JP4768923B2 - 異物除去装置 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、ガラス繊維チョップドストランド等の集合(バルク体粒子群)に混入した異物の除去装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来、繊維状、粒状、粉状、フレーク状又はペレット状等のバルク体粒子群に混入した異物とくに金属やその合金などを除去するには、磁石が利用されてきた。例えば、バルク体粒子群をコンベヤーや震動トラフで搬送する際に、その途中に磁石を内蔵した装置を上方に設置し、バルク体粒子群がそこを通過するときに金属異物のみを吸着する方法などである。
【発明が解決しようとする課題】
上記の方法によれば、ミリメートルオーダーの比較的大きな金属異物は確実に除去できるが、ミクロンオーダーの微小金属異物は除去できずにバルク体粒子群中に残存してしまうことがあった。バルク体粒子群の用途によっては、ミクロンオーダーの金属異物が混入しても問題とならない場合もあるが、例えば電子回路基板など極めて高い絶縁性が要求される用途では、このようなバルク体粒子群は使用できない。また、上記の方法は、バルク体粒子群を大量に処理するには適しているが、その装置の構成上、回転体や震動体が存在するため、コンベヤーベルトやトラフ上には周囲からの異物が混入し易いという問題もある。
【0003】
本発明は、このような不都合を解消すべく完成されたものであって、バルク体粒子群に含まれる微小異物を確実に除去するとともに、異物を吸着する永久磁石の損傷を低減した装置を提供するものである。
【0004】
【課題を解決するための手段】
上記課題を解決するため、本発明に係る異物除去装置は、請求項1において、長手軸を有し、表面が保護層で被覆された複数の永久磁石を所定の隙間をもって平行に配列した永久磁石列を、所定間隔をもって上下に複数段重ね合わせた構造からなり、異物を含有するバルク体粒子群が各段の永久磁石の前記隙間を通過する際に、異物を永久磁石に吸着してバルク体粒子群から除去することを特徴とする。
【0005】
以上のように構成したことによって、一つ以上の所定隙間を有する永久磁石列を複数段設けることにより、当該隙間を通過するバルク体粒子群から異物を除去することができる。また、永久磁石の表面を保護層で被覆することにより、バルク体粒子群の落下衝撃による永久磁石の損傷を防止できる。
【0006】
また、長手軸を有する複数の非磁性体を所定の隙間をもって平行に配列した非磁性体列を最上段に更に備えるようにした。このように、永久磁石ではない非磁性体からなる列を最上段に設けることにより、最上段での永久磁石の損傷をなくしつつ、バルク体粒子群の落下衝撃が最も大きな最上段において衝撃が吸収されるので第2段以降に設けた永久磁石の保護層の損傷をより低減できる。
【0007】
請求項2では前記非磁性体の材質を前記保護層の材質と同じとしたので、非磁性体の摩耗粉によるバルク体粒子群の品質に与える影響等をあらためて考慮する必要がない。また、請求項3では前記保護層をオーステナイト系のステンレス素材からなるようにしたので、保護層の摩耗剥離片がバルク体粒子群中に混入することがない。オーステナイト系特にSUS304は、その摩耗面や破断面がオーステナイトからマルテンサイトに変化して磁性を持つようになる。そのため、保護層にオーステナイト系のステンレス素材を用いれば、その摩耗剥離片が永久磁石に吸着されるので、バルク体粒子群中に摩耗剥離片すなわち異物が混入することがない。
【0008】
請求項4では、前記各永久磁石を、鉄芯の周囲にかつ当該鉄芯の長手方向に配置された複数の環状の永久磁石片からなるようにし、当該永久磁石片の間にヨークを配置するようにした。各永久磁石片の磁束密度の低減をヨークによって防止することができる。
【0009】
請求項1では、バルク体粒子をガラス繊維のチョップドストランド(以下、「CS」とする)またはガラスフレーク(以下、「GF」とする)としたことにより、絶縁性を求められる用途に補強材を安価に提供することができる。なお、CSまたはGFには、こられをバインダーで造粒したものも含む。
【0010】
また、請求項1では前記異物の径を1〜1000μmとした。これにより、例えばバルク体粒子群を電子回路基板など極めて高い絶縁性が要求される用途に用いても、電気的ショートなどを確実に防止できる。
