JP4764966B2 - メッセンジャーrnaの分離方法 - Google Patents

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Description

本発明はメッセンジャーRNA(mRNA)を含有する出発材料から、mRNAを迅速かつ簡便な操作で単離するための方法及びキット、並びに、該方法により得られたmRNAからDNAを製造する方法に関する。より具体的には、本発明は、RNA混合物(トータルRNA)等のようなmRNAを含有する生物材料から、mRNAを単離するための方法及びキット等に関する。
遺伝子操作やヒトゲノム解析をはじめとする近年のバイオテクノロジーの進歩には、目を見張るものがある。特に遺伝子を含むDNAやRNAといった核酸は、生命活動の本質をつかさどる物質として医学、化学、農学といった広い領域において研究されている。また、学術的な知見をもとに産業界への応用も急速に広まっている。このようなバイオテクノロジー興隆の時代においては、生物の核酸を分離抽出する技術が必要となっている。特に生命活動全般に関する遺伝情報を直接的にコードするmRNAを簡便かつ安価に分離精製する為の技術が重要課題となっている。
一般に、生体内に含まれるmRNAは、そのコードする遺伝情報により様々な種類が存在する。例えば酵母には、約6000種類の異なるmRNAが存在すると言われている。従って、ある生体試料中に含まれるmRNA全般を抽出するという場合、塩基配列や分子長の異なる様々なmRNAの混合物として抽出することになる。以下、本発明においてmRNAには、単一のmRNAの他、このような、ある生体試料中に含まれる様々なmRNAの混合物をも含むものとする。
一般に、細胞抽出液や血液といった生体試料からRNA混合物(トータルRNA)を抽出する方法としては、RNAとその他の成分(DNA、タンパク質、細胞膜等)の化学的な性質の違いにより分離するものが用いられている。例えば、生体試料を酸性条件下でフェノールと接触させることで、RNAは水相へ、それ以外の成分はフェノール相へそれぞれ分配され、結果としてRNAのみを分離抽出する事ができる。また、高濃度のカオトロピック塩存在下においてRNAがシリカやガラス微粒子表面に吸着することを利用して、RNAを選択的に分離抽出する方法も知られている。この場合はDNAも吸着し得るが、前もってDNA分解酵素処理を行っておくことでRNAのみの抽出が可能となる。
しかし、次の段階であるトータルRNAからmRNAを分離、抽出することは以下の理由で困難であった。(1)一般にmRNAは、トータルRNA全体のわずか数%しか占めていない。(2)mRNAは、同じRNAの一種であるリボソーマルRNAやトランスファーRNAと区別され、分離されなくてはならない。(3)一つの細胞種に含まれるmRNAは、非常に種類が多く多様性に富んでいる(例えば酵母のmRNAは約6000種類あるといわれている)。つまり非常に似通った性質の混合物中から、微量のしかも多様性に富むmRNAという一群の核酸種を、高収率かつ高精度に抽出することが要求されるのである。更に、mRNAはRNA分解酵素に対して極めて不安定であるので、簡便、迅速な処理操作で分離抽出が行われなくてはならない。
現在、mRNAの分離方法としては、以下に示す方法が挙げられる。ほぼ唯一実用的に使用されている方法としては、オリゴdTというDNAを支持体に固定化した1種のアフィニティー分離法が報告されている(例えば、非特許文献1及び2等)。一般に、真核生物のmRNAの3’末端には、ポリAテイルと呼ばれるアデニル基が数10〜300塩基程度連続した配列を持つことが知られている。このポリAテイル配列が支持体に固定化したオリゴdTと相補的塩基対を形成することにより、mRNAを分離することができる。しかし、この方法はDNAを材料とするため、高価であるという欠点がある。また、DNAを素材とすることで、DNA加水分解酵素による分解を受けやすい為に寿命が短いこと、溶液中で保存しなければならないので保管、管理が面倒であること、といった欠点がある。
また、特許文献1及び2等で報告されているように、β−1,3−グルカン類がmRNAと選択的に複合体を形成することを利用して、他のRNAから分離抽出する技術が知られている。しかしこれらの方法においては、いくつかの問題点が指摘される。例えば、特許文献1に記載された方法では、β−1,3−グルカン類が支持体に固定化されているために、核酸との複合体形成速度が遅く、分離抽出に要する時間が非常に長くかかる場合がある。例えば、mRNAを分離するには、サンプル溶液をカラム中に入れた状態で6時間以上熟成させなければならない場合がある。また、β−1,3−グルカンを固定化したアフィニティーカラムを調製する際にも手間と費用がかかり、必ずしも経済的な分離方法とはいえない。同様に、特許文献2の方法においても、β−1,3−グルカンにマトリックスとの結合サイトを付与する必要があり、その調製コストは核酸分離コストを上昇させる要因となる。これらの核酸分離剤は、その調整過程において手間と調製費用がかかるという欠点があり、これらを根本的に改善することは困難であると考えられる。
一方、物質の分離精製を行う為の手段として、逆相カラム、イオン交換カラムといったカラムクロマトグラフィー技術がよく知られている。これらは分離対象となる試料中に含まれる物質とカラム充填剤との間の親和性が、疎水性/親水性の程度、水素結合部位の有無、電荷量等によりそれぞれ異なることを利用して分離する方法である。
