上記目的を達成するための本発明に係る土木構造体における第1の特徴は、前記筒状織物と、前記筒状織物の内部に前記充填材として軽量土が充填されることで形成されている軽量土層と、前記筒状織物の内部に前記充填材として前記軽量土よりも圧縮強度が高い高強度充填材が充填されることで形成されている高強度層と、を備え、前記軽量土層と前記高強度層とは、互いに区画されて配置されているとともに、それぞれ前記筒状織物の長手方向に沿って延びるように配置されていることである。
この構成によると、筒状織物の内部に、その長手方向に沿って延びるとともに区画されて配置された軽量土層と高強度層とを形成することができるため、比重の小さい軽量土層と圧縮強度の高い高強度層との構成比率を適宜設定することで、土木構造体の強度と重量とのバランスを容易に調整することができる。このため、十分な強度を確保するとともに作業環境に応じた容易な取り扱いを可能にする土木構造体を得ることができる。そして、この土木構造体を用いた地盤補強工法を行うことで、地盤補強作業の効率を向上させることができる。また、軽量土層よりも高強度層により高い圧縮力が作用するように土木構造体を配置することを前提として高強度層の比率を設定することができ、高強度層をより効率よく配置して、必要な強度を確保しつつより土木構造体の軽量化を図ることができる。
また、本発明に係る土木構造体における第2の特徴は、前記軽量土は、発泡廃ガラス、発泡ビーズ、およびゴムチップのうちの少なくともいずれか、またはこれらのうちの少なくともいずれかと粘土および砂質土のうちの少なくともいずれか一方との混合土、のうちのいずれかであることである。
この構成によると、発泡廃ガラス、発泡ビーズ、ゴムチップ、またはこれらと粘土や砂質土との混合土といった簡易な材料を単体でもしくは適宜組み合わせて軽量土として用いることができるため、軽量土層を容易に形成することができる。
この構成によると、エアモルタルやエアミルクといった簡易な材料を軽量土として用いることができるため、これらを筒状織物に注入することで軽量土層を容易に形成することができる。
また、本発明に係る土木構造体における第4の特徴は、前記高強度充填材は、金属、樹脂、コンクリート材料、セメントミルクおよび土質材料のうちの少なくともいずれかであることである。
この構成によると、金属、樹脂、コンクリート材料、セメントミルク、土質材料といった簡易な材料を単体でもしくは適宜組み合わせて高強度充填材として用いることができるため、高強度層を容易に形成することができる。
また、本発明に係る土木構造体における第5の特徴は、前記筒状織物は二重筒として形成されており、当該筒状織物の外筒の内周と内筒の外周との間に前記高強度層が形成されていることである。
この構成によると、二重筒として形成された筒状織物における外筒と内筒との間に高強度充填材を充填することで、軽量土層と区画された状態で、筒状織物の長手方向に延びる高強度層を容易に形成することができる。そして、外筒と内筒との間に高強度層を形成するため、土木構造体の外周近傍部分において周方向に亘ってほぼ偏りなく均一に分布した高強度層を形成し易い。このため、施工時において土木構造体の配置にあたり、長手方向と垂直な断面における強度上の偏りがなく取り扱いが容易になる。また、内筒の断面積寸法を適宜設定することで土木構造体としての強度と重量とのバランスを容易に調整することができる。
また、本発明に係る土木構造体における第6の特徴は、前記筒状織物は、二重筒として形成されているとともに、その長手方向と垂直な断面において外筒の中心位置と内筒の中心位置とが偏心するように形成されており、前記内筒の内部に前記高強度層が形成されていることである。
この構成によると、二重筒として形成された筒状織物における内筒の内部に高強度充填材を充填することで高強度層を容易に形成することができる。そして、外筒の中心位置と内筒の中心位置とが偏心していて内筒の内部に高強度層が形成されているため、軽量土層よりも高強度層により高い圧縮力が作用するように高強度層を配置することを容易に実現できる。これにより、高強度層をより効率よく配置できるため、必要な強度を確保しつつより土木構造体の軽量化を図ることができる。また、内筒の断面積寸法を適宜設定することで土木構造体としての強度と重量とのバランスを容易に調整することができる。
また、前述の目的を達成するための本発明に係る地盤補強工法は、前述した本発明の土木構造体を用いた地盤補強工法であって、前記軽量土層よりも前記高強度層により大きい圧縮力が作用するように前記土木構造体を配置することを特徴とする。
