JP4759605B2 - PGC−1、新規な褐色脂肪PPARγコアクチベーター - Google Patents

PGC−1、新規な褐色脂肪PPARγコアクチベーター Download PDF

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Description

脊椎動物は2つの異なる型の脂肪組織:白色脂肪組織(WAT)及び褐色脂肪組織(BAT)を保有する。WATは動物の栄養補給要求により脂肪を貯蔵し、そして放出する。BATは脂肪を燃焼させ、熱(すなわち、ふるえのない熱(nonshivering heat))としてエネルギーを放出する。BATの独特な熱発生特性は褐色脂肪細胞特異的遺伝子産物の脱共役タンパク質(UCP)を含有する特殊化したミトコンドリアの活性を反映する。Sears、I.B.等(1996)Mol.Cell.Biol.16(7):3410−3419。UCPはATP合成を伴わずに脂肪酸酸化から形成されたプロトン勾配を消滅させることにより酸化的リン酸化から呼吸を切り離すミトコンドリアのプロトン輸送体である(Nicholls、D.及びLocke、R.(1984)Physiol.Rev.64:1−64)。
UCP発現は、低温露出及び過剰のカロリー摂取のような生理的シグナルに応答して、主に交感神経系により厳しく調節される(Girardier、L.及びSeydoux、J.(1986)「Neural Control of Brown Adipose Tissue」P.Trayhurn及びD.Nichols(編集)Brown Adipose Tissue(Arnold、London、1986)中、pp.122−151)。局所ニューロンから放出されたノルエピネフリンは褐色脂肪細胞細胞膜上のβ−アドレナリン受容体と相互作用し、細胞内サイクリックAMP(cAMP)レベルの増加を引き起こす(Sears、I.B.等(1996)Mol.Cell.Biol.16(7):3410−3419)。増加したcAMPに応答して高められたBAT熱発生を引き起こす事象のカスケードにおいて、UCP遺伝子の増加したレベルの転写は重要な要素である(Kopecky、J.等(1990)J.Biol.Chem.265:22204−22209;Rehnmark、S.M.等(1990)J.Biol.Chem.265:16464−16471;Ricquirer、D.F.等(1986)J.Biol.Chem.261:13905−13910)。BAT熱発生は(1)低温に応答して熱発生を増やすことにより恒温動物を維持すること、ならびに(2)カロリー摂取の増加に応答してエネルギー消費を増やすことによりエネルギーバランスを保つことの両方に用いられる(Sears、I.B.(1996)Mol.Cell.Biol.16(7):3410−3419)。肥満症のほとんど全ての実験齧歯類モデルには、通常、肥満症の進行における最初の症状として減少したまたは欠陥のあるBAT機能が伴う(Himms−Hagen、J.(1989)Prog.Lipid Res.28:67−115;Himms−Hagen、J.(1990)FASEB J.4:2890−2898)。さらに、毒素遺伝子の選択的発現によるトランスジェニックマウスにおけるBATの除去は肥満症をもたらす(Lowell、B.等(1993)Nature 366:740−742)。従って、褐色脂肪細胞の増殖及び分化はエネルギーバランスを保ち、そして肥満を防ぐ動物の能力における重要な決定因である(Sears、I.B.等(1996)Mol.Cell.Biol.16(7):3410−3419)。
最近、脂肪細胞化を促進するいくつかの転写因子が同定されている。これらの転写因子はCCAAT/エンハンサー結合タンパク質(C/EBP)α、β及びδ並びにペルオキシソーム増殖薬活性化受容体(PPAR)γを含む。概説にはSpiegelman、B.M.及びFlier、J.S.(1996)Cell 87:377−389を参照。C/EBPα、β及びδのようなC/EBPファミリーメンバーは脂肪細胞特異的遺伝子発現の調節において重要な役割を果たす。例えば、C/EBPαは成熟した脂肪細胞において発現されるいくつかの遺伝子のプロモーターをトランス活性化することができる(Herrera、R.等(1989)Mol.Cell.Biol.9:5331−5339;Miller、S.G.等(1996)PNAS 93:5507−551;Christy、R.J.等(1989)Genes Dev.3:1323−1335;Umek、R.M.等(1991)Science 251:288−291;Kaestner、K.H.等(1990)PNAS 87:251−255;Delabrousse、F.C.等(1996)PNAS 93:4096−4101;Hwang、C.S.等(1996)PNAS 93:873−877)。C/EBPαの過剰発現は繊維芽細胞において脂肪細胞分化を誘導することができ(Freytag、S.O.等(1994)Genes Dev.8:1654−1663)、一方、アンチセンスC/EBPαの発現は前脂肪細胞の最終分化を妨げる(Lin、F.T.及びLane、M.D.(1992)Genes Dev.6:533−544)。C/EBPαの生理的重要性はトランスジェニックC/EBPα−ノックアウトマウスの作製によりさらに示された。これらの動物では脂肪細胞はなお存在するが、それらはかなり少ない脂質を蓄積し、そして減少した脂肪細胞特異的遺伝子発現を示す(Wang、N.等(1995)Science 269:1108−1112)。C/EBPαは脂肪細胞分化を促進することにおいて別の転写因子PPARγと相乗作用を生み出す関係があることが見いだされた(概説にはBurn、R.P.等(1996)Curr.Opin.Cell Biol.8:826−832を参照)。PPARγは選択的スプライシングにより形成される2つのアイソフォーム(γ1及びγ2)として存在し(Zhu、Y.等(1995)PNAS 92:7921−7925)、そして多数の脂肪特異的遺伝子の直接のレギュレーター及び脂肪細胞化の全プログラムを引き起こすことができる「マスター」レギュレーターの両方として機能するようである(Spiegelman、B.M.及びFlier、J.S.(1996)Cell 87:377−389)核ホルモン受容体である。PPARγはRXRαとヘテロダイマーを形成し、そして脂肪細胞P2(aP2:Tontonoz、P.(1994)Genes Dev.8:1224−1234)及びホスホエノールピルビン酸カルボキシキナーゼ(PEPCK)遺伝子(Tontonoz、P.(1994)Mol.Cell.Biol.15:351−357)からのよく特性化された脂肪特異的エンハンサーに直接結合することが示されている。
UCP遺伝子プロモーターはC/EBPの結合部位(Yubero、P.等(1994)Biochem.Biophys.Res.Commun.198:653−659)及びPPARγ応答配列(Sears、I.B.等(1996)Mol.Cell.Biol.16(7):3410−3419)を含むが、C/EBP及びPPARγはUCP発現を誘導するために十分ではないようである(Sears、I.B.等(1996)Mol.Cell.Biol.16(7):3410−3419)。それ故、UCP発現を活性化するため、従って、BAT熱発生を促進するためにC/EBPまたはPPARγのいずれかと組み合わせて働く可能性があるさらなる因子を同定することが極めて望ましいであろう。
発明の要約
本発明は少なくとも一つにはBATにおけるUCP発現のコアクチベーターとしてPPARγと組み合わせて働くことができる新規な分子の発見に基づく。本明細書ではこれらの分子をPAR γ アクチベーター1(「PGC−1」)タンパク質と呼ぶ。本明細書ではPGC−1タンパク質をコードする核酸分子をPGC−1核酸分子と呼ぶ。本発明のPGC−1分子は例えば脂肪細胞化、例えば褐色脂肪細胞化、及びPGC−1を発現する組織、例えばBATまたは筋肉の熱発生を調節することができる。本発明のPGC−1分子の他の機能は本明細書の全体にわたって記述される。
従って、本発明の一つの態様はPGC−1タンパク質またはその一部(例えば、生物学的に活性があるかまたは抗原性部分)をコードするヌクレオチド配列を含んでなる単離された核酸分子(例えば、cDNA)及びPGC−1をコードする核酸(例えば、mRNA)の検出のためのプライマーまたはハイブリダイゼーションプローブとして適当な核酸フラグメントに関する。特に好ましい態様として、単離された核酸分子は配列番号:1のヌクレオチド配列または配列番号:1のヌクレオチド配列に少なくとも約50%、好ましくは少なくとも約60%、より好ましくは少なくとも約70%、なおより好ましくは少なくとも約80%、さらにより好ましくは少なくとも約90%、そして最も好ましくは少なくとも約95%もしくはそれ以上相同なヌクレオチド配列、またはこれらのヌクレオチド配列のいずれかのコーディング領域もしくは相補物を含んでなる。
別の特に好ましい態様として、本発明の単離された核酸分子は配列番号:1に示されるヌクレオチド配列またはこのヌクレオチド配列の一部(例えば、400、450、500もしくはそれ以上のヌクレオチド)にハイブリダイズするかまたは少なくとも約50%、好ましくは少なくとも約60%、より好ましくは少なくとも約70%、なおより好ましくは少なくとも約80%、さらにより好ましくは少なくとも約90%、そして最も好ましくは少なくとも約95%もしくはそれ以上相同なヌクレオチド配列を含んでなる。
別の好ましい態様として、単離された核酸分子は配列番号:2のアミノ酸配列または配列番号:2のアミノ酸配列に少なくとも約50%、好ましくは少なくとも約60%、より好ましくは少なくとも約70%、なおより好ましくは少なくとも約80%、さらにより好ましくは少なくとも約90%、そして最も好ましくは95%もしくはそれ以上相同なアミノ酸配列をコードする。また、本発明の好ましいPGC−1タンパク質は好ましくは本明細書に記述されるPGC−1生物学的活性の少なくとも1つも保有する。
別の態様として、単離された核酸分子はタンパク質またはその一部をコードし、ここにおいて、タンパク質またはその一部は配列番号:2のアミノ酸配列に十分に相同な、例えば、タンパク質またはその一部がPGC−1活性を保持するように配列番号:2のアミノ酸配列に十分に相同なアミノ酸配列を含む。好ましくは核酸分子によりコードされるタンパク質またはその一部は以下の生物学的活性:1)PPARγと相互作用する(例えば、結合する)ことができる;2)PPARγ活性を調節することができる;3)UCP発現を調節することができる;4)脂肪細胞における熱発生、例えば褐色脂肪細胞または筋肉における熱発生を調節することができる;5)脂肪細胞または筋肉における酸素消費を調節することができる;6)脂肪細胞化、例えば、褐色脂肪細胞への白色脂肪細胞の分化を調節することができる;7)細胞のインシュリン感受性、例えば、筋肉細胞、肝細胞、脂肪細胞のインシュリン感受性を調節することができる;8)核ホルモン受容体、例えば、甲状腺ホルモン受容体、エストロゲン受容体、レチノイン酸受容体と相互作用する(例えば、結合する)ことができる;9)核ホルモン受容体の活性を調節することができる;そして10)転写因子C/EBPαと相互作用する(例えば、結合する)ことができるの1つまたはそれ以上を保持する。一つの態様として、核酸分子によりコードされるタンパク質は配列番号:2のアミノ酸配列(例えば、配列番号:2の全アミノ酸配列)に少なくとも約50%、好ましくは少なくとも約60%、より好ましくは少なくとも約70%、なおより好ましくは少なくとも約80%、さらにより好ましくは少なくとも約90%、そして最も好ましくは少なくとも約95%またはそれ以上相同である。
さらに別の態様として、単離された核酸分子はヒトから得られ、そして以下のドメインまたはモチーフ:チロシンリン酸化部位、cAMPリン酸化部位、セリン−アルギニン(SR)に富んだドメイン、RNA結合モチーフ、及び核受容体との相互作用をもたらすLXXLL(配列番号:3)モチーフの1つまたはそれ以上を含むタンパク質の部分をコードする。別の好ましい態様として、単離された核酸分子はヒトから得られ、そして本明細書に記述されるドメイン/モチーフの1つまたはそれ以上を含み且つ以下の生物学的活性:1)PPARγと相互作用する(例えば、結合する)ことができる;2)PPARγ活性を調節することができる;3)UCP発現を調節することができる;4)脂肪細胞における熱発生、例えば、褐色脂肪細胞または筋肉における熱発生を調節することができる;5)脂肪細胞または筋肉における酸素消費を調節することができる;6)脂肪細胞化、例えば、褐色脂肪細胞への白色脂肪細胞の分化を調節することができる;7)細胞のインシュリン感受性、例えば、筋肉細胞、肝細胞、脂肪細胞のインシュリン感受性を調節することができる;8)核ホルモン受容体、例えば、甲状腺ホルモン受容体、エストロゲン受容体、レチノイン酸受容体と相互作用する(例えば、結合する)ことができる;9)核ホルモン受容体の活性を調節することができる;そして10)転写因子C/EBPαと相互作用する(例えば、結合する)ことができるの1つまたはそれ以上を有するタンパク質(例えば、PGC−1融合タンパク質)をコードする。
別の態様として、単離された核酸分子は少なくとも15ヌクレオチドの長さであり、そして配列番号:1のヌクレオチド配列または配列番号:1に示されるヌクレオチド配列に少なくとも約50%、好ましくは少なくとも約60%、より好ましくは少なくとも約70%、なおより好ましくは少なくとも約80%、さらにより好ましくは少なくとも約90%、最も好ましくは少なくとも約95%もしくはそれ以上相同なヌクレオチド配列を含んでなる核酸分子にストリンジェントな条件下でハイブリダイズする。好ましくは、単離された核酸分子は天然に存在する核酸分子に相当する。より好ましくは、単離された核酸分子は天然に存在するヒトPGC−1またはその生物学的に活性のある部分をコードする。さらに、PGC−1をコードするcDNA配列(例えば、配列番号:1)の本明細書における開示が与えられると、アンチセンス核酸分子(すなわち、PGC−1
cDNA配列のコーディング鎖に相補的な分子)も本発明により与えられる。
本発明の別の態様は本発明の核酸分子を含有するベクター、例えば、組み換え発現ベクター及びそのようなベクターが導入されている宿主細胞に関する。一つの態様として、適当な培地中で宿主細胞を培養することによりPGC−1タンパク質を製造するためにそのような宿主細胞を用いる。必要な場合、次に、培地または宿主細胞からPGC−1タンパク質を単離することができる。
本発明のさらに別の態様はPGC−1遺伝子が導入されているかまたは改変されているヒト以外のトランスジェニック動物に関する。一つの態様として、導入遺伝子としてPGC−1をコードする本発明の核酸分子の導入によりヒト以外の動物のゲノムが改変されている。別の態様として、ヒト以外の動物のゲノム内の内在性PGC−1遺伝子が相同的組み換えにより改変されており、例えば、機能的に破壊されている。
本発明のさらに別の態様は単離されたPGC−1タンパク質またはその一部、例えば、生物学的に活性のある部分に関する。好ましい態様として、単離されたPGC−1タンパク質またはその一部はBATにおける熱発生を調節することができる。別の好ましい態様として、単離されたPGC−1タンパク質またはその一部はタンパク質またはその一部が以下の生物学的活性:1)PPARγと相互作用する(例えば、結合する)ことができる;2)PPARγ活性を調節することができる;3)UCP発現を調節することができる;4)脂肪細胞における熱発生、例えば、褐色脂肪細胞または筋肉における熱発生を調節することができる;5)脂肪細胞または筋肉における酸素消費を調節することができる;6)脂肪細胞化、例えば、褐色脂肪細胞への白色脂肪細胞の分化を調節することができる;7)細胞のインシュリン感受性、例えば、筋肉細胞、肝細胞、脂肪細胞のインシュリン感受性を調節することができる;8)核ホルモン受容体、例えば、甲状腺ホルモン受容体、エストロゲン受容体、レチノイン酸受容体と相互作用する(例えば、結合する)ことができる;9)核ホルモン受容体の活性を調節することができる;そして10)転写因子C/EBPαと相互作用する(例えば、結合する)ことができるの1つまたはそれ以上を保持するように配列番号:2のアミノ酸配列に十分に相同である。
一つの態様として、PGC−1タンパク質の生物学的に活性のある部分はドメインまたはモチーフ、好ましくはPGC−1生物学的活性を有するドメインまたはモチーフを含む。ドメインまたはモチーフはチロシンリン酸化部位、cAMPリン酸化部位、セリン−アルギニン(SR)に富んだドメイン、RNA結合モチーフ、及び核受容体との相互作用をもたらすLXXLL(配列番号:3)モチーフまたはこれらのドメインまたはモチーフの1つまたはそれ以上の組み合わせであってもよい。好ましくは、これらのドメインまたはモチーフの1つまたはそれ以上を含むPGC−1タンパク質の生物学的に活性のある部分は以下の生物学的活性:1)PPARγと相互作用する(例えば、結合する)ことができる;2)PPARγ活性を調節することができる;3)UCP発現を調節することができる;4)脂肪細胞における熱発生、例えば、褐色脂肪細胞または筋肉における熱発生を調節することができる;5)脂肪細胞または筋肉における酸素消費を調節することができる;6)脂肪細胞化、例えば、褐色脂肪細胞への白色脂肪細胞の分化を調節することができる;7)細胞のインシュリン感受性、例えば、筋肉細胞、肝細胞、脂肪細胞のインシュリン感受性を調節することができる;8)核ホルモン受容体、例えば、甲状腺ホルモン受容体、エストロゲン受容体、レチノイン酸受容体と相互作用する(例えば、結合する)ことができる;9)核ホルモン受容体の活性を調節することができる;そして10)転写因子C/EBPαと相互作用する(例えば、結合する)ことができるのいずれかを有する。
また、本発明はPGC−1タンパク質の単離された調製物も提供する。好ましい態様として、PGC−1タンパク質は配列番号:2のアミノ酸配列または配列番号:2のアミノ酸配列、例えば、配列番号:2の全アミノ酸配列に少なくとも約50%、好ましくは少なくとも約60%、より好ましくは少なくとも約70%、なおより好ましくは少なくとも約80%、さらにより好ましくは少なくとも約90%、そして最も好ましくは少なくとも約95%もしくはそれ以上相同なアミノ酸配列を含んでなる。別の態様として、単離されたPGC−1タンパク質は配列番号:2のアミノ酸配列に少なくとも約50%、好ましくは少なくとも約60%、より好ましくは少なくとも約70%、なおより好ましくは少なくとも約80%、さらにより好ましくは少なくとも約90%、そして最も好ましくは少なくとも約95%またはそれ以上相同なアミノ酸配列を含んでなり、そして本明細書に記述されるPGC−1生物学的活性の1つまたはそれ以上を有する。あるいはまた、単離されたPGC−1タンパク質は、配列番号:1のヌクレオチド配列にハイブリダイズするか、例えば、ストリンジェントな条件下でハイブリダイズするか、または少なくとも約50%、好ましくは少なくとも約60%、より好ましくは少なくとも約70%、なおより好ましくは少なくとも約80%、さらにより好ましくは少なくとも約90%、そして最も好ましくは少なくとも約95%もしくはそれ以上相同なヌクレオチド配列によりコードされるアミノ酸配列を含んでなることができる。また、PGC−1の好ましい形態が本明細書に記述されるPGC−1生物学的活性の1つまたはそれ以上も有することも好ましい。
融合タンパク質を形成するためにPGC−1タンパク質(もしくはポリペプチド)またはその生物学的に活性のある部分をPGC−1以外のポリペプチドに機能的に連結することができる。さらに、タンパク質及び製薬学的に許容しうる担体を含んでなる製薬学的組成物中にPGC−1タンパク質またはその生物学的に活性のある部分を混和することができる。
抗−PGC−1抗体を製造するために本発明のPGC−1タンパク質またはその一部もしくはフラグメントを用いることができる。従って、本発明は配列番号:2に示されるアミノ酸配列(または配列番号:2のアミノ酸配列に少なくとも約50%相同なアミノ酸配列)の少なくとも8アミノ酸残基を含んでなり、そしてペプチドに対して作製される抗体がPGC−1と特異的免疫複合体を形成するようにPGC−1のエピトープを包含するPGC−1の抗原性ペプチドも提供する。好ましくは、抗原性ペプチドは少なくとも10アミノ酸残基、より好ましくは少なくとも15アミノ酸残基、さらにより好ましくは少なくとも20アミノ酸残基、そして最も好ましくは少なくとも30アミノ酸残基を含んでなる。本発明はPGC−1に特異的に結合する抗体をさらに提供する。一つの態様として、抗体はモノクローナルである。別の態様として、抗体を検出可能な物質に連結する。さらに別の態様として、抗体及び製薬学的に許容しうる担体を含んでなる製薬学的組成物中に抗体を組み入れる。
本発明の別の態様は細胞関連活性、例えば、増殖、分化、生存、熱発生、酸素消費を調節するための方法に関する。そのような方法は、細胞関連活性が薬剤の非存在下での細胞の細胞関連活性(例えば、同じ細胞関連活性)に対して改変されるようにPGC−1タンパク質活性またはPGC−1核酸発現を調節する薬剤と細胞を接触させることを含む。好ましい態様として、細胞関連活性は熱発生であり、そして細胞は褐色脂肪細胞である。PGC−1活性を調節する薬剤はPGC−1タンパク質活性またはPGC−1核酸発現を刺激する薬剤であってもよい。PGC−1タンパク質活性またはPGC−1核酸発現を刺激する薬剤の例は、小分子、活性のあるPGC−1タンパク質及び細胞中に導入されているPGC−1をコードする核酸を含む。PGC−1活性または発現を妨げる薬剤の例は、小分子、アンチセンスPGC−1核酸分子及びPGC−1に特異的に結合する抗体を含む。好ましい態様として、細胞は患者内に存在し、そして薬剤が患者に投与される。
また、本発明は様々な疾患にかかっている患者の処置方法にも関する。例えば、本発明は体重疾患、例えば、肥満症、食欲不振、悪液質、または不十分なインシュリン活性と関係する疾患、例えば糖尿病のような異常なPGC−1タンパク質活性または核酸発現を特徴とする疾患にかかっている患者の処置方法に関する。これらの方法は患者の処置が起こるようにPGC−1モジュレーター(例えば、小分子)を患者に投与することを含む。
一つの態様として、本発明は患者にPGC−1アクチベーター、例えば、PGC−1タンパク質もしくはその一部または化合物または薬剤を投与し、それにより疾病の処置が起こるようにPGC−1の発現または活性を上げることを含んでなる、体重疾患、例えば肥満症、または不十分なインシュリン活性と関係する疾患、例えば糖尿病にかかっている患者の処置方法に関する。また、処置が起こるようにPGC−1アクチベーター、例えば、PGC−1タンパク質またはその一部をコードする核酸を疾患にかかっている患者に投与することによっても体重疾患、例えば肥満症、または不十分なインシュリン活性と関係する疾患を本発明に従って処置することができる。
また、本発明はPGC−1遺伝子中の遺伝子損傷を検出し、それにより損傷を受けた遺伝子を有する患者が変種のまたは異常なPGC−1核酸発現またはPGC−1タンパク質活性を特徴とする疾患、例えば、体重疾患または不十分なインシュリン活性と関係する疾患の危険にさらされている(またはかかりやすい)かどうかを決定するための方法にも関する。好ましい態様として、それらの方法は、患者からの細胞のサンプルにおいて、PGC−1タンパク質をコードする遺伝子の完全な状態に影響を与える改変またはPGC−1遺伝子の不適当な発現を特徴とする遺伝子損傷の有無を検出することを含む。
本発明の別の態様は生物学的サンプル中のPGC−1の存在の検出方法に関する。好ましい態様として、それらの方法はPGC−1の存在が生物学的サンプル中に検出されるようにPGC−1タンパク質またはPGC−1
mRNAを検出することができる化合物または薬剤と生物学的サンプル(例えば、心筋細胞、肝細胞、神経細胞、褐色脂肪細胞または筋肉サンプル)を接触させることを含む。化合物または薬剤は、例えば、PGC−1
mRNAにハイブリダイズすることができる標識されたもしくは標識可能な核酸プローブまたはPGC−1タンパク質に結合することができる標識されたもしくは標識可能な抗体であってもよい。 本発明はさらにPGC−1タンパク質またはmRNAの検出に基づく、例えば、体重疾患または不十分なインシュリン活性と関係する疾患にかかっている患者の診断方法を提供する。一つの態様として、本発明はPGC−1タンパク質またはmRNAを検出することができる薬剤と患者からの細胞または組織サンプル(例えば、褐色脂肪細胞サンプル)を接触させ、細胞または組織サンプルにおいて発現されたPGC−1タンパク質またはmRNAの量を決定し、細胞または組織サンプルにおいて発現されたPGC−1タンパク質またはmRNAの量をコントロールサンプルに比較し、コントロールサンプルに比較した場合の細胞または組織サンプルにおいて発現されたPGC−1タンパク質またはmRNAの量に基づいて診断を下すことを含む。好ましくは、細胞サンプルは褐色脂肪細胞サンプルである。生物学的サンプル中のPGC−1を検出するためのキットも本発明の範囲内である。
