以下、この発明を図示の実施の形態により詳細に説明する。以下の実施形態では、一例として、ミリ波帯の無線送信装置、無線受信装置および無線送受信システムについて説明するが、この発明の無線送信装置,無線送受信システムは、広帯域伝送が可能なマイクロ波帯またはミリ波帯の周波数帯での使用が好ましい。
(第1の実施形態)
図1に、この発明の無線送信装置の第1実施形態を示す。また、図2Aに、上記第1実施形態の無線送信装置99での入力変調信号5e(周波数fIF1e)の周波数配置を示す。また、図2Bに、上記第1実施形態の無線送信装置99の送信アンテナ4a〜4cから送信する無線信号72の周波数配置を示す。
図1に示す無線送信装置99は無線タワーをなし、放送波を直接に受信する受信アンテナ1a,1bと、この受信アンテナ1a,1bに接続されたレベル制御部5と、制御ユニット200aと、無線ユニット300を有する。
入力信号源となる直接受信用の受信アンテナ1a,1bで受信した放送波受信信号5a,5bは、それぞれ、レベル制御部5が有するブスータアンプ51,52で増幅され、所定の適当な入力レベルまでレベル制御される。さらに、レベル制御部5は合成器53を有する。この合成器53によって、受信信号5aと受信信号5bの総信号パワー比率が適当な比率(例えば1:1)に調整,合成され、図2Aに示すように、一系列の入力変調信号5e(周波数fIF1e)が形成され、制御ユニット200aに入力される。なお、この第1実施形態では、一例として、受信信号5aを地上波UHF帯信号とし、受信信号5bを衛星放送信号とした。また、ブスータアンプ51,52は、一例として、アンテナ1a,1bの周辺に取り付けられる。
また、この第1実施形態では、受信信号5aと5bとが周波数の異なる信号であるとして説明している。仮に、受信信号5aと5bとが同じ周波数帯である場合には、受信信号5a,5bのうちのいずれか一方、もしくは両方の信号5a,5bを周波数変換し、UHF帯バンドで、一系列の入力変調信号5eを生成しても構わない。
制御ユニット200aに入力された入力変調信号5eは、一定レベルまで増幅され、所望信号のみがバンドパスフィルタ202aを通過する。このバンドパスフィルタ202aを通過した所望信号は、レベル制御器を含む増幅器203によって増幅され、レベル制御されて、中間信号71sとなる。この中間信号71sは、第2の分配部を構成するN分配出力ポート(この第1実施形態ではN=3)67a,67b,67cから出力される。
すなわち、制御ユニット200aは、N分配出力ポート(この第1実施形態ではN=3)をなす3つの出力ポート67a,67b,67cを有し、この3つの出力ポート67a,67b,67cからは、バンドパスフィルタ202aで必要な側波帯が選択,通過され、増幅器203でレベル調整された後の中間信号71sが出力される。この3つの出力ポート67a,67b,67cは、それぞれ、無線ユニット300の入力ポート67aa,67bb,67ccにケーブル(図示せず)で接続されている。この各ケーブルの線路長(ケーブル長)は等しい長さになっている。これにより、各入力ポート67aa〜67ccには、同等の周波数と略同等の振幅成分を有する中間信号71sが入力され、各アップコンバータ69a〜69cに入力される。上記出力ポート67a〜67cと入力ポート67aa〜67ccとケーブルとが第2の分配部を構成している。
一方、制御ユニット200aは局部発振器をなす基準信号源210を有し、この基準信号源210は、局部発振信号(周波数fLO1)を出力する。この局部発振信号(周波数fLO1)は、減衰器やアンプ等で構成されたレベル制御器60によって所定のレベルに制御され、基準信号71cとして、N分配出力ポート(この第1実施形態ではN=3)68a,68b,68cから出力される。制御ユニット200aの基準信号源210は、無線ユニット300が有する局部発振部としての3つの同期発振器7a,7b,7cの駆動信号源となる。
すなわち、上記3つの出力ポート68a〜68cから出力された基準信号71cは、それぞれ、無線ユニット300が有する3つのアップコンバータ69a,69b,69cの入力ポート68aa,68bb,68ccに入力される。この入力ポート68aa,68bb,68ccは、それぞれ、局部発振部としての同期発振器7a,7b,7cに接続されている。よって、入力ポート68aa,68bb,68ccに入力された基準信号71cは、それぞれ、無線ユニット300が有する3つのアップコンバータ69a〜69cの3つの同期発振器7a,7b,7cに駆動信号として入力される。
ここで、制御ユニット200aの基準信号源210に接続されている出力ポート68a,68b,68cは、それぞれ、無線ユニット300の入力ポート68aa,68bb,68ccにケーブル(図示せず)で接続されている。この各ケーブルの線路長(ケーブル長)は等しい長さになっている。そして、各出力ポート68a,68b,68cからの基準信号71cは、それぞれ、同等の周波数と略同等の振幅成分となった状態で、入力ポート68aa,68bb,68ccからアップコンバータ69a,69b,69cの同期発振器7a,7b,7cへ入力される。上記出力ポート68a〜68cと入力ポート68aa〜68ccとケーブルとが第1の分配部を構成している。
このように、制御ユニット200aの各出力ポート67a〜67cから無線ユニット300の各入力ポート67aa〜67ccへ同等の周波数と略同等の振幅成分を有する中間信号71sが入力される。また、制御ユニット200aの各出力ポート68a〜68cから無線ユニット300の各入力ポート68aa〜68ccへは同等の周波数と略同等の振幅成分を有する基準信号71cが入力される。