以下、本発明の実施の形態の土木用袋体、土木構造体、地盤補強工法について図面を参照しながら説明する。
(土木用袋体の実施形態)
本発明の実施形態に係る土木用袋体は、内部に充填材を充填することで土木構造体を形成するために用いられるものとして広く適用することができるものである。以下、第1乃至第3実施形態に分けて説明する。
図1は、第1実施形態の土木用袋体1を示す斜視図である。この図1に示すように、土木用袋体1は、外筒11と内筒12とを有する二重筒構造の筒状織物として形成されている。そして、この土木用袋体1では、外筒11の内部で内筒12が外筒11の長手方向に沿って延びるように配置されている。外筒11及び内筒12を構成する筒状織物は、周方向において継ぎ目の無い円筒断面の織物として形成されている。なお、この土木用袋体1は、図2に示すように、外筒11の内部に内筒12を挿通することで作製される。
図3は筒状織物の長手方向(土木用袋体1の長手方向)と垂直な断面を示したものであるが、この図3に示すように、土木構造体の形成に用いる際に同心円状に外筒11と内筒12とを配置して用いることができる。また、土木構造体の形成に用いる際に、筒状織物の長手方向と垂直な断面において外筒11の中心位置と内筒12の中心位置とを偏心するように配置して用いることもできる。また、外筒11の内周と内筒12の外周とを部分的に接合しておき、外筒11の中心位置と内筒12の中心位置とが必ず偏心するように形成してもよい。
この土木用袋体1によると、外筒11の内部で内筒12が長手方向に沿って延びるように配置された二重筒構造の筒状織物として形成される。このため、この土木用袋体1を用いて土木構造体を形成する際に、外筒11の内周と内筒12の外周との間の領域と、内筒12の内部の領域とに、それぞれ強度と比重が異なる充填材を充填することが可能になる。これにより、外筒11と内筒12の直径を適宜設定することで各々の充填材の占める断面積を調整でき、作製する土木構造体の強度と重量とのバランスを容易に調整することができる。したがって、この土木用袋体1を用いることで、十分な強度を確保するとともに作業環境に応じた容易な取り扱いを可能にする土木構造体を形成することができる。
次に土木用袋体の第2実施形態について説明する。図4及び図5は第2実施形態の土木用袋体2を示す断面図であり、図4は筒状織物の長手方向と平行な断面で示したものであり、図5は長手方向と垂直な断面で示したものである。なお、図4は図5のIV−IV線矢視断面図になっており、図5は図4のV−V線矢視断面図になっている。
図4及び図5に示す土木用袋体2は、第1実施形態の土木用袋体1と同様に、外筒11と内筒12とを備えているが、土木用袋体1とは異なり、さらに複数のスペーサ13を備えている。スペース13は、リング状に形成されており、外筒11の内周と内筒12の外周との間にて筒状織物の長手方向における複数箇所に設けられている。そして、このスペーサ13が外筒11の内周と内筒12の外周との間の領域に配置されることで、その領域に空間を形成するようになっている。なお、各スペーサ13には、外筒11内に充填材が充填されたときにスペーサ13を充填材が通過して流動することができるようにするための複数の孔13aが設けられている。
この土木用袋体2によると、外筒11と内筒12との間にリング状のスペーサ13が設けられているため、外筒11の内周と内筒12の外周との間の領域を周方向に亘ってほぼ偏りなく均一な幅のリング状断面の空間として形成することができる。また、筒状織物の長手方向における複数箇所にスペーサ13が設けられているため、長手方向に亘っても上記リング状断面の空間をほぼ偏りなく形成することができる。このため、土木構造体を形成するに際して、外筒11の内周と内筒12の外周との間の領域と、内筒12の内部の領域とに対して、それぞれ強度と比重の異なる充填材を充填することで、長手方向においてほぼ均一なリング状断面の層構造を持った土木構造体を形成することができる。
次に土木用袋体の第3実施形態について説明する。図6は第3実施形態の土木用袋体3を示す斜視図であり、図7は土木用袋体3の長手方向と垂直な断面での断面図である。図6及び図7に示す土木用袋体3は、第1実施形態の土木用袋体1と同様に、外筒14と内筒15とを有する二重筒構造の筒状織物として形成されるとともに、外筒14の内部で内筒15が外筒14の長手方向に沿って延びるように配置されている。しかし、第1実施形態とは異なり、土木用袋体3では、外筒14と内筒15とが、筒状織物の長手方向において一体化された織物として形成されている。すなわち、直線状に設けられている仕切り部16を介して外筒14と内筒15とが一体化された状態として形成されている。
