ところで、上記従来の車両用内接歯車型オイルポンプにおいては、上述のように、ドリブンギヤの外周面に複数の凹部が形成されることによる比較的大きな動圧の発生によって、ドリブンギヤの回転時にその回転中心が振れるという問題が解消され、ドリブンギヤとポンプボデーとの良好な潤滑状態が維持されるようになっている。これにより、例えばドリブンギヤとポンプボデーとが接触する或いはそれに近い状態となることによる摩擦損失の発生が抑制されるため、その点においてはドリブンギヤの回転抵抗が低減されると考えられる。しかしながら、上記複数の凹部が形成されることによって、ドリブンギヤとポンプボデーとの間の隙間のうち、その隙間の間隔がドリブンギヤの回転方向後方に向かうほど拡大する箇所において、その箇所を流れる作動油の流線に剥離が生じて圧力が低下するようになる。そのため、ドリブンギヤとポンプボデーとの隙間の周方向の圧力差が増大し、その圧力差に起因してドリブンギヤにその回転を妨げる力すなわち圧力抗力(圧力抵抗)が作用するので、ドリブンギヤの回転抵抗が増大するという新たな問題があった。
本発明は以上の事情を背景としてなされたものであり、その目的とするところは、ドリブンギヤに作用する圧力抗力(圧力抵抗)を低減させることで回転抵抗が低減された車両用内接歯車型オイルポンプを提供することにある。
かかる目的を達成するための請求項1にかかる発明の要旨とするところは、(1)円筒状内周面により形成されるポンプ室を有するポンプボデーと、内周歯を有し、前記円筒状内周面に嵌め入れられることにより前記円筒状内周面により回転可能に支持された円環状のドリブンギヤと、そのドリブンギヤの内周歯と噛み合う外周歯を有してそのドリブンギヤの回転中心から偏心した回転中心回りに回転可能に設けられ、そのドリブンギヤを回転駆動するドライブギヤとを備える車両用内接歯車型オイルポンプであって、(2)前記ドリブンギヤは、周方向に離れた複数位置から半径方向外側に突き出す複数個の凸部を外周面に備え、(3)その凸部は、前記ドリブンギヤの周方向においてその回転方向後方に向かうほど最小径位置から最大径位置まで立上る立上り面と、その最大径位置から回転方向後方に隣接する最小径位置へ立下がる立下り面とを有し、前記立下り面の周方向長さは前記立上り面の周方向長さよりも大きいことにある。
また、請求項2にかかる発明の要旨とするところは、請求項1にかかる発明において、前記凸部の表面のうちのその凸部の立下り面は、その凸部の立下り面と前記ポンプボデーとの間を流れる作動油の流線に剥離が生じないように前記ドリブンギヤの周方向において流線形となるように形成されていることにある。
また、請求項3にかかる発明の要旨とするところは、請求項2にかかる発明において、前記凸部の立上り面は、その凸部の前記ドリブンギヤの回転方向前方に隣接する凸部の立下り面の流線形の終端以前の位置から立上ることにある。
また、請求項4にかかる発明の要旨とするところは、請求項1乃至3のいずれか1にかかる発明において、前記凸部の立上り面には、その凸部と前記ポンプボデーとの間を流れる作動油の流線の剥離位置を前記ドリブンギヤの回転方向後方へ移動させる小乱流を発生させるための小乱流発生部が設けられており、その小乱流発生部は、前記ドリブンギヤの幅方向に連なる小突起であることにある。
また、請求項5にかかる発明の要旨とするところは、請求項1乃至3のいずれか1にかかる発明において、前記凸部の立上り面には、その凸部と前記ポンプボデーとの間を流れる作動油の流線の剥離位置を前記ドリブンギヤの回転方向後方へ移動させる小乱流を発生させるための小乱流発生部が設けられており、その小乱流発生部は、前記ドリブンギヤの幅方向に連なる溝であることにある。
また、請求項6にかかる発明の要旨とするところは、請求項1乃至3のいずれか1にかかる発明において、前記凸部の立上り面には、その凸部と前記ポンプボデーとの間を流れる作動油の流線の剥離位置を前記ドリブンギヤの回転方向後方へ移動させる小乱流を発生させるための小乱流発生部が設けられており、その小乱流発生部は、所定間隔を隔てて前記ドリブンギヤの幅方向に配列された複数の小突起であることにある。
また、請求項7にかかる発明の要旨とするところは、請求項1乃至3のいずれか1にかかる発明において、前記凸部の立上り面には、その凸部と前記ポンプボデーとの間を流れる作動油の流線の剥離位置を前記ドリブンギヤの回転方向後方へ移動させる小乱流を発生させるための小乱流発生部が設けられており、その小乱流発生部は、所定間隔を隔てて前記ドリブンギヤの幅方向に配列された複数の小穴であることにある。
請求項1にかかる発明の車両用内接歯車型オイルポンプによれば、ドリブンギヤは、周方向に離れた複数位置から半径方向外側に突き出す複数個の凸部を備え、その凸部は、ドリブンギヤの周方向においてその回転方向後方に向かうほど最小径位置から最大径位置まで立上る立上り面と、その最大径位置から回転方向後方に隣接する最小径位置へ立下がる立下り面とを有し、前記立下り面の周方向長さは前記立上り面の周方向長さよりも大きいことから、凸部の立上り面とポンプボデーとの間を流れる作動油に比較的大きな動圧が発生するのでドリブンギヤの自動調心性が高められるという効果を享受しつつ、凸部の立下り面とポンプボデーとの間に形成される隙間がドリブンギヤの回転方向後方に向かって緩やかに拡大するように形成されることでその隙間の作動油の流れに剥離が生じることが抑制される。このため、その剥離に起因してドリブンギヤとポンプボデーとの間を流れる作動油の周方向の圧力差が増大し、ドリブンギヤにその回転を妨げるように作用する圧力抗力(圧力抵抗)が増大することが抑制されるので、ドリブンギヤの回転抵抗を低減させることができる。また、上記ドリブンギヤの回転抵抗(軸トルク抵抗)が低減することによってドライブギヤの回転抵抗(軸トルク抵抗)も低減させることができる。
請求項2にかかる発明の車両用内接歯車型オイルポンプによれば、前記凸部の表面のうちのその凸部の立下り面は、その凸部の立下り面と前記ポンプボデーとの間を流れる作動油の流線に剥離が生じないように前記ドリブンギヤの周方向において流線形となるように形成されていることから、凸部の立下り面とポンプボデーとの間に形成される隙間の作動油の流れに剥離が生じることが抑制されて、その隙間の作動油の流れに渦が発生することが抑制されるため、ドリブンギヤに作用する圧力抗力が上記渦(剥離)に起因して増大することが抑制されるので、ドリブンギヤの回転抵抗を低減させることができる。
請求項3にかかる発明の車両用内接歯車型オイルポンプによれば、前記凸部の立上り面は、その凸部の前記ドリブンギヤの回転方向前方に隣接する凸部の立下り面の流線形の終端以前の位置から立上ることから、例えば、前記凸部の立上り面がその凸部のドリブンギヤの回転方向前方に隣接する凸部の流線形の終端位置よりドリブンギヤの回転方向後方の位置から立ち上がるように形成された場合と比較して、ドリブンギヤとポンプボデーとの隙間を流れる作動油の周方向の圧力差が小さくなり、ドリブンギヤに作用する圧力抗力が小さくなるので、ドリブンギヤの回転抵抗を一層低減させることができる。