【0011】
更に、請求項1では、前記永久磁石列における永久磁石を2〜8本とし、前記永久磁石列の段数を2〜8段とし、前記永久磁石の磁束密度がその保護層表面において10000ガウス以上とし、前記永久磁石列における前記永久磁石間の隙間を10〜30mmとし、前記永久磁石列の上下段の間隔を5〜40mmとし、前記保護層の厚さを0.2〜2mmとした。これにより、バルク体粒子群に含まれる1〜1000μm径の異物をほぼ完全に除去できる。また、請求項5では、前記永久磁石の磁束密度をその保護層表面において12000ガウス以上としたことにより、1〜1000μm径の異物を確実に除去できると共に、サブμm径の異物の除去も可能となる。
【0012】
再び請求項1では前記非磁性体の隙間を永久磁石列と同じにしたことにより、最上段においてバルク体粒子の落下衝撃を十分に吸収することができる。
【0013】
さらに、上記請求項1〜5までの発明を、つぎのように表現することもできる。請求項5では、保護層内に永久磁石を収納した、保護層表面における磁束密度が12000ガウス以上である棒状体を、平行に複数配列し、前記棒状体の間にバルク体粒子群を通すことにより、バルク体粒子群に含まれる異物を吸着除去するようにした。これにより、バルク体粒子群に含まれるμmオーダーの微小異物を確実に除去し、かつ、サブμmオーダーの極微小異物の除去も可能となる。
【0014】
【発明の実施の形態】
本発明の実施形態の一例について添付した図面に基づき説明する。図1〜図4は本発明に係る異物除去装置の第1構成例であって、バルク体粒子群としてCSを用いた異物除去装置を示し、図1は永久磁石列を複数段重ね合わせた状態を示す内部断面図、図2は最上段の永久磁石列の斜視図、図3は永久磁石の長手軸に沿った断面図、図4は図3のA−A断面図である。
【0017】
図1及び図2に 示すように、この構成例の異物除去装置1は、略立法形状の金属製筐体2内に、複数段の永久磁石列3が所定間隔Dvをもって上下に重ね合わされた構造を有する。各段の永久磁石列3は、その表面を保護層で被覆された複数の永久磁石4からなり、これら永久磁石4は所定幅Dhの隙間5をもって長手軸Lに沿って平行 に配列される。各段の永久磁石列3は枠体6内に取付けられ、この枠体6を出し入れすることによって各段の永久磁石列3を金属製筐体2から出し入れする。
枠体6は、ほぼ等しい長さを有する枠片61a、61b、61c、61dからなる。各段の各永久磁石4の長手軸方向における両端部41a、41bは、枠体6の対向する枠片61a、61bにそれぞれ固定されている。なお、各永久磁石4の両端部41a、41bを枠片61a、61bにそれぞれ回転可能に取りつけてもよい。バルク体粒子の落下接触によって各永久磁石4が回転するため、バルク体粒子の落下接触部分が永久磁石表面全体にわたることになるので、永久磁石の高寿命化が図られる。
また、金属製筐体2には、図示しないがその一側面に開閉扉が取り付けられている。この開閉扉は、異物除去処理の際には閉められ、周囲からの異物の混入を防ぐ。そして、一定量のバルク体粒子群を処理した後、開閉扉は開かれ、そこから前記永久磁石列が引き出される。引き出された永久磁石列は、その保護層表面に付着した異物を洗浄除去され、また筐体内に戻される。この一連の作業を通じて、永久磁石列は、保護層が破損するまで繰り返し利用される。
【0018】
図示例は、永久磁石列3が6段重ね合わされ、奇数段の永久磁石列3では各隙間5の幅Dhを15mmとして4本の永久磁石4が配列され、偶数段の永久磁石列3では各隙間5のDhを15mmとして5本の永久磁石4が配列され、永久磁石列3の上下段における各間隔Dvを32mmとした構造である。また、奇数段の永久磁石列において、左右の端の隙間が大きくなりすぎるのを防止するため、筐体2に傾斜面を有する三角柱21が取り付けられている。なお、各段は最上段を第1段目として順次数えるものとする。
永久磁石列3の段数、各永久磁石列3における永久磁石4の本数、各永久磁石列3における永久磁石4の隙間5の幅Dh、ならびに、永久磁石列3の上下段の間隔Dvは、この例に限定されるものではなく、異物の粒径や磁気特性、またはバルク体粒子群の処理量等に応じて適宜選択すればよい。
【0019】