図8は、土木用袋体3を作製する工程の例を説明する斜視図である。図8に作製工程を例示する土木用袋体3は、大小径筒部形成工程と、二重筒形成工程とを経て作製される。
図8に示すように、大小径筒部形成工程では、一重筒構造の筒状織物に対して、その長手方向と垂直な断面において断面積の異なる2つの閉断面が形成されるように一重筒構造の筒状織物の内面同士を部分的に接合して長手方向に亘って連続する仕切り部16が設けられる。この仕切り部16は、例えば、縫製によって形成される。そして、大小径筒部形成工程では、この連続する仕切り部16が設けられることで、断面積の大きい大径筒部17と断面積が小さい小径筒部18とが仕切り部16を挟んで配置されて長手方向に平行に延びるように形成される。
二重筒形成工程は、大小径筒部形成工程に引き続いて行われる。二重筒形成工程では、仕切り部16が設けられて大径筒部17と小径筒部18とが形成された筒状織物に対して、図8に矢印で示すように大径筒部17の表裏を裏返していくことで、最終的に図6に示すような二重筒構造が形成される。すなわち、土木用袋体3では、裏返された大径筒部17により外筒14が構成され、大径筒部17の中に入れられた小径筒部18により内筒15が構成されることになる。
この土木用袋体3によると、大小径筒部形成工程を行った後に大径筒部17の表裏を裏返す二重筒形成工程を経て作成されるため、外筒14と内筒15とが筒状織物の長手方向において一体化された織物としての土木用袋体を容易に形成することができる。
(土木構造体の実施形態)
次に、土木構造体の実施形態について説明する。本発明の実施形態に係る土木構造体は、筒状織物の内部に充填材が充填されることで形成されるものとして広く適用することができるものである。以下、第1乃至第5実施形態に分けて説明する。
図9は第1実施形態の土木構造体21を示す正面図であり、図10は図9のX−X線矢視断面図である。図9および図10に示すように、土木構造体21は、筒状織物31と、比重の小さい軽量土層32と、圧縮強度の高い高強度層33とを備えて構成されている。
図9に示す筒状織物31は、図11の斜視図に示すような一重筒構造の土木用袋体の長手方向における両端部分を例えば縫製により閉じ合わせることによって形成されている。軽量土層32は、筒状織物31の内部に充填材として軽量土が充填されることで形成されている。高強度層33は、筒状織物31の内部充填材として軽量土よりも圧縮強度が高い高強度充填材が充填されることで形成されている。軽量土層32と高強度層33とは、互いに区画されて積層状態で配置されているとともに、それぞれ筒状織物31の長手方向に沿って延びるように配置されている。なお、図9では、軽量土層32および高強度層33は表れないため点線で示している。
軽量土層32を形成する軽量土としては、発泡廃ガラス、発泡ビーズ、およびゴムチップのうちの少なくともいずれか、またはこれらのうちの少なくともいずれかと粘土および砂質土のうちの少なくともいずれか一方との混合土、のうちのいずれかを用いることができる。また、軽量土として、エアモルタルまたはエアミルクを用いることもできる。高強度層33を形成する高強度充填材としては、金属、樹脂、コンクリート材料、セメントミルクおよび土質材料のうちの少なくともいずれかを用いることができる。
図12乃至図14は、上述した構成を備える土木構造体21の作製方法を説明する断面図である。なお、いずれの断面図とも、筒状織物31の長手方向と平行な断面を示している。土木構造体21の作製においては、まず、図11に示す一重筒構造の筒状織物31の長手方向両端部分を縫製等により閉じ合わせ、さらに、その筒状織物31に充填材を注入するための注入口34を例えば筒状織物31の一端側に設ける(図12参照)。
筒状織物31の両端部分を閉じて注入口34を設けると、この筒状織物31を水平に載置する。そして、注入口34から図12中に矢印(a)で示すようにエアミルク等の流動化した状態の軽量土を注入し、筒状織物31の内部に軽量土35を充填する。この状態で暫く放置すると、その間に軽量土35から脱水が生じて図12中に矢印(b)で示すように軽量土35中の水分が徐々に筒状織物31の外へと流出することになる。
