本発明は、フレキシブルタイプの絶縁性基板を用いた薄膜太陽電池をロール・ツー・ロール方式により製造する薄膜太陽電池製造方法および製造装置に関する。
近年、環境保護重視の立場からいわゆるクリーンエネルギーの研究開発が進められている。その中でも太陽電池は、その資源である太陽光が事実上無限に利用可能であること、太陽エネルギーを直接電気エネルギーへ変換するものであるため従来の他の発電と比較して無公害であること等から極めて注目を集めている。
同一基板上に形成された複数の光電変換素子が直列接続された太陽電池(光電変換装置)の代表例として、薄膜太陽電池が挙げられる(例えば、特許文献1参照。)。薄膜太陽電池は、薄型で軽量であること、量産性に優れているため製造コストが安価であること、大面積化が容易であること等の実用太陽電池に要求される産業上および技術上の利点を有していることから、今後の太陽電池の主流となるものと考えられている。薄膜太陽電池の主な用途は電力供給用であることは勿論であるが、それ以外にも建物の屋根または窓等に取り付けて利用される業務用および一般住宅用の用途にも需要が広がってきている。従来の薄膜太陽電池はガラス基板等の絶縁性基板を用いているものが一般的であった。しかし、厚型で重く割れやすい欠点があることと、屋外の屋根等への設置に対する作業性の改良等の理由とにより、薄型・軽量化の要望が強くなっている。これらの要望に対し、近年、軽量化、施工性および量産性の観点からプラスチックフィルム等の可撓性(フレキシブル)タイプの太陽電池の研究開発が進められ実用化されている。さらに、フレキシブルな金属材料に絶縁被膜した絶縁性フィルム基板を用いた薄膜太陽電池の研究開発および実用化も進められている。このフレキシブル性を生かしたロール・ツー・ロール(Roll to Roll)方式またはステッピングロール方式を用いた連続形成による製造方法により大量生産が可能となった。プラスチックフィルム等のフレキシブルタイプの絶縁性基板上に薄膜太陽電池を形成する場合には、基板の太陽電池の反対面側(裏面とする。)にも電極を配置し、基板を貫通して接続することにより、基板面積に対する太陽電池面積の比を大きくすることができ、太陽光の利用効率が高い等の特徴を持たせることができる。
図3(A)は、上述したプラスチックフィルム等のフレキシブルタイプの絶縁性基板61(以下、単に「基板」と省略する。)を用いた薄膜太陽電池60の概略構造を示す斜視図であり、図3(B)は薄膜太陽電池60の集電孔67(後述)部分の拡大図、図3(C)は薄膜太陽電池60の接続孔68(後述)部分の拡大図である。図3(A)ないし(C)で同じ符号を付した箇所は同じ要素を示す。図3(A)に示されるように、薄膜太陽電池60は、基板61の受光面(表面)側に第1電極層(下電極層)62、薄膜半導体層からなる光電変換層63、電流収集電極である透明電極層(第2電極層ともいう)64が順次積層されて光電変換素子が形成されている。一方、基板61の非受光面(裏面)側には、第3電極層および第4電極層からなる接続電極層(裏面側電極層)65が形成されている。図3(A)と図3(B)の拡大図とに示されるように、基板61を貫通して透明電極層64と接続電極層65との間を導通する集電孔67が設けられている。図3(A)と図3(C)の拡大図とに示されるように、基板61を貫通して接続電極層65と第1電極層62との間を導通する接続孔68が設けられている。
図3(A)に示されるように、薄膜太陽電池60の光電変換素子は複数の単位光電変換素子(ユニットセル)Un−1、Un、Un+1、Un+2等に完全に分離され、接続電極層65も複数の単位セルEn−1,n、En,n+1、En+1,n+2等に完全に分離されている。各分離位置、例えば単位セルUnとUn+1との間の分離位置(セル分割溝。パターニングライン)70と、裏面の単位セルEn−1,nとEn,n+1との間のセル分割溝(パターニングライン)71とは相互にずらして形成されている。このため、ユニットセルUnの光電変換層63で発生した電流は、まず透明電極層64に集められ、次に当該透明電極層64領域に形成された集電孔67を介して裏面側の単位セルEn,n+1の接続電極層65に通じる。さらに、当該接続電極層65領域で、ユニットセルUn+1の透明電極層64領域の外側に形成された直列接続用の接続孔68を介して、ユニットセルUn+1の透明電極層64領域の外側に延びている第1電極層62に達し、両ユニットセルUnとUn+1との間の直列接続が行なわれている。