以下に本発明の実施の形態を説明するが、本発明の構成要件と、明細書又は図面に記載の実施の形態との対応関係を例示すると、次のようになる。この記載は、本発明をサポートする実施の形態が、明細書又は図面に記載されていることを確認するためのものである。従って、明細書又は図面中には記載されているが、本発明の構成要件に対応する実施の形態として、ここには記載されていない実施の形態があったとしても、そのことは、その実施の形態が、その構成要件に対応するものではないことを意味するものではない。逆に、実施の形態が構成要件に対応するものとしてここに記載されていたとしても、そのことは、その実施の形態が、その構成要件以外の構成要件には対応しないものであることを意味するものでもない。
本発明の一側面の信号処理装置は、筐体において所定のデータの信号であるデータ信号を信号処理する信号処理部(例えば、図1のLSI31−1乃至LSI31−3のいずれか)としての信号処理装置であって、有線を介して送信されてくる注入信号に同期して、他の信号処理部と無線を介して前記データ信号の送受信を行うキャリア信号を生成するように発振する注入同期発振手段(例えば、図2の注入同期発振部55)と、前記注入同期発振手段により生成された前記キャリア信号で、前記他の信号処理部と無線を介して前記データ信号の送受信を行う通信手段(例えば、図2の通信部53)と、前記筐体における前記他の信号処理部および前記筐体の壁面との位置関係によって変化する電波の伝搬経路のうちの最も強い電波の伝搬経路によって決まる、前記キャリア信号の位相と前記他の信号処理部から無線を介して送信される前記データ信号の位相との位相差に基づいて、前記他の信号処理部から無線を介して送信される前記データ信号の位相に前記キャリア信号の位相を同期させる同期手段(例えば、図8の位相同期部182)とを備える。
前記注入同期発振手段は、前記注入信号を送信してくる発振器(例えば、図18の発振器261)または他の信号処理部における前記注入信号の位相と、受信した前記注入信号の位相とを同期させ、位相を同期させた前記注入信号に同期して、前記キャリア信号を生成するように発振することができる。
前記信号処理装置には、前記信号処理部を特定する情報に、前記キャリア信号の位相と前記信号処理部から無線を介して送信される前記データ信号の位相との前記位相差を対応づけたテーブル(例えば、図9の位相遅延量テーブル201)を保持する保持手段(例えば、図8の分類部181)をさらに設け、前記同期手段は、前記保持手段により保持されているテーブルにおいて前記信号処理部を特定する情報に対応づけられている前記位相差に基づいて、前記他の信号処理部から無線を介して送信される前記データ信号の位相に前記キャリア信号の位相を同期させることができる。
前記信号処理装置には、前記テーブルにおいて前記他の信号処理部を特定する情報に対応づけられている前記位相差と、検出された前記キャリア信号の位相と前記データ信号の位相との位相差との不一致を検知する検知手段(例えば、位相遅延量テーブル201における遅延時間と検出された位相差との著しい不一致が、複数の送信元との間で発生したことを検知する手段)をさらに設け、前記通信手段には、前記検知手段によって著しい不一致が検知された場合、無線を介しての前記データ信号の送受信を停止させることができる。
前記信号処理装置には、複数の前記信号処理部に電力線(例えば、図17の電力線242)を介して電力を供給する電源(例えば、図17の電源241)をさらに設け、前記注入信号は、前記電力線である有線を介して、前記他の信号処理部または前記発振器から送信される。
本発明の一側面の信号処理方法は、筐体において所定のデータの信号であるデータ信号を信号処理する信号処理部としての信号処理装置の信号処理方法であって、有線を介して送信されてくる注入信号に同期して、他の信号処理部と無線を介して前記データ信号の送受信を行うキャリア信号を生成する生成ステップ(例えば、図2の注入同期発振部55による処理)と、前記生成ステップの処理により生成された前記キャリア信号で、前記他の信号処理部と無線を介して前記データ信号の送受信を行う送受信ステップ(例えば、図13のステップS34,S39)と、前記筐体における前記他の信号処理部および前記筐体の壁面との位置関係によって変化する電波の伝搬経路のうちの最も強い電波の伝搬経路によって決まる、前記キャリア信号の位相と前記他の信号処理部から無線を介して送信される前記データ信号の位相との位相差に基づいて、前記他の信号処理部から無線を介して送信される前記データ信号の位相に前記キャリア信号の位相を同期させる同期ステップ(例えば、図13のステップS44)とを含む。
図1は、本発明の一実施の形態である信号処理装置の例を示す図である。
図1の信号処理装置は、例えば、画像信号処理装置またはパーソナルコンピュータなどである。図1の信号処理装置の筐体1の内部には、ユニット11およびユニット12が配置されている。例えば、ユニット11またはユニット12は、それぞれ、1つの基板として構成されている。ユニット11またはユニット12は、有線である接続線13を介して接続される。ユニット11には、信号処理部であるLSI(Large Scale Integration)31−1およびLSI31−2が配置されている。ユニット12には、信号処理部であるLSI31−3が配置されている。
筐体1は、内部に、少なくとも1つの安定でかつ位相雑音の低い発振を可能とする発振器を備える。以下、安定でかつ位相雑音の低い発振を可能とする発振器を注入信号発振器と称する。
ユニット11およびユニット12は、それぞれ注入同期発振器を備える。例えば、LSI31−1乃至LSI31−3が、それぞれ注入同期発振器を備える。
また、ユニット11およびユニット12のいずれか、またはLSI31−1乃至LSI31−3のいずれかに備えられている注入同期発振器のいずれかを、注入信号発振器とすることができる。
注入信号発振器と、注入同期発振器のそれぞれとは、有線を介して接続される。即ち、注入信号発振器から、注入同期発振器のそれぞれに送信される注入信号は、有線を介して伝送される。また、ユニット11およびユニット12、並びにLSI31−1乃至LSI31−3に供給されるメインクロックも、有線を介して伝送される。言い換えれば、ユニット11およびユニット12、並びにLSI31−1乃至LSI31−3は、注入信号およびメインクロックを伝送する有線により接続されている。
メインクロックは、ユニット11若しくはユニット12、またはLSI31−1乃至LSI31−3のそれぞれにおける信号処理の基準となる信号である。