非特許文献3には、クロマトグラフィー技術を用いた核酸の分離分析例が記載されている。例えば、逆相カラムを用いると、12量体から18量体のオリゴチミジル酸が独立したピークとして検出された例が報告されている。しかし、このような手法を用いることができるのは塩基数が数10量体のオリゴヌクレオチドのみである。
また、イオン交換カラムを用いて、トランスファーRNAの分離分析を行った例も報告されている。しかしながら、本報告例は高速液体クロマトグラフィー装置を使用し長時間かけて溶出操作を行う性質のものであり、バイオ実験に使用するための核酸の分離手法としては不適当である。
実際のところ、逆相カラム又はイオン交換カラムによりトータルRNA中のmRNAを定量的に分離抽出することは、今までのところ報告されていない。これは、mRNAとその他のRNA(リボソーマルRNA、トランスファーRNA)の化学的な性質が非常によく似ており、カラムクロマトグラフィーの分離原理上分離効率が極めて低くなることが理由の一つとなっている。更に、mRNAは一種類の塩基配列ではなく、実際は数10から数1000種類以上の分子種の混合物であることが多い。mRNA分子に共通する性質として、3’末端にアデニル基が数10から300塩基程度連続するポリAテイルと呼ばれる配列が存在することが挙げられる。しかし、mRNA分子の全長の塩基数は数100から数1000塩基であるので、ポリAテイルの存在がmRNA分子全体の化学的な性質及びカラム担体に対する親和性に及ぼす影響は極めて小さい。従って、従来の逆相及びイオン交換カラムクロマトグラフィーの原理に基づいて、トータルRNA中のmRNAを定量的に分離抽出することはほぼ不可能といえる。ましてや、実用上様々なバイオテクノロジー実験に用いるために適した、高濃度且つ破損の少ないmRNAを簡便且つ迅速に分離抽出する方法としては、これらの通常の使用法によっては実現されていない。
カラムクロマトグラフィー技術の一つに、分子サイズで分画を行うゲルカラムクロマトグラフィーという技法も知られている。しかし、mRNAの塩基数が数100から数1000と広範囲に分布していること、リボソーマルRNAと分子量の重なるmRNAが一部存在することから、mRNAの定量的且つ実用的な分離抽出に用いることは出来ない。
特開2003−35704号公報 特開2003−137904号公報 栗林、日方、他、生化学.60巻、967ページ、1988年 アビブ、レーダー、Proc.Nat.Acad.Sci.USA、69巻、1408ページ、1972年 「新生化学実験講座 核酸I 分離分析」(東京化学同人、1991年、p129−p168)
本発明の課題は、mRNAの単離を高収率且つ安価で簡便に行う方法を提供することにある。また、本発明の課題は、耐久性、保存性に優れたmRNAの単離方法を提供することである。さらに、本発明の課題は、上記により得られたmRNAからDNAを製造する方法を提供することにある。
本発明の主眼は、適当量の水溶性溶媒の存在下で、オクタデシル基修飾シリカ(ODS)等のmRNA結合性固相を使用する点にある。しかし、一般的な使用法に従えば、ODSは、単純に疎水的相互作用の強弱に基づき対象分子を吸着/溶出する性質しか持たない。従って、多種多様な塩基配列、分子長のRNA混合物の中からmRNAのみを分離する事は原理上不可能なはずである。しかし、本発明で示すとおり、出発材料に適当量の水溶性溶媒(例えば水に対して40vol%相当のジメチルスルホキシド)を添加した後にODSと接触させると、驚くべき事にmRNAのみが高収率、高純度でODSに吸着する事を見出した。この現象は従来知られていたODSの物質分離能力からは全くかけ離れたものであり、mRNA分離材料としての新しい使用方法を提供するものである。
mRNA結合性固相に保持されたmRNAは水、アルコールなどの有機溶媒又は両者の混合溶液で洗浄することにより容易に溶出することができる。
即ち、本発明は、mRNAを含有する出発材料からmRNAを単離する方法であって、
(a)出発材料に水溶性溶媒を添加してサンプル溶液を調製する工程、
(b)前記サンプル溶液をmRNA結合性固相と接触させて固相−mRNA複合体を形成する工程、
(c)固相−mRNA複合体と液体成分とを分離する工程、
(d)固相−mRNA複合体からmRNAを溶出する工程、
を含むことを特徴とする方法である。
また、本発明は、水溶性溶媒が、分子内に二重結合性酸素を有することを特徴とする、上記の方法である。
また、本発明は、水溶性溶媒が、DMSO、ホルムアミド、N−メチルホルムアミド、及びN−メチル−2−ピロリドンからなる群より選択される少なくとも1種であることを特徴とする上記の方法である。
また、本発明は、水溶性溶媒が、DMSO及び/又はホルムアミドであることを特徴とする上記の方法である。
また、本発明は、(a)工程において、サンプル溶液中の液体成分が水:水溶性溶媒=99:1〜50:50の体積比となるように水溶性溶媒を添加することを特徴とする、上記の方法である。
また、本発明は、(a)工程において、サンプル溶液中の液体成分が水:水溶性溶媒=75:25〜55:45の体積比となるように水溶性溶媒を添加することを特徴とする、上記の方法である。
