本発明は、水中の微生物を除菌できる簡易な構造の除菌装置に関する。また、前記除菌装置を利用した加湿装置、除湿装置、循環式浴槽装置、サウナ装置、空調装置、水処理装置、除菌装置などの水処理方法に関する。
加湿装置や循環式浴槽あるいは排水溝の部材などの貯水部においては、大腸菌および黄色ブドウ球菌などの微生物の増殖が認められることがあった。極端に長時間放置し続ければ、微生物の増殖に伴ってぬめりや腐敗臭が発生する可能性が考えられた。そのため、貯水部での微生物の増殖抑制、および除菌に関する技術が強く要望されていた。
たとえば特許文献1記載の従来の加湿装置は、図11から図13に示すように、本体またはカバーに設けられた吸気口100aおよび吹出口100bを有しており、本体の内部には、給水タンク101から供給された水を受ける水槽102、水槽102内の水を加熱するための加熱筒103、および加熱筒103を囲みつつ水槽102内の水を吸い上げる吸水体(加湿フィルタ)104を有している。そして、吸気口100aから送風機105を経て吹出口100bまで風路が形成されており、送風機105によって、吸気口100aからの空気とともに、吸水体104から気化した水蒸気が、吹出口100bから放出される。これによって、室内の加湿が行われる。給水タンク101からの水は、水槽102に供給され、水槽102内のいずれかの部分に、抗菌作用を有する物質を溶出させる一対の電極106が設けられている。そして、両電極間に電気を流すとともに所定の周期で極性を切り替えることによって、抗菌性の程度を変化させている。
また、特許文献2には、電力を使用しないで除菌することのできる加湿装置が示されている。水供給部と、少なくとも一部が水に浸されるように配置された加湿フィルタおよび空気を加湿フィルタを介して送る送風手段を含む加湿機構と、間隙を設けて設置された酸化還元電位の異なる第1の電極および第2の電極、ならびに第1の電極および第2の電極を短絡させる短絡部を具備する除菌装置とを有し、第1の電極の酸化還元電位が第2の電極の酸化還元電位より高く、少なくとも第1の電極および第2の電極が水に接する位置に配置されている。加湿装置の水に含まれる微生物は一定の電荷を有しているため、前記第1の電極から前記第2の電極に向けて微生物が移動し、電極間の水中から微生物を物理的に排除できることが示されている。さらに、第2の電極の表面に集積した微生物は、第2の電極表面から溶出する金属イオンの影響により増殖能を失って不活化することが示されている。
特開2002−89895号公報
特開2004−93108号公報
特許文献1に記載の方法では、電極から溶出させた金属イオンを用いて殺菌することができるものの、電極から溶出させるためには外部からの電源入力が必須であり、電源のない場所や装置が停止しているときには殺菌効果が働かず、菌が増殖してしまうという課題があった。特に電源入力が停止しているときには金属の溶出が進まないため、細菌と金属イオンの物理的な接触はほとんど期待できず、金属板表面近傍のごく限られた領域でしか効果がないという課題があった。さらに、殺菌手段では微生物の死骸が金属イオンを付与した領域に残る場合があり、快適性を保つためには除去された方が望ましく、殺菌手段ではなく除菌手段がより要望されている。
また、特許文献2に記載の方法では、電力を使用しないで除菌できるメリットをもっているが、短絡部を水面上に設けながら第1の電極と第2の電極とを水面下に配置する必要があるため、水槽の水深が深い場合あるいは水位の変動が大きい場合には設置が困難であった。
本発明は上記課題を解決するため、電力を使用せず、水槽の水深が深い場合あるいは水位の変動が大きい場合にも対応できる水の除菌装置、および前記除菌方法を利用した水処理方法を提供することを目的とする。