請求項4にかかる発明の車両用内接歯車型オイルポンプによれば、前記凸部の立上り面には、その凸部と前記ポンプボデーとの間を流れる作動油の流線の剥離位置を前記ドリブンギヤの回転方向後方へ移動させる小乱流を発生させるための小乱流発生部が設けられており、その小乱流発生部は、前記ドリブンギヤの幅方向に連なる小突起であることから、上記小突起が設けられない場合と比較して、立下り面と前記ポンプボデーとの間の作動油の剥離位置(剥離の起点となる境界層の位置)がドリブンギヤの回転方向後方に移動して剥離の発生が抑制され、ドリブンギヤに作用する圧力抗力が上記剥離に起因して増大することが抑制されるので、ドリブンギヤの回転抵抗を低減させることができる。また、小突起が設けられない場合と比較して、凸部の立下り面の勾配が急であっても剥離の発生が抑制されるので、ドリブンギヤの外周面における凸部の配置の自由度が高められ、例えばより多くの凸部をドリブンギヤの外周面に配置させることでドリブンギヤの自動調心性を一層高めることができる。そして、より多くの凸部をドリブンギヤの外周面に配置することでドリブンギヤを自動的に調心させるための動圧(自動調心力)の発生バランスを最適化することができる。また、前記小乱流発生部は、前記ドリブンギヤの幅方向に連なる小突起であることから、ドリブンギヤが例えば焼結(粉体冶金)による型成形などによって製作される場合に、その成形時において比較的簡単に小突起をドリブンギヤに一体的に設けることができるので、安価にドリブンギヤを製作することができる。
請求項5にかかる発明の車両用内接歯車型オイルポンプによれば、前記凸部の立上り面には、その凸部と前記ポンプボデーとの間を流れる作動油の流線の剥離位置を前記ドリブンギヤの回転方向後方へ移動させる小乱流を発生させるための小乱流発生部が設けられており、その小乱流発生部は、前記ドリブンギヤの幅方向に連なる溝であることから、上記溝が設けられない場合と比較して、立下り面と前記ポンプボデーとの間の作動油の剥離位置(剥離の起点となる境界層の位置)がドリブンギヤの回転方向後方に移動して剥離の発生が抑制され、ドリブンギヤに作用する圧力抗力が上記剥離に起因して増大することが抑制されるので、ドリブンギヤの回転抵抗を低減させることができる。また、溝が設けられない場合と比較して、凸部の立下り面の勾配が急であっても剥離の発生が抑制されるので、ドリブンギヤの外周面における凸部の配置の自由度が高められ、例えばより多くの凸部をドリブンギヤの外周面に配置させることでドリブンギヤの自動調心性を一層高めることができる。そして、より多くの凸部をドリブンギヤの外周面に配置することでドリブンギヤを自動的に調心させるための動圧(自動調心力)の発生バランスを最適化することができる。また、前記小乱流発生部は、前記ドリブンギヤの幅方向に連なる溝であることから、ドリブンギヤが例えば焼結(粉体冶金)による型成形などによって製作される場合に、その成形時において比較的簡単に溝をドリブンギヤに設けることができるので、安価にドリブンギヤを製作することができる。
請求項6にかかる発明の車両用内接歯車型オイルポンプによれば、前記凸部の立上り面には、その凸部と前記ポンプボデーとの間を流れる作動油の流線の剥離位置を前記ドリブンギヤの回転方向後方へ移動させる小乱流を発生させるための小乱流発生部が設けられており、その小乱流発生部は、所定間隔を隔てて前記ドリブンギヤの幅方向に配列された複数の小突起であることから、上記複数の小突起が設けられない場合と比較して、立下り面と前記ポンプボデーとの間の作動油の剥離位置(剥離の起点となる境界層の位置)がドリブンギヤの回転方向後方に移動して剥離の発生が抑制され、ドリブンギヤに作用する圧力抗力が上記剥離に起因して増大することが抑制されるので、ドリブンギヤの回転抵抗を低減させることができる。また、複数の小突起が設けられない場合と比較して、凸部の立下り面の勾配が急であっても剥離の発生が抑制されるので、ドリブンギヤの外周面における凸部の配置の自由度が高められ、例えばより多くの凸部をドリブンギヤの外周面に配置させることでドリブンギヤの自動調心性を一層高めることができる。そして、より多くの凸部をドリブンギヤの外周面に配置することでドリブンギヤを自動的に調心させるための動圧(自動調心力)の発生バランスを最適化することができる。また、前記小乱流発生部は、所定間隔を隔てて前記ドリブンギヤの幅方向に配列された複数の小突起であることから、ドリブンギヤが例えば焼結(粉体冶金)による型成形などによって製作される場合に、その成形時において比較的簡単に小突起をドリブンギヤに一体的に設けることができるので、安価にドリブンギヤを製作することができる。
請求項7にかかる発明の車両用内接歯車型オイルポンプによれば、前記凸部の立上り面には、その凸部と前記ポンプボデーとの間を流れる作動油の流線の剥離位置を前記ドリブンギヤの回転方向後方へ移動させる小乱流を発生させるための小乱流発生部が設けられており、その小乱流発生部は、所定間隔を隔てて前記ドリブンギヤの幅方向に配列された複数の小穴であることから、上記複数の小穴が設けられない場合と比較して、立下り面と前記ポンプボデーとの間の作動油の剥離位置(剥離の起点となる境界層の位置)がドリブンギヤの回転方向後方に移動して剥離の発生が抑制され、ドリブンギヤに作用する圧力抗力が上記剥離に起因して増大することが抑制されるので、ドリブンギヤの回転抵抗を低減させることができる。また、複数の小穴が設けられない場合と比較して、凸部の立下り面の勾配が急であっても剥離の発生が抑制されるので、ドリブンギヤの外周面における凸部の配置の自由度が高められ、例えばより多くの凸部をドリブンギヤの外周面に配置させることでドリブンギヤの自動調心性を一層高めることができる。そして、より多くの凸部をドリブンギヤの外周面に配置することでドリブンギヤを自動的に調心させるための動圧(自動調心力)の発生バランスを最適化することができる。前記小乱流発生部は、所定間隔を隔てて前記ドリブンギヤの幅方向に配列された複数の小穴であることから、ドリブンギヤが例えば焼結(粉体冶金)による型成形などによって製作される場合に、その成形時において比較的簡単に小穴をドリブンギヤに設けることができるので、安価にドリブンギヤを製作することができる。
ここで、本明細書において、流線形とは、物体の周りの流体の流れが円滑でその流れに渦が発生しないような場合、その物体の形のことをいう。言い換えれば、流線形とは、ある流体の流れの中に物体が適当な姿勢で置かれたとき、その物体の表面にできる流体の境界層が剥離せず、渦が発生しないときに、その物体の形のことをいう。また、剥離とは、ある流体の流れの中に置かれた物体の表面で、流体粒子がその物体から離れる現象のことをいう。したがって、剥離が生じないとは、ある流体の流れの中に置かれた物体の表面で、流体粒子がその物体から離れないことをいう。
以下、本発明の一実施例を図面を参照して詳細に説明する。なお、以下の実施例において図は適宜簡略化或いは変形されており、各部の寸法比および形状等は必ずしも正確に描かれていない。
図1は、本発明の一実施例の車両用内接歯車型オイルポンプ(以下、オイルポンプと記載する)10を含む車両用動力伝達装置11の一部を示す部分断面図である。上記車両用動力伝達装置11は、車両の駆動源としてのエンジンのクランク軸(出力部材)12の後段に設けられたトルクコンバータ14および自動変速機16を備えている。なお、図1では、自動変速機16の一部が示されている。
図1において、トルクコンバータ14は、前記エンジンのクランク軸12に動力伝達可能に連結されたポンプ翼車18と、そのポンプ翼車18に対して相対回転可能に設けられて自動変速機16の入力軸20に動力伝達可能に連結されたタービン翼車22と、それらポンプ翼車18とタービン翼車22との間に配置されて一方向クラッチ24を介して回転可能に支持されたステータ翼車26とを備えている。入力軸20は、トルクコンバータ14の出力部材としてのタービン軸としても機能している。このように構成されたトルクコンバータ14では、クランク軸12と一体的に回転するポンプ翼車18の回転がそのポンプ翼車18により循環させられる作動流体を介してタービン翼車22へ伝達されるようになっている。ここで、上記ポンプ翼車18は、入力軸20の外周側において自動変速機16側すなわちタービン翼車22とは反対側へ突き出す円筒状のスリーブ28を内周部に備えている。オイルポンプ10は、このスリーブ28によって回転駆動される。