このように、分離された隣合うユニットセルUnとUn+1とを電気的に直列接続することを繰り返すことにより、最初のユニットセルUn等の第1電極層62と最後のユニットセルUn+k等の透明電極層64との間に必要な電圧を出力させることができる。例えばインバータにより交流化し商用電力源として交流100Vを得るためには、100V以上が望まし<、実際には数10個以上のユニットセルが直列接続される。以上のようなユニットセルとその直列接続は、透明電極層64と光電変換層63の製膜および各層のパターニング並びにそれらの組み合わせ手順により形成される。基板61は、ポリイミド系のフィルムでありその厚さは50μmである。基板61としてはその他に、ポリエチレンナフタレート(polyethylene naphthalate: PEN)、ポリエーテルサルフォン(poly ether sulfone : PES)、ポリエチレンテレフタレート(polyethylene terephthalate : PET)、またはアラミド系フィルム等を用いることができる。
上述の薄膜太陽電池60の構成および製造方法は、例えば特許文献1(薄膜太陽電池とその製造方法)、特許文献2(光電変換装置およびその製造方法)、特許文献1(光電変換装置およびその製造方法)等に記載されている。
上述の薄膜太陽電池60の製造工程は、先ず基板61の所定の位置に接続孔68を開孔し、次に基板61の表面側に第1電極層62を積層し、続いて裏面側に接続電極層65を構成する第3電極層(不図示)を製膜(または成膜)する。上述の第1電極層62と第3電極層の製膜順は逆でもよい。この時、接続孔68の内面で第1電極層62と第3電極層とが重なり、お互いに導通する。尚、これらの第1電極層62および第3電極層の製膜方法しては、Ag、Al、Cu、Ti等の金属をPVD(Physical Vapor Deposition 。スパッタまたは電子ビーム蒸着等)により製膜してもよく、あるいはCVD(Chemical Vapor Deposition)により金属酸化膜および金属多層膜と製膜してもよい。
次に、上述の接続孔68と同様に、基板61の所定の位置に複数個の集電孔67を開孔する。続いて、基板61の表面に形成した第1電極層62の膜をレーザ加工により0.4mm程度の幅で直線状に除去して1次パターニングラインを形成し、個別の単一領域(電極)を複数形成した1次パターニングエリアを形成する。その上に半導体層からなる光電変換層63と透明電極層64とを順次製膜する。続いて、裏面の第3電極層上に、同じく金属膜等の低抵抗導電膜からなる第4電極層(不図示)を製膜して、第3電極層と第4電極層とからなる接続電極層65を形成する。この時、集電孔67の内面で透明電極層64と接続電極層65とが重なり、お互いに導通させることができる。上記光電変換層63は薄膜半導体層であり、a-Si(アモルファスシリコン)はその代表例である。上記透明電極層64はITO(Indium Tin Oxide。酸化インジウムスズ)、SnO2、ZnO等のTCO(Transparent Conductive Oxide。酸化物導電層または透明導電性酸化物膜)を用いることが一般的である。上述の膜形成時には、接続孔68の周辺をマスク等で覆う等して、先に形成した接続孔68部分には膜が形成されないようにする。
次に、上述のようにして形成した透明電極層64および光電変換層63の膜を、上記1次パターニングエリア内の1次パターニングラインに重ね合わせてレーザ加工により0.1mm程度の幅で直線状に除去して2次パターニングライン(セル分割溝70)を形成する。以上により、第1電極層62、光電変換層63および透明電極層64からなる光電変換素子は、複数のユニットセルUn等に分離される。最後に、第3電極層と第4電極層とからなる接続電極層65の膜を、ユニットセルUn等の分離位置70とずらした分離位置71にレーザ加工により0.4mm程度の幅で直線状に除去する。以上により、接続電極層65は複数の単位セルEn,n+1等に分離され、上述の薄膜太陽電池60の直列接続が完成する。
図4は、薄膜太陽電池1(図3の薄膜太陽電池60と同様。)の従来のレーザ加工による薄膜太陽電池製造方法および製造装置40の一例を説明するための模式図である。図5は、薄膜太陽電池1の表面を示す模式図であり、薄膜太陽電池製造装置40により形成された複数の接続孔68または集電孔67(符号は図3参照。以下、集電孔67を「スルーホール」と言う。)を基準マーカーとしたときの一例を示す模式図である。