本発明の除菌装置は上記目的を達成するために、請求項1に記載の通り、酸化還元電位の異なる2種類以上の導電性材料を導通させ、前記導電性材料は、間隔をおいて配置された酸化還元電位の異なる2種類以上の金属材料と、前記金属材料同士を短絡させる短絡部から構成され、前記短絡部が、水面より上に位置し、水に浮かべて用いることを特徴とする。
また、本発明の除菌装置は、導電性材料が殺菌性の金属を含むことを特徴とする。
また、本発明の除菌装置は、金属材料が、絶縁性スペーサーを介して対向していることを特徴とする。
また、本発明の除菌装置は、金属材料と絶縁性スペーサーを交互に積層したことを特徴とする。
また、本発明の除菌装置は、絶縁性スペーサーのかさ比重が水よりも軽いことを特徴とする。
また、本発明の除菌方法は、請求項1乃至5いずれかに記載の除菌装置を、水に浮かべることを特徴とする。
また、本発明の除菌方法は、請求項1乃至5いずれかに記載の除菌装置を相互に接続する接続手段を備え、前記接続手段によって連通した除菌装置を水に浮かべることを特徴とする。
本発明によれば、電力を使用せず、水槽の水深が深い場合あるいは水位の変動が大きい場合にも対応できる水の除菌装置、および前記除菌方法を利用した水処理方法を提供することができる。
本発明の請求項1記載の発明は、酸化還元電位の異なる2種類以上の導電性材料を導通させ、前記導電性材料は、間隔をおいて配置された酸化還元電位の異なる2種類以上の金属材料と、前記金属材料同士を短絡させる短絡部から構成され、前記短絡部が、水面より上に位置し、水に浮かべて用いることを特徴としたものである。水に含まれる微生物はその表面電荷として一定の電荷を有しているため、水中に電場を与えるとその電場の向きに応じて移動する作用が生まれる。本発明のように、酸化還元電位の異なる2種類以上の導電性材料を導通させることによって、前記導電材料の間に起電力が生じ、その結果一方の導電性材料の表面に微生物が集められるため、水中の微生物が除菌される。また、酸化還元電位の異なる2種類以上の金属材料を導通させることによって、前記金属材料の間に起電力が生じ、その結果一方の金属材料の表面に微生物が集められるため、水中の微生物が除菌されるという作用を有する。電極同士を短絡させるという簡易な方法であり、外部から通電する必要がなく、省エネルギーにできるという効果を有する。また、通電回路や制御機構も不要で装置を簡略化できるという作用を有する。なお、金属材料と短絡部は同じ材料であってもよい。また、特許文献2の方法では短絡部を水面上に設けながら第1の電極と第2の電極とを水面下に配置する必要があるため、水位が変動すると短絡部が水没して電荷が逃げ、除菌性能が発揮されないことがあった。本発明の方法では、除菌ユニットを水に浮かべているので短絡部が水没することがなく、除菌装置を希望の電位差に安定して保ち除菌性能を確保することができる。短絡部の表面は電気的絶縁処理および/または撥水処理されていることが好ましい。
本構成においては2種類以上の導電性材料を短絡させることによって前記の除菌効果が得られるため、特許文献1のように微生物の増殖抑制のため通電する必要がなく、省エネルギーにできるという効果を有する。また、水道水にはCa、Mgなどの陽性イオン物質やCl、NO3などの陰性イオン物質などが含まれており、短絡した導電性の材料が形成する微小な電場によってこれらのイオン性帯電物質も除去することができる。また、水中でマイナスに帯電している菌類やカビ胞子などを捕集することができるという作用を有する。
