JP4760570B2 - マイクロチップおよびその使用方法 - Google Patents

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Description

本発明は、マイクロチップおよびその使用方法に関する。
生体内で各種生物機能を司るタンパク質は、正常な生命活動にとって重要な生体成分である。タンパク質は単独で機能するほか、他のタンパク質や生体低分子などと結合することにより、複合体として酵素機能を発揮する場合の多いことが分かってきている。したがってタンパク質と他の生体分子との結合を解析することは、生命の理解のために重要である。また、本来の結合相手と類似した立体構造を持つ薬剤を優先的に結合させることにより、タンパク質の酵素機能発揮を妨害して薬効を出すタイプの薬を作製することが行われている。
上記いずれの例においても、多対多で結合実験をしても結果が分からなくなるため、特定の着目タンパク質一種を認識できる形で分離しておき、それに対して1または複数の結合候補物質を反応させて、結合する物を探索することになる。
従来は、試験管内でこの実験を行っていたが、近年では、マイクロチップ等の小型機械上に、一種ずつ分離した形でタンパク質をスポットしておき、そこに結合候補物質を作用させて、どのスポットに結合したかを一度に簡便に前記結合の検出を行う方法が提案されている。
このような方法として、たとえば、タンパク質をスポットしたタンパク質アレイを利用する方法や(非特許文献1)、サイファジェン社の販売するプロテインチップシステムにおけるタンパク質固定表面を利用する方法(非特許文献2)がある。これらにおいては、チップ表面に固定したタンパク質に対してターゲット候補物質の結合反応を行い、結合する物質が存在すれば、それらを前者では蛍光や電気化学的な方法で検出し、後者では質量分析法により検出する。
当然のことながら、これらの方式では、タンパク質アレイやプロテインチップを作製するために、基板部材に固定されるタンパク質を大量に人工合成後精製する、あるいは生体から抽出後精製するなどして、あらかじめ純化した状態で大量に準備してから、1種類ずつ離散した形でスポットしなければならない。よって準備の困難な前記タンパク質は、前記検定法の対象とならなかった。
一方、マイクロ流路を持つチップを用い、前記流路内で等電点分離を行う方法が提示されている。これによれば上述した抽出成分中の両性成分、すなわちタンパク質とペプチドを各々の等電点に応じて分離、配置することができる。
等電点分離を実行するときに、もともと蓋のない構造(非特許文献3)、あるいは、蓋としてシールを用いるなどして、等電点分離中はマイクロチップ基材と結合しており、等電点分離後に剥離可能な組み合わせの構成(非特許文献4)を用いると、等電点分離後に、自然乾燥や凍結乾燥により、その場に粉末状に固定された両性成分が残る。この時に、分離状態を良くするためには長い流路を作製すればよく、分離状態を犠牲にしても分離時間を短くしたい場合には、流路を短くすればよい。
Lisa Melton、「Proteomics in multiplex」、Nature、429、p.101−107 横山憲二、「プロテインチップ開発の現状」、Bioベンチャー(羊土社)、2003年、5−6月号、p.24−27 W. Hattori他4名、「An isoelectric focusing chip with microstructured superhydrophillic open channels for coupling with MALDI-MS detection」、MSB2006 - 20th International Symposium on Micro-Scale Bioseparations、PJ24 Machiko Fujita他8名、「High-throughput and high-resolution two-dimensional mapping of PI and M/Z using microchip and MALDI-TOFMS」、MSB2005 - 19th International Symposium on Micro-Scale Bioseparations、L19−L6−W
ところが、上述した従来のタンパク質アレイやプロテインチップでは、基板部材に固定される抗体などを純粋なタンパク質として、大量に人工合成後精製する、あるいは生体から抽出後精製するなどして、あらかじめ純化した状態で大量に準備しなければならず、生体内の両性成分のごく一部である、調製法の確立している物質しか検定対象とできなかった。
しかし、特定の薬剤が、上述した方法で検定できなかったタンパク質とも結合作用を示すために、それが重大な副作用を引き起こし、あるいは逆に予想しなかった良い効果が生じることもある。したがって、生体内のすべての成分を対象とした結合検定を行う要請がある。
血液等、生体からの抽出サンプルは、ヒトその他各種生物が生命活動に必要な体内タンパク質を含んでおり、このサンプル中に存在するタンパク質群が、結合検定で検定相手としたいすべてのタンパク質群である。少数の手持ち物質についてであれば、従来法でも時間と手間をかけて、それらが結合する相手を検定することも可能であるが、たとえば薬剤候補のライブラリなど、一万を超える数になると、従来法では検定に時間がかかりすぎ、現実的には検定が困難である。
したがって、抽出サンプル中の成分を1つ1つ離散的に配置することができれば、それはプロテインアレイとなり、簡便に完全な結合検定ができることになる。実際には離散的な1区画に複数の成分が混合していても、たとえば10程度まで絞り込むことができれば、従来法によりその絞り込まれた部分だけを詳細に検定することは可能である。
そこで、本発明は、試料中に含まれる成分について、結合検定を用いた分析を簡便で確実に行う技術を提供する。
本発明によれば、
基板と、
前記基板に溝状に設けられた流路と、
前記流路に設けられる仕切板と、
を含み、
前記流路全体にわたって液体試料が導入されて、前記液体試料中の成分が、所定の性質に基づき、前記仕切板により区画される第一および第二領域に分離されて、固定化されるとともに、
前記流路の前記第一および第二領域に、所定の成分と複合体を形成する物質を含む液体試薬が導入され、
前記仕切板が、
前記流路の幅全体にわたって設けられるとともに、
前記流路内で前記第一および第二領域に分離されて固定化された前記成分が前記液体試薬と接した際に、前記第一および第二領域の一方から他方へ当該仕切板を越えて拡散することを抑制するように構成された、マイクロチップが提供される。
また、本発明によれば、
当該マイクロチップの使用方法であって、
前記流路に、質量分析の対象となる液体試料を導入し、前記液体試料中の成分を前記第一および第二領域に分離するステップと、
成分を分離する前記ステップの後、分離された成分を前記第一および第二領域に固定化するステップと、
成分を固定化する前記ステップの後、前記第一領域と前記第二領域との間に前記仕切板を配置した状態で、前記流路に、所定の成分と複合体を形成する物質を含む液体試薬を導入し、前記所定の成分と前記物質との複合体を形成するステップと、
を含むマイクロチップの使用方法が提供される。
本発明においては、マイクロチップの流路において、流路全体にわたって液体試料が導入されて、液体試料中の成分が、流路内の少なくとも第一領域と第二領域に分離されて、分離された成分が、それぞれの領域に固定化される。ここで、第一および第二領域は、流路の延在方向に沿って並んで配置されている。第一および第二領域は、流路内の隣接する領域であって、仕切板で区画される。なお、第一領域と第二領域とは、少なくとも液体試薬の導入前に仕切板で区画されればよく、分離・固定の段階から仕切板で区画されていてもよいし、固定化後の段階で区画されてもよい。