本発明のさらに別の態様は異常なPGC−1核酸発現またはタンパク質活性を特徴とする疾患、例えば体重疾患または不十分なインシュリン活性と関係する疾患を処置するための化合物を同定するための方法、例えばスクリーニングアッセイに関する。これらの方法は典型的には、PGC−1遺伝子の発現またはPGC−1タンパク質の活性を調節する化合物または薬剤の能力をアッセイし、それにより異常なPGC−1核酸発現またはタンパク質活性を特徴とする疾患を処置するための化合物を同定することを含む。好ましい態様として、その方法は疾患にかかっている患者から得られた生物学的サンプル、例えば細胞または組織サンプル、例えば褐色脂肪細胞サンプルを化合物または薬剤と接触させ、生物学的サンプルにおいて発現されたPGC−1タンパク質の量を決定し、そして/またはPGC−1タンパク質の活性を測定し、生物学的サンプルにおいて発現されたPGC−1タンパク質の量及び/または細胞中の測定可能なPGC−1生物学的活性をコントロールサンプルのものに比較することを含む。コントロールに比較して化合物または薬剤にさらした細胞におけるPGC−1核酸発現の量またはPGC−1タンパク質活性の変化は、PGC−1核酸発現及び/またはPGC−1タンパク質活性の調節を表す。
また、本発明はPGC−1タンパク質と相互作用する(例えば、結合する)化合物または薬剤の同定方法にも関する。これらの方法は複合体を形成するようにPGC−1タンパク質に化合物を結合させる条件下で化合物または薬剤とPGC−1タンパク質を接触させ、そしてPGC−1タンパク質と化合物の複合体の形成を検出する工程を含み、ここにおいて、PGC−1タンパク質に結合する化合物の能力は複合体中の化合物の存在により示される。
本発明はさらに標的分子、例えば、PPARγ、C/EBPα、核ホルモン受容体、例えば、甲状腺ホルモン受容体、エストロゲン受容体、レチノイン酸受容体とPGC−1タンパク質の相互作用を調節する、例えば、刺激するかまたは妨げる化合物または薬剤の同定方法に関する。これらの方法では、複合体を形成するようにPGC−1タンパク質に標的分子を結合させる条件下で、化合物または薬剤の存在下で標的分子とPGC−1タンパク質を接触させる。化合物または薬剤の非存在下で形成される複合体の量に比較した場合のPGC−1タンパク質と標的分子間の複合体形成の変化、例えば、増加または減少は、その化合物または薬剤が標的分子とPGC−1タンパク質の相互作用を調節できることを表す。
発明の詳細な説明
本発明は、脂肪細胞関連活性において役割を果たすかまたは機能する、本明細書においてPGC−1核酸及びタンパク質分子と呼ばれる新規な分子の発見に基づく。一つの態様として、PGC−1分子は脂肪細胞化、例えば、褐色脂肪細胞及び筋肉細胞の脂肪細胞化を調節することができる。別の態様として、PGC−1分子は褐色脂肪細胞における熱発生を調節することができる。例えば、本発明のPGC−1分子は個体の脂肪細胞における熱発生を増加することができ、それにより個体における体重減少を促進する。従って、肥満症を処置するために本発明のPGC−1分子を用いることができる。さらに、PGC−1分子により引き起こされる熱発生活性の増加は、脂肪細胞並びに筋肉細胞及び肝細胞のインシュリン感受性を増すこともできる。従って、糖尿病のような不十分なインシュリン活性を特徴とする疾患を処置するためにも本発明のPGC−1分子を用いることができる。あるいはまた、本発明のPGC−1分子の活性の阻害は個体の脂肪細胞における熱発生を減少することができ、それにより個体における体重減少を抑える。従って、望ましくない体重減少、例えば、悪液質、食欲不振を処置するために本発明のPGC−1分子のモジュレーターを用いることができる。さらに、PGC−1活性を調節することができる分子、例えば小分子をスクリーニングするために標的としても本発明のPGC−1分子を用いることができる。また、体重疾患、例えば、悪液質、食欲不振、肥満症、または不十分なインシュリン活性を特徴とする疾患を処置するためにもPGC−1モジュレーターを用いることができる。
(実施例1において記述される)酵母2ハイブリッドアッセイを用いて決定した場合にPPARγに結合する能力に基づいてマウス褐色脂肪細胞からPGC−1核酸分子を同定した。上に記述したように、PPARγは多数の脂肪特異的遺伝子の直接のレギュレーター及び脂肪細胞化の全プログラムを引き起こすことができる「マスター」レギュレーターの両方として機能する核ホルモン受容体である。さらに、UCP遺伝子プロモーターはPPARγ応答配列を含むので、PPARγのモジュレーターは脂肪細胞化及びUCP発現を調節することができる。UCP発現は熱発生をもたらすことができる。
マウスPGC−1
cDNAのヌクレオチド配列及びマウスPGC−1タンパク質の予測されるアミノ酸配列をそれぞれ図1A、1A−1、1A−2及び2A並びに配列番号:1及び2に示す。ヒト筋肉、心臓、腎臓または脳細胞系のようなヒト細胞系からのcDNAライブラリーを調べるためにマウスヌクレオチド配列の全部または一部(例えば、配列番号:1の5’部分、例えば、配列番号:1のヌクレオチド1−50)を用いて、実施例IIにおいて記述されるような日常的な実験を用いてヒトPGC−1ヌクレオチド配列を得ることができる。約3066ヌクレオチドの長さであるマウスPGC−1遺伝子は、約120kDの分子量を有し、約797アミノ酸残基の長さである全長タンパク質をコードする。PGC−1タンパク質はいくつかのドメイン/モチーフを含む。これらのドメイン/モチーフは:2つの推定上のチロシンリン酸化部位(配列番号:2のアミノ酸残基204−212及び378−385)、3つの推定上のcAMPリン酸化部位(配列番号:2のアミノ酸残基238−241、373−376及び655−658)、セリン−アルギニン(SR)に富んだドメイン(配列番号:2のアミノ酸残基562−600)、RNA結合モチーフ(配列番号:2のアミノ酸残基656−709)並びに核受容体との相互作用をもたらすLXXLLモチーフ(配列番号:2のアミノ酸142−146;配列番号:3)を含む。本明細書に用いられる場合、チロシンリン酸化部位はチロシンプロテインキナーゼによりリン酸化することができる少なくとも1個のチロシン残基を含むアミノ酸配列である。典型的には、チロシンリン酸化部位はリン酸化されるチロシンの約7残基N末端側のリシンまたはアルギニンを特徴とする。チロシンの3または4残基N末端側にしばしば酸性残基(アスパラギンまたはグルタミン)が見られる(Patschinsky、T.等(1982)PNAS 79:973−977);Hunter、T.(1982)J.Biol.Chem.257:4843−4848;Cooper、J.A.等(1984)J.Biol.Chem.259:7835−7841)。本明細書に用いられる場合、cAMPリン酸化部位はcAMP依存性プロテインキナーゼによりリン酸化することができるセリンまたはトレオニン残基を含むアミノ酸配列である。典型的には、cAMPリン酸化部位はセリンまたはトレオニンのN末端側に少なくとも2個の連続した塩基性残基を特徴とする(Fremisco、J.R.等(1980)J.Biol.Chem.255:4240−4245;Glass、D.B.及びSmith、S.B.(1983)J.Biol.Chem.258:14797−14803;Glass、D.B.等(1986)J.Biol.Chem.261:2987−2993)。本明細書に用いられる場合、セリン−アルギニンに富んだドメインはセリン及びアルギニン残基が多いアミノ酸配列である。典型的に、SRに富んだドメインはRNAポリメラーゼIIのCTDドメインと相互作用するかまたはスプライシング機能に関与するドメインである。本明細書に用いられる場合、RNA結合モチーフはRNA分子または一本鎖DNA分子に結合することができるアミノ酸配列である。RNA結合モチーフはLodish、H.、Darnell、J.及びBaltimore、D.、Molecular Cell Biology、第3版(W.H.Freeman and Company、New York、New York、1995)中に記述されている。本明細書に用いられる場合、LXXLL(配列番号:3)はXがあらゆるアミノ酸であってもよく、そして核受容体とコアクチベーター間の相互作用をもたらすモチーフをさす(Heery等(1997)Nature 397:733−736;Torchia等(1997)Nature 387:677−684)。
PGC−1タンパク質は筋肉、心臓、腎臓、脳及び褐色脂肪組織において発現されるが、白色脂肪組織では発現されない。低温順化動物からの組織では、褐色脂肪組織においてPGC−1発現が非常に誘導された。さらに、低温順化動物からの組織において、PGC−1発現は褐色脂肪組織特異的であった。低温順化動物からの組織におけるPGC−1発現は、褐色脂肪組織の熱発生活性を招く褐色脂肪組織マーカーUCPの発現と一致する。
本発明のPGC−1タンパク質または生物学的に活性のある部分もしくはフラグメントは以下の活性:1)PPARγと相互作用する(例えば、結合する)ことができる;2)PPARγ活性を調節することができる;3)UCP発現を調節することができる;4)脂肪細胞における熱発生、例えば、褐色脂肪細胞または筋肉における熱発生を調節することができる;5)脂肪細胞または筋肉における酸素消費を調節することができる;6)脂肪細胞化、例えば、褐色脂肪細胞への白色脂肪細胞の分化を調節することができる;7)細胞のインシュリン感受性、例えば、筋肉細胞、肝細胞、脂肪細胞のインシュリン感受性を調節することができる;8)核ホルモン受容体、例えば、甲状腺ホルモン受容体、エストロゲン受容体、レチノイン酸受容体と相互作用する(例えば、結合する)ことができる;9)核ホルモン受容体の活性を調節することができる;そして10)転写因子C/EBPαと相互作用する(例えば、結合する)ことができるの1つまたはそれ以上を有することができる。
本発明の様々な態様を以下のサブセクションにおいてさらに詳細に記述する:
I.単離された核酸分子
本発明の1つの態様はPGC−1またはその生物学的に活性のある部分をコードする単離された核酸分子、及びPGC−1をコードする核酸(例えば、PGC−1
mRNA)を同定するためのハイブリダイゼーションプローブとしての使用のために十分な核酸フラグメントに関する。本明細書に用いられる場合、「核酸分子」という用語はDNA分子(例えば、cDNAまたはゲノムDNA)及びRNA分子(例えば、mRNA)及びヌクレオチド類似体を用いて作製されたDNAまたはRNAの類似体を含むと考えられる。核酸分子は一本鎖または二本鎖であってもよいが、好ましくは二本鎖のDNAである。「単離された」核酸分子は核酸の天然供給源において存在する他の核酸分子から分離されているものである。好ましくは、「単離された」核酸は、核酸が由来する生物のゲノムDNAにおいて核酸に本来隣接する配列(すなわち、核酸の5’及び3’末端に位置する配列)を含まない。例えば、様々な態様として、単離されたPGC−1核酸分子は、核酸が由来する細胞(例えば、褐色脂肪細胞)のゲノムDNAにおいて核酸分子に本来隣接するヌクレオチド配列の約5kb、4kb、3kb、2kb、1kb、0.5kbまたは0.1kb未満を含むことができる。さらに、cDNA分子のような「単離された」核酸分子は、組み換え技術により製造された場合には他の細胞物質もしくは培養培地を、または化学的に合成された場合には化学前駆物質もしくは他の化学製品を実質的に含まないことができる。
標準的な分子生物学技術及び本明細書に与えられる配列情報を用いて本発明の核酸分子、例えば、配列番号:1のヌクレオチド配列または配列番号:1に示されるヌクレオチド配列に少なくとも約50%、好ましくは少なくとも約60%、より好ましくは少なくとも約70%、なおより好ましくは少なくとも約80%、さらにより好ましくは少なくとも約90%、そして最も好ましくは少なくとも約95%もしくはそれ以上相同なヌクレオチド配列またはそれらの一部(例えば、400、450、500もしくはそれ以上のヌクレオチド)を有する核酸分子を単離することができる。例えば、ハイブリダイゼーションプローブとして配列番号:1の全部または一部及び(例えば、Sambrook、J.、Fritsh、E.F.及びManiatis、T.、Molecular Cloning:A Laboratory Manual.第2版、Cold Spring Harbor Laboratory、Cold Spring Harbor Laboratory Press、Cold Spring Harbor、NY、1989中に記述されたような)標準的なハイブリダイゼーション技術を用いて(Stratagene LaJolla、CAまたはClontech、Palo Alto、CAからの)ヒト心臓、腎臓または脳細胞系からヒトPGC−1
cDNAを単離別することができる。さらに、配列番号:1の配列またはその相同なヌクレオチド配列に基づいて設計されたオリゴヌクレオチドプライマーを用いてポリメラーゼ連鎖反応により配列番号:1または配列番号:1に示されるヌクレオチド配列に少なくとも約50%、好ましくは少なくとも約60%、より好ましくは少なくとも約70%、なおより好ましくは少なくとも約80%、さらにより好ましくは少なくとも約90%、そして最も好ましくは少なくとも約95%もしくはそれ以上相同なヌクレオチド配列の全部もしくは一部を包含する核酸分子を単離することができる。例えば、心臓細胞、腎臓細胞、脳細胞または褐色脂肪細胞から(例えば、Chirgwin等(1979)Biochemistry 18:5294−5299のグアニジニウム−チオシアネート抽出法により)mRNAを単離することができ、そして逆転写酵素(例えば、Gibco/BRL、Bethesda、MDから入手できるモロニーMLV逆転写酵素;またはSeikagaku America,Inc.、St.Petersburg、FLから入手できるAMV逆転写酵素)を用いてcDNAを調製することができる。PCR増幅のための合成オリゴヌクレオチドプライマーを配列番号:1に示されるヌクレオチド配列またはその相同なヌクレオチド配列に基づいて設計することができる。標準的なPCR増幅技術に従って鋳型としてcDNAあるいはまたゲノムDNA及び適切なオリゴヌクレオチドプライマーを用いて本発明の核酸を増幅することができる。そのように増幅された核酸を適切なベクター中にクローン化し、DNA配列分析により特性化することができる。さらに、標準的な合成技術により、例えば、自動DNA合成機を用いてPGC−1ヌクレオチド配列に相当するオリゴヌクレオチドを調製することができる。
好ましい態様として、本発明の単離された核酸分子は配列番号:1に示されるヌクレオチド配列または配列番号:1に示されるヌクレオチド配列に少なくとも約50%、好ましくは少なくとも約60%、より好ましくは少なくとも約70%、なおより好ましくは少なくとも約80%、さらにより好ましくは少なくとも約90%、そして最も好ましくは少なくとも約95%もしくはそれ以上相同なヌクレオチド配列を含んでなる。配列番号:1の配列はマウスPGC−1
cDNAに相当する。このcDNAはPGC−1タンパク質をコードする配列(すなわち、「コーディング領域」、ヌクレオチド92から2482まで)並びに5’非翻訳配列(ヌクレオチド1ないし91)及び3’非翻訳配列(ヌクレオチド2483ないし3066)を含んでなる。あるいはまた、核酸分子は配列番号:1のコーディング領域のみ(例えば、ヌクレオチド92ないし2482)または相同なヌクレオチド配列を含んでなることができる。
別の好ましい態様として、本発明の単離された核酸分子は配列番号:1に示されるヌクレオチド配列または配列番号:1に示されるヌクレオチド配列に少なくとも約50%、好ましくは少なくとも約60%、より好ましくは少なくとも約70%、なおより好ましくは少なくとも約80%、さらにより好ましくは少なくとも約90%、そして最も好ましくは少なくとも約95%もしくはそれ以上相同なヌクレオチド配列の相補物である核酸分子を含んでなる。配列番号:1に示されるヌクレオチド配列または配列番号:1に示されるヌクレオチド配列に少なくとも約50%、好ましくは少なくとも約60%、より好ましくは少なくとも約70%、なおより好ましくは少なくとも約80%、さらにより好ましくは少なくとも約90%、そして最も好ましくは少なくとも約95%もしくはそれ以上相同なヌクレオチド配列に相補的な核酸分子は、配列番号:1に示されるヌクレオチド配列または相同な配列にハイブリダイズすることができ、それにより安定な二本鎖を形成するように配列番号:1に示されるヌクレオチド配列または相同な配列に十分に相補的なものである。 さらに別の好ましい態様として、本発明の単離された核酸分子は配列番号:1に示されるヌクレオチド配列またはこのヌクレオチド配列の一部に少なくとも約50%、好ましくは少なくとも約60%、より好ましくは少なくとも約70%、なおより好ましくは少なくとも約80%、さらにより好ましくは少なくとも約90%、そして最も好ましくは少なくとも約95%もしくはそれ以上相同なヌクレオチド配列を含んでなる。さらに好ましい態様として、本発明の単離された核酸分子は配列番号:1に示されるヌクレオチド配列または配列番号:1に示されるヌクレオチド配列に少なくとも約50%、好ましくは少なくとも約60%、より好ましくは少なくとも約70%、なおより好ましくは少なくとも約80%、さらにより好ましくは少なくとも約90%、そして最も好ましくは少なくとも約95%もしくはそれ以上相同なヌクレオチド配列にハイブリダイズする、例えば、ストリンジェントな条件下でハイブリダイズするヌクレオチド配列を含んでなる。
さらに、本発明の核酸分子は配列番号:1のコーディング領域または配列番号:1に示されるヌクレオチド配列に少なくとも約50%、好ましくは少なくとも約60%、より好ましくは少なくとも約70%、なおより好ましくは少なくとも約80%、さらにより好ましくは少なくとも約90%、そして最も好ましくは少なくとも約95%もしくはそれ以上相同なヌクレオチド配列のコーディング領域の一部のみ、例えば、プローブもしくはプライマーとして用いることができるフラグメントまたはPGC−1の生物学的に活性のある部分をコードするフラグメントを含んでなることができる。
マウスからのPGC−1遺伝子のクローニングから決定されたヌクレオチド配列により、例えば他の組織からの、他の細胞型におけるPGC−1相同物及びヒトのような他の哺乳類からのPGC−1相同物の同定及び/またはクローニングに用いるために設計されるプローブ及びプライマーを作製することができる。典型的には、プローブ/プライマーは実質的に精製されたオリゴヌクレオチドを含んでなる。典型的に、オリゴヌクレオチドは配列番号:1のセンス、配列番号:1のアンチセンス配列またはそれらの天然に存在する突然変異体の少なくとも約12、好ましくは少なくとも約25、より好ましくは約40、50または75の連続したヌクレオチドにストリンジェントな条件下でハイブリダイズするヌクレオチド配列の領域を含んでなる。PGC−1相同物をクローン化するために配列番号:1のヌクレオチド配列に基づくプライマーをPCR反応において用いることができる。PGC−1ヌクレオチド配列に基づくプローブを同じまたは相同なタンパク質をコードする転写産物またはゲノム配列を検出するために用いることができる。好ましい態様として、プローブはそれに結合した標識基をさらに含んでなり、例えば、標識基は放射性同位体、蛍光化合物、酵素または酵素補因子であってもよい。患者からの細胞のサンプル中のPGC−1をコードする核酸のレベルを測定する、例えば、PGC−1
mRNAレベルを検出するかまたはゲノムのPGC−1遺伝子が突然変異を受けるかもしくは欠失しているかどうかを決定することによるような、PGC−1タンパク質を不適当に発現する細胞または組織を同定するための診断試験キットの一部としてそのようなプローブを用いることができる。
一つの態様として、本発明の核酸分子はタンパク質またはその一部が以下の生物学的活性:1)PPARγと相互作用する(例えば、結合する)ことができる;2)PPARγ活性を調節することができる;3)UCP発現を調節することができる;4)脂肪細胞における熱発生、例えば、褐色脂肪細胞または筋肉における熱発生を調節することができる;5)脂肪細胞または筋肉における酸素消費を調節することができる;6)脂肪細胞化、例えば、褐色脂肪細胞への白色脂肪細胞の分化を調節することができる;7)細胞のインシュリン感受性、例えば、筋肉細胞、肝細胞、脂肪細胞のインシュリン感受性を調節することができる;8)核ホルモン受容体、例えば、甲状腺ホルモン受容体、エストロゲン受容体、レチノイン酸受容体と相互作用する(例えば、結合する)ことができる;9)核ホルモン受容体の活性を調節することができる;そして10)転写因子C/EBPαと相互作用する(例えば、結合する)ことができるの1つまたはそれ以上を保持するように配列番号:2のアミノ酸配列に十分に相同なアミノ酸配列を含むタンパク質またはその一部をコードする。
本明細書に用いられる場合、「十分に相同な」という用語はタンパク質またはその一部が以下の生物学的活性:1)PPARγと相互作用する(例えば、結合する)ことができる;2)PPARγ活性を調節することができる;3)UCP発現を調節することができる;4)脂肪細胞における熱発生、例えば、褐色脂肪細胞または筋肉における熱発生を調節することができる;5)脂肪細胞または筋肉における酸素消費を調節することができる;6)脂肪細胞化、例えば、褐色脂肪細胞への白色脂肪細胞の分化を調節することができる;7)細胞のインシュリン感受性、例えば、筋肉細胞、肝臓細胞、脂肪細胞のインシュリン感受性を調節することができる;8)核ホルモン受容体、例えば、甲状腺ホルモン受容体、エストロゲン受容体、レチノイン酸受容体と相互作用する(例えば、結合する)ことができる;9)核ホルモン受容体の活性を調節することができる;そして10)転写因子C/EBPαと相互作用する(例えば、結合する)ことができるの1つまたはそれ以上を保持するように配列番号:2のアミノ酸配列に同一のまたは同等な(例えば、配列番号:2のアミノ酸残基と類似した側鎖を有するアミノ酸残基)アミノ酸残基の最少数を含むアミノ酸配列を有するタンパク質またはその一部をさす。別の態様として、タンパク質は配列番号:2の全アミノ酸配列に少なくとも約50%、好ましくは少なくとも約60%、より好ましくは少なくとも約70%、なおより好ましくは少なくとも約80%、さらにより好ましくは少なくとも約90%、そして最も好ましくは少なくとも約95%またはそれ以上相同である。
本発明のPGC−1核酸分子によりコードされるタンパク質の一部は好ましくはPGC−1タンパク質の生物学的に活性のある部分である。本明細書に用いられる場合、「PGC−1の生物学的に活性のある部分」という用語は以下の活性:1)PPARγと相互作用する(例えば、結合する)ことができる;2)PPARγ活性を調節することができる;3)UCP発現を調節することができる;4)脂肪細胞における熱発生、例えば、褐色脂肪細胞または筋肉における熱発生を調節することができる;5)脂肪細胞または筋肉における酸素消費を調節することができる;6)脂肪細胞化、例えば、褐色脂肪細胞への白色脂肪細胞の分化を調節することができる;7)細胞のインシュリン感受性、例えば、筋肉細胞、肝細胞、脂肪細胞のインシュリン感受性を調節することができる;8)核ホルモン受容体、例えば、甲状腺ホルモン受容体、エストロゲン受容体、レチノイン酸受容体と相互作用する(例えば、結合する)ことができる;9)核ホルモン受容体の活性を調節することができる;そして10)転写因子C/EBPαと相互作用する(例えば、結合する)ことができるの1つまたはそれ以上を有するPGC−1の部分、例えば、ドメイン/モチーフを含むと考えられる。
PPARγ、C/EBPα及び核ホルモン受容体と相互作用する(例えば、結合する)PGC−1タンパク質またはその生物学的に活性のある部分の能力を決定するために標準的な結合アッセイ、例えば、免疫沈降法及び本明細書に記述されるような酵母2−ハイブリッドアッセイを実施することができる。PGC−1分子がPPARγ、C/EBPα及び/または核ホルモン受容体と相互作用することが認められる場合、それらはPPARγ、C/EBPα及び核ホルモン受容体の活性のモジュレーターでもあると思われる。
本発明のPGC−1分子がUCP発現を調節するかどうかを決定するために、インビトロ転写アッセイを実施することができる。そのようなアッセイを実施するために、UCPの全長プロモーター及びエンハンサーをクロラムフェニコールアセチルトランスフェラーゼ(CAT)のようなレポーター遺伝子に連結し、宿主細胞中に導入することができる。次に、その宿主細胞にPPARγ/RXRα及びPGC−1分子をコードする核酸をトランスフェクトすることができる。CAT活性を試験し、PGC−1分子をコードする核酸を含まない細胞におけるCAT活性にそれを比較することによりPGC−1分子の影響を測定することができる。CAT活性の増加または減少はUCP発現の調節を表し、UCP発現は高められた熱発生を引き起こす事象のカスケードにおける重要な要素であることが知られているので、このアッセイは脂肪細胞における熱発生を調節するPGC−1分子の能力も測定することができる。