また、特許文献2の方法では短絡部を水面上に設けながら第1の電極と第2の電極とを水面下に配置する必要があるため、水位が変動すると短絡部が水没して電荷が逃げ、除菌性能が発揮されないことがあった。本発明の方法では、除菌ユニットを水に浮かべているので水位が変動しても除菌ユニットの水深は一定に保たれ、除菌装置を希望の電位差に安定して保ち除菌性能を確保することができる。また、従来の方法では、水槽の水深が深い場合電極から短絡部までの距離を長く取る必要があり、断線などの不具合が生じやすかったが、本発明においては電極と短絡部の距離を短くすることができるので、水槽の水深が深い場合あるいは水位の変動が大きい場合にも対応できる水の除菌装置、および前記除菌方法を利用した水処理方法を提供することができる。
また、導電性材料が金属であることを特徴としたものであり、金属の導電性を利用して、容易に除菌装置を得ることができる。導電性の金属としては、Au、Pt、Ag、Cu、Pb、Ni、Sb、Co、W、Fe、Sn、Cr、Zn、V、Al、Ti、Zr、Mg、Kまたはこれらの合金などが挙げられる。特にAg、Cu、Znは金属自体の抗菌性が強いため好ましい。また、Fe、Zn、Alは比較的安価で安全なものとして利用しやすい。2種類以上の金属の選択としては用途と寿命と経済性を考慮すれば特に制限されるものではないが、水の電気分解開始電圧である1.2V付近では電極から水素の発生が生じ、電極の腐食が進みやすいため好ましくない。
また、酸化還元電位の異なる2種類以上の金属が電位差を生じた状態で水と接触すると、酸化還元電位の低いほうの金属が水に溶出する。溶出した金属は微生物に作用して除菌効果を発揮する。ここで酸化還元電位の高いほうの金属は溶出しにくいため、長期間使用するためには溶出量の多い酸化還元電位の低いほうの金属の配合比率を多くしたほうがよい。
また、導電性材料が殺菌性の金属を含むことを特徴としたものであり、導電性材料の表面に微生物が集められた後、金属の殺菌作用によって水中の微生物が速やかに死滅するという作用を有する。殺菌性の金属としては、Ag、Cu、Zn、Niなどが挙げられる。また、殺菌性をもった金属イオンを水中に放出することにより、殺菌性を持った水を得ることができるという作用を有する。
また、金属材料が、絶縁性スペーサーを介して対向していることを特徴としたものであり、金属材料同士が水の中で接触して電荷が逃げることがなく、除菌装置を希望の電位差に保つことができるという作用を有する。また、金属材料の湾曲や変形によって金属材料の間隔にばらつきが生じることを防ぎ、金属材料が近接した部分の電位が強くなり、場所によって除菌性能にばらつきが生じる不具合を抑制することができる。
また、絶縁性スペーサーのかさ比重が水よりも軽いことを特徴としたものであり、別の浮き子を用意する必要がなく、水に浮く除菌装置を容易に得ることができる。ここでかさ比重とは、単位体積あたりの重量のことを指す。
また、請求項1乃至5いずれかに記載の除菌装置を、水に浮かべることを特徴としたものである。除菌装置を水に浮かべることにより、水面下の除菌性能を有する部分の面積が、水位の変動の関わらず一定となるため、常に除菌効果を得ることができる。また、特許文献2に記載の方法では、短絡部を水面上に設けながら第1の電極と第2の電極とを水面下に配置する必要があるため、水槽の水深が深い場合には設置が困難であったが、本発明では除菌装置が水に浮かんでいるので、水深が深い場合での容易に除菌性能を発揮することができるという作用を有する。
また、請求項1乃至5いずれかに記載の除菌装置を相互に接続する接続手段を備え、前記接続手段によって連通した除菌装置を水に浮かべることを特徴としたものである。複数の除菌装置を用いることにより、望みの除菌性能に調節することが容易であるという作用を有する。また、除菌装置が相互に接続されているので、除菌装置の増減や回収が容易であるという作用を有する。
