JP4759706B2 - フコイダン抽出・精製装置及びフコイダンを抽出・精製する方法 - Google Patents
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Description
このフコイダンには、生理活性機能を有することが知られており、例えば免疫賦活剤(特許文献1)、がん治療薬(特許文献2)、あるいは抗菌剤(特許文献3)への利用技術が検討されている。
フコイダンの製造は、固液分離の操作が必要であるが、この操作は、粘性があるなどの理由で、通常容易ではない。
この操作上で凍結による体積の圧縮を利用する方法(特許文献5)や、精密ろ過装置を用いる方法によって色素成分を除去する方法(特許文献6)、同様にフコイダン以外の低分子量をフイルター装置により除去するなど(特許文献7)が開示されているが、これらは、抽出操作上生じる損失についての課題を解決していない。本発明は、フコイダンが粘性物質として得られるために取扱上生じる海藻原料の損失をなくし、良質のフコイダンを量産することを課題とする。
すなわち、本願発明は、
1.海藻からフコイダンを抽出・精製する装置であって、当該装置は原料粉末を導入するファネル、当該ファネルの下に結合したフコイダンを抽出する抽出タンク及び前記ファネルと抽出タンクに隣接して配置したフコイダンを精製するサーバータンクを備え、前記ファネル、抽出タンク及びサーバータンクはいずれも底形状が錐形であり、前記ファネルと抽出タンクとの間に設けたフイルターと当該ファネルから抽出タンク内に延びたロート部とを備え、さらに抽出タンクの下端とサーバータンクの下端を連結する連結管を有することを特徴とするフコイダン抽出・精製装置
2.前記抽出タンクに、蒸気を導入するための細管、抽出タンクを蒸気加熱又は水冷却するための蛇管及びリークバルブを設けたことを特徴とする上記1記載のフコイダン抽出・精製装置
3.ファネルの上端に設けた大気との導通と開閉するためのバルブ1番、抽出タンクの下端に設けた抽出液の排出又は抽出液の導出を行うバルブ2番とバルブ3番、前記連結管に設けたバルブ4番並びにサーバータンクの下端に設けた抽出液の導入と精製液の排出を行うバルブ5番とバルブ6番及びサーバータンクの上端に設けたバルブ7番を備えていることを特徴とする上記1又は2記載のフコイダン抽出・精製装置
4.サーバータンクの上部及び下部位置に、水位計を設けたことを特徴とする上記1〜3のいずかに記載のフコイダン抽出・精製装置、を提供する。
5.原料粉末を導入するファネル、当該ファネルの下に結合した抽出タンク及び前記ファネルと抽出タンクに隣接して配置したフコイダンを精製するサーバータンクを用い、下記工程により海藻からフコイダンを抽出・精製する方法。
1)ファネル内に原料である海藻粉末を投入し、かつ抽出タンク内に洗浄液を注入する工程
2)ファネルを大気に開放した状態で、抽出タンクを加熱し、ファネルの下端に結合したロート部から抽出タンク内の洗浄液を上昇させて、ファネル内の原料粉末と洗浄液を混合する工程
3)蒸気の導入を停止し、抽出タンク内の減圧を利用して洗浄液を抽出タンク内に戻すと同時に、ファネルと抽出タンクとの間に設けたフイルター上にフコイダンを含有する固形分を残存させて固液分離を行い、かつ残余の洗浄液を抽出タンクの下端から排出する工程
4)ファネル及び抽出タンクを密閉すると共に、抽出タンクに抽出液と蒸気を導入して、ロート部から抽出液を上昇させて、フイルター上のフコイダンを溶解し、フイルター上でフコイダンを含有する抽出液と残渣との固液分離を行い、フコイダンを精製する工程
5)抽出タンクの下端とサーバータンクの下端が連通する連結管を介して、前記フコイダンを含有する抽出液を、サーバータンクに移送する工程