図13は、筒状織物31の内部に軽量土35を充填して暫く放置した後の状態を示したものである。この図13に示すように、軽量土35から脱水が生じて硬化すると、筒状織物31の内部においてその上部に空間36が形成されることになる。この空間36が形成された状態になると、図14にて矢印(c)で示すように注入口34からセメントミルク等の高強度充填材37を注入し、筒状織物31の内部の空間36に高強度充填材37を充填する。空間36内に高強度充填材37を充満させた状態で硬化させると、筒状織物31の長手方向に亘って図10に示す軽量土層32と高強度層33とが積層状態で配置された土木構造体21が形成されることになる。
以上説明した土木構造体21によると、筒状織物31の内部に、その長手方向に沿って延びるとともに区画されて配置された軽量土層32と高強度層33とを形成することができるため、軽量土層32と高強度層33との構成比率を適宜設定することで、土木構造体21の強度と重量とのバランスを容易に調整することができる。このため、十分な強度を確保するとともに作業環境に応じた容易な取り扱いを可能にする土木構造体21を得ることができる。そして、この土木構造体21を用いた地盤補強工法を行うことで、地盤補強作業の効率を向上させることができる。また、軽量土層32よりも高強度層33により高い圧縮力が作用するように土木構造体21を配置することを前提として高強度層33の比率を設定することができ、高強度層33をより効率よく配置して、必要な強度を確保しつつより土木構造体の軽量化を図ることができる。
また、土木構造体21によると、発泡廃ガラス、発泡ビーズ、ゴムチップ、またはこれらと粘土や砂質土との混合土といった簡易な材料を単体でもしくは適宜組み合わせて軽量土35として用いることができるため、軽量土層33を容易に形成することができる。また、土木構造体21によると、エアモルタルやエアミルクといった簡易な材料を軽量土35として用いることもできるため、これらを筒状織物31に注入することで軽量土層32を容易に形成することができる。
また、土木構造体21によると、金属、樹脂、コンクリート材料、セメントミルク、土質材料といった簡易な材料を単体でもしくは適宜組み合わせて高強度充填材37として用いることができるため、高強度層33を容易に形成することができる。
次に土木構造体の第2実施形態について説明する。図15は、第2実施形態の土木構造体22を示す断面図であり、土木構造体22における長手方向と垂直な断面を示したものである。この土木構造体22は、土木用袋体の実施形態における第1実施形態の土木用袋体1を用いて作製することができる。
図15に示すように、土木構造体22は、二重筒として形成されている筒状織物であって外筒11と内筒12とを有する土木用袋体1と、比重の小さい軽量土層38と、圧縮強度の高い高強度層39とを備えて構成されている。そして、筒状織物の外筒11の内周と内筒12の外周との間に高強度層39が形成され、内筒12の内部に軽量土層38が形成されている。軽量土層38および高強度層39は、土木構造体22の長手方向に亘って同心円状の二層断面を形成するように設けられている。なお、軽量土層38を構成する軽量土と、高強度層39を構成する高強度充填材とについては、第1実施形態の土木構造体21と同様の軽量土および高強度充填材を用いることができる。
土木構造体22を作製するときは、土木用袋体1の外筒11と内筒12とを別々に準備し、外筒11に対しては内部に充填材を注入可能な外筒用注入口を取り付け、内筒12に対しては内部に充填材を注入可能な内筒用注入口を取り付ける。そして、内筒12の長手方向における両端部分を縫製等によって閉じ合わせてから、内筒用注入口からエアミルク等の軽量土を注入して内筒12の内部に充満させて硬化させる。内筒12内の軽量土が硬化すると、この内筒12を外筒11の中に入れた状態で、外筒11の長手方向の両端部分を内筒12の長手方向の両端部分とともにそれぞれ縫製等によって閉じ合わせる。そして、この外筒11と内筒12とを真っ直ぐに吊り下げて、外筒用注入口からセメントミルク等の高強度充填材を注入する。これにより、外筒11の内周と内筒12の外周との間の領域に高強度充填材が充填されることになる。高強度充填材が硬化することで、二重筒の内側に軽量土層38が外側に高強度層39が同心円状に形成された土木構造体22が形成されることになる。なお、作製方法は必ずしもこの通りでなくてもよく、両端部分の閉じ合わせタイミングを変更してもよく、吊り下げる工程を経ずに作製してもよい。また、内筒用注入口や外筒用注入口を用いずに作製してもよい。