図1に示すように、アップコンバータ69a,69b,69cは、それぞれ、送信アンテナ4a,4b,4c、周波数ミキサ301、同期発振器7a,7b,7c、フィルタ302、増幅器303および送信アンテナ4a,4b,4cを備える。そして、各アップコンバータ69a,69b,69cにおいて、各周波数ミキサ301と同期発振器7a,7b,7cとフィルタ302と増幅器303が、MIC(マイクロ波IC)やMMIC(マイクロ波モノリシックIC)技術により、製造ばらつきが小さい同等の回路で構成されていることが望ましい。この場合、各アップコンバータ69a,69b,69cでは、周波数ミキサ301の出力やその後のフィルタ302、および各アップコンバータ69a,69b,69cの出力つまり無線信号72は、周波数のみならず、振幅成分についても揃った信号となる。そして、この周波数と振幅が揃った無線信号72は、同一の形状の指向性アンテナであると共に互いに異なった方向に配置された3個のアンテナ4a,4b,4cから同時に同一周波数で放射される。
また、この第1実施形態では、アップコンバータ69a,69b,69cは、ミリ波帯アップコンバート用周波数ミキサ301として、ダイオード2個が夫々、アンチパラレル(ダイオードの電極方向が反対で、並列)に配列されたアンチパラレルダイオードペア型周波数ミキサを採用した。このアンチパラレルダイオードペア型周波数ミキサ301は、ミキサ内部でミキサ動作と同時に、入力された局部発振信号の偶高調(偶数次の高調)波を発生し、とりわけ2逓倍する機能が強い。よって、各アンチパラレルダイオードペア型周波数ミキサ301は、同期発振器7a〜7cからの出力信号(局部発振信号)を2逓倍動作する。この場合、ミキサ301が基本波ミキサ(基本波局部発振信号(周波数fLO2)を入力するタイプのミキサ)である場合に比べて、各同期発振器7a〜7cは、出力信号の周波数を1/2に低減できる。したがって、各同期発振器7a〜7cの出力信号(つまり、ミキサ301へ注入する局部発振信号)の振幅のばらつきも小さくできる。
したがって、このアンチパラレルダイオードペア型の周波数ミキサ301によりアップコンバージョンされた信号出力の周波数成分は等しくなり、振幅成分についてもばらつきも小さくなる。具体的には、基準信号源210が出力する局部発振信号の周波数fLO1と、同期発振器7a〜7cが出力する局部発振信号の周波数((1/2)×fLO2)とは、次式(1)で表される関係となる。なお、次式(1)において、Mは、2以上の整数であり、同期発振器7a〜7cの逓倍数を示す。つまり、同期発振器7a〜7cは、M逓倍(Mは2以上の整数)型の周波数マルチプライア、注入同期発振器または、位相同期発振器で構成される。
fLO1×M=(1/2)×fLO2 … (1)
したがって、送信用増幅器303が出力する送信無線信号72(周波数fRF)と入力変調信号5e(周波数fIF1e)とは、次式(2)で示されるような周波数関係となる。
fRF=fIF1e+fLO2
=fIF1e+(fLO1×2M)
=fLO1×2M+fIF1e … (2)
周波数設定の一例として、同期発振器7a〜7cを、周波数マルチプライアである5逓倍器(M=5)とし、fLO1=5.901GHz、fIF1e=450MHz〜2.1GHzとすれば、送信アンテナ4a,4b,4cから同時に出力される無線信号72の周波数fRFは、fRF=59.46GHz〜61.11GHzとなる。ここで、同期発振器7a〜7cからアンチパラレルダオードペア型周波数ミキサ301の局部発振ポートへ出力する信号の周波数は、(1/2)×fLO2であり、(1/2)×fLO2=fLO1×M=29.505GHzである。なお、この周波数ミキサ301を5逓倍器で構成する替わりに、5逓倍動作機能をもった注入同期発振器や位相同期発振器で構成しても構わない。
ここで、例えば、同期発振器7a〜7cとして、位相同期発振器を採用した場合、基準信号源210は、数10MHz程度の温度補償型の水晶発振器(TCXO)で、同期発振器7a〜7cと直接周波数同期をとることが可能になる。上記水晶発振器(TCXO)は周波数が低く安定した発振器であることから、分配接続に伴う構成が簡単であり、この発振器の出力の振幅のズレ等や、温度に対する動作安定性も向上する。
また、上記第1実施形態の無線送信装置99では、無線ユニット300の各アップコンバータ69a〜69cが出力する送信無線信号72の振幅のばらつきを小さくし安定動作させるために、制御ユニット200aの出力ポート67a,67b,67cを、それぞれ、線路長(ケーブル長)の等しいケーブルで、無線ユニット300の入力ポート67aa,67bb,67ccに接続した。しかし、出力ポート67a−入力ポート67aa間、出力ポート67b−入力ポート67bb間、および出力ポート67c−入力ポート67cc間を接続するケーブルの線路長(ケーブル長)は、夫々異なった長さとしても構わない。また、各アップコンバータ69a〜69cおよび送信アンテナ4a〜4cを異なった位置に配置しても構わない。この場合においても、送信アンテナ4a,4b,4cから送出される送信無線信号72の周波数は同一であり、この発明の主目的を満足する。但し、この場合、ケーブルの損失を補償する分だけ、同期発振器7a,7b,7cやアップコンバータ69a,69b,69cに動作余裕が存在するか、もしくは、レベル制御回路を備えればより好ましい。
(受信システム400)
次に、図3に、上記第1実施形態の無線送信装置99とで無線送受信システムを構成する受信システム400を示す。図3に示すように、この受信システム400は、3つの無線受信装置10a〜10cと、各無線受信装置10a〜10cに接続された分波器190と、各分波器190に接続されたTV受像機31を備える。
上述の如く、無線ユニット300の各送信アンテナ4a〜4cからは同一周波数の無線信号72(周波数fRF)が送信される。このため、この受信システム400の各受信装置10a,10b,10cは、無線ユニット300の各アップコンバータ69a,69b,69cからのどの無線信号72(周波数fRF)でも受信できる。また、前述の如く、無線送信装置99では、各送信アンテナ4a,4b,4cは互いに異なった角度で配置されている。よって、1つの無線送信装置99からの無線信号72は、異なった所に配置された複数(ここでは3つ)の受信装置10a〜10cで受信することが可能となる。
図3に示すように、各受信装置10a〜10cの構成は同等であり、受信アンテナ14と周波数変換受信回路11と増幅器113と局部発振器8と出力ポート500を有している。周波数変換受信回路11と局部発振器8とがダウンコンバータを構成している。
