JP4768672B2 - 組織安定性と高温強度に優れたNi基合金およびNi基合金材の製造方法 - Google Patents

組織安定性と高温強度に優れたNi基合金およびNi基合金材の製造方法 Download PDF

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本発明は、例えば、タービンロータのような高温に曝される発電機部材の素材に用いて、特に高温度域において優れた組織安定性と良好な高温強度と延性、及びクリープ特性を有するNi基合金およびNi基合金材の製造方法に関するものである。
化石燃料の消費量低減および地球温暖化防止などの観点から、USC(超々臨界圧)プラントの更なる高効率化に期待が寄せられている。特に近年、21世紀の発電プラントとして高効率石炭火力発電を指向する動きが盛んであり、主蒸気温度が700℃を超えた次世代超々臨界圧蒸気発電に対応したタービンロータやボイラー部材等の開発が進められている。
700℃を超える高温の蒸気に晒されるタービンロータ素材に使用される耐熱材料は、もはや従来までのフェライト系耐熱鋼では耐用温度の観点から使用することができず、Ni基合金を適用せざるを得ない。
Ni基耐熱合金は良好な高温強度を得るために、TiやAl、或いはNbを少量添加してオーステナイト(以下γと記す)のマトリクス中にNi(Al、Ti)からなるガンマプライム相(以後γ’と記す)あるいは/およびNi(Al、Ti、Nb)からなるガンマダブルプライム相(γ”と記す)と呼ばれる析出相を整合的に微細析出させて強化する析出強化型の合金が多い。インコネル(商標、以下同じ)706や718はこれに当たる。
また、ワスパロイのように、γ’相の析出強化に加え、固溶強化とM23炭化物の分散強化により複合的に強化するタイプの合金や、インコネル617に代表されるように析出強化元素を殆ど含有せず、CoやMoにより固溶強化する、所謂、固溶強化型の合金も存在する。
しかしながら、何れのタイプのNi基合金においても、従来使用されてきたフェライト系耐熱鋼に比べ線膨張係数が高くなるため、蒸気タービン部材を構成する他部材との熱膨張差の問題や、高温運転時の熱疲労の問題が指摘されている。
このため、特許文献1や特許文献2、或いは特許文献3では、フェライト系耐熱鋼と同等の低い線膨張係数を有しながら、かつフェライト系耐熱鋼の高温材料特性を上回る析出強化型Ni基合金が提案されている。
特開平9-157779号公報 特開2003-13161号公報 特開2005-314728号公報
一方、タービンロータ部材は所定の10万時間クリープ破断強度が求められるように、高温長時間使用において安定した性能の材料でなければならず、運転温度域での強度や靭性のみならず、組織の安定性が極めて重要となってくる。Ni基合金の組織安定性に最も大きな影響を及ぼす要因は、強化析出相の高温安定性そのものであり、強化析出相の成長速度や変態挙動によりほぼ決定される。
前記で提案されている特許文献1の析出強化型Ni基合金では,従来想定されている600〜700℃での比較的短時間での使用環境においては安定した性能が維持されている。しかしながら,上記のように700以上の温度域で数万〜十万時間オーダーの長期間に渡り使用すると,使用中に析出が進行し,過時効になって強度、あるいは延性や靱性などの機械的特性が著しく低下するなど、組織安定性に起因した問題が生じ、長期間に渡り700℃以上において安定して使用できるという点で課題を有している。
また,特許文献2,3の析出強化型Ni基合金では,線膨張係数を低下させるため
にMoとWの添加量を増やしており,組織安定性の観点からは課題を有する。
本発明は、上記事情を背景としてなされたものであり、700℃以上の使用温度においても安定した高温特性を有するNi基合金およびNi基合金材の製造方法を提供することを目的とする。