6)サーバータンク内において、精製したフコイダンを不溶性の固形分として沈降させ、フコイダンを不溶性の懸濁液として、サーバータンク下端から回収する工程
6.前記工程1)において、酢酸を含有するエタノール水溶液の洗浄液を用いて、海藻からアミノ酸、塩類、色素、糖アルコール類の水溶性物質を溶解除去することを特徴とする上記5記載のフコイダンを抽出・精製する方法
7.上記工程3)において、抽出タンクを外側から囲む蛇管を介して抽出タンクを水冷し、抽出タンク内を減圧にすることを特徴とする上記5又は6記載のフコイダンを抽出・精製する方法
8.上記工程4)において、塩化カルシウムを含有する抽出溶液を用い、アルギン酸をフイルター上で固形分の残渣として固液分離することを特徴とする上記5〜7のいずれかに記載のフコイダンを抽出・精製する方法
9.上記工程5)において、抽出タンク内の前記フコイダンを含有する抽出液をサーバータンクに移送するに際し、サーバータンクの上部に設けたバルブを開けてサーバータンクを大気に開放し、抽出タンク内の抽出液を送液した後、さらに抽出タンク内の上部に蒸気、圧縮空気、圧縮不活性ガスを導入して加圧し、抽出タンク内の残余の抽出液をサーバータンクへ送液することを特徴とする上記5〜8のいずれかに記載のフコイダンを抽出・精製する方法
10.上記工程6)において、サーバータンク内において抽出液の2倍量に相当するエタノールを投入して、精製したフコイダンを不溶性の固形分として沈降させることを特徴とする上記5〜9のいずれかに記載のフコイダンを抽出・精製する方法、を提供する。
この機能を持たせるためタンクの底形状は円すい形をしている。また、外部との出入り口にあたる配管部に設置したバルブの操作により機密構造になるよう工夫されている。また、余熱冷却の目的で、抽出タンク周りに冷却水を循環できる構造をもつことを特徴としている。
この抽出装置の大きさは、処理する量に応じて変更することができるので、特に制限されるものではない。しかし、本発明を説明する場合に、この大きさの装置を用いることとする。
フィルターカップリングは、抽出タンクとファネルを結合する装置である。抽出タンクの内部にはフィルターカップリングと内パッキン構造で固定したロートが挿入されている。図2に、フコイダン抽出装置を構成する部品のフィルターカップリングを中心にファネルと抽出タンクの組み立て構造を示す。
抽出タンクには、蒸気を導入するための細管がある。
ファネルとサーバータンクは天蓋をもち、各々の天蓋にはバルブ(バルブ1番と7番)がある。バルブ操作によりタンクは、密閉容器となり、一定の加圧操作、減圧操作が可能となっている。
本装置には安全な稼動と稼動状態の監視を行うため、圧力弁、リークバルブ、温度計、圧力計、水位計を備える。
海藻の洗浄液には、酸性アルコール溶液を用いる。50%v/vから70%v/vの濃度のエタノール溶液1リットルあたりに、例えば酢酸を0.1ml〜6ml含有する溶液が使用できる。
ミネラル溶液を用いる。たとえば塩化カルシウム・2水和物を1リットルあたり0.5gから650g含有する水溶液が使用できる。
フコイダンの精製に用いる溶液アルコールを用いることができる。例えば、フコイダン抽出液に混合したときに、50%v/vから70%v/vの濃度で、かつ純度の高いエタノールが使用するのが望ましい。
この時、不溶性となるが、沈降したフコイダンを再び水溶性とするときに、純粋又は塩水を使用する。例えば、塩化ナトリウムや塩化カリウムの濃度0.0%(w/v)〜10%(w/v)の水溶液が用いることができる。この時、残存するミネラルの除去のためEDTA・2Na(エチレンジアミン4酢酸・2ナトリウム)を1〜100mM程度添加できる。