ここで、土木構造体22について実際に作製した実施例について説明する。土木用袋体1としては、経糸が295dtex/4×2×311本、緯糸が1222dtex/3×5.5本/cmで織成された呼称φ50cmの筒状織物を外筒とし、経糸が295dtex/6×2×130本、緯糸が1833dtex/1×6本/cmで織成された呼称φ25cmの筒状織物を内筒として用いた二重筒のポリエステル製筒状織物を用いた。そして、軽量土としてエアミルクを用いて軽量土層38を形成し、高強度充填材としてポルトランドセメントを用いて高強度層39を形成して土木構造体22の試験片を作製した。なお、作製後における試験片は、軽量土層38の直径が30mm、高強度層39の直径(外径)が55.6mm、長さ(長手方向の寸法)が400であった。なお、高強度層39のポルトランドセメントのW/C%は60%であり、軽量土層38のエアミルクは表1に示す配合のものを用いた。
上述した試験片に対して、万能試験機を用いて試験速度5mm/min、支点間距離168mmで3点曲げ試験を行った。図16は、この3点曲げ試験結果を示したものであり、曲げ応力−ひずみ曲線を示したものである。なお、点線は土木構造体22の試験片と外径寸法が同一のポルトランドセメント単体の比較用試験片(袋体は用いられていないもの)の強度レベルを示している。図16に示すように、土木構造体22の試験片は、変位に対して急激に応力が増加し、充填材が初期破壊(初期破壊が発生したポイントを図中矢印Aで示す)を起こした後も応力は増加し続け、応力値21MPaで荷重点下の引張側で試験片が破断した。ポルトランドセメント単体の強度7MPaと比較すると、3倍の強度を有することがわかった。この結果より、土木構造体22によると、ポルトランドセメント単体よりも強度を向上させつつ軽量化も図れることが確認された。
以上説明した土木構造体22によると、第1実施形態の土木構造体21と同様に、十分な強度を確保するとともに作業環境に応じた容易な取り扱いを可能にする土木構造体を得ることができる。そして、この土木構造体22によると、二重筒として形成された筒状織物における外筒11と内筒12との間に高強度充填材を充填することで高強度層39を容易に形成することができる。そして、外筒11と内筒12との間に高強度層39を形成するため、土木構造体の外周近傍部分において周方向に亘ってほぼ偏りなく均一に分布した高強度層39を形成し易い。このため、長手方向と垂直な断面における強度上の偏りがなく、施工時において土木構造体の配置にあたり、その外周面のどの位置でも高い圧縮力が作用する側に向けることができ、取り扱いが容易になる。また、内筒12の断面積寸法を適宜設定することで土木構造体としての強度と重量とのバランスを容易に調整することができる。
次に土木構造体の第3実施形態について説明する。図17は、第3実施形態の土木構造体23を示す断面図であり、土木構造体23における長手方向と垂直な断面を示したものである。この土木構造体23は、土木構造体22と同様に、土木用袋体の実施形態における第1実施形態の土木用袋体1を用いて作製することができる。
図17に示すように、土木構造体23は、二重筒として形成されている筒状織物であって外筒11と内筒12とを有する土木用袋体1と、比重の小さい軽量土層40と、圧縮強度の高い高強度層41とを備えて構成されている。そして、筒状織物の外筒11の内周と内筒12の外周との間に高強度層41が形成され、内筒12の内部に軽量土層40が形成されている。土木構造体23の長手方向と垂直な断面において外筒11の中心位置と内筒12の中心位置とが偏心するように、軽量土層40と高強度層41とが形成されている。また、軽量土層40および高強度層41は、土木構造体23の長手方向に亘って偏心した状態のままの二層断面を形成するように設けられている。なお、軽量土層40を構成する軽量土と、高強度層41を構成する高強度充填材とについては、第1実施形態の土木構造体21と同様の軽量土および高強度充填材を用いることができる。