各受信装置10a〜10cの出力ポート500は分波器190に接続され、各分波器190はTV受像機31の衛星放送波用/地上波放送用チューナ30に接続されている。また、周波数変換受信回路11は増幅器110とバンドパスフィルタ111と周波数ダウンミキサ112を有する。
無線信号72は、受信アンテナ14で受信され、受信無線信号73として、増幅器110で増幅され、バンドパスフィルタ111で所望信号が通過される。一方、局部発振器8は、局部発振信号(周波数fLO3)を出力する。図4Aに、受信無線信号73と局部発振信号(周波数fLO3)の周波数配置を示す。この局部発振信号(周波数fLO3)は、周波数ダウンミキサ112の局部発振ポートに入力され、ミキサ112を駆動する。
これにより、上記所望信号は、周波数ダウンコンバートされ、元の一系列の入力変調信号5e(周波数fIF1e)を再生する。この再生された一系列の入力変調信号5e(fIF1e)は、増幅器113でレベル制御されて一系列の受信出力信号76として出力ポート500から出力される。図4Bに、一系列の受信出力信号76の周波数配置を示す。一系列の受信出力信号76は、分波器190で、受信信号(放送波信号)5aと5bに分波されてTV受像機31に入力される。
ここで、ミキサ112が基本波ミキサである場合においては、受信装置10a〜10cの局部発振器8が出力する局部発振信号の局部発振周波数fLO3と、送信装置99の基準信号源210が出力する局部発振信号の周波数fLO1と、同期発振器7a〜7cの逓倍数Mとは、次式(3)の関係となっている。
fLO3=fLO1×2M … (3)
例えば、この第1実施形態では、M=5、fLO1=5.901GHzとすると、fLO3=59.01GHzとなる。これに対して、受信装置10a〜10cにおいて、各周波数ダウンミキサ112をアンチパラレルダイオードペア型ミキサとした場合は、このミキサ112の局部発振ポートに入力する局部発振信号は、59.01GHzの2分の1の周波数(29.505GHz)でよくなる。この場合には、局部発振器8は、局部発振信号として直接59.01GHzの信号を発生することなく、29.505GHzの信号が発生すればよい。よって、受信装置10a〜10cを容易に構成することが可能となり、製造バラツキ等を小さくすることができる。
(第2の実施の形態)
次に、図5に、この発明の無線送信装置の第2実施形態を示す。また、図7Aに、この第2実施形態の無線送信装置100aでの入力変調信号5e(周波数fIF1e)の周波数配置を示す。また、図7Bに、この無線送信装置100aの制御ユニット200aが出力するIF(中間周波数)信号71aの周波数配置を示す。また、図7Cに、無線ユニット300が出力する送信無線信号72の周波数配置を示す。
図5に示す無線送信装置100aは無線タワーをなす。この第2実施形態の無線送信装置(無線タワー)100aは、放送波を直接に受信する受信アンテナ1a,1bと、この受信アンテナ1a,1bに接続されたレベル制御部5と、制御ユニット200bと、無線ユニット300を有する。この第2実施形態の無線送信装置100aは、上記第1実施形態の制御ユニット200aに替えて、制御ユニット200bを備えた点だけが、前述の第1実施形態と異なる。したがって、この第2実施形態では、前述の第1実施形態と異なる点を主に説明する。
図5に示すように、制御ユニット200bは、周波数変換部2aと基準信号源210とレベル制御器60を有する。基準信号源210は電力分配器204cを経由して、周波数変換部2aとレベル制御器60に接続されている。また、第1実施形態と同様、周波数変換部2aは、分配出力ポートをなす出力ポート67a〜67cに接続されている。また、レベル制御器60は、分配出力ポートをなす出力ポート68a〜68cに接続されている。上記周波数変換部2aは、順に接続された増幅器203aと周波数ミキサ201とバンドパスフィルタ202aと中間周波増幅器203bとを有する。
この第2実施形態では、第1実施形態と同様、レベル制御部5から制御ユニット200bに、放送波信号である一系列の入力変調信号5eが入力される。この入力変調信号5eは、増幅器203aによって、一定レベルまで増幅され、周波数ミキサ201に入力される。この周波数ミキサ201では、基準信号源210から電力分配器204cを経由して入力される局部発振信号(周波数fLO1)を用いて、入力変調信号5eを周波数変換して、バンドパスフィルタ202aに入力する。このバンドパスフィルタ202aでは、周波数変換された入力変調信号5eの所望信号のみを通過させる。この所望信号は、中間周波数増幅器203bにより増幅されレベル制御されて、中間周波数(IF)信号71aとなる。
この制御ユニット200bが有する局部発振器である基準信号源210は、局部発振信号(周波数fLO1)を出力する。この局部発振信号(周波数fLO1)は、電力分配器204cに入力され、2分配される。分配された一方の局部発振信号(周波数fLO1)は、上述の如く、周波数ミキサ201に入力される。また、分配された他方の局部発振信号は、減衰器やアンプ等で構成されたレベル制御器60によって所定のレベルに制御され、基準信号71cとして、N分配出力ポート(この実施形態ではN=3)68a,68b,68cから出力される。この基準信号71cは、無線ユニット300が有する局部発振部としての3つの同期発振器7a,7b,7cの駆動信号となる。上記出力ポート68a〜68cと電力分配器204cと後述する入力ポート68aa〜68ccとが第1の分配器を構成している。
一方、周波数変換部2aでは、上述のごとく、入力変調信号5eは増幅器203a、周波数ミキサ201を経て、バンドパスフィルタ202aで必要な側波帯が選択,通過され、増幅器203bでレベル調整された後、中間周波数(IF)信号71aとして、N分配出力ポート(この実施形態ではN=3)をなす3つの出力ポート67a,67b,67cから出力される。