固定化後、流路に液体試薬が導入されて、流路内で複合体の形成反応がなされる。このとき、流路の幅全体にわたって仕切板を設け、成分が液体試薬と接した際に、第一および第二領域の一方から他方へ当該仕切板を越えて拡散することを抑制する構成とすることにより、第一および第二領域に分離された状態を維持しつつ、複合体の形成反応を行うことができる。
よって、本発明によれば、複数の成分を含む液体試料を流路全体に確実に行き渡らせて流路内で分離するとともに、分離後、固定化された成分が再度液体に接触した際に、仕切板を越えて流路の延在方向に拡散することを抑制し、所定の領域内にとどめることができる。このため、流路内に成分を離散配置するとともに、離散状態を維持しながら結合検定を行うことができる。
また、本発明のマイクロチップにおいて、前記流路に対応する形状の参照流路が設けられていてもよい。参照流路を設けることにより、たとえば、流路に液体試薬を導入して複合体の形成反応を行うとともに、参照流路においては同じ液体試料の分離・固定化のみを行って、これらの状態を比較分析することができる。このため、液体試料中の成分の複合体の形成前後の状態を比較して、成分の分析をさらに確実に行うことができる。
なお、これらの各構成の任意の組み合わせや、本発明の表現を方法、装置などの間で変換したものもまた本発明の態様として有効である。
たとえば、本発明によれば、
上述した本発明のマイクロチップの基板の流路の形成面の上部に配置される蓋であって、
第二仕切板を含み、
当該蓋を基板上に配置したときに、第二仕切板がマイクロチップの流路の幅全体にわたって流路の内部に突出するように構成された、蓋が提供される。
以上説明したように本発明によれば、試料中に含まれる成分について、結合検定を用いた分析を簡便で確実に行うことができる。
以下、本発明の実施形態について図面を参照して説明する。なお、すべての図面において、共通の構成要素には同じ符号を付し、適宜説明を省略する。
はじめに、本実施形態におけるマイクロチップを用いた分析手順の概略を説明する。
図1は、本実施形態における分析手順を示すフローチャートである。
図1に示したように、本実施形態において、試料中の成分の分析は、以下のステップを含む。
ステップ11(S11):液体試料導入
ステップ13(S13):分離
ステップ15(S15):固定化
ステップ17(S17):結合試薬導入・複合体形成
ステップ19(S19):質量分析
まず、質量分析の対象となる試料として、体液等の所定の液体試料をマイクロチップの流路に導入する(S11)。この流路は分離用流路である。なお、マイクロチップおよび流路の具体的な構造については後述する。
そして、液体試料中に含まれる成分を所定の性質に応じて分離する(S13)。分離に用いる所定の性質として、たとえば成分の等電点や大きさ、親疎水性等種々のものが挙げられるが、以下においては、等電点電気泳動により、液体試料中の両性成分を分離する場合を例に説明する。分離により、成分が流路の第一領域と第二領域とに配置される。
ここで、分離状態を向上させる方法として、たとえばマイクロチップに形成する流路を長くする方法が挙げられる。さらに具体的には、流路の平面形状をジグザグ型にデザインすれば、たとえば5cm角のチップに10mオーダーの流路を作り込むことができる。あるいは、分離する等電点範囲を狭く設定することにより、同じ長さの流路であっても、特定の等電点範囲にある成分をより離散的に分離することが可能である。
その後、流路内で分離された成分を、分離された領域、つまり第一および第二領域に固定化する(S15)。成分を固定化するステップは、たとえば流路内の液体を凍結乾燥するステップである。液体試料をその場で乾燥させることにより、等電点ごとに分離した状態で固定される。
このとき、蓋を有しないマイクロチップを用いるか、または、分離時には蓋が設けられており、分離後には剥がせる構成の蓋を有するマイクロチップを用いる。そして、等電点分離完了後、マイクロチップ中の液体を凍結し、蓋を有するマイクロチップの場合には蓋を剥がして流路内の成分を露出させ、凍結乾燥もしくは風乾させる。これにより、流路内に離散的に配置された両性成分の粉体が所定の領域に固定化される。この方式として、非特許文献3または4に記載の方法を用いることができる。
また、液体試料を分離後、凍結することにより、流路内に固定化することもできる。
以上により流路に離散的に分離配置された両性成分は、第一および第二領域に離散的にスポッティングしたプロテインアレイの各成分に見立てることができる。これはすなわち、プロテインアレイチップなのである。
しかし、従来のマイクロチップの構成では、こうしたプロテインアレイチップを作製できたとしても、分離された成分が基材と共有結合により固定されてはいないため、別の液体を接触させると流れ出してしまう。このため、従来のマイクロチップにおいては、流路中で分離された成分に液体を供給し、他の成分と反応させるのは困難であった。
これに対し、本実施形態では、マイクロチップ上で等電点分離され、乾燥状態になっているプロテインアレイに対し、離散的分離状態を崩さずに他の成分との結合検定を可能とする。具体的には、マイクロチップの流路に、分離には支障がなく、結合反応時には離散して隣に存在する成分と混ざらないようにする仕切り構造(仕切板)を設ける。または、マイクロチップにおいて、分離後に他の追加部材を用いて流路に仕切板を設定することが可能な構成とする。
これらのいずれの場合にも、成分を固定化するステップ15の後、流路の第一領域と第二領域との間に仕切板を配置した状態で、流路に所定の成分と複合体を形成する物質を含む液体試薬を流路に導入して、所定の成分と物質との複合体を形成させる結合反応を行い(S17)、結合反応液を再乾燥させる。流路に仕切板を設けることにより、複合体を形成するステップ17において、固定化された試料が仕切板を越えて流路内を延在方向に移動し拡散することを抑制できる。第一および第二領域に分離された成分が一方から他方へと仕切板を越えて拡散することを抑制することにより、分離されたスポット同士が混和しないようにできる。
これにより、結合反応後の分離用流路において、結合反応の起こった成分が配置された領域には、生成物質つまり複合体が存在することになる。一方、結合反応が生じない成分が配置された領域では、元の物質が存在することになる。
また、マイクロチップに流路に対応する形状の参照流路(リファレンス流路)が設けられていてもよい。リファレンス流路は、流路と同様に液体試料中の成分の分離および固定化が可能な構成とする。この場合、リファレンス流路においても、同じ液体試料を用いて上述した手順を用いて両性物質混合物溶液を等電点分離した後、流路内を乾燥させる。リファレンス流路については、ステップ15の後、上述したステップ17の液体試薬を用いた結合反応を行わずに、次のステップ19を行う。
つづいて、質量分析により、流路中で結合反応の起こった領域を検出する(S19)。以下、MALDI(Matrix Assisted Laser Desorption Ionization:マトリックス支援レーザ脱離イオン化)型質量分析計を用いる場合を例に説明する。
結合反応後の各流路に、イオン化促進物質であるマトリックスを滴下する。そして、マイクロチップを質量分析計の所定の位置に配置する。マイクロチップを直接ターゲットとして用い、流路の端から順にレーザ光を照射して、スキャニングする。そして、結合反応を行った流路について得られた第一質量分析スペクトルに基づき、第一および第二領域における複合体の形成の有無を検出する。
また、結合反応を行った流路について得られたスペクトルとリファレンス流路について得られたスペクトルとを比較することにより、結合反応が流路のどの領域で生じたかを決定することもできる。また、決定された領域の等電点および質量データから、液体試料中の成分のうち、複合体を形成した物質を同定したり、物質の候補を絞り込んだりすることができる。たとえば、結合反応を行った流路とリファレンス流路とを同一形状としておくことにより、相対する位置における質量スペクトルを比較することができる。両方のスペクトルに質量差が検出されれば、その質量差の物質が結合したことを示す。