また、UCP発現は褐色脂肪組織に特異的であるので、UCP発現を調節するPGC−1分子の能力を試験するための上記のアッセイを脂肪細胞化、例えば、褐色脂肪組織への白色脂肪組織の分化を調節するPGC−1分子の能力を試験するためにも用いることができる。PGC−1分子がUCP発現を調節できる場合、それはおそらく褐色脂肪組織への白色脂肪組織の分化を調節できる。あるいはまた、PGC−1分子を細胞、例えば白色脂肪細胞中に導入し、そしてPGC−1分子を含まないコントロール細胞中のミトコンドリアの数に比較した場合の細胞中のミトコンドリアの数を測定することにより褐色脂肪組織への白色脂肪組織の分化を調節するPGC−1分子の能力を測定することができる。褐色脂肪細胞は白色脂肪細胞より実質的に多数のミトコンドリアを含有することが知られているので、コントロール細胞に比較した場合の試験細胞中のミトコンドリアの数(またはシトクロムcオキシダーゼのようなミトコンドリアマーカー)の増加または減少は、PGC−1分子が褐色脂肪組織への白色脂肪組織の分化を調節できることを表す。
PGC−1タンパク質を発現するように細胞、例えば、筋肉細胞、肝細胞または脂肪細胞を形質転換し、放射性標識したグルコース(14Cグルコース)とインキュベートし、インシュリンで処理するアッセイを実施することにより、細胞のインシュリン感受性を調節するPGC−1分子の能力を決定することができる。コントロール細胞に比較した場合のPGC−1を含有する細胞におけるグルコースの増加または減少は、PGC−1が細胞のインシュリン感受性を調節できることを表す。あるいはまた、PGC−1を含有する細胞を放射性標識したリン酸源(例えば、[32P]ATP)とインキュベートし、インシュリンで処理することができる。次に、インシュリン経路のタンパク質、例えば、インシュリン受容体のリン酸化を測定することができる。コントロール細胞に比較した場合のPGC−1を含有する細胞におけるインシュリン経路のタンパク質のリン酸化の増加または減少は、PGC−1が細胞のインシュリン感受性を調節できることを表す。
一つの態様として、PGC−1の生物学的に活性のある部分はドメインまたはモチーフを含んでなる。そのようなドメイン/モチーフの例はチロシンリン酸化部位、cAMPリン酸化部位、セリン−アルギニン(SR)に富んだドメイン、RNA結合モチーフ及び核受容体との相互作用をもたらすLXXLL(配列番号:3)モチーフを含む。好ましい態様として、ドメインまたはモチーフを含むタンパク質の生物学的に活性のある部分は褐色脂肪細胞への白色脂肪細胞の分化及び/または褐色脂肪細胞における熱発生を調節することができる。これらのドメインは本明細書において詳細に記述されている。配列番号:1または相同なヌクレオチド配列の一部を単離し、(例えば、インビトロでの組み換え発現により)PGC−1タンパク質またはペプチドのコードされる部分を発現させ、そしてPGC−1タンパク質またはペプチドのコードされる部分の活性を評価することにより、PGC−1の生物学的に活性のある部分をコードするさらなる核酸フラグメントを調製することができる。
本発明はさらに遺伝暗号の縮重のために配列番号:1に示されるヌクレオチド配列(及びその一部)と異なり、従って、配列番号:1に示されるヌクレオチド配列によりコードされるものと同じPGC−1タンパク質をコードする核酸分子を包含する。別の態様として、本発明の単離された核酸分子は配列番号:2に示されるアミノ酸配列を有するタンパク質または配列番号:2のアミノ酸配列に少なくとも約50%、好ましくは少なくとも約60%、より好ましくは少なくとも約70%、なおより好ましくは少なくとも約80%、さらにより好ましくは少なくとも約90%、そして最も好ましくは少なくとも約95%もしくはそれ以上相同なアミノ酸配列を有するタンパク質をコードするヌクレオチド配列を有する。
配列番号:1に示されるマウスPGC−1ヌクレオチド配列に加えて、PGC−1のアミノ酸配列の変異をもたらすDNA配列多型が集団(例えば哺乳類集団、例えばヒト集団)内に存在する可能性があることを当業者は認識する。PGC−1遺伝子中のそのような遺伝子多型は天然の対立遺伝子変異のために集団内の個体間に存在する可能性がある。本明細書に用いられる場合、「遺伝子」及び「組み換え遺伝子」という用語はPGC−1タンパク質、好ましくは哺乳類、例えばヒトPGC−1タンパク質をコードするオープンリーディングフレームを含んでなる核酸分子をさす。そのような天然の対立遺伝子変異は典型的にPGC−1遺伝子のヌクレオチド配列の1−5%の相違をもたらす傾向がある。天然の対立遺伝子変異の結果であり、そしてPGC−1の機能的活性に影響を与えないPGC−1中の全てのそのようなヌクレオチド変異及び得られるアミノ酸多型は本発明の範囲内であると考えられる。さらに、他の種からのPGC−1タンパク質をコードし、従って、配列番号:1のマウス配列と異なるヌクレオチド配列を有する核酸分子は本発明の範囲内であると考えられる。ストリンジェントなハイブリダイゼーション条件下で標準的なハイブリダイゼーション技術に従ってハイブリダイゼーションプローブとしてマウスcDNAまたはその一部を用いて、本発明のマウスPGC−1
cDNAの天然の対立遺伝子変異体及びヒト相同物に相当する核酸分子を本明細書に開示されるマウスPGC−1核酸に対するそれらの相同性に基づいて単離することができる(実施例II参照)。 従って、別の態様として、本発明の単離された核酸分子は少なくとも15ヌクレオチドの長さであり、そしてストリンジェントな条件下で配列番号:1のヌクレオチド配列または配列番号:1のヌクレオチド配列に約60%、好ましくは少なくとも約70%、より好ましくは少なくとも約80%、さらにより好ましくは少なくとも約90%、最も好ましくは少なくとも約95%もしくはそれ以上相同なヌクレオチド配列を含んでなる核酸分子にハイブリダイズする。別の態様として、核酸は少なくとも30、50、100、250または500ヌクレオチドの長さである。本明細書に用いられる場合、「ストリンジェントな条件下でハイブリダイズする」という用語は、典型的に相互に少なくとも60%相同なヌクレオチド配列が相互にハイブリダイズしたままであるハイブリダイゼーション及び洗浄の条件を表すと考えられる。好ましくは、その条件は典型的に相互に少なくとも約65%、より好ましくは少なくとも約70%、さらにより好ましくは少なくとも約75%またはそれ以上相同な配列が相互にハイブリダイズしたままであるようにである。そのようなストリンジェントな条件は当業者に知られており、そしてCurrent Protocols in Molecular Biology、John Wiley
& Sons、N.Y.(1989)、6.3.1−6.3.6中に見いだすことができる。ストリンジェントなハイブリダイゼーション条件の好ましい限定しない例は、約45℃で6X
塩化ナトリウム/クエン酸ナトリウム(SSC)中でのハイブリダイゼーション及びそれに続く50−65℃で0.2X SSC、0.1% SDS中での1回またはそれ以上の洗浄である。好ましくは、ストリンジェントな条件下で配列番号:1の配列にハイブリダイズする本発明の単離された核酸分子は天然に存在する核酸分子に相当する。本明細書に用いられる場合、「天然に存在する」核酸分子は天然に存在するヌクレオチド配列を有する(例えば、天然のタンパク質をコードする)RNAまたはDNA分子をさす。一つの態様として、核酸は天然のヒトPGC−1をコードする。
集団中に存在する可能性があるPGC−1配列の天然に存在する対立遺伝子変異体に加えて、配列番号:1のヌクレオチド配列中に突然変異により変異を導入することができ、それにより、PGC−1タンパク質の機能的能力を変えずに、コードされるPGC−1タンパク質のアミノ酸配列中に変異をもたらすことを当業者はさらに認識する。例えば、「必須でない」アミノ酸残基でアミノ酸置換をもたらすヌクレオチド置換を配列番号:1の配列中に作製することができる。「必須でない」アミノ酸残基はPGC−1の活性を変えずにPGC−1の野生型配列(例えば、配列番号:2の配列)から改変することができる残基であり、一方、「必須の」アミノ酸残基はPGC−1活性のために必要とされる。例えば、PPARγへのPGC−1の相互作用に関与するアミノ酸残基はおそらくPGC−1の必須の残基である。しかしながら、他のアミノ酸残基(例えば、マウスとヒトの間で保存されていないかまたは半保存的でしかないもの)は活性のために必須でない可能性があり、従って、PGC−1活性を変えずに容易に改変できると思われる。
従って、本発明の別の態様はPGC−1活性に必須でないアミノ酸残基に変異を含むPGC−1タンパク質をコードする核酸分子に関する。そのようなPGC−1タンパク質は配列番号:2とアミノ酸配列が異なるが、なお、本明細書に記述されるPGC−1活性の少なくとも1つを保持する。一つの態様として、単離された核酸分子はタンパク質をコードするヌクレオチド配列を含んでなり、その場合、タンパク質は配列番号:2のアミノ酸配列に少なくとも約60%相同なアミノ酸配列を含んでなり、そして褐色脂肪細胞への白色脂肪細胞の分化及び/または褐色脂肪細胞の熱発生を調節することができる。好ましくは、核酸分子によりコードされるタンパク質は、配列番号:2のアミノ酸配列に少なくとも約70%相同であり、好ましくは少なくとも約80−85%相同であり、さらにより好ましくは少なくとも約90%、そして最も好ましくは少なくとも約95%相同である。
本明細書に用いられる場合、「配列同一性または相同性」は2つのポリペプチド分子間または2つの核酸分子間の配列類似性をさす。2つの比較される配列の両方のある位置が同じ塩基またはアミノ酸モノマーサブユニットにより占められる場合、例えば、2つのDNA分子の各々のある位置がアデニンにより占められる場合、その位置でそれらの分子は相同であるかまたは配列が同一である。2つの配列間の相同性または配列同一性のパーセントは、比較する位置の数で割った2つの配列により共有される一致するかまたは相同な同一位置の数x100の関数である。例えば、2つの配列の10のうち6の位置が同じである場合、それら2つの配列は60%相同であるかまたは60%の配列同一性を有する。例として、DNA配列ATTGCCとTATGGCは50%の相同性または配列同一性を共有する。通例、最大の相同性を与えるように2つの配列を整列して比較を実施する。他に特定されないかぎり、「ループアウト領域」、例えば、配列のいずれか中の欠失または挿入から生じるものをミスマッチとして数える。
2つの配列間の配列の比較及び相同性パーセントの決定を数学的アルゴリズムを用いて成し遂げることができる。好ましくは、Clustal法を用いて整列を実施することができる。複数の整列パラメーターはGAPペナルティー=10、GAP長ペナルティー=10を含む。DNA整列では、対毎の整列パラメーターはHtuple=2、Gapペナルティー=5、Window=4及びDiagonal Saved=4であってもよい。タンパク質整列では、対毎の整列パラメーターはKtuple=1、Gapペナルティー=3、Window=5及びDiagonals Saved=5であってもよい。
配列の比較のために利用される数学的アルゴリズムのさらなる限定しない例は、Karlin及びAltschul 1993 Proc.Natl.Acad.Sci.USA 90:5873−77中のように改変されたKarlin及びAltschul 1990 Proc.Natl.Acad.Sci.USA 87:2264−68のアルゴリズムである。そのようなアルゴリズムはAltschul等 1990 J.Mol.Biol.215:403−10のNBLAST及びXBLASTプログラム(バージョン2.0)中に組み込まれている。本発明の核酸分子に相同なヌクレオチド配列を得るためにNBLASTプログラム、スコア=100、ワードレングス(wordlength)=12でBLASTヌクレオチド検索を実施することができる。本発明のタンパク質分子に相同なアミノ酸配列を得るためにXBLASTプログラム、スコア=50、ワードレングス=3でBLASTタンパク質検索を実施することができる。比較目的のためにギャップを調整した整列を得るために、Altschul等、1997 Nucleic Acids Research 25(17):3389−3402中に記述されたようにGapped BLASTを利用することができる。BLAST及びGapped BLASTプログラムを利用する場合、それぞれのプログラム(例えば、XBLAST及びNBLAST)のデフォールトパラメーターを用いることができる。http://www.ncbi.nlm.nih.gov.を参照。配列の比較のために利用される数学的アルゴリズムの別の好ましい限定しない例はMyers及びMiller、CABIOS 1989のアルゴリズムである。そのようなアルゴリズムはGCG配列整列ソフトウェアパッケージの一部であるALIGNプログラム(バージョン2.0)中に組み込まれている。アミノ酸配列を比較するためにALIGNプログラムを利用する場合、PAM120重量残基表(weight residue table)、12のギャップ長ペナルティー及び4のギャップペナルティーを用いることができる。
1つまたはそれ以上のアミノ酸置換、付加または欠失がコードされるタンパク質中に導入されるように1つまたはそれ以上のヌクレオチド置換、付加または欠失を配列番号:1のヌクレオチド配列または相同なヌクレオチド配列中に導入することにより、配列番号:2のタンパク質に相同なPGC−1タンパク質をコードする単離された核酸分子を作製することができる。部位特異的突然変異誘発及びPCRによる突然変異誘発のような標準技術により配列番号:1または相同なヌクレオチド配列中に突然変異を導入することができる。好ましくは、1つまたはそれ以上の予測される必須でないアミノ酸残基で保存的アミノ酸置換を作製する。「保存的アミノ酸置換」は、アミノ酸残基が類似した側鎖を有するアミノ酸残基で置換されるものである。類似した側鎖を有するアミノ酸残基のグループは当該技術分野で特定されている。これらのグループは塩基性側鎖(例えば、リシン、アルギニン、ヒスチジン)、酸性側鎖(例えば、アスパラギン酸、グルタミン酸)、無荷電極性側鎖(例えば、グリシン、アスパラギン、グルタミン、セリン、トレオニン、チロシン、システイン)、非極性側鎖(例えば、アラニン、バリン、ロイシン、イソロイシン、プロリン、フェニルアラニン、メチオニン、トリプトファン)、β−分枝した側鎖(例えば、トレオニン、バリン、イソロイシン)及び芳香族側鎖(例えば、チロシン、フェニルアラニン、トリプトファン、ヒスチジン)を有するアミノ酸を含む。従って、PGC−1中の予測される必須でないアミノ酸残基は好ましくは同じ側鎖グループからの別のアミノ酸残基で置換される。あるいはまた、別の態様として、飽和突然変異誘発によるように、PGC−1コーディング配列の全部または一部に沿って無作為に突然変異を導入することができ、そしてPGC−1活性を保持する突然変異体を同定するために本明細書に記述されるPGC−1活性に関して得られた突然変異体をスクリーニングすることができる。配列番号:1の突然変異誘発後に、コードされるタンパク質を(例えば、実施例IVにおいて記述されるように)組み換えで発現させることができ、そして例えば本明細書に記述されるアッセイを用いてタンパク質の活性を決定することができる。
上記のPGC−1タンパク質をコードする核酸分子に加えて、本発明の別の態様はそれにアンチセンスである単離された核酸分子に関する。「アンチセンス」核酸はタンパク質をコードする「センス」核酸に相補的な、例えば、二本鎖cDNA分子のコーディング鎖に相補的なまたはmRNA配列に相補的なヌクレオチド配列を含んでなる。従って、アンチセンス核酸はセンス核酸に水素結合することができる。アンチセンス核酸は全PGC−1コーディング鎖またはその一部のみに相補的であってもよい。一つの態様として、アンチセンス核酸分子はPGC−1をコードするヌクレオチド配列のコーディング鎖の「コーディング領域」にアンチセンスである。「コーディング領域」という用語はアミノ酸残基に翻訳されるコドンを含んでなるヌクレオチド配列の領域をさす(例えば、配列番号:1の全コーディング領域はヌクレオチド92ないし2482を含んでなる)。別の態様として、アンチセンス核酸分子はPGC−1をコードするヌクレオチド配列のコーディング鎖の「非コーディング領域」にアンチセンスである。「非コーディング領域」という用語はアミノ酸に翻訳されないコーディング領域に隣接する5’及び3’配列をさす(すなわち、5’及び3’非翻訳領域とも呼ばれる)。
本明細書に開示されるPGC−1をコードするコーディング鎖配列(例えば、配列番号:1)が与えられると、ワトソン・クリック塩基対合の規則に従って本発明のアンチセンス核酸を設計することができる。アンチセンス核酸分子はPGC−1
mRNAの全コーディング領域に相補的であってもよいが、より好ましくは、PGC−1 mRNAのコーディングまたは非コーディング領域の一部にのみアンチセンスであるオリゴヌクレオチドである。例えば、アンチセンスオリゴヌクレオチドはPGC−1
mRNAの翻訳開始部位付近の領域に相補的であってもよい。アンチセンスオリゴヌクレオチドは例えば約5、10、15、20、25、30、35、40、45または50ヌクレオチドの長さであってもよい。当該技術分野において知られている方法を用いて化学合成及び酵素的連結反応を用いて本発明のアンチセンス核酸を構築することができる。例えば、天然に存在するヌクレオチドを用いてアンチセンス核酸(例えば、アンチセンスオリゴヌクレオチド)を化学的に合成することができ、または分子の生物学的安定性を増すためもしくはアンチセンスとセンスの核酸の間で形成される二本鎖の物理的安定性を増すために考案された様々に改変されたヌクレオチド、例えばモノチオリン酸誘導体及びアクリジン置換されたヌクレオチドを用いることができる。アンチセンス核酸を作製するために用いることができる改変されたヌクレオチドの例は5−フルオロウラシル、5−ブロモウラシル、5−クロロウラシル、5−ヨードウラシル、ヒポキサンチン、キサンチン、4−アセチルシトシン、5−(カルボキシヒドロキシメチル)ウラシル、5−カルボキシメチルアミノメチル−2−チオウリジン、5−カルボキシメチルアミノメチルウラシル、ジヒドロウラシル、β−D−ガラクトシルキューオシン(β−D−galactosylqueosine)、イノシン、N6−イソペンテニルアデニン、1−メチルグアニン、1−メチルイノシン、2,2−ジメチルグアニン、2−メチルアデニン、2−メチルグアニン、3−メチルシトシン、5−メチルシトシン、N6−アデニン、7−メチルグアニン、5−メチルアミノメチルウラシル、5−メトキシアミノメチル−2−チオウラシル、β−D−マンノシルキューオシン(β−D−mannosylqueosine)、5’−メトキシカルボキシメチルウラシル、5−メトキシウラシル、2−メチルチオ−N6−イソペンテニルアデニン、ウラシル−5−オキシ酢酸(v)、ワイブトキソシン(wybutoxosine)、プソイドウラシル、キューオシン(queosine)、2−チオシトシン、5−メチル−2−チオウラシル、2−チオウラシル、4−チオウラシル、5−メチルウラシル、ウラシル−5−オキシ酢酸メチルエステル、ウラシル−5−オキシ酢酸(v)、5−メチル−2−チオウラシル、3−(3−アミノ−3−N−2−カルボキシプロピル)ウラシル、(acp3)w及び2,6−ジアミノプリンを含む。あるいはまた、核酸がアンチセンスの向きにサブクローン化されている(すなわち、挿入された核酸から転写されるRNAが目的の標的核酸にアンチセンスの向きのものである、以下のサブセクションにおいてさらに記述される)発現ベクターを用いてアンチセンス核酸を生物学的に製造することができる。
本発明のアンチセンス核酸分子は、典型的に、それらがPGC−1タンパク質をコードする細胞のmRNA及び/またはゲノムDNAとハイブリダイズするかまたは結合し、それにより例えば、転写及び/または翻訳を妨げることにより、タンパク質の発現を制えるように患者に投与されるかまたはインサイチューで作製される。ハイブリダイゼーションは安定な二本鎖を形成するための通常のヌクレオチド相補性によるか、または例えばDNA二本鎖に結合するアンチセンス核酸分子の場合には二重らせんの主溝における特異的相互作用によってもよい。本発明のアンチセンス核酸分子の投与の経路の例は組織部位での直接注入を含む。あるいはまた、選択した細胞を標的とするようにアンチセンス核酸分子を改変し、次に、全身的に投与することができる。例えば、全身投与のために、選択した細胞表面上に発現される受容体または抗原にアンチセンス分子が特異的に結合するように、例えば、細胞表面受容体または抗原に結合するペプチドまたは抗体にアンチセンス核酸分子を連結することにより、それを改変することができる。また、本明細書に記述されるベクターを用いてアンチセンス核酸分子を細胞に送達することもできる。アンチセンス分子の十分な細胞内濃度を得るために、アンチセンス核酸分子が強いpolIIまたはpolIIIプロモーターの制御下に置かれるベクター構築物が好ましい。
さらに別の態様として、本発明のアンチセンス核酸分子はα−アノマーの核酸分子である。α−アノマーの核酸分子は相補的RNAと特異的二本鎖ハイブリッドを形成し、その場合、通常のβ−単位に反してそれらの鎖は相互に平行して伸びている(Gaultier等(1987)Nucleic Acids.Res.15:6625−6641)。また、アンチセンス核酸分子は2’−o−メチルリボヌクレオチド(Inoue等(1987)Nucleic Acids.Res.15:6131−6148)またはキメラのRNA−DNA類似体(Inoue等(1987)FEBS Lett.215:327−330)も含んでなることができる。
さらに別の態様として、本発明のアンチセンス核酸はリボザイムである。リボザイムは、それらが相補的な領域を有する、mRNAのような一本鎖の核酸を切断することができるリボヌクレアーゼ活性を有する触媒RNA分子である。従って、PGC−1
mRNA転写産物を触媒的に切断し、それによりPGC−1 mRNAの翻訳を妨げるためにリボザイム(例えば、(Haselhoff及びGerlach(1988)Nature 334:585−591中に記述された)ハンマーヘッド型リボザイム)を用いることができる。本明細書に開示されるPGC−1
cDNAのヌクレオチド配列(例えば、配列番号:1)に基づいてPGC−1をコードする核酸に対して特異性を有するリボザイムを設計することができる。例えば、活性部位のヌクレオチド配列がPGC−1をコードするmRNAにおいて切断されるヌクレオチド配列に相補的である、テトラヒメナ(Tetrahymena)L−19
IVS RNAの誘導体を構築することができる。例えば、Cech等、米国特許第4,987,071号及びCech等、米国特許第5,116,742号を参照。あるいはまた、RNA分子のプールから特定のリボヌクレアーゼ活性を有する触媒RNAを選択するためにPGC−1
mRNAを用いることができる。例えば、Bartel、D.及びSzostak、J.W.(1993)Science 261:1411−1418を参照。
あるいはまた、標的細胞においてPGC−1遺伝子の転写を妨げる三重らせん構造を形成するようにPGC−1の調節領域(例えば、PGC−1プロモーター及び/またはエンハンサー)に相補的なヌクレオチド配列を標的とすることによりPGC−1遺伝子発現を抑えることができる。一般的には、Helene、C.(1991)Anticancer Drug Des.6(6):569−84;Helene、C.等(1992)Ann.N.Y.Acad.Sci.660:27−36;及びMaher、L.J.(1992)Bioassays 14(12):807−15を参照。
II.組み換え発現ベクター及び宿主細胞
本発明の別の態様はPGC−1(またはその一部)をコードする核酸を含有するベクター、好ましくは発現ベクターに関する。本明細書に用いられる場合、「ベクター」という用語は連結されている別の核酸を運ぶことができる核酸分子をさす。ベクターの一つの型は「プラスミド」であり、それはさらなるDNAセグメントを中に連結することができる環状の二本鎖DNAループをさす。別の型のベクターはウイルスベクターであり、その場合、ウイルスゲノム中にさらなるDNAセグメントを連結することができる。ある種のベクターは導入される宿主細胞において自律複製することができる(例えば、バクテリアの複製起点を有するバクテリアベクター及びエピソーム型哺乳類ベクター)。他のベクター(例えば、非エピソーム型哺乳類ベクター)は宿主細胞中への導入時に宿主細胞のゲノム中に組込まれ、それにより宿主ゲノムと一緒に複製される。さらに、ある種のベクターは機能的に連結されている遺伝子の発現を導くことができる。そのようなベクターは本明細書において「発現ベクター」と呼ばれる。通例、組み換えDNA技術において有用な発現ベクターはしばしばプラスミドの形態である。プラスミドはベクターの最も一般的に用いられる形態であるので、本明細書において「プラスミド」と「ベクター」を互換的に用いることができる。しかしながら、本発明は同等な機能を果たすウイルスベクター(例えば、複製欠損性レトロウイルス、アデノウイルス及びアデノ随伴ウイルス)のような発現ベクターの他の形態を含むと考えられる。