また、本発明は、mRNA結合性固相が、シリカ粒子、シリカフィルター、固相抽出カラム、ポリマー材料、フィルター材料、ポリスチレンビーズ、磁性微粒子、及びラテックスからなる群より選択される少なくとも1種の表面を疎水加工した固相であることを特徴とする、上記の方法である。
また、本発明は、疎水加工が、直鎖状アルキル基、環状アルキル基、分岐アルキル基、及び芳香族基からなる群より選択される少なくとも1種による化学修飾であることを特徴とする、上記の方法である。
また、本発明は、(c)工程において、固相−mRNA複合体と液体成分との分離が、フィルター透過、遠心分離、沈澱、及び磁気吸着からなる群より選択される少なくとも1種により行われることを特徴とする、上記の方法である。
また、本発明は、(d)工程において、mRNAを溶出用緩衝液により溶出することを特徴とする、上記の方法である。
また、本発明は、(c)工程の後に、(c−1)固相−mRNA複合体を洗浄する工程、
をさらに含むことを特徴とする、上記の方法である。
また、本発明は、(c−1)工程において、固相−mRNA複合体を洗浄用緩衝液により洗浄することを特徴とする、上記の方法である。
また、本発明は、
(1)DMSO、ホルムアミド、N−メチルホルムアミド、及びN−メチル−2−ピロリドンからなる群より選択される少なくとも1種の水溶性溶媒、
(2)シリカ粒子、シリカフィルター、固相抽出カラム、ポリマー材料、フィルター材料、ポリスチレンビーズ、磁性微粒子、及びラテックスからなる群より選択される少なくとも1種の表面を疎水加工したmRNA結合性固相、
(3)固相−mRNA複合体洗浄液、及び
(4)mRNA溶出液
からなる群より選択される少なくとも1種を含むことを特徴とするmRNA単離キットである。
また、本発明は、mRNAを含む出発材料から、mRNAに相補的なDNAを製造する方法であって、
(a)出発材料に水溶性溶媒を添加する工程、
(b)水溶性溶媒を添加した出発材料をmRNA結合性固相と接触させて固相−mRNA複合体を形成する工程、
(c)固相−mRNA複合体と液体成分とを分離する工程、
(d)固相−mRNA複合体からmRNAを溶出する工程、
(e)溶出したmRNAからDNAを逆転写する工程、
(f)DNAを増幅する工程、
を含むことを特徴とする方法である。
また、本発明は、mRNAを含む出発材料から、mRNAに相補的なDNAを製造する方法であって、
(a)出発材料に水溶性溶媒を添加する工程、
(b)水溶性溶媒を添加した出発材料をmRNA結合性固相と接触させて固相−mRNA複合体を形成する工程、
(c)固相−mRNA複合体と液体成分とを分離する工程、
(d)固相に結合したmRNAからDNAを逆転写する工程、
(e)DNAを増幅する工程、
を含むことを特徴とする方法である。
また、本発明は、(c)工程の後に、(c−1)固相−mRNA複合体を洗浄する工程、
をさらに含むことを特徴とする、上記の方法である。
従来のmRNA分離剤であるオリゴdT結合固相(ラテックス、セルロース、磁性微粒子等)は、オリゴdTのmRNAとの結合能を保つために、溶液に懸濁させた状態で保管、使用しなくてはならなかった。従って、取り扱いが面倒であるといった欠点を有していた。これに対し、本発明におけるmRNA結合性固相は粉末状やフィルター状に加工することが可能であり保存、取り扱いに優れた特性を示す。また、形状の加工が容易であるため、バッチ法、スピンカラム法、フィルター法等の様々な分離形態に対応することが可能であり、用途に応じて柔軟な使用が可能となる。
本発明が対象とするmRNAとしては、特に制限はなく、原核生物及び真核生物のいずれのmRNAも対象とするが、ポリAテイルを持つ真核生物のmRNAが好ましい。
本発明に用いるmRNAを含有する出発材料としては、mRNAを含有するものであれば特に制限はないが、具体的には、トータルRNAのような生体由来の核酸混合物を挙げることができる。
また、出発材料にタンパク質、細胞壁、RNA分解酵素等が比較的多く混入している場合は、あらかじめ定法に従い、トータルRNAの状態に粗精製する等の予備精製を行うことが好ましい。これにより、本発明によるmRNAの単離効率を上げることが可能となる。
本発明に用いるmRNA結合性固相とは、mRNAを保持する性質を有する固相を意味する。特に、mRNAを保持できる疎水的な表面を持つ固体であることが好ましい。具体的には、シリカ粒子、フィルター、固相抽出カラム、ポリマー材料、フィルター材料、ポリスチレンビーズ、磁性微粒子、ラテックス等の表面を疎水加工したものが挙げられる。
ここで、これらの表面を疎水加工する方法として好ましい態様としては、固相表面に直鎖状アルキル基、環状アルキル基、分岐アルキル基、芳香族基等で物理的又は化学的に被覆、修飾することが挙げられる。上述の直鎖アルキル基、分岐アルキル基、環状アルキル基、芳香族基は炭素数2以上、特に好ましくは8以上、更に好ましくは18以上であることが望ましい。さらに、これらの基は、フッ素などの疎水的な原子が付加されていても良い。これらの基としては、より具体的には、オクタデシル基、オクチル基、エチル基、フェニル基、シクロヘキシル基、イソプロピル基等を挙げることができる。
特に、mRNA結合性固相としては、例えば、逆相カラムの担体として汎用されているオクタデシル基修飾シリカ(ODS)を使用することができる。