図4に示されるように、薄膜太陽電池1は巻き出しロール2と巻き取りロール3とにより、ガイドロールGR1、GR2、GR3および駆動ロールFDを介して搬送され、マーカーホール4(図5参照。)を基準にして位置決めセンサ5により位置決め停止した後、吸着ステージ6に吸着固定される。吸着ステージ6の下部に配置された加工光学ユニット7はXYステージ8の上に搭載されており、制御コントローラ9の制御によりXY方向(例えば、図4上の左右方向をX方向、奥行き方向をY方向とする。)に移動可能となっている。制御コントローラ9の制御によりレーザ発振器10から出力されたレーザ光は、レーザ発振器10と接続されたファイバ光学系12を通って加工光学ユニット7内の入射光学系13に入る。入射光学系13を出たレーザ光11は特定波長のみを反射するハーフミラー14により吸着ステージ6の方向へ反射した後、出射光学系15により薄膜太陽電池(フィルム基板)1上の薄膜に焦点が調整されて薄膜太陽電池1上に照射される。図4に示されるように、加工光学ユニット7内のハーフミラー14の下方には薄膜太陽電池1上のレーザ加工部分の画像を取り込むためのCCDカメラ16がレーザ光11と光軸を合わせて固定されている。CCDカメラ16により取り込まれた薄膜太陽電池1上のレーザ加工部分の画像信号は、CCDカメラ16と接続された画像処理ユニット17へ送られて処理された後、位置信号として画像処理ユニット17から制御コントローラ9へ送られる。
図5において、レーザ加工前アライメント手順として、先ずCCDカメラ16をフィルム基板(薄膜太陽電池1)に開孔された複数のスルーホール67の内、指定されたスルーホールHs付近に移動させ、画像処理によりその位置座標PHsを求める。画像処理では一般にスルーホールHsのエッジ等を利用して位置座標PHsを求めている。同様にして、CCDカメラ16をスルーホールHe付近に移動させ、画像処理により位置座標PHeを求める。これらの位置座標位置座標PHsとPHeとのアライメントデータに基づき、XYステージ8の座標系とスルーホールHs、Heの座標系との間のズレ(設計値と実測値との間のズレ)に対してレーザパターニングの開始位置補正および角度補正を行なう。この後、第1電極層62または接続電極層65のパターニングラインの形成を行う。
上述した薄膜太陽電池1の薄膜太陽電池製造方法および製造装置40で用いている吸着ステージ6としては、その表裏両面を連通する多数の透孔を有する多孔質体を板状にした多孔質吸着ステージが知られている。吸着ステージ6の外周面を封止した状態で、吸着ステージ6の裏面(薄膜太陽電池1側とは反対側)から空気を吸引することにより、吸着ステージ6の表面(薄膜太陽電池1に対する対向面側)に薄膜太陽電池1を固定している。ここで上記多孔質体の材料としては、一般的に銅、アルミニウム、ステンレス等が使用されており、薄膜太陽電池1では吸着ステージ6への吸着の際の傷つきを防止するためにフッ素樹脂を使用している。吸着ステージ6はこれらの材料の微細粒子を圧縮成形・加熱焼結することにより得られる多孔質体から形成される。
特開2000−223727号公報
特開平10−233517号公報
特開2000−77690号公報
上述の吸着ステージ6では、レーザ加工中に発生する残渣が接続孔68および集電孔67(Hs等)から吸着ステージ6に吸い込まれてしまうため、レーザ加工回数を重ねる毎に吸着ステージ6の吸着面が汚染されて変色が発生していた。この結果、接続孔68または集電孔67(Hs等)を用いたレーザ加工前アライメントにおいて、スルーホールHsのエッジ等を利用して位置座標PHsを求める際に画像処理エラーが生じることが多くなった。この画像処理エラーのためにレーザ加工中断頻度が高くなり、安定したレーザ加工が困難となる結果、薄膜太陽電池1の生産性に大きな影響を及ぼすという問題があった。
上述した吸着ステージ6の吸着面の汚染による変色は、レーザ加工中に発生する残渣が吸着ステージ6に目詰まりすることによるものである。従って、洗浄除去は不可能であるため、定期的に吸着ステージ6を交換する必要があった。しかし、吸着ステージ6を交換した場合の費用は300〜400万円と高額であるため、薄膜太陽電池製造装置40全体の消耗品コストを増加させる一因となり、その結果、薄膜太陽電池1の製造コストの増加に繋がるという問題があった。