Ni基合金に添加するAl、Ti、Nbといった析出強化元素やMoやW等の固溶強化元素は、その組み合わせや含有量により様々な金属間化合物を形成し、また機械的特性にも大きく作用する。本願発明者らは、様々な金属間化合物の形成について研究を進め、前記成分の含有量とバランスを適切に設定することによって700℃以上の高温においても組織の安定性が得られ、優れた高温特性を有することを見出し、本発明を完成するに至ったものである。
すなわち、本発明の組織安定性と高温強度に優れたNi基合金のうち、請求項1記載の発明は、質量%で、C:0.005〜0.1%、Cr:8〜15%、Mo:1〜7%、W:5〜20%、Al:0.5〜1.0%、Ti:1.0〜2.5%、B:0.015%以下、Mg:0.01%以下を含有し、残部がNiと不可避不純物からなり、前記Mo含有量とW含有量とが下記式1を満たし、かつ、前記Al含有量とTi含有量とが下記式2を満たすことを特徴とする。
0.1≦Mo/(Mo+W)≦0.5 …式1
0.2≦Al/Ti≦1.0 …式2
請求項2記載の組織安定性と高温強度に優れたNi基合金の発明は、請求項1記載の発明において、質量%で、さらに、Nb:1.0%以下を含有することを特徴とする。
請求項記載の組織安定性と高温強度に優れたNi基合金材の製造方法の発明は、請求項1または2に記載の組成を有するNi基合金を、熱間鍛造後、再結晶温度以上で溶体化処理を行い、その後、800℃〜1000℃の範囲で1回目の時効処理を施し、その後、720℃〜780℃の範囲で2回目の時効処理を行うことを特徴とする。
請求項記載の組織安定性と高温強度に優れたNi基合金材の製造方法の発明は、請求項記載の発明において、前記1回目の時効処理後、20℃/h以上の冷却速度で2回目の時効処理温度にまで冷却して連続して時効処理を行うことを特徴とする。
以下に、本発明の合金組成および製造条件を設定した理由を以下に説明する。なお、以下の含有量はいずれも質量%で示されている。
<合金組成>
C:0.005〜0.1%
Cは、TiとはTiCを形成し、またCr、MoとはMC、およびM23タイプの炭化物を形成し、合金の結晶粒の粗大化を抑制すると共に、高温強度の向上にも寄与する。更に、MCやM23は結晶粒界に適量の炭化物を析出させることで粒界を強化するために、本発明では必須の元素である。Cが0.005%以上含まれないと上記の効果が得られず、0.1%を越えると析出強化に必要なTi量が減少するだけでなく、時効処理時に粒界へ析出するCr炭化物が多くなりすぎて粒界が脆弱化し、延性が低下する。従って、Cの添加量は0.005〜0.1%の範囲に限定する。なお、同様の理由で、下限を0.01%、上限を0.08%とするのが望ましい。
Cr:8〜15%
Crは合金の耐酸化性、耐食性、強度を高めるに不可欠な元素である。また、Cと結びついて炭化物を析出させ、高温強度を高める。それらの効果を発揮させるためには、最低8%以上の添加量が必要である。しかしながら、多すぎる添加量はマトリクスの安定性を阻害し、σ相やα−Crなどの有害なTCP相の生成を助長することになり、延性や靱性に悪影響を及ぼす。また、Cr含有量の増加に伴い、線膨張係数が高くなることも知られている。従って、Crの添加量は8〜15%の範囲に限定する。なお、同様の理由で下限を9%、上限を14%とするのが望ましい。
Mo:1〜7%
Moは主にマトリクスに固溶してマトリクス自体を強化する固溶強化元素として有効であるとともに、γ’相に固溶してγ’相のAlサイトを置換することによりγ’相の安定性を高めるので高温での強度を高めるとともに組織の安定性を高めるのに有効である。Moが1%未満では上記効果が不十分であり、7%を越えるとμ相(Laves相)と呼ばれるTCP相を生成しやすくなるため、高温でのマトリクスの組織を却って不安定にするとともに高温組織安定性を悪化させる。したがって、Moの添加量は1〜7%の範囲に限定する。同様の理由で下限を2%、上限を7%とするのが望ましい。