以下、本発明の実施の形態について図面を参照しながら説明する。
(実施の形態1)
図1に示すように、除菌装置1は、導電性の材料としての電極である亜鉛板2と、間隔をあけて配置された導電性の材料としての電極である銅板3を備えている。前記亜鉛板2と銅板3は上部で導電性の短絡部としての銅線で接続され導通されるとともに、スペーサー4によって一定の間隔に保持されている。スペーサー4は発泡スチロール製であり、かさ比重が水よりも軽いため、除菌装置は短絡部を水面上に保持しながら水に浮かぶようになっている。
ここで、金属の標準電極電位を表1に示す。
銅と亜鉛の標準電極電位はそれぞれ0.34V、−0.76Vなので、酸化還元電位はそれぞれの標準電極電位の差から1.11Vとなる。銅板と亜鉛板を短絡させたことにより、水中には電位差が生じ、金属板の間に存在するマイナスに荷電した微生物は亜鉛板のほうに引き寄せられ、除菌される。除菌された微生物は亜鉛板の表面で電荷を失うとともに、亜鉛の殺菌作用によって死滅する。同様のプロセスが繰り返されることによって、水の除菌が行われる。
以上のように、本発明の実施の形態1においては、電極である亜鉛板2と電極である銅板3との間の短絡部としての銅線の距離を短くすることができるので、すなわち、亜鉛板2と銅板3の間の間隔を短くすることができるので、水槽の水深が深い場合あるいは水位の変動が大きい場合にも対応できる水の除菌装置、および前記除菌方法を利用した水処理方法を提供することができることとなる。
(実施の形態2)
図2に示すように、除菌装置11は、枠12の内部に中空の球13を備えている。中空の球13の表面には、導電性材料としての亜鉛粉末と銀粉末および市販のカーボンぺーストを混合した処理液を塗布している。中空の球13はABS樹脂からなり、かさ比重が水よりも軽いため、除菌装置11は一部を水中に沈めた状態で浮かぶようになっている。ここで、亜鉛粉末と銀粉末は導電性のカーボン粒子によって導通されているため、水中には電位差が生じ、マイナスに荷電した微生物は亜鉛粉末のほうに引き寄せられ、除菌される。除菌された微生物は亜鉛粉末の表面で電荷を失うとともに、亜鉛の殺菌作用によって死滅する。同様のプロセスが繰り返されることによって、水の除菌が行われる。
(実施の形態3)
図3に示すように、除菌装置21は、スチロール製の発砲体22の周囲に網状の樹脂ネット23が取り付けられており、前記樹脂ネット23の表面には導電性材料としての銅粉末と真鍮粉末および市販のカーボンぺーストを混合した処理液を塗布している。発砲体22はかさ比重が水よりも軽いため、除菌装置は樹脂ネット23を水中に沈めた状態で浮かぶようになっている。除菌装置21は連結棒24によって接続されている。ここで、銅粉末と真鍮粉末は導電性のカーボン粒子によって導通されているため、水中には電位差が生じ、マイナスに荷電した微生物は真鍮粉末のほうに引き寄せられ、除菌される。除菌された微生物は真鍮粉末の表面で電荷を失うとともに、真鍮の殺菌作用によって死滅する。同様のプロセスが繰り返されることによって、水の除菌が行われる。
以下、本発明を実施例にて詳細に説明するが、本発明は、以下の記載に何ら限定して解釈されるものではない。
精製水で400倍に希釈した普通ブイヨン培地に、大腸菌 (Esherichia coli、IFO3972)を添加した菌液を作成した。30cm2(金属面としては裏表合わせて60cm2)になるように作成した2枚の金属板を、水面上で電気的に接合してプラスチックシャーレに入れた。金属板は銅と銅の組み合わせ、および銅と亜鉛の組み合わせとした。菌液をそれぞれプラスチックシャーレに入れ、一定時間ごとに0.1mlの液を採取して培養することにより、菌数の変化を比較した。