以上により、複数の成分を含む液体試料全体の中から、特定の物質と複合体を形成する物質を検出することが可能となる。本実施形態によれば、マイクロチップ上の流路において、等電点分離後の分離パターンを崩すことなく物質間の結合反応を行うことができる。また、結合反応の有無を隣り合う同一形状の分離用流路で行うことにより、複合体の形成前の状態と後の状態とをそれぞれの流路に実現できるため、これらの状態を別々に計測し、そのシグナルを比較することにより、結合反応の起こった位置を特定することができる。
なお、ここでは、第一および第二領域を例示したが、試料中の成分が第三領域以上の複数の領域に分離される場合についても、各領域間に仕切板を配置することにより、液体試薬導入時の成分の拡散を同様に抑制できる。
以上の方法を実現する例として、以下の実施形態のマイクロチップにおいては、使用するマイクロチップ上の流路およびリファレンス流路において、結合反応時に各分離済み成分が移動せず、さらにMALDI型等のレーザ脱離イオン化質量分析計のターゲットとして使用可能な構造とする。
まず、結合反応時に各分離済成分が移動しないようにするために、流路内に仕切板を構成しておき、結合反応液がその仕切板を越えて隣の区画に入り込まないようにする。さらに強固に仕切りを作製するためには、流路側の仕切りと重なる、あるいはかみ合う関係となるように作製した蓋構造を用いることもできる。
ただし、上部開放部のない蓋部を設けた場合、MALDI型質量分析において流路に直接レーザが照射できず、またイオン化した物質が検出器に向かって放射されない。そこで、各仕切板に区切られた各区画上部に相当する位置に穴を開けておく等して、第一および第二領域上が外部に連通する開口部を設ける。このような蓋部を用いれば、穴を通してマトリックスの添加と、MALDI型質量分析時のレーザ照射ならびにイオン化物質の検出器方向への放射を行うことができる。
以下の実施形態では、上述した分析手順をさらに具体的に説明する。なお、すべての図面において、共通の構成要素には同じ符号を付し、適宜説明を省略する。
(第一の実施形態)
図2は、本実施形態のマイクロチップの構成を示す平面図である。
図2に示したマイクロチップ100は、質量分析のターゲット板として用いられる。マイクロチップ100の大きさは、使用する質量分析計にターゲットとして装着できるサイズであればよく、たとえば5cm×5cm程度とする。
マイクロチップ100は、基板103と、基板103に溝状に設けられた流路(第一分離用流路101)と、第一分離用流路101に設けられる仕切板(第一仕切板200:図3)と、を含む。マイクロチップ100には、さらに、第一分離用流路101に対応する形状のリファレンス流路(第二分離用流路102)が設けられている。
基板103の材料として、たとえば石英もしくはガラス、シリコン等の微細加工しやすい材料が好適に用いられる。
第一分離用流路101および第二分離用流路102は、基板103に凹状に設けられている。また、図2においては、第一分離用流路101と第二分離用流路102とが互いに平行して設けられている。なお、本実施形態および以下の実施形態においては、第二分離用流路102をリファレンス流路とする場合を例に説明するが、基板103に複数の分離用流路が設けられているとき、これらの一方を結合反応に用いる流路とし、他方をリファレンス流路とすればよい。また、マイクロチップ100に三以上の分離用流路が設けられていてもよい。
マイクロチップ100は、第一分離用流路101に液体を導入する導入部(液溜150、液溜151)および第二分離用流路102に液体を導入する導入部(液溜152、液溜153)を有する。液溜め150および液溜151は、第一分離用流路101に連通しており、液溜152および液溜153は第二分離用流路102に連通している。
第一分離用流路101および第二分離用流路102には、その全体にわたって液体試料が導入される。液体試料中の成分が、所定の性質に基づき、第一仕切板200により区画される第一領域171および第二領域172(図3)に分離されて、固定化される。また、第一分離用流路101の第一領域171および第二領域172に、所定の成分と複合体を形成する物質を含む液体試薬が導入される。
ここで、第一分離用流路101および第二分離用流路102に導入される液体試料は、生体試料等の生体成分を含む。
また、第一分離用流路101に導入される液体試薬は、結合検定試薬である。
なお、第一分離用流路101および第二分離用流路102は、その全体が分離領域であってもよいし、一部が分離領域であってもよい。図2においては、第一分離用流路101および第二分離用流路102がpH勾配の形成される等電点分離領域を含み、第一領域171および第二領域172が等電点分離領域内に設けられる。
また、マイクロチップ100は、この等電点分離領域に電界を印加する一対の電極(第一電極160と第二電極161、第一電極162と第二電極163)をさらに備える。液溜150および液溜151には、それぞれ、第一電極160および第二電極161が挿入されている。第一電極160および第二電極161は、等電点分離のための電極対である。また、第二分離用流路102の両端に連通して液溜め152と液溜153がそれぞれ設けられており、これらの液溜にはそれぞれ第一電極162および第二電極163が挿入されている。第一電極162および第二電極163も、等電点分離のための電極対である。第一電極160〜第二電極163には、化学的に安定な材質が好適であり、これらはたとえば棒状の白金電極である。
第一分離用流路101および第二分離用流路102の形状は、図2においては直線である。ただしこれらの流路の平面形状は直線状に限られず、たとえばジグザグ状等の屈曲部を有する形状であってもよい。
第一分離用流路101および第二分離用流路102は、たとえば幅50μm以上10mm以下とする。また、これらの流路の深さは、たとえば0.3μm以上1mm以下に設定される。
ここで、結合反応時(図1のS17)に第一分離用流路101内に液体試薬が広がると、分離過程でバンドを形成し濃縮された両性成分の配置状態が崩れることになる。この現象を防ぐための構造として、少なくとも第一分離用流路101に仕切板を設ける。また、第二分離用流路102についても、第一分離用流路101と同様の構成とすることができる。仕切板は、少なくとも結合反応を行う第一分離用流路101に設けられていればよいが、第一分離用流路101と第二分離用流路102における試料の分離状態を揃える観点で、第一分離用流路101および第二分離用流路102の両方に仕切板を設けることが好ましい。また、第一分離用流路101と第二分離用流路102において、それぞれ同位置に仕切板を設けることがさらに好ましい。
図3(a)および図3(b)は、第一分離用流路101の構成例を示す図である。図3(a)は第一分離用流路101の平面図であり、図3(b)は図3(a)のA−A'断面図である。
図3(a)および図3(b)に示したように、本実施形態においては、流路底面201に第一仕切板200を設ける。第一仕切板200は、流路底面201と流路上面202の間に配置される。ここでは、流路底面201は、マイクロチップ100の上面と同一面内にある。
第一仕切板200は、第一分離用流路101および第二分離用流路102の幅全体にわたって設けられるとともに、流路内で第一領域171および第二領域172に分離されて固定化された成分が液体試薬と接した際に、第一領域171および第二領域172の一方から他方へ当該仕切板を越えて拡散することを抑制するように構成されている。
第一仕切板200は、液体試料中の成分が第一領域171に固定化された後、流路の延在方向に拡散して第二領域172へと移動することを抑制する。また、第一仕切板200は、第一分離用流路101に固定化された成分が流路の延在方向に移動することを抑制する隔壁である。第一仕切板200を流路幅全体にわたって設けることにより、流路の幅方向における分離状態のばらつきを低減するとともに、分離後、固定化された成分の流路延在方向の拡散を効果的に遮断できる。
