JP2007085784A - 流体計測装置および流体計測方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】PIVによる流体計測において、特に速度ダイナミックレンジを簡素な手法で拡大することができる流体計測装置を提供する。
【解決手段】本発明に係る流体計測装置は、撮像画像p1と、p1との間にΔtの時間間隔を有する撮像画像p2と、p1との間にΔtよりも大きなΔTの時間間隔を有する撮像画像p3と、p3との間にΔtを有する撮像画像p4と、を生成する撮像装置と、p1、p2、p3、p4から流体の流速を求める解析装置とを備え、p1およびp2から算出する第1の相関関数、およびp3およびp4から算出する第2の相関関数の少なくとも一方から生成する短期間相関関数と、p1およびp3から算出する第3の相関関数、およびp2およびp4から算出する第4の相関関数の少なくとも一方から生成する長期間相関関数とを用いて粒子の変位量を算出し、前記流体の流速を求める、ことを特徴とする。
【選択図】 図1

Description

本発明は、流体計測装置および流体計測方法に係り、特に、PIVを用いた流体計測装置および流体計測方法に関する。
流体の流速(流速の大きさと方向を含む。)を計測する方法として、従来から、熱線流速計やレーザドップラ流速計を用いる計測方法が確立されている。熱線流速計やレーザドップラ流速計では、高い時間分解能で流体の流速を計測することが可能であるものの、空間内の1点或いは数点でのみ計測が可能であるという制約がある。
一方、近年、PIV(Particle Image Velocimetry)と呼ばれる流体計測技術の開発が進められてきており、有力な流体計測・解析のツールとして注目されている。
PIVによる流体計測の原理は概略次の通りである。まず、流体中にトレーサ粒子と呼ばれる微細粒子を混入させる。トレーサ粒子が混入された流体に対してパルスレーザ等の光源を用いて少なくとも2時刻(時刻tと時刻t)で瞬間的に照明する。この際、流体の3次元空間から観測対象とする2次元空間を切り取るため、シート状のレーザビーム形状を用いて照明する。トレーサ粒子からの散乱光を撮像装置によって2時刻の瞬間的な粒子画像として記録する。連続する2時刻のトレーサ粒子画像からトレーサ粒子の移動量ΔXを求め、ΔXと2時刻の時間間隔Δt(=t−t)とから流体の局所的な流速を求める。
このように、PIVではトレーサ粒子の移動を撮像装置によって2次元的に捕らえることができるため、流体の流速を2次元の分布として計測することが可能となる。この点が、空間内の1点或いは数点でのみしか計測できなかった熱線流速計やレーザドップラ流速計による従来の計測方法と大きく異なる点である。
PIVに関する、より詳細な動作原理や細部方式の分類は、例えば非特許文献1等に開示されている。
社団法人可視化情報学会、「PIVハンドブック」、森北出版株式会社、2002年7月20日
流体計測に限らず、一般に計測分野においては、対象物を計測することができる範囲、即ちダイナミックレンジが重要な評価基準となる。ダイナミックレンジが広い程、微小な量から大きな量まで所定の精度範囲で計測することが可能となる。
流体の流速計測においては、流速vの計測可能範囲(以下、速度ダイナミックレンジ(velocity dynamic range)という。)、流速vの時間変化の計測可能範囲(以下、時間ダイナミックレンジ(temporal dynamic range)という。)が重要となる。
また、PIVによる流速計測では、2次元空間の計測が可能であるため、流速vを計測することができる空間の範囲(以下、空間ダイナミックレンジ(spatial dynamic range)という。)も重要となる。
このうち、空間ダイナミックレンジは、撮像装置の画素数と検査領域(interrogation area)の画素数とによって制約される。PIVの代表的な手法である画像相関法(非特許文献 p.63−p.82参照)では、全画素領域を検査領域と呼ばれる小領域に分割し、その分割された領域内の輝度パターンを用いて類似する輝度パターンを探索し、検査領域と類似する輝度パターンとの間の変位量ΔXから流速vを算出する手法をとっている。このため、流速vは検査領域の単位で得られることになる。また、検査領域は、隣接する検査領域とオーバラップさせることが多く、例えば50%のオーバラップが多く用いられている。