図示例では、永久磁石列3における永久磁石4の隙間5の幅Dhは全て一定値としたが、各段における全隙間5の幅Dhを一定値としつつ各段毎に異なる幅Dhを設定してもよく、各段における隙間5の幅Dhを全て異なるように設定してもよく、又は、各段の隙間5の幅Dhを幾つかの異なる群に分けて設定してもよい。また、図示例では、永久磁石列3の上下段によって形成される各間隔Dvを全て一定値としたが、間隔Dvを全て異なるように設定してもよく、又は、間隔Dvを幾つかの異なる群に分けて設定してもよい。
【0020】
また、図示例では、各段における永久磁石4間の隙間5の直下に次段の永久磁石4が配置されるように各永久磁石4が配列されており、このような配列を採用するのが好ましい。このように配列することにより、各段の隙間5を通過するバルク体粒子は次段の永久磁石上に落下するので、永久磁石に接することなくバルク体粒子が各段の隙間を連続して通過するのを防止でき、その結果、異物を確実に除去することができる。しかしながら、永久磁石の磁束密度の増大等により未吸着の異物を低減することも可能なので、このような磁石配列に限定されるものではない。
【0021】
図3及び図4に示すように、各永久磁石4は複数の環状の永久磁石片42からなり、これら永久磁石片42は鉄芯7の周囲に長手方向に沿ってヨーク8を介して嵌め込まれている。なお、鉄芯7とヨーク8の双方又はいずれか一方を用いない永久磁石構造としてもよい。また、用いる永久磁石4の種類は特に限定されるものではなく、希土類磁石、フェライト磁石及び/またはボンド磁石などが用いられるが、希土類磁石が好適に用いられる。
【0022】
バルク体粒子との接触によって 永久磁石4が損傷するのを防止すべく、永久磁石4の表面は保護層9で被覆される。保護層9の材質は特に限定されるものではなく、バルク体粒子との接触による耐摩耗性に優れている等の観点から、金属、プラスチック又はセラミックス等が用いられる。特にオーステナイト系のステンレスであれば、摩耗、剥離する際にマルテンサイト系に変化して磁性を持つようになるため、その摩耗剥離片が永久磁石に吸着される。このように、保護層9の摩耗剥離片もまたバルク体粒子群に含まれる異物と共に永久磁石によって吸着除去可能なので、オーステナイト系のステンレス素材を用いるのが好ましく、オーステナイト系のステンレス素材の中でも、特にSUS304が好適に用いられる。
【0023】
保護層9は永久磁石4の周囲全体を保護するように形成するのが好ましく、ステンレス材質の場合にはパイプ形状のものを用いるのが被覆操作の点で容易である。なお、バルク体粒子がほとんど接触することのない永久磁石底部には保護層を形成しなくてもよい。
【0024】
保護層9の厚さに関しては、永久磁石4間の隙間5における磁束密度を大きくするには当該厚さを薄くする必要があるが、保護層9が薄くなるとバルク体粒子との接触摩耗により保護層の摩耗が早まる。一方、保護層9を厚くするとバルク体粒子との接触摩耗による保護層の摩耗が遅くなるが、永久磁石4間の隙間5における磁束密度を大きくできない。したがって、金属異物の所望の除去性能が得られるように保護層9の厚さを決定する必要がある。
【0025】
異物の除去性能に影響する因子としては、異物を含有するバルク体粒子の当該装置内における上下方向の平均通過速度も挙げられる。この平均通過速度が大きいと未吸着の異物が増加する。
【0026】
異物の除去性能を設計するには、除去すべき異物径の範囲とその除去率、ならびに、単位時間当たりのバルク体粒子処理量をまず設定する必要がある。ここで、除去率とは未処理のバルク体粒子群に含有される所定範囲内の径を有する異物量に対する処理されたバルク体粒子群に含有される所定範囲内の径を有する異物量の比率から計算される。
【0027】
次いで、このような設定基準を達成すべく、永久磁石4間の隙間5の幅Dh、永久磁石列3の上下段における間隔Dv、永久磁石の保護層9の厚さ、バルク体粒子の平均通過速度、永久磁石列3に備えられる永久磁石4の数、永久磁石列3の段数の各パラメータ範囲が実験的に決定される。
【0028】
電子回路基板の補強材としてCSを用いる場合には、バルク体粒子群中に含まれる異物による電気的ショートの発生を防止する目的から、1μm以上の径を有する金属異物を除去するのが好ましく、さらにはサブμm以上の径を有する金属異物を除去するのが好適である。
【0029】