本発明の組み換え発現ベクターは宿主細胞における核酸の発現のために適当な形態の本発明の核酸を含んでなり、それは発現される核酸配列に機能的に連結されている、発現のために用いられる宿主細胞に基づいて選択される1つまたはそれ以上の調節配列を組み換え発現ベクターが含むことを意味する。組み換え発現ベクター内で、「機能的に連結された」は目的のヌクレオチド配列が(例えば、インビトロ転写/翻訳系においてまたは宿主細胞中にベクターが導入される場合には宿主細胞において)ヌクレオチド配列を発現させるように調節配列に連結されることを意味すると考えられる。「調節配列」という用語はプロモーター、エンハンサー及び他の発現制御要素(例えば、ポリアデニル化シグナル)を含むと考えられる。そのような調節配列は例えばGoeddel;Gene Expression Technology:Methods in Enzymology 185、Academic Press、San Diego、CA(1990)中に記述されている。調節配列は多数の型の宿主細胞においてヌクレオチド配列の構成的発現を導くもの及びある種の宿主細胞においてのみヌクレオチド配列の発現を導くもの(例えば、組織特異的調節配列)を含む。発現ベクターの設計は形質転換される宿主細胞の選択、所望されるタンパク質の発現のレベル等のような因子により決まる傾向があることを当業者は認識する。本発明の発現ベクターを宿主細胞中に導入することができ、それにより本明細書に記述されるような核酸によりコードされる、融合タンパク質またはペプチドを初めとするタンパク質またはペプチドを製造することができる(例えば、PGC−1タンパク質、PGC−1の突然変異体、融合タンパク質等)。
本発明の組み換え発現ベクターを原核または真核細胞におけるPGC−1の発現のために設計することができる。例えば、PGC−1をエシェリキア・コリ(E.coli)のようなバクテリア細胞、(バキュロウイルス発現ベクターを用いる)昆虫細胞、酵母細胞または哺乳類細胞において発現させることができる。適当な宿主細胞はGoeddel、Gene Expression Technology:Methods in Enzymology 185、Academic Press、San Diego、CA(1990)中にさらに説明されている。あるいはまた、例えばT7プロモーター調節配列及びT7ポリメラーゼを用いて、インビトロで組み換え発現ベクターを転写し、翻訳することができる。
原核生物におけるタンパク質の発現は、融合または非融合タンパク質のいずれかの発現を導く構成的または誘導性プロモーターを含有するベクターを用いてエシェリキア・コリにおいて最も頻繁に実施される。融合ベクターはその中にコードされるタンパク質に、通常、組み換えタンパク質のアミノ末端に多数のアミノ酸を付加する。そのような融合ベクターは典型的に3つの目的:1)組み換えタンパク質の発現を上げるため;2)組み換えタンパク質の可溶性を上げるため;そして3)アフィニティー精製におけるリガンドとして働くことにより組み換えタンパク質の精製を促進するために役立つ。しばしば、融合発現ベクターでは、融合タンパク質の精製の後に融合部分から組み換えタンパク質を分離できるように、タンパク質分解切断部位を融合部分と組み換えタンパク質の連結部に導入する。そのような酵素及びそれらの対応する認識配列は第Xa因子、トロンビン及びエンテロキナーゼを含む。典型的な融合発現ベクターはpGEX(Pharmacia Biotech Inc;Smith、D.B.及びJohnson、K.S.(1988)Gene 67:31−40)、pMAL(New England Biolabs、Beverly、mA)及びpRIT5(Pharmacia、Piscataway、NJ)を含み、それらは標的組み換えタンパク質にそれぞれグルタチオン−S−トランスフェラーゼ(GST)、マルトースE結合タンパク質またはプロテインAを融合させる。一つの態様として、PGC−1のコーディング配列をpGEX発現ベクター中にクローン化してN末端からC末端にGST−トロンビン開裂部位−PGC−1を含んでなる融合タンパク質をコードするベクターを作製する。グルタチオン−アガロース樹脂を用いてアフィニティークロマトグラフィーにより融合タンパク質を精製することができる。トロンビンでの融合タンパク質の切断によりGSTに融合していない組み換えPGC−1を回収することができる。
適当な誘導性の非融合エシェリキア・コリ発現ベクターの例はpTrc(Amann等(1988)Gene 69:301−315)及びpET11d(Studier等、Gene Expression Technology:Methods in Enzymology 185、Academic Press、San Diego、California(1990)60−89)を含む。pTrcベクターからの標的遺伝子発現はハイブリッドtrp−lac融合プロモーターからの宿主RNAポリメラーゼ転写による。pET11dベクターからの標的遺伝子発現は共発現されるウイルスRNAポリメラーゼ(T7
gnl)によりもたらされるT7 gn10−lac融合プロモーターからの転写による。このウイルスポリメラーゼはlacUV5プロモーターの転写制御下にT7 gnl遺伝子を保有する内在するλプロファージから宿主株BL21(DE3)またはHMS174(DE3)により与えられる。
エシェリキア・コリにおける組み換えタンパク質発現を最大にする一つの方法は、組み換えタンパク質をタンパク質分解で切断する能力が損なわれている宿主バクテリアにおいてタンパク質を発現させることである(Cottesman、S.、Gene Expression Technology:Methods in Enzymology、185、Academic Press、San Deigo、California(1990)119−128)。別の方法は、各アミノ酸の個々のコドンがエシェリキア・コリにおいて優先的に利用されるものであるように発現ベクター中に挿入される核酸の核酸配列を改変することである(Wada等(1992)Nucleic Acids Res.20:2111−2118)。本発明の核酸配列のそのような改変を標準的なDNA合成技術により実施することができる。
別の態様として、PGC−1発現ベクターは酵母発現ベクターである。酵母サッカロミセス・セレビシエ(S.cerivisae)における発現のためのベクターの例はpYepSec1(Baldari等(1987)Embo J.6:229−234)、pMFa(Kurjan及びHerskowitz、(1982)Cell 30:933−943)、pJRY88(Schultz等、(1987)Gene 54:113−123)及びpYES2(Invitrogen Corporation、San Deigo、CA)を含む。
あるいはまた、バキュロウイルス発現ベクターを用いて昆虫細胞においてPGC−1を発現させることができる。培養した昆虫細胞(例えば、Sf9細胞)におけるタンパク質の発現のために利用できるバキュロウイルスベクターはpAcシリーズ(Smith等(1983)Mol.Cell Biol.3:2156−2165)及びpVLシリーズ(Lucklow及びSummers(1989)Virology 170:31−39)を含む。
さらに別の態様として、哺乳類発現ベクターを用いて哺乳類細胞において本発明の核酸を発現させる。哺乳類発現ベクターの例はpCDM8(Seed、B.(1987)Nature 329:840)及びpMT2PC(Kaufman等(1987)EMBO J.6:187−195)を含む。哺乳類細胞において用いられる場合、発現ベクターの制御機能はしばしばウイルス調節要素により与えられる。例えば、一般に用いられるプロモーターはポリオーマ、アデノウイルス2、サイトメガロウイルス及びシミアンウイルス40から得られる。原核及び真核細胞の両方のために適当な他の発現系は、Sambrook、J.、Fritsh、E.F.及びManiatis、T.、Molecular Cloning:A Laboratory,Manual第2版Cold Spring Harbor Laboratory、Cold Spring Harbor Laboratory Press、Cold Spring Harbor、NY、1989の16及び17章を参照。
別の態様として、組み換え哺乳類発現ベクターは特定の細胞型において選択的に核酸の発現を導くことができる(例えば、核酸を発現させるために組織特異的調節要素を用いる)。組織特異的調節要素は当該技術分野において知られている。適当な組織特異的プロモーターの限定しない例はアルブミンプロモーター(肝臓特異的;Pinkert等(1987)Genes Dev.1:268−277)、リンパ系特異的プロモーター(Calame及びEaton(1988)Adv.Immunol.43:235−275)、特にT細胞受容体のプロモーター(Winoto及びBaltimore(1989)EMBO J.8:729−733)及び免疫グロブリン(Banerji等(1983)Cell 33:729−740;Queen及びBaltimore(1983)Cell 33:741−748)、ニューロン特異的プロモーター(例えば、ニューロフィラメントプロモーター;Byrne及びRuddle(1989)PNAS 86:5473−5477)、膵臓特異的プロモーター(Edlund等(1985)Science 230:912−916)及び乳腺特異的プロモーター(例えば、乳清プロモーター;米国特許第4,873,316号及び欧州出願公開第264,166号)を含む。また、発生的に調節されるプロモーター、例えば、マウスホックスプロモーター(Kessel及びGruss(1990)Science 249:374−379)及びα−フェトプロテインプロモーター(Campes及びTilghman(1989)Genes Dev.3:537−546)も含まれる。
本発明はさらにアンチセンスの向きに発現ベクターにクローン化された本発明のDNA分子を含んでなる組み換え発現ベクターを提供する。すなわち、PGC−1
mRNAにアンチセンスであるRNA分子を(DNA分子の転写により)発現させるようにDNA分子を調節配列に機能的に連結する。様々な細胞型においてアンチセンスRNA分子の連続発現を導く、アンチセンスの向きにクローン化された核酸に機能的に連結される調節配列、例えばウイルスプロモーター及び/またはエンハンサーを選択することができ、またはアンチセンスRNAの構成的な組織特異的もしくは細胞型特異的発現を導く調節配列を選択することができる。アンチセンス発現ベクターは組み換えプラスミド、ファージミドまたは弱毒ウイルスの形態であってもよく、その場合、アンチセンス核酸は高効率調節領域の制御下で生産され、その活性をベクターが導入される細胞型により決定することができる。アンチセンス遺伝子を用いる遺伝子発現の調節の説明は、Weintraub、H.等、Antisense RNA as a molecular tool for genetic analysis、Reviews−Trends in Genetics、Vol.1(1)1986を参照。
本発明の別の態様は本発明の組み換え発現ベクターが導入されている宿主細胞に関する。「宿主細胞」及び「組み換え宿主細胞」という用語は本明細書において互換的に用いられる。そのような用語は特定の該細胞だけでなくそのような細胞の子孫または潜在的子孫もさすと理解される。突然変異または環境の影響のいずれかによりある種の改変が次の世代に起こる可能性があるので、実際、そのような子孫は親細胞と同一でない可能性があるが、本明細書に用いられる用語の範囲内にやはり含まれる。
宿主細胞はあらゆる原核または真核細胞であってもよい。例えば、エシェリキア・コリのようなバクテリア細胞、昆虫細胞、酵母または(チャイニーズハムスター卵巣細胞(CHO)もしくはCOS細胞のような)哺乳類細胞においてPGC−1タンパク質を発現させることができる。他の適当な宿主細胞は当業者に知られている。
通常の形質転換またはトランスフェクション技術によりベクターDNAを原核または真核細胞中に導入することができる。本明細書に用いられる場合、「形質転換」及び「トランスフェクション」という用語は、リン酸カルシウムもしくは塩化カルシウム共沈殿、DEAE−デキストランが媒介するトランスフェクション、リポフェクションまたはエレクトロポレーションを初めとする、宿主細胞中に外来核酸(例えば、DNA)を導入するための様々な当該技術分野で認められた技術をさすと考えられる。宿主細胞を形質転換またはトランスフェクトするために適当な方法をSambrook等(Molecular Cloning:A Laboratory Manual第2版Cold Spring Harbor Laboratory、Cold Spring Harbor Laboratory Press、Cold Spring Harbor、NY、1989)及び他の実験マニュアル中に見いだすことができる。
哺乳類細胞の安定なトランスフェクションのために、用いられる発現ベクター及びトランスフェクション技術により、わずかな割合の細胞のみがそれらのゲノム中に外来DNAを組込むことができることが知られている。これらの組込み体を同定し、選択するために、通例、選択マーカー(例えば、抗生物質に対する耐性)をコードする遺伝子が目的の遺伝子と一緒に宿主細胞中に導入される。好ましい選択マーカーはG418、ハイグロマイシン及びメトトレキセートのような薬剤に対する耐性を与えるものを含む。選択マーカーをコードする核酸をPGC−1をコードするものと同じベクター上で宿主細胞中に導入することができ、または別のベクター上で導入することができる。導入された核酸で安定にトランスフェクトされた細胞を薬剤選択により同定することができる(例えば、選択マーカー遺伝子を含んでいる細胞は生存し、一方、他の細胞は死ぬ)。
PGC−1タンパク質を生産する(すなわち、発現させる)ために培養中の原核または真核宿主細胞のような本発明の宿主細胞を用いることができる。従って、本発明はさらに本発明の宿主細胞を用いるPGC−1タンパク質の製造方法を提供する。一つの態様として、その方法はPGC−1が生産されるまで適当な培地中で(PGC−1をコードする組み換え発現ベクターが導入されている)本発明の宿主細胞を培養することを含んでなる。別の態様として、その方法はさらに培地または宿主細胞からPGC−1を単離することを含んでなる。
また、ヒト以外のトランスジェニック動物を製造するためにも本発明の宿主細胞を用いることができる。体重疾患または不十分なインシュリン活性と関係する疾患のような選択した疾患の有害な症状を改善することができる薬剤または化合物、例えば、薬剤、医薬品等を同定するために考案されたスクリーニングアッセイにおいてヒト以外のトランスジェニック動物を用いることができる。例えば、一つの態様として、本発明の宿主細胞はPGC−1をコードする配列が導入されている受精した卵母細胞または胚幹細胞である。次に、外来PGC−1配列がゲノム中に導入されているヒト以外のトランスジェニック動物または内在性PGC−1配列が改変されている相同的組み換え動物を作製するためにそのような宿主細胞を用いることができる。そのような動物はPGC−1の機能及び/または活性を研究するため並びにPGC−1活性のモジュレーターの同定及び/または評価のために有用である。本明細書に用いられる場合、「トランスジェニック動物」は動物の1つまたはそれ以上の細胞が導入遺伝子を含むヒト以外の動物、好ましくは哺乳類、より好ましくはラットまたはマウスのような齧歯類である。トランスジェニック動物の他の例はヒト以外の霊長類、ヒツジ、イヌ、ウシ、ヤギ、ニワトリ、両生類等を含む。導入遺伝子は細胞のゲノム中に組込まれる外来DNAであり、それからトランスジェニック動物は発生し、そしてそれは成熟した動物のゲノム中にとどまり、それによりトランスジェニック動物の1つまたはそれ以上の細胞型または組織においてコードされる遺伝子産物の発現を導く。本明細書に用いられる場合、「相同的組み換え動物」は動物の発生前に内在性遺伝子と動物の細胞、例えば動物の胚細胞中に導入された外来DNA分子の間の相同的組み換えにより内在性PGC−1遺伝子が改変されているヒト以外の動物、好ましくは哺乳類、より好ましくはマウスである。
例えば、微量注入、レトロウイルス感染により、受精した卵母細胞の雄性前核中にPGC−1をコードする核酸を導入し、そして偽妊娠メス仮親動物において卵母細胞を発生させることにより本発明のトランスジェニック動物を作ることができる。ヒトPGC−1
cDNA配列を導入遺伝子としてヒト以外の動物のゲノム中に導入することができる。あるいはまた、マウスPGC−1遺伝子(配列番号:1)のようなヒトPGC−1遺伝子のヒト以外の相同物を導入遺伝子として用いることができる。また、導入遺伝子の発現の効率を上げるためにイントロン配列及びポリアデニル化シグナルも導入遺伝子中に含むことができる。特定の細胞にPGC−1タンパク質の発現を導くために組織特異的調節配列をPGC−1導入遺伝子に機能的に連結することができる。胚操作及び微量注入によるトランスジェニック動物、特にマウスのような動物の作製方法は当該技術分野において一般的になってきており、例えば、両方ともLeder等による米国特許第4,736,866号及び4,870,009号、Wagner等による米国特許第4,837,191号中並びにHogan、B.、Manipulating the Mouse Embryo、(Cold Spring Harbor Laboratory Press、Cold Spring Harbor、N.Y.、1986)中に記述されている。他のトランスジェニック動物の製造のために類似した方法を用いる。ゲノム中のPGC−1導入遺伝子の存在及び/または動物の組織もしくは細胞におけるPGC−1
mRNAの発現に基づいてトランスジェニック創始動物(founder animal)を同定することができる。次に、導入遺伝子を保有するさらなる動物をつくるためにトランスジェニック創始動物を用いることができる。さらに、PGC−1コードする導入遺伝子を保有するトランスジェニック動物を他の導入遺伝子を保有する他のトランスジェニック動物にさらに交配させることができる。
相同的組み換え動物を作製するために、欠失、付加または置換が導入されており、それによりPGC−1遺伝子を改変する、例えば機能的に破壊するPGC−1遺伝子の少なくとも一部を含むベクターを調製する。PGC−1遺伝子は(例えば、配列番号:1のcDNAでスクリーニングされたヒトゲノムライブラリーから単離されたヒトゲノムクローンからの)ヒト遺伝子であってもよいが、より好ましくは、ヒトPGC−1遺伝子のヒト以外の相同物である。例えば、マウスゲノム中の内在性PGC−1遺伝子を改変するために適当な相同的組み換えベクターを構築するためにマウスPGC−1遺伝子を用いることができる。好ましい態様として、相同的組み換え時に、内在性PGC−1遺伝子が機能的に破壊されるようにベクターを設計する(すなわち、もはや機能的タンパク質をコードしない;「ノックアウト」ベクターとも呼ばれる)。あるいはまた、相同的組み換え時に、内在性PGC−1遺伝子が突然変異されるかまたはそうでなければ改変されるが、なお機能的タンパク質をコードするようにベクターを設計することができる(例えば、上流調節領域を改変し、それにより内在性PGC−1タンパク質の発現を変えることができる)。相同的組み換えベクターでは、ベクターにより保有される外来PGC−1遺伝子と胚幹細胞中の内在性PGC−1遺伝子の間で相同的組み換えを起こさせるために、PGC−1遺伝子の改変される部分にはその5’及び3’末端でPGC−1遺伝子のさらなる核酸が隣接する。さらに隣接するPGC−1核酸は内在性遺伝子との成功した相同的組み換えのために十分な長さのものである。典型的に、(5’及び3’末端の両方で)数キロ塩基の隣接するDNAがベクター中に含まれる(相同的組み換えベクターの説明には例えば、Thomas、K.R.及びCapecchi、M.R.(1987)Cell 51:503を参照)。(例えば、エレクトロポレーションにより)ベクターを胚幹細胞系中に導入し、そして導入したPGC−1遺伝子が内在性PGC−1と相同的に組み換わっている細胞を選択する(例えば、Li、E.等(1992)Cell 69:915を参照)。次に、選択した細胞を動物(例えば、マウス)の胚盤胞中に注入して集合キメラを形成する(例えば、Bradley、A.Teratocarcinomas and Embryonic Stem Cells:A Practical Approach中、E.J.Robertson編集(IRL、Oxford、1987)pp.113−152を参照)。次に、キメラ胚を適当な偽妊娠メス仮親動物中に移植し、胚を出産させることができる。導入遺伝子の生殖系列伝達により動物の全ての細胞が相同的に組み換えられたDNAを含む動物をつくるために生殖細胞中に相同的に組み換えられたDNAを保有する子孫を用いることができる。相同的組み換えベクター及び相同的組み換え動物を構築するための方法はBradley、A.(1991)Current Opinion in Biotechnology 2:823−829中及びPCT国際公開:Le Mouellec等によるWO第90/11354号;Smithies等によるWO第91/01140号;Zijlstra等によるWO第92/0968号;及びBerns等によるWO第93/04169号中にさらに記述されている。
別の態様として、導入遺伝子の調節発現を与える選択系を含有するヒト以外のトランスジェニック動物を製造することができる。そのような系の一つの例はバクテリオファージP1のcre/loxP組み換え酵素系である。cre/loxP組み換え酵素系の説明には、例えば、Lakso等(1992)PNAS 89:6232−6236を参照。組み換え酵素系の別の例はサッカロミセス・セレビシエのFLP組み換え酵素系である(O’Gorman等(1991)Science 251:1351−1355)。導入遺伝子の発現を調節するためにcre/loxP組み換え酵素系が用いられる場合、Cre組み換え酵素及び選択したタンパク質の両方をコードする導入遺伝子を含有する動物が必要とされる。例えば、選択したタンパク質をコードする導入遺伝子を含有するものと組み換え酵素をコードする導入遺伝子を含有するものの2匹のトランスジェニック動物を交配させることによる、「二重」トランスジェニック動物の構築によりそのような動物を与えることができる。 また、Wilmut、I.等(1997)Nature 385:810−813及びPCT国際公開WO第97/07668号及びWO第97/07669号中に記述された方法に従って、本明細書に記述されるヒト以外のトランスジェニック動物のクローンを製造することもできる。簡潔に言えば、トランスジェニック動物からの細胞、例えば体細胞を単離し、増殖周期を出てG期に入るように誘導することができる。次に、例えば、電気パルスの使用により、静止細胞が単離された同じ種の動物からの脱核した卵母細胞に静止細胞を融合させることができる。次に、再生した卵母細胞が桑実胚または胚盤胞に発生するようにそれを培養し、次に、偽妊娠メス仮親動物に移す。このメス仮親動物に生まれた子孫は細胞、例えば体細胞が単離された動物のクローンである。
III.単離されたPGC−1タンパク質及び抗−PGC−1抗体
本発明の別の態様は抗−PGC−1抗体を作製するための免疫原としての使用のために適当な単離されたPGC−1タンパク質及びその生物学的に活性のある部分並びにペプチドフラグメントに関する。「単離された」または「精製された」タンパク質またはその生物学的に活性のある部分は、組み換えDNA技術により製造される場合には細胞物質または化学的に合成される場合には化学前駆物質もしくは他の化学製品を実質的に含まない。「細胞物質を実質的に含まない」という用語は、天然でまたは組み換えで生産される細胞の細胞成分からタンパク質が分離されているPGC−1タンパク質の調製物を含む。一つの態様として、「細胞物質を実質的に含まない」という用語は、(乾量で)約30%未満の(本明細書において「混入するタンパク質」とも呼ばれる)PGC−1以外のタンパク質、より好ましくは約20%未満のPGC−1以外のタンパク質、さらにより好ましくは約10%未満のPGC−1以外のタンパク質、最も好ましくは約5%未満のPGC−1以外のタンパク質を含むPGC−1タンパク質の調製物を含む。PGC−1タンパク質またはその生物学的に活性のある部分が組み換えで製造される場合、それは好ましく培養培地も実質的に含まず、すなわち、培養培地はタンパク質調製物の容量の約20%未満、より好ましくは約10%、最も好ましくは約5%未満に相当する。「化学前駆物質または他の化学製品を実質的に含まない」という用語は、タンパク質の合成に関係する化学前駆物質または他の化学製品からタンパク質が分離されているPGC−1タンパク質の調製物を含む。一つの態様として、「化学前駆物質または他の化学製品を実質的に含まない」という用語は、(乾量で)約30%未満の化学前駆物質またはPGC−1以外の化学薬品、より好ましくは約20%未満の化学前駆物質またはPGC−1以外の化学薬品、さらにより好ましくは約10%未満の化学前駆物質またはPGC−1以外の化学薬品、最も好ましくは約5%未満の化学前駆物質またはPGC−1以外の化学薬品を含むPGC−1タンパク質の調製物を含む。好ましい態様として、単離されたタンパク質またはその生物学的に活性のあるタンパク質は、PGC−1タンパク質が得られた同じ動物からの混入するタンパク質がない。典型的に、そのようなタンパク質は、例えば、ヒト以外の細胞におけるヒトPGC−1タンパク質の組み換え発現により製造される。