この3つの出力ポート67a,67b,67cは、それぞれ、無線ユニット300の入力ポート67aa,67bb,67ccにケーブル(図示せず)で接続されている。この各ケーブルの線路長(ケーブル長)は等しい長さになっている。これにより、各入力ポート67aa〜67ccには、同等の周波数と略同等の振幅成分を有する中間周波数信号71aが入力され、各アップコンバータ69a〜69cに入力される。上記出力ポート67a〜67cと入力ポート67aa〜67ccとケーブルとが第2の分配器を構成している。
第1実施形態と同様に、無線ユニット300が有するアップコンバータ69a,69b,69cの入力ポート67aa,67bb,67ccへは、同一周波数の中間周波数信号71aが入力される。一方、アップコンバータ69a,69b,69cの同期発振器7a,7b,7cの入力ポート68aa,68bb,68ccには、同一周波数の基準信号71cが入力される。
ここで、各アップコンバータ69a,69b,69cを構成する周波数ミキサ301、同期発振器7a〜7c、フィルタ302、および増幅器303が、MIC(マイクロ波IC)やMMIC(マイクロ波モノリシックIC)技術により、製造ばらつきが小さく同等の回路で構成されていることが望ましい。この場合、各アップコンバータ69a,69b,69cでは、周波数ミキサ301の出力やその後のフィルタ302、および各アップコンバータ69a,69b,69cの出力つまり無線信号72は、周波数のみならず、振幅成分についても揃った信号となる。そして、この周波数と振幅が揃った無線信号72は、同一の形状の指向性アンテナであると共に互いに異なった方向に配置された3個のアンテナ4a,4b,4cから同時に同一周波数で放射される。
また、この実施形態では、アップコンバータ69a,69b,69cは、ミリ波帯アップコンバート用周波数ミキサ301として、ダイオード2個が夫々、アンチパラレル(ダイオードの電極方向が反対で、並列)に配列されたアンチパラレルダイオードペア型周波数ミキサを採用した。このアンチパラレルダイオードペア型周波数ミキサ301は、ミキサ内部でミキサ動作と同時に、入力された局部発振信号の偶高調(偶数次の高調)波を発生し、とりわけ2逓倍する機能が強い。よって、各アンチパラレルダイオードペア型周波数ミキサ301は、同期発振器7a〜7cからの出力信号(局部発振信号)を2逓倍動作する。この場合、ミキサ301が基本波ミキサ(基本波局部発振信号(周波数fLO2)を入力するタイプのミキサ)である場合に比べて、各同期発振器7a〜7cは、出力信号の周波数を1/2に低減できる。したがって、各同期発振器7a〜7cの出力信号(つまり、ミキサ301へ注入する局部発振信号)の振幅のばらつきも小さくできる。
したがって、このアンチパラレルダイオードペア型の周波数ミキサ301によりアップコンバージョンされた信号出力の周波数成分は等しくなり、振幅成分についてもばらつきも小さくなる。具体的には、基準信号源210が出力する局部発振信号の周波数fLO1と、同期発振器7a〜7cが出力する局部発振信号の周波数((1/2)×fLO2)とは、次式(4)で表される関係となる。なお、次式(4)において、Mは、2以上の整数であり、同期発振器7a〜7cの逓倍数を示す。つまり、同期発振器7a〜7cは、M逓倍(Mは2以上の整数)型の周波数マルチプライア、注入同期発振器または、位相同期発振器で構成される。
fLO1×M=(1/2)×fLO2 … (4)
したがって、送信用増幅器303が出力する送信無線信号72(周波数fRF)と入力変調信号5e(周波数fIF1e)とは、次式(5)で示されるような周波数関係となる。
fRF=(fLO1−fIF1e)+fLO2
=(fLO1−fIF1e)+(fLO1×2M)
=fLO1(1+2M)−fIF1e … (5)
周波数設定の一例として、同期発振器7a〜7cを、周波数マルチプライアである5逓倍器(M=5)とし、fLO1=5.59GHz、fIF1e=450MHz〜2.1GHzとすれば、送信アンテナ4a,4b,4cから同時に出力される無線信号72の周波数fRFは、fRF=59.39GHz〜61.04GHzとなる。ここで、同期発振器7a〜7cからアンチパラレルダオードペア型周波数ミキサ301の局部発振ポートへ出力する信号の周波数は、(1/2)×fLO2であり、(1/2)×fLO2=fLO1×M=27.95GHzである。なお、この周波数ミキサ301を5逓倍器で構成する替わりに、5逓倍動作機能をもった注入同期発振器や位相同期発振器で構成しても構わない。
(受信システム400)
次に、図8に、上記実施形態の無線送信装置100aとで無線送受信システムを構成する受信システム400を示す。この受信システム400は、前述の第1実施形態で説明した図3に示す受信システム400と同じ構成である。
図8に示すように、この受信システム400は、3つの受信装置10a〜10cと、各受信装置10a〜10cに接続された分波器190と、各分波器190に接続されたTV受像機31を備える。
上述の如く、無線ユニット300の各送信アンテナ4a〜4cからは同一周波数の無線信号72(周波数fRF)が送信される。このため、この受信システム400の各受信装置10a,10b,10cは、無線ユニット300の各アップコンバータ69a,69b,69cからのどの無線信号72(周波数fRF)でも受信できる。また、前述の如く、無線送信装置100aでは、各送信アンテナ4a,4b,4cは互いに異なった角度で配置されている。よって、1つの無線送信装置100aからの無線信号72は、異なった所に配置された複数(ここでは3つ)の受信装置10a〜10cで受信することが可能となる。
図8に示すように、各受信装置10a〜10cの構成は同等であり、受信アンテナ14と周波数変換受信回路11と増幅器113と局部発振器8と出力ポート500を有している。各受信装置10a〜10cの出力ポート500は分波器190に接続され、各分波器190はTV受像機31の衛星放送波用/地上波放送用チューナ30に接続されている。また、周波数変換受信回路11は増幅器110とバンドパスフィルタ111と周波数ダウンミキサ112を有する。