本発明に用いる水溶性溶媒としては、水に加えた際、二層に分離することなく混合可能な溶媒であれば特に制限はないが、二重結合性酸素を分子内に有する溶媒であることが好ましい。更に、水溶性溶媒の特に好ましい態様として、ジメチルスルホキシド(DMSO)、ホルムアミド、N−メチルホルムアミド、N−メチル−2−ピロリドンが挙げられる。その中でも特に効果の高い水溶性溶媒としてDMSO、ホルムアミドが挙げられる。これらの水溶性溶媒は、単独あるいは2種以上を組み合わせて用いてもよい。
これらの水溶性溶媒の作用機構については充分に解明されてないが、適当量、出発材料に添加しておくことで、mRNA結合性固相へのmRNAの保持が促進され、かつその他の成分(リボソーマルRNA、トランスファーRNA等)の保持が起きないという作用を有するものと推察される。そして、水溶性溶媒は、RNAとmRNA結合性固相間の疎水的相互作用を適度に和らげる一方で、同時にRNAの高次構造を柔軟にする効果を有し、これにより先述の特異的なmRNA分離効果を与えると考えられる。従って、水溶性溶媒の好ましい態様として、分子構造の中に二重結合性酸素を持つ極性溶媒が挙げられることとなる。
本発明を実施するに当たり、良好な結果を得るためには、mRNA結合性固相とmRNA間の疎水的相互作用を適切な強さに調整することが重要である。従って、水溶性溶媒の出発材料への適切な添加量は、mRNA結合性固相、水溶性溶媒の種類、塩濃度、出発材料に含有される水の濃度等の組み合わせにより適宜決定されることとなる。例えば、mRNA結合性固相としてオクタデシル基修飾シリカを、水溶性溶媒としてホルムアミドを選択した場合、出発材料へ水溶性溶媒を添加したサンプル溶液中に、体積比で、水:ホルムアミド=6:4(塩濃度は100mMに調整)となるように、水溶性溶媒を添加した場合に、最もmRNAの収率が高くなる。これに対し、水溶性溶媒としてより疎水性の強い溶媒、例えばN−メチルホルムアミドを使用したときは、サンプル溶液中に水:N−メチルホルムアミド=9:1〜8:2(塩濃度は100mMに調整)となるように水溶性溶媒を添加した場合に、良好な結果を与える。また、同様にオクチル基修飾シリカをmRNA結合性固相に選択した場合は、同条件でオクタデシル基修飾シリカを使用する場合よりも水溶性溶媒の最適添加量は少なくなる。
mRNA結合性固相、水溶性溶媒の種類、サンプル溶液の溶液組成比の組み合わせとして、特に好ましいものは、オクタデシル基修飾シリカ、DMSO又はホルムアミド、水:水溶性溶媒=75:25〜55:45、さらに好ましくは7:3〜6:4、の組み合わせである。また、再現性良く分離を行うために、出発材料に緩衝溶液や塩を添加しておくこともできる。塩や、緩衝液の種類、及び濃度に特段制限はないが、mRNAの損傷を防ぎ安定に分離を行うためには中性付近で100mM程度の濃度が望ましい。また、出発材料、mRNA結合性固相、水溶性溶媒の全て又は一部を10℃以下に冷却することで、mRNA結合性固相に対するmRNAの保持効率を高めることもできる。
mRNAを含む出発材料に水溶性溶媒を適当量添加した後、mRNA結合性固相と接触させることで、mRNAをmRNA結合性固相に保持させることができる。この状態を固相−mRNA複合体と呼ぶ。固相−mRNA複合体を液体成分から分離し、更に不純物を除去するために洗浄液で洗浄することができる。洗浄液は、mRNAをmRNA結合性固相から解離することなく、リボソーマルRNAやトランスファーRNA、その他の不純物を除去するものであれば特に制限はない。この目的のために、水、緩衝液、食塩水、有機溶媒及びこれらの混合物を用いることが可能であり、例えば、Tris−HCl溶液等を挙げることができる。また、mRNAの解離を防ぐために洗浄液を10℃以下に冷却して使用することもできる。なお、分離するmRNAサンプルがそれほど高い純度を必要としない場合等は、洗浄工程を省略することもできる。
固相−mRNA複合体からmRNAを溶出するために、溶出液を用いることができる。溶出液は、mRNAをmRNA結合性固相から溶出させるものであれば特に制限はない。この目的のために、水、緩衝液、食塩水、有機溶媒及びこれらの混合物を用いることが可能であり、例えば、DEPC処理水とメタノールの混合溶媒等を挙げることができる。なお、一般に溶出されたmRNAはDNAへの逆転写反応など次の実験にそのまま用いられることも多い。その場合は、それらの実験を妨げない溶媒を溶出液として使用することが望ましい。また、mRNAの単離効率を向上させるために、RNAが分解しない程度に加熱することも可能である。
本発明を実施するにあたり、様々な分離形態を選択することが可能である。例えばmRNA結合性固相に微粒子状のものを使用した場合、バッチ法による分離が可能となる。つまり、水溶性溶媒を添加したサンプル溶液中にmRNA結合性固相を懸濁させ、その後固相−mRNA複合体を沈殿させ液体成分を除去することで、洗浄、溶出操作を行うといった方法である。この沈殿過程においては重力による沈殿のほかに、遠心分離操作により沈殿させることも可能である。また、mRNA結合性固相と液体成分との分離を、フィルターによって行うことも可能である。また、微粒子に磁石により吸引される性質を付与しておけば、沈殿操作を磁石による吸引により行うこともできる。
また、mRNA結合性固相にフィルター状や固相カラム状のものを使用した場合、フィルター透過法による分離が可能となる。この場合は、サンプル溶液とmRNA結合性固相との接触は、サンプル溶液がフィルター若しくはカラム中を透過する際に行われる。また、洗浄操作及び溶出操作はフィルター若しくはカラムに洗浄液及び溶出液を透過させることで行われる。
