文誌「プロジェクトション型香りディスプレイにおける渦輪速度制御の実験的考察」において、詳細に述べられている。この具体的な実験内容および実験結果については、後で詳細に説明する。
次に、空気砲28および30の各々は、算出されたタイミング(放出時間)または渦輪の飛行速度になる空気の押し出し量で、たとえば同じ種類の匂い粒子を含む空気を放出する。空気砲28および30から匂い粒子を含む空気が放出されると、当該空気は渦輪を形成し、それぞれ、人間の鼻(以下、「目標位置」という。)めがけて飛行(進行)する。そして、2つの渦輪は匂いを提示すべき目標位置で衝突し、その結果、2つの渦輪は崩壊し、匂い粒子が目標位置およびその近傍に拡散される。つまり、局所的に匂い場が生成され、人間に所望の匂いが提示される。
なお、所望の匂いは、上述の公開公報に開示された技術に従って、選択的に生成することができる。
また、この第1実施例では、空気砲28および30から同じ種類の匂い粒子を含む空気(渦輪)を放出するようにしてあるが、異なる種類の匂い粒子を含む渦輪を放出するようにしてもよい。かかる場合には、2つの渦輪の衝突により、2種類の匂い粒子が拡散し、目標位置で匂いが混合される。
さらには、1種類の匂い粒子による匂いまたは既に2種類以上の匂い粒子を混合した匂いを提示する場合には、一方の空気砲28(または30)からそのような匂い粒子を含む空気を放出し、他方の空気砲30(または28)から空気のみを放出するようにしてもよい。かかる場合にも、2つの渦輪の衝突により、一方の渦輪に含まれる匂い粒子が拡散し、目標位置で匂いが提示される。
このように、空気砲28および30(異なる放出場所)から放出された2つの渦輪を衝突させることにより、目標位置で匂いを提示するようにしてあるため、2つの渦輪を衝突させることができる範囲(空気砲の配置位置や大きさ(一度に放出する空気の量)などで決定される範囲)であれば、人間の顔(鼻)の位置や方向に拘わらず、所望の匂いを提示することができる。
これ以降では、上述した実験内容および実験結果について具体的に説明することにする。ただし、空気砲28および30は同じ構成であるため、以下においては、空気砲28と30とを区別する必要がない場合には、空気砲28についてのみ説明し、空気砲30については説明を省略することにする。
実験においては、クランクモータとして、ステッピングモータを用い、また、空気砲28の開口径すなわち放出口42aの直径は3cmとした。ステッピングモータは、1000パルスで1回転し、500パルスを与えると、ピストン軸48bのストロークが最大になる。ただし、この実施例の空気砲28では、最大のストロークは2.0cmである。ステッピングモータに与える、回転パルス量と1秒あたりに発生するパルス数とを変化させることにより、ピストン軸48bの移動量(ストローク量)と、ピストン軸48bの移動速度(ストローク速度)を制御することができる。
なお、図示は省略するが、空気砲28から放出される空気の塊(渦輪等)を可視化するために、空気砲28に煙を詰め(封入し)、また、株式会社ナックイメージテクノロジー社製のハイスピードビデオカメラ(商品名:MEMRECAMfx 6000)を用いて撮影することにより、経過時間に対する渦輪の位置(飛行距離)を計測した。
ストローク量は、ステッピングモータのパルス数で表わすと、150,200,300,400の4通りであり、それぞれのストローク量は、0.41cm,0.69cm,1.31cm,1.81cmである。また、パルス速度は、秒間10000,20000,30000,40000,50000,60000の6通りであり、このパルス速度とストローク量との組み合わせで、表1に示すように、平均のストローク速度が決定される。
Figure 0004779102
なお、詳細な説明は省略するが、パルス速度とストローク量との組み合わせによっては、渦輪が生成されない場合がある。また、ストローク量を大きくしたり、ストローク速度を大きくしたり、或いはその両方を採用したりしても、渦輪が早く遠くまで飛ぶ(飛行する)とは限らない。また、後述するように、計測した渦輪は、それぞれ、典型的な渦輪が生成(観測)された場合のものであり、計測したデータは各放出パラメータ(ストローク量とストローク速度)で渦輪を飛ばした際の一例である。