例えば、撮像装置の全画素数を1024×1024ピクセルとし、検査領域の画素数を16×16ピクセルとすると、50%オーバラップの場合、検査領域の数は、128×128となる。即ち、流速vは、検査領域の位置に対応した128×128の格子状の位置に2次元分布として得られることになる。この場合、空間ダイナミックレンジは、一次元方向で見れば、1:128となる。
時間ダイナミックレンジ、即ち、流速vの時間変化の計測可能範囲は、流速vの算出周期(或いは算出周波数)で制約される。多くのPIVでは2つの画像を用いて流速vを算出しているが、この場合、撮像装置のフレーム周期Tの2倍(フレーム周波数fpsの1/2倍)が流速vの算出周期(或いは算出周波数)となる。
撮像装置のフレーム周波数は、特に産業用の撮像装置においては、近年急速に向上してきており、例えば、1024×1024ピクセルの画素数においても3000fps以上のフレーム周波数が実現可能となってきている。2つの画像から流速vを算出する場合、3000fpsの撮像装置では、毎秒1500回、流速vを算出することができる。ナイキストの条件を考慮すると、0Hzから最大750Hzまでの流速vの変動周波数(時間変化)を計測することができる。
画素数を減らせばさらにフレーム周波数を上げることが可能であり、例えば512×512ピクセルでは10kfpsのフレーム周波数も可能となってきている。このように、時間ダイナミックレンジに関しては、撮像装置の高フレーム周波数化に伴って急速に性能が向上してきており、従来の熱線流速計やレーザドップラ流速計と同等の性能が得られるようになってきている。
速度ダイナミックレンジは、流速vの算出に用いる画像間における、トレーサ粒子の計測可能変位量ΔXによって制約される。理想的な計測可能最小変位量ΔXminは、0.01ピクセル程度と言われているが、カメラの特性等を含めた現実的に実現可能なΔXminは、0.1ピクセル程度となる。
一方、計測可能な最大変位量ΔXmaxは、トレーサ粒子の3次元的な拡散等を考慮すると5乃至10ピクセル程度となる。このため、速度ダイナミックレンジは、1:100(0.1ピクセル:10ピクセル)程度に制限される。
各ダイナミックレンジの拡大のために、これまで各種の技術開発が進められてきているが、流体計測の対象範囲は、工学、理学、医学等の極めて広範囲に及んでいる。ダイナミックレンジを拡大することによって、PIVによる計測対象物や計測対象範囲も広がってくる。このため、更なるダイナミックレンジの拡大が強く要望されている。
本発明は、上記事情に鑑みてなされたもので、PIVによる流体計測において、特に速度ダイナミックレンジを簡素な手法で拡大することができる流体計測装置および流体計測方法を提供することを目的とする。
上記課題を解決するため、本発明に係る流体計測装置は、請求項1に記載したように、PIVの手法に基づく流体計測装置において、トレーサ粒子を混入させた流体に対してレーザ光を照射する光源と、前記トレーサ粒子からの反射光を撮像し、第1の撮像画像と、前記第1の撮像画像との間に第1の時間間隔を有する第2の撮像画像と、前記第1の撮像画像との間に前記第1の時間間隔よりも大きな第2の時間間隔を有する第3の撮像画像と、前記第3の撮像画像との間に前記第1の時間間隔を有する第4の撮像画像と、を生成する撮像装置と、前記第1、第2、第3および第4の撮像画像から前記流体の流速を求める解析装置と、を備え、前記解析装置は、前記第1および第2の撮像画像から算出する第1の相関関数、および前記第3および第4の撮像画像から算出する第2の相関関数の少なくとも一方から生成する短期間相関関数と、前記第1および第3の撮像画像から算出する第3の相関関数、および前記第2および第4の撮像画像から算出する第4の相関関数の少なくとも一方から生成する長期間相関関数とを用いて前記トレーサ粒子の変位量を算出し、前記流体の流速を求める、ことを特徴とする。