W:5〜20%
WもMoと同様にマトリクスに固溶してマトリクス自体を強化する固溶強化元素として有効であるとともに、γ’相に固溶してγ’相のAlサイトを置換することによりγ’相の安定性を高めるので高温での強度を高めるとともに組織の安定性を高めるのに有効である。また、線膨張係数を下げる効果も有しており、適切な含有量であれば、TCP相が析出しないので組織安定性を損なうことはない。ただし、多すぎる添加ではα−Wが析出し組織安定性を低下させるのみならず、熱間加工性も著しく劣化させる。従って、Wの添加量は5〜20%の範囲に限定する。同様の理由で下限を7%、上限を15%とするのが望ましい。
0.1≦Mo/(Mo+W)≦0.5
Mo、Wは上記作用を得ることができるが、高温での機械的特性、特に延性を確保するために、[Mo含有量]/[Mo含有量+W含有量]を0.1以上に限定する。一方、[Mo含有量]/[Mo含有量+W含有量]が0.5を超えると、μ相(Laves相)が析出し、前述のように高温でのマトリクス組織を不安定にするとともに高温組織安定性も悪化させるため、0.5以下に限定する。同様の理由で下限を0.25、上限を0.5とするのが一層望ましい。
Al:0.5〜1.0%
AlはNiと結合してγ’相を析出し、合金の強化に寄与する。Alが0.5%未満では十分な析出強化を得ることが出来ないが、多すぎる添加はγ’相粒界への粗大凝集により、濃化領域と無析出帯とができ、高温特性の低下、切り欠き感受性の劣化を招き、機械的特性が大幅に低下する。従って、Alの添加量は0.5〜1.0%の範囲に限定する。なお、同様の理由で下限を0.5%、上限を0.9%とするのが望ましい。
Ti:1.0〜2.5%
Tiは主にMC炭化物を形成して合金の結晶粒の粗大化を抑制するとともに、Alと同様、Niと結合してγ’相を析出し、合金の強化に寄与する。しかしながら、多すぎる添加は、高温におけるγ’相の安定性を低下させると共にη相が析出するため強度と延性、及び長時間組織安定性の低下を招く。従って、Tiの添加量は1.0〜2.5%の範囲に限定する。なお、同様の理由で下限を1.5%、上限を2.0%とするのが望ましい。
0.2≦Al/Ti≦1.0
AlとTiは、Ni(Ti,Al)としてNiと結合してγ’相を析出し、合金の強化に寄与する。しかしながら、AlとTiの比、即ちAl/Tiが1.0を超えると高温での引張延性が急激に低下すると共に、クリープ破断寿命とクリープ破断延性が著しく低下することを見出した。特にクリープ破断延性の低下は、切り欠き弱化にも繋がるため避けなければならない。一方、0.2未満の場合には、γ’相を形成せずにη相が多量に析出するようになるため、高温での機械的特性と組織安定性の両面をバランスさせるには、AlとTiの比を0.2以上、1.0以下に限定する。同様の理由で下限を0.4%、上限を0.8%とするのが一層望ましい。
Nb:1.0%以下
NbはAl、及びTiと同様に析出強化元素であり、γ”相を析出し合金の強化に寄与するので所望により含有させる。しかしながら、多量の添加はLaves相やδ相等の金属間化合物が析出しやすくなり、組織安定性を著しく損なう。したがって、所望により含有させるNbの含有量は1.0%以下とする。なお、上記作用を十分に得るためには、0.2%以上含有させるのが望ましく、また上記と同様の理由により、さらに上限を0.5%とするのが望ましい。
B:0.015%以下