上記自動変速機16は、複数の遊星歯車装置と、それら遊星歯車装置の構成要素同士あるいはそれら構成要素と非回転部材とを選択的に係合するための複数の油圧式摩擦係合装置とを備え、変速用電子制御装置からの変速指令に従って上記複数の油圧式摩擦係合装置を選択的に係合させることで複数の変速段を選択的に成立させる良く知られた有段式自動変速機である。このように構成された自動変速機16では、タービン翼車22と一体的に回転する入力軸20の回転が上記変速段に応じて変速されて出力されるようになっている。なお、自動変速機16の後段には、例えば図示しない推進軸、差動歯車装置、および車軸などが設けられており、自動変速機16から出力された回転は、それら推進軸、差動歯車装置、および車軸を介して駆動輪に伝達されるようになっている。
上記トルクコンバータ14および自動変速機16は、図1において仮想的に2点鎖線で示すエンジンブロック30に固定される筒状の変速機ケース32内に収容されている。そして、入力軸20は、変速機ケース32内のトルクコンバータ14を収容する室と自動変速機16を収容する室との間に設けられた隔壁を貫通して設けられている。オイルポンプ10は、その隔壁に設けられている。オイルポンプ10は、上記隔壁を構成する部材として、スリーブ28の外周側に円環状に形成されて、変速機ケース32の内周面に形成された段付穴36に嵌合された状態でボルト38により変速機ケース32に固定されたポンプボデー40と、入力軸20の外周側に円環状に形成されて、ポンプボデー40のトルクコンバータ14とは反対側の端面に比較的大径に且つ浅く形成された嵌合穴42に嵌合された状態でボルト44によりポンプボデー40に固定されたポンプカバー46とを備えている。ポンプボデー40の嵌合穴42の底面には、嵌合穴42よりも小径であって、入力軸20およびスリーブ28の回転中心線C1に対して偏心させられた軸心O1を有する短円筒面状の円筒状内周面50が形成されている。ポンプボデー40は、上記円筒状内周面50により形成されるポンプ室52を有している。このポンプ室52は、スリーブ28の外周側においてそのスリーブ28の回転中心線C1に対して偏心する円環状の空間により形成されるものである。
図2は、図1に示すポンプボデー40の組合せ面側から見たオイルポンプ10を示す図である。なお、図1のオイルポンプ10は、図2のI-I矢視部断面を示している。図1および図2において、オイルポンプ10は、円筒状内周面50により形成されるポンプ室52を有するポンプボデー40と、そのポンプ室52の一端側の開口を塞ぐポンプカバー46と、内周歯58を有し、円筒状内周面50に嵌め入れられることによりその円筒状内周面50により回転可能に支持された円環状のドリブンギヤ60と、そのドリブンギヤ60の内周歯58と噛み合う外周歯66を有し、ドリブンギヤ60の回転中心線C2から偏心した回転中心線C1回りに回転可能にスリーブ28の外周面に嵌め着けられて、ドリブンギヤ60を回転駆動するドライブギヤ68とを備えている。ドライブギヤ68は、スリーブ28によって回転中心線C1まわりの図2に矢印aで示す回転方向に回転駆動され、ドリブンギヤ60は、ドライブギヤ68により回転中心線C2まわりの図2に矢印bで示す回転方向に回転駆動される。本実施例のオイルポンプ10は、ドライブギヤ68の外周歯66とその外周歯66より1つ多く形成されたドリブンギヤ60の内周歯58とがポンプ室52の下方で互いに噛み合わされている内接歯車型である。ポンプ室52内においてドリブンギヤ60の内周歯58とドライブギヤ68の外周歯66とにより仕切られて形成される複数の空間の容積は、ドライブギヤ68およびドリブンギヤ60が回転することでそのドリブンギヤ60の回転中心線C2まわりの周方向へ移動して、ポンプ室52の下方から上方に移動するに従って増加し、ポンプ室52の上方から下方に移動するに従って減少するようになっている。
ポンプボデー40の外周部の変速機ケース32との組合せ面には、例えば自動変速機16のオイルパン等に還流する作動油を吸入するための図示しない吸入油路に接続される吸入側接続口72と、例えば前記油圧式摩擦係合装置等を制御する油圧制御回路へ作動油を圧送するための図示しないライン油路に接続される圧送側接続口74とが形成されている。また、ポンプボデー40には、上記吸入側接続口72とポンプ室52のポンプボデー40側に開口する第1吸入口80とを連通させる第1導入油路82と、上記圧送側接続口74とポンプ室52のポンプボデー40側に開口する第1吐出口84とを連通させる第1導出(吐出)油路86とが形成されている。そして、ポンプカバー46には、吸入側接続口72とポンプ室52のポンプカバー46側に開口する図示しない第2吸入口とを連通させる図示しない第2導入油路と、圧送側接続口74とポンプ室52のポンプカバー46側に開口する図示しない第2吐出口とを連通させる図示しない第2導出(吐出)油路とが設けられている。上記第2導入油路は、ポンプボデー40の嵌合穴42の底面に形成された第1連通口88により第1導入油路82と連通させられており、また、上記第2導出油路は、ポンプボデー40の嵌合穴42の底面に形成された第2連通口89により第1導出油路86と連通させられている。なお、第1吸入口80および前記第2吸入口は、ポンプ室52内におけるドライブギヤ68の外周側の周方向位置のうち、ドリブンギヤ60の内周歯58とドライブギヤ68の外周歯66とにより仕切られて形成される複数の空間の容積がドライブギヤ68およびドリブンギヤ60の回転により増加する周方向位置に位置するように設けられている。そして、第1吐出口84および前記第2吐出口は、ポンプ室52内におけるドライブギヤ68の外周側の周方向位置のうち、ドリブンギヤ60の内周歯58とドライブギヤ68の外周歯66とにより仕切られて形成される複数の空間の容積がドライブギヤ68およびドリブンギヤ60の回転により減少する周方向位置に位置するように設けられている。
このように構成されたオイルポンプ10では、ドライブギヤ68がスリーブ28により図2の矢印aで示す回転方向に回転されて、ドリブンギヤ60がそのドライブギヤ68により図2の矢印bで示す回転方向に回転されるに伴って、前記オイルパンの作動油が吸入側接続口72、および第1導入油路82又は前記第2導入油路を経て第1吸入口80又は前記第2吸入口からポンプ室52内へ吸入される。そして、ポンプ室52内におけるドリブンギヤ60の内周歯58とドライブギヤ68の外周歯66とにより仕切られて形成される複数の空間内に取り込まれた作動油は、その空間の容積がドライブギヤ68の回転とともに増加する周方向位置から減少する周方向位置へ運ばれて、第1吐出口84又は前記第2吐出口、および第1導出油路86又は前記第2導出口を経て圧送側接続口74から前記油圧制御回路へ圧送される。
図3は、図2に示すドライブギヤ68およびドリブンギヤ60を拡大して示す図である。また、図4は、図2のIV矢視部を拡大して示す拡大図である。図2乃至図4において、ドリブンギヤ60は、周方向に等間隔に離れた複数位置から半径方向外側に突き出す複数個(本実施例では6個)の凸部90を外周面に備えている。その凸部90は、ドリブンギヤ60の周方向においてその回転方向後方すなわち矢印bで示す回転方向とは反対の矢印c方向に向かうほど図4に示すように最小径位置p1から最大径位置p2まで立上る立上り面92と、その最大径位置p2から矢印c方向に隣接する最小径位置p1へ立下がる立下り面94とを有している。図3に示すように、立下り面94の周方向長さL2は、立上り面92の周方向長さL1よりも大きくなるように形成されている。本実施例では、周方向長さL2は周方向長さL1の約7倍程度に設定されている。