本発明の単離されたPGC−1タンパク質またはその一部は以下の生物学的活性:1)PPARγと相互作用する(例えば、結合する)ことができる;2)PPARγ活性を調節することができる;3)UCP発現を調節することができる;4)脂肪細胞における熱発生、例えば、褐色脂肪細胞または筋肉における熱発生を調節することができる;5)脂肪細胞または筋肉における酸素消費を調節することができる;6)脂肪細胞化、例えば、褐色脂肪細胞への白色脂肪細胞の分化を調節することができる;7)細胞のインシュリン感受性、例えば、筋肉細胞、肝細胞、脂肪細胞のインシュリン感受性を調節することができる;8)核ホルモン受容体、例えば、甲状腺ホルモン受容体、エストロゲン受容体、レチノイン酸受容体と相互作用する(例えば、結合する)ことができる;9)核ホルモン受容体の活性を調節することができる;そして10)転写因子C/EBPαと相互作用する(例えば、結合する)ことができるの1つまたはそれ以上を有する。好ましい態様として、PGC−1タンパク質は褐色脂肪細胞への白色脂肪細胞の分化及び/または褐色脂肪細胞もしくは筋肉細胞における熱発生を調節することができる。
好ましい態様として、タンパク質またはその一部は、タンパク質またはその一部が脂肪細胞の分化及び/または褐色脂肪細胞における熱発生を調節する能力を保持するように配列番号:2のアミノ酸配列に十分に相同なアミノ酸配列を含んでなる。タンパク質の一部は好ましくは本明細書に記述されるような生物学的に活性のある部分である。別の好ましい態様として、PGC−1タンパク質(すなわち、アミノ酸残基1−797)は配列番号:2に示されるアミノ酸配列または配列番号:2に示されるアミノ酸配列に少なくとも約50%、好ましくは少なくとも約60%、より好ましくは少なくとも約70%、なおより好ましくは少なくとも約80%、さらにより好ましくは少なくとも約90%、そして最も好ましくは少なくとも約95%もしくはそれ以上相同なアミノ酸配列を有する。さらに別の好ましい態様として、PGC−1タンパク質は配列番号:1のヌクレオチド配列または配列番号:1に示されるヌクレオチド配列に少なくとも約50%、好ましくは少なくとも約60%、より好ましくは少なくとも約70%、なおより好ましくは少なくとも約80%、さらにより好ましくは少なくとも約90%、そして最も好ましくは少なくとも約95%もしくはそれ以上相同なヌクレオチド配列にハイブリダイズする、例えば、ストリンジェントな条件下でハイブリダイズするヌクレオチド配列によりコードされるアミノ酸配列を有する。また、本発明の好ましいPGC−1タンパク質は好ましくは本明細書に記述されるPGC−1の生物学的活性の少なくとも1つも保有する。例えば、本発明の好ましいPGC−1タンパク質は、配列番号:1のヌクレオチド配列にハイブリダイズする、例えば、ストリンジェントな条件下でハイブリダイズするヌクレオチド配列よりコードされ且つ褐色脂肪細胞への白色脂肪細胞の分化及び/または褐色脂肪細胞の熱発生を調節することができるアミノ酸配列を含む。 別の態様として、上のサブセクションIにおいて詳細に記述されたように、PGC−1タンパク質は配列番号:2のアミノ酸配列に実質的に相同であり、そして配列番号:2のタンパク質の機能的活性を保持するが、天然の対立遺伝子変異または突然変異誘発によりアミノ酸配列が異なる。従って、別の態様として、PGC−1タンパク質は配列番号:2のアミノ酸配列に少なくとも約50%、好ましくは少なくとも約60%、より好ましくは少なくとも約70%、なおより好ましくは少なくとも約80%、さらにより好ましくは少なくとも約90%、そして最も好ましくは少なくとも約95%もしくはそれ以上相同なアミノ酸配列を含んでなるタンパク質である。
PGC−1タンパク質の生物学的に活性のある部分はPGC−1タンパク質のアミノ酸配列、例えば、配列番号:2に示されるアミノ酸配列またはPGC−1タンパク質に相同なタンパク質のアミノ酸配列から得られるアミノ酸配列を含んでなるペプチドを含み、それは全長PGC−1タンパク質またはPGC−1タンパク質に相同な全長タンパク質より少ないアミノ酸を含み、そしてPGC−1タンパク質の少なくとも1つの活性を示す。典型的に、生物学的に活性のある部分(ペプチド、例えば、5、10、15、20、30、35、36、37、38、39、40、50、100またはそれ以上のアミノ酸の長さであるペプチド)は、PGC−1タンパク質の少なくとも1つの活性を有するドメインまたはモチーフ、例えば、チロシンリン酸化部位、cAMPリン酸化部位、セリン−アルギニン(SR)に富んだドメイン及び/またはRNA結合モチーフを含んでなる。好ましい態様として、本明細書に記述されるドメイン/モチーフの1つまたはそれ以上を含むタンパク質の生物学的に活性のある部分は、脂肪細胞の分化及び/または褐色脂肪細胞における熱発生を調節することができる。さらに、組み換え技術によりタンパク質の他の領域が除かれている他の生物学的に活性のある部分を調製し、本明細書に記述される1つまたはそれ以上の活性に関して評価することができる。好ましくは、PGC−1タンパク質の生物学的に活性のある部分は生物学的活性を有する1つまたはそれ以上の選択したドメイン/モチーフまたはその一部を含む。
好ましくはPGC−1タンパク質を組み換えDNA技術により製造する。例えば、タンパク質をコードする核酸分子を(上記のような)発現ベクター中にクローン化し、発現ベクターを(上記のような)宿主細胞中に導入し、宿主細胞においてPGC−1タンパク質を発現させる。次に、標準的なタンパク質精製技術を用いて適切な精製スキームにより細胞からPGC−1タンパク質を単離することができる。組み換え発現の代わりに、標準的なペプチド合成技術を用いてPGC−1タンパク質、ポリペプチドまたはペプチドを化学的に合成することができる。さらに、例えば抗−PGC−1抗体(以下にさらに記述される)を用いて、細胞(例えば、褐色脂肪細胞)から天然のPGC−1タンパク質を単離することができる。
また、本発明はPGC−1キメラまたは融合タンパク質も提供する。本明細書に用いられる場合、PGC−1「キメラタンパク質」または「融合タンパク質」はPGC−1以外のポリペプチドに機能的に連結されたPGC−1ポリペプチドを含んでなる。「PGC−1ポリペプチド」はPGC−1に相当するアミノ酸配列を有するポリペプチドをさし、一方、「PGC−1以外のポリペプチド」はPGC−1タンパク質に実質的に相同でないタンパク質、例えば、PGC−1タンパク質と異なり、そして同じまたは異なる生物から得られるタンパク質に相当するアミノ酸配列を有するポリペプチドをさす。融合タンパク質内の、「機能的に連結された」という用語は、PGC−1ポリペプチドとPGC−1以外のポリペプチドが相互にイン−フレームで融合されることを示すと考えられる。PGC−1ポリペプチドのN末端またはC末端にPGC−1以外のポリペプチドを融合させることができる。例えば、一つの態様として融合タンパク質は、PGC−1配列がGST配列のC末端に融合されているGST−PGC−1融合タンパク質である(実施例IV参照)。そのような融合タンパク質は組み換えPGC−1の精製を容易にすることができる。別の態様として、融合タンパク質はそのN末端に異種起源のシグナル配列を含有するPGC−1タンパク質である。ある種の宿主細胞(例えば、哺乳類の宿主細胞)では、異種起源のシグナル配列の使用によりPGC−1の発現及び/または分泌を増やすことができる。
好ましくは、標準的な組み換えDNA技術により本発明のPGC−1キメラまたは融合タンパク質を製造する。例えば、通常の技術に従って、例えば、ライゲーションのために平滑末端または付着末端を用い、適切な末端を与えるための制限酵素消化、必要な場合付着末端の充填、望ましくない連結を防ぐためのアルカリホスファターゼ処理及び酵素的連結により、異なるポリペプチド配列をコードするDNAフラグメントをインフレームで一緒に連結する。別の態様として、自動DNA合成機を含む通常の技術により融合遺伝子を合成することができる。あるいはまた、2つの連続した遺伝子フラグメント間で相補的突出を生じるアンカープライマを用いて遺伝子フラグメントのPCR増幅を実施することができ、続いて、それらをアニーリングさせ、再増幅してキメラ遺伝子配列を作製することができる(例えば、Current Protocols in Molecular Biology、Ausubel等編集、John Wiley
& Sons:1992を参照)。さらに、融合部分(例えば、GSTポリペプチド)をすでにコードする多数の発現ベクターが市販されている。融合部分がPGC−1タンパク質にインフレームで連結されるように、PGC−1をコードする核酸をそのようなベクター中にクローン化することができる。
また、本発明はPGC−1アゴニスト(模倣物)またはPGC−1アンタゴニストのいずれかとして機能するPGC−1タンパク質の相同物にも関する。好ましい態様として、PGC−1アゴニスト及びアンタゴニストはPGC−1タンパク質の天然に存在する形態の生物学的活性の一組をそれぞれ刺激または抑制する。従って、限られた機能の相同物での処置により特定の生物学的作用を引き出すことができる。一つの態様として、タンパク質の天然に存在する形態の生物学的活性の一組を有する相同物での患者の処置は、PGC−1タンパク質の天然に存在する形態での処置に比べて患者において少ない副作用を有する。
PGC−1タンパク質の相同物を突然変異誘発、例えば、PGC−1タンパク質の別個の点突然変異または欠失により作製することができる。本明細書に用いられる場合、「相同物」という用語はPGC−1タンパク質の活性のアゴニストまたはアンタゴニストとして働くPGC−1タンパク質の変異形態をさす。PGC−1タンパク質のアゴニストはPGC−1タンパク質の生物学的活性の実質的に同じものまたは一組を保持することができる。PGC−1タンパク質のアンタゴニストは、例えば、PGC−1タンパク質を含むPGC−1カスケードの下流または上流のメンバーに競合的に結合することにより、PGC−1タンパク質の天然に存在する形態の活性の1つまたはそれ以上を妨げることができる。従って、本発明の哺乳類PGC−1タンパク質及びその相同物は、例えば、脂肪細胞分化及び/または褐色脂肪細胞における熱発生の正または負のいずれかのレギュレーターであってもよい。
別の態様として、PGC−1タンパク質アゴニストまたはアンタゴニスト活性に関してPGC−1タンパク質の突然変異体、例えば欠失突然変異体の組み合わせライブラリーをスクリーニングすることによりPGC−1タンパク質の相同物を同定することができる。一つの態様として、PGC−1変異体の様々なライブラリーは核酸レベルでの組み合わせ突然変異誘発により作製され、そして様々な遺伝子ライブラリーによりコードされる。例えば、可能性があるPGC−1配列の縮重組が個々のポリペプチドとして、あるいはまたPGC−1配列の組を中に含有する(例えば、ファージ展示のための)一組のより大きい融合タンパク質として発現できるように合成オリゴヌクレオチドの混合物を遺伝子配列に酵素的に連結することによりPGC−1変異体の様々なライブラリーを製造することができる。縮重オリゴヌクレオチド配列から可能性があるPGC−1相同物のライブラリーを製造するために用いることができる様々な方法がある。自動DNA合成機で縮重遺伝子配列の化学合成を実施することができ、次に、合成遺伝子を適切な発現ベクター中に連結することができる。遺伝子の縮重組の使用により、可能性があるPGC−1配列の適切な組をコードする配列の全てを一つの混合物中に与えることができる。縮重オリゴヌクレオチドの合成方法は当該技術分野において知られている(例えば、Narang、S.A.(1983)Tetrahedron 39:3;Itakura等(1984)Annu.Rev.Biochem.53:323;Itakura等(1984)Science 198:1056;Ike等(1983)Nucleic Acid Res.11:477を参照)。
さらに、PGC−1タンパク質の相同物のスクリーニング及びその後の選択のためのPGC−1フラグメントの様々な集団を作製するためにPGC−1タンパク質コーディングのフラグメントのライブラリーを用いることができる。一つの態様として、ニックが分子当たり約1回のみ起こる条件下でPGC−1コーディング配列の二本鎖PCRフラグメントをヌクレアーゼで処理し、二本鎖DNAを変成させ、異なるニック生成物からのセンス/アンチセンス対を含むことができる二本鎖DNAを形成するようにDNAを再生させ、S1ヌクレアーゼでの処理により再形成された二本鎖から一本鎖部分を取り除き、そして得られたフラグメントライブラリーを発現ベクター中に連結することによりコーディング配列フラグメントのライブラリーを作製することができる。この方法により、PGC−1タンパク質の様々な大きさのN末端、C末端及び内部フラグメントをコードする発現ライブラリーを得ることができる。
点突然変異または欠失により作られた組み合わせライブラリーの遺伝子産物をスクリーニングするため及び選択した特性を有する遺伝子産物に関してcDNAライブラリーをスクリーニングするためのいくつかの技術が当該技術分野において知られている。そのような技術はPGC−1相同物の組み合わせ突然変異誘発により作製された遺伝子ライブラリーの迅速なスクリーニングのために適応できる。大きい遺伝子ライブラリーをスクリーニングするための、高処理量分析を容易にできる最も一般に用いられる技術は、典型的に、複製可能なクター中に遺伝子ライブラリーをクローニングし、ベクターの得られたライブラリーで適切な細胞を形質転換し、そして適切な活性の検出により、産物が検出された遺伝子をコードするベクターの単離を容易にする条件下で組み合わせ遺伝子を発現させることを含む。ライブラリーにおける機能的突然変異体の頻度を高める新しい技術のリクルシブ・アンサンブル突然変異誘発(Recrusive ensemble mutagenesis(REM))をPGC−1相同物を同定するためにスクリーニングアッセイと組み合わせて用いることができる(Arkin及びYourvan(1992)PNAS 89:7811−7815;Delgrave等(1993)Protein Engineering 6(3):3276−331)。
ポリクローナル及びモノクローナル抗体調製のための標準技術を用いてPGC−1に結合する抗体を作製するために免疫原として単離されたPGC−1タンパク質またはその一部もしくはフラグメントを用いることができる。全長PGC−1タンパク質を用いることができ、あるいはまた本発明は免疫原としての使用のためにPGC−1の抗原性ペプチドフラグメントを提供する。PGC−1の抗原性ペプチドは配列番号:2に示されるアミノ酸配列または本明細書に記述されるような相同なアミノ酸配列の少なくとも8アミノ酸残基を含んでなり、そしてペプチドに対して作製された抗体がPGC−1と特異的免疫複合体を形成するようにPGC−1のエピトープを含む。好ましくは、抗原性ペプチドは少なくとも10アミノ酸残基、より好ましくは少なくとも15アミノ酸残基、さらにより好ましくは少なくとも20アミノ酸残基、最も好ましくは少なくとも30アミノ酸残基を含んでなる。抗原性ペプチドにより含まれる好ましいエピトープはタンパク質の表面上に位置するPGC−1の領域、例えば親水性領域である。
典型的にPGC−1免疫原は免疫原で適当な対象(例えば、ウサギ、ヤギ、マウスまたは他の哺乳類)を免疫することにより抗体を製造するために用いられる。適切な免疫原調製物は、例えば、組み換えで発現されたPGC−1タンパク質または化学的に合成されたPGC−1ペプチドを含むことができる。調製物はさらにフロイント完全もしくは不完全アジュバントのようなアジュバントまたは類似した免疫刺激剤を含むことができる。免疫原性PGC−1調製物での適当な対象の免疫はポリクローナル抗−PGC−1抗体反応を誘導する。
従って、本発明の別の態様は抗−PGC−1抗体に関する。本明細書に用いられる場合、「抗体」という用語は免疫グロブリン分子及び免疫グロブリン分子の免疫学的に活性のある部分、すなわち、PGC−1のような抗原に特異的に結合する(免疫反応する)抗原結合部位を含有する分子をさす。免疫グロブリン分子の免疫学的に活性のある部分の例は、ペプシンのような酵素で抗体を処理することにより作製することができるF(ab)及びF(ab’)フラグメントを含む。本発明はPGC−1に結合するポリクローナル及びモノクローナル抗体を提供する。本明細書に用いられる場合、「モノクローナル抗体」または「モノクローナル抗体組成物」という用語は、PGC−1の特定のエピトープと免疫反応することができる1種のみの抗原結合部位を含む抗体分子の集団をさす。従って、モノクローナル抗体組成物は典型的にそれが免疫反応する特定のPGC−1タンパク質に対して単一の結合親和性を示す。
PGC−1免疫原で適当な対象を免疫することにより上記のようにポリクローナル抗−PGC−1抗体を調製することができる。固定したPGC−1を用いる固相酵素免疫検定法(ELISA)でのような標準技術により、免疫した対象における抗−PGC−1抗体力価を時間にわたって調べることができる。必要な場合、哺乳類から(例えば、血液から)PGC−1に対して誘導された抗体分子を単離することができ、そしてIgG画分を得るためのプロテインAクロマトグラフィーのようなよく知られている技術によりさらに精製することができる。免疫後の適切な時間で、例えば、抗−PGC−1抗体力価が最も高い時に、対象から抗体産生細胞を得ることができ、そしてKohler及びMilstein((1975)Nature 256:495−497)により最初に記述されたハイブリドーマ技術(Brown等(1981)J.Immunol.127:539−46;Brown等(1980)J.Biol.Chem.255:4980−83;Yeh等(1976)PNAS 76:2927−31;及びYeh等(1982)Int.J.Cancer 29:269−75も参照)、より最近のヒトB細胞ハイブリドーマ技術(Kozbor等(1983)Immunol Today 4:72)、EBV−ハイブリドーマ技術(Cole等(1985)、Monoclonal Antibodies and Cancer Therapy、Alan R.Liss,Inc.、pp.77−96)またはトリオーマ技術のような標準技術によりモノクローナル抗体を製造するために用いることができる。モノクローナル抗体ハイブリドーマを製造するための技術はよく知られている(一般的にR.H.Kenneth、Monoclonal Antibodies:A New Dimension In Biological Analyses中、Plenum Publishing Corp.、New York、New York(1980);E.A.Lerner(1981)Yale J.Biol.Med.54:387−402;M.L.Gefter等(1977)Somatic Cell Genet.3:231−36を参照)。簡潔に言えば、上記のようにPGC−1免疫原で免疫した哺乳類からのリンパ球(典型的に脾臓細胞)に不死化細胞系(典型的には骨髄腫)を融合させ、そして得られたハイブリドーマ細胞の培養上清をスクリーニングしてPGC−1に結合するモノクローナル抗体を産生するハイブリドーマを同定する。
リンパ球と不死化細胞系を融合させるために用いられる多数のよく知られているプロトコルのいずれも抗−PGC−1モノクローナル抗体を作製する目的のために用いることができる(例えば、G.Galfre等(1977)Nature 266:55052;Gefter等、Somatic Cell Genet.上記引用;Lerner、Yale J.Biol.Med.上記引用;Kenneth、Monoclonal Antibodies、上記引用を参照)。さらに、同様に有用であるそのような方法の多数の変形があることを当業者は認識する。典型的に、不死化細胞系(例えば、骨髄腫細胞系)をリンパ球と同じ哺乳類種から得る。例えば、本発明の免疫原性調製物で免疫したマウスからのリンパ球を不死化したマウス細胞系と融合させることによりマウスハイブリドーマを作ることができる。好ましい不死化細胞系はヒポキサンチン、アミノプテリン及びチミジンを含有する培養培地(「HAT」培地)に感受性であるマウス骨髄腫細胞系である。標準技術による融合相手として多数の骨髄腫細胞系のいずれも、例えば、P3−NS1/1−Ag4−1、P3−x63−Ag8.653またはSp2/O−Agl4骨髄腫系を用いることができる。これらの骨髄腫系はATCCから入手できる。典型的には、ポリエチレングリコール(「PEG」)を用いてHAT感受性のマウス骨髄腫細胞をマウス脾臓細胞に融合させる。次に、融合していない及び非生産的に融合した骨髄腫細胞を殺す(融合していない脾臓細胞はトランスフォームされていないので数日後に死ぬ)HAT培地を用いて融合から生じるハイブリドーマ細胞を選択する。例えば、標準ELISAアッセイを用いて、PGC−1に結合する抗体に関してハイブリドーマ培養上清をスクリーニングすることにより本発明のモノクローナル抗体を産生するハイブリドーマ細胞を検出する。 モノクローナル抗体を分泌するハイブリドーマを製造する代わりに、組み換え組み合わせ免疫グロブリンライブラリー(例えば、抗体ファージ展示ライブラリー)をPGC−1でスクリーニングし、それによりPGC−1に結合する免疫グロブリンライブラリーメンバーを単離することにより、モノクローナル抗−PGC−1抗体を同定し、単離することができる。ファージ展示ライブラリーを作製し、スクリーニングするためのキットは市販されている(例えば、Pharmacia Recombinant Phage Antibody System、カタログ番号27−9400−01;及びStratagene SurfZAP TM(商標)Phage Display Kit、カタログ番号240612)。さらに、抗体展示ライブラリーの作製及びスクリーニングに特に容易に使用できる方法及び試薬の例は、例えば、Ladner等、米国特許第5,223,409号;Kang等、PCT国際公開WO第92/18619号;Dower等、PCT国際公開WO第91/17271;Winter等、PCT国際公開WO
92/20791;Markland等、PCT国際公開WO第92/15679号;Breitling等、PCT国際公開WO 93/01288;McCafferty等、PCT国際公開WO第92/01047号;Garrand等、PCT国際公開WO第92/09690号;Ladner等、PCT国際公開WO第90/02809号;Fuchs等(1991)Bio/Technology 9:1370−1372;Hay等(1992)Hum.Antibod.Hybridomas 3:81−85;Huse等(1989)Science 246:1275−1281;Griffiths等(1993)EMBO J 12:725−734;Hawkins等(1992)J.Mol.Biol.226:889−896;Clarkson等(1991)Nature 352:624−628;Gram等(1992)PNAS 89:3576−3580;Garrad等(1991)Bio/Technology 9:1373−1377;Hoogenboom等(1991)Nuc.Acids Res.19:4133−4137;Barbas等(1991)PNAS 88:7978−7982;及びMcCafferty等、Nature(1990)348:552−554中に見いだすことができる。
さらに、標準的組み換えDNA技術を用いて製造することができる、ヒト及びヒト以外の両方の部分を含んでなるキメラ及びヒト化モノクローナル抗体のような組み換え抗−PGC−1抗体は本発明の範囲内である。例えば、Robinson等、国際出願第PCT/US86/02269号;Akira等、欧州特許出願184,187;Taniguchi、M.、欧州特許出願171,496;Morrison等、欧州特許出願173,494;Neuberger等、PCT国際公開第WO
86/01533;Cabilly等、米国特許第4,816,567号;Cabilly等、欧州特許出願125,023;Better等(1988)Science 240:1041−1043;Liu等(1987)PNAS 84:3439−3443;Liu等(1987)J.Immunol.139:3521−3526;Sun等(1987)PNAS 84:214−218;Nishimura等(1987)Canc.Res.47:999−1005;Wood等(1985)Nature 314:446−449;及びShaw等(1988)J.Natl.Cancer Inst.80:1553−1559);Morrison、S.L.(1985)Science 229:1202−1207;Oi等(1986)Bio Techniques 4:214;Winter 米国特許5,225,539;Jones等(1986)Nature 321:552−525:Verhoeyan等(1988)Science 239:1534;及びBeidler等(1988)J.Immunol.141:4053−4060中に記述された方法を用いて、当該技術分野で知られている組み換えDNA技術によりそのようなキメラ及びヒト化モノクローナル抗体を製造することができる。
