JP4761937B2 - 転炉の吹錬方法 - Google Patents
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Description
上吹きランスから酸素ガスを吹き込む際、酸素ガスが溶銑の表面に衝突するため、溶銑の一部がスピッティング粒鉄となって炉口へと飛んでいき、このスピッティング粒鉄が炉口へ付着して地金(以降、炉口に付着した地金のことを付着地金という)となる。
また、溶銑(溶鋼)の温度[℃]の測定を行うサブランスを炉体内へ挿入する際、前記サブランスが付着地金に衝突してしまう危険性がある。また、チャージ数が多くなるにつれて炉体の底部(炉底部)の耐火物が溶損して減少する結果、次第に相対的に炉口近傍が重くなり、転炉が起きあがりにくくなる傾動トリップが発生する恐れがある。
このような問題を解決するために、転炉の操業においては、炉口周りでの付着地金の堆積速度を低下させる、即ち、付着地金となるスピッティング粒鉄が炉口へ付着し難くすることで前記除去作業をできるだけ少なくすることが望まれている。そこで、ランスチップの改善などを行うことで、スピッティング粒鉄が炉口へ付着しないようにする技術が考えられているが、十分な効果が得られていないのが実情である。
さて、吹錬を開始した直後では、溶銑の湯面を覆うスラグ(カバースラグ)があまり形成されておらず、このカバースラグが少ない状態で、送酸速度を大きくすると、酸素が直接湯面に当たりスピッティング粒鉄が跳ね上がり易くなるので、カバースラグが少ない時期では、送酸速度を小さくし、カバースラグが多い時期では、送酸速度を大きくして吹錬時間を短くするのがよい。即ち、カバースラグの形成具合に応じた送酸速度を決定するのが好ましい。
また、上吹きランスから吹きつける酸素の吹錬開始からの積算量が総酸素量の40%に達するまでは、式(1)に代えて式(4)を満たすように送酸速度を調整することが好ましい。
図1は本発明の転炉の吹錬方法を行う転炉の全体側面図を示している。なお、転炉はこの実施形態に限定されない。転炉は、炉体の上側から酸素を吹きつけ且つ、炉体の底部からガスを吹き込むことができる上底吹き転炉であり、炉体1内に溶銑(溶鋼)やスクラップ等が収容可能となっている。
前記炉体1は有底で筒状に形成された鉄皮2と、この鉄皮2の内部に設けられた複数の耐火物3(耐火レンガ)から構成されている。炉体1の底部4にはガスを吹き込むためのガス吹き込み部5が設けられ、このガス吹き込み部5に対向する側、即ち、図1では炉体1の上部側に炉口6が形成されている。炉口6に酸素などを吹くための上吹きランス7が挿入可能になっている。
前記耐火物3は、鉄皮2の底部10,拡大部11,直胴部12及び絞り部13に沿うように順番に鉄皮2内に貼り付けられ、貼り付けられた耐火物3の内面が鉄皮2の内面に略沿ったものとなっている。鉄皮2の直胴部12に溶銑8(溶鋼)を出湯(出鋼)するための出湯口9(出鋼口)が形成されている。
以上の転炉によれば、炉体1内に溶銑を装入し、炉体1(転炉)の炉口6へ上吹きランス7を挿入した後に、この上吹きランス7から溶銑に向けて酸素ガスを吹き付けることによって吹錬を行うことができる。吹錬を行う際には、炉体1の底部からガスを吹き込んで溶銑を攪拌する。
以下、式の導出過程について説明する。
発明者は、上吹きランス7で酸素を吹き込んだ際、スピッティング粒鉄が炉口6へ到達しない高さを、次に示す物理的な計算により算出した。
図2は酸素を吹き込んだ際のスピッティング粒鉄のモデル図である。図2に示すように、スピッティング粒鉄を球状とすると共に、スピッティング粒鉄の速度をvとし、酸素を吹き込んだ際に発生する上昇気流の速度、即ち、空塔速度をVとすると、酸素を吹き込んだ際には、スピッティング粒鉄には式(5)で示す運動方程式が成立する。