ここでは、図3(a)に示したように、複数の第一仕切板200が、第一分離用流路101の延在方向に沿って互いに平行に配置されている。複数の第一仕切板200は、流路の延在方向に直交している。複数の第一仕切板200が、流路全体に設けられていてもよい。
マイクロチップ100においては、第一分離用流路101の側壁(流路側壁203)と第一仕切板200とが連続して設けられている。さらに具体的には、第一仕切板200と第一分離用流路101の側壁とが連続一体に形成されている。このような第一仕切板200は、微細加工時に2つの異なるマスクを用いてドライエッチングするなどの一般的な方法で作製できる。また、第一仕切板200は、基板103の微細加工工程において、第一分離用流路101および第二分離用流路102とともに基板103に作り込むことができる。
また、マイクロチップ100は、第一分離用流路101と、第一分離用流路101の近傍に設けられるとともに、第一分離用流路101に沿って設けられた第二分離用流路102と、を含み、第一分離用流路101および第二分離用流路102に第一仕切板200が設けられ、第一分離用流路101に設けられた第一仕切板200に対応する位置に第二分離用流路102の第一仕切板200が設けられる。これにより、結合試薬が導入される流路とされない流路の分離状態をさらに確実に揃えることができる。
複数の第一仕切板200は、たとえば等間隔に配置される。第一仕切板200の厚さつまり流路の延在方向の長さは、加工方法に応じて適宜設定することができるが、たとえば0.1mm程度とする。分離への影響をより低減する観点で、第一仕切板200の厚さを薄くすることが好ましい。第一仕切板200により区画される領域の流路延在方向の長さは、分析目的に応じて適宜設定される。また、第一仕切板200の中心間距離を、たとえば50〜2000μm程度とする。液体試料中の複数の成分を各成分ごとに細かく分離したい場合には、第一仕切板200の中心間距離を小さく設定して区画される領域の長さを短くする。また、複数の成分を含む領域群に大まかに分離したい場合には、第一仕切板200の中心間距離を大きめに設定して区画される領域の長さを長くする。
第一仕切板200は、第一分離用流路101の底面に設けられており、第一仕切板200の高さh1が、第一分離用流路101の深さHよりも低い。こうすることにより、第一仕切板200が分離の妨げとなることを防ぐことができるため、分離がさらに確実になされる。
また、第一仕切板200の高さh1は、第一分離用流路101の深さHに応じて設定される。第一仕切板200の高さh1は、液溜150または液溜151に導入された液体試料が第一分離用流路101全体に広がり成分分離されるのに支障がない程度の高さとする。
具体的には、第一分離用流路101の深さHと第一仕切板200の高さh1を、h1<(2/3)H、好ましくはh1≦(1/2)Hとする。こうすることにより、液体試料を第一分離用流路101全体にさらに確実に導入するとともに、液体試料中の成分をさらに確実に分離することができる。
また、第一仕切板200の高さh1の下限は、液体試薬を導入した際に第一分離用流路101内の所定の領域に分離された成分が第一仕切板200を越えて他の領域に移動しない程度の高さであればよく、たとえば第一分離用流路101への結合試薬の供給方法および供給量に応じて設定される。たとえば、(1/10)H≦h1、好ましくは(1/5)H≦h1とすることができる。
次に、図2および図3に示したマイクロチップ100の使用方法を説明する。マイクロチップ100を使用した分析の基本的な手順は図1を参照して前述した通りであり、
第一分離用流路101および第二分離用流路102に、質量分析の対象となる液体試料を導入し(図1のS11)、液体試料中の成分を分離するステップ(図1のS13)、
成分を分離するステップの後、成分を分離された位置に固定化するステップ(図1のS15)、および
成分を固定化するステップの後、第一分離用流路101に、所定の成分と複合体を形成する物質を含む液体試薬(結合試薬)を導入し、所定の成分と物質との複合体を形成する(図1のS17)ステップ、
複合体を形成するステップの後、液体試料のレーザ脱離イオン化質量分析を行うステップ(図1のS19)を含む。
ステップ19のレーザ脱離イオン化質量分析を行うステップは、
第一分離用流路101にレーザ光を照射し、第一質量分析スペクトルを取得するステップ、および
第一質量分析スペクトルに基づき、第一領域171および第二領域172における前記複合体の形成の有無を検出するステップ、
を含む。
さらに具体的には、ステップ19のレーザ脱離イオン化質量分析を行うステップは、
ステップ21:第一分離用流路101にレーザ光を照射し、第一質量分析スペクトルを取得するステップと、
ステップ23:第二分離用流路102にレーザ光を照射し、第二質量分析スペクトルを取得するステップと、
ステップ25:第一質量分析スペクトルと第二質量分析スペクトルとを比較して、第一分離用流路101の第一領域171および第二領域172における複合体の形成を検出するステップと、
を含む。
以下、分析手順をさらに詳細に説明する。
まず、二つの分離用流路つまり第一分離用流路101および第二分離用流路102の両方に、液体試料を導入する。液体試料は、たとえば生体から抽出した試料であり、これを被分析用両性成分混合物として用い、これに両性成分混合物に両性担体を混合して得られる混合物を、たとえば液溜150および液溜152から二つの分離用流路に導入する(図1のS11)。両性担体としては、市販品等の公知の材料を用いることができる。または、液溜151および液溜153から二つの分離用流路に導入してもよい。
次に、マイクロチップ100を100%に近い湿度状態に保たれた恒湿箱の中に入れて等電点分離を行う(図1のS13)。等電点分離終了後、−25℃に温度を下げ、第一分離用流路101および第二分離用流路102中の液体試料を凍結させた後、15分程度の真空排気を行う。これにより、凍結乾燥が行われる。最後に、30℃に温度上昇させて2分待ち、第一分離用流路101および第二分離用流路102中の液体成分を完全に乾燥させる。
以上により、分離された成分が乾燥し、第一仕切板200で区画された所定の領域内に固定化される(図1のS15)。第一分離用流路101および第二分離用流路102には、たとえば500μmごとに第一仕切板200が作製されている。したがって、液体試料中の両性成分は各第一仕切板200の間に形成された500μmの区画ごとに、凍結乾燥された状態で存在する。この第一仕切板200の間隔を小さく取れば、さらに解像度のよいマイクロアレイチップが得られる。
なお、ここでは、流路上面202を解放した状態での等電点分離を例に説明したが、他の方法として、たとえばPDMS(polydimethylsiloxane:ポリジメチルシロキサン)等の剥離可能なシールを用いてマイクロチップ100の上面を封止した状態で等電点分離を行ってもよい。この場合、分離後、マイクロチップ100を−25℃に冷却し、第一分離用流路101内および第二分離用流路102内の液体を凍結させた後、PDMSシールをはがし、続いて凍結乾燥を行ってもよい。蓋としては、PDMSに限られず、分離操作後に剥離可能なものあればいずれも用いることができる。
次に、所定の成分と複合体を形成する結合物質を含む液体試薬を用いた結合反応を行うために、第一分離用流路101中に液体試薬を添加する(図1のS17)。液体試薬の添加方法は、適宜選択されるが、添加する液量が大きすぎると、液体試薬が第一仕切板200を超えて隣接する区画へ溢れ出すことになる。このため、添加方法としては、単純にピペッティングによる方法でもよいが、より高度に液量を限定できるインクジェット、アトマイザー、超音波噴霧、ディスペンサーなどの中から好適な物を用いることができる。このようにすれば、液体試薬の添加時に、第一仕切板200で区画された所定の領域内に存在する成分が、第一仕切板200を越えて他の区画に拡散することをさらに効果的に抑制できる。