結果を図4に示す。銅と銅の組み合わせでも銅の抗菌作用によって菌数の減少が見られたが、6時間という尺度では金属を入れないブランクと比べて大きな差は出ていない。一方、銅−亜鉛では6時間後に大きな菌数の減少が見られた。ここから、酸化還元電位のことなる導電性材料を電気的に接合すると、高い除菌作用が得られることがわかる。
銅板と亜鉛板をスライドグラス上にのせ、顕微鏡の視野に入る間隔で配置した。精製水で400倍に希釈した普通ブイヨン培地に、大腸菌 (Esherichia coli、IFO3972)を添加し、約106cfu/ml程度の菌液を、銅板と亜鉛板に触れるようにスライドグラス上に0.2ml滴下した。ただちに顕微鏡で観察したところ、大腸菌は亜鉛板側に移動して凝集した。このことから、イオン化傾向の異なる材料を電気的に接合すると、菌液中の大腸菌が除菌されることがわかった。
2枚の亜鉛板を使って同様な実験を行ったところ、大腸菌は通常の運動状態でありどちらかの金属に誘引される様子は見られなかった。
(1)金属として平均粒子径50μmの亜鉛粉末と、市販の導電性カーボン塗料(導電性のカーボンとポリエステル樹脂を溶剤に分散させたもの)とを、亜鉛とカーボンの重量比が11:5になる割合でよく混練してペースト状にし、処理液を作成した。作成した処理液をPETフィルム上に塗り広げて、100℃で1時間乾燥させることによって除菌フィルムZnを作成した。
(2)金属を75〜150μmの銅粉末に変更した以外は(1)と同様の方法で除菌フィルムCuを作成した。
(3)金属の代わりに金属酸化物である0.1〜0.3μmのTiO2粉末を添加した以外は(1)と同様の方法で、比較用フィルムTiO2を作成した。
(4)金属を混合せず、市販の導電性カーボン塗料(導電性のカーボンとポリエステル樹脂を溶剤に分散させたもの)をPETフィルム上に塗り広げて、一晩乾燥させることによって比較用フィルムCを作成した。
前記(1)〜(4)の方法で作成したフィルムをそれぞれ直径85mm(約57cm2)の円形に切り取り、処理液の塗布面が上向きになるようにプラスチックシャーレ内に置いた。
精製水で400倍に希釈した普通ブイヨン培地に、大腸菌 (Esherichia coli、IFO3972)が105(cfu/ml)になるように添加した菌液を作成した。菌液をそれぞれ20mlずつプラスチックシャーレに入れ、一定時間ごとに0.1mlの液を採取して培養することにより、菌数の変化を比較した。なお、紫外線の殺菌作用を防ぐため、実験はシャーレを遮光して行った。
結果を図5に示す。金属を添加した除菌フィルムでは菌数の減少が見られ、除菌効果があるといえる。特にCuを添加したフィルムでその効果が強くみられた。一方、比較用フィルムCでは菌数の減少はわずかであり、除菌フィルムとは明らかに効果の差がみられた。金属酸化物である比較用フィルムTiO2では、比較用フィルムCよりも若干菌数が少なくTiO2粒子への吸着作用があるものと思われるが、除菌作用があるとはいえない。
(1)金属として平均粒子径50μmの亜鉛粉末と、市販の導電性カーボン塗料(導電性のカーボンとポリエステル樹脂を溶剤に分散させたもの)とを、亜鉛とカーボンの重量比が11:5になる割合でよく混練してペースト状にし、処理液を作成した。作成した処理液を直径85mm(約57cm2)の円形に成型したPETフィルム上に塗り広げて、60℃で2時間乾燥させることによって除菌板Aを作成した。
(2)金属として75〜150μmの銅粉末と、市販の導電性カーボン塗料(導電性のカーボンとポリエステル樹脂を溶剤に分散させたもの)とを、銅:カーボンの重量比が11:5になる割合でよく混練してペースト状にし、処理液を作成した。作成した処理液をPETフィルム上に塗り広げて、60℃で2時間乾燥させることによって除菌板Bを作成した。