Bは粒界に偏析して高温特性に寄与するので含有させる。但し、多過ぎる添加は硼化物を形成し易くなり、逆に粒界脆化を招く。したがって、Bの含有量は0.015%以下とする。なお、上記作用を十分に得るためには、0.0001%以上含有するのが望ましく、また上記と同様の理由により、さらに上限を0.01%とするのが望ましく、上限を0.005%とするのが一層望ましい。
Mg:0.01%以下
Mgは主にSと結合して硫化物を形成し、熱間加工性を高める効果があるので含有させる。ただし、多すぎる添加は逆に粒界脆化を招き、熱間加工性を著しく低下させる。従って、Mgの含有量は0.01%以下の範囲に限定する。
第1回目の時効処理:800℃〜1000℃
第1回目の時効処理によって粒界に炭化物が析出し、クリープ特性を向上させる。ここで、時効処理温度が800℃未満であると炭化物は効果的に析出せず、また、1000℃を超えて加熱すると炭化物の凝集・粗大化が生じるためその効果が消失する。したがって、第1回目の時効処理温度を800℃〜1000℃に定める。なお、時効処理時間はC添加量や熱処理する部材の形状や大きさにより適宜設定されるが、例えば5〜50時間が適当である。
第2回目の時効処理:720〜780℃
第2回目の時効処理によってγ’相を析出させ、所望の強度を付与する。ここで、時効処理温度が720℃未満であると、γ’相が十分に析出せず、実際の高温環境での使用中に更に時効析出が進行し、組織のみならず各種材料特性も変化してしまうことになる。一方、780℃を超えて加熱するとγ’相は粗大化するので効果的な析出強化を図ることが出来なくなる。したがって、第2回目の時効処理温度を720℃〜780℃に定める。なお、時効処理時間は析出強化元素の添加量や熱処理する部材の形状や大きさにより適宜設定されるが、例えば10〜100時間が適当である。
第1回目から第2回目の時効処理に至る工程
第1回目の時効処理からは、その後連続的、あるいは一旦冷材を経由した後に、第2回目の時効処理に至ることができる。ただし、第1回目の時効処理からファン冷却などによって20℃/時間以上の冷却速度で連続的に2回目の時効処理を行うのが望ましい。これは、第1回目から第2回目の時効処理にいたる冷却、あるいは加熱工程においては不可避的に炭化物やγ’相が析出するため、20℃/時間未満の冷却速度では炭化物やγ’相が過剰に析出してしまい所望の機械的特性をコントロールすることが難しくなるためである。
以上説明したように、本発明の組織安定性と高温強度に優れたNi基合金の発明は、質量%で、C:0.005〜0.1%、Cr:8〜15%、Mo:1〜7%、W:5〜20%、Al:0.5〜1.0%、Ti:1.0〜2.5%、B:0.015%以下、Mg:0.01%以下を含有し、所望により、Nb:1.0%以下を含有し、残部がNiと不可避不純物からなるので、700℃以上の高温使用においても組織が安定し、優れた高温特性が得られる。
また、MoとWのバランスを0.1≦Mo/(Mo+W)≦0.5と規定することにより、高温強度、高温延性、クリープ特性がさらに優れたものとなる。
さらに、AlとTiのバランスを0.2≦Al/Ti≦1.0と規定することにより、高温引張り特性、クリープ特性がさらに優れたものとなる。
また、本発明の組織安定性と高温強度に優れたNi基合金材の製造方法は、上記組成を有するNi基合金を、熱間鍛造後、再結晶温度以上で溶体化処理を行い、その後、800℃〜1000℃の範囲で1回目の時効処理を施し、その後、720℃〜780℃の範囲で2回目の時効処理を行うので、γ’相を粗大とならないように十分に析出させるとともに、μ相の析出を回避し、よって高温での使用時に過時効が生じることなく安定した組織状態を有し、かつ優れた高温特性を有するNi基合金材が得られる。
以下に、本発明の一実施形態を説明する。