すなわち、各工程での、他の装置への材料の搬送や容器の移し変えといった作業がないので、損失なく生産効率が良いという大きな効果を有する。
この生産方法と装置構造は、外部からの異物の混入に対するリスクが低減できる。また、本装置は量産のためのスケール拡大に対して、設計が容易である。海藻原料とフコイダン抽出溶液との固液分離は、圧力差でろ過又は沈降により分離されるために、遠心分離器や限外ろ過装置などの設備投資が不要で、経済的である。また、装置の設置場所の近傍で火炎を用いることはないので、装置の稼動上の労働作業が安全であるという優れた効果を有する。
抽出タンク底部のバルブ2番、バルブ3番、バルブ4番を閉じて、抽出タンク内に酢酸30mlを含む濃度70%(V/V)エタノール30リットルの洗浄液を注入する。
そして、フィルターカップリングのふるい枠を設置し、ファネル上部から、ガゴメ昆布粉末900gを投入する。その後、ファネルのバルブ1番を開放した状態で、リークバルブなどを閉じてスチームで加熱する。
その数分後、蒸気の導入を停止する。蛇管に冷却水を通すなどして放熱させると抽出タンクは、減圧状態となり、抽出液は、ファネルから抽出タンクに回収され、フィルターカップリングにあるふるい枠のフイルターで固液分離が行われる。
抽出タンクに、39gの塩化カルシウムを含む抽出溶液30リットルを注入する。抽出タンクのジャケットと細管に蒸気を導入し加熱する。バルブを閉じた抽出タンクは、温度がおおむね75°Cから100°Cで、抽出液は内部のロート部を通ってファネルに達し、ガゴメ昆布の洗浄粉末と混合する。
このときファネル内の抽出液の実温度は、80°C〜90°Cとなる。抽出時間は5分間程度でよい。蒸気の導入を止め、抽出タンクの外部蛇管に水を導入し、冷却する。
抽出タンクのフコイダンを含む塩化カルシウム含有抽出液は、サーバータンクの天蓋にあるバルブ7番を開放し、連結管のバルブの3番、バルブ5番を閉じ、バルブ2番、バルブ4番、バルブ6番を開放すると、パスカルの原理により水面が一致するまで送液される。
その上で、ファネル天蓋部のバルブ1番を閉じ、再び細管より蒸気を導入すると、抽出タンクは加圧状態となり、抽出液はサーバータンクに移送される。
このとき、蒸気以外の圧縮空気や不活性ガスを抽出タンクのリークバルブに接続し、加圧しても同様に移送ができる。移送が終了したら連結管のバルブ4番、バルブ5番、バルブ6番を閉じ、サーバータンク天蓋部より、抽出液の2倍量に相当するエタノールを投入する。
抽出タンクは、次の抽出操作ができるので、その間、放置しておいても構わない。静置が十分であれば、サーバータンクの底部にあるバルブ5番、バルブ6番を開放し、沈降した精製フコイダンのみが回収される。
この精製フコイダンは凍結乾燥するなどして粉末にすることや、再びアルコール分が数%以下となるよう純粋水もしくは塩水を添加するなどして、水溶性フコイダンを得ることができる。
例えば、本実施例では、10mMのEDTA・2Naを含む0.9%の塩化ナトリウムを添加し、再び、水溶性の状態となったフコイダンを得た。
Claims (10)
- 海藻からフコイダンを抽出・精製する装置であって、当該装置は原料粉末を導入するファネル、当該ファネルの下に結合したフコイダンを抽出する抽出タンク及び前記ファネルと抽出タンクに隣接して配置したフコイダンを精製するサーバータンクを備え、前記ファネル、抽出タンク及びサーバータンクはいずれも底形状が錐形であり、前記ファネルと抽出タンクとの間に設けたフイルターと当該ファネルから抽出タンク内に延びたロート部とを備え、さらに抽出タンクの下端とサーバータンクの下端を連結する連結管を有することを特徴とするフコイダン抽出・精製装置。