また、上記課題を解決するため、本発明に係る流体計測方法は、請求項3に記載したように、PIVの手法に基づく流体計測方法において、トレーサ粒子を流体に混入するステップと、前記トレーサ粒子を混入した流体に対してレーザ光を照射するステップと、前記トレーサ粒子からの反射光を撮像し、第1の撮像画像と、前記第1の撮像画像との間に第1の時間間隔を有する第2の撮像画像と、前記第1の撮像画像との間に前記第1の時間間隔よりも大きな第2の時間間隔を有する第3の撮像画像と、前記第3の撮像画像との間に前記第1の時間間隔を有する第4の撮像画像と、を生成するステップと、前記第1、第2、第3および第4の撮像画像から前記流体の流速を求める解析ステップと、を備え、前記解析ステップは、前記第1および第2の撮像画像から算出する第1の相関関数、および前記第3および第4の撮像画像から算出する第2の相関関数の少なくとも一方から生成する短期間相関関数と、前記第1および第3の撮像画像から算出する第3の相関関数、および前記第2および第4の撮像画像から算出する第4の相関関数の少なくとも一方から生成する長期間相関関数とを用いて前記トレーサ粒子の変位量を算出し、前記流体の流速を求める、ことを特徴とする。
本発明に係る流体計測装置および流体計測方法によれば、PIVによる流体計測において、特に速度ダイナミックレンジを簡素な手法で拡大することができる。
本発明に係る流体計測装置および流体計測方法の実施形態について、添付図面を参照して説明する。
(1)流体計測装置の構成
図1は、本発明の実施形態に係る流体計測装置1の構成例、および流体計測装置1を用いた流体計測概念を示す図である。
流体計測装置1は、計測対象である流体にレーザビームを照射するレーザ光源10、流体に混入されているトレーサ粒子からの反射光を撮像し、撮像画像を生成する撮像装置20、生成された撮像画像から流体の流速を解析する解析装置30を備えて構成される。
計測対象である流体には、トレーサ粒子と呼ばれる微細な粒子がトレーサ粒子混入装置200によって混入される。トレーサ粒子の種類等は本発明で特に限定するものではないが、流体の種類等に応じて適宜選択される。例えば、流体が液体の場合には、ポリスチレン等の樹脂系固体球形粒子等が用いられることが多い。また、流体が気体の場合には、例えば、水やオリーブ油等を噴霧化した微細な液滴、プラスチック製中空粒子、煙等が用いられる。
計測対象である流体は種々の形態をとり得る。図1に示した流体発生装置100は、流体計測装置1の評価用として、例えば空気にトレーサ粒子を混入させた後、ノズル101から噴出させるものである。
流体計測装置1に用いるレーザ光源10は、原理的にはCWレーザでもパルスレーザでも良いが、トレーサ粒子からの反射光の強度を十分確保する観点から、高出力が得られるパルスレーザが用いられることが多い。例えば、Nd:YAGレーザ等が用いられる。
レーザ光源10としてパルスレーザを用いる場合には、撮像装置20の撮像タイミングとレーザパルスとの間で同期をとる必要がある。このため、撮像装置20或いはレーザ光源10の一方の同期信号を他方に供給している。
なお、別途同期信号発生装置を設け、ここで生成した同期信号を撮像装置20およびレーザ光源10に供給する形態としても良い。
一般に流体は3次元空間を流れるが、撮像装置20で観測する空間は2次元である。このため、3次元の流体空間から観測対象空間としての2次元空間を切り取る必要がある。これを実現するために、レーザ光源10から放射されたレーザ光は、シリンドリカルレンズ等の光学系(図示せず)を介してシート状のレーザビームに変換される。このシート状のレーザビーム内に存在するトレーサ粒子からの反射光が撮像装置20によって撮像されることになる。
撮像装置20で撮像された撮像画像は解析装置30に送られて、ここで流体の流速分布等の解析が行われる。解析装置30のハードウェア形態は、本発明で特に限定するものではなく、例えば、汎用のコンピュータで構成される。
次に、解析装置30で行われる解析処理について説明する。最初に、本発明に係る流体解析方法との比較のため、従来から行われてきているPIVによる流速計測方法の概念について、図2を用いて説明する。
(2)PIVによる流速計測
図2(a)は、撮像装置20の撮像画像フレームとレーザ光源10から出力するレーザパルスとのタイミング関係を示す図である。
撮像画像フレームは、フレーム周期がΔT/2で更新されている。一方、レーザパルスは、偶数フレームでは撮像画像フレームの終点近傍で照射され、奇数フレームでは撮像画像フレームの始点近傍で照射される。即ち、2つのパルス(ダブルパルス)が偶数フレームと奇数フレームを跨ぐように、時間間隔Δtで連続的に照射される。