このような構成により、少なくとも1つの安定でかつ位相雑音の低い発振を可能とする注入信号発振器の発振周波数に、注入同期発振器のそれぞれの周波数を同期させることができる。
なお、ユニット11またはユニット12には、マイクロコンピュータ、メモリ若しくはハードディスクなどの蓄積メディア、または機械部品を設けるようにしてもよい。
LSI31−1乃至LSI31−3は、所定のデータの信号であるデータ信号を、それぞれ信号処理する。
また、LSI31−1乃至LSI31−3はそれぞれ通信機能を備え、無線により、データ信号を送信するか受信する。LSI31−1乃至LSI31−3の無線通信のキャリア周波数は、注入信号発振器の発振周波数、すなわち、注入信号の周波数のm分のn倍に選ばれる。ここで、mは整数であり、nは整数である。
なお、キャリア周波数をメインクロックの周波数のj分のk倍に選ぶことで、メインクロックを、キャリアから生成することができる。ここで、jは整数であり、kは整数である。この場合、ユニット11またはユニット12の間で、メインクロックを伝送する必要がなくなるので、ユニット11とユニット12とを接続する配線の本数を少なくとも1本減らすことができ、配線を簡素化することができる。
また、LSI31−1およびLSI31−2のように、それぞれ同一の基板であるユニット11に配置されている場合は、LSI31−1とLSI31−2とは有線を介して通信を行なってもよい。
なお、以下、LSI31−1乃至LSI31−3を、特に区別する必要がない場合、単にLSI31と称する。
図2は、LSI31の構成の例を示すブロック図である。
LSI31は、有線入出力インターフェース51、信号処理部52、通信部53、アンテナ54、および注入同期発振部55から構成される。以下、有線入出力インターフェース51を、有線入出力I/F(Interface)51と称する。
有線入出力I/F51は、有線を介して送信されてくる入力データを入力するか、または、出力データを有線を介して出力する。すなわち、有線入出力I/F51は、有線を介して送信されてくる入力データを受信するか、または、出力データを有線を介して送信する。
なお、有線は、いわゆる電気信号を伝送する電線に限らず、光ファイバなどを含む。
有線入出力I/F51は、例えば、シリアルインターフェースとして構成されている。有線入出力I/F51は、有線を介して受信した各種のデータ信号を信号処理部52に供給するとともに、信号処理部52より供給された各種のデータ信号を有線を介して送信する。また、有線入出力I/F51は、有線を介して受信した制御信号を信号処理部52に供給する。
信号処理部52は、有線入出力I/F51または通信部53より供給されたデータ信号に対して、任意の信号処理を行なう。信号処理部52は、信号処理を行ったデータ信号を有線入出力I/F51または通信部53に供給する。また、信号処理部52は、有線入出力I/F51より供給された制御信号に応じて、任意の処理を行ない、その結果得られたデータまたは制御信号を同期部73に供給する。
信号処理部52は、入力されたデータ信号に対して、デジタルフィルタ処理や信号の置き換え処理を行なう。例えば、処理されるデータ信号が画像データまたは音声データの信号である場合、信号処理部52は、より高解像度の画像を生成する処理であるDRC(Digital Reality Creation)(商標)処理やデコードまたはエンコードなどを行なう。
通信部53は、アンテナ54を介して、筐体1内の複数のLSI31のいずれかであって、他のLSI31と無線を介して通信する。通信部53は、変調部71、復調部72、および同期部73から構成される。変調部71は、アンテナ54を介して送信するデータ信号を変調し、復調部72および同期部73は、アンテナ54によって受信されたデータ信号を復調する。
変調部71は、注入同期発振部55から供給されるキャリア信号で、信号処理部52から供給されるデータ信号であって、他のLSI31に無線を介して送信するデータ信号を変調する。変調部71は、例えば、ASK(Amplitude Shift Keying)方式またはPSK(Phase Shift Keying)方式など、所定の方式により、キャリア信号でデータを変調する。
変調部71は、変調したデータ信号をアンテナ54に供給する。
復調部72は、他のLSI31から無線を介して送信されてくるデータ信号をアンテナ54において受信することにより、アンテナ54から供給される電気信号であるデータ信号を、注入同期発振部55から供給され、同期部73において位相が同期させられたキャリア信号で復調する。復調部72は、ASK方式またはPSK方式など、データ信号を送信してくる他のLSI31におけるデータ信号の変調方式に対応する復調方式で、データ信号をキャリア信号で復調する。
復調部72は、復調したデータ信号を信号処理部52に供給する。また、復調部72は、アンテナ54から供給される、他のLSI31から無線を介して送信されてくるデータ信号を受信して得られた電気信号であるデータ信号を同期部73に供給する。
同期部73は、復調部72から供給されるデータ信号の位相に、注入同期発振部55から供給されるキャリア信号の位相を同期させる。同期部73は、位相を同期させたキャリア信号を復調部72に供給する。
アンテナ54は、変調部71から供給される変調されたデータ信号を、電波として放射する。また、アンテナ54は、他のLSI31から送信されてくる電波であるデータ信号を受信する。アンテナ54は、電波であるデータ信号を受信して得られた電気信号であるデータ信号を復調部72に供給する。
注入同期発振部55は、他のLSI31または注入信号発振器から有線を介して送信されてくる注入信号に同期して、他のLSI31に無線を介して送信するデータ信号を変調するか、他のLSI31から無線を介して送信されてくるデータ信号を復調するためのキャリア信号を生成するように発振する。
注入同期発振部55は、注入信号を送信してくる注入信号発振器または他のLSI31における注入信号の位相と、受信した注入信号の位相とを同期させ、位相を同期させた注入信号に同期して、キャリア信号を生成するように発振する。
また、有線入出力I/F51、信号処理部52、および通信部53はメインクロックに同期して動作する。
図3は、注入同期発振部55の構成例を示すブロック図である。
注入同期発振部55は、注入同期発振器91、およびn/mてい倍回路92から構成される。