本発明のNi基合金は常法により溶製することができ、その製造方法が特に限定をされるものではない。ただし、本発明合金は、Si、Mn、P、S、O、Nの不純物をできる限り含有しないのが望ましく、したがって、好適には、VIM−ESRプロセスをとる所謂ダブルメルト法、あるいはVIM−ESR−VARプロセスをとる所謂トリプルメルト法などの溶解法が望ましい。なお、好適には、Si:0.3%以下、Mn:0.2%以下、P:0.01%以下、S:0.005%以下、O:30ppm以下、N:60ppm以下が望ましい。
溶製されたNi基合金は、通常は、熱間鍛造が施されて加工による組織の調整がなされる。なお、本発明としては、熱間鍛造の条件等が特に限定されるものではなく、例えば常法に従って行うことができる。
上記熱間鍛造後に、再結晶温度以上に加熱して溶体化処理を行う。この溶体化処理は、例えば1050〜1200℃において行うことができる。溶体化処理時間としては、材料の大きさ、形状などに応じて、適宜の時間を設定する。溶体化処理は、既知の加熱炉を用いて行うことができ、本発明としては加熱方法や加熱設備が特に限定されるものではない。溶体化処理後には、水冷、油冷、あるいは空冷などにより冷却する。
上記の溶体化処理後に既知の加熱炉などを用いて第1回目の時効処理を行う。該時効処理は、800℃〜1000℃の温度において行われる。該時効処理温度に至る昇温では、本発明としては特に昇温速度が限定されるものではない。第1回目の時効処理後は、第2回目の時効処理を行うが、連続して行ってもよく、一旦冷材を経由した後、行ってもよい。冷材を経由した後の第2回目の時効処理では、同一の加熱炉などを用いてもよく、また、他の加熱炉などを用いることもできる。
なお、第1回目の時効処理から第2回目の時効処理にかけては、ファン冷却などによって冷却をして、連続的に行うのが望ましく、その際の冷却速度は20℃/時間以上とするのが望ましい。
第2回目の時効処理後は、特に冷却速度が限定されるものではなく、放冷、強制冷却などにより冷却することができる。なお、本発明方法では、上記のように第1回目、第2回目の時効処理について規定をしているが、それ以降の時効処理を排除するものではなく、必要に応じて第3回目以降の時効処理を施すことも可能である。
本発明のNi基合金材は、発電機部材のタービンロータなどの素材に用いることができる。ただし、本発明の用途がこれらに限定をされるものではなく、高温での強度特性などが要求される種々の用途に用いることができる。また、高温での長期安定性にも優れており、例えば600〜650℃程度の従来の発電機部材の温度域においても当然に使用することが可能である。
以下に、本発明の実施例を説明する。
表1に示す組成(残部Niとその他不可避不純物)のNi基合金を真空誘導溶解炉(VIM)によって50kg鋳塊に溶製した。該試験鋳塊を拡散処理後、熱間鍛造により厚さ30mmの板材として供試材を得た。各供試材毎に再結晶温度以上の温度にて溶体化処理を施し、その後空冷し一旦冷材とした。840℃×10時間の安定化処理を行い、その後さらに第1回目の時効処理として840℃×10時間の条件で加熱処理をし、炉冷(冷却速度50℃/h)によって冷却をして、連続的に第2回目の時効処理を行った。第2回目の時効処理では、750℃×24時間の条件で加熱処理をし、その後、炉冷(冷却速度50℃/h)により冷却して供試材を用意した。