(3)金属として平均粒子径50μmの亜鉛粉末と、75〜150μmの銅粉末と、市販の導電性カーボン塗料(導電性のカーボンとポリエステル樹脂を溶剤に分散させたもの)とを、亜鉛:銅:カーボンの重量比が10:1:5になる割合でよく混練してペースト状にし、処理液を作成した。作成した処理液をPETフィルム上に塗り広げて、60℃で2時間乾燥させることによって除菌板Cを作成した。
(4)亜鉛を96%、アクリル樹脂を4%含有する塗料をPETフィルム上に塗り広げて、60℃で2時間乾燥させることによって比較板A作成した。
(5)亜鉛を83%、アルミニウムを5%、アクリル樹脂を12%含有する塗料をPETフィルム上に塗り広げて、60℃で2時間乾燥させることによって比較板Bを作成した。
(6)何も処理せずに、比較板Cを作成した。
前記(1)〜(6)の方法で作成した鉄板を、除菌材料の塗布面が上向きになるようにプラスチックシャーレ内に置いた。
精製水で400倍に希釈した普通ブイヨン培地に、大腸菌 (Esherichia coli、IFO3972)が約105(cfu/ml)になるように添加した菌液を作成した。菌液をそれぞれ20mlずつプラスチックシャーレに入れ、一定時間ごとに0.1mlの液を採取して培養することにより、菌数の変化を比較した。所定時間経過後の菌数を初期の菌数で割って規格化した値を菌の残存比として縦軸にとり、横軸に経過時間を表した結果を図6に示す。除菌板A、B、Cでは菌数が減少し、除菌されていることがわかった。除菌板AとBではZnを添加したAのほうが除菌速度が速かった。銅と亜鉛を添加した除菌板Cは特に1時間後の菌数減少が顕著であった。
市販の塗料を塗布した比較板Aはわずかに菌数の減少が観察された。比較板B、Cでは菌数はほとんど変化せず、除菌効果が働いていないことがわかった。
作成した除菌板および比較板の表面電気抵抗を測定した結果を表2に示す。
比較板A、Bでは表面抵抗が非常に高く、導電性を有していないことがわかる。一方、除菌板A、B、Cでは表面抵抗が低く導電性を有している。図6の結果と対比してみると、導電性を有している除菌板A、B、Cでは除菌性能があり、導電性を有していない比較板A、Bおよびなにも処理していない比較板Cでは除菌性能が低いことがわかった。
また、樹脂の種類を任意に選択した、その他のサンプルにおいても、同様に表面抵抗値を測定したところ、表3に示すような値が得られ、除菌処理部の表面電気抵抗は107Ω/□以下であることが好ましいといえる。
実施例5で作成した除菌板Cをスライドグラス上にのせ、顕微鏡の視野に入る位置に配置した。精製水で400倍に希釈した普通ブイヨン培地に、大腸菌 (Esherichia coli、IFO3972)を添加し、約106cfu/ml程度の菌液を、除菌板Cに触れるようにスライドグラス上に0.2ml滴下した。ただちに顕微鏡で観察したところ、大腸菌は除菌板Cの特定の位置に偏在して移動し、凝集した。除菌板Cは亜鉛と銅と導電性カーボンが混在しており、どの位置に各材料が塗布されているか確認することはできなかった。大腸菌の大きさ(約2μm)に比べて、亜鉛と銅の大きさは十分に大きく(50〜150μm)、実施例4の結果と合わせて考えると、おそらく亜鉛が高濃度に存在する位置に菌が凝集しているものと思われた。