そこで、本発明の目的は、上記問題を解決するためになされたものであり、レーザ加工中に発生する残渣が接続孔68および集電孔67から吸着ステージ6に吸い込まれてしまい、吸着ステージ6に目詰まりすることにより生じる、吸着ステージ6の吸着面の汚染による変色に起因する画像処理エラーの発生を防止して、安定したレーザ加工による生産性の増大を図ると共に、生産コストの低減を行うことが可能な薄膜太陽電池製造方法および製造装置を提供することにある。
この発明の薄膜太陽電池製造方法は、フレキシブルタイプの絶縁性基板を用いた薄膜太陽電池をロール・ツー・ロール方式により製造する薄膜太陽電池製造方法であって、レーザ加工によるパターニングラインの形成工程に先立ち、薄膜太陽電池の表面に薄膜フィルムを積層し、該薄膜太陽電池に形成された接続孔及び集電孔をマスクする積層工程と、前記積層工程で積層された薄膜フィルムを介して薄膜太陽電池を吸着ステージに吸着固定する吸着固定工程とを備えたことを特徴とする。
ここで、この発明の薄膜太陽電池製造方法において、前記積層工程における薄膜フィルムの積層は、ロール・ツー・ロール方式による供給手段により巻き出された薄膜フィルムを連続積層手段により薄膜太陽電池の表面に連続的に積層して行うことができる。
ここで、この発明の薄膜太陽電池製造方法において、前記パターニングラインの形成工程の後に、前記積層工程で積層された薄膜フィルムを薄膜太陽電池から剥離手段により剥離して巻取りロールに巻き取る剥離工程をさらに備えることができる。
ここで、この発明の薄膜太陽電池製造方法において、前記薄膜フィルムは薄膜太陽電池に対向する一面が易接着性を有する樹脂フィルムとすることができる。
ここで、この発明の薄膜太陽電池製造方法において、前記連続積層手段は薄膜太陽電池の表面への薄膜フィルムの積層を2個のロールにより加圧挟持するロールラミネータを用いて行うことができる。
ここで、この発明の薄膜太陽電池製造方法において、前記薄膜フィルムは薄膜太陽電池に対向する一面が易接着性を有する熱剥離フィルムとすることができる。
ここで、この発明の薄膜太陽電池製造方法において、前記連続積層手段は薄膜太陽電池の表面への熱剥離フィルムの積層を第1所定温度で加熱するロールラミネータを用いて行い、前記剥離手段は前記積層工程で積層された熱剥離フィルムの剥離を第2所定温度で加熱して行うことができる。
ここで、この発明の薄膜太陽電池製造方法において、前記薄膜フィルムの材質は、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエーテルサルフォン(PES)、ポリエチレンナフタレート(PEN)、ポリアリレート(PAR)、ポリアミド−イミド(PAI)、ポリベンゾイミダゾール(PBI)、ポリサルフオン(PSFまたはPSU)のいずれかであるものとすることができる。
この発明の薄膜太陽電池製造装置は、この発明のいずれかの薄膜太陽電池製造方法を用いて薄膜太陽電池を製造することを特徴とする。
本発明の薄膜太陽電池製造方法および製造装置によれば、吸着ステージに対向する薄膜太陽電池の表面に薄膜フィルムを積層することにより、薄膜太陽電池に形成された接続孔および集電孔を薄膜フィルムによりマスクする。この薄膜フィルムを介して薄膜太陽電池を吸着ステージに吸着固定する。以上により、レーザ加工中に発生する残渣が接続孔および集電孔から吸着ステージに吸い込まれてしまい、吸着ステージに目詰まりすることにより生じる、吸着ステージの吸着面の汚染による変色に起因する画像処理エラーの発生を防止することができる。この結果、安定したレーザ加工による生産性の増大を図ると共に、生産コストの低減を行うことが可能な薄膜太陽電池製造方法および製造装置を提供することができるという効果がある。
さらに、本発明の薄膜太陽電池製造方法および製造装置によれば、ロール・ツー・ロール方式による薄膜フィルムの供給手段と、薄膜フィルムの薄膜太陽電池の表面上への連続積層手段とにより、薄膜太陽電地の表面上に薄膜フィルムを連続的に積層する。すなわち、薄膜太陽電地の巻き出しと同期したロール・ツー・ロール方式の間欠搬送機能と、薄膜太陽電地の表面上に薄膜フィルムを連続的に貼り付けるロールラミネータと、薄膜太陽電地の表面から薄膜フィルムを連続的に剥離する剥離手段とを用いる。このため、レーザ加工回数に依存した吸着ステージの吸着面の汚染による変色に起因する画像処理エラーの発生を防止することができるという効果がある。薄膜フィルムとして薄膜太陽電池に対向する一面に易粘着性を有するフィルムを用いることにより、吸着ステージにおいて薄膜フィルムと薄膜太陽電池とを一体とする安定した吸着が可能となるという効果がある。