注入同期発振器91は、他のLSI31または注入信号発振器から有線を介して送信されてくる注入信号に同期して発振する。
また、注入同期発振器91は、外部から入力される制御電圧信号によって、注入信号を送信してくる注入信号発振器または他のLSI31における注入信号の位相と、受信した注入信号の位相とを同期させ、位相を同期させた注入信号に同期して発振する。すなわち、注入同期発振器91は、注入信号の周波数に同期した周波数の信号であって、注入信号を送信してくる注入信号発振器または他のLSI31における注入信号の位相と同期した位相の信号をn/mてい倍回路92に供給する。
ここで、図4を参照して、注入信号を送信してくる発振器または他のLSIにおける注入信号の位相と、受信した注入信号の位相との間に生じる位相差について説明する。
図4に例示されるユニット11上には、LSI31−1およびLSI31−2が配置されている。LSI31−1は通信部53−1を備え、LSI31−2は通信部53−2および注入信号発振器である発振器121を備える。
発振器121は、安定でかつ位相雑音の低い発振を行ない、その出力を注入信号として通信部53−1および通信部53−2に有線を介して送信する。即ち、発振器121の発振周波数に、通信部53−1および通信部53−2が備える注入同期発振部55のそれぞれの発振周波数が同期させられる。
しかしながら、発振器121から通信部53−1または通信部53−2までの注入信号の伝送路である有線の長さ、すなわち物理的な距離が異なるため、図5に示すように、発振器121における注入信号の位相と、通信部53−1または通信部53−2が受信した注入信号の位相との間に位相差が生じてしまう。
このとき、注入同期発振器91は、制御電圧信号の電圧によって、発振の位相を変化させるように構成されているので、通信部53−1または通信部53−2の注入同期発振器91は、制御電圧信号が調整されることによって、発振器121における注入信号の位相と、注入同期発振器91の発振の位相、すなわち、注入同期発振器91から出力される信号の位相とを同期させ、発振器121のおける注入信号に周波数と位相とを同期して発振することができる。
制御電圧信号は、LSI31の外部から与えられる信号であって、例えば、注入同期発振器91を構成し、その容量の変化によって注入同期発振器91の発振の位相を変化させるバラクタダイオードに印加される。制御電圧信号は、位相差に応じて、可変抵抗などにより人間によって調整されるようにしてもよい。また、例えば、制御電圧信号は、5.0mV, 5.1mV, 5.2mV,…のように、0.1mVなどの所定の電圧毎に、変化させるようにしてもよい。
n/mてい倍回路92は、注入同期発振器91より出力された信号から、その信号の周波数をm分のn(mおよびnは整数)倍した周波数の信号を生成する。n/mてい倍回路92は、生成した信号をキャリア信号として出力する。
即ち、注入同期発振部55は、他のLSI31または注入信号発振器から有線を介して送信されてくる注入信号の周波数のm分のn倍の周波数であるキャリア信号を生成するように発振する。
このような構成により、LSI31−1乃至LSI31−3のそれぞれの注入同期発振部55において、周波数と位相とが同期したキャリア信号がそれぞれ生成される。
次に、図6乃至図9を参照して、通信部53の変調部71、復調部72、および同期部73のそれぞれの構成について説明する。
図6は、図2の変調部71の構成例を示すブロック図である。図6で示される変調部71は、ASK変調方式でデータ信号を変調する。
変調部71は、乗算器141を含むように構成される。乗算器141は、注入同期発振部55から供給されるキャリア信号と、信号処理部52から供給されるデータ信号とを乗算することでデータ信号を変調する。
なお、信号処理部52から供給されるデータ信号が、乗算器141に供給される前に、通信路符号化されてもよい。
また、変調方式として、ASK変調に限らず、例えば、FSK変調またはPSK変調などを採用するようにしてもよい。
図7は、図2の復調部72の構成例を示すブロック図である。図7で示される復調部72は、ASK変調方式で変調されているデータ信号を復調する。
復調部72は、乗算器161および信号再生回路162から構成される。
乗算器161は、アンテナ54から供給されるデータ信号と、同期部73から供給される、アンテナ54から供給されるデータ信号の位相に同期したキャリア信号である同期キャリア信号とを乗算することでデータ信号を復調する。即ち、乗算器161は、同期検波方式でデータ信号を復調する。乗算器161は、乗算の結果得られた復調したデータ信号を信号再生回路162に供給する。
また、乗算器161は、復調したデータ信号を、同期部73に供給する。
信号再生回路162は、例えば、Dフリップフロップから構成され、メインクロックを基準にして、乗算器161において復調されたデータ信号から、メインクロックに同期したデータ信号を再生する。信号再生回路162は、再生されたデータ信号を信号処理部52に供給する。
なお、信号処理部52から供給されるデータ信号が、乗算器141に入力される前に通信路符号化された場合には、信号再生回路162は、通信路符号化に応じた復調方式で、データ信号を復調するようにしてもよい。
また、復調方式として、ASK復調に限らず、受信したデータ信号がFSK変調またはPSK変調などの変調方式で変調されている場合には、その変調方式に対応した、例えば、FSK復調またはPSK復調などで、データ信号を復調するようにしてもよい。
図8は、図2の同期部73の構成例を示すブロック図である。
同期部73は、分類部181および位相同期部182から構成される。
分類部181は、信号処理部52から供給される複数のLSI31のそれぞれを特定する情報に、注入同期発振部55から供給されるキャリア信号の位相と復調部72から供給される複数のLSI31のそれぞれから無線を介して送信されてくるデータ信号の位相との位相差を対応づけて記憶する。
より詳細には、図9の分類部181の構成例に示すように、分類部181は、位相遅延量テーブル201を有する。信号処理部52から供給される複数のLSI31のそれぞれを特定する情報に、注入同期発振部55から供給されるキャリア信号の位相と復調部72から供給される複数のLSI31のそれぞれから無線を介して送信されてくるデータ信号の位相との位相差が、位相遅延量テーブル201に対応づけられて格納される。