1μm以上の径を有する金属異物をほぼ完全に除去するには、永久磁石列3に備えられる永久磁石4を2〜8本とし、永久磁石列3の段数を2〜8段とし、永久磁石列3における永久磁石4間の隙間5の幅Dhを10〜30mmとし、永久磁石の保護層表面における磁束密度を10000ガウス以上とし、永久磁石列3の上下段における間隔Dvを5〜40mmとし、永久磁石の保護層9の厚さを0.2〜2mmとすることが好ましい。
【0030】
更に、永久磁石の保護層表面における磁束密度を12000ガウス以上とすることにより、1μm以上の径を有する金属異物を確実に除去可能であると共に、サブμmの径を有する金属異物の除去も可能となる。
【0031】
次に、本発明に係る異物除去装置の第2構成例について、第1構成例と相違する部分について図5に基づいて説明する。図5は永久磁石列3を複数段重ね合わせた状態を示す内部断面図であって、第1構成例における図1に対応する。
【0032】
この構成例では、第1構成例の異物除去装置において、非磁性体10からなる非磁性体列11を、永久磁石列3の最上段に更に設けるようにした。
【0033】
第1構成例に係る異物除去装置では、最上段の永久磁石列3に配列された永久磁石4がバルク体粒子群による最も大きな落下衝撃を受ける。長期間の除去操作により、保護層9が次第に摩耗して永久磁石4が露出し、更に永久磁石自体が損傷するおそれがある。永久磁石が損傷すると、永久磁石間の隙間5において所望の磁束密度が得られなくなり、その結果、異物の設定除去率が達成できない不都合が生じることにもなる。この構成例に係る異物除去装置は、このような観点からなされたものであり、バルク体粒子による大きな落下衝撃に対する緩衝体として非磁性体列を最上段に配設することにより、これより下段に位置する永久磁石列に配列される永久磁石に設けられた保護層の摩耗の低減を図るものである。
【0034】
非磁性体10の材質としては、特に限定されるものではなく、金属、プラスチック又はセラミックスが用いられるいが、保護層9と同材質とするのが好ましい。
保護層9と異なる材質としたのでは、非磁性体10の摩耗粉によるバルク体粒子の品質に与える影響等を保護層9の材質とは別に考慮しなければならないからである。このような観点から、非磁性体10の材質としては、オーステナイト系のステンレスが好ましく、特にSUS304が好適である。
【0035】
このような非磁性体10は、図示例のように、永久磁石と同一形状とすることができるが異なる形状としてもよい。また、このような非磁性体10を複数本配列した非磁性体列11もまた、永久磁石列3と同様の配列を採用してよく、異なる配列を採用してもよい。図示例では、非磁性体10の形状を永久磁石4と同一とし、かつ、非磁性体列11における非磁性体10の配列も第3、5及び7段の永久磁石列3における永久磁石4の配列と同一としている。第2段以降に配列した永久磁石4の保護層9の損傷をより低減するために非磁性体列11においてバルク体粒子群の落下衝撃を十分に吸収するには、非磁性体10の隙間12における幅NDhが30mm以下、好ましくは20mm以下であることが好ましい。
【0036】
次ぎに、異物除去機構の一例について図6に基づいて説明する。異物除去機構13は、本発明の異物除去装置1の上方に、異物を含有するバルク体粒子群を収容する第1の容器14を配設し、異物を含有するバルク体粒子を第1の容器14から異物除去装置1の入口まで実質的に横方向に搬送する供給装置15を設け、異物が除去されたバルク体粒子を収容する第2の容器16を異物除去装置1の直下に配設するようにしたものである。なお、本異物除去機構では、第1の容器14と供給装置15の両方を必ずしも備える必要はない。例えば、第1の容器14を設けないで、バルク体粒子群を収容する部分を備えた供給装置15のみを設けてもよい。或いはこれに代わって、供給装置15を設けないで、バルク体粒子群を異物除去装置1に供給するための供給口を下方に備えた第1の容器14のみを設けてもよい。さらに、第1の容器14と供給装置15の両方を一体化した構造を採用してもよい。
【0037】