立下り面94は、ドリブンギヤ60の周方向においてそのドリブンギヤ60の回転中心線C2に直交する断面形状が流線形となるように形成されている。そして、立上り面92は、ドリブンギヤ60の回転方向前方(矢印b方向)に隣接する立下り面94の流線形の終端位置に一致する最小径位置p1から立ち上がるように形成されている。具体的には、図4に示すように、立上り面92は、その矢印b方向に隣接する立下り面94の流線形の終端位置に一致する最小径位置p1から、その立上り面92の矢印c方向に隣接する立下り面94の流線形の始端位置に一致する最大径位置p2に向けて、回転中心線C2からの半径方向距離が連続的に増加するように形成されている。そして、立下り面94は、その矢印b方向に隣接する立上り面92の終端位置の最大径位置p2から、その立下り面94の矢印c方向に隣接する立上り面92の始端位置の最小径位置p1に向けて、回転中心線C2からの半径方向距離が連続的に減少するように形成されている。立上り面92および立下り面94は、ドリブンギヤ60の外周面において周方向に交互に連続して形成されている。したがって、ドリブンギヤ60の外周面には、回転中心線C2を曲率中心としてその回転中心線C2からの半径方向距離が周方向で一定となる部分円筒面が形成されていない。本実施例では、ドリブンギヤ60の外周面に立上り面92が形成されることによって、その立上り面92とポンプボデー40の円筒状内周面50との間に形成される隙間の間隔がドリブンギヤ60の回転方向後方へ向かうにつれて連続的に急に狭められており、また、ドリブンギヤ60の外周面に立下り面94が形成されることによって、その立下り面94とポンプボデー40の円筒状内周面50との間に形成される隙間の間隔がドリブンギヤ60の回転方向後方へ向かうにつれて連続的に緩やかに拡大させられている。凸部90は、ドリブンギヤ60の回転方向後方へ向かうにつれて半径方向距離が緩やかに小さくなるくさび形に形成されている。
上記のようなドリブンギヤ60を備えるオイルポンプ10では、ドリブンギヤ60が回転させられると、そのドリブンギヤ60とポンプボデー40との間に形成される環状の隙間に介在された作動油がそのドリブンギヤ60の回転に引きずられてその隙間内を周方向に移動する。そして、上記環状の隙間のうちドリブンギヤ60とポンプボデー40との間隔が接近するドリブンギヤ60の立下り面94の外周側に作動油が流れ込むことにより、その接近部位の直前付近にて最大となる動圧Pが発生する。この動圧Pは、ドリブンギヤ60にその外周面を内周側に向けて押圧するように作用する。そのため、ドリブンギヤ60は、その回転時にはポンプボデー40に非接触状態で支持される。そして、上記環状の隙間のうちドリブンギヤ60とポンプボデー40との隙間の間隔がドリブンギヤ60の回転方向後方に向けて拡大する立下り面94の外周側を作動油が流れる際には、その立下り面94の周方向長さL2が立上り面92の周方向長さL1よりも大きく形成されることで上記隙間の間隔がドリブンギヤ60の回転方向後方に向けて緩やかに拡大しているために、その作動油の流れに剥離が生じることが抑制される。そのため、その剥離に起因して、上記隙間の周方向の圧力差が増大してドリブンギヤにその回転を妨げるように作用する圧力抗力(圧力抵抗)が増大することが抑制される。本実施例のオイルポンプ10では、前述のような立上り面92および立下り面94を備える凸部90がドリブンギヤ60の外周面に周方向に複数設けられているため、その凸部90が設けられない形式のものに比較して、上記動圧Pが格段に大きくなるとともに、ドリブンギヤ60とポンプボデー40との間の隙間の作動油の流れが円滑となってその流れに剥離が生じることが抑制される。これらに関して詳しく以下で説明する。
図5は、図6に模式的に示すように流路間隔が間隔h1から間隔h2へ連続的に小さくなるように形成された縮小流路に作動油が流れる場合に、その作動油に生じる動圧P[Pa]と、図7に模式的に示すように流路間隔が一定の間隔h2となるように形成された平行流路に作動油が流れる場合に、その作動油に生じる動圧P[Pa]とを、比較して示す図である。図5において、実線は、上記縮小流路に作動油が流れる場合にその作動油に生じる動圧Pとその縮小流路の流れ方向位置Xとの関係を示している。そして、1点鎖線は、上記平行流路に作動油が流れる場合にその作動油に生じる動圧Pとその平行流路の流れ方向位置Xとの関係を示している。上記各流路の作動油に生じる動圧Pは、流れ方向位置X1から流れ方向位置X2側に向かうにつれて徐々に増加して、流れ方向位置X2の直前付近で最大値P1およびP2となり、その最大値P1およびP2から流れ方向位置X2側に向かうにつれて減少するような分布となる。このように、流れ方向における動圧Pの分布形状は、前記縮小流路と前記平行流路とで顕著な違いは見られない。しかしながら、発生する動圧Pの大きさに顕著な違いが見られる。すなわち、前記縮小流路において発生する動圧Pは、前記平行流路において発生する動圧Pに比較して格段に大きくなる。これは、所謂くさび効果によるものである。
上記発生動圧の違いは、本実施例のようにドリブンギヤ60に複数の凸部90が設けられることでその凸部90の立上り面92によってドリブンギヤ60とポンプボデー40との隙間に縮小流路が形成される場合と、凸部90が設けられず上記隙間に縮小流路が形成されない場合とで比較しても、同様のことがいえる。すなわち、本実施例のようにドリブンギヤ60とポンプボデー40との隙間に縮小流路が形成される場合にその縮小流路を流れる作動油に生じる動圧Pは、上記隙間に縮小流路が形成されない場合にその隙間を流れる作動油に生じる動圧Pに比較して、格段に大きくなる。これにより、本実施例のオイルポンプ10では、ドリブンギヤ60とポンプボデー40との隙間のうち立上り面92が位置する6箇所において比較的大きな動圧Pが発生し、その動圧Pは、ドリブンギヤ60を自動的にポンプ室52の軸心O1に調心させるための自動調心力として作用する。なお、上記縮小形状の流路が設けられない場合とは、例えば、ドリブンギヤ60の外周面が凹凸のない円筒面状に形成される場合である。
図8は、ドリブンギヤ60とポンプボデー40との隙間を流れる作動油に生じる最大の動圧P、およびドリブンギヤ60の周方向における上記隙間の大小間隔比率m(=h1/h2)を、本実施例のように立上り面92によって上記隙間に前記縮小流路が設けられる場合と、上記隙間に前記縮小流路が設けられない場合とで比較して示す図である。間隔h1は、上記隙間の最大間隔を示し、間隔h2は、上記隙間の最小間隔を示している。図8において、黒丸印を結ぶ実線は、立上り面92によって上記隙間に前記縮小流路が設けられる場合において、その縮小流路を流れる作動油に発生する最大の動圧Pと、その縮小流路の最小の間隔h2(凸部90の最大径位置p2とポンプボデー40の円筒状内周面50との隙間の間隔)との関係を示すものである。黒角印を結ぶ実線は、立上り面92によって上記隙間に縮小流路が設けられる場合において、その縮小流路の大小間隔比率m(=h1/h2)と、その縮小流路の最小の間隔h2との関係を示すものである。また、白丸印を結ぶ1点鎖線は、凸部90が設けられず上記隙間に縮小流路が設けられない場合において、その隙間を流れる作動油に発生する最大の動圧Pと、その隙間の最小の間隔h2との関係を示すものである。また、白角印を結ぶ1点鎖線は、上記隙間に縮小流路が設けられない場合において、その隙間の大小間隔比率m(=h1/h2)と、その隙間の最小の間隔h2との関係を示すものである。