ここで、図10および図11を参照して、注入同期発振部55から供給されるキャリア信号の波形および復調部72から供給される複数のLSI31のそれぞれから無線を介して送信されてくるデータ信号の波形と、位相遅延量テーブル201との関係について説明する。
図10は、図1の筐体1内に設けられている、図示せぬ所定のLSI31におけるキャリア信号の波形、およびLSI31−1乃至LSI31−3のそれぞれから無線を介して送信されてくるデータ信号を受信した所定のLSI31における、受信し、復調したデータ信号であって、注入同期発振部55からのそのままのキャリア信号で、復調したデータ信号の波形を表す図である。
図10における、所定のLSI31におけるキャリア信号の波形は、所定のLSI31におけるキャリア信号が分周された波形、位相同期用のプリアンブル波形、または位相同期用の波形であってもよい。
なお、図10に、LSI31−1乃至LSI31−3のいずれかから無線を介して送信されてくるデータ信号を理想的な方形波として表しているが、LSI31−1乃至LSI31−3のいずれかから無線を介して送信されてくるデータ信号の波形は、実際には、崩れている。
図10において、所定のLSI31におけるキャリア信号と、LSI31−1から無線を介して送信されてくるデータ信号とは、周波数は一致するが、位相が異なる。具体的には、LSI31−1から無線を介して送信されてくるデータ信号には、所定のLSI31におけるキャリア信号に対して、LSI31−1と所定のLSI31との間の直接波が伝搬される直線の経路、またはLSI31−1および所定のLSI31と筐体1の壁面との位置関係並びに筐体1内の複数のユニットの配置によって変化する反射波が伝搬される経路のうち、所定のLSI31まで、より強い電波が伝搬される経路の距離で決まるaaa[μsec]の遅延時間がある。
同様に、所定のLSI31におけるキャリア信号と、LSI31−2から無線を介して送信されてくるデータ信号とは、周波数は一致するが、位相が異なる。具体的には、LSI31−2から無線を介して送信されてくるデータ信号には、所定のLSI31におけるキャリア信号に対して、LSI31−2と所定のLSI31との間の直接波が伝搬される直線の経路、またはLSI31−2および所定のLSI31と筐体1の壁面との位置関係並びに筐体1内の複数のユニットの配置によって変化する反射波が伝搬される経路のうち、所定のLSI31まで、より強い電波が伝搬される経路の距離で決まるbbb[μsec]の遅延時間がある。
さらに、所定のLSI31におけるキャリア信号と、LSI31−3から無線を介して送信されてくるデータ信号とは、周波数は一致するが、位相が異なる。具体的には、LSI31−3から無線を介して送信されてくるデータ信号には、所定のLSI31におけるキャリア信号に対して、LSI31−3と所定のLSI31との間の直接波が伝搬される直線の経路、またはLSI31−3および所定のLSI31と筐体1の壁面との位置関係並びに筐体1内の複数のユニットの配置によって変化する反射波が伝搬される経路のうち、所定のLSI31まで、より強い電波が伝搬される経路の距離で決まる-ccc[μsec]の遅延時間がある。例えば、所定のLSI31とLSI31−3との間の電波が伝搬される物理的な距離が、所定のLSI31と注入信号発振器との間の電波が伝搬される物理的な距離より短い場合、LSI31−3から無線を介して送信されてくるデータ信号に、負の遅延時間が生じる。
図11は、所定のLSI31が記憶する位相遅延量テーブル201の一例を示す図である。
図11の位相遅延量テーブル201は、LSI31−1乃至LSI31−3のそれぞれを特定する情報である送信元に、図10の所定のLSI31のキャリア信号の位相とLSI31−1乃至LSI31−3のそれぞれから無線を介して送信されてくるデータ信号の位相との位相差である遅延時間を対応づけて格納する。
LSI31−1乃至LSI31−3のそれぞれを特定する情報である送信元は、予め決められている情報であって、例えば、有線入出力I/F51および信号処理部52を介して同期部73の分類部181に供給される制御信号に含まれる。また、例えば、LSI31−1乃至LSI31−3のそれぞれから無線を介して送信されてくるデータ信号に含まれている、デバイスを特定するデバイスIDや通信ノードを特定するIDなど、LSI31−1乃至LSI31−3のそれぞれを特定するデータを送信元として用いるようにしてもよい。
また、送信元を含む制御信号は、例えば、無線を介して取得されるようにしてもよい。
図11に示される位相遅延量テーブル201には、例えば、LSI31−1を特定する情報である送信元に、LSI31−1から無線を介して送信されてくるデータ信号の、所定のLSI31におけるキャリア信号に対する遅延時間aaa[μsec]が対応づけられて格納される。また、位相遅延量テーブル201には、例えば、LSI31−2を特定する情報である送信元に、LSI31−2から無線を介して送信されてくるデータ信号の、所定のLSI31におけるキャリア信号に対する遅延時間bbb[μsec]が対応づけられて格納される。同様に、位相遅延量テーブル201には、例えば、LSI31−3を特定する情報である送信元に、LSI31−3から無線を介して送信されてくるデータ信号の、所定のLSI31におけるキャリア信号に対する遅延時間-ccc[μsec]が対応づけられて格納される。
図8に戻り、分類部181は、注入同期発振部55から供給されるキャリア信号の位相と復調部72から供給される複数のLSI31のそれぞれから無線を介して送信されてくるデータ信号の位相との位相差を検出するか、または算出する。また、分類部181は、信号処理部52から供給される複数のLSI31のそれぞれを特定する情報を取得する。
分類部181は、検出したかまたは算出された、注入同期発振部55から供給されるキャリア信号の位相と復調部72から供給される複数のLSI31のそれぞれから無線を介して送信されてくるデータ信号の位相との位相差と、取得された信号処理部52から供給される複数のLSI31のそれぞれを特定する情報とを対応させて位相遅延量テーブル201に書き込む。即ち、分類部181は、位相遅延量テーブル201を新規に作成する。
さらに、分類部181は、信号処理部52から供給される、複数のLSI31のそれぞれを特定する情報を取得した場合、取得したLSI31を特定する情報が、位相遅延量テーブル201にあるかどうかを判定する。また、分類部181は、位相差を検出した場合、位相遅延量テーブル201の、信号処理部52から供給される複数のLSI31のそれぞれを特定する情報に対応する、注入同期発振部55から供給されるキャリア信号の位相と復調部72から供給される複数のLSI31のそれぞれから無線を介して送信されてくるデータ信号の位相との位相差(遅延時間)が、検出された位相差と一致するかどうかを判定する。