撮像装置20では、2つのパルスが照射されている瞬間だけ露光されるため、時間間隔Δt(第1の時間間隔)をもった瞬時の撮像画像p1、p2(第1の撮像画像p1および第2の撮像画像p2)が生成されることになる。
2つのパルスは奇数フレームと偶数フレームを跨いで生成されるため、この方式をフレームストラドル(frame straddle)と呼んでいる。フレームストラドル方式によれば、第1および第2の撮像画像p1、p2を撮像装置20のフレーム周期毎に生成しつつ、その時間間隔Δtを非常に小さく設定することが可能となる。
流体の流速vは、第1および第2の撮像画像p1、p2からトレーサ粒子の変位量ΔXを求め、変位量ΔXと時間間隔Δtとから算出する(v=ΔX/Δt)。したがって、時間間隔Δtが小さいほど計測可能な最大流速vmaxは大きくなり、計測できる流速の範囲は広がることになる。
なお、流速vは2つの撮像画像p1、p2を基に算出されるため、流速vの算出周期はフレーム周期の2倍のΔT(第2の時間間隔)となる。
図2(b)および(c)は、第1および第2の撮像画像p1、p2を用いてトレーサ粒子の変位量ΔXを求める方法を概念的に示したものである。
撮像装置20で生成される撮像画像の全画素数を例えば、1024×1024ピクセルとする。この全画素領域を、例えば16×16ピクセルの検査領域(interrogation area)Aに分割する。検査領域Aは、50%オーバラップで分割されることが多く、この場合は全画素領域内に128×128の検査領域Aが格子状に配置されて生成されることになる。
図2(b)はこのうち1つの検査領域Aを取り出して表示したものである。図2(b)の左図に例示したように、第1の撮像画像p1の検査領域Aには、通常、複数のトレーサ粒子が存在する。時間Δtの間に複数のトレーサ粒子は流体の流れと供に移動し、例えば、図2(b)の右図の状態となる。
第1および第2の撮像画像p1、p2からトレーサ粒子の変位量ΔX(実際には、複数のトレーサ粒子の空間平均変位量ΔXとなる)を算出する手法として、撮像画像の輝度の相互相関関数を用いる。
図2(c)は、相互相関関数の一例を示したものである。説明の便宜上、一次元の相互相関関数として例示しているが、実際には撮像画像のX方向(横方向)とY方向(縦方向)の2次元相互相関関数となる。
相互相関関数の横軸は変位量ΔXであり、複数のトレーサ粒子の空間平均変位量ΔXにおいて最も強い相関を示す。したがって、第1および第2の撮像画像p1、p2からまず相互相関関数を算出し、このピーク値を検出することで、複数のトレーサ粒子の空間平均変位量ΔXを求めることができる。
図2(c)には、相互相関関数によって計測可能な変位量ΔXの範囲(ΔminからΔmaxまで)もあわせて示している。前述したように、理想的な計測可能最小変位量ΔXminは、0.01ピクセル程度と言われているが、カメラの特性等を含めた現実的に実現可能なΔXminは、0.1ピクセル程度となる。一方、計測可能な最大変位量ΔXmaxは、トレーサ粒子の3次元的な拡散等を考慮すると10ピクセル程度となる。
流速vは、v=ΔX/Δt、で算出されるため、速度ダイナミックレンジは、vmin(=ΔXmin/Δt≒0.1ピクセル/Δt)からvmax(=ΔXmax/Δt≒10ピクセル/Δt)となる。
(3)流体計測装置1および流体計測方法
次に、本発明の実施形態に係る流体計測装置1および流体計測方法について説明する。
本発明の実施形態に係る流体計測装置1および流体計測方法のポイントは、計測可能な流速の下限値vminを低減させることによって、速度ダイナミックレンジを拡大する点にある。
図3は、流体計測装置1を用いた流体計測方法について説明する図である。
図3(a)は、撮像装置20の撮像画像フレームとレーザ光源10から出力するレーザパルスとのタイミング関係を示す図である。
撮像画像フレームとレーザパルスとのタイミング関係自体は、図2に示した従来方式と異なるところは無い。即ち、撮像装置20のフレーム周期はΔT/2で更新されている。また、レーザパルスは、偶数フレームでは撮像画像フレームの終点近傍で照射され、奇数フレームでは撮像画像フレームの始点点近傍で照射されている。その間隔Δtも図2と同様であり、基本的にはフレームストラドル方式によるダブルパルス照射を行っている。