ここで、図8において、間隔h2が例えば0.0002mm(0.2μm)となるとき、すなわち図9に模式的に示すようにドリブンギヤ60の回転中心線C2とポンプボデー40の円筒状内周面50の軸心O1とが一致するときには、いずれの凸部90の最大径位置付近にて発生する最大動圧Pも略同じとなる。そして、図9中に矢印Paで示すように、上記動圧Pによりドリブンギヤ60が作動油から受ける力すなわちドリブンギヤ60がその外周面から回転中心線C2に向けて押圧される押圧力は、ドリブンギヤ60の周方向におけるいずれの凸部90においても変わらない。
また、図8において、間隔h2が例えば0.00005mm(0.05μm)となるとき、すなわち図10に模式的に示すようにドリブンギヤ60の回転中心線C2とポンプボデー40の円筒状内周面50の軸心O1とが一致せず、回転中心線C2が軸心O1から0.00015mm(0.15μm)偏心するときには、間隔h2が狭い(小さい)隙間ほどその隙間を流れる作動油に生じる動圧Pが大きくなる。そして、図10中に矢印Pbおよび矢印Pcで示すように、上記動圧Pによりドリブンギヤ60が作動油から受ける力すなわちドリブンギヤ60がその外周面から回転中心線C2に向けて押圧される押圧力は、間隔h2が狭い(小さい)隙間ほど大きくなる。
図8に示すように、ドリブンギヤ60とポンプボデー40との隙間に前記縮小流路が設けられる場合には、上記隙間に前記縮小流路が設けられない場合に比較して、上記隙間を流れる作動油に生じる最大の動圧Pが格段に大きくなる。そして、動圧Pは、ポンプボデー40に対するドリブンギヤ60の偏心度合いが大きくなるほど2次曲線的に大きくなる。
図11は、図2に示す本実施例のドリブンギヤ60およびポンプボデー40の周方向の一部を模式的に示す図である。図11に示すように、本実施例のオイルポンプ10では、ドリブンギヤ60が図11中に矢印bで示す方向に回転駆動される場合において、ドリブンギヤ60およびポンプボデー40の間に形成される隙間を流れる作動油の流線は、矢印dで示すように剥離が生じず、渦が発生しないようなものとなる。よって、立下り面94とポンプボデー40との隙間の作動油の流れに剥離が生じず、その隙間において作動油の圧力が急低下することが抑制されるために、周方向における作動油の圧力差が増大することが抑制される。凸部90の立上り面92では、ポンプボデー40の円筒状内周面50に近づく形状であるために本来的に作動油の流れに剥離が生じないことから、結局、凸部90の表面は、その表面とポンプボデー40の円筒状内周面50との間に流れる作動油の流れに剥離が生じないように形成されている。
因みに、図12は、従来のオイルポンプにおけるドリブンギヤ60およびポンプボデー40の周方向の一部を模式的に示す図である。図12において、従来のオイルポンプのドリブンギヤ60の外周面には、本実施例の凸部90に代えて、周方向の所定の間隔で回転中心線C2に直交する断面がステップ状となる凹部100が複数設けられている。図12に示すように、従来のオイルポンプでは、ドリブンギヤ60が図12中に矢印bで示す方向に回転駆動される場合において、ドリブンギヤ60およびポンプボデー40の間に形成される隙間を流れる作動油の流線は、矢印eで示すように剥離が生じて渦が発生するものとなる。すなわち、ドリブンギヤ60およびポンプボデー40の間に形成される隙間がドリブンギヤ60の回転方向後方に向かうほど拡大する箇所において、作動油の流れに剥離が生じて渦が発生するために、その作動油の圧力が急低下して周方向の作動油の圧力差が増大する。
上述のように、本実施例の車両用内接歯車型オイルポンプ10によれば、ドリブンギヤ60は、周方向に離れた複数位置から半径方向外側に突き出す複数個の凸部90を外周面に備え、凸部90は、ドリブンギヤ60の周方向においてその回転方向後方に向かうほど最小径位置p1から最大径位置p2まで立上る立上り面92と、その最大径位置p2から回転方向後方に隣接する最小径位置p1へ立下がる立下り面94とを有し、立下り面94の周方向長さL2は立上り面92の周方向長さL1よりも大きいことから、凸部90の立上り面92とポンプボデー40との間を流れる作動油に比較的大きな動圧Pが発生するのでドリブンギヤ60の自動調心性が高められるという効果を享受しつつ、凸部90の立下り面94とポンプボデー40との間に形成される隙間がドリブンギヤ60の回転方向後方に向かって緩やかに拡大するように形成されることでその隙間を流れる作動油に剥離が生じることが抑制されるため、その剥離に起因してドリブンギヤ60とポンプボデー40との間を流れる作動油の周方向の圧力差が増大し、ドリブンギヤ60にその回転を妨げるように作用する圧力抗力(圧力抵抗)が増大することが抑制されるので、ドリブンギヤ60の回転抵抗を低減させることができる。また、ドリブンギヤ60の回転抵抗が低減することによってドライブギヤ68の回転抵抗(軸トルク抵抗)も低減させることができる。
因みに、本実施例では、前述のようにドリブンギヤ60の自動調心性が高められるため、例えば低回転時や高油圧発生時であっても、図13において1点鎖線で示す領域でオイルポンプ10が作動するようになっている。すなわち、本実施例のオイルポンプ10では、ドリブンギヤ60とポンプボデー40との間の潤滑状態が混合潤滑状態または流体潤滑状態に維持されることによって、境界潤滑状態とされることが抑制され、摩擦損失の増大が抑制される。これにより、ドリブンギヤ60の回転抵抗が低減される。上記流体潤滑状態とは、ドリブンギヤ60がポンプボデー40に非接触状態で回転駆動される状態であって、ドリブンギヤ60とポンプボデー40との間に形成される隙間の間隔h2すなわち油膜厚さが、ドリブンギヤ60の外周面およびポンプボデー40の円筒状内周面50の表面粗さR[μm]に比較して充分に大きくなる状態(h2>R)のことである。また、上記境界潤滑状態とは、ドリブンギヤ60がポンプボデー40に接触状態で回転駆動される状態であって、ドリブンギヤ60とポンプボデー40との間に形成される隙間の間隔h2すなわち油膜厚さが零またはその付近となる状態(h2<R)のことである。また、上記混合潤滑状態とは、上記流体潤滑状態および境界潤滑状態の中間の状態のことであって、上記間隔h2すなわち油膜厚さがドリブンギヤ60の外周面およびポンプボデー40の円筒状内周面50の表面粗さR[μm]に略等しくなる状態(h2≒R)のことである。なお、図13は、ドリブンギヤ60およびポンプボデー40の隙間を流れる作動油の粘度Zとドリブンギヤ60およびポンプボデー40の摺動速度Nとの積算値を、ドリブンギヤ60に作用する外力すなわち荷重Fで除した値を示す横軸と、ドリブンギヤ60とポンプボデー40との間の摩擦係数μを示す縦軸との直交座標上において、実線で所謂ストライベック曲線を示すものである。このストライベック曲線は、上記荷重Fや摺動速度Nに対する摩擦抵抗μの変化を示すものである。図13では、横軸の値(Z*N/F)が増す方向に前記境界潤滑領域、混合潤滑領域、および流体潤滑領域が順に区分されており、上記ストライベック曲線は、混合潤滑領域の流体潤滑領域側において前記摩擦係数μが最も小さくなるようになっている。前記1点鎖線で示す領域は、混合潤滑領域および流体潤滑領域に跨って設定されているので、その1点鎖線で示す領域内で作動する本実施例のオイルポンプ10では、前記摩擦係数μが小さくなるように作動する。
また、本実施例の車両用内接歯車型オイルポンプ10によれば、凸部90の表面は、その表面とポンプボデー40との間を流れる作動油の流線に剥離が生じないように形成されていることから、ドリブンギヤ60とポンプボデー40との隙間の作動油の流れが円滑となり、ドリブンギヤ60の圧力抗力が上記剥離に起因して増大することが抑制されるので、ドリブンギヤ60の回転抵抗を低減させることができる。