また、分類部181は、位相遅延量テーブル201に、信号処理部52から供給される複数のLSI31のそれぞれを特定する情報がないと判定された場合、位相遅延量テーブル201に、複数のLSI31のそれぞれを特定する情報と、その情報に対応させて、注入同期発振部55から供給されてくるデータ信号の位相との位相差(遅延時間)を書き込む。即ち、分類部181は、位相遅延量テーブル201に格納されている、複数のLSI31のそれぞれを特定する情報と位相差とを更新する。
さらにまた、分類部181は、位相遅延量テーブル201の、複数のLSI31のそれぞれを特定する情報に対応する、注入同期発振部55から供給されるキャリア信号の位相と復調部72から供給される複数のLSI31のそれぞれから無線を介して送信されてくるデータ信号の位相との位相差(遅延時間)が、検出された位相差と一致しない場合、位相遅延量テーブル201に、複数のLSI31のそれぞれを特定する情報に対応する、注入同期発振部55から供給されるキャリア信号の位相と復調部72から供給される複数のLSI31のそれぞれから無線を介して送信されてくるデータ信号の位相との位相差(遅延時間)を書き込む。即ち、分類部181は、位相遅延量テーブル201に格納されている位相差を更新する。
さらに、分類部181は、取得した信号処理部52から供給される複数のLSI31のそれぞれを特定する情報に対応する、注入同期発振部55から供給されるキャリア信号の位相と復調部72から供給される複数のLSI31のそれぞれから無線を介して送信されてくるデータ信号の位相との位相差(遅延時間)を位相遅延量テーブル201から読み出し、位相同期部182に供給する。
位相同期部182は、分類部181より供給される、注入同期発振部55から供給されるキャリア信号の位相と復調部72から供給される複数のLSI31のそれぞれから無線を介して送信されてくるデータ信号の位相との位相差(遅延時間)に基づいて、他のLSI31から無線を介して送信されてくるデータ信号の位相にキャリア信号の位相を同期させる。
位相同期部182は、複数のLSI31のそれぞれから無線を介して送信されてくるデータ信号の位相に同期させたキャリア信号である同期キャリア信号を復調部72に供給する。
このようにすることで、受信したデータ信号の位相に確実に同期した位相のキャリア信号を、データ信号の復調に用いることができるようになる。
次に、図12のフローチャートを参照して、図2のLSI31におけるデータ信号の送受信処理について説明する。
初めに、ステップS11において、有線入出力I/F51は、有線を介して送信されてくるデータ信号を受信する。または、アンテナ54は、他のLSI31から送信されてくる電波であるデータ信号を受信する。アンテナ54は、電気信号のデータ信号を通信部53に供給する。
ステップS12において、有線入出力I/F51は、有線でのデ―タ入力か否かを判定する。また、通信部53は、無線でのデータ入力か否かを判定する。即ち、有線入出力I/F51および通信部53は、有線を介して送信されてきたデータ信号を受信したか、無線を介して送信されてきたデータ信号を受信したかを判定する。
ステップS12において、有線でのデータ入力であると判定された場合、ステップS13に進み、有線入出力I/F51はデータを入力する。即ち、有線入出力I/F51は、有線を介して送信されてくるデータ信号を受信する。有線入出力I/F51は、有線を介して受信したデータ信号を信号処理部52に供給する。
一方、ステップS12において、有線でのデータ入力でないと判定された場合、即ち、無線を介して送信されてきたデータ信号を受信したと判定された場合、ステップS14に進み、復調部72はデータ信号を入力する。
より具体的には、アンテナ54は、電波であるデータ信号を受信して得られた電気信号であるデータ信号を復調部72に供給する。復調部72は、アンテナ54から供給されるデータ信号を同期部73に供給する。同期部73は、復調部72から供給されるデータ信号の位相に、注入同期発振部55から供給されるキャリア信号の位相を同期させる。同期部73は、位相を同期させたキャリア信号を復調部72に供給する。復調部72は、アンテナ54から供給される電気信号であるデータ信号を、注入同期発振部55から供給され、同期部73において位相が同期させられたキャリア信号で復調する。復調部72は、復調したデータ信号を信号処理部52に供給する。
ステップS13またはステップS14の後、処理は、ステップS15に進む。
ステップS15において、信号処理部52は、有線入出力I/F51または通信部53より供給されたデータ信号に対して、任意の信号処理を行なう。例えば、ステップS15において、信号処理部52は、データ信号をデコードするかエンコードする。
ステップS16において、通信部53は、無線でのデータ出力か否かを判定する。また、有線入出力I/F51は、有線でのデータ出力か否かを判定する。即ち、通信部53および有線入出力I/F51は、無線を介して信号処理を行なったデータ信号を送信するか、有線を介して信号処理を行なったデータ信号を送信するかを判定する。
ステップS16において、無線でのデータ出力であると判定された場合、ステップS17に進み、信号処理部52は、信号処理を行なったデータ信号を通信部53に供給する。通信部53の変調部71は、データを入力する。具体的には、変調部71は、注入同期発振部55から供給されるキャリア信号で、信号処理部52から供給されるデータ信号であって、他のLSI31に無線を介して送信するデータ信号を変調する。変調部71は、変調したデータ信号をアンテナ54に供給する。
一方、ステップS16において、無線でのデータ出力でないと判定された場合、即ち、有線を介して信号処理を行なったデータ信号を送信すると判定された場合、ステップS18に進み、信号処理部52は、信号処理を行なったデータ信号を有線入出力I/F51に供給する。有線入出力I/F51はデータを入力する。
ステップS17またはステップS18の後、処理は、ステップS19に進む。
ステップS19において、アンテナ54は、変調部71から供給される変調されたデータ信号を電波として放射し、処理は終了する。または、有線入出力I/F51は、有線を介して信号処理部52より供給されたデータ信号を送信し、処理は終了する。