また、mRNA結合性固相を容器や流路の表面に塗布しておき、ここにサンプル溶液、洗浄液、溶出液を添加することによりmRNAの分離を行うこともできる。
前記方法を実施するための本発明による成分のキットは、mRNA結合性固相、水溶性溶媒、洗浄液、溶出液の全部又は一部を含む。洗浄液、溶出液は、そのような溶液を配合するための成分又は濃縮形態であってもよい。ユーザーは必要な溶液をそれぞれ必要な濃度で調製することができる。
また、本発明によって単離されたmRNAからDNAを逆転写し、DNAをPCR(ポリメラ−ゼ連鎖反応)等により増幅させることにより、mRNAに相補的なDNAを製造することができる。
又は、固相−mRNA複合体の全部又は一部をそのまま用いてDNAに逆転写し、DNAをPCR(ポリメラ−ゼ連鎖反応)等により増幅させることにより、mRNAに相補的なDNAを製造することもできる。
以下、本発明の特徴を更に明らかにするため実施例及び比較例を示すが、これらの例は本発明を例示するためのものであり、本発明を制限するためのものではない。
まず、実施例の中で行った代表的な操作を、以下に標準プロトコールとして示す。
1.サンプル溶液の調製
酵母から定法に従って抽出したトータルRNA水溶液(10g/l)10μlにDEPC処理水90μl、1M Tris−HCl(pH7.5)20μlを添加した。次に、水溶性溶媒としてDMSOを80μl添加した。この溶液をサンプル溶液(DMSO、40vol%)と表記する。水溶性溶媒として添加する溶媒の種類、体積は実験に応じて変化させた。サンプル溶液は氷冷により10℃以下に冷却した。
2.フィルター法によるmRNAの分離操作
オクタデシル基修飾シリカがディスク状になった固相抽出カラム(スピーディスクC18 担体量20mg、JTベーカー社製)を、mRNA結合性固相として使用した。実際の操作は以下のように行った。
2−1 フィルター透過操作
プロトコール1に従って調整したサンプル溶液(DMSO、40vol%)をカラムに加え、フィルター透過を行った。ここで得られた溶液は、透過液と表記する。
2−2 洗浄操作
100mM Tris−HCl(pH7.5)1000μlをカラムに加え、フィルター透過を行った。この操作を2回、又は3回行った。ここで得られた溶液を、それぞれすすぎ1、すすぎ2、すすぎ3と表記する。洗浄液は、10℃以下に冷却したものを使用した。
2−3 溶出操作
65℃に加熱しておいたDEPC処理水とメタノールの等量混合物100μlをカラム加え、mRNAを溶出させた。この操作を2回行った。ここで得られた溶液を、それぞれ溶出1、溶出2と表記する。
3.バッチ法によるmRNAの分離操作
粉末状オクタデシル基修飾シリカ(ワコーシル40C18、和光純薬社製)100mgをエッペンチューブにとり、DMSOで予備洗浄した。その後プロトコール1に従って調製したサンプル溶液(DMSO、40vol%)を加え、10℃以下で10分間振とうさせた。その後、遠心分離(15000rpm、3min.)によりシリカ担体を沈殿させ、上清を除去した。ここで得られた溶液を透過液と表記する。その後、100mM Tris−HCl(pH7.5)500mlを加え軽く懸濁させ、遠心分離により上清を除去した。この洗浄操作を2回繰り返した。ここで得られた溶液をそれぞれすすぎ1、すすぎ2と表記する。次に65℃に加熱しておいたDEPC処理水とメタノールの等量混合物100 μlを加え、軽く懸濁させ、遠心分離によりシリカ担体を除去することでmRNAを含む溶液を得た。この操作を2回行った。ここで得られた溶液をそれぞれ溶出1、溶出2と表記する。
4.トータルRNA収率の算出
溶液の吸光度(260nm)を測定し、透過液、すすぎ1、2、3、溶出1、2、に含まれるRNAの量を算出した。各溶液に含まれるRNAの総計に対する、溶出1、2に含まれるRNA量の100分率をトータルRNA収率とした。
5.mRNA収率の算出
透過液、すすぎ1、2、3、溶出1、2の各溶液1μlをノーザンブロット用メンブレンにスポットしUV照射により不溶化させた。次に、定法に従いノーザンブロット実験を行った。具体的には、このメンブレンにフルオレセイン修飾オリゴdTプローブをハイブリダイズさせ、フルオレセイン抗体修飾アルカリホスファターゼを添加し、リン酸基蛍光色素を添加させた。一定時間経過後、メンブレンに沈着した蛍光色素からの蛍光強度を定量した。これによりポリAテイルを持つmRNAの相対量を知ることができる。この蛍光強度比により、各溶液に含まれるmRNAの総計に対する、溶出1、2に含まれるmRNA量の100分率をmRNA収率とした。
実施例1
実施例1では、mRNA結合性固相としてオクタデシル基修飾シリカを、水溶性溶媒としてDMSOをそれぞれ用いて本発明を実施した。分離形態は固相抽出カラムを用いたフィルター透過方式で行った。即ち、プロトコール1に従って調整したサンプル溶液(DMSO、40vol%)を、プロトコール2の操作に従ってフィルター透過実験を行った。ここで得られた各溶液(透過液、すすぎ1、2、溶出1、2)に含まれる、トータルRNA量、mRNA量の算出を行った。