平均粒子径0.3μm〜150μmから、粒子径を任意に選んだ亜鉛および銅粉末と、市販の導電性カーボン塗料(導電性のカーボンとポリエステル樹脂を溶剤に分散させたもの)とを、金属粉末とカーボン塗料の重量比が11:5になる割合でよく混練してペースト状にし、7種類の処理液を作成した。作成した処理液をPETフィルム上に塗り広げて、100℃で1時間乾燥させることによって除菌フィルムを作成した。これらの除菌フィルムをそれぞれ直径85mm(約57cm2)の円形に切り取り、塗料の塗布面が上向きになるようにプラスチックシャーレ内に置いた。
精製水で400倍に希釈した普通ブイヨン培地に、大腸菌 (Esherichia coli、IFO3972)が105(cfu/ml)になるように添加した菌液を作成した。菌液をそれぞれ20mlずつプラスチックシャーレに入れ、3時間後に0.1mlの液を採取して培養することにより、初期に対する菌数の変化を除菌スピードとして比較した。ここでの除菌スピードとは菌数の減衰速度を、初期に対する除菌率で現したものであり、除菌スピードが速いほど除菌性能が優れると言える。なお、紫外線の殺菌作用を防ぐため、実験はシャーレを遮光して行った。
結果を図7に示す。亜鉛と銅の粒子径が異なる場合は、グラフ横軸における亜鉛/銅サイズ比が1から離れていくが、亜鉛/銅サイズ比が0.1以下もしくは8以上になる領域、すなわち、亜鉛と銅の粒子径比が0.1以下もしくは8以上であるときには、粒子径差が少ないときに比べて除菌スピードが遅く、3時間後の除菌率が99%を下回ることがわかった。すなわちこれは、同じ重量の金属粉が含まれていても、二種類の金属の粒子径差が少ない場合に比べて、粒子径差が大きいときは導電材料や他金属粒子との接触効率が悪くなるためと考えられる。
平均粒子径50μmの亜鉛粉末と、75〜150μmの銅粉末と、市販の導電性カーボン塗料(導電性のカーボンとポリエステル樹脂を溶媒に分散させたもの)とをよく混練して、金属粉末の総量に対するカーボン量を変動させた4種類の処理液を作成した。作成した処理液をPETフィルム上に塗り広げて、100℃で1時間乾燥させることによって除菌フィルムを作成した。これらの除菌フィルムをそれぞれ直径85mm(約57cm2)の円形に切り取り、塗料の塗布面が上向きになるようにプラスチックシャーレ内に置いた。
精製水で400倍に希釈した普通ブイヨン培地に、大腸菌 (Esherichia coli、IFO3972)が105(cfu/ml)になるように添加した菌液を作成した。菌液をそれぞれ20mlずつプラスチックシャーレに入れ、3時間後の初期に対する菌数の変化を、除菌スピードとして比較した。なお、紫外線の殺菌作用を防ぐため、実験はシャーレを遮光して行った。
結果を図8に示す。金属粉の総重量に対するカーボン量が、配合比率0.02%以上存在するとき、除菌スピードはほぼ同じ値が得られる。すなわち、導電性の炭素材料と金属との間に十分な電位差が生じて除菌性能を発揮するためには、0.02%のカーボン量があれば良いと考えられる。
平均粒子径50μmの亜鉛粉末と、75〜150μmの銅粉末と、カーボン粉末とアクリル樹脂エマルジョンとを、金属粉末とカーボンの重量比を一定にし、アクリル樹脂の量を任意の割合で変動させた6種類の処理液を作成した。作成した処理液をPETフィルム上に塗り広げて、100℃で1時間乾燥させることによって除菌フィルムを作成した。これらの除菌フィルムをそれぞれ直径85mm(約57cm2)の円形に切り取り、塗料の塗布面が上向きになるようにプラスチックシャーレ内に置いた。
精製水で400倍に希釈した普通ブイヨン培地に、大腸菌 (Esherichia coli、IFO3972)が105(cfu/ml)になるように添加した菌液を作成した。菌液をそれぞれ20mlずつプラスチックシャーレに入れ、3時間後の初期に対する菌数の変化を除菌スピードとして比較した。なお、紫外線の殺菌作用を防ぐため、実験はシャーレを遮光して行った。