無線信号72は、受信アンテナ14で受信され、受信無線信号73として、増幅器110で増幅され、バンドパスフィルタ111で所望信号が通過される。一方、局部発振器8は、局部発振信号(周波数fLO3)を出力する。図9Aに、受信無線信号73と局部発振信号(周波数fLO3)の周波数配置を示す。この局部発振信号(周波数fLO3)は、周波数ダウンミキサ112の局部発振ポートに入力され、ミキサ112を駆動する。
これにより、上記所望信号は、周波数ダウンコンバートされ、元の一系列の入力変調信号5e(周波数fIF1e)を再生する。この再生された一系列の入力変調信号5e(fIF1e)は、増幅器113でレベル制御されて一系列の受信出力信号76として出力ポート500から出力される。図9Bに、一系列の受信出力信号76の周波数配置を示す。一系列の受信出力信号76は、分波器190で、受信信号(放送波信号)5aと5bに分波されてTV受像機31に入力される。
ここで、ミキサ112が基本波ミキサである場合においては、受信装置10a〜10cの局部発振器8が出力する局部発振信号の局部発振周波数fLO3と、送信装置100aの基準信号源210が出力する局部発振信号の周波数fLO1と、同期発振器7a〜7cの逓倍数Mとは、次式(6)の関係となっている。
fLO3=fLO1(1+2M) … (6)
例えば、この実施形態では、M=5、fLO1=5.59GHzとすると、fLO3=61.49GHzとなる。これに対して、受信装置10a〜10cにおいて、各周波数ダウンミキサ112をアンチパラレルダイオードペア型ミキサとした場合は、このミキサ112の局部発振ポートに入力する局部発振信号は、61.49GHzの2分の1の周波数(30.745GHz)でよくなる。この場合には、局部発振器8は、局部発振信号として直接61.49GHzの信号を発生することなく、30.745GHzの信号が発生すればよい。よって、受信装置10a〜10cを容易に構成することが可能となり、製造バラツキ等を小さくすることができる。
次に、図6に、図5に示した無線送信装置100aの変形例としての無線送信装置100bを示す。この無線送信装置100bは、図5の制御ユニット200bに替えて、図6の制御ユニット200cを備えた点だけが、前述の無線送信装置100aと異なる。図6に示すように、制御ユニット200cは、電力分配器204cと周波数ミキサ201との間に同期発振器17が接続された点だけが、前述の制御ユニット200bと異なる。
この同期発振器17は、逓倍動作機能をもった周波数マルチプライアや注入同期発振器や位相同期発振器で構成される。一例として、この同期発振器17および、同期発振器7a〜7cとして、位相同期発振器を採用することによって、基準信号源210は、数10MHz程度の温度補償型の水晶発振器(TCXO)で、同期発振器17および同期発振器7a〜7cと直接周波数同期をとることが可能になる。上記水晶発振器(TCXO)は周波数が低く安定した発振器であることから、分配接続に伴う構成が簡単であり、この発振器の出力の振幅のズレ等や、温度に対する動作安定性も向上する。
また、この第2実施形態の無線送信装置100aでは、無線ユニット300の各アップコンバータ69a〜69cが出力する送信無線信号72の振幅のばらつきを小さくし安定動作させるために、制御ユニット200bの出力ポート67a,67b,67cを、それぞれ、線路長(ケーブル長)の等しいケーブルで、無線ユニット300の入力ポート67aa,67bb,67ccに接続した。しかし、出力ポート67a−入力ポート67aa間、出力ポート67b−入力ポート67bb間、および出力ポート67c−入力ポート67cc間を接続するケーブルの線路長(ケーブル長)は、夫々異なった長さとしても構わない。また、各アップコンバータ69a〜69cおよび送信アンテナ4a〜4cを異なった位置に配置しても構わない。この場合においても、送信アンテナ4a,4b,4cから送出される送信無線信号72の周波数は同一であり、この発明の主目的を満足する。但し、この場合、ケーブルの損失を補償する分だけ、同期発振器7a,7b,7cやアップコンバータ69a,69b,69cに動作余裕が存在するか、もしくは、レベル制御回路を備えるようにすればより好ましい。
(第3の実施の形態)
次に、図10に、この発明の無線送信装置の第3実施形態を示す。この第3実施形態の無線送信装置101aは、図5の制御ユニット200bに替えて、制御ユニット201aを備えた点だけが、前述の第1実施形態の無線送信装置100aと異なる。よって、この第3実施形態は、前述の第1実施形態と異なる点について主に説明する。
図12Aに、この無線送信装置101aの制御ユニット201aへ入力される一系列の入力変調信号5e(周波数fIF1e)の周波数配置を示す。また、図12Bに、制御ユニット201aが出力する中間周波数(IF)多重信号71dの周波数配置を示す。また、図12Cに、この無線送信装置101aの無線ユニット300が送信アンテナ4a〜4cから出力する無線多重信号72dの周波数配置を示す。
この無線送信装置101aは、レベル制御部5と制御ユニット201aと無線ユニット300とを備える。このレベル制御部5と無線ユニット300とは、前述の第2実施形態と同様の構成である。また、制御ユニット201aは、基準信号付加部としての基準信号付加回路2dを有する点が、前述の第2実施形態の制御ユニット200bと異なる。一方、制御ユニット201aは、周波数変換部2aと基準信号源210とレベル制御部60を備える。この制御ユニット201aの周波数変換部2aと基準信号源210とレベル制御部60は、前述の第2実施形態の制御ユニット200bのものと同様である。
上記基準信号付加回路2dは、図10に示すように、基準信号源210と周波数ミキサ201との間に接続された電力分配器204bと、周波数変換部2aと出力ポート67a〜67cとの間に接続された電力合成器204aと、この電力合成器204aと電力分配器204bとの間に接続されたレベル調整器95とを備える。
制御ユニット201aに入力された一系列の入力変調信号(放送波信号)5eは、増幅器203aによって所定のレベルまで増幅されてから、周波数ミキサ201に入力される。この周波数ミキサ201では、入力変調信号(放送波信号)5eは、基準信号源210から電力分配器204bを経由して入力された局部発振信号(周波数fLO1)を用いて周波数変換される。この周波数変換された入力変調信号5eは、バンドパスフィルタ202aで所望信号のみが通過させられる。この後、この所望信号は、中間周波数増幅器203bに入力され、この中間周波数増幅器203bにより、増幅されレベル制御されて、中間周波数信号71aとして、周波数変換部2aから出力される。