また、放出パラメータは、空気砲28が物理的に変化されない場合には、その性能(放出口42aの大きさ(開口)、ストローク速度やストローク量)で決定されるため、空気砲28固有のパラメータであると言える。
図5(A),図5(B),図6(A)および図6(B)は、渦輪が空気砲28から放出されてからの時間経過に対する飛行距離(渦輪飛行距離)について、ストローク量一定の試行毎に並べたグラフを示す。具体的には、図5(A)はストローク量が0.41cmである場合のグラフであり、図5(B)はストローク量が0.69cmである場合のグラフであり、図6(A)はストローク量が1.31cmの場合であるグラフであり、図6(B)はストローク量が1.81cmである場合のグラフである。
また、図7(A),図7(B),図8(A),図8(B),図9(A)および図9(B)は、渦輪が空気砲28から放出されてからの時間経過に対する渦輪飛行距離について、パルス速度一定の試行毎に並べたグラフを示す。具体的には、図7(A)はパルス速度が10000pulses/sである場合のグラフであり、図7(B)はパルス速度が20000pulses/sである場合のグラフであり、図8(A)はパルス速度が30000pulses/sである場合のグラフであり、図8(B)はパルス速度が40000pulses/sである場合のグラフであり、図9(A)はパルス速度が50000pulses/sである場合のグラフであり、そして、図9(B)はパルス速度が60000pulses/sである場合のグラフである。
これらのグラフ(図5−図9)から分かるように、渦輪は、放出(射出)直後では、急激に移動するが、時間が経つに連れて速度を急激に落とす。図示は省略するが、その後、渦輪は、暫く或る位置で留まるか、その形状を崩す。また、すべての試行において、渦輪は放出された後の1秒間で、それぞれの全到達距離のほぼ半分まで到達し、以後、速度を落として行くことが分かる。
また、いずれの試行においても、パルス速度が50000pulses/sである場合よりも、パルス速度が60000pulses/sである場合の方が、渦輪の飛行速度が小さかった。このことから、ストローク速度をただ大きくするだけでは、渦輪の飛行速度が大きくならないと言える。さらには、図5(A)−図6(B)のストローク量一定の場合における、パルス速度の変化に対する飛行距離の変化と、図7(A)−図9(B)のストローク速度一定の場合におけるストローク量の変化に対する飛行距離の変化とを比較すると、ストローク速度よりもストローク量の方が、渦輪の飛行速度に対する影響が大きい可能性があることを示唆していると考えられる。そこで、以下に説明するような解析を行った。
この実施例では、ストローク量およびストローク速度の2つの放出パラメータが飛行速度にどれだけ寄与するかを調べるために、各時間における渦輪の位置に関する回帰分析を行った。
この解析では、各放出パラメータの相対的な寄与が算出される。このため、まず、各経過時間において、各飛行距離を全条件の飛行距離の平均値で割り、無次元化する。また、ストローク量およびストローク速度の各放出パラメータも、飛行距離と同様に、それぞれの平均値で割って無次元化する。これにより、条件による飛行距離の相対的な倍率を保持しつつ、それぞれの条件が飛行距離に影響する感度係数(寄与率)の大きさが比較可能になる。寄与率は、数1に従って算出される。
Figure 0004779102
ここで、Ps,v(t)は時刻tにおける渦輪の飛行距離であり、sはストローク量であり、vはストローク速度,E[・]は期待値(平均値)を示す。また、係数α,β,γは、未知のパラメータである。
ただし、数1に従って算出される寄与率は、渦輪が放出されてから各経過時間までの総計の飛行距離に関する回帰分析の結果である。この結果は、図10(A)に示される。また、区間毎の飛行距離について同様の回帰分析を行った結果が図10(B)に示される。つまり、図10(A)は、経過時間毎の渦輪飛行距離に対するストローク量およびストローク速度の寄与率を示し、図10(B)は、経過時間毎の渦輪飛行速度に対するストローク量およびストローク速度の寄与率を示す。