得られた供試材について、室温引張試験および高温(700℃)引張試験を行い、さらに荷重条件を変えたクリープ試験を行った。試験結果の一覧を図1、2に示す。図1から明らかなように、本発明の供試材(No.1〜14)は、短時間引張特性においては室温及び700℃共に良好な強度と高い延性を兼ね揃えており、また、図2に示すように、本発明の供試材は、700℃でのクリープ破断特性においても良好な破断時間と破断延性を示している。一方、比較材(No.15〜24)では短時間引張特性が良好でも、クリープ破断特性が十分でない、あるいはその逆といった試験結果であった。即ち、室温や700℃での短時間強度は十分な強度を示すものの延性が低く、特にクリープ破断延性の著しい低下現象が認められ、あるいは短時間引張延性やクリープ破断延性が良好な値であっても、強度が不十分なためクリープ破断延性が全く不足しているといった結果であった。即ち、本発明材においては、室温、及び700℃での強度と延性バランスに優れ、かつ、700℃でのクリープ破断時間及びクリープ破断延性も極めて高い特性を得ることが出来るものであった。
図3及び図4には、Al/Ti比を変動させた供試材における700℃での短時間引張特性とクリープ破断特性を供試材No.4を1として比較した相対評価結果を示す。なお、供試材No.4がAl/Ti=0.8/1.8≒0.3、供試材No.3がAl/Ti=0.8/1.6≒0.5、供試材No.1がAl/Ti=0.8/1.2≒0.7、供試材No.20がAl/Ti=1.4/0.8≒1.8、供試材No.19がAl/Ti=1.8/Free(Ti無添加材)であり、AlとTi以外の元素の含有量はほぼ一定となっている。700℃の短時間引張特性では、強度とAl/Ti比の相関、あるいはTi無添加の影響は認められないが、Al/Ti比が1を超える供試材(No.20)とTi無添加の供試材(No.19)において延性が若干低下する傾向が認められた。一方、700℃のクリープ破断特性では、Al/Ti比が高くなるにつれて、またTi無添加の供試材にてクリープ破断時間が明らかに低下する傾向を示した。また、特にクリープ破断延性においては、Al/Ti比が1を超える供試材(No.20)とTi無添加の供試材(No.19)で著しい低下が生じ、Al/Ti比が0.8未満の供試材との差は明らかであった。
上記の結果は、図5に示したNo.3とNo.20の粒界近傍のEPMA分析結果により説明することが出来る。安定化処理+時効処理まま材(840℃×10h+750℃×24h)では、Al/Ti比によらず粒界には成分の濃化は認められないが、安定化処理+時効処理材に更に700℃×1000hの長時間時効処理を施すと、粒界にAlが濃化することが明らかとなった。これは、長時間時効処理中に粒界に優先的にγ’相が析出し、時効時間の経過と共に凝集粗大化したものである。すなわち、Al/Tiの比率が高い材料ではγ’相が粒界に析出しやすく、かつ析出−凝集粗大化のスピードが著しく早まるため、高温での引張り特性、特に高温に晒されている時間が長くなるクリープ試験において破断延性が顕著に低下する。したがって、高温での良好な特性を得るためにAl含有量の上限を低く抑えることが必要であり、さらには、Al/Tiのバランスを適切に定めるのが望ましいことが明らかとなった。
さらに、表1に示した供試材において、Mo/W比を変動させた供試材No.22、No.1、No.2、およびNo.23の700℃におけるクリープ破断特性を比較した結果を図6に示す。なお、供試材No.22がMo無添加材、供試材No.1がMo/(Mo+W)=0.3、供試材No.2がMo/(Mo+W)=0.5、供試材No.23がW無添加材であり、MoとW以外の元素の含有量はほぼ一定となっている。図6から明らかなように、Mo無添加材の供試材No.15とW無添加材の供試材No.16ではクリープ破断延性が著しく低下し、MoとWの複合添加により、良好なクリープ破断特性と破断延性が得られる事が判明した。
更に、Mo/W比を変動させた供試材No.22、No.1、No.2、およびNo.23の安定化処理+時効処理まま材(840℃×10h+750℃×24h)に、更に700℃×1000hの長時間時効処理を施すと、図7に示すように、14%Mo材(W Free)である供試材No.23にて、粒界及び粒内にμ相と推定される針状の析出物が多数確認された。これに対して、Mo量が7%以下の供試材No.22、No.1、No.2では、700℃×1000hの長時間時効処理後のミクロ組織は安定化処理+時効処理まま材の組織と全く変化しておらず、高温組織安定性が非常に優れている事が判明した。