この第3実施形態では、局部発振器としての基準信号源210は基準信号(周波数fLO1)を出力し、この基準信号(周波数fLO1)は、前述の第1実施形態と同様、電力分配器204bを経由して周波数ミキサ201へ入力される局部発振信号となる。さらに、この基準信号(周波数fLO1)は、前述の第1実施形態と同様、レベル制御部60と出力ポート68a〜68cを経由して無線ユニット300に入力されて、無線ユニット300において局部発振器として動作する同期発振器7a,7b,7cの駆動信号となる。さらにまた、この基準信号(周波数fLO1)は、電力分配器204bとレベル調整器95を経由して、基準信号71cとして電力合成器204aに入力される。この電力合成器204aにより、基準信号71c(周波数fLO1)は、周波数変換部2aが出力する中間周波数信号71aに付加される。この基準信号71c(周波数fLO1)が付加された中間周波数信号71aは、図12Bに示すように、中間周波数(IF)多重信号71dとなり、電力合成器204aから出力ポート67a〜67cへ出力される。
このように、周波数がfLO1である基準信号71cは、電力分配器204bに入力されて、3分配される。分配された一方の基準信号71cは、減衰器やアンプ等を有するレベル制御部60でレベル制御され、基準信号71mとして、N分配出力ポート(この実施形態ではN=3)をなす出力ポート68a,68b,68cから出力される。この出力ポート68a,68b,68cから出力された基準信号71mは、無線ユニット300側で、周波数マルチプライをなすアップコンバータ69a〜69cの各入力ポート68aa,68bb,68ccに入力される。ここで、出力ポート68aと入力ポート68aaとの間を接続するケーブルと、出力ポート68bと入力ポート68bbとの間を接続するケーブルと、出力ポート68cと入力ポート68ccとの間を接続するケーブルとは、線路長(ケーブル長)が略等しい長さとなっている。これにより、各入力ポート68a〜68cに入力される基準信号71mは、周波数が等しく、振幅が略同等となり、各アップコンバータ69a,69b,69cの局部発振信号源である同期発振器7a,7b,7cの入力信号源となる。
一方、電力分配器204bで、3分配された信号の残り2つの信号は、前述の如く、周波数ミキサ201の局部発振信号(fLO1)と、周波数ミキサ201で周波数変換された所望の中間周波数信号71aに付加されてIF多重信号71dを構成する基準信号71cとなる。
こうして、周波数ミキサ201から出力される中間周波数信号71aは、バンドパスフィルタ202aで必要な側波帯が選択され、増幅器203でレベル調整された後、電力合成器204aにより、基準信号(局部発振信号)71c(周波数fLO1)が付加され、中間周波数(IF)多重信号71dとなる。
ここで、この基準信号71cはレベル調整器95によりレベル調整されて中間周波数(IF)信号71aに付加される。これにより、中間周波数信号71aの総電力はレベル調整器203a,203bにより、基準信号71cの電力はレベル調整器95により、夫々適当なパワーとパワー比率に設定される。これにより、この実施形態では、中間周波数(IF)多重信号71dにおける中間周波数信号71aと基準信号71cとのパワー比率は、たとえば、パワー比率1:1となる。
この基準信号(周波数fLO1)が付加されたIF多重信号71dは、N分配出力ポート(この実施形態ではN=3)67a,67b,67cから出力され、無線ユニット300側で、各アップコンバータ69a,69b,69cの各入力ポート67aa,67bb,67ccに入力される。ここで、出力ポート67aと入力ポート67aaとを接続するケーブル、出力ポート67bと入力ポート67bbを接続するケーブル、出力ポート67cと入力ポート67ccとを接続するケーブルは、線路長(ケーブル長)を略等しい長さとしている。したがって、各入力ポート67aa,67bb,67ccに入力される中間周波数信号71aは、それぞれ、周波数が等しく、振幅が略同等になる。したがって、無線ユニット300の各入力ポート67aa,67bb,67ccから各アップコンバータ69a,69b,69cに入力される中間周波数多重信号71dは、振幅,周波数に関し略同等の信号となる。
ここで、各アップコンバータ69a,69b,69cが、MIC(マイクロ波IC)やMMIC(マイクロ波モノリシックIC)技術により、製造ばらつきが極めて小さく同等の回路で構成されていることが望ましい。この場合、各周波数ミキサ301、同期発振器7a〜7c、フィルタ302、および増幅器303の出力、つまり各送信アンテナ4a,4b,4cへの入力される無線信号の周波数は、略同一周波数となる。この結果、送信アンテナ4a,4b,4からは同一周波数の無線信号が、無線多重信号72dとして出力される。この第3実施形態では、周波数ミキサ301としては、一例として、アンチパラレルダイオードペア型ミキサを採用した。また、送信アンテナ4a,4b,4cは指向性アンテナとして、この3個のアンテナ4a〜4cを異なった方向に配置し、各アップコンバータ69a,69b,69cから同時に送出される。ここで、第1実施形態と異なる点は、この第3実施形態では、送信アンテナ4a,4b,4cからは、無線多重信号72dとして、無線信号72aと無線基準信号72cが放射される。この無線信号72aの周波数fRFaは、次式(7)となる。
fRFa=(fLO1−fIF1e)+fLO2
=(fLO1−fIF1e)+fLO1×2M
=fLO1(1+2M)−fIF1e … (7)
なお、式(7)において、fLO1は基準信号源210が出力する基準信号の周波数、fIF1eは入力変調信号5eの周波数、fLO2は同期発振器7a〜7cが出力する局部発振信号の周波数の2倍の周波数、Mは同期発振器7a〜7cの逓倍数を示す。