アフィニティークロマトグラフィーまたは免疫沈降法のような標準技術によりPGC−1を単離するために抗−PGC−1抗体(例えば、モノクローナル抗体)を用いることができる。抗−PGC−1抗体は細胞からの天然のPGC−1及び宿主細胞において発現された組み換えで製造されたPGC−1の精製を容易にすることができる。さらに、PGC−1タンパク質の発現の量及びパターンを評価するために抗−PGC−1抗体を用いて(例えば、細胞ライセートまたは細胞上清中の)PGC−1タンパク質を検出することができる。臨床試験方法の一部として組織中のタンパク質レベルを調べるため、例えば、与えられた処置投薬計画の効能を決定するために、抗−PGC−1抗体を診断的に用いることができる。抗体を検出可能な物質に連結する(すなわち、物理的に連結する)ことにより検出を容易にすることができる。検出可能な物質の例は様々な酵素、補欠分子族、蛍光物質、発光物質、生物発光物質及び放射性物質を含む。適当な酵素の例は西洋ワサビペルオキシダーゼ、アルカリホスファターゼ、β−ガラクトシダーゼまたはアセチルコリンエステラーゼを含み;適当な補欠分子族複合体の例はストレプトアビジン/ビオチン及びアビジン/ビオチンを含み;適当な蛍光物質の例はウンベリフェロン(umbelliferon)、フルオレセイン、フルオレセインイソチオシアネート、ローダミン、ジクロロトリアジニルアミンフルオレセイン、ダンシルクロリドまたはフィコエリトリンを含み;発光物質の例はルミノールを含み;生物発光物質の例はルシフェラーゼ、ルシフェリン及びエクオリンを含み、そして適当な放射性物質の例は125I、131I、35SまたはHを含む。
IV.製薬学的組成物
本発明のPGC−1核酸分子、PGC−1タンパク質、PGC−1モジュレーター及び抗−PGC−1抗体(本明細書において「活性化合物」とも呼ばれる)を患者、例えばヒトへの投与のために適当な製薬学的組成物に混和することができる。そのような組成物は典型的に核酸分子、タンパク質、モジュレーターまたは抗体及び製薬学的に許容しうる担体を含んでなる。本明細書に用いられる場合、「製薬学的に許容しうる担体」という用語は、製薬学的投与と適合した全ての溶媒、分散媒質、被覆、抗菌及び抗真菌剤、等張化及び吸収遅延剤等を含むと考えられる。製薬学的に活性のある物質のためのそのような媒質及び薬剤の使用は当該技術分野においてよく知られている。あらゆる通常の媒質または薬剤が活性化合物と適合している限り、そのような媒質を本発明の組成物に用いることができる。また、補助活性化合物も組成物中に混和することができる。
本発明の製薬学的組成物をその意図される投与の経路と適合するように調合する。投与の経路の例は非経口、例えば、静脈内、皮内、皮下、経口(例えば、吸入)、経皮(局所的)、経粘膜及び直腸投与を含む。非経口、皮内または皮下施用のために用いられる溶液または懸濁液は以下の成分:注入用の水、食塩水溶液、不揮発性油、ポリエチレングリコール、グリセリン、プロピレングリコールまたは他の合成溶媒のような滅菌した希釈剤;ベンジルアルコールまたはメチルパラベンのような抗菌剤;アスコルビン酸または重亜硫酸ナトリウムのような抗酸化剤;エチレンジアミン四酢酸のようなキレート化剤;酢酸塩、クエン酸塩またはリン酸塩のようなバッファー;及び塩化ナトリウムまたはデキストロースのような張性の調整のための薬剤を含むことができる。塩酸または水酸化ナトリウムのような酸または塩基でpHを調整することができる。非経口製剤をガラスまたはプラスチック製のアンプル、使い捨て注射器または複数投与量バイアル中に入れることができる。
注入用途のために適当な製薬学的組成物は(水溶性の)滅菌水溶液または分散液及び滅菌した注入可能な溶液または分散液の必要に応じた調製のための滅菌した粉末を含む。静脈内投与のために適当な担体は生理食塩水、静菌水、Cremophor
ELTM(商標)(BASF、Parsippany、NJ)またはリン酸緩衝食塩水(PBS)を含む。全ての場合において、組成物は無菌でなけらばならず、そして容易に注入できる程度に流動的であるべきである。それは製造及び貯蔵の条件下で安定でなければならず、そしてバクテリア及び真菌のような微生物の混入作用から保護されなけらばならない。担体は例えば水、エタノール、ポリオール(例えば、グリセロール、プロピレングリコール及び液状ポリエチレングリコール等)及びそれらの適当な混合物を含有する溶媒または分散媒質であってもよい。例えば、ルシチンのような被覆の使用により、分散液の場合には必要とされる粒度の維持により、そして界面活性剤の使用により、適切な流動性を保つことができる。様々な抗菌及び抗真菌剤、例えば、パラベン、クロロブタノール、フェノール、アスコルビン酸、チメロサール等により微生物の作用を防止することができる。多くの場合において、等張化剤、例えば、糖類、マンニト−ル、ソルビト−ルのようなポリアルコール、塩化ナトリウムを組成物中に含むことが好ましい。吸収を遅らせる薬剤、例えば、アルミニウムモノステアレート及びゼラチンを組成物中に含むことにより注入可能な組成物の持続性吸収をもたらすことができる。
必要な場合、上に列挙した成分の一つまたは組み合わせと適切な溶媒中で必要量の活性化合物(例えば、PGC−1タンパク質または抗−PGC−1抗体)を混和し、続いて濾過滅菌することにより滅菌した注入可能溶液を調製することができる。通例、基本分散媒質及び上に列挙したものからの必要とされる他の成分含む滅菌ビヒクル中に活性化合物を混和することにより分散液を調製する。滅菌した注入可能溶液の調製のための滅菌した粉末の場合、好ましい調製方法は真空乾燥及び凍結乾燥であり、それは先に滅菌濾過したその溶液から有効成分とあらゆるさらなる適切な成分の粉末をもたらす。
通例、経口組成物は不活性希釈剤または食用担体を含む。それらをゼラチンカプセル中に入れるかまたは錠剤に圧縮することができる。経口治療投与の目的には、活性化合物を賦形剤と混和し、錠剤、トローチ剤またはカプセル剤の形態で用いることができる。また、口内洗浄剤としての使用のために流体担体を用いて経口組成物を調製することもでき、その場合、流体担体中の化合物は経口的に施用され、切り取られ(swished)、そして吐き出されるかまたは燕下される。製薬学的に適合した結合剤及び/または添加剤物質を組成物の一部として含むことができる。錠剤、丸剤、カプセル剤、トローチ剤等は以下の成分または類似した性質の成分:微晶質セルロース、トラガカントゴムもしくはゼラチンのような結合剤;澱粉もしくはラクトースのような賦形剤;アルギン酸、Primogelもしくはコーンスターチのような崩壊剤;ステアリン酸マグネシウムもしくはSterotesのような滑剤;コロイド二酸化ケイ素のような減摩剤(glidant);ショ糖もしくはサッカリンのような甘味料;またはペパーミント、サリチル酸メチルもしくはオレンジフレーバーのような香料のいずれも含有することができる。 吸入による投与のために、適当な噴射剤、例えば二酸化炭素のような気体を含有する加圧した容器もしくはディスペンサーまたは噴霧器からエアゾールスプレーの形態で化合物を送達する。
全身投与は経粘膜または経皮手段によってもよい。経粘膜または経皮投与には、透過される防壁に適切な浸透剤を配合物中に用いる。そのような浸透剤は当該技術分野において一般に知られており、例えば、経粘膜投与には洗剤、胆汁塩及びフシジン酸誘導体を含む。鼻スプレーまたは座薬の使用により経粘膜投与を成し遂げることができる。経皮投与には、当該技術分野において一般に知られているような軟膏、膏薬、ゲルまたはクリーム中に活性化合物を調製する。
また、直腸送達のために化合物を座薬(例えば、ココアバター及び他のグリセリドのような通常の座薬ベースと)または停留(retention)浣腸剤の形態でも調製することができる。
一つの態様として、移植及びマイクロカプセル化送達系を初めとする制御放出製剤のような、体からの迅速な除去から化合物を保護する担体と活性化合物を調製する。エチレンビニルアセテート、ポリ無水物、ポリグリコール酸、コラーゲン、ポリオルトエステル及びポリ酢酸のような生物分解性の生体適合性ポリマーを用いることができる。そのような製剤の製造方法は当業者に明らかである。また、材料をAlza Corporation及びNova Pharmaceuticals,Inc.から商業的に入手することもできる。(ウイルス抗原に対するモノクローナル抗体で感染細胞を標的とするリポソームを初めとする)リポソーム懸濁液も製薬学的に許容しうる担体として用いることができる。例えば、米国特許第4,522,811号中に記述されたように、当業者に知られている方法によりこれらを調製することができる。
投与の容易さ及び投薬量の均一性のために単位剤形で経口または非経口組成物を調合することが特に有益である。本明細書に用いられる場合、単位剤形は処置される患者に単位投薬量として適当な物理的に分離した単位をさし;各単位は必要とされる製薬学的担体と会合して適切な治療効果をもたらすように計算された活性化合物の前以て決定された量を含有する。本発明の単位剤形の指定は活性化合物の固有の特性及び得られる特定の治療効果並びに個体の処置のためにそのような活性化合物を調合する当該技術分野に固有の制限により決定され、そしてそれらに直接依存する。
本発明の核酸分子をベクター中に挿入し、遺伝子治療ベクターとして用いることができる。例えば、静脈内注射、局所投与(米国特許5,328,470を参照)によるかまたは定位固定注入により(例えば、Chen等(1994)PNAS 91:3054−3057)遺伝子治療ベクターを患者に送達することができる。遺伝子治療ベクターの製薬学的調製物は許容しうる希釈剤中に遺伝子治療ベクターを含むことができ、または遺伝子送達ビヒクルが中に包埋される徐放性マトリックスを含んでなることができる。あるいはまた、組み換え細胞から損なわれずに完全な遺伝子送達ベクター、例えばレトロウイルスベクターを製造できる場合、製薬学的調製物は遺伝子送達系を製造する1つまたはそれ以上の細胞を含むことができる。
製薬学的組成物を投与のための説明書と一緒に容器、パックまたはディスペンサー中に入れることができる。
V.本発明の用途及び方法
本明細書に記述される核酸分子、ポリペプチド、ポリペプチド相同物、モジュレーター及び抗体を以下の方法:1)薬剤スクリーニングアッセイ;2)診断アッセイ;及び3)処置の方法の1つまたはそれ以上に用いることができる。本発明のPGC−1タンパク質は本明細書に記述される活性の1つまたはそれ以上を有し、従って、例えば、脂肪細胞分化、褐色脂肪細胞における熱発生並びに様々な細胞、例えば、筋肉細胞、肝細胞及び脂肪細胞におけるインシュリン感受性を調節するために用いることができる。以下にさらに記述するように、(例えば、遺伝子治療用途で宿主細胞において組み換え発現ベクターにより)PGC−1タンパク質を発現させるため、(例えば、生物学的サンプル中の)PGC−1
mRNAまたはPGC−1遺伝子中の遺伝子損傷を検出するため及びPGC−1活性を調節するために本発明の単離された核酸分子を用いることができる。さらに、PGC−1タンパク質活性を調節する薬剤または化合物をスクリーニングするため及びPGC−1タンパク質の不十分な生産または野生型PGC−1に比較して減少した活性を有するPGC−1タンパク質型の生産を特徴とする疾患を処置するためにPGC−1タンパク質を用いることができる。さらに、PGC−1タンパク質の検出及び単離並びにPGC−1タンパク質活性の調節のために本発明の抗−PGC−1抗体を用いることができる。
a. 薬剤スクリーニングアッセイ
本発明は変種のまたは異常なPGC−1核酸発現及び/またはPGC−1ポリペプチド活性を特徴とする(または関係する)疾患を処置するために用いることができる化合物または薬剤の同定方法に関する。また、これらの方法は本明細書において薬剤スクリーニングアッセイとも呼ばれ、典型的に、PGC−1タンパク質と相互作用する(例えば、結合する)、PGC−1タンパク質と標的分子の相互作用を調節する、そして/またはPGC−1核酸発現及び/もしくはPGC−1タンパク質活性を調節する能力に関して候補/試験化合物または薬剤をスクリーニングする工程を含む。これらの能力の1つまたはそれ以上を有する候補/試験化合物または薬剤を、変種のまたは異常なPGC−1核酸発現及び/またはPGC−1タンパク質活性を特徴とする疾患を処置するための薬剤として用いることができる。候補/試験化合物は、例えば、1)Igを末端につないだ融合ペプチド並びにランダムペプチドライブラリー(例えば、Lam、K.S.等(1991)Nature 354:82−84;Houghten、R.等(1991)Nature 354:84−86を参照)及びD−及び/またはL−配置アミノ酸で作製された組み合わせ化学により得られる分子ライブラリーのメンバーを初めとする可溶性ペプチドのようなペプチド;2)ホスホペプチド(例えば、無作為及び部分的に縮重した選択的ホスホペプチドライブラリーのメンバー、例えば、Songyang、Z.等(1993)Cell 72:767−778を参照);3)抗体(例えば、ポリクローナル、モノクローナル、ヒト化、抗−イディオタイプ、キメラ及び単鎖抗体並びにFab、F(ab’)、Fab発現ライブラリーフラグメント及び抗体のエピトープ結合フラグメント);並びに4)小さい有機及び無機分子(例えば、組み合わせ及び天然生成物ライブラリーから得られた分子)を含む。
一つの態様として、本発明はPGC−1タンパク質と相互作用する(例えば、結合する)候補/試験化合物をスクリーニングするためのアッセイを提供する。典型的に、アッセイは、例えば、複合体を形成するようにPGC−1タンパク質またはその一部に候補/試験化合物を相互作用(例えば、結合)させる条件下で、PGC−1タンパク質またはその生物学的に活性のある部分と候補/試験化合物を合わせ、そして複合体の形成を検出する工程を含む無細胞アッセイであり、その場合、PGC−1ポリペプチドまたはそのフラグメントと相互作用する(例えば、結合する)候補化合物の能力は複合体中の候補化合物の存在により示される。PGC−1タンパク質と候補化合物の間の複合体の形成を例えば標準的な免疫アッセイを用いて定量することができる。
別の態様として、本発明はPGC−1タンパク質とPGC−1タンパク質が通常相互作用する分子(標的分子)の間の相互作用(及びおそらくPGC−1活性も同様に)調節する(例えば、刺激するかまたは妨げる)候補/試験化合物を同定するためのスクリーニングアッセイを提供する。そのような標的分子の例はPGC−1タンパク質と同じシグナル伝達経路のタンパク質、例えば、体重の調節に関与する経路において、例えば、PPARγ、C/EBPα、甲状腺ホルモン受容体、エストロゲン受容体及びレチノイン酸受容体のような核ホルモン受容体、またはインシュリン感受性に関与する経路において、例えばPPARγ、PGC−1タンパク質の上流(活性の刺激剤及びインヒビターの両方を含む)または下流で機能する可能性があるタンパク質を含む。典型的に、アッセイは、例えば、候補化合物の存在なしにPGC−1タンパク質またはその生物学的に活性のある部分が標的分子と相互作用する(例えば、結合する)条件下で、PGC−1タンパク質またはその生物学的に活性のある部分、PGC−1標的分子及び候補/試験化合物を合わせ、そしてPGC−1タンパク質と標的分子を含む複合体の形成を検出するかまたはPGC−1タンパク質と標的分子の相互作用/反応を検出する工程を含む無細胞アッセイである。複合体形成の検出は、例えば、PGC−1タンパク質の誘導作用を測定することによる複合体の直接定量を含むことができる。(候補化合物の非存在下で検出されるものに対して)候補化合物の存在下でのPGC−1と標的分子の相互作用(例えば、PGC−1と標的分子間の複合体の形成)の減少のような統計的に有意な変化は、PGC−1タンパク質と標的分子の間の相互作用の調節(例えば、刺激または抑制)を表す。PGC−1タンパク質と標的分子の間の複合体の形成の調節を例えば免疫アッセイを用いて定量することができる。 上記の薬剤スクリーニングアッセイを実施するために、PGC−1またはその標的分子のいずれかを固定してタンパク質の一方または両方の非複合体形態からの複合体の分離を容易にすること及びアッセイの自動化に対応することが望ましい。反応物を含有するために適当なあらゆる容器中で候補化合物の存在下及び非存在下で標的分子へのPGC−1の相互作用(例えば、結合)を成し遂げることができる。そのような容器の例はマイクロタイタープレート、試験管及び微量遠心管を含む。一つの態様として、ポリペプチドをマトリックスに結合させるドメインを付加する融合ポリペプチドを与えることができる。例えば、グルタチオン−S−トランスフェラーゼ/PGC−1融合ポリペプチドをグルタチオンセファロースビーズ(Sigma Chemical、St.Louis、MO)またはグルタチオン誘導化マイクロタイタープレート上に吸着させることができ、次に、それを(例えば、35Sで標識した)細胞ライセート及び候補化合物と合わせ、複合体形成を導く条件下で(例えば、塩及びpHに関して生理的条件で)混合物をインキュベートする。インキュベーション後に、あらゆる結合していない標識を除くためにビーズを洗浄し、マトリックスを固定し、放射性標識をすぐにまたは複合体を解離させた後上清で測定する。あるいはまた、マトリックスから複合体を解離させ、SDS−PAGEにより分離し、ビーズ画分中に見いだされるPGC−1結合ポリペプチドのレベルを標準的な電気泳動技術を用いてゲルから定量することができる。
また、マトリックス上にポリペプチドを固定するための他の技術も本発明の薬剤スクリーニングアッセイにおいて用いることができる。例えば、ビオチン及びストレプトアビジンの結合を利用してPGC−1またはその標的分子のいずれかを固定することができる。当該技術分野でよく知られている技術(例えば、ビオチン化キット、Pierce Chemicals、Rockford、IL)を用いてビオチン−NHS(N−ヒドロキシ−スクシンイミド)からビオチン化されたPGC−1分子を調製し、ストレプトアビジンで被覆された96ウェルプレート(Pierce Chemical)のウェル中に固定することができる。あるいはまた、PGC−1と反応性であるが、その標的分子へのポリペプチドの結合を妨げない抗体をプレートのウェルに誘導化することができ、抗体結合によりPGC−1をウェルに取り付けることができる。上記のように、PGC−1結合ポリペプチド及び候補化合物の調製物をプレートのPGC−1提示ウェル中でインキュベートし、そしてウェル中に取り込まれた複合体の量を定量することができる。GST固定化複合体に対して上に記述したものに加えて、そのような複合体の検出方法はPGC−1標的分子と反応性であるかまたはPGC−1ポリペプチドと反応性であり標的分子と競合する抗体を用いる複合体の免疫検出;並びに標的分子と関係する酵素活性を検出することによる固相酵素アッセイを含む。
さらに別の態様として、本発明は変種のまたは異常なPGC−1核酸発現またはPGC−1ポリペプチド活性を特徴とする(または関係する)疾患の処置において用いることができる化合物を同定するための方法(例えば、スクリーニングアッセイ)を提供する。この方法は典型的にPGC−1核酸の発現またはPGC−1タンパク質の活性を調節する化合物または薬剤の能力をアッセイし、それにより変種のまたは異常なPGC−1核酸発現またはPGC−1ポリペプチド活性を特徴とする疾患を処置するための化合物を同定する工程を含む。変種のまたは異常なPGC−1核酸発現またはPGC−1ポリペプチド活性を特徴とする疾患は本明細書に記述されている。PGC−1核酸の発現またはPGC−1タンパク質の活性を調節する化合物または薬剤の能力のアッセイ方法は典型的に細胞に基づくアッセイである。例えば、PGC−1を含む経路によりシグナルを伝達するリガンドに感受性である細胞を候補化合物の存在下及び非存在下でPGC−1タンパク質を過剰発現するように誘導することができる。PGC−1依存的応答の統計的に有意な変化(刺激または抑制のいずれか)をもたらす候補化合物を同定することができる。一つの態様として、PGC−1核酸の発現またはPGC−1タンパク質の活性を細胞において調節し、(細胞増殖の速度または分化のような)目的の情報に対する候補化合物の影響を測定する。例えば、PGC−1タンパク質依存的シグナルカスケードに応答してアップまたはダウンレギュレートされる遺伝子の発現をアッセイすることができる。好ましい態様として、そのような遺伝子の調節領域、例えば、5’隣接プロモーター及びエンハンサー領域を容易に検出することができる遺伝子産物をコードする(ルシフェラーゼのような)検出可能なマーカーに機能的に連結する。また、例えば免疫ブロッティングにより、PGC−1またはPGC−1標的分子のリン酸化を測定することもできる。
あるいはまた、細胞を候補化合物と接触させ、細胞のPGC−1
mRNAまたはタンパク質の発現を測定する方法においてPGC−1核酸発現のモジュレーター(例えば、変種のまたは異常なPGC−1核酸発現またはPGC−1タンパク質活性を特徴とする疾患を処置するために用いることができる化合物)を同定することができる。候補化合物の存在下でのPGC−1
mRNAまたはタンパク質の発現のレベルを候補化合物の非存在下でのPGC−1 mRNAまたはタンパク質の発現のレベルに比較する。次に、この比較に基づいてPGC−1核酸発現のモジュレーターとして候補化合物を同定し、そして異常なPGC−1核酸発現を特徴とする疾患を処置するために用いることができる。例えば、PGC−1
mRNAまたはポリペプチドの発現が候補化合物の存在下でその非存在下でより多い(統計的に有意に多い)場合、候補化合物をPGC−1核酸発現の刺激剤として同定する。あるいはまた、PGC−1核酸発現が候補化合物の存在下でその非存在下でより少ない(統計的に有意に少ない)場合、候補化合物をPGC−1核酸発現のインヒビターとして同定する。PGC−1
mRNAまたはタンパク質を検出するために本明細書に記述される方法により細胞におけるPGC−1核酸発現のレベルを決定することができる。
本発明のさらに別の態様として、PGC−1に結合するかまたはそれと相互作用し(「PGC−1結合タンパク質」または「PGC−1−bp」)、そしてPGC−1タンパク質活性を調節する他のタンパク質を同定するために、2−ハイブリッドアッセイにおける「餌タンパク質」としてPGC−1タンパク質を用いることができる(例えば、米国特許第5,283,317号;Zervos等(1993)Cell 72:223−232;Madura等(1993)J.Biol.Chem.268:12046−12054;Bartel等(1993)Biotechniques 14:920−924;Iwabuchi等(1993)Oncogene 8:1693−1696;及びBrent WO
94/10300を参照)。また、そのようなPGC−1結合タンパク質は例えばPGC−1経路の上流または下流成分としてPGC−1タンパク質によるシグナルの伝達に関与しているとも思われる。
2−ハイブリッド系は別個のDNA結合及び活性化ドメインからなる大部分の転写因子のモジュール特質に基づく。Bartel、P.等「Using the Two−Hybrid System to Detect Protein−Protein Interactions」Cellular Interactions in Development:A Practical Approach中、Hartley、D.A.編集(Oxford University Press、Oxford、1993)pp.153−179。簡潔に言えば、アッセイは2つの異なるDNA構築物を利用する。一方の構築物では、PGC−1をコードする遺伝子を既知の転写因子(例えば、GAL−4)のDNA結合ドメインをコードする遺伝子に融合させる。もう一方の構築物では、同定されていないポリペプチド(「獲物」または「サンプル」)をコードする、DNA配列のライブラリーからのDNA配列を既知の転写因子の活性化ドメインをコードする遺伝子に融合させる。「餌」及び「獲物」タンパク質がインビボで相互作用することができ、PGC−1依存的複合体を形成する場合、転写因子のDNA結合及び活性化ドメインはごく接近する。この接近により、転写因子に応答する転写調節部位に機能的に連結されているレポーター遺伝子(例えば、LacZ)が転写される。レポーター遺伝子の発現を検出することができ、機能的な転写因子を含有する細胞コロニーを単離し、それを用いてPGC−1と相互作用するポリペプチドをコードするクローン化された遺伝子を得ることができる。
これらの薬剤スクリーニングアッセイにより同定されたPGC−1タンパク質活性及び/またはPGC−1核酸発現のモジュレーターを例えば、体重疾患、例えば肥満症及び不十分なインシュリン活性と関係する疾患、例えば糖尿病を処置するために用いることができる。これらの処置方法はそのような処置を必要とする患者、例えば本明細書に記述される疾患にかかっている患者に、例えば、上のサブセクションIVにおいて記述したような製薬学的組成物中で、PGC−1タンパク質活性及び/または核酸発現のモジュレーターを投与する工程を含む。
D. 診断アッセイ
本発明はさらに生物学的サンプル中のPGC−1の存在の検出方法を提供する。その方法は生物学的サンプルにおいてPGC−1の存在が検出されるようにPGC−1ポリペプチドまたはmRNAを検出することができる化合物または薬剤と生物学的サンプルを接触させることを含む。PGC−1
mRNAを検出するために好ましい薬剤はPGC−1 mRNAにハイブリダイズすることができる標識されたまたは標識可能な核酸プローブである。核酸プローブは少なくとも15、30、50、100、250または500ヌクレオチドの長さで且つPGC−1