以上のように、LSI31は、有線または無線を介して、他のLSI31とデータの送受信を行なうことで、任意の信号処理を行なうことができる。
次に、図13のフローチャートを参照して、図2のLSI31の無線通信処理について説明する。
初めに、ステップS31において、通信部53は、無線を介してデータ送信するか否かを判定する。
ステップS31において、データ送信する、即ち、データ受信しないと判定された場合、通信部53は、通信モードを送信モードにし、ステップS32へ進む。具体的には、例えば、通信部53は、自分の通信モードを示す情報を書き換えることにより、通信モードを送信モードに設定する。
送信モードの場合、LSI31は、例えば、無線LAN(Local Area Network)におけるCSMA/CA(Carrier Sense Multiple Access with Collision Avoidance)と同様の方式で送信の処理を行なう。
無線LANにおけるCSMA/CA方式では、所定の無線局が送信したデータ信号と他の無線局が送信したデータ信号との衝突を避けるために、予め無線チャネルの使用状況をキャリアセンスし、無線チャネルの使用状況が、未使用であるアイドル状態であれば、直ちにデータを送信し、使用中であるビジー状態であれば、アイドル状態になるまでデータの送信をせず待機するようにする。
ステップS32において、通信部53は、アンテナ54から供給されてきた信号を基にキャリアセンスを行なう。具体的には、通信部53は、筐体1内の複数のLSI31のそれぞれの間で同期されたキャリア信号の周波数帯のセンシングを行なう。
ステップS33において、通信部53は、キャリア信号の周波数帯のセンシングの結果に基づいて、他のLSI31が通信中であるか否かを判定する。
ステップS33において、他のLSI31が通信中でないと判定された場合、ステップS34に進む。
ステップS34において、通信部53の変調部71は、信号処理部52から信号処理を行なったデータ信号を取得する。変調部71は、注入同期発振部55から供給されるキャリア信号で、信号処理部52から供給されるデータ信号であって、他のLSI31に無線を介して送信するデータ信号を変調する。変調部71は、変調したデータ信号をアンテナ54に供給する。アンテナ54は、変調部71から供給される変調したデータ信号を、電波として放射する。即ち、通信部53は、アンテナ54にデータ信号を送信させる。
ステップS35において、通信部53は、任意の時間、または任意の回数のデータ送信を行なったか否かを判定する。
ステップS35において、任意の時間、または任意の回数のデータ送信が行なわれたと判定された場合、処理は終了する。一方、任意の時間、または任意の回数のデータ送信が行なわれていないと判定された場合、処理は、ステップS34に戻り、データを送信する処理を繰り返す。
一方、ステップS33において、他のLSI31が通信中であると判定された場合、具体的には、例えば、復調部72に内蔵されているLNA(Low Noise Amplifier)が飽和すると判定された場合、ステップS36に進む。
ステップS36において、通信部53は、通信モードを受信モードに変換する。具体的には、例えば、通信部53は、自分の通信モードを示す情報を書き換えることにより、通信モードを受信モードに設定する。
ステップS37において、通信部53は、他のLSI31の通信が終わるまで待機する。詳細は後述するが、通信部53は、他のLSI31の通信が終了したことを認識し、処理は、ステップS32に戻る。このとき、通信部53は、通信モードを送信モードに変換する。具体的には、例えば、通信部53は、自分の通信モードを示す情報を書き換えることにより、通信モードを送信モードに設定する。
より具体的に、図14のタイミングチャートを参照して、LSI31の送信モードにおける処理について説明する。
例えば、まず、LSI31−1がデータ送信中である場合、LSI31−2およびLSI31−3は、キャリアセンスの結果、無線チャネルがビジーである、即ち、他のLSI31が通信中であると判断するため、LSI31−1の送信が終わるまで待機する。
LSI31−1の送信が終わって無線チャネルがアイドルに変わると、LSI31−2およびLSI31−3は、それぞれ一定の時間であるIFS(Inter Frame Space)の時間待機する。
LSI31−2およびLSI31−3は、IFS経過後、さらに、乱数により決定されるBack Off時間のキャリアセンスを行なう。LSI31−2およびLSI31−3は、無線チャネルがアイドルであることを確認して、データ送信を行なう。
このとき、LSI31−2のBack Off時間がLSI31−3のBack Off時間より短いので、LSI31−2がLSI31−3よりも先にデータ送信を開始する。
次に、LSI31−2がデータ送信中となり、LSI31−1およびLSI31−3は、キャリアセンスの結果、無線チャネルがビジーである、即ち、他のLSI31が通信中であると判断するため、LSI31−2の送信が終わるまで待機する。
LSI31−2の送信が終わって無線チャネルがアイドルに変わると、LSI31−1およびLSI31−3は、それぞれ所定の一定の時間であるIFSの時間待機する。
LSI31−1およびLSI31−3は、IFS経過後、さらに、乱数により決定されるBack Off時間のキャリアセンスを行なう。LSI31−1およびLSI31−3は、無線チャネルがアイドルであることを確認して、データ送信を行なう。
このとき、LSI31−3のBack Off時間がLSI31−1のBack Off時間より短いので、LSI31−3がLSI31−1よりも先にデータ送信を開始する。
また、送信されるデータ信号の構成の例を図15に示す。
図15に示される、送信されるデータ信号の1フレームは、有意情報ID(Identification)、広帯域データ、およびEnd markから構成される。
有意情報IDは、例えば、広帯域データの処理される順番、プリアンブル信号、広帯域信号の信号処理を信号処理部52が行なった結果得られる副次的な狭帯域データ、または広帯域データに対してどのような信号処理を行なえばよいかを示すオペランド、タスク、若しくはジョブなどである。
広帯域データは、例えば、映像信号である。広帯域データが映像信号である場合、有意情報IDは、例えば、プリアンブル信号、フレーム(フィールド)番号、副次情報、音声信号、音声と映像との同期信号、オペランド、タスク、ジョブ、または状態遷移表などである。また、復調に用いるキャリア信号がデータ信号に同期しているので、プリアンブル信号は、注入信号を無線で送信する場合など、通常の無線で用いられるものより短くてよい。