- 前記抽出タンクに、蒸気を導入するための細管、抽出タンクを蒸気加熱又は水冷却するための蛇管及びリークバルブを設けたことを特徴とする請求項1記載のフコイダン抽出・精製装置。
- ファネルの上端に設けた大気との導通と開閉するためのバルブ1番、抽出タンクの下端に設けた抽出液の排出又は抽出液の導出を行うバルブ2番とバルブ3番、前記連結管に設けたバルブ4番並びにサーバータンクの下端に設けた抽出液の導入と精製液の排出を行うバルブ5番とバルブ6番及びサーバータンクの上端に設けたバルブ7番を備えていることを特徴とする請求項1又は2記載のフコイダン抽出・精製装置。
- サーバータンクの上部及び下部位置にかけて、水位計を設けたことを特徴とする請求項1〜3のいずかに記載のフコイダン抽出・精製装置。
- 原料粉末を導入するファネル、当該ファネルの下に結合した抽出タンク及び前記ファネルと抽出タンクに隣接して配置したフコイダンを精製するサーバータンクを用い、下記工程により海藻からフコイダンを抽出・精製する方法。
1)ファネル内に原料である海藻粉末を投入し、かつ抽出タンク内に洗浄液を注入する工程
2)ファネルを大気に開放した状態で、抽出タンクを加熱し、ファネルの下端に結合したロート部から抽出タンク内の洗浄液を上昇させて、ファネル内の原料粉末と洗浄液を混合する工程
3)蒸気の導入を停止し、抽出タンク内の減圧を利用して洗浄液を抽出タンク内に戻すと同時に、ファネルと抽出タンクとの間に設けたフイルター上にフコイダンを含有する固形分を残存させて固液分離を行い、かつ残余の洗浄液を抽出タンクの下端から排出する工程
4)ファネル及び抽出タンクを密閉すると共に、抽出タンクに抽出液と蒸気を導入して、ロート部から抽出液を上昇させて、フイルター上のフコイダンを溶解し、フイルター上でフコイダンを含有する抽出液と残渣との固液分離を行い、フコイダンを精製する工程
5)抽出タンクの下端とサーバータンクの下端が連通する連結管を介して、前記フコイダンを含有する抽出液を、サーバータンクに移送する工程
6)サーバータンク内において、精製したフコイダンを不溶性の固形分として沈降させ、フコイダンを不溶性の懸濁液として、サーバータンク下端から回収する工程 - 前記工程1)において、酢酸を含有するエタノール水溶液の洗浄液を用いて、海藻からアミノ酸、塩類、色素、糖アルコール類の水溶性物質を溶解除去することを特徴とする請求項5記載のフコイダンを抽出・精製する方法。
- 上記工程3)において、抽出タンクを外側から囲む蛇管を介して抽出タンクを水冷し、抽出タンク内を減圧にすることを特徴とする請求項5又は6記載のフコイダンを抽出・精製する方法。
- 上記工程4)において、塩化カルシウムを含有する抽出溶液を用い、アルギン酸をフイルター上で固形分の残渣として固液分離することを特徴とする請求項5〜7のいずれかに記載のフコイダンを抽出・精製する方法。
- 上記工程5)において、抽出タンク内の前記フコイダンを含有する抽出液をサーバータンクに移送するに際し、サーバータンクの上部に設けたバルブを開けてサーバータンクを大気に開放し、抽出タンク内の抽出液を送液した後、さらに抽出タンク内の上部に蒸気、圧縮空気、圧縮不活性ガスを導入して加圧し、抽出タンク内の残余の抽出液をサーバータンクへ送液することを特徴とする請求項5〜8のいずれかに記載のフコイダンを抽出・精製する方法。
- 上記工程6)において、サーバータンク内において抽出液の2倍量に相当するエタノールを投入して、精製したフコイダンを不溶性の固形分として沈降させることを特徴とする請求項5〜9のいずれかに記載のフコイダンを抽出・精製する方法。
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