液体試薬は、たとえば結合物質とバッファーを含む。バッファーとしては、PBS(Phosphate Buffered Saline)、TBS(Tris Buffered Saline)など通常の生物実験で用いられる溶液系を利用できる。
分離後の両性成分は乾燥した状態で流路の所定の区画に固定化されており、添加した液体試薬は少量であれば両性成分に染み込んでしまう。複合体形成反応(結合反応)に要する時間、結合反応溶液は液体状態で保たれる必要があることから、マイクロチップ100を湿度100%に近い状態の恒湿箱に入れて静置してもよい。結合反応のバッファー、温度、反応時間は、液体試薬に含まれる成分の性質により最適化される。
結合反応後、乾燥空気中などの雰囲気下でマイクロチップ100を昇温させて、あるいは凍結乾燥を行い、第一分離用流路101内の成分を再度完全に乾燥させる。
なお、リファレンス分離用流路として用いる第二分離用流路102については、第一分離用流路101と同一条件で分離を行い、結合反応に供さずそのままリファレンスとして使用する。
次に、第一分離用流路101および第二分離用流路102にマトリックス溶液を添加する。マトリックス溶液としては、たとえば0.3%トリフルオロ酢酸+30%アセトニトリル溶媒を用いたシナピン酸飽和溶液を用いることができる。添加方法としては、単純にピペッティングによる方法でもよいが、さらに液量を限定できるインクジェット、アトマイザー、超音波噴霧、ディスペンサーなどの中から好適な物を用いることができる。このようにすれば、マトリックス溶液の添加時に、第一仕切板200で区画された所定の領域内に存在する成分が、第一仕切板200を越えて他の領域に拡散することをさらに効果的に抑制できる。さらに、複合体の結合が外れにくくする観点では、マトリックス溶液中の有機溶媒濃度をできるだけ低く設定する方が好適である。
その後、第一分離用流路101および第二分離用流路102を有するマイクロチップ100をMALDI型質量分析計ターゲットホルダーに装着し、端からもう一方の端に向かって、マイクロチップ100上に設定した各領域の中央部を質量分析していく(図1のS19)。
測定後、各領域について、第一分離用流路101および第二分離用流路102の質量分析結果を相互に比較し、スペクトルピークに差が生じた部分を探索する。スペクトルピークに差が生じた成分が、液体試薬中の物質と複合体を形成した成分である。探索のためには眼でチャートを眺めてもよいが、比較のためのコンピュータープログラムを用いて比較する方が、より簡便で再現性のある結果を与える。
以上により、マイクロチップ100を用いて分離された両性成分のうち、第一仕切板200で区画されたどの領域に固定された成分に液体試薬中の物質が結合したのかを検定することができる。また、流路内における成分の分離状態を保存して複合体の形成位置を検出することができるので、複合体を形成した成分の等電点がわかる。そして、複合体を形成する成分の複合体形成前後の質量データおよび等電点から、成分を特定したり、候補物質を絞り込んだりすることができる。
このように、本実施形態によれば、生体から抽出した任意の試料中に含まれるタンパク質、ペプチド等の全両性成分を離散的にアレイ化した後、アレイ化済両性成分に対して、簡便に他の物質の結合検定を行うことができる。
以下の実施形態においては、第一の実施形態と異なる点を中心に説明する。
(第二の実施形態)
第一の実施形態においては、基板103の流路底面201に第一仕切板200を設ける場合を例に説明したが、基板103と仕切板とを別部材としてもよい。本実施形態では、基板103に配置される蓋部に仕切板を設ける例を説明する。なお、本実施形態においても、仕切板を第一分離用流路101に設ける場合を例に説明するが、第二分離用流路102についても同様の構成を適用できる。
本実施形態においても、図2に示した基本構成を有する基板103を用いる。ただし、第一分離用流路101および第二分離用流路102に第一仕切板200を設けなくてよい。
また、本実施形態のマイクロチップは、基板103の流路形成面の上部に配置される蓋部220を含む。図4(a)および図4(b)は、蓋部の構成を示す図である。図4(a)は、蓋部220の平面図であり、図4(b)は、図4(a)のB−B'断面図である。
図4(a)および図4(b)に示した蓋部220は、第一分離用流路101に対する蓋として使用される。蓋部220は、第一分離用流路101に着脱可能に設けられる。蓋部220の材料は、基板103と同一の材料であっても異なる材料であってもよい。蓋部220として、第一の実施形態で基板103の材料として例示したものの他、光硬化性樹脂等のプラスチック、ステンレス等を用いることもできる。
本実施形態のマイクロチップは、仕切板として、蓋部220に設けられる第二仕切板221を含む。
第二仕切板221は、蓋部220を基板103上に配置したときに、第一分離用流路101に対応する領域に形成されている。蓋部220を基板103上に配置したときに、第二仕切板221が基板103の幅全体にわたって第一分離用流路101の内部に突出するように構成されている。
蓋部220は、略平行に配置された複数の第二仕切板221と、複数の第二仕切板221を連結する支持部222とを含み、隣接する複数の第二仕切板221に挟まれた領域において、第一分離用流路101に、外部に連通する開口部が設けられている。こうすれば、結合反応後、蓋部220を設けた状態でマトリックス溶液を流路に導入することができる。また、第二仕切板221に挟まれた領域に分離された成分にレーザ光を直接照射して質量分析できる。第二仕切板221と支持部222とは互いに直交しており、蓋部220の平面形状が梯子形である。
第二仕切板221の突出高さは、第一分離用流路101の深さH以下である。第二仕切板221の高さh2つまり流路上面202から流路内部への突出高さは、第一分離用流路101に液体試薬を導入した際に、第一分離用流路101の所定の領域に固定化された成分が第二仕切板221を越えて他の領域に拡散しない程度の大きさに設定される。h2は、第一分離用流路101の深さHに対し、たとえばh2<Hの範囲で用いられる。また、流路底面201に固定化された成分が第二仕切板221を越えて流路延在方向に拡散することをさらに確実に抑制する観点で、h2=Hとすることが好ましい。
また、蓋部220を基板103上に配置したときに、第二仕切板221の両側面が第一分離用流路101の両側壁と接する構成とするとよい。また、第二仕切板221の幅と第一分離用流路101の幅が略等しい構成としてもよい。こうすれば、第二仕切板221に区画された領域に固定化された成分が液体試薬に接したときに、第二仕切板221を越えた拡散することをより一層効果的に抑制できる。
なお、複数の第二仕切板221の中心間距離および第二仕切板221で区画される領域の流路延在方向の長さは、たとえば第一の実施形態と同様に設定される。
本実施形態においても、第二仕切板221を設けることにより、第一の実施形態と同様の作用効果が得られる。
さらに、本実施形態においては、第一分離用流路101が第一仕切板200を有しない凹型流路であっても、結合反応前に基板103上に配置して、結合反応時の溶液移動を防ぐことができる。このため、分離時には第一分離用流路101内に第二仕切板221を設けない状態とすることができるため、基板103に第一仕切板200を作り込む第一の実施形態の構成に比べて、仕切板を設けることによる分離状態への影響をさらに確実に除去することができる。
なお、図4に示した蓋部220をマイクロチップの特定の位置に確実に装着するために、基板103に凹部を形成するとともに、蓋部220の凹部に対応する位置にこれに対応する形状の凸部を設けてもよい。