従来方式との相違点は、従来方式が第1、第2の2つの撮像画像p1、p2を用いて流速vを算出していたのに対して、本実施形態に置いては、さらにΔT後の第3、第4の2つの撮像画像p3、p4を加えた4つの撮像画像p1、p2、p3、およびp4を用いて流速vを算出する点にある。具体的には、以下の手順によって流速vを算出する。
まず、第1および第2の撮像画像から、第1の相関関数C(Δx、Δy)を(式1)によって算出する。
Figure 2007085784
(式1)においてfは第1の撮像画像p1の画像データ(輝度データ)を表し、fは第2の撮像画像p2の画像データ(輝度データ)を表している。また、サメーションの範囲を示すIは、検査領域Aの範囲を示している。
(式1)の第1項は、第1の撮像画像を基準とした相互相関関数を表しており、第2項は、第2の撮像画像を基準とした相互相関関数を表している。
いずれか一方の相互相関関数を用いる形態も可能であるが、2つの相互相関関数を加算することによって、図4に概念的に示したように積分効果が発生し、相互相関関数の精度が向上する。なお、従来方法における相関関数(図2(c))は、第1項のみによるものである。
次に、第3および第4の撮像画像p3、p4から(式1)と同様の演算によって第2の相関関数C(Δx、Δy)を算出する。さらに、第1および第3の撮像画像p1、p3から第3の相関関数C(Δx、Δy)を算出し、第2および第4の撮像画像p2、p4から第2の相関関数C(Δx、Δy)を算出する。
次に、第1の相関関数と第2の相関関数とから、以下の(式2)によって、短期間相関関数C(Δx、Δy)を算出する。同様に、第3の相関関数と第4の相関関数とから、(式3)によって、長期間相関関数C(Δx、Δy)を算出する。
Figure 2007085784
Figure 2007085784
ここで、次の(式4)は、
Figure 2007085784
(式1)(第1の相関関数)におけるサメーションの中身を略記したものである。
また、
Figure 2007085784
(式2)は、第1項および第2項のいずれもが、時間間隔Δt(短期間)を有する撮像画像の相互相関関数となっている。これに対して、(式3)は、時間間隔ΔT(長期間:ΔT>Δt)を有する撮像画像の相互相関関数となっている。
短期間相関関数C(Δx、Δy)と長期間相関関数C(Δx、Δy)との2つの相関関数を用いる効果について図3(b)および(c)を用いて説明する。
2つの撮像画像間の変位量ΔXは、短期間相関関数C(Δx、Δy)においては、
[数6]
(式5) ΔX=Δt・v
で表される。一方、長期間相関関数C(Δx、Δy)においては、
[数7]
(式6) ΔX=ΔT・v=ρΔt・v
と表すことができる。ここで、ρ=ΔT/Δt(>1)である。(式5)及び(式6)からわかるように、同じ流速vであっても、長期間相関関数C(Δx、Δy)の方が短期間相関関数C(Δx、Δy)よりも大きな変位量ΔXとして現れてくることになる。例えば、ΔTとΔtの比を20(ρ=20)とすると、同じ流速vに対して、長期間相関関数C(Δx、Δy)の方が短期間相関関数C(Δx、Δy)に対して20倍の変位量ΔXとして現れてくることになる。
このことは、計測可能な流速の下限値vminが長期間相関関数C(Δx、Δy)においては、1/20に低減されることを意味している。
図3(b)の上段は、短期間相関関数C(Δx、Δy)を表しているが、2つの撮像画像の時間間隔はΔtであり、図2(c)に示した従来方法の相関関数と同じである。流速vslowが非常に小さく、例えば、変位量ΔXが0.01ピクセルとなるような場合では、計測可能な変位量ΔXmin(0.1ピクセル)以下であるため、正常な相関係数は算出できない。
これに対して、図3(b)の下段に示した長期間相関関数C(Δx、Δy)においては、同じ流速vslowであっても変位量ΔXとしては、20倍(ρ倍)となるため、0.2ピクセルの変位量として現れる。この値は計測可能範囲内の値であり、正常な相関係数が算出可能となる。
他方、流速が早い場合には、長期間相関関数C(Δx、Δy)では計測範囲外となる可能性があるが、短期間相関関数C(Δx、Δy)において計測可能であるため、特に問題は生じない(図3(c)参照)。