図10(A)および図10(B)から分かるように、渦輪の放出された直後では、ストローク量およびストローク速度は、共に渦輪速度のへの影響が大きく、時間の経過に従って影響が少なくなる。また、図10(A)から分かるように、一貫して、ストローク量の寄与率が、ストローク速度の寄与率よりも大きい。しかし、図10(B)から分かるように、経過時間が0.8秒以降では、ストローク量の寄与率とストローク速度の寄与率とが入れ替わり、交差を繰り返している。
そこで、この実施例では、図10(B)に示す2つの曲線について、(1)全体として、(2)渦輪の飛行速度が速い間、(3)渦輪の飛行速度が落ちてからの各々の場合で、ストローク速度の寄与とストローク量の寄与とに差異があるか否かを、ウィルコクソンの符号順位検定を用いて検定した。
なお、ウィルコクソンの符号順位検定は、「“自然科学の統計学”東京大学教養学部統計学教室(編),東京大学出版会,pp.219-222.March.1996.」に紹介されている。
ここで、対応のある2変数の組について、母代表値に差があるか否かを検定する「符号検定」であり、2対の変数が、どの程度優れているか、または、どの程度劣っているかを量的に定義できるときに、ウィルコクソンの符号順位検定を用いることができる。
この符号検定の結果は、(1)に対しては“差がある”であり、(2)に対しても“差がある”であったが、(3)に対しては“差がない”であった。しかし、図10(B)において、経過時間が1秒以降では、寄与率のばらつきが大きいため、その符号検定の結果についての信憑性に欠ける点も否めない。
以上より、渦輪が空気砲28から放出された後、暫くの間はストローク量の大きさが速度に大きな影響を与え、その結果として、ストローク量が全体の飛行距離に大きく影響していると言える。
したがって、空気砲28および30を使用する場合には、各々の放出パラメータ(ストローク量およびストローク速度)を同じ値に設定にすると、図11(A)に示すような曲線で、空気砲28,30から放出される渦輪の飛行距離の時間変化が表わされる。ここで、たとえば、空気砲28から目標位置までの距離をdとし、空気砲30から目標位置までの距離をdとすると(図11(B)においても同じ。)、空気砲28から放出される渦輪は時間tで目標位置に到達し、空気砲30から放出される渦輪は時間tで目標位置に到達する。つまり、渦輪の到達時間の差はt−tであり、この時間差t−tだけ遅れて、空気砲30を駆動させる必要がある。つまり、渦輪の放出時間が調整される。
また、放出パラメータを異なる値に設定すると、図11(B)に示すように、放出パラメータ(パラメータAおよびパラメータB)に応じて、空気砲28から放出される渦輪の飛行距離の時間変化を示す曲線と、空気砲30から放出される渦輪の飛行距離の時間変化を示す曲線とが異なる。したがって、空気砲28では、パラメータAが設定されたときの曲線に応じて、目標位置までの距離dに対する時間tが算出される。一方、空気砲30では、パラメータBが設定されたときの曲線に応じて、目標位置までの距離dに対する時間tが算出される。かかる場合にも、渦輪の到達時間の差を算出し、時間差t−tだけ遅れて、空気砲30を駆動させる必要がある。
ただし、図11(B)に示す例では、空気砲28と30との放出パラメータは異なるため、パラメータAまたはパラメータB或いはその両方を変化させることにより、渦輪を放出するタイミング(または、渦輪が目的位置に到達する時間)を同じにすることもできる。
また、上述したように、この第1実施例では、2台の空気砲28および30を用いて、匂い(香り)場を生成し、匂いを提示するようにしてある。これは、匂いを渦輪に乗せて人間の鼻先に届け、かつ、渦輪を直接人間に当てないようにするためである。つまり、渦輪は、空気の粘性によって自然に崩壊するが、自然に崩壊する直前では、その軌道は極めて不安定であり、安定して鼻先へ匂いを提示する(届ける)のは困難だからである。