以下、各実施例について図面を参照して詳細に説明する。
図1は、本発明の実施例1における薄膜太陽電池製造方法および製造装置20の一例を説明するため模式図である。図1で従来技術の図4と同じ符号を付した箇所は同じ要素を示すため説明は省略する。説明の便宜上、必要に応じて従来技術の図3および図5と同じ符号を同じ要素に対して用いる。薄膜太陽電池製造装置20は、背景技術で説明した薄膜太陽電池製造装置40に加え、図1に示されるように、薄膜太陽電池1に接する面に粘着性を有する薄膜フィルムFaを薄膜太陽電池1の搬送と同期して巻き出すための巻き出しロールRa、薄膜太陽電池1と薄膜フィルムFaとを貼り合わせるための2つのロールR1およびR2の組合せからなるロールラミネータRL、巻き出しロールRaとロールラミネータRLとの間に設けられたガイドロールGR4、加工光学ユニット7によるレーザ加工後に薄膜フィルムFaを薄膜太陽電池1から除去するための除去機構S(剥離手段)、薄膜太陽電池1から除去した薄膜フィルムFaを再びロール状に巻き取るための巻き取りロールRb、および除去機構Sと巻き取りロールRbとの間に設けられた駆動ロールFD2から構成されている。
次に、薄膜太陽電池製造方法および製造装置20の機能について説明する。図1に示されるように、まず、薄膜太陽電池1を巻き出しロール2からガイドロールGR1を介して巻き出し、これに同期して薄膜フィルムFaを巻き出しロールRaからガイドロールGR4を介して巻き出す。巻き出された薄膜太陽電池1と薄膜フィルムFaとをロールラミネータRLの2つのロールR1およびR2により加圧扶持することで薄膜太陽電池1に薄膜フィルムFaを貼り付ける。吸着ステージ6に対向する薄膜太陽電池1の表面に薄膜フィルムFaを積層することにより、薄膜太陽電池1に形成された接続孔68および集電孔67(図5参照)が薄膜フィルムFaによりマスクされる(積層工程)。
続いて、接続孔68および集電孔67が薄膜フィルムFaによりマスクされた状態の薄膜太陽電池1を搬送し、マーカーホール4(図5参照)を基準に位置決めセンサ5により位置決め停止する。停止した後、薄膜フィルムFaを貼り合わせた薄膜太陽電池1を吸着ステージ6に吸着固定する。すなわち、薄膜フィルムFaを介して薄膜太陽電池1を吸着ステージ6に吸着固定する(吸着固定工程)。次に、従来技術で説明した薄膜太陽電池1の接続孔68または集電孔67を用いたレーザ加工前アライメント手順(方法)によって、レーザパターニングの開始位置補正および角度補正を行なう。詳しくは、先ずCCDカメラ16をフィルム基板(薄膜太陽電池1)に開孔された複数のスルーホール67の内、指定されたスルーホールHs付近に移動させ、画像処理によりその位置座標PHsを求める。同様にして、CCDカメラ16をスルーホールHe付近に移動させ、画像処理により位置座標PHeを求める。これらの位置座標PHsとPHeとのアライメントデータに基づき、XYステージ8の座標系とスルーホールHs、Heの座標系との間のズレ(設計値と実測値との間のズレ)に対してレーザパターニングの開始位置補正および角度補正を行なう。この後、第1電極層62または接続電極層65のパターニングラインの形成を行う。詳しくは、レーザ発振器10から出力されたレーザ光をファイバ光学系12、加工光学ユニット7内の入射光学系13、特定波長だけを反射するハーフミラー14、出射光学系15により伝送させる。出射光学系15により薄膜太陽電池1上の薄膜に焦点を調整してレーザ光11を薄膜太陽電池1上に照射し、第1電極層62または接続電極層65のパターニングラインの形成を行った(以上、パターニングラインの形成工程)。
次に、薄膜フィルムFaを貼り付けた薄膜太陽電池1を吸着ステージ6から吸着解除する。この後、接続孔68および集電孔67が薄膜フィルムFaによりマスクされた状態の薄膜太陽電池1を再び搬送し、除去機構Sにより薄膜フィルムFaを薄膜太陽電池1から剥離する。続いて、薄膜太陽電池1から剥離した薄膜フィルムFaを、再びロール状に巻き取るための巻き取りロールRbに駆動ロールFD2を介して巻き取る(以上、剥離工程)。薄膜フィルムFaが剥離された薄膜太陽電池1は、駆動ロールFDを介して巻き取りロール3に再びロール状に巻き取る。