mRNAにストリンジェントな条件下で特異的にハイブリダイズするために十分なオリゴヌクレオチドのような、例えば、配列番号:1の全長PGC−1 cDNAまたはその一部であってもよい。PGC−1タンパク質を検出するために好ましい薬剤はPGC−1タンパク質に結合することができる標識されたまたは標識可能な抗体である。抗体はポリクローナルまたはより好ましくはモノクローナルであってもよい。完全な抗体またはそのフラグメント(例えば、FabもしくはF(ab’))を用いることができる。プローブまたは抗体に関して「標識されたまたは標識可能な」という用語は、プローブまたは抗体に検出可能な物質を連結する(すなわち、物理的に連結する)ことによるプローブまたは抗体の直接標識及び直接標識される別の試薬との反応性によるプローブまたは抗体の間接標識を含むと考えられる。間接標識の例は蛍光的に標識された二次抗体を用いる一次抗体の検出及び蛍光的に標識されたストレプトアビジンで検出することができるようなビオチンでのDNAプローブの末端標識を含む。「生物学的サンプル」という用語は患者から単離された組織、細胞及び生物学的流体並びに患者内に存在する組織、細胞及び流体を含むと考えられる。すなわち、インビトロ及びインビボで生物学的サンプル中のPGC−1
mRNAまたはタンパク質を検出するために本発明の検出方法を用いることができる。例えば、PGC−1 mRNAの検出のためのインビトロ技術はノーザンハイブリダイゼーション及びインサイチューハイブリダイゼーションを含む。PGC−1タンパク質の検出のためのインビトロ技術は固相酵素免疫検定法(ELISA)、ウェスタンブロット、免疫沈降法及び免疫蛍光を含む。あるいはまた、標識された抗−PGC−1抗体を患者に導入することにより、患者においてインビボでPGC−1タンパク質を検出することができる。例えば、放射性マーカーで抗体を標識することができ、患者におけるその存在及び位置を標準的な画像形成技術により検出することができる。
また、本発明は生物学的サンプル中のPGC−1の存在を検出するためのキットも含む。例えば、キットは生物学的サンプル中のPGC−1タンパク質またはmRNAを検出することができる標識されたまたは標識可能な化合物または薬剤;サンプル中のPGC−1の量を決定するための手段;及びサンプル中のPGC−1の量を基準と比較するための手段を含んでなることができる。化合物または薬剤を適当な容器中に入れることができる。キットはさらにPGC−1
mRNAまたはタンパク質を検出するためにキットを用いるための説明書を含んでなることができる。
また、PGC−1遺伝子中の遺伝子損傷を検出し、それにより損傷を受けた遺伝子を有する患者が本明細書に定義されるような変種のまたは異常なPGC−1核酸発現またはPGC−1タンパク質活性を特徴とする疾患の危険にされされているかどうかを決定するためにも本発明の方法を用いることができる。好ましい態様として、その方法はPGC−1タンパク質をコードする遺伝子の完全な状態に影響を与える少なくとも1つの改変またはPGC−1遺伝子の不適当な発現を特徴とする遺伝子損傷の有無を患者からの細胞のサンプルにおいて検出することを含む。例えば、1)PGC−1遺伝子からの1個またはそれ以上のヌクレオチドの欠失;2)PGC−1遺伝子への1個またはそれ以上のヌクレオチドの付加;3)PGC−1遺伝子の1個またはそれ以上のヌクレオチドの置換;4)PGC−1遺伝子の染色体再編成;5)PGC−1遺伝子のメッセンジャーRNA転写産物のレベルの変化;6)ゲノムDNAのメチル化パターンのようなPGC−1遺伝子の異常な修飾;7)PGC−1遺伝子のメッセンジャーRNA転写産物の非野生型スプライシングパターンの存在;8)PGC−1タンパク質の非野生型レベル;9)PGC−1遺伝子の対立遺伝子欠損;及び10)PGC−1タンパク質の不適切な翻訳後修飾の少なくとも1つの存在を確かめることによりそのような遺伝子損傷を検出することができる。本明細書に記述されるように、PGC−1遺伝子中の損傷を検出するために用いることができる当該技分野で知られている多数のアッセイ技術がある。
ある種の態様として、損傷の検出はアンカーPCRまたはRACE
PCRのようなポリメラーゼ連鎖反応(PCR)(例えば、米国特許第4,683,195号及び4,683,202号を参照)あるいはまたライゲーション連鎖反応(LCR)(例えば、Landegran等(1988)Science 241:1077−1080;及びNakazawa等(1994)PNAS 91:360−364を参照)におけるプローブ/プライマーの使用を含み、それらの後者はPGC−1遺伝子中の点突然変異を検出するために特に有用である可能性がある(Abravaya等(1995)Nucleic Acids Res.23:675−682を参照)。この方法は患者から細胞のサンプルを集め、サンプルの細胞から核酸(例えば、ゲノム、mRNAまたは両方)を単離し、(存在する場合)PGC−1遺伝子のハイブリダイゼーション及び増幅が起こるような条件下でPGC−1遺伝子に特異的にハイブリダイズする1つまたはそれ以上のプライマーと核酸サンプルを接触させ、そして増幅産物の有無を検出するかまたは増幅産物の大きさを検出し、その長さをコントロールサンプルに比較する工程を含むことができる。
別の態様として、制限酵素切断パターンの変化によりサンプル細胞からのPGC−1遺伝子中の突然変異を同定することができる。例えば、サンプル及びコントロールDNAを単離し、(場合により)増幅させ、1つまたはそれ以上の制限エンドヌクレアーゼで消化し、ゲル電気泳動によりフラグメント長の大きさを決定し、比較する。サンプルとコントロールDNA間のフラグメント長の大きさの違いはサンプルDNA中の突然変異を表す。さらに、リボザイム切断部位の発生または喪失により特定の突然変異の存在を評点するために配列特異的リボザイム(例えば、米国特許第5,498,531号を参照)を用いることができる。
さらに別の態様として、PGC−1遺伝子を直接シークエンスし、サンプルPGC−1の配列を対応する野生型(コントロール)配列と比較することにより突然変異を検出するために当該技術分野で知られている様々なシークエンシング反応のいずれを用いてもよい。シークエンシング反応の例はMaxim及びGilbert((1977)PNAS 74:560)またはSanger((1977)PNAS 74:5463)により開発された技術に基づくものを含む。診断アッセイ((1995)Biotechniques 19:448)を実施する場合、質量分析法によるシークエンシング(例えば、PCT国際公開WO第94/16101号;Cohen等(1996)Adv.Chromatogr.36:127−162;及びGriffin等(1993)Appl.Biochem.Biotechnol.38:147−159を参照)を初めとする、様々な自動シークエンシング方法を利用することができる。
PGC−1遺伝子中の突然変異を検出するための他の方法は、RNA/RNAまたはRNA/DNA二本鎖中のミスマッチ塩基を検出するために切断薬剤からの保護を用いる(Myers等(1985)Science 230:1242);Cotton等(1988)PNAS 85:4397;Saleeba等(1992)Meth.Enzymol.217:286−295)、突然変異体と野生型核酸の電気泳動移動度を比較する(Orita等、(1989)PNAS 86:2766;Cotton(1993)Mutat Res 285:125−144;及びHayashi(1992)Genet Anal Tech Appl 9:73−79)、変性勾配ゲル電気泳動を用いて変性剤の勾配を含有するポリアクリルアミドゲルにおける突然変異体または野生型フラグメントの移動をアッセイする(Myers等(1985)Nature 313:495)方法を含む。点突然変異を検出するための他の技術の例は選択的オリゴヌクレオチドハイブリダイゼーション、選択性増幅及び選択的プライマー伸長を含む。
c. 処置の方法
本発明の別の態様は変種のまたは異常なPGC−1核酸発現及び/またはPGC−1タンパク質活性を特徴とする(または関係する)疾病または疾患にかかっている患者、例えばヒトを処置するための方法に関する。これらの方法は処置が起こるように患者にPGC−1モジュレーターを投与する工程を含む。「変種のまたは異常なPGC−1発現」という用語は非野生型PGC−1タンパク質の発現またはPGC−1タンパク質の発現の非野生型レベルをさす。変種のまたは異常なPGC−1タンパク質活性は非野生型PGC−1タンパク質活性またはPGC−1タンパク質活性の非野生型レベルをさす。PGC−1タンパク質は例えば脂肪細胞分化に関与する経路、褐色脂肪細胞における熱発生及びインシュリン感受性に関係するので、変種のまたは異常なPGC−1タンパク質活性または核酸発現は正常な体重制御及び代謝機能を妨げる。異種のまたは異常なPGC−1タンパク質活性または核酸発現を特徴とするかまたは関係する疾病または疾患の限定しない例は、体重疾患、例えば、肥満症、悪液質、食欲不振及び不十分なインシュリン活性と関係する疾患、例えば糖尿病を含む。体重と関係する疾患は異常な体重または体重の異常な制御と関係する疾患である。本明細書に用いられる場合、「不十分なインシュリン活性と関係するかまたは特徴とする疾病」という用語は、異常なインシュリン機能によるグルコースの異常な利用がある疾患または疾病を含む。異常なインシュリン機能はインシュリン生産、例えば、IDDM(I型糖尿病)におけるようなβ細胞の喪失に起因するインシュリンの欠乏のような細胞小器官による発現及び/または輸送、NIDDM(II型糖尿病)におけるようなインシュリン分泌反応の損傷のような分泌、インシュリン分子自体の形態、例えば、一次、二次または三次構造、標的細胞に対するインシュリンの作用、例えば、体の組織、例えば末梢組織におけるインシュリン抵抗性及びインシュリンに対する標的細胞の反応におけるあらゆる異常または損傷を含む。IDDM及びNIDDM及び他の型の糖尿病における異常なインシュリン活性のさらなる記述にはBraunwald、E.等編集、Harrison’s Principles of Internal Medicine、第11版(McGraw−Hill Book Company、New York、(1987)pp.1778−1797;Robbins、S.L.等、Pathologic Basis of Disease、第3版(W.B.Saunders Company、Philadelphia、1984)p.972を参照。本明細書に用いられる場合、「処置する」または「処置」という用語は疾患または疾病、例えば、異常なまたは変種のPGC−1タンパク質活性またはPGC−1核酸発現を特徴とするかまたは関係する疾患または疾病の少なくとも1つの不都合な影響または症状の減少または緩和をさす。
本明細書に用いられる場合、PGC−1モジュレーターはPGC−1核酸発現及び/またはPGC−1タンパク質活性を調節することができる分子である。例えば、PGC−1モジュレーターはPGC−1核酸発現を調節、例えば、アップレギュレート(活性化)またはダウンレギュレート(抑制)することができる。別の例として、PGC−1モジュレーターはPGC−1タンパク質活性を調節(例えば、刺激または抑制)することができる。PGC−1核酸発現を抑制することにより変種のまたは異常な(非野生型)PGC−1核酸発現及び/またはPGC−1タンパク質活性を特徴とする(関係する)疾患または疾病を処置することが望ましい場合、PGC−1モジュレーターは本明細書に記述されるようなアンチセンス分子、例えばリボザイムであってもよい。PGC−1核酸発現を抑制するために用いることができるアンチセンス分子の例は、開始コドンも含む配列番号:1の5’非翻訳領域の一部に相補的なアンチセンス分子及び配列番号:1の3’非翻訳領域の一部に相補的なアンチセンス分子を含む。PGC−1核酸発現を抑制するPGC−1モジュレーターはPGC−1核酸発現を抑制する小分子または他の薬剤、例えば、本明細書に記述されるスクリーニングアッセイを用いて同定される小分子または薬剤であってもよい。PGC−1核酸発現を刺激することにより変種のまたは異常な(非野生型)PGC−1核酸発現及び/またはPGC−1タンパク質活性を特徴とする(関係する)疾患または疾病を処置することが望ましい場合、PGC−1モジュレーターは、例えば、PGC−1核酸発現を刺激する、PGC−1をコードする核酸分子(例えば、配列番号:1のヌクレオチド配列に相同なヌクレオチド配列を含んでなる核酸分子)または小分子もしくは他の薬剤、例えば、本明細書に記述されるスクリーニングアッセイを用いて同定される小分子(ペプチド)もしくは薬剤であってもよい。
あるいはまた、PGC−1タンパク質活性を抑制することにより変種のまたは異常な(非野生型)PGC−1核酸発現及び/またはPGC−1タンパク質活性を特徴とする(関係する)疾患または疾病を処置することが望ましい場合、PGC−1モジュレーターはPGC−1タンパク質活性を抑制する、抗−PGC−1抗体または小分子もしくは他の薬剤、例えば、本明細書に記述されるスクリーニングアッセイを用いて同定される小分子もしくは薬剤であってもよい。PGC−1タンパク質活性を刺激することにより変種のまたは異常な(非野生型)PGC−1核酸発現及び/またはPGC−1タンパク質活性を特徴とする(関係する)疾患または疾病を処置することが望ましい場合、PGC−1モジュレーターはPGC−1タンパク質活性を刺激する、活性のあるPGC−1タンパク質またはその一部(例えば、配列番号:2のアミノ酸配列またはその一部に相同なアミノ酸配列を有するPGC−1タンパク質またはその一部)または小分子もしくは他の薬剤、例えば、本明細書に記述されるスクリーニングアッセイを用いて同定される小分子もしくは薬剤であってもよい。
さらに、処置が起こるようにPGC−1タンパク質もしくはその一部またはPGC−1タンパク質もしくはその一部をコードする核酸を患者に投与することにより体重疾患、例えば肥満症にかかっている患者を本発明に従って処置することができる。同様に、処置が起こるようにPGC−1タンパク質もしくはその一部またはPGC−1タンパク質もしくはその一部をコードする核酸を患者に投与することにより不十分なインキュリン活性と関係する疾患にかかっている患者を本発明に従って処置することができる。
本発明の別の態様は細胞関連活性を調節するための方法に関する。これらの方法は薬剤の非存在下での細胞の細胞関連活性に対して細胞関連活性が改変されるようにPGC−1タンパク質活性またはPGC−1核酸発現を調節する薬剤(または有効量の薬剤を含む組成物)と細胞を接触させることを含む。本明細書に用いられる場合、「細胞関連活性」は細胞の正常なまたは異常な活性または機能をさす。細胞関連活性の例は増殖、移動、分化、タンパク質のような分子の生産または分泌、細胞生存及び熱発生を含む。好ましい態様として、細胞関連活性は熱発生であり、そして細胞は褐色脂肪細胞である。本明細書に用いられる場合、「改変される」という用語は細胞関連活性の変化、例えば、増加または減少をさす。一つの態様として、薬剤はPGC−1タンパク質活性またはPGC−1核酸発現を刺激する。そのような刺激剤の例は活性のあるPGC−1タンパク質、細胞中に導入されているPGC−1をコードする核酸分子、及びPGC−1タンパク質活性またはPGC−1核酸発現を刺激し、本明細書に記述される薬剤スクリーニングアッセイを用いて同定される調節剤を含む。別の態様として、薬剤はPGC−1タンパク質活性またはPGC−1核酸発現を抑制する。そのような抑制剤の例はアンチセンスPGC−1核酸分子、抗−PGC−1抗体、及びPGC−1タンパク質活性またはPGC−1核酸発現を抑制し、本明細書に記述される薬剤スクリーニングアッセイを用いて同定される調節剤を含む。これらの調節方法をインビトロで(例えば、薬剤と細胞を培養することにより)あるいはまたインビボで(例えば、薬剤を患者に投与することにより)実施することができる。好ましい態様として、調節方法をインビボで実施し、すなわち、細胞は患者、例えば哺乳類、例えばヒト内に存在し、そして患者は異常なまたは変種のPGC−1タンパク質活性または核酸発現を特徴とする疾患または疾病にかかっている。
処置方法に用いられる核酸分子、タンパク質、PGC−1モジュレーター、化合物等を本明細書に記述される適切な製薬学的組成物中に混和し、分子、タンパク質、モジュレーターまたは化合物等にその意図される機能を遂行させる経路により患者に投与することができる。投与の経路の例は本明細書においてサブセクションIVにも記述されている。
本発明は以下の実施例によりさらに具体的に示され、それらは限定すると解釈されるべきではない。本願の全体にわたって引用される全ての参考文献、特許出願、特許及び公開特許出願の内容は引用することにより本明細書に組み込まれる。
実施例
実施例I: マウスPGC−1の同定及び特性化
UCPを発現する褐色脂肪細胞細胞系のマウスHIB
1B細胞系(Ross、R.等(1992)PNAS 89:7561−7565)を分化させ、UCP発現を誘導するためにイソプロテレノールで処理した。餌としてPPARγ及びClontech(Palo Alto、CA)試薬を用いて酵母2ハイブリッド系においてマウスHIB
1B細胞系からのcDNAライブラリーをスクリーニングした。簡潔に言えば、マウスPPARγのアミノ酸183−505をGAL4 DNA結合ドメインプラスミドpAS2中にインフレームでクローン化した。GAL4活性化ドメインプラスミドpACTII中にHIB 1B cDNA発現ライブラリーを構築した。酵母2ハイブリッド系プロトコルはCLONTECH Matchmaker2ハイブリッド系プロトコルに記述されたとおりであった。酢酸リチウム法によりpAS−PPARγをY190酵母細胞中に形質転換し、そしてロイシン−プレートにおける選択により維持した。pACT−HIB
1B cDNAライブラリーをY190−PPARγ酵母細胞中に形質転換し、CLONTECHプロトコルに記述されたようにフィルターアッセイにおいてβ−ガラクトシダーゼ活性に関して陽性クローンをアッセイした。全長PGC−1を得るためにpAS1ラミンcDNAを用い、HIB
1B細胞からのオリゴdT λZAP cDNAライブラリーをスクリーニングするためのプローブとして陽性の酵母cDNAクローンを用いた。
HIB 1B褐色脂肪細胞から調製したcDNAを用いた1x10一次形質転換体のスクリーニングにより約130クローンを得た。陽性ファージクローンのcDNAインサートをpBluescript中に切り出し、標準法により両方の鎖をシークエンスした。次に、RNAブロットで白色脂肪に対する褐色脂肪における選択的発現に関してこれらを分析した。この酵母2ハイブリッド系を用いて得られたクローンのうちの1つは配列番号:1のヌクレオチド610ないし3066を含んでなる部分PGC−1クローンであった。λZAP−HIB
1Bライブラリーをスクリーニングするために配列番号:1のヌクレオチド650ないし3066を含んでなる部分PGC−1クローンを用いることにより全長クローンを得た。
次に、PGC−1をPBSプラスミドからPSV.sport(GIBCO BRL、Gaithersburg、MD)にサブクローン化し、そしてTnT Promegaキット(Promega、Madison、WI)を用いてインビトロ翻訳した。約120kD及び70kDの分子量に相当する2つのバンドがインビトロ翻訳されたPSV.sport
PGC−1で見られた。これらのバンドはおそらくPGC−1の異なるアイソフォームに相当する。おそらく120kD型が配列番号:2のタンパク質に相当する。
(図1A、1A−1及び1A−2並びに配列番号:1に示される)マウスPGC−1のヌクレオチド配列は92kDaの予測される分子量で797アミノ酸残基を含有するタンパク質をコードする3066ヌクレオチドを含む(図2A)。(図1A、1A−1、1A−2及び2A並びに配列番号:2に示される)マウスPGC−1タンパク質配列はいくつかのドメイン/モチーフを含み、データバンク(Databank)検索によりPGC−1が発現配列標識(EST)データベースを除いていかなるデータベースにおいても近い相同物がない新規なタンパク質であることが示される。しかしながら、それは:推定上のRNA結合モチーフ(アミノ酸677−709)並びにセリン及びアルギニン残基が多い領域のいわゆるSRドメイン2つ(アミノ酸565−598及び617−631)を初めとする認識できるペプチドモチーフを含む。対になったRNA結合モチーフ及びSRドメインを含有するタンパク質はRNAポリメラーゼIIのC末端ドメイン(CTD)と相互作用することが示されている(Yuryev等(1996)Proc.Natl.Acad.Sci.USA 93:6975−6980)。しかしながら、これら2つの領域を除いて、PGC−1はこれらのドメインを含有する他のタンパク質と他の配列類似性を共有しない。これらのドメインに加えて、PGC−1はプロテインキナーゼAによるリン酸化の共通部位3つも含有する。しかしながら、PGC−1と核受容体のあらゆる既知のコアクチベーターの間で著しい相同性は見いだされなかった。しかしながら、PGC−1は核受容体−コアクチベーター相互作用をもたらすことができる成分として最近同定された(Heery等(1997)Nature 397:733−736;Torchia等(1997)Nature 387:677−684)1つのLXXLLモチーフ(アミノ酸142−146)を含有する。
これらの実験から、PGC−1が脂肪細胞化転写因子PPARγと相互作用する新規な因子であることは明らかである。さらに、PPARγのリガンドは特異的褐色脂肪組織マーカーUCPを誘導できることが知られているので、PPARγは褐色脂肪組織分化において重要な役割を果たすと考えられる。従って、PPARγ活性のPGC−1調節は褐色脂肪組織分化において役割を果たし、例えば、それは白色脂肪細胞よりむしろ褐色脂肪細胞に分化するように細胞を促進することができる。
実施例II: ヒトPGC−1の同定
ヒトPGC−1核酸分子を得るために、PGC−1が非常に発現される組織からのcDNAライブラリーを(例えば、Sambrook、J.、Fritsh、E.F.及びManiatis、T.、Molecular Cloning:A Laboratory manual第2版Cold Spring Harbor Laboratory、Cold Spring Harbor Laboratory Press、Cold Spring Harbor、NY、1989中に記述されたように)低いストリンジェンシー条件下でスクリーニングすることができる。マウス全長cDNAプローブ(例えば、配列番号:1に示される配列を有するプローブ)でスクリーニングしたヒトポリA
RNAのノーザンブロット分析により、ヒト筋肉、心臓、脳、腎臓及び膵臓において高レベルのPGC−1の発現が示され、ヒト筋肉及び心臓において最も高レベルの発現が検出された。従って、配列番号:1のヌクレオチド配列またはその一部(例えば、配列番号:1の5’領域からのヌクレオチド、例えば、配列番号:1のヌクレオチド1−50)を含んでなるプローブを用いてヒト筋肉ライブラリー、例えば、オリゴdTヒト筋肉ライブラリーをスクリーニングすることができる。PGC−1の5’領域でクローンを選択することにより、全長クローンを得る可能性を増す。このスクリーニングから得られたクローンをシークエンスし、それらがヒトPGC−1分子であるかどうかを決定するために配列番号:1に示されるマウス配列に比較することができる。クローンが部分クローンであると分かった場合、cDNAライブラリーを部分ヒトクローンで再スクリーニングして全長ヒトクローンを得る。
実施例III: マウスPGC−1の組織分布及び褐色脂肪組織におけるP GC−1の低温誘導
配列番号:1のヌクレオチド150ないし3066を含んでなるプローブを用いて24℃で順応させた4週齢マウスからの肺、筋肉、肝臓、心臓、腎臓、白色脂肪組織(WAT)、褐色脂肪組織(BAT)、脳、精巣及び脾臓組織からのmRNAのノーザン分析を実施した。簡潔に言えば、グアニジンイソチオシアネート抽出によりマウスの培養した細胞及び組織から全RNAを単離した。RNAサンプルを以前に記述されたように処理した(Tontonoz等(1994)Genes Dev.8:1224−1234)。28S(5000−6000bp)マーカーより大きい3本のバンドがノーザンブロット上に生じた。これらのバンドはおそらくPGC−1の異なるアイソフォームに相当する。PGC−1
mRNAは主として脳、心臓、腎臓及びBATにおいて検出された。さらに、これらの組織の全てにおいて約8kbの少ない種も見られる。それに反して、白色脂肪、肺、骨格筋、肝臓、精巣または脾臓からはいかなるPGC−1
mRNA発現もみられない。
低温への露出は特に褐色脂肪及び骨格筋における適応熱発生の古典的インデューサーである(Himms−Hagen(1989)Can.J.Physiol.Pharmcol.67:394−401)。最初のノーザン分析と同じプローブを用いて3から12時間まで4℃で順応させた4週齢マウスからのWAT、BAT及び肝臓組織からのmRNAの2回目のノーザン分析を実施した。このノーザン分析から、特にBATにおいて低温露出中にPGC−1が非常に誘導される(約30ないし50倍)こと及びPGC−1発現がWATでは発現されずにBAT特異的であることが明らかであった。PGC−1
mRNAは周囲温度で飼育したマウスからの骨格筋において検出できないが、マウスを低温に12時間露出することにより、この組織においてPGC−1遺伝子の発現が誘導される。室温でPGC−1
mRNAを発現する心臓及び腎臓は低温露出時にこの発現を高めない。低温露出中のPGC−1誘導は、BATの熱発生活性を招く褐色脂肪特異的マーカーのUCPのものと一致する。