その結果、トータルRNAはほとんどが透過液、すすぎ1、2、に含まれており、溶出1、2に含まれるのは少量であることが明らかとなった。これに対し、mRNAは透過液、すすぎ1、2、はあまり含まれておらず、溶出液1、2に含まれていることが明らかとなった。このことは、mRNAのみが選択的にカラム中に保持され、溶出1、2に得られていることを示すものである(図1)。
したがって、トータルRNAに大量に含まれているmRNA以外のRNA(リボソーマルRNAやトランスファーRNA)は固相カラムにほとんど吸着することなく、洗浄過程までに溶出した。これに対し、mRNAはほぼ定量的にオクタデシル基修飾シリカに保持され、洗浄過程までにはほとんど溶出しない。このmRNAは、次の溶出過程において速やかに溶出することが明らかとなった。即ち、この一連の操作により、mRNA結合性固相と水溶性溶媒の組み合わせによりmRNAの分離抽出が、簡便且つ高精度に行えることを示すことが出来た。
比較例1
比較例1では、実施例1と同様の操作を行っているが、mRNA結合性固相ではなく未修飾シリカを用いた。即ち、未修飾シリカがディスク状になった固相抽出カラム(スピーディスクシリカ担体量20mg、JTベーカー社製)をmRNA結合性固相として使用し、実施例1と同様の操作を行った。
その結果、溶出1、2には、mRNAはほとんど含まれていないことが明らかとなった。このことは、未修飾シリカではmRNAの分離抽出を行うことが出来ないことを示すものである(図2)。
比較例2
比較例2では実施例1と同様の操作を、水溶性溶媒を添加することなく行った。即ち、サンプル溶液にDMSOではなくDEPC処理水を加え、実施例1と同様の操作を行った。
その結果、溶出1、2には、mRNAはほとんど含まれていないことが明らかとなった。このことは水溶性溶媒を添加しないとmRNAの分離抽出を行うことが出来ないことを示すものである(図3)。
したがって、比較例1及び2より、mRNAの分離抽出にはmRNA結合性固相と水溶性溶媒の双方が必要不可欠であることがわかる。
実施例2
実施例2では、様々な溶媒を水溶性溶媒として用いた時のmRNA収率の検討を行った。プロトコール1におけるサンプル溶液を、水溶性溶媒として使用する溶媒及びその添加割合を変えて作成した。これらのサンプル溶液について、プロトコール2の操作に従ってフィルター透過実験を行った。プロトコール4、プロトコール5に記載の方法でトータルRNA収率、mRNA収率を求めた。
その結果、トータルRNAの収率は全サンプル10%以下であった。mRNA収率は溶媒の種類、添加量により異なることが明らかとなった(表1)。即ち、複数の溶媒が、水溶性溶媒としての役割を果たすことが明らかとなった。特にジメチルスルホキシド(DMSO)、ホルムアミド、N−メチルホルムアミド、N−メチル−2−ピロリドンは水溶性溶媒として高い効果を示すことが明らかとなった。また、mRNA収率において高い値を示す添加量はそれぞれ異なる。全体的な傾向としては、疎水性の強い溶媒ほど少ない添加量領域で最高値を示す。
実施例3
実施例3では、様々なmRNA結合性固相を用いてmRNA分離収率に及ぼす影響について検討を行った。ここではmRNA結合性固相としてオクタデシル基修飾シリカ、オクチル基修飾シリカ、エチル基修飾シリカ、を用いている。即ち、プロトコール1におけるサンプル溶液の水溶性溶媒の比率を変化させ(DMSO、10〜50vol%)、プロトコール2の操作に従ってフィルター透過実験を行った。ただし、固相抽出カラムをオクタデシル基修飾シリカ(スピーディスクC18)、オクチル基修飾シリカ(オルテックC8)、エチル基修飾シリカ(オルテックC2)の3種類を使用し、比較を行った。更にプロトコール4、プロトコール5に記載の方法でトータルRNA収率、mRNA収率を求めた。
その結果、トータルRNAの収率は全サンプル10%以下であった。mRNA収率の変化はシリカ表面の化学修飾基により異なることが明らかとなった(図4)。また、水溶性溶媒としてDMSOを用いたが、mRNAの分離を行うのに最適な水溶性溶媒量が異なることが分かる。全体的な傾向として、疎水性の強いmRNA結合性固相程、水溶性溶媒の添加量が多い条件で最適分離条件を示している。この結果と実施例2の結果を併せると、mRNAの分離には、mRNA結合性固相とmRNA間の疎水的相互作用のバランスが大きく影響を与えることが示された。
実施例4
実施例4では仕込みトータルRNAの量を変化させmRNA収率に及ぼす影響について検討した。即ち、プロトコール1に従ってサンプル溶液(DMSO、40vol%)を調製した。但し、サンプル溶液に含まれるトータルRNA量を20μg〜1000μgまで変化させた。これらをプロトコール2の操作に従ってフィルター透過実験を行った。更にプロトコール4、プロトコール5に記載の方法でトータルRNA収率、mRNA収率を求めた。
その結果、トータルRNAの収率は全サンプル10%以下であった。mRNA収率は仕込トータルRNA量200μg以下の領域で特に高い値を示した(図5)。一般的なmRNA分離スケールとしては200μg以下であることが多いので、この領域で高収率を与えることは実用的にも有利であるといえる。また、仕込量200μg以上では収率の低下が起きるが、これはmRNA結合性固相の量を増やすことで容易に解決できる。
実施例5
実施例5、6、7はそれぞれ異なる由来のmRNAを含有する出発材料から、mRNAを分離した結果である。即ち、プロトコール1に従ってサンプル溶液(DMSO、40vol%)を調整した。但し、サンプル溶液に含まれるトータルRNAはラット肝臓由来のトータルRNAとした。このサンプル溶液をプロトコール2の操作に従ってフィルター透過実験を行った。