第1の容器14としては、通常、ホッパーが用いられる。供給装置15としては、バルク体粒子群を第1の容器14から異物除去装置1の入口まで実質的に横方向に搬送可能なものであれば特に限定されるものではないが、コンベヤー、振動トラフ等が用いられる。異物除去装置1としては、上述の第1又は第2構成例に係るものを使用できる。第2の容器16としては、製品の出荷形態としての梱包容器が用いられる。このように、異物除去装置を第2の容器の直上に設置することにより、製品出荷の直前に異物を除去することができる。そのため、異物除去後にコンベヤーや振動トラフなどを用いる必要が無くなり、周囲から製品への異物の混入を極力抑制することができる。
【0038】
【実施例】
異物除去機構を用いてCSに含まれる異物を除去する際における保護層の摩耗試験についての例を以下に述べる。
【0039】
(実施例1)
上記本発明の第1構成例に係る異物除去装置1を異物除去機構に使用した。異物除去装置1の仕様は以下の通りである。永久磁石列の段数は6段、奇数段に配列される永久磁石の本数は4本、偶数段に配列される永久磁石の本数は5本、永久磁石は全て同一形状であって外形25mm、内径7mm×長さ23cm、その保護層はSUS304製で厚さ0.5mm、永久磁石間の隙間の幅Dhは14mm、保護層表面における磁束密度は12000ガウス、永久磁石列の上下段における間隔Dvは32mmとした。また、最上段の永久磁石列とCS供給装置15との落差すなわちCSが落下する高さは、135mmとした。
CSは、平均径9μmのEガラス組成フィラメントを公知の手段により集束し、平均長さ1.5mmまたは3.0mmとなるようにカットしたものである。なお、集束バインダーには、ウレタン系のものを用いた。また、集束バインダーの付着量は、強熱減量で表して1.0重量%であった。
このCS を800kg/時間、1カ月当たり300トンのペースで異物除去処理した。異物除去処理後のCSの中に異物が混入していないか確認するため、凡そ1回/週のペースでCSの抜き取り検査を行った。この抜き取り検査は、検査官が処理後のCSを第2の容器から数グラム適宜サンプリングし、それを白色の検査台上に広げ、強い光を当てて乱反射の様子を光学顕微鏡で観察するものである。この方法によれば、ミクロンオーダーの異物(特に金属異物)を確実に見出すことができる。その結果、12ヶ月間に渡り、異物を発見することはなかった。
永久磁石列の洗浄は、2回/日のペースで行った。上記の異物除去処理を始めてから12ヶ月の時点で、最上段の永久磁石の保護層の一部に比較的大きな傷が認められた。これ以上使用すると、保護層が破損して永久磁石が露出するおそれがあったため、この時点で最上段の永久磁石列を取り替えた。したがって、永久磁石列の寿命は、凡そ12ヶ月となる。
【0040】
(実施例2)
実施例1において、第1構成例に係る異物除去装置に代えて、第2構成例に係る異物除去装置を異物除去機構に使用した。なお、第2構成例に係る異物除去装置は、第1構成例に係る異物除去装置の最上段に、永久磁石の保護層と同一形状のステンレスパイプを5本配列したものである。非磁性体の隙間は永久磁石列と同一であり、最上段と第2段目の間隔は、第2段目と第3段目の間隔と同一とした。この異物除去装置を用いて、実施例1と同じ条件でCSの異物除去処理を行った。その結果、処理開始から12ヶ月で最上段の一部のステンレスパイプに傷が認められた。そのため、最上段のステンレスパイプ列のみ取り替えた。その後、引き続きCSの異物除去処理を行っているが、24ヶ月を経過した現在でも、最上段のステンレスパイプ列および第2〜7段の永久磁石列に傷は見られない。なお、処理開始から現在まで、抜き取り検査において、異物は見つかっていない。
【0041】
本発明に係る異物除去装置は、例えば、電子回路基板の補強材として用いるCS中に混入した金属異物を除去する際において好適に用いられるが、このような用途に限定されるものではない。バルク体粒子としては、CSの他に粒状、粉状、フレーク状又はペレット状のものも使用できる。
【0042】
【発明の効果】
本発明に係る異物除去装置は、一つ以上の所定隙間を有する永久磁石列を所定間隔で複数段備え、異物を含有するバルク体粒子が各段の永久磁石間の隙間を通過する際に、異物だけを永久磁石に吸着することによってバルク体粒子群から除去できる。永久磁石の表面は保護層で被覆されているので、バルク体粒子群の落下衝撃による永久磁石の損傷が防止される。
【0043】