また、無線基準信号72cの周波数fRFcは、次式(8)となる。
fRFc=fLO1+fLO2
=fLO1+fLO1×2M
=fLO1×(1+2M) … (8)
具体的に、周波数設定の一例として、同期発振器7a〜7cとして5逓倍器(M=5) を用いれば、fLO1=5.59GHz、fIF1e=450MHz〜2.1GHzとすれば、送信アンテナ4a,4b,4cからは、fRFa=59.39GHz〜61.04GHzの信号、と、fRFc=61.49GHzの信号とが同時に送出される。
(受信システム401)
次に、図13に、上記無線送信装置101aとで無線送受信システムを構成する受信システム401を示す。図13に示すように、この受信システム401は、3つの無線受信装置20a〜20cと、各受信装置20a〜20cに接続された分波器190と、各分波器190に接続されたTV受像機31を備える。
上述の如く、無線ユニット300の各送信アンテナ4a〜4cからは、同一周波数の無線多重信号72dが出力される。このため、受信システム401の各受信装置20a〜20cは、送信アンテナ4a〜4cからどの無線多重信号72dを受信しても、混信することがない。加えて、この送信アンテナ4a,4b,4cは異なった角度で配置されているので、一つの無線タワー101aからの無線多重信号72dは、複数の無線受信装置20a,20b,20cで受信することが可能である。このことは、前述の第2実施形態と同様である。
図13に示すように、各無線受信装置20a〜20cの構成は同等であり、受信アンテナ14と周波数変換受信回路11と局部発振器8とコンバータ回路55とを備える。周波数変換受信回路11と局部発振器8とが第1ダウンコンバート部を構成し、コンバータ回路55が第2ダウンコンバート部を構成する。
各受信装置20a〜20cの出力ポート500は分波器190に接続され、各分波器190はTV受像機31のチューナ30に接続されている。また、周波数変換受信回路11は増幅器110とバンドパスフィルタ111と周波数ダウンミキサ112を有する。
無線多重信号72dは、受信アンテナ14で受信され、受信無線多重信号73dとして、増幅器110で増幅され、バンドパスフィルタ111で所望信号が抽出される。一方、局部発振器8は、局部発振信号(周波数fLO3)を出力する。図14Aに、受信無線多重信号73dと局部発振信号(周波数fLO3)の周波数配置を示す。この局部発振信号(周波数fLO3)は、周波数ダウンミキサ112の局部発振ポートに入力され、ミキサ112を駆動する。これにより、上記所望信号は、図14Bに周波数配置を示すIF多重信号74dに、周波数ダウンコンバートされる。ここで、局部発振信号の周波数fLO3を、例えば、送信ミリ波局部発振周波数であるfLO2の近くに、適宜選択する。
図14A,図14Bに示すように、局部発振周波数fLO3 によるミリ波帯の所望波からの周波数ダウンコンバートは、例えば、ミリ波帯の所望波を上側波帯として選択する。
なお、一つの望ましい実施例では、周波数ミキサ112を、アンチパラレルダイオードペア型のミキサとする。このアンチパラレルダイオードペア型のミキサによれば、局部発振器8の局部発振周波数を(1/2)fLO3とすることができる。その結果、発振周波数が低くなり、局部発振器8の共振器部はより高いQ値を扱うことができるので、周波数安定度の高い発振器8を、ワイヤボンディング等の容易な実装手段を用いて簡易に製作できる。
上記中間周波数帯へ周波数ダウンコンバートすることによって、IF多重信号74dを生成する過程を、図14Aから図14Bに示す。このIF多重信号74dを構成するIF信号74aとIF基準信号74cは、下記に示す信号周波数配置に変換される。
IF基準信号74c:fLO1+fLO2−fLO3
IF信号74a :(fLO1+fLO2−fLO3)−fIF1e
図13に示す各受信装置20a〜20cのコンバータ回路55では、各IF多重信号74dは、一旦、ローパスフィルタ159で帯域制限し、サイドバンド等の不要波を除去し、信号分配回路161で2分配される。この信号分配器161は、各出力ポート間でアイソレーション特性を有するウイルキンソン型2分配器として。このウイルキンソン型2分配器は、各出力ポートで不要な漏れ信号を抑圧し、各回路を正常動作させることができる。
なお、このコンバータ回路55では、信号分配器161に替えて、中間周波数アンプと分配器の両方の機能を有する分岐アンプを備えても構わない。この分岐アンプは、1つの入力部と2つの出力部を有し、この出力部の出力回路は、並列したトランジスタから2出力の出力回路を取る。この分岐アンプを採用した場合、互いの出力ポート間は、非常に大きなポート間アイソレーションを確保することができる。
信号分配器161で2分配されたIF多重信号74dは、一方の経路Aにおいて、増幅器172により増幅,レベル制御され、周波数ミキサ12aに入力される、もう一方の経路Bでは、IF多重信号74dは、バンドパスフィルタ163a、163bによって、基準信号74cである周波数が(fLO1+fLO2−fLO3)の成分が帯域通過させられる。この基準信号74cは、増幅器171a、171bによりさらに増幅され、周波数ミキサ12aの局部発振信号として動作する。
尚、この第3実施形態では、この基準信号74cの抽出純度を高くするために、バンドパスフィルタ163a,163bと増幅器171a,171bを備えた2段構成としている。この2段構成により、周波数ミキサ12aを、より線形に動作させることができ、かつ、雑音レベルを小さくすることができ、結果的により広帯域にかつ、より伝送距離を延ばすことが可能となる。
この抽出された基準信号74cは、周波数ミキサ12a内部で、IF多重信号74dを周波数ダウンコンバートして、送信側の入力変調信号(周波数fIFe)を再生する。この再生された入力変調信号(周波数fIFe)76は、必要に応じて増幅器195で増幅され、出力端子500aを介し、分波器190(または分配器190)により分波または分配され、TV受像機31中の衛星放送波用/地上波放送用チューナ30に入力される。