したがって、渦輪同士を衝突させることによって、渦輪全体が持つ速度を低下させると同時に、渦輪を形成しているトーラス状の高速な空気流を崩壊させ、匂い成分を拡散させる。2つの渦輪の衝突角等によって、渦輪の持つ運動量が残る場合でも、渦輪を形成する空気流は崩壊しているため、あたかも匂いが自然に流れてくる状況となるのである。人間の顔前にこの匂い場を生成すれば、人間が匂いを感じる状況として、より自然である。以下、匂い場の生成実験の内容およびその結果について説明する。
実験においては、渦輪が飛行する様子(軌道)や渦輪が崩壊する様子を観測するために、上述したように、空気砲28に煙を詰め、放出された渦輪をハイスピードカメラで撮影するようにしてある。ただし、予め渦輪が衝突可能な範囲(匂い場の生成可能領域)を設定(知る)ために、まず、渦輪の飛行距離(移動距離)を測定した。移動距離の測定では、空気砲28から水平方向に直線的に渦輪を放出し、その様子をハイスピードカメラで横から撮影した。撮影回数(渦輪の放出回数)は8回であり、100mm間隔で1500mmまでの到達時間を測定した。ただし、最大移動距離を1500mmに設定したのは、煙の濃度低下により、渦輪ないし空気流を観測することが困難になるためである。この測定結果が図12に示される。
図12は、渦輪の射出後の経過時間(ms)に対する渦輪の飛行距離すなわち移動距離(mm)を示すグラフである。この図12を参照すると、渦輪は1100mm付近までは安定して飛行していることが分かる。また、図示は省略するが、ハイスピードカメラの映像を見ると、1100mm付近を超えると、渦輪の移動方向(飛行方向)が上下にぶれることが確認された。したがって、実験環境においては、空気砲28および30の安定飛行距離は1100mm付近であり、観測可能であった1500mm程度では渦輪の軌道が不安定である。ただし、安定性を無視すれば、渦輪は1500mmより数メートル先まで到達する。
また、2台の空気砲28,30を用いて、衝突によって2つの渦輪の速度を効率よく低減させるには、当該2つの渦輪を正面衝突させるのが最適である。ただし、上述したように、この実施例では、任意の場所に匂い場を生成するようにしてあるため、常に2つの渦輪を正面衝突させるには、空気砲28および30自体を移動させる必要がある。これは、匂い提示装置10としては、現実的ではない。そこで、空気砲28および30の配置位置は固定し、その可動範囲、射程内の衝突可能範囲において、匂い場の生成可能領域を設定してある。
上述したように、渦輪を観測可能な距離は1500mm程度であるため、図13(A)に示すように、空気砲28と30との距離(水平距離)を1500mmに設定する。なお、図13(A)は実験環境(3次元空間)を上から見た状態を示す。空気砲28および30はX軸方向に直線的に配置され、その基準方向(正面)が当該X軸となす角度が±45°に傾けられる。また、上述したように、空気砲28,30は、水平方向(左右方向)に回動可能であり、その角度は正面を基準にして±45°である。したがって、空気砲28から放出される渦輪と空気砲30から放出される渦輪とが衝突する水平方向の範囲(水平衝突範囲)は、図13(A)の斜線部で示す範囲となる。
また、上述したように、空気砲28,30は、垂直方向(上下方向)に回動可能であり、その角度は正面を基準(0°)として、±30°である。したがって、空気砲28から放出される渦輪と空気砲30から放出される渦輪とが衝突する垂直方向の範囲(垂直衝突範囲)は、図13(B)の斜線部で示す範囲となる。ただし、図13(B)に示す垂直衝突範囲は、空気砲28と30との配置位置の中間地点上(図13(A)に示す一点鎖線P上)の垂直衝突範囲である。
なお、X軸方向において衝突位置を空気砲28または30に近づけると、垂直衝突範囲のうち、空気砲28または30の近傍(図13(B)の右側)では、その縦方向の範囲が狭くなる。これは、ターンテーブル46の回転により、水平方向における放出口42aの向きが変化されるが、垂直方向では、脚44の連結部で筐体40を回動させることによって、放出口42aの向きを変化させるようにしているためである。また、X軸方向において衝突位置を空気砲28または30に近づけると、図13(A)からも分かるように、垂直衝突範囲のうち、Y軸方向の範囲(図13(B)に示す左側の範囲)も狭くなる。これは、空気砲28,30から放出される渦輪の最大飛行距離に起因する。