以上より、本発明の実施例1によれば、まず、薄膜太陽電池1を巻き出しロール2からガイドロールGR1を介して巻き出し、これに同期して薄膜フィルムFaを巻き出しロールRaからガイドロールGR4を介して巻き出す。巻き出された薄膜太陽電池1と薄膜フィルムFaとをロールラミネータRLの2つのロールR1およびR2により加圧扶持することで薄膜太陽電池1に薄膜フィルムFaを貼り付ける。吸着ステージ6に対向する薄膜太陽電池1の表面に薄膜フィルムFaを積層することにより、薄膜太陽電池1に形成された接続孔68および集電孔67が薄膜フィルムFaによりマスクされる。続いて、接続孔68および集電孔67が薄膜フィルムFaによりマスクされた状態の薄膜太陽電池1を搬送し、マーカーホール4を基準に位置決めセンサ5により位置決め停止する。停止した後、剥離フィルムFaを貼り合わせた薄膜太陽電池1を吸着ステージ6に吸着固定する。すなわち、薄膜フィルムFaを介して薄膜太陽電池1を吸着ステージ6に吸着固定する。次に、従来技術で説明した薄膜太陽電池1の接続孔68または集電孔67を用いたレーザ加工前アライメント手順(方法)によって、レーザパターニングの開始位置補正および角度補正を行なう。この後、第1電極層62または接続電極層65のパターニングラインの形成を行う。次に、薄膜フィルムFaを貼り付けた薄膜太陽電池1を吸着ステージ6から吸着解除する。この後、接続孔68および集電孔67が薄膜フィルムFaによりマスクされた状態の薄膜太陽電池1を再び搬送し、除去機構Sにより薄膜フィルムFaを薄膜太陽電池1から剥離する。続いて、薄膜太陽電池1から剥離した薄膜フィルムFaを、再びロール状に巻き取るための巻き取りロールRbに駆動ロールFD2を介して巻き取る。薄膜フィルムFaが剥離された薄膜太陽電池1は、駆動ロールFDを介して巻き取りロール3に再びロール状に巻き取る。
本発明の実施例1によれば、吸着ステージ6に対向する薄膜太陽電池1の表面に薄膜フィルムFaを積層することにより、薄膜太陽電池1に形成された接続孔68および集電孔67を薄膜フィルムFaによりマスクすることができる。この薄膜フィルムFaを介して薄膜太陽電池1を吸着ステージ6に吸着固定する。以上により、レーザ加工中に発生する残渣が接続孔68および集電孔67から吸着ステージ6に吸い込まれてしまい、吸着ステージ6に目詰まりすることにより生じる、吸着ステージ6の吸着面の汚染による変色に起因する画像処理エラーの発生を防止することができる。この結果、安定したレーザ加工による生産性の増大を図ると共に、生産コストの低減を行うことが可能な薄膜太陽電池製造方法および製造装置20を提供することができる。
さらに、本発明の実施例1によれば、薄膜太陽電池製造方法および製造装置20は、ロール・ツー・ロール方式による薄膜フィルムFaの供給手段(巻き出しロールRaおよびガイドロールGR4)と、薄膜フィルムFaの薄膜太陽電池1の表面上への連続積層手段(2つのロールR1およびR2を用いたロールラミネータRL)とにより、薄膜太陽電地1の表面上に薄膜フィルムFaを連続的に積層する。すなわち、薄膜太陽電地1の巻き出しと同期したロール・ツー・ロール方式の間欠搬送機能と、薄膜太陽電地1の表面上に薄膜フィルムFaを連続的に貼り付けるロールラミネータRLと、薄膜太陽電地1の表面から薄膜フィルムFaを連続的に剥離する除去機構Sとを用いる。このため、レーザ加工回数に依存した吸着ステージ6の吸着面の汚染による変色に起因する画像処理エラーの発生を防止することができる。
薄膜フィルムFaは薄膜太陽電池1に接する面(薄膜太陽電池1に対向する一面)に易粘着性を有する樹脂フィルムであることが好適である。この結果、吸着ステージ6において薄膜フィルムFaと薄膜太陽電池1とを一体とする安定した吸着が可能となる。
薄膜フィルムFaの材質としては、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエーテルサルフォン(PES)、ポリエチレンナフタレート(PEN)、ポリアリレート(polyalylate : PAR)、ポリアミド−イミド(polyamide-imide : PAI)、ポリベンゾイミダゾール(polybenzimidazole : PBI)、ポリサルフオン(polysulfone : PSFまたはPSU)の内のいずれかであることが好適である。