このように、短期間相関関数C(Δx、Δy)と長期間相関関数C(Δx、Δy)の2つの相関関数を用いることで、計測可能な流速の上限値vmaxを従来と同じ値に維持しつつ、下限値vminを、例えば1/20の0.005ピクセル程度にまで低減することができる。この結果、速度ダイナミックレンジは、従来の1:100程度から、1:2000程度まで拡大することが可能となる。
(式2)において、第1の相関関数と第2の相関関数とを加算している。撮像画像p1、p2で得られる流体の速度と、撮像画像p3、p4で得られる流体の速度はそれ程大きく変化するとは考えにくく、第1の相関関数と第2の相関関数とを加算することによって積分効果による検出精度の向上が期待できる。同様に、(式3)における第3の相関関数と第4の相関関数との加算によっても積分効果によって検出精度の向上が可能である。図4は、この効果を概念的に示したものである。
なお、(式2)および(式3)における加算によって検出精度は向上するが、計測可能な流速の下限値を低減する効果は、何れか一方の相関関数を用いる形態であっても実現することができる。
本実施形態に係る流速計測は、4つの時刻における撮像画像p1.p2.p3、およびp4を用いた相互相関関数から流速vを求める方法であるため、4時刻相互相関法(Quadra Cross-Correlation)と呼ぶ。
本実施形態に係る流速計測では4つの時刻から流速vを算出しているため、2つの時刻から流速vを算出する従来方法に比べると、流速の算出周期は2倍に長くなる。しかしながら、撮像画像フレーム周期自体が現状技術においても相当高速化されているため、それ程大きな支障とはならない。
(4)実施例
図5(a)は、上述した本実施形態に係る流体計測方法を用いて実際に流体の流速を計測した評価試験結果を示したものである。また、比較のため、同じ撮像画像データを用いた従来方法による計測結果も図5(b)に示した。
評価試験では、オイルミストをトレーサ粒子として空気に混入させ、開口径5mmのノズルから噴出させた平均流速約30m/sのエアージェットを計測対象の流体とした。撮像装置20として、画素数1024×1024ピクセル、フレーム周期3000fpsの高速度カメラ(型名:Photron FastCAM APX-RS)を用いた。また、レーザ光源10として、波長527nm、パルス周波数1KHz、出力10mJのダブルパルスレーザを用いた。
また、撮像画像p1とp2の間隔(p3とp4の間隔)Δtは、10μsに設定し、撮像画像p1とp3の間隔(p2とp4の間隔)ΔTは、200μsに設定して試験を行った(ρ=ΔT/Δt=20)。
流速の表示は、画像全体を格子状の領域(検査領域A)に分割し、格子点に小さな矢印を配置して表現している。流速の大きさを矢印の長さで表し、流速の方向を矢印の向きで表している。
エアージェットは、図5において下から上側に流れている。また図5の中央部が流体の主流であり、速い流速となっている。また、図5の左右の領域は流体の外縁部に相当し、遅い流速となっている。
図5(a)からわかるように、本実施形態に係る流体計測方法を用いた場合、流体の外延部の遅い流速に対しても正確に流速が計測されており、また、流体が存在しない領域と流体が存在する領域の境界も明確に識別することができる。
これに対して、従来方法を用いた図5(b)では、流体の外延部の遅い流速に対する計測誤差が大きく流体が存在しない領域と流体が存在する領域の境界が不鮮明となっている。さらに、本来流体が存在しない領域(図の左右端近傍)においても、流速の遅い流体が存在するかのような誤検出が見られる。
図5(a)と図5(b)の差異は、本実施形態に係る流体計測方法によって、計測可能流速の下限値が低減し、速度ダイナミックレンジが拡大したことに起因するものである。
以上説明したように、本実施形態に係る流体計測装置1および流体計測方法によれば、PIVによる流体計測において、計測可能流速の下限値を低減し、速度ダイナミックレンジを拡大することができる。
また、従来方法に対して得られた撮像画像の解析方法が異なるだけであり、レーザ光源や撮像装置のハードウェアやパルス諸元等は従来方法のものと何ら異ならない。このため、従来方法を用いた既存の流体計測装置が存在する場合には、軽微な変更によって速度ダイナミックレンジを拡大することができる。