図9は、凹部を有するマイクロチップの構造の一例を示す平面図である。なお、図9においては、基板103の第一分離用流路101周辺だけを図示した。
図9においては、基板103に溝部240が設けられ、蓋部220に240に嵌合する突起部(不図示)が設けられている。具体的には、第一分離用流路101の周りに好適な間隔を取って、第一分離用流路101を取り囲む長方形型の溝部240が作製されている。そして、蓋部220の溝部240に対応する位置に溝部240にはめ込むことができる凸部(不図示)を作製しておくことにより、これらを定めておいた位置に装着することができる。また、蓋部220に設けられた第二仕切板221を第一分離用流路101の所定の位置に配置することができる。
なお、溝部240は、蓋部220を基板103上の所定の位置に着脱可能に固定することができればよく、その平面形状は長方形型に限るわけではない。たとえば、溝部240が2以上の複数の角を含む形状とすることにより、蓋部220をさらに確実に基板103上に固定することができる。
また、基板103に設ける凹部は、溝状(ストライプ状)には限られず、たとえば柱状の孔とすることもできる。
(第三の実施形態)
第一および第二の実施形態では、基板103および蓋部220の一方に仕切板を設ける構成を示したが、これらを組み合わせて用いてもよい。なお、本実施形態においても、以下、第一分離用流路101の構成を例に説明するが、第二分離用流路102についても第一分離用流路101と同様の構成を適用できる。
図5(a)および図5(b)は、本実施形態のマイクロチップの第一分離用流路101の構成を示す図である。図5(a)は、第一分離用流路101の平面図であり、図5(b)は、図5(a)のC−C'断面図である。
図5(a)および図5(b)に示したマイクロチップは、図3に示した基板103および図4に示した蓋部220の両方を備える。蓋部220を設けずに分離を行った後、結合反応時に蓋部220が基板103上に配置されてこれらが同時に用いられる。また、仕切板として、第一分離用流路101の底面に設けられるとともに、第一分離用流路101の幅全体にわたって設けられた第一仕切板200と、第一仕切板200の上部に対向して設けられた第二仕切板221とを有する。
第一仕切板200および第二仕切板221は、基板103上に蓋部220を配置した際に対向する位置に形成されている。蓋部220は、基板103から着脱可能に設けられ、基板103上に蓋部220を配置した状態で、第一仕切板200と第二仕切板221とが接するように構成する。つまり、第一仕切板200と第二仕切板221とが突き合わせとなっており、噛み合わせ構造となっている。
h1とh2とは、h1+h2≦Hを満たす条件において設定することができる。なお、第一仕切板200と第二仕切板221とは、基板103上に蓋部220を配置したときに、結合反応時の第一領域171と第二領域172との間の液体の移動が抑制される程度に近接して設けられればよく、また、第一仕切板200と第二仕切板221とが当接し、流路を遮断する構成、つまりh1+h2=Hとすることが好ましい。こうすることにより、結合反応時の成分の拡散をさらに確実に防ぐことができる。
本実施形態では、第一仕切板200と第二仕切板221とを組み合わせて用いるため、第一仕切板200の高さを低くした場合にも、結合反応時の第一領域171と第二領域172との間の液体の移動をさらに効果的に抑制できる。第一仕切板200の高さを低くすることにより、第一分離用流路101全体への液体試料の導入をさらに効率よく行い、分離に与える影響を低減することができる。このような高さh1の第一仕切板200が設けられた第一分離用流路101で試料中の成分を分離した後、流路高さHと等しくなるh2の高さの第二仕切板221を有する蓋部220を利用することにより、完全に液の移動を防いだ状態で結合反応を行うことができる。
(第四の実施形態)
以上の実施形態において、第一領域171および第二領域172において、液体を領域内に保持する構造を設けてよい。このような構造体として、本実施形態では複数のピラー(柱状体)を設ける。以下、第一の実施形態のマイクロチップの構成を例に説明する。
図6(a)および図6(b)は、本実施形態のマイクロチップの第一分離用流路101の構成を示す図である。図6(a)は、第一分離用流路101の平面図であり、図6(b)は図6(a)のD−D'断面図である。なお、本実施形態においても、第一分離用流路101の構成を例に説明するが、第二分離用流路102にも同様の構成を適用することができる。
図6(a)および図6(b)においては、第一分離用流路101の第一仕切板200によって区画された領域の中央部に、複数のピラー230を設ける。また、第一仕切板200を隔てて隣接する第一領域171および第二領域172において、第一分離用流路101の底面に複数の柱状体(ピラー230)が設けられ、複数のピラー230の側壁が、第一分離用流路101の側壁および第一仕切板200から離隔して設けられている。複数のピラー230を設けることにより、領域の中央部に水分を保持することができるため、結合反応時の溶液移動をより一層効果的に防ぐことができる。また、第一領域171および第二領域172の流路内壁の面積を増加させることにより、これらの領域内の液体をさらに速やかに乾燥させることができる。
ピラー230は、第一仕切板200と同時に一般的な微細加工法によって作製が可能である。ピラー230の形状および間隔は、分離に支障をきたさない程度に設定される。
たとえば、ピラー230の高さが第一分離用流路101の深さよりも低い構成とする。具体的には、ピラー230の高さh3を、h3<(2/3)H、好ましくはh3≦(1/2)Hとする。また、ピラー230の最大幅wは、たとえば0.1μm以上50μm以下の範囲に設定される。
なお、図6においては、ピラー230を円柱状としたが、ピラー230の形状に特に制限はなく、たとえば四角柱等の角柱としてもよい。
(第五の実施形態)
本実施形態は、以上の実施形態に記載のマイクロチップを用いた別の分析方法に関する。以下、第一の実施形態に記載のマイクロチップ100(図2)を2枚用いる場合を例に説明する。
図8(a)および図8(b)は、図2に示したマイクロチップを用いた分析方法を説明する平面図である。
本実施形態では、第一および第二のマイクロチップ100を用いる。そして、成分を分離するステップ13の前に、第一のマイクロチップ100の第一分離用流路101および第二分離用流路102に質量分析の対象となる液体試料を導入し、これらの流路で液体試料中の成分を等電点分離により粗分離するステップをさらに含む。また、成分を分離するステップ13以降のステップを、第二のマイクロチップ100において行う。成分を分離するステップ13において、液体試料中の成分を等電点分離により粗分離するステップよりも狭いpH領域において、液体試料中の成分を等電点分離する。
以下、さらに具体的に説明する。
まず、図8(a)に示したように、液体試料中の全両性成分を検定するため、相対的に広いレンジのpH勾配、たとえばpH3〜10を形成する両性担体を用いて等電点分離を行って検定を行う。検定方法としては、以上の実施形態で前述した方法を用いる。
ただし、生体由来サンプルではタンパク質数が多く、同一位置に多くの成分が存在する可能性が高い。
そこで、陽性候補のシグナルが得られた場合、第2段階として、陽性候補シグナルを含み、相対的に狭いレンジのpH勾配を形成する両性担体を用いて等電点分離を行い、さらに詳細な検定を行うことができる。
たとえば、図8(a)に示したように、pH6付近のスポット104に陽性シグナルが検出された場合、図8(b)に示したように、同一形状の別のマイクロチップ100を用い、pH5以上7以下の両性担体を用いて再解析を行う。これにより、スポット104中の成分をさらに細かく分離して、液体試薬中の物質と複合体を形成する成分のスポット105を検出することができる。