図2は、本発明の実施例2における薄膜太陽電池製造方法および製造装置30の一例を説明するため模式図である。図2で図1と同じ符号を付した箇所は同じ要素を示すため説明は省略する。説明の便宜上、必要に応じて従来技術の図3および図5と同じ符号を同じ要素に対して用いる。実施例2の薄膜太陽電池製造装置30と実施例1の薄膜太陽電池製造装置20との相違は、巻き出しロールRaが薄膜太陽電池1に対向する一面に易粘着性を有する熱剥離フィルム(薄膜フィルム)Fbを備えており、当該熱剥離フィルムFbが薄膜太陽電池1の搬送と同期して巻き出しロールRaから巻き出される点と、ロールラミネータRLが薄膜太陽電池1と薄膜フィルムFbとを第1所定温度で加熱して貼り合わせる点と、加工光学ユニット7によるレーザ加工後に薄膜フィルムFbを第2所定温度で加熱して薄膜太陽電池1から除去するための加熱除去機構Ks(剥離手段)を備えた点と、巻き取りロールRbが薄膜太陽電池1から除去した熱剥離フィルムFbを再びロール状に巻き取る点とにある。
熱剥離フィルムFbとしては、日東電工株式会社製の商品名「リバアルファ(登録商標)」を用いた。上記「リバアルファ」はシート状の粘着性フィルムであり、当該シート状の粘着性フィルムはPETフィルムに対しては温度90℃以上で接着強度が0となると共に、温度100℃では1秒以内に接着強度が0になるという特性を有する熱剥離フィルムである。この場合、ロールラミネータRLが加熱する際の第1所定温度は約80℃以下であり、加熱除去機構Ksが加熱する際の第2所定温度は約80℃〜100℃となる。
次に、薄膜太陽電池製造方法および製造装置30の機能について説明する。図2に示されるように、まず、薄膜太陽電池1を巻き出しロール2からガイドロールGR1を介して巻き出し、これに同期して熱剥離フィルムFbを巻き出しロールRaからガイドロールGR4を介して巻き出す。巻き出された薄膜太陽電池1と熱剥離フィルムFbとをロールラミネータRLが第1所定温度で加熱することにより薄膜太陽電池1に熱剥離フィルムFbを張り合わせる。吸着ステージ6に対向する薄膜太陽電池1の表面に熱剥離フィルムFbを積層することにより、薄膜太陽電池1に形成された接続孔68および集電孔67(図5参照)が熱剥離フィルムFbによりマスクされる。
続いて、接続孔68および集電孔67が熱剥離フィルムFbによりマスクされた状態の薄膜太陽電池1を搬送し、マーカーホール4(図5参照)を基準に位置決めセンサ5により位置決め停止する。停止した後、熱剥離フィルムFbを貼り合わせた薄膜太陽電池1を吸着ステージ6に吸着固定する。すなわち、熱剥離フィルムFbを介して薄膜太陽電池1を吸着ステージ6に吸着固定する。次に、従来技術で説明した薄膜太陽電池1の接続孔68または集電孔67を用いたレーザ加工前アライメント手順(方法)によって、レーザパターニングの開始位置補正および角度補正を行なう。詳しくは、先ずCCDカメラ16をフィルム基板(薄膜太陽電池1)に開孔された複数のスルーホール67の内、指定されたスルーホールHs付近に移動させ、画像処理によりその位置座標PHsを求める。同様にして、CCDカメラ16をスルーホールHe付近に移動させ、画像処理により位置座標PHeを求める。これらの位置座標PHsとPHeとのアライメントデータに基づき、XYステージ8の座標系とスルーホールHs、Heの座標系との間のズレ(設計値と実測値との間のズレ)に対してレーザパターニングの開始位置補正および角度補正を行なう。この後、第1電極層62または接続電極層65のパターニングラインの形成を行う。詳しくは、レーザ発振器10から出力されたレーザ光をファイバ光学系12、加工光学ユニット7内の入射光学系13、特定波長だけを反射するハーフミラー14、出射光学系15により伝送させる。出射光学系15により薄膜太陽電池1上の薄膜に焦点を調整してレーザ光11を薄膜太陽電池1上に照射し、第1電極層62または接続電極層65のパターニングラインの形成を行う。
次に、熱剥離フィルムFbを貼り付けた薄膜太陽電池1を吸着ステージ6から吸着解除する。この後、接続孔68および集電孔67が熱剥離フィルムFbによりマスクされた状態の薄膜太陽電池1を再び搬送し、加熱除去機構Ksにより80℃〜100℃(第2所定温度)で加熱を行って、熱剥離フィルムFbを薄膜太陽電池1から剥離する。続いて、薄膜太陽電池1から剥離した熱剥離フィルムFbを、再びロール状に巻き取るための巻き取りロールRbに駆動ロールFD2を介して巻き取る。熱剥離フィルムFbが剥離された薄膜太陽電池1は、駆動ロールFDを介して巻き取りロール3に再びロール状に巻き取る。