また、図14に示すように、匂い場生成可能領域の設定範囲(厳密には、XY平面上の水平衝突範囲(Z軸方向は一定))に複数の(ここでは、4つの)目標位置を設定し、各々の位置で匂い場が生成されるか否かを観測した。ただし、上述した場合と同様に、空気砲28,30には、煙を詰めて渦輪を目標位置に向けて放出し、その様子をハイスピードカメラで撮影し、撮影した映像を目視することにより、渦輪が衝突したか否かを確認した。そして、渦輪が衝突したことによって、匂い場が生成されたと判断した。
図14を参照して分かるように、目標位置はA,B,CおよびDであり、これらの目標位置A,B,CおよびDの各々について渦輪の衝突率を計測した。ただし、目標位置A,BおよびCは、空気砲28および30からの距離が、それぞれ、1000mm,1500mm,2000mmであり、目標位置Dは、空気砲28からの距離が1500mmであり、空気砲30からの距離が1000mmである。
なお、上述したように最大移動距離が1500mmであるが、目標位置Cを設定したのは、想定範囲外(射程外)の状況を確認するためである。
また、空気砲28および30は、上述のようにして測定した移動距離(飛行距離)と経過時間(到達時間)との関係から、目標位置(A,B,C,D)までの距離における到達予想時間を算出し、その差分だけ時差をつけて放出するようにした(この実施例の時差放出アルゴリズム)。ただし、上述したように、目標位置A,B,Cでは、空気砲28および30からの距離は同じであるため、時差を設ける必要はない。
測定回数(試行回数)は、目標位置A,B,Cについては20回とし、目標位置Dについては15回とした。また、図示は省略するが、ハイスピードカメラで撮影した映像から、トーラス状の渦輪が崩壊し、渦輪を形成する空気流が消失することが観測された。
衝突率に関する評価実験の結果が表2に示される。表2では、衝突点(目標位置)に対応して、渦輪崩壊回数、接触後崩壊なし回数、接触せず回数および渦輪崩壊率が記述される。各回数は分数で表わされ、その分母が試行回数である。
Figure 0004779102
この表2から分かるように、空気砲28,30からの距離が1000mmである目標位置Aについては、渦輪崩壊率が100%である。また、空気砲28,30からの距離が1500mmである目標位置Bについては、渦輪が衝突しない事象と、渦輪同士が接触するが崩壊せず併走したり、反発したりする事象とが確認された。さらに、空気砲28,30からの距離が2000mmである目標位置Cについては、渦輪崩壊率は低下し、衝突ないし接触によって渦輪が崩壊し難くなる。
したがって、渦輪が安定して飛行する範囲内(圏内)においては、ほぼ確実に目標位置で匂い場が生成されていると言える。また、渦輪同士が接触しても崩壊しない事象は、渦輪の持つ運動エネルギが低下し、接触時に崩壊を起こすことができなきなかったことが原因で発生したと考えられる。さらに、最大飛行距離を越える射程外において、渦輪崩壊率が低下するのは、渦輪の速度低下により、周りの気流の影響を受けやすい状況になり、渦輪の飛行が不安定になり、渦輪同士が衝突ないし接触しないからであると推測される。
また、空気砲28からの距離が1500mmであり、空気砲30からの距離が1000mmである目標位置Dについては、つまり放出時間に時差がある場合については、崩壊率が100%であり、上述した時差放出アルゴリズムが正しく機能していることが推測される。
以上より、この実施例における匂い提示装置10を用いれば、空気砲28,30の可動範囲、射程範囲では、ほぼ確実に匂い場を生成することができると言える。
第1実施例によれば、2台の空気砲から放出される渦輪を目標位置で衝突させるので、目標位置に匂い場を生成することができる。つまり、局所的に所望の匂いを提示することができる。