なお、本発明は上記の実施形態そのままに限定されるものではなく、実施段階ではその要旨を逸脱しない範囲で構成要素を変形して具体化できる。また、上記実施形態に開示されている複数の構成要素の適宜な組み合わせにより、種々の発明を形成できる。例えば、実施形態に示される全構成要素から幾つかの構成要素を削除してもよい。さらに、異なる実施形態にわたる構成要素を適宜組み合わせても良い。
本発明に係る流体計測装置の実施形態の構成例と流速計測方法の概念を示す図。 本発明の比較例として、従来方法による流速計測の概念を説明する図。 本発明に係る流体計測方法の一実施形態の説明図。 本発明に係る流体計測方法における積分効果の概念を説明する図。 本発明に係る流体計測装置の実施形態を用いた評価試験結果の一例を示す図。
符号の説明
1 流体計測装置
10 レーザ光源
20 撮像装置
30 解析装置

Claims (4)

  1. PIVの手法に基づく流体計測装置において、
    トレーサ粒子を混入させた流体に対してレーザ光を照射する光源と、
    前記トレーサ粒子からの反射光を撮像し、第1の撮像画像と、前記第1の撮像画像との間に第1の時間間隔を有する第2の撮像画像と、前記第1の撮像画像との間に前記第1の時間間隔よりも大きな第2の時間間隔を有する第3の撮像画像と、前記第3の撮像画像との間に前記第1の時間間隔を有する第4の撮像画像と、を生成する撮像装置と、
    前記第1、第2、第3および第4の撮像画像から前記流体の流速を求める解析装置と、
    を備え、
    前記解析装置は、前記第1および第2の撮像画像から算出する第1の相関関数、および前記第3および第4の撮像画像から算出する第2の相関関数の少なくとも一方から生成する短期間相関関数と、前記第1および第3の撮像画像から算出する第3の相関関数、および前記第2および第4の撮像画像から算出する第4の相関関数の少なくとも一方から生成する長期間相関関数とを用いて前記トレーサ粒子の変位量を算出し、前記流体の流速を求める、
    ことを特徴とする流体解析装置。
  2. 前記解析装置において、
    前記第1乃至第4の相関係数は、一方の撮像画像を基準とする相関関数と他方の撮像画像を基準とする相関関数とを加算して生成し、
    前記短期間相関関数は、前記第1の相関関数と前記第2の相関関数とを加算して生成し、
    前記長期間相関関数は、前記第3の相関関数と前記第4の相関関数とを加算して生成する、
    ことを特徴とする請求項1に記載の流体解析装置。
  3. PIVの手法に基づく流体計測方法において、
    トレーサ粒子を流体に混入するステップと、
    前記トレーサ粒子を混入した流体に対してレーザ光を照射するステップと、
    前記トレーサ粒子からの反射光を撮像し、第1の撮像画像と、前記第1の撮像画像との間に第1の時間間隔を有する第2の撮像画像と、前記第1の撮像画像との間に前記第1の時間間隔よりも大きな第2の時間間隔を有する第3の撮像画像と、前記第3の撮像画像との間に前記第1の時間間隔を有する第4の撮像画像と、を生成するステップと、
    前記第1、第2、第3および第4の撮像画像から前記流体の流速を求める解析ステップと、
    を備え、
    前記解析ステップは、前記第1および第2の撮像画像から算出する第1の相関関数、および前記第3および第4の撮像画像から算出する第2の相関関数の少なくとも一方から生成する短期間相関関数と、前記第1および第3の撮像画像から算出する第3の相関関数、および前記第2および第4の撮像画像から算出する第4の相関関数の少なくとも一方から生成する長期間相関関数とを用いて前記トレーサ粒子の変位量を算出し、前記流体の流速を求める、
    ことを特徴とする流体解析方法。
  4. 前記解析ステップにおいて、
    前記第1乃至第4の相関係数は、一方の撮像画像を基準とする相関関数と他方の撮像画像を基準とする相関関数とを加算して生成し、
    前記短期間相関関数は、前記第1の相関関数と前記第2の相関関数とを加算して生成し、
    前記長期間相関関数は、前記第3の相関関数と前記第4の相関関数とを加算して生成する、
    ことを特徴とする請求項3に記載の流体解析方法。

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