End markは、パケット信号の終わりを意味するデータである。
図13に戻り、ステップS31において、データ送信しないと判定された場合、処理はステップS38に進む。
ステップS38において、通信部53は、無線を介してデータ受信するか否かを判定する。
ステップS38において、データ受信すると判定された場合、通信部53は、通信モードを受信モードにし、ステップS39へ進む。具体的には、例えば、通信部53は、自分の通信モードを示す情報を書き換えることにより、通信モードを受信モードに設定する。
受信モードの場合、LSI31は、他のLSI31から無線を介して送信されてくるデータ信号が存在すれば、受信処理を開始する。
ステップS39において、アンテナ54は、他のLSI31から送信されてくる電波であるデータ信号を受信する。アンテナ54は、電波であるデータ信号を受信して得られた電気信号であるデータ信号を復調部72に供給する。復調部72は、アンテナ54から供給されるデータ信号を同期部73に供給する。同期部73の分類部181は、注入同期発振部55から供給されるキャリア信号の位相と復調部72から供給される他のLSI31から無線を介して送信されてくるデータ信号の位相との位相差を検出する。
ステップS40において、分類部181は、信号処理部52から供給される他のLSI31を特定する情報を取得する。
ステップS41において、分類部181は、信号処理部52から取得した他のLSI31を特定する情報が、位相遅延量テーブル201にあるかどうかを判定する。
ステップS41において、信号処理部52から取得した他のLSI31を特定する情報が、位相遅延量テーブル201にあると判定された場合、処理は、ステップS42に進む。
ステップS42において、分類部181は、位相遅延量テーブル201の、信号処理部52から供給される他のLSI31を特定する情報に対応する、注入同期発振部55から供給されるキャリア信号の位相と復調部72から供給される他のLSI31から無線を介して送信されてきたデータ信号の位相との位相差(遅延時間)が、検出された位相差と一致するかどうかを判定する。
ステップS42において、位相遅延量テーブル201の送信元を特定する情報に対応する位相差(遅延時間)が、検出された位相差と一致すると判定された場合、処理はステップS44に進む。
一方、ステップS41において、取得した他のLSI31を特定する情報が、位相遅延量テーブル201にないと判定された場合、処理は、ステップS43に進む。
また一方、ステップS42において、位相遅延量テーブル201の送信元を特定する情報に対応する位相差(遅延時間)が、検出された位相差と一致しないと判定された場合、処理は、ステップS43に進む。
ステップS43において、分類部181は、ステップS41において、取得した他のLSI31を特定する情報が、位相遅延量テーブル201にないと判定された場合、位相遅延量テーブル201に、他のLSI31を特定する情報と、その情報に対応させて、注入同期発振部55から供給されてくるデータ信号の位相との位相差(遅延時間)を書き込む。即ち、分類部181は、位相遅延量テーブル201に格納されている、他のLSI31を特定する情報と位相差とを更新する。また、分類部181は、ステップS42において、位相遅延量テーブル201の送信元を特定する情報に対応する位相差(遅延時間)が、検出された位相差と一致しないと判定された場合、位相遅延量テーブル201に、他のLSI31を特定する情報である送信元に対応する、注入同期発振部55から供給されるキャリア信号の位相と復調部72から供給される他のLSI31から無線を介して送信されてくるデータ信号の位相との位相差(遅延時間)を書き込む。即ち、分類部181は、位相遅延量テーブル201に格納されている位相差を更新する。
このように、LSI31は、位相遅延量テーブル201を更新しながら、無線を介してデータを受信する処理を行なう。
ステップS44において、分類部181は、取得した信号処理部52から供給される他のLSI31を特定する情報に対応する、注入同期発振部55から供給されるキャリア信号の位相と復調部72から供給される他のLSI31から無線を介して送信されてきたデータ信号の位相との位相差(遅延時間)を位相遅延量テーブル201から読み出し、位相同期部182に供給する。位相同期部182は、分類部181より供給される、注入同期発振部55から供給されるキャリア信号の位相と復調部72から供給される他のLSI31から無線を介して送信されてきたデータ信号の位相との位相差(遅延時間)に基づいて、他のLSI31から無線を介して送信されてきたデータ信号の位相にキャリア信号の位相を同期させる。即ち、位相同期部182は、同期キャリア信号を生成する。また、位相同期部182は、他のLSI31から無線を介して送信されてきたデータ信号の位相に同期させたキャリア信号である同期キャリア信号を復調部72に供給する。
ステップS45において、復調部72の乗算器161は、アンテナ54から供給されるデータ信号と、同期部73の位相同期部182から供給される、アンテナ54から供給されるデータ信号の位相に同期したキャリア信号である同期キャリア信号とを乗算することでデータ信号を復調する。即ち、乗算器161は、同期検波方式でデータ信号を復調する。乗算器161は、乗算の結果得られた復調したデータ信号を信号再生回路162に供給する。信号再生回路162は、メインクロックを基準にして、乗算器161において復調されたデータ信号から、メインクロックに同期したデータ信号を再生する。信号再生回路162は、再生されたデータ信号を信号処理部52に供給する。
ステップS46において、信号処理部52は、信号再生回路162から供給されたデータ信号より、データ信号の受信終了を検出したか否かを判定する。受信終了を検出した場合、処理は終了する。
一方、ステップS46において、データ信号の受信終了を検出しない場合、処理はステップS45に戻り、信号を再生する処理を繰り返す。
また、ステップS38において、データ受信しないと判定された場合、通信部53は通信モードを設定せず、処理は終了する。
以上のように、LSI31は、筐体内の他のLSIに無線を介してデータ信号を送信することができる。また、LSI31は、筐体内の他のLSIから無線を介してデータ信号を受信することができる。