また、本実施例の車両用内接歯車型オイルポンプ10によれば、凸部90の立下り面94は、ドリブンギヤ60の周方向において流線形となるように形成されていることから、凸部90の立下り面94とポンプボデー40との隙間を流れる作動油に剥離が生じることが抑制されて、その隙間の作動油の流れに渦の発生することが抑制されるため、ドリブンギヤ60の圧力抗力がその渦(剥離)に起因して増大することが抑制されるので、ドリブンギヤ60の回転抵抗を低減させることができる。
また、本実施例の車両用内接歯車型オイルポンプ10によれば、凸部90の立上り面92は、その凸部90のドリブンギヤ60の回転方向前方に隣接する凸部90の立下り面94の流線形の終端位置に一致する最小径位置p1から立上ることから、例えば、凸部90の立上り面92がその凸部90のドリブンギヤ60の回転方向前方に隣接する凸部90の流線形の終端位置よりもドリブンギヤ60の回転方向後方の位置から立ち上がるように形成された場合に比較して、ドリブンギヤ60とポンプボデー40との隙間を流れる作動油の圧力差が小さくなってドリブンギヤ60に作用する圧力抗力が小さくなるので、ドリブンギヤ60の回転抵抗を一層低減させることができる。
次に、本発明の他の実施例について説明する。なお、以下の実施例の説明において、前述の実施例と重複する部分については、同一の符号を付してその説明を省略する。
図14は、本発明の他の実施例の車両用内接歯車型オイルポンプ10のうちドライブギヤ68およびドリブンギヤ60を拡大して示す図であって、前述の実施例1の図3に対応する図である。図15は、図14に示すドリブンギヤ60の立上り面92およびその周辺を示す部分的な斜視図である。図14および図15において、本実施例のドリブンギヤ60は、周方向に等間隔に離れた複数位置から半径方向外側に突き出す複数個たとえば本実施例では11個の凸部90を外周面に備えている。その凸部90の立上り面92には、凸部90とポンプボデー40(図2参照)との間における上記凸部90の表面近くの作動油の流れを層流から乱流に遷移させる乱流遷移を起こして、その作動油の流線の剥離位置をドリブンギヤ60の回転方向後方へ移動させる小乱流を発生させるための小乱流発生部として、立上り面92の周方向の中間位置に、ドリブンギヤ60の幅方向すなわちドリブンギヤ60の回転中心線C2に平行な方向に連なる小突起102が設けられている。この小突起102は、図15に示すように、ドリブンギヤ60の幅方向に直交する断面が半円状となるように形成されている。
上記のような小突起102が設けられたドリブンギヤ60を備えるオイルポンプ10では、ドリブンギヤ60が回転させられると、そのドリブンギヤ60とポンプボデー40との間に形成される環状の隙間に介在された作動油が、そのドリブンギヤ60の回転に引きずられてその隙間内を周方向に移動する。そして、上記環状の隙間のうちその間隔がドリブンギヤ60の回転方向後方に向かって緩やかに拡大する立下り面94の外周側の隙間を作動油が流れる際には、上述のように上記隙間の間隔が緩やかに拡大するようになっているため、作動油の流れに剥離が生じることが抑制される。さらに、本実施例では、立上り面92に形成された小突起102の下流側に小乱流が生じることによって、立下り面94とポンプボデー40との間の作動油の剥離位置(剥離の起点となる境界層の位置)がドリブンギヤ60の回転方向後方に移動するため、剥離の発生が抑制される。言い換えれば、小突起102の下流側に生じる小乱流が、その小突起102の下流側に位置する立下り面94の外周側を流れる作動油の剥離位置をドリブンギヤ60の回転方向後方側(下流側)へ移動させるように作用するため、例えば前述の実施例1のように立上り面92に小突起102が形成されないものと比較して、剥離の発生が一層抑制される。
上記小乱流発生部としての小突起102による乱流遷移の剥離抑制に関して以下に説明する。図16は、例えば流れに直交する方向に突き出して設けられた凸部103を備える流路において、その流路を流れる流体の流線を矢印A1乃至A4で示す模式的な図である。図16に示すような流路を流体が流れる場合には、凸部103の下流側の流路間隔が急に拡大する箇所において、矢印A4で示すように流体の剥離が発生する場合がある。これに対して、図17は、図16に示す凸部103と、その凸部103の外周面の上流側に小乱流発生部としての小突起102とを備える流路において、その流路を流れる流線を矢印B1乃至B4で示す模式的な図である。図17に示すような流路を流体が流れる場合には、小突起102によりその下流側の流れが層流から乱流に遷移して凸部103の表面に沿って小乱流が生じることで、凸部103の下流側の流路間隔が急に拡大する箇所において、矢印B3で示すように凸部103の先端部から基端部に向かって巻き込むような流れが生じる。それ故に、矢印B4で示すように剥離が発生する場合があるとしても、その剥離が小さくなる。このため、小突起102によりその下流側の剥離の発生が抑制されるようになっている。この剥離抑制に関しては、本実施例のドリブンギヤ60の凸部90の立上り面92に設けられた小突起102であっても、同様のことがいえる。
本実施例の車両用内接歯車型オイルポンプ10によれば、立上り面92に小突起102が形成されていること以外の構成は前述の実施例1と同じであり、ドリブンギヤ60は、周方向に離れた複数位置から半径方向外側に突き出す複数個の凸部90を外周面に備え、その凸部90は、ドリブンギヤ60の周方向においてその回転方向後方に向かうほど最小径位置p1から最大径位置p2まで立上る立上り面92と、その最大径位置p2から回転方向後方に隣接する最小径位置p1へ立下がる立下り面94とを有し、立下り面94の周方向長さL2は立上り面92の周方向長さL1よりも大きいことから、実施例1と同様にドリブンギヤ60およびドライブギヤ68の回転抵抗を低減させることができるという効果が得られる。
また、本実施例の車両用内接歯車型オイルポンプ10によれば、凸部90の立上り面92には、その凸部90とポンプボデー40との間を流れる作動油の流れに乱流遷移を起こしてその作動油の流線の剥離位置をドリブンギヤ60の回転方向後方へ移動させる小乱流を発生させるための小乱流発生部として、小突起102が設けられていることから、上記小突起102が設けられない場合と比較して、立下り面94とポンプボデー40との間の作動油の剥離位置(剥離の起点となる境界層の位置)がドリブンギヤ60の回転方向後方に移動して剥離の発生が抑制され、ドリブンギヤ60に作用する圧力抗力が上記剥離に起因して増大することが抑制されるので、ドリブンギヤ60の回転抵抗を低減させることができる。また、小突起102が設けられない場合と比較して、凸部90の立下り面94の勾配が急であっても剥離の発生が抑制されるので、ドリブンギヤ60の外周面における凸部90の配置の自由度が高められ、例えばより多くの凸部90をドリブンギヤ60の外周面に配置させることでドリブンギヤ60の自動調心性を一層高めることができる。そして、より多くの凸部90をドリブンギヤ60の外周面に配置することでドリブンギヤ60を自動的に調心させるための動圧Pの発生バランスを最適化することができる。
また、本実施例の車両用内接歯車型オイルポンプ10によれば、小突起102は、ドリブンギヤ60の幅方向に連なる小さな突起であることから、ドリブンギヤ60が例えば焼結(粉体冶金)による型成形などによって製作される場合に、その成形時において比較的簡単に小突起102をドリブンギヤ60に一体的に設けることができるので、安価にドリブンギヤ60を製作することができる。