以上より、本発明の実施例2によれば、巻き出しロールRaに実施例1の薄膜フィルムFaに替えて熱剥離フィルムを備えさせ、ロールラミネータRLにより第1所定温度で加熱して薄膜太陽電池1と薄膜フィルムFbとを貼り合わせる。加工光学ユニット7によるレーザ加工後に薄膜フィルムFbを第2所定温度で加熱して薄膜太陽電池1から除去するための加熱除去機構Ksを新たに備え、巻き取りロールRbに薄膜太陽電池1から除去した熱剥離フィルムFbを再びロール状に巻き取らせる。吸着ステージ6に対向する薄膜太陽電池1の表面に実施例1の薄膜フィルムFaに替えて熱剥離フィルムFbを積層することにより、薄膜太陽電池1に形成された接続孔68および集電孔67を熱剥離フィルムFbによりマスクする。この熱剥離フィルムFbを介して薄膜太陽電池1を吸着ステージ6に吸着固定する。以上により、実施例1と同様に、レーザ加工中に発生する残渣が接続孔68および集電孔67から吸着ステージ6に吸い込まれてしまい、吸着ステージ6に目詰まりすることにより生じる、吸着ステージ6の吸着面の汚染による変色に起因する画像処理エラーの発生を防止することができる。この結果、安定したレーザ加工による生産性の増大を図ると共に、生産コストの低減を行うことが可能な薄膜太陽電池製造方法および製造装置30を提供することができる。
実施例2においても実施例1と同様に、薄膜太陽電池製造方法および製造装置30は、ロール・ツー・ロール方式による熱剥離フィルムFbの供給手段(巻き出しロールRaおよびガイドロールGR4)と、熱剥離フィルムFbの薄膜太陽電池1の表面上への連続積層手段(ロールラミネータRL)とにより、薄膜太陽電地1の表面上に熱剥離フィルムFbを連続的に積層する。すなわち、薄膜太陽電地1の巻き出しと同期したロール・ツー・ロール方式の間欠搬送機能と、薄膜太陽電地1の表面上に熱剥離フィルムFbを第1所定温度で加熱することにより連続的に貼り合わせるロールラミネータRLと、薄膜太陽電地1の表面から熱剥離フィルムFbを第2所定温度で加熱して連続的に剥離する加熱除去機構Ksとを用いる。このため、レーザ加工回数に依存した吸着ステージ6の吸着面の汚染による変色に起因する画像処理エラーの発生を防止することができる。
実施例2においても実施例1と同様に、熱剥離フィルムFbは薄膜太陽電池1に接する面(薄膜太陽電池1に対向する一面)に易粘着性を有する樹脂フィルムであることが好適である。この結果、吸着ステージ6において熱剥離フィルムFbと薄膜太陽電池1とを一体とする安定した吸着が可能となる。
熱剥離フィルムFbの材質としては、実施例1の薄膜フィルムFaと同様に、PET、PES、PEN、PAR、PAI、PBI、PSF(またはPSU)の内のいずれかであることが好適である。
本発明の活用例として、薄膜太陽電池モジュールの製造方法および製造装置に対して適用することができる。
本発明の実施例1における薄膜太陽電池製造方法および製造装置20の一例を説明するため模式図である。
本発明の実施例2における薄膜太陽電池製造方法および製造装置30の一例を説明するため模式図である。
フレキシブルタイプの絶縁性基板61を用いた薄膜太陽電池60の概略構造を示す斜視図である。
薄膜太陽電池60の従来のレーザ加工による薄膜太陽電池製造方法および製造装置40の一例を説明するための模式図である。
薄膜太陽電池60の表面を示す模式図である。
符号の説明
1、60 薄膜太陽電池、 2 巻き出しロール、 3 巻き取りロール、 4 マーカーホール、 5 位置決めセンサ、 6 吸着ステージ、 7 加工光学ユニット、 8 XYステージ、 9 制御コントローラ、 10 レーザ発振器、 11 レーザ光、 12 ファイバ光学系、 13 入射光学系、 14 ハーフミラー、 15 出射光学系、 16 CCDカメラ、 17 画像処理ユニット、 20、30 薄膜太陽電池製造装置、 40 従来の薄膜太陽電池製造装置、 61 フレキシブルタイプの絶縁性基板(基板)、 62 第1電極層(下電極層)、 63 光電変換層、 64 透明電極層(第2電極層)、 65 接続電極層(裏面側電極層)、 67 集電孔、 68 接続孔、 70、71 分離位置(セル分割溝。パターニングライン)。