なお、LSI31またはLSI31が配置されている図示せぬユニットが初期化された場合、それに同期して、位相遅延量テーブル201は、新規に作成される。例えば、LSI31またはLSI31が配置されている図示せぬユニットは、電源投入時に初期化される。また、例えば、LSI31またはLSI31が配置されている図示せぬユニットは、数秒、数分または数時間に1回のタイミングで初期化されるようにしてもよい。
さらに、LSI31またはLSI31が配置されている図示せぬユニットが初期化されたとき、LSI31は、初期化処理としての無線通信を行なうようにしてもよい。
図16のフローチャートを参照して、位相遅延量テーブル201の作成処理について説明する。
ステップS71において、送信元である他のLSI31から無線を介して送信されてくるキャリア信号が入力される。具体的には、例えば、アンテナ54は、初期化処理として行なわれる無線通信に伴い、他のLSIから送信されてくる電波であるデータ信号を受信する。アンテナ54は、電波であるデータ信号を受信して得られた電気信号であるデータ信号を復調部72に供給する。復調部72は、アンテナ54から供給されるデータ信号を同期部73に供給する。
ステップS72において、同期部73の分類部181は、注入同期発振部55から供給されるキャリア信号の位相と復調部72から供給される他のLSI31から無線を介して送信されてくるデータ信号の位相との位相差を算出する。
ステップS73において、分類部181は、信号処理部52から供給される他のLSI31を特定する情報を取得する。
ステップS74において、分類部181は、算出された注入同期発振部55から供給されるキャリア信号の位相と復調部72から供給される他のLSI31から無線を介して送信されてくるデータ信号の位相との位相差と、取得された信号処理部52から供給される他のLSI31を特定する情報とを対応させて位相遅延量テーブル201に書き込む。即ち、分類部181は、位相遅延量テーブル201を新規に作成し、処理は終了する。
このようにして、LSI31は、位相遅延量テーブル201を新規に作成することができる。
図17は、本発明の一実施の形態である信号処理装置の他の例を示す図である。
図17の信号処理装置の筐体1の内部には、電源241が配置されている。ユニット11は、電力を供給する電力線242およびコネクタ243を介して、電源241に接続されている。また、ユニット12は、電力を供給する電力線242およびコネクタ244を介して、電源241に接続されている。
例えば、注入信号発振器としての、ユニット12に設けられているLSI31−3の注入同期発振部55から、電力線242、コネクタ243、およびコネクタ244を介して、ユニット11に設けられているLSI31−1およびLSI31−2に注入信号が供給される。なお、注入信号発振器を電源241に設けて、電源241に設けられた注入信号発振器から、電力線242、コネクタ243、およびコネクタ244を介して、LSI31−1乃至LSI31−3に注入信号を供給するようにしてもよい。
このような構成により、注入信号は、電力線242である有線を介して、他のLSI31または注入信号発振器から送信されるようにすることができる。
図18は、本発明の一実施の形態である信号処理装置のさらに他の例を示す図である。
図18の信号処理装置の筐体1の内部には、発振器261が配置されている。発振器261は、有線を介して、ユニット11およびユニット12に接続される。
上述した説明では、LSI31の注入同期発振器91を注入信号発振器としていたが、図18のような構成によれば、発振器261を注入信号発振器とすることができる。
さらに、上述した説明では、位相遅延量テーブル201はデータ信号を受信する際に用いられたが、データ信号を送信する際に、送信先を指定するために用いられるようにしてもよい。
例えば、1つのLSI31が、図1の信号処理装置の集中制御を行なうような場合、ホストとなるLSI31が、各ユニットに配置される他のLSI31のそれぞれにポーリングを行ない、送信可能かどうかを問い合わせるようにしてもよい。
また、例えば、ユーザが故意に図1の信号処理装置の筐体1を開放して、LSI31のアンテナ54から電波が漏洩する危険がある場合、筐体1内におけるデータの秘匿性を保証するために、筐体1の開放を検知するセンサを設け、筐体1の開放が検知されたとき、アンテナ54から電波の放射を直ちに停止するようにしてもよい。より具体的には、その停止の方法は、例えば、ユニットの電源を切ったり、通信部53を備えるLSI31の電源を切ったり、通信部53を備えるLSI31の通信部53の電源を切ったりするものとすることができる。また、ユーザが故意に筐体1を開放したことを検知する方法としては、例えば、位相遅延量テーブル201における遅延時間と検出された位相差との著しい不一致が、複数の送信元との間で発生したことによって検知する方法がある。
このように、1つの筐体に複数の信号処理部を格納するようにした場合には、データ信号を信号処理することができる。また、複数の信号処理部のうちの所定の信号処理部に設けられている、他の信号処理部または発振器から有線を介して送信されてくる注入信号に同期して、複数の信号処理部のいずれかに無線を介して送信するデータ信号を変調するか、複数の信号処理部のいずれかから無線を介して送信されてくるデータ信号を復調するためのキャリア信号を生成するように発振し、信号処理部に設けられている、キャリア信号で、複数の信号処理部のいずれかに無線を介して送信するデータ信号を変調するか、複数の信号処理部のいずれかから無線を介して送信されてくるデータ信号を復調するようにした場合には、装置の筐体内において、無線を介して効率的にデータ信号の送受信を行なうことができる。
なお、本発明の実施の形態は、上述した実施の形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲において種々の変更が可能である。
1 筐体, 11および12 基板, 31−1乃至31−3 LSI, 51 有線入出力I/F, 52 信号処理部, 53 通信部, 54 アンテナ, 55 注入同期発振部, 71 変調部, 72 復調部, 73 同期部, 91 注入同期発振器, 92 n/mてい倍回路, 121 発振器, 141 乗算器, 161 乗算器, 162 信号再生回路, 181 分類部, 182 位相同期部, 201 位相遅延量テーブル, 241 電源, 242 電力線, 243および244 コネクタ, 261 発振器