図18は、土木構造体23を作製する工程を例示した断面図である。まず、二重筒状態の土木用袋体1において、両端部分を縫製等により閉じた内筒12に対して、図18(a)に示すように、取り付けた内筒用注入口(図示せず)から軽量土42を注入して内部に充填する。そして、軽量土42を硬化させた後、外筒11の両端部分を縫製等により閉じ合わせ、図18(b)に示すように、取り付けた外筒用注入口(図示せず)から高強度充填材を注入して外筒11と内筒12との間に充満させる。このとき、高強度充填材43よりも軽量土42の方が比重が小さいため、その比重差によって軽量土42が充填された内筒12が高強度充填材43中で浮き上がることになる(図18(b)参照)。このまま高強度充填材43を硬化させることで外筒11の中心位置と内筒12の中心位置とが偏心した軽量土層40と高強度層41とを有する断面状態の二重筒構造の土木構造体23が形成されることになる。なお、外筒11および内筒12の両端部分を閉じ合わせるタイミング、充填材(42、43)の注入の仕方、軽量土42の硬化タイミングと高強度充填材43の注入タイミングとの関係などについては、適宜変更して実施することができる。
次に土木構造体の第4実施形態について説明する。図19は、第4実施形態の土木構造体24を示す断面図であり、土木構造体24における長手方向と垂直な断面を示したものである。この土木構造体24は、第3実施形態の土木構造体23に対して軽量土層と高強度層との配置が入れ替わったものとして形成されている。
図19に示すように、土木構造体24は、二重筒として形成されている筒状織物であって外筒11と内筒12とを有する土木用袋体1と、比重の小さい軽量土層44と、圧縮強度の高い高強度層45とを備えて構成されている。そして、筒状織物の外筒11の内周と内筒12の外周との間に軽量土層44が形成され、内筒12の内部に高強度層45が形成されている。土木構造体24の長手方向と垂直な断面において外筒11の中心位置と内筒12の中心位置とが偏心するように、軽量土層44と高強度層45とが形成されている。また、軽量土層44および高強度層45は、土木構造体24の長手方向に亘って偏心した状態のままの二層断面を形成するように設けられている。なお、軽量土層44を構成する軽量土と、高強度層45を構成する高強度充填材とについては、第1実施形態の土木構造体21と同様の軽量土および高強度充填材を用いることができる。
土木構造体24を作製するときは、例えば、二重筒状態の土木用袋体1を水平に載置した状態で、まず、内筒12内に高強度充填材を充填して硬化させ、次いで、水平に載置した状態のままで外筒11と内筒12との間に軽量土を充填して硬化させることで形成することができる。
この土木構造体24によると、二重筒として形成された筒状織物における内筒12の内部に高強度充填材を充填することで、軽量土層44と区画された状態で、筒状織物の長手方向に延びる高強度層45を容易に形成することができる。そして、外筒11の中心位置と内筒12の中心位置とが偏心していて内筒11の内部に高強度層45が形成されているため、軽量土層44よりも高強度層45により高い圧縮力が作用するように高強度層45を配置することを容易に実現できる。これにより、高強度層45をより効率よく配置できるため、必要な強度を確保しつつより土木構造体の軽量化を図ることができる。また、内筒12の断面積寸法を適宜設定することで土木構造体としての強度と重量とのバランスを容易に調整することができる。
次に土木構造体の第5実施形態について説明する。図20は、第5実施形態の土木構造体25を示す断面図であり、土木構造体25における長手方向と垂直な断面を示したものである。この土木構造体25は、土木用袋体の実施形態における第3実施形態の土木用袋体3を用いて作製することができる。
図20に示すように、土木構造体25は、その長手方向において一体化された二重筒として形成されている筒状織物であって外筒14と内筒15とを有する土木用袋体3と、比重の小さい軽量土層46と、圧縮強度の高い高強度層47とを備えて構成されている。そして、筒状織物の外筒14の内周と内筒15の外周との間に軽量土層46が形成され、内筒15の内部に高強度層47が形成されている。土木構造体25の長手方向と垂直な断面において外筒14の中心位置と内筒15の中心位置とが偏心するように、軽量土層46と高強度層47とが形成されている。また、軽量土層46および高強度層47は、土木構造体25の長手方向に亘って偏心した状態のままの二層断面を形成するように設けられている。なお、軽量土層46を構成する軽量土と、高強度層47を構成する高強度充填材とについては、第1実施形態の土木構造体21と同様の軽量土および高強度充填材を用いることができる。
土木構造体25を作成するときは、例えば、土木用袋体3を水平に載置した状態で、まず、内筒15内に高強度充填材を充填して硬化させ、次いで、水平に載置した状態のままで外筒14と内筒15との間に軽量土を充填して硬化させることで形成することができる。