図18は、本発明の他の実施例の車両用内接歯車型オイルポンプ10のうち図14に示すドリブンギヤ60の立上り面92およびその周辺を示す部分的な斜視図であって、前述の実施例2の図15に対応する図である。図18において、本実施例のドリブンギヤ60は、周方向に等間隔に離れた複数位置から半径方向外側に突き出す複数個たとえば本実施例では11個の凸部90を外周面に備えている。その凸部90の立上り面92には、凸部90とポンプボデー40(図2参照)との間を流れる作動油の流れに乱流遷移を起こして、その作動油の流線の剥離位置をドリブンギヤ60の回転方向後方へ移動させる小乱流を発生させるための小乱流発生部として、その立上り面92の周方向の中間位置に、ドリブンギヤ60の幅方向に連なる小さい溝104が設けられている。この溝104は、図18に示すように、ドリブンギヤ60の幅方向に直交する断面が半円状となるように形成されている。
上記のような溝104が設けられたドリブンギヤ60を備えるオイルポンプ10では、ドリブンギヤ60が回転させられると、そのドリブンギヤ60とポンプボデー40との間に形成される環状の隙間に介在された作動油が、そのドリブンギヤ60の回転に引きずられてその隙間内を周方向に移動する。そして、上記環状の隙間のうちその間隔がドリブンギヤ60の回転方向後方に向かって緩やかに拡大する立下り面94の外周側の隙間を作動油が流れる際には、上述のように上記隙間の間隔が緩やかに拡大するようになっているため、作動油の流れに剥離が生じることが抑制される。さらに、本実施例では、立上り面92に形成された溝104の下流側に小乱流が生じることによって、立下り面94とポンプボデー40との間の作動油の剥離位置(剥離の起点となる境界層の位置)がドリブンギヤ60の回転方向後方に移動するため、剥離の発生が抑制される。言い換えれば、溝104の下流側に生じる小乱流が、その溝104の下流側に位置する立下り面94の外周側を流れる作動油の剥離位置をドリブンギヤ60の回転方向後方側(下流側)へ移動させるように作用するため、例えば前述の実施例1のように立上り面92に溝104が形成されないものと比較して、剥離の発生が一層抑制される。
本実施例の車両用内接歯車型オイルポンプ10によれば、立上り面92に溝104が形成されていること以外の構成は前述の実施例1と同じであるので、実施例1と同様にドリブンギヤ60およびドライブギヤ68の回転抵抗を低減させることができるという効果が得られる。
また、本実施例の車両用内接歯車型オイルポンプ10によれば、凸部90の立上り面92には、その凸部90とポンプボデー40との間を流れる作動油の流れに乱流遷移を起こしてその作動油の流線の剥離位置をドリブンギヤ60の回転方向後方へ移動させる小乱流を発生させるための小乱流発生部として、溝104が設けられていることから、実施例2と同様に、上記溝104が設けられない場合と比較して、ドリブンギヤ60の回転抵抗を低減させることができるとともに、例えばより多くの凸部90をドリブンギヤ60の外周面に配置させることでドリブンギヤ60の自動調心性を一層高めることができ、ドリブンギヤ60を自動的に調心させるための動圧Pの発生バランスを最適化することができる。
また、本実施例の車両用内接歯車型オイルポンプ10によれば、溝104は、ドリブンギヤ60の幅方向に連なる小さな溝であることから、ドリブンギヤ60が例えば焼結(粉体冶金)による型成形などによって製作される場合に、その成形時において比較的簡単に溝104をドリブンギヤ60に設けることができるので、安価にドリブンギヤ60を製作することができる。
図19は、本発明の他の実施例の車両用内接歯車型オイルポンプ10のうち図14に示すドリブンギヤ60の立上り面92およびその周辺を示す部分的な斜視図であって、前述の実施例2の図15に対応する図である。図19において、本実施例のドリブンギヤ60は、周方向に等間隔に離れた複数位置から半径方向外側に突き出す複数個たとえば本実施例では11個の凸部90を外周面に備えている。その凸部90の立上り面92には、凸部90とポンプボデー40(図2参照)との間を流れる作動油の流れに乱流遷移を起こして、その作動油の流線の剥離位置をドリブンギヤ60の回転方向後方へ移動させる小乱流を発生させるための小乱流発生部として、その立上り面92の周方向の中間位置に、ドリブンギヤ60の幅方向に所定間隔を隔てて配列された複数個(本実施例では4個)の小突起106が設けられている。上記複数の小突起106は、図17に示すように、ドリブンギヤ60の幅方向に直交する断面が半円状となる半円筒状にそれぞれ形成されている。
上記のような複数の小突起106が設けられたドリブンギヤ60を備えるオイルポンプ10では、ドリブンギヤ60が回転させられると、そのドリブンギヤ60とポンプボデー40との間に形成される環状の隙間に介在された作動油が、そのドリブンギヤ60の回転に引きずられてその隙間内を周方向に移動する。そして、上記環状の隙間のうちその間隔がドリブンギヤ60の回転方向後方に向かって緩やかに拡大する立下り面94の外周側の隙間を作動油が流れる際には、上述のように上記隙間の間隔が緩やかに拡大するようになっているため、作動油の流れに剥離が生じることが抑制される。さらに、本実施例では、立上り面92に形成された複数の小突起106の下流側に小乱流が生じることによって、立下り面94とポンプボデー40との間の作動油の剥離位置(剥離の起点となる境界層の位置)がドリブンギヤ60の回転方向後方に移動するため、剥離の発生が抑制される。言い換えれば、複数の小突起106の下流側に生じる小乱流が、それら複数の小突起106の下流側に位置する立下り面94の外周側を流れる作動油の剥離位置をドリブンギヤ60の回転方向後方側(下流側)へ移動させるように作用するため、例えば前述の実施例1のように立上り面92に複数の小突起106が形成されないものと比較して、剥離の発生が一層抑制される。
本実施例の車両用内接歯車型オイルポンプ10によれば、立上り面92に複数の小突起106が形成されていること以外の構成は前述の実施例1と同じであるので、実施例1と同様にドリブンギヤ60およびドライブギヤ68の回転抵抗を低減させることができるという効果が得られる。
また、本実施例の車両用内接歯車型オイルポンプ10によれば、凸部90の立上り面92には、その凸部90とポンプボデー40との間を流れる作動油の流れに乱流遷移を起こしてその作動油の流線の剥離位置をドリブンギヤ60の回転方向後方へ移動させる小乱流を発生させるための小乱流発生部として、複数の小突起106が設けられていることから、上記複数の小突起106が設けられない場合と比較して、実施例2と同様に、ドリブンギヤ60の回転抵抗を低減させることができるとともに、例えばより多くの凸部90をドリブンギヤ60の外周面に配置させることでドリブンギヤ60の自動調心性を一層高めることができ、ドリブンギヤ60を自動的に調心させるための動圧Pの発生バランスを最適化することができる。
また、本実施例の車両用内接歯車型オイルポンプ10によれば、複数の小突起106は、所定間隔を隔ててドリブンギヤ60の幅方向に配列された複数の小さな突起であることから、ドリブンギヤ60が例えば焼結(粉体冶金)による型成形などによって製作される場合に、その成形時において比較的簡単に小突起106をドリブンギヤ60に一体的に設けることができるので、安価にドリブンギヤ60を製作することができる。
図18は、本発明の他の実施例の車両用内接歯車型オイルポンプ10のうち図14に示すドリブンギヤ60の立上り面92およびその周辺を示す部分的な斜視図であって、前述の実施例2の図15に対応する図である。図19は、図18に示すドリブンギヤ60の凸部90とポンプボデー40とを示すドリブンギヤ60の幅方向に直交する方向の断面図である。図18乃至図19において、本実施例のドリブンギヤ60は、周方向に等間隔に離れた複数位置から半径方向外側に突き出す複数個たとえば本実施例では11個の凸部90を外周面に備えている。その凸部90の立上り面92には、凸部90とポンプボデー40(図2参照)との間を流れる作動油の流れに乱流遷移を起こして、その作動油の流線の剥離位置をドリブンギヤ60の回転方向後方へ移動させる小乱流を発生させるための小乱流発生部として、その立上り面92の周方向の中間位置に、ドリブンギヤ60の幅方向において所定間隔を隔てて配列された複数個(本実施例では5個)の小穴108が設けられている。上記複数の小穴108は、図19に示すように、半球面状となるようにそれぞれ形成されている。