本実施形態においては、分離可能なpH領域を狭くして、同一サンプルを再検定するため、同じ形状の分離用流路と同じ試料を用いながら、試料中のpH5未満とpH7を超える等電点成分を分離用流路の両端の液溜中に追い出すことができ、結果的に単位長さあたりの分離済成分種がより減少し、より一層明瞭な検定結果を与えることができる。
以上、図面を参照して本発明の実施形態について述べたが、これらは本発明の例示であり、上記以外の様々な構成を採用することもできる。
たとえば、以上の実施形態に記載のマイクロチップの流路形成面に、一または二以上のアライメントマークを設けてもよい。これにより、結合反応に用いる液体試薬の導入および質量分析時の位置合わせをさらに正確に行うことができる。
(実施例1)
以下、第一の実施形態のマイクロチップの場合を例に、さらに具体的な実施例を説明する。
基板103の材料として、石英ガラスを用いる。基板103上に、露光およびドライエッチングにより並列する2本の直線状の微細流路を作製する。そして、基板103表面をオゾンアッシング処理した後、第一分離用流路101および第二分離用流路102上に、3M社製ポリオレフィンマイクロシーリングテープ9795を貼り蓋として用いる。
得られたマイクロチップ100を用いて、試料の等電点分離を行う。第一分離用流路101および第二分離用流路102に連通する液溜150ならびに液溜152から、被分析試料としてニュートラアビジン水溶液を導入する。導入後、数分放置すると、毛細管現象により試料が反対側の液溜、つまり液溜151および液溜153に達する。
次に、プラス側の液溜にはリン酸溶液、マイナス側の液溜には水酸化ナトリウムを満たす。液溜150、液溜151、液溜152および液溜153中に、それぞれ、第一電極160、第二電極161、第一電極162および第二電極163を配置し、各分離用流路について、電極間に直流電圧を印加する。具体的には、流路長約35mmに対し、両端の液溜間に直流電圧2500Vを印加する。
第一分離用流路101および第二分離用流路102の2レーンの等電点分離を並行して行う。通電開始から約2分後に等電点分離が完了する。第一分離用流路101および第二分離用流路102内には、ニュートラアビジンの収束バンドが1か所に形成される。ニュートラアビジンは、第一仕切板200に区画された領域のうち、pI6.3付近の領域に分離される。
その後、液体窒素で冷却した水平金属台(不図示)上にマイクロチップ100を移し、第一分離用流路101および第二分離用流路102内の液体を凍結させる。しばらく静置すると、蓋として使用したシールが自然剥離する。凍結した試料を凍結乾燥させて水分を除去し、ニュートラアビジンを第一分離用流路101および第二分離用流路102に固体状で固定する。
一方、あらかじめビオチン化ペプチドをPBSバッファーに溶解した反応液を作製しておく。ここで使用するペプチドの配列は、
Biotin−LYPIANGNNQSPVDIK−COOH(配列番号1)
である。なお、各アミノ酸残基は一文字表記とした。
凍結乾燥後のマイクロチップ100をXY電動ステージ上に設置し、あらかじめマイクロチップ100上に設けておいたマークを用いて、XY方向のアライメントを行う。流路に沿ってXY電動ステージを移動し、上述したビオチン化ペプチド溶液を添加する。添加には塗布量を微量コントロールできるディスペンサーを用いる。
これを室温下に静置することにより乾燥までに5分程度を要し、この間に結合反応が終了する。その後、マイクロチップ100を30℃で2分加熱し、水分を完全に蒸発させる。
また、結合反応とは別に、マトリックスとしてシナピン酸の飽和溶液を作製しておく。
そして、乾燥後のマイクロチップ100の表面に対し、このマトリックス溶液を噴霧する。たとえばアトマイザーを使用した場合、マトリックス溶液が、直径500μm以下の小粒子状でマイクロチップ100表面、ならびに分離用流路内に付着する。これらは、マイクロチップ100の第一分離用流路101内に残っている結合反応済サンプルと、リファレンス第二分離用流路102内に残っている非結合反応サンプルに付着し、その粉末をマトリックス水滴に溶け込ませる。このとき、周辺温度をコントロールして、これらを数十秒で乾燥させると、一度マトリックスと混合した各成分は乾燥する過程を経ることにより混晶を形成する。
以上の手順で準備したマイクロチップ100を、MALDI−TOF型質量分析計のターゲットとして直接利用する。このとき、質量分析計の標準ターゲットと同形状の外形を持つアダプターを作製し、そのアダプター上にマイクロチップを装着して測定を行ってもよい。アダプターはコンピュータ制御のXYステージ上に装着されており、コントローラーコンピュータにより位置制御される。
第一分離用流路101の一端から0.5mmごとにリニアモードで質量分析を行うことにより、結合済試料の質量スペクトルを取得することができる。同様に、第二分離用流路102の一端から質量分析を行うことにより、非結合サンプルに対する質量スペクトルを取得することができる。
図7(a)および図7(b)は、各質量スペクトルを模式的に示す図である。図7(a)は、第二分離用流路102の測定結果に対応し、図7(b)は、第一分離用流路101の測定結果に対応する。
図7(a)に示したように、リファレンス流路として用いた第二分離用流路102からは、ニュートラアビジンのピークのみが、その収束位置、図中m/z=[β]の位置に検出される。なお、測定すると、ニュートラアビジンの4量体由来のピーク(不図示)以外に、単量体と思われるもののピークが、m/z=14511(=[β])付近に強く検出される。
また、レーザ強度等の測定条件を最適化した状態で第一分離用流路101の結合済試料に対する質量スペクトルを取得すると、図7(b)に示したように、第一分離用流路101の全体からビオチン化ペプチドの質量ピークが、m/z=1968(=[α])付近に得られる。
さらに、ニュートラアビジンが等電点分離により収束していた位置においては、ニュートラアビジンとビオチン化ペプチドが結合したと考えられるm/z=16480付近にピークを検出することができる。この値は、各々の分子の質量電荷比を加算した値とよく一致する。
なお、実際には結合反応は100%進むわけではなく、両成分の単独質量にあたるm/z=14511と、m/z=1968のピーク信号も同時に検出される。ニュートラアビジンは4量体であり、約58kDの位置にも同様のピークシフト(不図示)が見られるが、そのシグナル強度は低く、単量体と考えられるシグナルが強く観測される。
このようにして取得された第一分離用流路101および第二分離用流路102の質量スペクトルを比較することにより、どの位置で結合検定用のサンプルが結合したのかを検出することができる。場合によっては、結合物の質量電荷比に近い値の別の要素が同一位置に存在する可能性もあるが、通常、質量分析計の分解能はこれらを判別可能な程度の高さである。
なお、ここで陽性を示したピークの同定については、ペプチドマスフィンガープリント法を流路上で行う方法や、該当する等電点領域を対象として2D−PAGE(2次元ポリアクリルアミドゲル電気泳動)や従来法のカラム操作などで精密解析する方法が用いられる。
また、本実施例の方法を用いることにより、さらに多数の成分が含まれる液体試料についても、流路内で確実に分離し、第一仕切板200で区画された異なる領域に固定化することができる。そして、異なる領域に固定化されたそれぞれの成分について、液体試薬中の物質との複合体の形成の有無を検出することができる。
また、本実施例では、液体試料中に結合試薬と複合体を形成する成分が含まれる場合について説明したが、第一分離用流路101と第二分離用流路102について得られた質量分析スペクトルにピークシフトが生じない場合、液体試料中にそのような成分が含まれていないことがわかる。