また、上記異物除去装置において、一つ以上の所定隙間を有する非磁性体列を最上段に更に備えることにより、バルク体粒子群の最も大きな落下衝撃を吸収できるので、第2段以降の永久磁石列の保護層の損傷を低減できる利点がある。特に、非磁性体の隙間を設定することにより、非磁性体列においてバルク体粒子群の落下衝撃を十分に吸収することが可能である。
【0044】
保護層と非磁性体の材質をステンレス素材とすることにより、耐久性を向上できる。また、永久磁石を鉄芯の周囲の長手方向に配置した複数の環状磁石片から構成して磁石片間にヨークを配置するようにしたことにより、永久磁石片の磁束密度の低減を防止できる。
【0045】
本発明に係る異物除去装置は、繊維状、粒状、粉状、フレーク状又はペレット状のバルク体粒子群からの異物の除去に適用可能であり、特に、CSまたはGFからの金属異物除去に好適に用いられる。
【0046】
永久磁石列に備えられる永久磁石の本数、永久磁石列の段数、永久磁石の隙間における磁束密度、永久磁石列における永久磁石間の隙間、永久磁石列の上下段の間隔、保護層の厚さ等をパラメータとして、所定範囲径の異物の除去を可能とした。
【0047】
異物除去機構は、本発明の異物除去装置の上方に、異物を含有するバルク体粒子群を収容する第1の容器および/または異物除去装置の入口までバルク体粒子群を搬送する供給装置と、異物除去装置の下方に異物が除去されたバルク体粒子群を収容する第2の容器を配設するようにしたものである。これにより、異物を含有するバルク体粒子群を原料として、梱包状態の最終製品までを一貫して製造することが可能である。また、異物除去処理後に、周囲から異物が混入することを防止できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明の第1構成例に係る異物除去装置において、永久磁石列を複数段重ね合わせた状態を示す内部断面図。
【図2】 本発明の第1構成例に係る異物除去装置における最上段の永久磁石列の斜視図。
【図3】 本発明の第1構成例に係る異物除去装置に用いられる永久磁石の長手軸に沿った断面図。
【図4】 図3のA−A断面図
【図5】 本発明の第2構成例に係る異物除去装置において、永久磁石列を複数段重ね合わせた状態を示す内部断面図。
【図6】 異物除去機構を示す斜視図。
【符号の説明】
1・・金属異物除去装置、
2・・筐体、
3・・永久磁石列、
4・・永久磁石、
42・・永久磁石片、
5,12・・隙間、
7・・鉄芯、
8・・ヨーク、
9・・保護層、
10・・非磁性体、
11・・非磁性体列、
13・・金属異物除去機構、
14・・第1の容器、
15・・供給装置、
16・・第2の容器、
21・・筐体に取り付けられた傾斜面を有する三角柱
Dh,NDh・・幅、
Dv・・間隔、
L・・長手軸。
Claims (5)
- 長手軸を有し、表面が保護層で被覆された複数の永久磁石を所定の隙間をもって平行に配列した永久磁石列を、所定間隔をもって上下に複数段重ね合わせた構造からなり、異物を含有するバルク体粒子群が各段の永久磁石の前記隙間を通過する際に、前記異物を前記永久磁石に吸着してバルク体粒子群から除去するようにし、
長手軸を有する複数の非磁性体を所定の隙間をもって平行に配列した非磁性体列を最上段に更に備え、
前記バルク体粒子がガラス繊維のチョップドストランドまたはガラスフレークであり、
前記異物が粒径1〜1000μmの金属粒子であり、
前記永久磁石列に備えられる永久磁石が2〜8本であり、前記永久磁石列の段数を2〜8段とし、前記永久磁石の磁束密度がその保護層表面において10000ガウス以上であり、前記永久磁石の隙間が10〜30mmであり、前記永久磁石列の上下段の間隔が5〜40mmであり、前記保護層の厚さが0.2〜2mmであり、
前記非磁性体の隙間が前記永久磁石列と同じであることを特徴とする異物除去装置。 - 前記非磁性体が前記保護層の材質と同じである、請求項1に記載の異物除去装置。
- 前記保護層がオーステナイト系のステンレス素材からなる、請求項1又は2に記載の異物除去装置。
- 前記各永久磁石が、鉄芯の周囲にかつ当該鉄芯の長手方向に配置された複数の環状の永久磁石片からなり、当該永久磁石片の間にヨークを配置した、請求項1〜3のいずれか一項に記載の異物除去装置。
- 前記永久磁石の磁束密度がその保護層表面において12000ガウス以上である、請求項1に記載の異物除去装置。
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