ここで、IF多重信号74dから、複数の放送波を再生するプロセスについて説明する。IF多重信号74dが、この信号に含まれる基準信号74cにより周波数ダウンコンバーされ、復調信号(周波数fIFe)76を生成するプロセス(つまり、入力変調波5eを再生するプロセス)は、図14Bに示すIF多重信号74dの周波数配置から、図14Cに示す一系列の出力信号76の周波数配置に変換される。この周波数配置の変換は、次式(9)に示すように表現できる。
(fLO1+fLO2−fLO3 )−
((fLO1+fLO2−fLO3)−fIF1e)=fIF1e … (9)
また、周波数ミキサ12aで周波数ダウンコンバートされた信号(周波数fIF1e)は、IF多重信号74dが含む基準信号74cで、IF(中間周波数)多重信号74dを周波数ダウンコンバートしたものである。よって、この信号には、基準信号74cを基準信号74cで周波数変換されて生ずるDC(直流)成分も含まれてしまう。したがって、周波数変換ミキサ12aは、DC成分をカットしてミキサ回路に戻すキャパシタ196を含むことが望ましい。なお、この周波数ミキサ12aは、上記DC成分による電流を利用して、自動的に周波数変換利得を制御するセルフバイアス制御回路を備えていても構わない。
このように、この受信システム401の各受信装置20a〜20cでは、コンバータ回路55は、送信側から所望信号とともに送信された基準信号73cに由来する基準信号74cを用いることによって、IF多重信号74dを周波数ダウンコンバージョンする。これより、送信側の入力変調信号5eが、どのような変調形式(一例として、QPSK、8PSK、64QAM−OFDM)であっても、受信側では、局部発振器8(周波数fLO3)の位相雑音や周波数偏差の影響を被ることなく、送信側の入力変調信号5eを出力信号76として復元,再生することができる。
また、この第3実施形態では、第1実施形態と同様に、無線送信装置101aの各アップコンバータ69a〜69cからは同一周波数の無線多重信号72dが送信される。よって、受信システム401の各受信装置20a、20b、20cでは、どのアップコンバータ69a〜69cからの無線多重信号72dでも受信可能である。このため、一つの無線タワーをなす無線送信装置101aからの信号を、複数の受信装置20a〜20cで受信することが可能となる。その上、送信側がどのような変調方式であっても、受信側の受信システム401の各受信装置20a〜20cでは、TV受像機31が含む放送用チューナ30を用いて復調することが可能となる。さらには、ミリ波局部発振器8の発振周波数fLO3の安定精度が十分に高くなくても、上記チューナ30で復調することが可能である。さらに、この受信装置20aを複数台、配置して受信し、この複数台の受信装置20aの出力を等しい長さの出力ケーブルで合成することにより、各出力を略同一位相で合成することもできる。つまり、無線タワー101aの複数の送信装置をなすアップコンバータ69a,69b,69cからの送信無線多重信号72dを複数の受信装置により、空間ダイバシティ受信し、出力を合成することができる。
次に、図11に、図10の第3実施形態の無線送信装置101aの変形例を示す。この変形例の無線送信装置101bは、図10の制御ユニット201aに替えて、制御ユニット201bを備えた点だけが上述の無線送信装置101aと異なる。
この変形例の制御ユニット201bは、基準信号源210と電力分配器204bとの間に、接続された分配回路211と同期発振器17とが順次接続されていると共に、この分配回路211にレベル制御部60が接続されている点が、前記制御ユニット201aと異なる。すなわち、この変形例の無線送信装置101bの制御ユニット201bでは、図11に示すように、同期発振器17を、基準信号源210に接続した分配回路211の直後(周波数ミキサ201側)に配置した。この構成によれば、同期発振器17の出力信号で、周波数ミキサ201の局部発振部を駆動する。かつ、同期発振器17の出力信号を、基準信号付加回路2d(電力合成器204a,レベル調整器95,電力分配器204b)により、中間周波数信号71aに基準信号として、多重付加し、中間周波数多重信号71dを生成する。
ここで、この同期発振器17は、逓倍動作機能をもった周波数マルチプライアや注入同期発振器や位相同期発振器であっても同様な効果が得られる。例えば、同期発振器7a〜7cおよび同期発振器17として位相同期発振器を用いることにより、基準信号源210は、数10MHz程度の温度補償型の水晶発振器(TCXO)でこの同期発振器7a〜7cおよび17と直接周波数同期をとることが可能である。また、この水晶発振器(TCXO)は、周波数が低く安定した発振器であることから、分配接続に伴う構成が簡単であり、この発振器出力の振幅のズレ等や、温度に対する動作安定性も向上する。
上述の第1,第2,第3実施形態では、構成を簡易にし、個々の送信機を構成する各アップコンバータ7a〜7cが出力する送信無線多重信号72dの振幅のばらつきを小さくし、安定動作させるために、出力ポート67a−入力ポート67aa間、出力ポート67b−入力ポート67bb間、および出力ポート67c−入力ポート67cc間を接続するケーブルの線路長(ケーブル長)を等しい長さとした。しかし、各出力ポートと入力ポートとの間は、夫々異なった長さのケーブルで接続しても構わない。また、各アップコンバータ7a〜7c、各送信アンテナ4a〜4cを異なる箇所に配置してもよい。この場合においても、各送信アンテナ4a,4b,4cから送出される送信無線多重信号72dの周波数は同一であり、この発明の主目的を満足する。この場合、ケーブルの損失を補償する分だけ同期発振器7a,7b,7cやアップコンバータ69a,69b,69cに動作余裕を設けるか、もしくは、同期発振器7a,7b,7cやアップコンバータ69a,69b,69cにレベル制御回路を設ければより好ましい。また、上記第1,第2,第3実施形態では、無線送信装置がアップコンバータを3台備える場合を説明したが、無線送信装置を2台もしくは4台以上備える場合にも本発明を適用できるのは勿論である。また、受信システムにおいても同様、無線受信装置を2台もしくは4台以上備える場合にも本発明を適用できるのは勿論である。