さて、発明者はどのようなスピッティング粒鉄が炉口6へ付着しているか過去の操業や実験により調査した。操業が終了した後に、炉口6へ付着した付着地金を採取し、その断面積や組成分析などを行ったところ、スピッティング粒鉄の粒径が1mm程度のものが付着地金となることが分かった。
図3,4はその結果である。図3,4では、1チャージ当たりで酸素を吹き込む総酸素量を100%とし、酸素を吹き込んだ積算量が総酸素量の40%までの期間を初期とすると共に、酸素を吹き込んだ積算量が総酸素量の40%を超えた期間を中期以降として結果をまとめたものである。前記実験において、吹錬条件を表1のように設定した。
操業状態としては、各操業における吹錬時間(分/ch)、溶鋼1トン当たりのダスト発生量(kg/t)、地金取り間隔(ch/回)、即ち、付着地金の除去を終了してから再度除去作業を開始するまでに操業できる総チャージ数、放熱ロス(Mcal/t),鉄鉱石投入量(kg/t)、出鋼歩留、出鋼量(t/ch)をそれぞれ調べた。
製鋼時間は吹錬時間に主原料装入,調質,出鋼,排滓にかかる時間として15分を加算したものである。地金取り時間は、1回の地金取り時間は30分としたうえで、この時間を地金取り間隔で割ることで1チャージ当たりの地金取り作業時間としている。生産ピッチは、一日当たりに製鋼できる総チャージ数,即ち、稼働時間/1チャージにかかる時間である。
図5は、上記で示したシミュレーションや実験操業での臨界初速度を横軸にとり、生産能力を縦軸にとってグラフ化したものである。図5から分かるように、臨界初速度が9.0m/secを境としてその値が小さくなるほど、初期や中期のどちらとも生産能力は減少している。
臨界初速度が小さくなる条件下(空塔速度が大きい、炉内高さHが低い、炉口内径Rが小さい)においては同じ送酸速度Fo2であってもスピッティング粒鉄が炉口6に付着し易くなることが分かった。即ち、臨界初速度が小さい場合、数チャージに1回程度の頻繁な地金除去作業を行わなければならず、その影響で生産ピッチが減少し、生産能力が低下する。
以上、シミュレーションや実験操業によれば、粒径が1mmのスピッティング粒鉄の臨界初速度は、9.0m/sec以上11.3m/sec以下の範囲が良いことが分かった。
そこで、スピッティング粒鉄の前記臨界初速度を式(9)での初速度v0とし、送酸速度Fo2(空塔速度V)の範囲を規定すると、式(1)及び式(2)のようになった。
なお、上述した式(1)及び式(2)の導出の際に用いられる抗力係数Cdの値は、排ガスのレイノルズ数によって変化するので、式(1)及び式(2)を導出するにあたっては、CdとReの関係を求めたトーマンらの計算値をグラフ化したもの(Thoman,D.C.and Szewczyk,A.A.,Phys.Fluids,Suppl.II,12-12(1969),II-76)等)においてRe=1〜6
0000の間を読み取り、式(10)で近似した。
したがって、総酸素量が40%を超えた際には、式(2)の臨界初速度v0の値を11.3m/secから10.8m/secに変更した式(3)と、式(1)とを満たすように送酸速度Fo2を調整するのがよい。このとき、炭素量(%)から見れば、炭素量[C]が0.2%以下になるまでの間は、式(3)と、式(1)とを使用するのが好ましい。
したがって、総酸素量が40%に達するまでは、式(1)の臨界初速度v0の値を9.0m/secから9.6m/secに変更した式(4)と、式(2)とを満たすように送酸速度Fo2を調整するのがよい。
また、少なくとも吹錬初期に式(2)と式(4)とを満たすように、送酸速度Fo2を調整することによって、上記式を満たさないものに比べ、平均的な地金取り間隔を向上させることができた。
本発明の吹錬方法は、上底吹きの転炉で上吹きランス7から酸素を吹き込んで吹錬を行うものであれば、脱りん処理を行う場合でも、脱炭処理を行う場合でも適用することが可能である。
2 鉄皮
3 耐火物(耐火レンガ)
6 炉口
H 炉内高さ
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