この土木構造体25によると、二重筒として形成された筒状織物における内筒15の内部に高強度充填材を充填することで高強度層47を容易に形成することができる。そして、外筒14の中心位置と内筒15の中心位置とが偏心していて内筒15の内部に高強度層47が形成されているため、軽量土層46よりも高強度層47により高い圧縮力が作用するように高強度層47を配置することを容易に実現できる。これにより、高強度層47をより効率よく配置できるため、必要な強度を確保しつつより土木構造体の軽量化を図ることができる。また、内筒15の断面積寸法を適宜設定することで土木構造体としての強度と重量とのバランスを容易に調整することができる。また、外筒14と内筒15とが一体化された織物として形成されているため、外筒14の内部で内筒15の位置が長手方向においてずれることがなく、安定した断面形状の軽量土層46と高強度層47とを容易に形成することができる。
図21は、土木構造体25を複数用いて浮島を構築する例を説明する斜視図である。この浮島は、並列配置した土木構造体25とシート48とを複数層積層することで構築されている。そして、並列配置された土木構造体25の斜視断面図である図22に示すように、外筒14と内筒15との間に充填されたエアモルタル等からなる軽量土層46に対して、内筒15内に充填されたモルタル等からなる高強度層47が天井側(上側)に位置するように、各土木構造体25が配置されている。これにより、軽量土層46よりも高強度層47により大きい圧縮力が作用するように各土木構造体25が配置されることになり、曲げ荷重に対して十分な耐力を発揮することができる。そして、筏状に組み合わされた土木構造体25における軽量土層46によって十分な軽量化が図れていることで、水に浮かぶ浮島を構築することができる。このように、土木構造体25の軽量性と梁としての剛性とを利用することで、浮島の基盤を作製することができる。なお、土木構造体25と同様に土木構造体21〜24を用いて浮島を構築することもできる。
(地盤補強工法の実施形態)
次に、地盤補強工法の実施形態について説明する。本発明の実施形態に係る地盤補強工法は、上述した第1乃至第5実施形態の土木構造体(21〜25)のいずれかを単独で若しくは適宜組み合わせて用いた地盤補強工法として実施される。そして、軽量土層よりも高強度層により大きい圧縮力が作用するように土木構造体(21〜25)を配置することで行われる。
図23は、土木構造体25を用いた地盤補強工法によって軟弱地盤を補強する地盤補強構造の例を説明する斜視図である。補強する軟弱地盤49上にシート50を配置し、そのシート50上に土木構造体25を格子状に配置することで、図23に示す地盤補強構造を構築することができる。土木構造体25としては、例えば、内筒15の内部には高強度充填材として砂を緻密に充填し、外筒14と内筒15との間には軽量土として発泡廃ガラスを充填したものを用いることができる。
この地盤補強構造を恒久的な地盤として形成してその上に道路等を構築することもでき、また、恒久的な地盤としてだけでなく仮設地盤として形成してその上に例えば鉄板等を載置して仮設の道路等を構築することもできる。また、具体的には、例えば、山間部での休耕田を一時的に重機が走行できる仮設道路として使用したり、台風災害等で発生した泥土流出地帯に重機等の機材が設置できる仮設地盤を形成したりすることに利用することができる。なお、土木構造体25と同様に土木構造体21〜24を用いて図23に示す地盤補強構造を構築することもできる。
図24は、土木構造体21を格子状に組み合わせて地盤補強構造を構築する場合を説明する平面図である。まず、軟弱地盤等の上において、筒状織物31からなる一重筒構造の各土木用袋体を内部が互いに連通する状態で接合して格子状に組み合わせて配置する。そして、複数の土木用袋体のうちの一つに設けられた注入口51から軽量土を充填して脱水硬化させ、次いで高強度充填材を注入口51から充填して硬化させることで、土木構造体21が格子状に組み合わされた状態を形成し、地盤補強構造を構築することができる。なお、図中に点線で示す矢印は土木用袋体中における充填材の流動する経路を示したものである。
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は前述の実施の形態に限られるものではなく、特許請求の範囲に記載した限りにおいて様々に変更して実施することが可能なものである。