なお、第1実施例では、同じ構成の空気砲を2台用いるようにしたが、機能(放出口の大きさ、ストローク量、ストローク速度)の異なる空気砲を用いるようにしてもよい。ただし、かかる場合には、パラメータの設定および渦輪の放出時間の調整を個々にする必要がある。また、場合によっては、渦輪の大きさに差があり過ぎると、渦輪同士が衝突したとしても、大きい方の渦輪が崩壊しないこともあり、所望の位置に匂い場を生成できない不都合も生じる。
<第2実施例>
第2実施例の匂い提示装置100は、1台の空気砲(たとえば、空気砲28)を用いて匂いを提示するようにした以外は、第1実施例の匂い提示装置10と同じであるため、重複した説明は省略することにことにする。具体的には、図15に示すように、第2実施例の匂い提示装置100は、第1実施例の匂い提示装置10からモータドライバ26、空気砲30およびバルブコントローラ34を削除したものである。
なお、図15に示す匂い提示装置100では、第1実施例の匂い提示装置10に含まれる装置(機器)と同じ装置については、同じ参照番号を付してある。
上述したように、第2実施例の匂い提示装置100では、1台の空気砲28から飛行速度の異なる2つの渦輪を連続的に放出し、当該2つの渦輪を目標位置で衝突させるようにしてある。たとえば、1番目の渦輪(説明の便宜上、「第1渦輪」という。)を目標位置に向けて第1速度で放出した後、2番目の渦輪(説明の便宜上、「第2渦輪」という。)を目標位置に向けて第1速度よりも速い第2速度で放出する。ここで、第2速度は、第1渦輪が目標位置に到達する時間よりも、タイミング(放出時間)の差に相当する時間だけ速く(時間が短く)第2渦輪が目標位置に到達するように設定される。
なお、第1実施例で述べたように、渦輪の速度は、一度に空気砲28から放出される空気の量(空気の体積またはその体積速度)に応じて変化させることができる。
また、第1渦輪および第2渦輪の両方に、同じ種類または異なる種類の匂い粒子を混入してもよく、第1渦輪および第2渦輪の一方に匂い粒子を混入し、他方に匂い粒子を混入しないようにしてもよい。このことは、第1実施例と同様である。
したがって、空気砲28から放出される渦輪の到達可能な範囲において、目標位置に匂い場を生成することができ、匂いを提示することができる。
具体的には、図16に示すように、空気砲28から第1渦輪を放出するときと、第2渦輪を放出するときとで、放出パラメータ(たとえば、パラメータ1およびパラメータ2)を変化させて、第1渦輪の第1速度と、第2渦輪の第2速度とを設定する必要がある。ただし、空気砲28は1台であり、目標位置までの距離が一定であるため、渦輪の速度を変化させるのみならず、放出時間(タイミング)を調整する必要もある。したがって、たとえば、t秒後に目標位置に匂い場を生成する場合には、第1パラメータに従って空気砲28を駆動して第1渦輪を放出し、前回空気砲28を駆動してから時間差t−tに相当する時間が経過したときに、第2パラメータに従って空気砲28を駆動して第2渦輪を放出する。
ただし、放出パラメータ(パラメータ1およびパラメータ2)は、時間差t−tが空気砲28を連射するために必要な最小の時間Δtよりも長くなるように、設定する必要がある。
第2実施例によれば、第1実施例と同様に、目標位置に匂い場を生成して、局所的に所望の匂いを提示することができる。
なお、これらの実施例では、3次元空間において、目標位置が固定的に決定される場合について説明したが、人間が当該3次元空間において移動する場合には、人間の鼻の現在位置から移動後における人間の鼻の位置(目標位置)を予測(算出)して、当該目標位置に匂い場を生成することもできる。
図1はこの発明の第1実施例の匂い提示装置の電気的な構成を示すブロック図である。 図2は図1に示す空気砲の機械的な構成を示す斜視図である。 図3は図1に示す空気砲のクランク機構を示す図解図である。 図4は図1に示す匂い提示装置を設置した3次元空間において匂いを提示する様子を説明するための図解図である。 図5は渦輪の飛行距離の時間変化の一例を示すグラフである。 図6は渦輪の飛行距離の時間変化の他の例を示すグラフである。 図7は渦輪の飛行距離の時間変化のその他の例を示すグラフである。 図8は渦輪の飛行距離の時間変化のさらに他の例を示すグラフである。 図9は渦輪の飛行距離の時間変化の他の例を示すグラフである。 