上記のような複数の小穴108が設けられたドリブンギヤ60を備えるオイルポンプ10では、ドリブンギヤ60が回転させられると、そのドリブンギヤ60とポンプボデー40との間に形成される環状の隙間に介在された作動油が、そのドリブンギヤ60の回転に引きずられてその隙間内を周方向に移動する。そして、上記環状の隙間のうちその間隔がドリブンギヤ60の回転方向後方に向かって緩やかに拡大する立下り面94の外周側の隙間を作動油が流れる際には、上述のように上記隙間の間隔が緩やかに拡大するようになっているため、作動油の流れに剥離が生じることが抑制される。さらに、本実施例では、立上り面92に形成された複数の小穴108の下流側に小乱流が生じることによって、立下り面94とポンプボデー40との間の作動油の剥離位置(剥離の起点となる境界層の位置)がドリブンギヤ60の回転方向後方に移動するため、剥離の発生が抑制される。言い換えれば、複数の小穴108の下流側に生じる小乱流が、それら複数の小穴108の下流側に位置する立下り面94の外周側を流れる作動油の剥離位置をドリブンギヤ60の回転方向後方側(下流側)へ移動させるように作用するため、例えば前述の実施例1のように立上り面92に複数の小穴108が形成されないものと比較して、剥離の発生が一層抑制される。
本実施例の車両用内接歯車型オイルポンプ10によれば、立上り面92に複数の小穴108が形成されていること以外の構成は前述の実施例1と同じであるので、実施例1と同様にドリブンギヤ60およびドライブギヤ68の回転抵抗を低減させることができるという効果が得られる。
また、本実施例の車両用内接歯車型オイルポンプ10によれば、凸部90の立上り面92には、その凸部90とポンプボデー40との間を流れる作動油の流れに乱流遷移を起こしてその作動油の流線の剥離位置をドリブンギヤ60の回転方向後方へ移動させる小乱流を発生させるための小乱流発生部として、複数の小穴108が設けられていることから、上記複数の小穴108が設けられない場合と比較して、実施例2と同様に、ドリブンギヤ60の回転抵抗を低減させることができるとともに、例えばより多くの凸部90をドリブンギヤ60の外周面に配置させることでドリブンギヤ60の自動調心性を一層高めることができ、ドリブンギヤ60を自動的に調心させるための動圧Pの発生バランスを最適化することができる。
また、本実施例の車両用内接歯車型オイルポンプ10によれば、複数の小穴108は、ドリブンギヤ60の幅方向に連なる小さな穴であることから、ドリブンギヤ60が例えば焼結(粉体冶金)による型成形などによって製作される場合に、その成形時において比較的簡単に複数の小穴108をドリブンギヤ60に設けることができるので、安価にドリブンギヤ60を製作することができる。
以上、本発明の一実施例を図面を参照して詳細に説明したが、本発明はこの実施例に限定されるものではなく、別の態様でも実施され得る。
たとえば、前述の実施例において、凸部90の立下り面94は、回転軸心C2に直交する断面において流線形となるように形成されていたが、これに限らず、例えば、回転軸心C2に直交する断面において曲線状或いは略直線状となるように形成されてもよい。要するに、ドリブンギヤ60の外周面において周方向の最大径位置p2から最小径位置p1まで連続的に立ち下がる立下り面94の周方向長さL2が、その立下り面94の上流側に位置する最小径位置p1から上記最大径位置p2まで連続的に立ち上がる立上り面92の周方向長さL1に比べて長くなるように形成されて、立下り面94とポンプボデー40の円筒状内周面50との隙間の間隔がその隙間の作動油の流れの下流側に向けて緩やかに拡大するように形成されていれば、剥離の発生が抑制され、その剥離に起因するドリブンギヤ60に作用する圧力抗力の増大が抑制されるので、一応の効果は得られる。
また、前述の実施例において、立上り面92は、その立上り面92に対してドリブンギヤ60の回転方向前方に隣接する立下り面94の流線形の終端に一致する最小径位置p1から立ち上がるように形成されていたが、ドリブンギヤ60の回転方向前方に隣接する立下り面94の流線形の終端以前の位置から立ち上がるように形成されてもよい。また、上記に限らず、立上り面92に対してドリブンギヤ60の回転方向前方に隣接する立下り面94の流線形の終端よりもドリブンギヤ60の回転方向後方の位置から立ち上がるように形成されても、一応の効果はある。
また、前述の実施例において、立上り面92に設けられた小乱流発生部は、小突起102、溝104、複数の小突起106、または複数の小穴108であったが、これらのものに限らない。例えば、小乱流発生部は、立上り面92の一部の面粗さが粗くされることにより形成されてもよいし、突起と溝(穴)とを両方とも備えて構成されてもよいし、或いはドリブンギヤ60とは別の部材がそのドリブンギヤ60に接着されることで形成されてもよい等、種々の態様が可能である。要するに、凸部90の立下り面94とポンプボデー40との間を流れる作動油の流線の剥離位置をドリブンギヤ60の回転方向後方側へ移動させる小乱流を発生させるものであればよい。
また、前述の実施例において、小突起102、溝104、複数の小突起106、および複数の小穴108は、立上り面92の周方向の中間位置に設けられていたが、これに限らず、例えば立上り面92の上流側や下流側に設けられてもよいし、例えば立下り面94の上流側に設けられても良い。
また、前述の実施例において、小突起102および溝104は、ドリブンギヤ60の幅方向に連なり且つ幅方向に直交する断面形状が半円状となる1本の突起または溝であったが、これに限らない。例えば、周方向に連なるものであってもよいし、立上り面92に複数本設けられてもよい。また、例えば、上記断面形状が矩形断面や三角形状断面、或いはその他の多角形状断面となるものであってもよいし、幅方向においてその断面形状が変化するように形成されてもよい。
また、前述の実施例において、複数の小突起106および小穴108は、所定間隔を隔ててドリブンギヤ60の幅方向に1列に配列され且つ幅方向に直交する断面形状が半円状となる複数の突起または穴であったが、これに限らない。例えば、周方向に配列されるものであってもよいし、立上り面92に複数列設けられてもよい。また、例えば、上記断面形状が矩形断面や三角形状断面、或いはその他の多角形状断面となるものであってもよいし、幅方向においてその断面形状が変化するように形成されてもよい。
また、前述の実施例において、オイルポンプ10は、トルクコンバータ14を収容する室と自動変速機16を収容する室との間の隔壁に設けられていたが、これに限らず、例えば自動変速機16内などに設けられてもよい。要するに、ポンプ室52内にドリブンギヤ60およびドライブギヤ68が収容される形式の車両用内接歯車型オイルポンプ10であれば、本発明が適用され得る。
また、本発明は、前述の形式のオイルポンプ10に限らず、例えば、ドライブギヤ68の外周歯66とドリブンギヤ60の内周歯58との間に形成される円弧状の間隙において、その内周歯58に略摺接する部分円筒面と外周歯66に略摺接する部分円筒面とに挟まれることによって三日月状を成すクレセントが例えばポンプボデー40から突設されている形式のものであっても適用され得る。
なお、上述したのはあくまでも一実施形態であり、その他一々例示はしないが、本発明は、その主旨を逸脱しない範囲で当業者の知識に基づいて種々変更、改良を加えた態様で実施することができる。