実施形態における分析手順を示すフローチャートである。 実施形態におけるマイクロチップの構成を示す平面図である。 図2のマイクロチップの分離用流路の構成を示す図である。 図2のマイクロチップの分離用流路の構成を示す図である。 図2のマイクロチップの分離用流路の構成を示す図である。 図2のマイクロチップの分離用流路の構成を示す図である。 実施例における試料の分離例を示す図である。 実施形態におけるマイクロチップを用いた分析方法を説明する図である。 図2のマイクロチップの分離用流路の構成を示す平面図である。
符号の説明
100 マイクロチップ
101 第一分離用流路
102 第二分離用流路
103 基板
104 スポット
105 スポット
150 液溜
151 液溜
152 液溜
153 液溜
160 第一電極
161 第二電極
162 第一電極
163 第二電極
171 第一領域
172 第二領域
200 第一仕切板
201 流路底面
202 流路上面
203 流路側壁
220 蓋部
221 第二仕切板
222 支持部
230 ピラー
240 溝部

Claims (16)

  1. 基板と、
    前記基板に溝状に設けられた流路と、
    前記流路に設けられる仕切板と、
    を含み、
    前記流路全体にわたって液体試料が導入されて、前記液体試料中の成分が、所定の性質に基づき、前記仕切板により区画される第一および第二領域に分離されて、固定化されるとともに、
    前記流路の前記第一および第二領域に、所定の成分と複合体を形成する物質を含む液体試薬が導入され、
    前記仕切板が、
    前記流路の幅全体にわたって設けられるとともに、
    前記流路内で前記第一および第二領域に分離されて固定化された前記成分が前記液体試薬と接した際に、前記第一および第二領域の一方から他方へ当該仕切板を越えて拡散することを抑制するように構成された、マイクロチップ。
  2. 請求項1に記載のマイクロチップにおいて、
    前記流路の側壁と前記仕切板とが連続して設けられる、マイクロチップ。
  3. 請求項1または2に記載のマイクロチップにおいて、
    前記仕切板が、前記流路の底面に設けられた第一仕切板を含み、
    前記第一仕切板の高さが、前記流路の深さよりも低いマイクロチップ。
  4. 請求項3に記載のマイクロチップにおいて、
    複数の前記第一仕切板が、前記流路の延在方向に沿って配置された、マイクロチップ。
  5. 請求項1乃至4いずれかに記載のマイクロチップにおいて、
    前記第一および第二領域において、前記流路の底面に複数の柱状体が設けられ、
    前記複数の柱状体の側壁が、前記流路の側壁および前記仕切板から離隔して設けられたマイクロチップ。
  6. 請求項1乃至5に記載のマイクロチップにおいて、
    前記流路が、pH勾配の形成される等電点分離領域を含み、
    前記第一および第二領域が前記等電点分離領域内に設けられ、
    前記等電点分離領域に電界を印加する一対の電極をさらに備えるマイクロチップ。
  7. 請求項1乃至6いずれかに記載のマイクロチップにおいて、
    前記基板の前記流路の形成面の上部に配置される蓋部を含み、
    前記仕切板が、前記蓋部に設けられた第二仕切板を含み、
    前記蓋部を前記基板上に配置したときに、前記第二仕切板が前記流路の幅全体にわたって前記流路の内部に突出するように構成された、マイクロチップ。
  8. 請求項7に記載のマイクロチップにおいて、
    前記蓋部が、
    略平行に配置された複数の前記第二仕切板と、
    前記複数の第二仕切板を支持する支持部と、
    を含み、
    隣接する前記複数の第二仕切板に挟まれた領域において、前記流路に、外部に連通する開口部が設けられた、マイクロチップ。
  9. 請求項7または8に記載のマイクロチップにおいて、
    前記基板に溝部が設けられ、
    前記蓋部に前記溝部に嵌合する突起部が設けられたマイクロチップ。
  10. 請求項7乃至9いずれかに記載のマイクロチップにおいて、
    前記仕切板が、前記流路の底面に設けられるとともに、前記流路の幅全体にわたって設けられた第一仕切板を含み、
    前記第二仕切板が、前記第一仕切板の上部に対向して設けられる、マイクロチップ。
  11. 請求項1乃至10いずれかに記載のマイクロチップにおいて、
    質量分析のターゲット板として用いられる、マイクロチップ。
  12. 請求項1乃至11いずれかに記載のマイクロチップにおいて、
    前記流路と、
    前記流路の近傍に設けられるとともに、前記流路に沿って設けられた参照流路と、
    を含み、
    前記流路および前記参照流路に前記仕切板が設けられ、
    前記流路に設けられた前記仕切板に対応する位置に前記参照流路の前記仕切板が設けられたマイクロチップ。
  13. 請求項1乃至12いずれかに記載のマイクロチップの使用方法であって、
    前記流路に、質量分析の対象となる液体試料を導入し、前記液体試料中の成分を前記第一および第二領域に分離するステップと、
    成分を分離する前記ステップの後、分離された成分を前記第一および第二領域に固定化するステップと、
    成分を固定化する前記ステップの後、前記第一領域と前記第二領域との間に前記仕切板を配置した状態で、前記流路に、所定の成分と複合体を形成する物質を含む液体試薬を導入し、前記所定の成分と前記物質との複合体を形成するステップと、
    を含むマイクロチップの使用方法。
  14. 請求項13に記載のマイクロチップの使用方法において、
    複合体を形成する前記ステップの後、前記液体試料のレーザ脱離イオン化質量分析を行うステップを含み、
    レーザ脱離イオン化質量分析を行う前記ステップが、
    前記流路にレーザ光を照射し、第一質量分析スペクトルを取得するステップ
    前記第一質量分析スペクトルに基づき、前記第一および第二領域における前記複合体の形成の有無を検出するステップと、
    を含むマイクロチップの使用方法。
  15. 請求項12に記載のマイクロチップの使用方法であって、
    前記流路および前記参照流路に、質量分析の対象となる液体試料を導入し、前記液体試料中の成分を前記第一および第二領域に分離するステップと、
    成分を分離する前記ステップの後、分離された成分を前記第一および第二領域に固定化するステップと、
    成分を固定化する前記ステップの後、前記第一領域と前記第二領域との間に前記仕切板を配置した状態で、前記流路に、所定の成分と複合体を形成する物質を含む液体試薬を導入し、前記所定の成分と前記物質との複合体を形成するステップと、
    複合体を形成する前記ステップの後、前記液体試料のレーザ脱離イオン化質量分析を行うステップと、
    を含み、
    レーザ脱離イオン化質量分析を行う前記ステップが、
    前記流路にレーザ光を照射し、第一質量分析スペクトルを取得するステップと、
    前記参照流路にレーザ光を照射し、第二質量分析スペクトルを取得するステップと、
    前記第一質量分析スペクトルと前記第二質量分析スペクトルとを比較して、前記流路の前記第一および第二領域における前記複合体の形成を検出するステップと、
    を含むマイクロチップの使用方法。
  16. 請求項13乃至15いずれかに記載のマイクロチップの使用方法において、
    第一および第二の前記マイクロチップを用い、
    成分を分離する前記ステップの前に、第一の前記マイクロチップの前記流路に質量分析の対象となる液体試料を導入し、前記流路で前記液体試料中の成分を等電点分離により粗分離するステップをさらに含み、
    成分を分離する前記ステップ以降のステップを、第二の前記マイクロチップにおいて行い、
    成分を分離する前記ステップにおいて、液体試料中の成分を等電点分離により粗分離する前記ステップよりも狭いpH領域において、液体試料中の成分を等電点分離する、マイクロチップの使用方法。
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