結果を図9に示す。樹脂量が総固形分に対する配合比率7%〜35%の範囲において、除菌フィルムは良好な除菌性能を呈した。樹脂が7%より少ない場合は、除菌性能が低下するだけでなく、金属やカーボンとフィルムとの密着性も低下する。また、樹脂量が35%を超えると、密着性は良好であり、十分な強度は得られるものの、金属と導電性材料との導通阻害になるために、除菌性能が低下した。樹脂としては、アクリル以外にも、ナイロン、ポリエステル、ポリエーテル、エポキシ、ポリウレタン、ポリカーボネートなどが挙げられる。
平均粒子径50μmの亜鉛粉末と、75〜150μmの銅粉末と、市販の導電性カーボン塗料(導電性のカーボンとポリエステル樹脂を溶剤に分散させたもの)とを、亜鉛と銅とカーボンの重量比が10:1:5になる割合でよく混練してペースト状にし、処理液を作成した。作成した処理液をPETフィルム上に塗り広げて、100℃で1時間乾燥させることによって除菌フィルムを作成した。同様にスポンジ状のフィルタに塗布して100℃で1時間乾燥させることによって除菌フィルタを作成した。
市販の加湿装置に、作成した除菌フィルムを配置し、給水タンクに水を入れた後、除菌フィルムの周囲から水を採取し培養して水中菌数を測定した。加湿装置の運転を開始し、渇水になるまで連続運転した。翌朝、除菌フィルムの周囲から残留水を採取し、培養して水中菌数を測定した。その後、給水タンクに水をいれて運転を開始し、以下同様の方法で除菌フィルタを配置したもの、および除菌部材を入れないものを比較として14日間、水中の菌数の変化を測定した。同様の実験を除菌フィルタありの条件で行った。
図10に示すように、除菌フィルムなしでは数日で菌数が増加していき、4日目以降は106(cfu/ml)以上の高い菌数を継続して示した。一方、除菌フィルムを入れた場合には、なしの場合と比較して明らかに菌数の増加が少なくなり、除菌の作用が確認できた。菌数が10以下にならなかったのは、除菌フィルムの面積が小さく能力が不足したこと、および空気中から継続的に浮遊微生物が混入するためであると思われる。また、除菌フィルタを搭載したものは14日間運転しても菌は検出されなかった。
本発明の除菌装置では、電力を使用せず、水槽の水深が深い場合あるいは水位の変動が大きい場合にも対応できる水の除菌装置を提供することができ、前記除菌装置を用いて、加湿装置、除湿装置、循環式浴槽装置の水タンク内を清浄に保つ用途や、サウナ装置、空調装置などの導水管内の清浄と菌による腐食の防止用途や、河川や湖沼などの水処理装置、除菌装置などへの展開用途が期待できる。
本発明の発明を実施するための最良の形態1の概略斜視図
本発明の発明を実施するための最良の形態2の概略斜視図
本発明の発明を実施するための最良の形態3の概略斜視図
本発明の実施例1の除菌効果を示す図
本発明の実施例3のフィルムを構成する材料と除菌効果の関係を示す図
本発明の実施例4の金属の組み合わせと除菌効果の関係を示す図
本発明の実施例6の金属の粒子径と除菌スピードの関係を示す図
本発明の実施例7のカーボン量と除菌スピードの関係を示す図
本発明の実施例8の樹脂混合量と除菌スピードの関係を示す図
本発明の実施例9の加湿装置内の菌数の変化を示す図
従来例の加湿装置の概略斜視図
従来例の加湿装置の内部構造を説明するための概略斜視図
従来例の加湿装置の内部構造を説明するための概略斜視図
符号の説明
1 除菌装置
2 亜鉛板
3 銅板
4 スペーサー
5 短絡部
11 除菌装置
12 枠
13 中空の球
21 除菌装置
22 発砲体
23 樹脂ネット
24 連結棒
100a 吸気口
100b 吹出口
101 給水タンク
102 水槽
103 加熱筒
104 吸水体
105 送風機
106 電極