その結果、トータルRNA収率2%、mRNA収率91%と算出された。このことによりラット肝臓由来のトータルRNAから高収率、高純度にmRNAが分離抽出されていることが示された。
実施例6
プロトコール1に従ってサンプル溶液(DMSO、40vol%)を調整した。但し、サンプル溶液に含まれるRNAはラット心臓由来のポリA+RNA(5μg)とした。このサンプル溶液をプロトコール2の操作に従ってフィルター透過実験を行った。その結果、mRNA収率は95%と算出された。このことによりラット心臓由来のポリA+RNAはほぼ選択的にmRNA結合性固相へ結合することが示された。
実施例7
Molt4細胞から市販のトータルRNA抽出キット(クイックジーン800対応キット、フジバイオサイエンス社製)を用いてトータルRNAを抽出した。ここで得られたトータルRNA溶液100μlに1M Tris−HCl(pH7.5)20μl、DMSO80μlを添加することで、プロトコール1に従ってサンプル溶液(DMSO、40vol%)を調整した。このサンプル溶液をプロトコール2の操作に従ってフィルター透過実験を行った。その結果、mRNAが分離抽出されていることが示された。
実施例5、6、7より、いずれも高い分離収率を示し、本発明が汎用的に使用可能であることを示すものである。
また、実施例7では既存のトータルRNA抽出キットと本発明の方法を連続的に使用し、細胞抽出液からmRNAの分離までを連続的に行った。従って、既存の方法と組み合わせる等して細胞抽出液等からスムーズにmRNAを分離する事も可能であることを示すことが出来た。
実施例8
実施例8は微粒子状のmRNA結合性固相を使用し、バッチ法によりmRNAの分離を行った。即ち、プロトコール1に従って調整したサンプル溶液(DMSO、40vol%)をプロトコール3の操作に従ってバッチ法によるmRNA分離実験を行った。
その結果、トータルRNA収率3%、mRNA収率82%と算出された。このことにより、本法はバッチ法等の様々な分離形態に応用可能であることが示された。
比較例3
比較例3では、mRNA結合性固相の代わりに未修飾シリカを使用した。即ち、実施例8に記載の実験を、未修飾シリカ(ワコーシル40SIL、和光純薬社製)を用いて行った。
その結果、mRNAは溶出1、2にはほとんど含まれていなかった。従って、未修飾シリカではmRNAが分離抽出されないことが示された。この実験では、mRNAの分離は行われず、バッチ法においても、mRNA結合性固相が不可欠であることが示された。
実施例9
実施例9は、本法により得られたmRNAが他のバイオ関連実験(この場合はRT−PCR実験)に使用可能であることを示すものである。即ち、実施例1で得られた溶出1の溶液5μlをそのまま用いて逆転写PCR実験を行った。操作はインビトロゲン社の逆転写用キットサーモスクリプトRT−PCRシステムを用い、ターゲット遺伝子をACT YEAST (全長1128 bases、プライマーはGAAGGGTAGATAGCAGCCATC及びTCTTATGCTGCTTTCACCAGGの塩基配列を持つDNAを用いた。)として、DNAへの逆転写反応、増幅反応(25サイクル)を行った。
得られた反応液を用いてアガロースゲル電気泳動を行ったところ、ほぼ1つのシャープなバンドが観察され、約1000塩基長のDNAが増幅していることが明らかとなった(図6)。今回使用したmRNAサンプルは溶出を水/メタノール混合液で行ったものであるが、RT−PCR実験に直接使用したところ、何の問題もなく対応するDNA産物を得ることが出来た。
実施例10
実施例1で得られた溶出1の溶液100μlをイソプロパノール沈殿して濃縮した後、アガロースゲル電気泳動実験を行った。
泳動パターンから、リボソーマルRNA由来のシャープなバンドがほとんど観察されないことが明らかとなった。このことから、得られたmRNAサンプルには不純物の混入が極めて少ないことが示された。蛍光強度比をパターン化しピーク面積比からmRNAサンプルの純度を算出すると93%と算定された。本発明により得られたmRNAサンプルが高い純度を有していることを示すものである。
図1は、実施例1で得られた透過液、すすぎ1、2、3、溶出1、2について、トータルRNA量(A)、mRNA量(B)、ノーザンブロット実験の結果(C)を示す図である。 図2は、比較例1で得られた透過液、すすぎ1、2、溶出1、2について、トータルRNA量(A)、mRNA量(B)、ノーザンブロット実験の結果(C)を示す図である。 図3は、比較例2で得られた透過液、すすぎ1、2、溶出1、2について、トータルRNA量(A)、mRNA量(B)、ノーザンブロット実験の結果(C)を示す図である。 図4は、実施例3の実験において、様々な化学修飾シリカフィルターをmRNA結合性固相として用いた場合のmRNA収率を示す図である。 図5は、実施例4の実験において仕込みのトータルRNA量を20μg〜1000μgまで変化させた場合のmRNA収率の変化を示す図である。 図6は、実施例9の実験で得られた溶出1の溶液を用いて逆転写PCR(RT−PCR)実験を行い、得られたDNA産物をゲル電気泳動させて得られたパターンを示す図である。

Claims (16)