図10は経過時間毎の渦輪飛行距離に対するストローク量およびストローク速度の寄与率と、経過時間毎の渦輪飛行速度に対するストローク量およびストローク速度の寄与率とを示すグラフである。 図11は放出パラメータが一定の場合における渦輪の飛行距離の時間変化と、放出パラメータが異なる場合における渦輪の飛行距離の時間変化とを示すグラフである。 図12は渦輪の飛行距離の時間変化の他の例を示すグラフである。 図13は実験環境における匂い場の生成可能範囲を示す図解である。 図14は実験において匂い場を生成する2次元位置を示す図解図である。 図15はこの発明の他の匂い提示装置の電気的な構成を示すブロック図である。 図16は放出パラメータを切り換える場合における渦輪の飛行距離の時間変化を示すグラフである。
符号の説明
10,100 …匂い提示装置
12 …コンピュータ
14 …CPU
20,22 …カメラ
28,30 …空気砲
32,34 …バルブコントローラ
40 …筐体
40a …ポンプ
42 …小筒
42a …放出口
44 …脚
46 …ターンテーブル
48 …クランク機構
48a …板
48b …ピストン軸
48c …クランクシャフト
48d …カム
48e …ガイド

Claims (3)

  1. 匂いを提示すべき目標位置を算出する目標位置算出手段、および
    匂い粒子を含む渦輪を前記目標位置算出手段によって算出された目標位置に向けて放出する空気砲を備える匂い提示装置において、
    前記空気砲は、第1匂い粒子を含む渦輪を第1速度で前記目標位置に向けて放出し、続いて、前記第1匂い粒子または前記第1匂い粒子とは異なる第2匂い粒子を含む渦輪或いは渦輪を前記第1速度よりも速い第2速度で放出して、前記渦輪を前記目標位置で強制的に崩壊させることを特徴とする、匂い提示装置。
  2. 匂いを提示すべき目標位置を算出する目標位置算出手段、および
    匂い粒子を含む渦輪を前記目標位置算出手段によって算出された目標位置に向けて放出する空気砲を備える匂い提示装置において、
    前記空気砲から放出された前記匂い粒子を含む渦輪を前記目標位置で強制的に崩壊させる別の空気砲、
    一方の前記空気砲を、当該空気砲から一度に押し出す空気量または当該空気砲から押し出す空気の速度についての第1パラメータに従って駆動し、他方の前記空気砲を、前記第1パラメータと同じ値または異なる値の第2パラメータに従って駆動する駆動手段、
    前記一方の空気砲から放出される第1渦輪の第1到達時間を当該一方の空気砲から前記目標位置までの距離に応じて算出するとともに、前記他方の空気砲から放出される第2渦輪の第2到着時間を当該他方の空気砲から前記目標位置までの距離に応じて算出する時間算出手段、および
    前記時間算出手段によって算出された第1到達時間と第2到達時間とを比較し、その差を無くすように、前記第1渦輪または前記第2渦輪の放出時間を調整する調整手段を備え、
    前記駆動手段は、前記調整手段によって調整された放出時間に従って、前記一方の空気砲を前記第1パラメータに従って駆動し、前記他方の空気砲を前記第2パラメータに従って駆動することにより、当該一方の空気砲から第1匂い粒子を含む前記第1渦輪を前記目標位置に向けて放出し、当該他方の空気砲から前記第1匂い粒子または前記第1匂い粒子とは異なる第2匂い粒子を含む前記第2渦輪或いは前記第2渦輪を前記目標位置に向けて放出することを特徴とする、匂い提示装置。
  3. 匂いを提示すべき目標位置を算出する目標位置算出手段、および
    匂い粒子を含む渦輪を前記目標位置算出手段によって算出された目標位置に向けて放出する空気砲を備える匂い提示装置の匂い提示方法において、
    前記空気砲は、第1匂い粒子を含む渦輪を第1速度で前記目標位置に向けて放出し、続いて、前記第1匂い粒子または前記第1匂い粒子とは異なる第2匂い粒子を含む渦輪或いは渦輪を前記第1速度よりも速い第2速度で放出して、前記渦輪を前記目標位置で強制的に崩壊させることを特徴とする、匂い提示方法。
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