また、Mo/W比を変動させた供試材No.22、No.1、No.2、およびNo.23については、図8に示す4種の時効条件にて室温、および700℃にて引張試験を実施した。その結果を図9に示す。何れの時効条件においても室温強度はMo/(Mo+W)の値が高くなるにつれて低下し、特にMo/(Mo+W)=1でのT.S.の低下が顕著であった。また室温延性については、Mo/(Mo+W)=0.5までは良好な値を保っているものの、Mo/(Mo+W)=1になると強度と同様急激に低下した。一方、700℃での強度は、0.2%Y.S.とT.S.とで異なる挙動を示した。即ち、700℃における0.2%Y.S.は室温強度と同様にMo/(Mo+W)の値が高くなるにつれて低下したが、T.S.はMo/(Mo+W)=0.3、および0.5で最大値となる傾向を示した。更に、700℃での延性はMo/(Mo+W)=0で最小値をとり、Mo/(Mo+W)の値が高くなるにつれて向上する傾向を示し、特にEl.にてその傾向が顕著に表れていた。従ってMo量、及びW量に関しては、これら機械的特性と組織安定性の観点からMoの添加量は1〜7%に限定した上で、0.1≦Mo/(Mo+W)≦0.5とするのが望ましい事が明らかである。
本発明の一実施例における供試材の室温および高温での引張特性の試験結果を示す図である。 同じく、供試材の700℃におけるクリープ試験の結果を示す図である。 同じく、Al/Ti比を変動させた供試材の700℃における短時間引張特性の試験結果を示す図である。 同じく、Al/Ti比を変動させた供試材の700℃におけるクリープ試験の結果を示す図である。 同じく、Al/Ti比を変動させた供試材のEPMA結果を示す図面代用写真である。 同じく、Mo/W比を変動させた供試材の700℃におけるクリープ破断試験結果を示す図である。 同じく、Mo/W比を変動させた供試材のEPMA結果を示す図面代用写真である。 同じく、実施例に採用する時効条件A〜Dのヒートパターンを示す図である。 同じく、Mo/W比および時効条件を変えた供試材の室温および700℃における短時間引張特性の試験結果を示す図である。

Claims (4)

  1. 質量%で、C:0.005〜0.1%、Cr:8〜15%、Mo:1〜7%、W:5〜20%、Al:0.5〜1.0%、Ti:1.0〜2.5%、B:0.015%以下、Mg:0.01%以下を含有し、残部がNiと不可避不純物からなり、前記Mo含有量とW含有量とが下記式1を満たし、かつ、前記Al含有量とTi含有量とが下記式2を満たすことを特徴とする組織安定性と高温強度に優れたNi基合金。
    0.1≦Mo/(Mo+W)≦0.5 …式1
    0.2≦Al/Ti≦1.0 …式2
  2. 質量%で、さらに、Nb:1.0%以下を含有することを特徴とする請求項1記載の組織安定性と高温強度に優れたNi基合金。
  3. 請求項1または2に記載の組成を有するNi基合金を、熱間鍛造後、再結晶温度以上で溶体化処理を行い、その後、800℃〜1000℃の範囲で1回目の時効処理を施し、その後、720℃〜780℃の範囲で2回目の時効処理を行うことを特徴とする組織安定性と高温強度に優れたNi基合金材の製造方法。
  4. 前記1回目の時効処理後、20℃/h以上の冷却速度で2回目の時効処理温度にまで冷却して連続して時効処理を行うことを特徴とする請求項記載の組織安定性と高温強度に優れたNi基合金材の製造方法。
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