  1. mRNAを含有する出発材料からmRNAを単離する方法であって、
    (a)出発材料に水溶性溶媒を添加してサンプル溶液を調製する工程、
    (b)前記サンプル溶液をmRNA結合性固相と接触させて固相−mRNA複合体を形成する工程、
    (c)固相−mRNA複合体と液体成分とを分離する工程、
    (d)固相−mRNA複合体からmRNAを溶出する工程、
    を含み、
    前記水溶性溶媒が、DMSO、ホルムアミド、N−メチルホルムアミド、及びN−メチル−2−ピロリドンからなる群より選択される少なくとも1種であり、
    前記mRNA結合性固相が、シリカの表面を疎水加工した固相であり、
    前記疎水加工が、直鎖状アルキル基による化学修飾である、
    前記方法。
  2. 前記mRNA結合性固相が、オクタデシル基修飾シリカ、オクチル基修飾シリカおよびエチル基修飾シリカからなる群より選択される少なくとも1種である、請求項1に記載の方法。
  3. 前記水溶性溶媒が、DMSO及び/又はホルムアミドであることを特徴とする請求項1又は2に記載の方法。
  4. (a)工程において、サンプル溶液中の液体成分が水:水溶性溶媒=99:1〜50:50の体積比となるように水溶性溶媒を添加することを特徴とする、請求項1〜3のいずれかに記載の方法。
  5. (a)工程において、サンプル溶液中の液体成分が水:水溶性溶媒=75:25〜55:45の体積比となるように水溶性溶媒を添加することを特徴とする、請求項1〜4のいずれかに記載の方法。
  6. (c)工程において、固相−mRNA複合体と液体成分との分離が、フィルター透過、遠心分離、沈澱、及び磁気吸着からなる群より選択される少なくとも1種により行われることを特徴とする、請求項1〜5のいずれかに記載の方法。
  7. (d)工程において、mRNAを溶出用緩衝液により溶出することを特徴とする、請求項1〜6のいずれかに記載の方法。
  8. (c)工程の後に、(c−1)固相−mRNA複合体を洗浄する工程、
    をさらに含むことを特徴とする、請求項1〜7のいずれかに記載の方法。
  9. (c−1)工程において、固相−mRNA複合体を洗浄用緩衝液により洗浄することを特徴とする、請求項に記載の方法。
  10. (1)DMSO、ホルムアミド、N−メチルホルムアミド、及びN−メチル−2−ピロリドンからなる群より選択される少なくとも1種の水溶性溶媒、
    (2)シリカの表面を直鎖状アルキル基による化学修飾で疎水加工したmRNA結合性固相、
    (3)固相−mRNA複合体洗浄液、及び
    (4)mRNA溶出液、
    を含むことを特徴とするmRNA単離キット。
  11. 前記mRNA結合性固相が、オクタデシル基修飾シリカ、オクチル基修飾シリカおよびエチル基修飾シリカからなる群より選択される少なくとも1種である、請求項10に記載のキット。
  12. mRNAを含む出発材料から、mRNAに相補的なDNAを製造する方法であって、
    (a)出発材料に水溶性溶媒を添加する工程、
    (b)水溶性溶媒を添加した出発材料をmRNA結合性固相と接触させて固相−mRNA複合体を形成する工程、
    (c)固相−mRNA複合体と液体成分とを分離する工程、
    (d)固相−mRNA複合体からmRNAを溶出する工程、
    (e)溶出したmRNAからDNAを逆転写する工程、
    (f)DNAを増幅する工程、
    を含み、
    前記水溶性溶媒が、DMSO、ホルムアミド、N−メチルホルムアミド、及びN−メチル−2−ピロリドンからなる群より選択される少なくとも1種であり、
    前記mRNA結合性固相が、シリカの表面を疎水加工した固相であり、
    前記疎水加工が、直鎖状アルキル基による化学修飾である、
    前記方法。
  13. 前記mRNA結合性固相が、オクタデシル基修飾シリカ、オクチル基修飾シリカおよびエチル基修飾シリカからなる群より選択される少なくとも1種である、請求項12に記載の方法。
  14. mRNAを含む出発材料から、mRNAに相補的なDNAを製造する方法であって、
    (a)出発材料に水溶性溶媒を添加する工程、
    (b)水溶性溶媒を添加した出発材料をmRNA結合性固相と接触させて固相−mRNA複合体を形成する工程、
    (c)固相−mRNA複合体と液体成分とを分離する工程、
    (d)固相に結合したmRNAからDNAを逆転写する工程、
    (e)DNAを増幅する工程、
    を含み、
    前記水溶性溶媒が、DMSO、ホルムアミド、N−メチルホルムアミド、及びN−メチル−2−ピロリドンからなる群より選択される少なくとも1種であり、
    前記mRNA結合性固相が、シリカの表面を疎水加工した固相であり、
    前記疎水加工が、直鎖状アルキル基による化学修飾である、
    前記方法。
  15. 前記mRNA結合性固相が、オクタデシル基修飾シリカ、オクチル基修飾シリカおよびエチル基修飾シリカからなる群より選択される少なくとも1種である、請求項14に記載の方法。
  16. (c)工程の後に、(c−1)固相−mRNA複合体を洗浄する工程、
    をさらに含むことを特徴とする、請求項12〜15のいずれかに記載の方法。

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