これらの実験は、PGC−1が24℃に順応させた動物からのBATと初めとするいくつかの組織において発現されるが、WATでは発現されないことを示す。本明細書に記述される動物研究を以下のように実施した。4週齢のオスC57BL/6Jマウスを用いた。動物に随意に餌を与え、檻当たり10匹の動物に分けた。コントロール群を24℃で飼育し、一方、実験群を4℃で3または12時間飼育した。動物を屠殺し、組織を切断し、すぐに集めた。
WAT及びBATは、BATが最終分化時に熱発生機能を持つようになることを除いて脂肪細胞化に関して同じ遺伝学的及び生化学的機構を共有する。従って、PGC−1はBATの熱発生機能に役割を果たす。4℃で順応させた動物からの組織においてPGC−1が本質的にBATのみで発現されることが2回目のノーザン分析により示された時にこの機能が確かめられた。従って、PGC−1はエネルギー貯蔵及び消費の間の平衡に役割を果たす。
低温露出後の異なるマウス組織(腎臓、心臓、BAT及びWAT)におけるPGC−1及びミトコンドリア機能の遺伝子のノーザンブロットmRNA分析により、これらのマウスの褐色脂肪におけるPGC−1の低温誘導発現がATP−シンテターゼ(βサブユニット)及びシトクロムc−オキシダーゼサブユニット(COXII及びCOXIV)を初めとする他の重要なミトコンドリアタンパク質の誘導発現と相関することが示された。長期間の低温露出は骨格筋におけるこれらのミトコンドリアタンパク質の高められた活性をもたらすことが報告されているが(Bourhim等(1990)Am J.Physiol.258:R1291−R1298)、比較的短い低温露出では筋肉においてATP−シンテターゼ、COXIIまたはCOXIVのmRNAの誘導は見られなかった。これらの実験を実施するために、動物を4℃で3または12時間保ち、屠殺し、RNAの調製のために組織(腎臓、心臓、WAT及びBAT)を切断した。各サンプルに10マウスをプールした。ハイブリダイゼーションに用いたプローブはPGC−1、UCT−1、ACTシンテターゼ(βサブユニット)、シトクロムc−オキシダーゼII(COX−II)及びシトクロムc−オキシダーゼIV(COX−IV)であった。
低温は中枢神経系において探知され、筋肉及び褐色脂肪を初めとする末梢組織に増加した交感神経アウトプットをもたらす(Himms−Hagen(1989)Can.J.Physiol.Pharmacol.67:394−401)。培養した褐色脂肪細胞をβ−アドレナリンアゴニストにさらすことにより、褐色脂肪細胞前駆体細胞増殖及びUCP−1の誘導の点で低温露出にまねることができる(Rehnmark等(1990)J.Biol.Chem.25:16464−16471)。PGC−1遺伝子発現がβ−アドレナリンアゴニストにも感受性であるかどうかを決定するために、HIB
1B褐色脂肪細胞を非サブタイプ選択的βアゴニストのイソプロテレノール(1μM)で10時間処理した。全細胞RNAを単離し、PGC−1及びUCP−1 cDNAプローブを用いて分析した。
これらの薬剤でのHIB
1B褐色脂肪細胞の処理はPGC−1 mRNA及びUCP−1 mRNAの両方の急激な増加をもたらした。簡潔に言えば、本明細書において記述したようにHIB
1B褐色脂肪前脂肪細胞を分化させた。6日後に、細胞は約80%分化された。9−シスレチノイン酸への褐色細胞の露出はUCP−1発現を誘導するβアゴニストの作用を高めることが以前に示されている(Puigserver等(1996)Biochem.J.317:827−833)。HIB
1B細胞へのこの(RXR及びRARの両方を活性化する)レチノイド及びイソプロテレノールの添加はPGC−1及びUCP−1発現の両方のわずかなさらなる増加をもたらした。これらの結果はβ−アドレナリンアゴニストがUCP−1及びPGC−1の両方の誘導に対する低温の影響をもたらすことに重要な役割を果たす可能性があることを示す。実施例IV: PGC−1の組み換え発現並びに他の転写因子及び核ホル モン受容体へのPGC−1の結合
まず、PGC−1ヌクレオチド配列の一部(配列番号:1のヌクレオチド610ないし3066)をpGEXベクター(Pharmacia Biotech Inc.、Piscataway、NJ)中にサブクローン化することによりGST−PGC−1融合タンパク質を作製した。簡潔に言えば、PGC−1(pBluescriptからのEcoRI−XhoIフラグメント)をpGEX
5X3のSmaI部位にクローン化した。特定のオリゴヌクレオチドを用いてPCRを実施することによりPPARγ欠失を作製し、pGEX 5X2にインフレームでクローン化した。これらの融合タンパク質を発現させ、約1μgのタンパク質(いずれかのGST、または単独もしくはPGC−1に融合した)を含有するビーズ上でエシェリキア・コリから精製し、30μlを結合バッファー(20mM
HEPES[pH 7.7]、75mM KCl、0.1mM EDTA、2.5mM MgCl、0.05% NP40、2mM DTT、10%
グリセロール)中に再懸濁した。
COS細胞において融合タンパク質を発現させた後、PPARγ、PPARα及びPPARδのような他のPPARアイソフォーム、C/EBPα及びRXRαのような他の転写因子並びに甲状腺ホルモン受容体、エストロゲン受容体及びレチノイン酸受容体のような他の核ホルモン受容体とPGC−1の相互作用を調べるためにTakeshita、A.等((1996)Endocrinology 137:3594−3597中に記述されたようなインビトロ結合アッセイを実施した。それらのアッセイを以下のように実施した。コントロールGSTタンパク質のみまたはGSTに融合したPGC−1(aa36−797)をグルタチオンアガロースビーズ上に固定し、異なるインビトロ翻訳された([35S]メチオニン標識された)核受容体及び適切なリガンドまたはビヒクルとインキュベートした。[35S]メチオニン(Promega TNT網状赤血球ライセート系キット)を用いてインビトロ網状赤血球翻訳反応で製造された5μlの異なる核受容体と融合タンパク質を混合した。特定の核受容体リガンドまたはビヒクル(5μl)を添加した。結合を室温で60分間実施した。次に、リガンドを含むかまたは含まない結合バッファーでビーズを洗浄し、SDS−PAGEサンプルバッファー中に再懸濁した。電気泳動、固定及び増強後、オートラジオグラフィーにより放射性標識されたタンパク質を可視化した。
これらのアッセイから、PGC−1がPPARγと相互作用したことが示される。10μMのBRL49653(PPARγのチアゾリジンジオンリガンド)の添加はこの結合に顕著に影響を与えないので、この相互作用はリガンド依存的ではなかった。バクテリアで発現されたPPARγをビーズ上に固定し、網状赤血球で翻訳されたPGC−1と共に用いた場合にこの相互作用のリガンド依存性の同様な欠如が見られた。また、これらのアッセイから、PGC−1がa)PPARαと相互作用し、ロイコトリエン−4(1μM)を用いてわずかなリガンド依存性を示し;b)PPARδと相互作用し、カルボプロスタサイクリン(1μM)を用いてわずかなリガンド依存性を示し;c)甲状腺ホルモン(1μM)を用いてわずかなリガンド依存性で甲状腺ホルモン受容体と相互作用し;d)エストラジオール(1μM)を用いてわずかなリガンド依存性でエストロゲン受容体と相互作用し;そしてe)全てトランスのレチノイン酸(1μM)を用いて強いリガンド依存性でレチノイン酸受容体と相互作用することが示された。また、TRβもPGC−1に特異的に結合するが、この場合、リガンド(T)添加は結合の2ないし3倍の増加を引き起こす。PGC−1とレチノイン酸(RA)受容体間及びPGC−1とエストロゲン受容体(ERα)間で強いリガンド依存的結合が見られる。それに反して、リガンドを添加してまたはせずに、PGC−1とレチノイド−X受容体(RXRα)の間ではほとんどまたは全く結合が見られない。これらのデータはPGC−1がPPARγ及びいくつかの他の核受容体とインビトロで特異的に相互作用することを示す。リガンド依存性なし(PPARγ)からリガンド添加に対する強い依存性(RARα)まで、これらの相互作用にはリガンドに対する広範囲の依存性がある。
哺乳類細胞においてもPPARγとPGC−1の間の相互作用を見ることができる。添加されるリガンドなしでさえ、免疫沈降アッセイにおいてこれら2つのタンパク質の間で会合が見られる。HAのついたPGC−1及びPPARγを発現するベクターとをCOS細胞中にトランスフェクトした。簡潔に言えば、HAのついたN末端を有する全長PGC−1をPCRにより作製し、pSV−SPORTのSmaIにつないだ。リガンドのピオグリタゾン(5μM)、9−シスRA(1μM)及び8−Br−cAMP(1nm)を添加し、3時間後に細胞を集めた。Lasser等((1991)Cell 66:305−315)のようにトランスフェクト細胞からの細胞抽出及び免疫沈降を実施した。ウサギ抗−マウスPPARγ(Hu等(1996)Science 274:2100−2103)を免疫沈降に1:500希釈物として用いた。ウェスタンブロットのための抗−HAマウス希釈物をECL(Amersham)を用いて発色させた。細胞をピオグリタゾン(PPARγリガンド)で処理した場合、会合の非常に適度な増加が見られる。
PGC−1が実際に細胞核に存在するかどうかを検討するために、PGC−1とグリーン蛍光タンパク質(GFP)間の融合タンパク質を構築した。これを完了ことにより全長PGC−1に融合したGFPを作製した(Clontech)。Nikon Diaphora 200顕微鏡を用いてトランスフェクションの24時間に細胞配置を視覚化した。GFP−PGC−1がCOS細胞において発現される場合、それは完全に細胞核中に見られる。
これらの結果はPGC−1がPPARγだけでなく他の核受容体にも結合し、従って、これらのさらなる核ホルモン受容体の機能を調節するためにこの分子を使用できることを示す。これらの核ホルモン受容体の機能を調節する分子をスクリーニングするための標的としてPGC−1を用いることができる。さらに、PGC−1が甲状腺ホルモン受容体及びレチノイン酸受容体と相互作用することは、これらの受容体は両方ともUCP発現を転写的に調節できるので褐色脂肪細胞機能において重要である。
実施例V: UCP調節要素の制御下の遺伝子の発現を誘導するために PGC−1はPPARγ/RXRα及びTRとのコアクチ
ベーターとして働く。
PGC−1の転写活性を評価するために、インビトロ転写アッセイを実施した。UCP−1プロモーターはPPARγ及びTRの両方の結合部位を有することが示されている(Cassard−Doulcier等(1994)J.Biol.Chem.269:24335−24342;Sears等(1996)Mol.Cell.Biol.16:3410−3419)。このアッセイでは、UCPの全長プロモーター及びエンハンサーをCATレポーター遺伝子に連結した。RAT
IR(ヒトインシュリン受容体を発現するように形質転換されたラット繊維芽細胞系)細胞をリン酸カルシウム法を用いてPSV−sportのみ(コントロール)、PPARγ/RXRα、PGC−1及びPPARγ/RXRα/PGC−1で一過性トランスフェクトした。CMVプロモーターの制御下のβ−ガラクトシダーゼレポーター遺伝子の共トランスフェクションによりトランスフェクション効率に関してCATアッセイからの結果を調整した。各場合で、細胞をジメチルスルホキシドまたは9−シスレチノイン酸、8−Br−cAMP及び合成PPARγリガンドピオグリタゾン(PIO)の組み合わせのいずれかで処理した。9−シスレチノイン酸、8−Br−cAMP及びPIOの組み合わせで処理し、そしてPGC−1のみを含有する細胞、PPARγ/RXRαを含有する細胞及びPPARγ/RXRα/PGC−1を含有する細胞において転写活性が見られた。9−シスレチノイン酸、8−Br−cAMP及びPIOの組み合わせで処理し、そしてPPARγ/RXRα/PGC−1を含有する細胞において最大の活性が見られた。これらの結果はPGC−1がPPARγ/RXRαの正の転写コアクチベーターとして働くことを示す。
どの誘導物質がPGC−1の転写活性化に関与するかを決定するために、細胞を異なる誘導物質で個々に(PIO、合成PPARγリガンドトログリタゾン(TRO)、9−シスレチノイン酸、8−Br
cAMP)、そして組み合わせて(8−Br cAMPと組み合わせた9−シスレチノイン酸)処理した。個々の誘導物質で処理された細胞に関して、誘導物質の効能は以下とおりであることが見いだされた(最も高いものから最も低いものへ):9−シスレチノイン酸、8−Br
cAMP、TRO、そして次にPIO。9−シスレチノイン酸と8−Br cAMPの組み合わせは個々の誘導物質のいずれよりも転写活性を高めることに効力があった。
同様に、TRβ/RXRαの組み合わせのみは、T(1μM)を含むリガンドカクテルで刺激した場合でさえほとんど転写活性を誘導しなかった。しかしながら、TRβ/RXRα対とPGC−1の組み合わせは、再びリガンド依存的に強力なトランス活性化を誘導した。これらの結果はPGC−1がPPARγ及びTRの強力な転写コアクチベーターとして機能できることを明らかに示す。PGC−1とPPARγの結合はリガンド依存的でないことにもかかわらず、PPARγリガンドを添加して最高の転写応答が見られることは興味深い。これはSRC−1、CBP等のような別のコアクチベーターの同時のリガンド依存的連結に起因すると思われる。
PPARγ及びPGC−1で最大の転写活性化を得るために用いられる異なるホルモン及びリガンドの役割を図3Aにおいて分析する。個々の成分−トログリタゾン(trog.)、9シス−レチノイン酸(9cRA)及び8−ブロモサイクリックAMP(cAMP)−は各々転写活性の2ないし4倍の増加を刺激する。活性化倍数は同じベクターでトランスフェクトしたがリガンドで処理しなかった細胞で見られた値に比較された。しかしながら、それらを組み合わせて用いた場合に最も強い応答が見られる。9−シスレチノイン酸と8−ブロモサイクリックAMPの相乗作用は特に顕著であり(14倍)、一方、3つ全ての薬剤一緒では未処理のコントロールより18倍の増加を引き起こす。
上記の転写アッセイはPGC−1のみ及び/またはPPARγ/RXRαと組み合わせたPGC−1の機能を調節する、例えば、刺激するかまたは抑制する化合物または薬剤をスクリーニングするための有用なアッセイである。本実施例に報告された結果に基づくと、UCP発現、従ってBATにおける熱発生を調節すると思われる薬剤はPGC−1分子、PPARγリガンド(例えば、チアゾリジンジオン、例えばPIO及びTRO)、レチノイド及びアドレナリンアゴニストを含む。
実施例VI: PGC−1−PPARγ相互作用を調節するドメインの同 定
核受容体とSRC−1またはCBPのようなある種のコアクチベーターの間の相互作用はリガンド依存的であり(Kamai等(1996)Cell 84:403−414)、コアクチベーター中のLXXLL(配列番号:3)及び受容体中のC末端AF−2ドメインを伴う(Heery等(1997)Nature 387:733−736;Torchia等(1997)Nature 387:677−684)。PGC−1−PPARγ相互作用を招くドメインを同定するために、PGC−1の異なるC末端欠失を網状赤血球翻訳産物として作製し、FST−PPARγ融合タンパク質と混合した。pBluescriptにつながれたPGC−1
cDNA中の特定の制限部位を用いてPGC−1の欠失を作製した。これらの欠失のために以下の制限酵素を用いた:全長XhoI(aa 1−797)、HaeII(aa 1−675)、NcoI(aa 1−503)、XbaI(aa 1−403)、KpnI(aa 1−338)及びStuI(aa
1−292)。次に、これらを[35S]メチオニンで標識してインビトロで翻訳した。各インビトロ翻訳反応の1μlをSDS−PAGEにより分離し、オートラジオグラフィーを行った。
図4に固定したPAGEγに結合する全長PGC−1(1−797)及び1−675欠失の両方のデータを要約する。SR及びRNA結合ドメインを欠いているPGC−1
1−503の結合は18%まであまり大きくなく減少した。同様なレベルの結合をPGC−1 1−403及び1−338で見ることができる。しかしながら、LXXLL(配列番号:3)モチーフをなお含有するPGC−1
1−292はPPARγと相互作用する能力を完全に失う。図2Aに示されるように、残基292−338はプロリン残基が非常に多いが、タンパク質−タンパク質相互作用をもたらすことが知られているいかなる明確なドメインも含有しない。
現在まで同定された核ホルモン受容体アクチベーターの大部分は、リガンド依存的転写活性化を招くC末端AF−2ドメインと相互作用する。PGC−1もPPARγのこの部分と相互作用するかどうかを決定するために、GST融合タンパク質として製造されるPPARγのいくつか欠失を用い、インビトロ翻訳されたPGC−1と合わせた。図5はPPARγのアミノ酸181−505(酵母2ハイブリッドスクリーニングにおいて用いられた最初のフラグメント)がPGC−1と強く相互作用し、投入量の23%に下げることを示す。一方、45アミノ酸のさらなる欠失(228−505)は全長PGC−1に結合できない。これらのPPARγ欠失は両方ともSRC−1に結合することができ、それらが他のタンパク質と相互作用する一般的能力を失っていないことを示す。これらのデータはPPGRγがPGC−1と結合するためにそのDNA結合及びヒンジドメインの部分を利用することを示す。それは明らかにSRC−1及びCBPのような他のコアクチベーターを連結するC末端AF−2ドメインにより相互作用しない。
実施例VII: PGC−1の転写活性及び欠失分析
PGC−1がそれ自体の転写活性化ドメインを有するかまたは核受容体の転写アクチベーター特性を現すかまたは増大する可能性があるなんらかの活性を含有するかどうかを検討するために、全長または一部のPGC−1とGAL4のDNA結合ドメイン(DBD)の間の多数の融合タンパク質を調製し、GAL4
DNA結合標的配列、UASによる転写をアッセイした。CATに連結した5コピーのUASを含有するレポータープラスミドで転写をアッセイした。より具体的には以下のように転写活性化アッセイを実施した。まず、全3kbのcDNAをSmaII(SmaI?)−XhoIフラグメントとしてpSV−SPORT(GIBCO−BRL)のSmaI−SalI部位に連結することにより全長PGC−1を含有する発現プラスミドを構築した。GAL4
DBDと全長マウスSRC1間のコントロール融合と一緒に、これを−CMXベクターと細胞中で発現させた。4.5μgのDBD−PGC−1により刺激された活性を100%と設定した。−3740/+110bp
UCPプロモーターは以前に記述された(Kozak等(1994)Mol.Cell.Biol.14:59−67)。10%コズミック(cosmic)仔ウシ血清を含有するDMEM中でRat1
IR繊維芽細胞を培養し、リン酸カルシウム法により80%−90%融合でトランスフェクトした。0.1% DMSOを含有するビヒクル(9−シスレチノイン酸及びトログリタゾン)または水(8−ブロモcAMP)にリガンドを溶解した。トランスフェクションを二重に実施し、少なくとも3回繰り返した。Kim及びSpiegelman((1996)Genes Dev.10:1096−1107)中に記述されたようにCAT活性をアッセイした。
GAL4融合構築物では、PCRにより作製された全長PGC−1をpCMX−GAL4プラスミドのSalI−EcoRV部位中にインフレームでクローン化した。マウス全長SRC−1をRSV.GAL4のSmaI部位にクローン化した。COS細胞をRat1
IR繊維芽細胞と同様にトランスフェクトし、レポーターは5xUASg−CATであった。
図3Bに示されるように、PGC−1はGAL4
DBDによりDNAにつながれると容易に転写を活性化できる。比較のために、核受容体の別のコアクチベーター、SRC−1とGAL4 DBDの融合により得られた結果を示す。従って、PGC−1は転写活性化機能を示すために核受容体への連結を全く必要とせず;これらの受容体とその相互作用は主としてPGC−1を適切なDNA部位に導くように働くと思われる。 PGC−1の転写活性化ドメインの位置をさらに決定するために、GAL4
DNA結合ドメインに連結した多数の欠失突然変異体を上記のようにルシフェラーゼレポーター遺伝子の誘導に関して試験した。以下の構築物:コントロールのGAL−4のみ、GAL4−PGC−1、GAL4−PGC−1のアミノ酸1−65、GAL4−PGC−1のアミノ酸1−125、GAL4−PGC−1のアミノ酸1−170、GAL4−PGC−1のアミノ酸1−350、GAL4−PGC−1のアミノ酸1−550、GAL4−PGC−1のアミノ酸1−650及びGAL4−PGC−1のアミノ酸170−797を試験した。結果を以下の表1に要約する。
表1:PGC−1−GAL−4構築物の転写活性
構築物
ルシフェラーゼユニット
GAL4のみ 4
GAL4−PGC−1 700
GAL4 1−65 4,800
GAL4 1−125 84,000
GAL4 1−170 36,000
GAL4 1−350
700
GAL4 1−550 4,300
GAL4 1−650
300
GAL4 170−797 4
表1に示されるように、分子のN末端領域を含有するGAL4−PGC−1構築物は全長分子より高い転写活性を示す。構築物GAL4
170−797は検出可能な転写活性を示さなかった。これらの結果はPGC−1の転写活性化ドメインが分子のN末端領域、特に、PGC−1のアミノ酸1−170に位置することを示す。C末端アミノ酸残基が含まれる場合に見られる転写活性の減少(例えば、GAL4
1−125と全長分子の転写活性を比較せよ)は、これらのC末端残基がN末端ドメインの転写活性を、例えばこのドメインを遮蔽することによるかまたはこのドメインを遮蔽するかそうでなければその活性を相殺することができる他のタンパク質と相互作用することにより、妨げる可能性があることを示唆する。
上記のアッセイ及び構築物はPGC−1の機能を調節する、例えば、刺激するかまたは抑制することができる化合物または薬剤をスクリーニングするための有用なアッセイを提供する。特に、好ましい化合物または薬剤はPGC−1のアクチベーター、例えば、分子のC末端部分の阻害作用を相殺する薬剤を含む。これらの化合物または薬剤は熱発生を調節することに有用である可能性がある。
実施例VIII: PGC−1活性の調節におけるプロテインキナーゼAの役 割
UCP遺伝子の発現はcAMPに非常に感受性である。PGC−1配列の分析により、プロテインキナーゼAによるリン酸化の3つの共通部位が示された(図2A及び2B)。この結果はPGC−1の活性の調節におけるこのキナーゼの潜在的役割を示唆し、それは次にUCP遺伝子発現を改変する。この可能性を検討するために、部位特異的突然変異誘発を実施してこれらのリン酸化部位を除去することができる。例えば、標準プロトコルを用いて配列番号:2のアミノ酸373−376を突然変異させることができる。得られた突然変異体の転写活性をUCPプロモーターの制御下のレポーター遺伝子、例えばCAT遺伝子を保有する例えばCOS細胞またはHeLa細胞において試験することができる。実施例IX: PGC−1の異所発現は適応熱発生の分子成分を誘導する 適応熱発生の遺伝子を調節するPGC−1の能力を直接調べるために、レトロウイルスベクターを用いてこのタンパク質を白色脂肪前駆体細胞において発現させ、次に、3T3−F442A前脂肪細胞を刺激して分化させた。簡潔に言えば、pBluescript−PGC−1プラスミドからのBamHI−XhoIフラグメントをpBabe−puroのBamHI/SalI部位に連結することによりPGC−1ウイルス発現ベクター(pBabe−PGC−1)を構築した。薬剤選択後に、ウイルス感染した3T3F442A−PGC−1及び3T3F441A−ベクター細胞系を10%
BCSを含むDMEM中で融合するまで増殖させた。これらの細胞をDMEMインシュリン中で培養することによりそれらの分化を開始させた。細胞にこの培地を2日毎に再供給した。10%
CCSを含むDMEM中で特定の細胞を融合するまで増殖させた。次に、分化を誘導するためにこれらの細胞を1μMデキサメタゾン、0.5mMのメチル−イソブチル−キサンチン、125μMインドメタシン、17nMインシュリン及び1nM
で48時間処理した。続いて、10% CCS、17nMインシュリン及び1nM Tを含有するDMEM中で細胞を維持し、2日毎に補給した。これらの処理後に、全RNAを単離し、分析した。
UCP−1発現を誘導するために、1μM
8−ブロモ−cAMP及び1mM 9−シス−レチノイン酸を培地に添加し、6時間後に細胞から全RNAを抽出した。PGC−1プローブでのノーザンブロット分析により、PGC−1
mRNAが空のベクターに感染したこれらの白色脂肪細胞ではほとんど検出できないが、PGC−1 cDNAを含有するウイルスに感染した細胞ではより多く発現されることが示された。培養細胞におけるこのmRNAの発現は低温露出したマウスの褐色脂肪においてみられるものの約6%であった。細胞核においてコードされる褐色脂肪の古典的マーカーのUCP−1のmRNAはコントロールの3T3−F442A細胞ではほとんで検出できないが、PGC−1を発現する細胞では著しく誘導される。核において同様にコードされる酸化的リン酸化に関与する重要なミトコンドリアタンパク質のATPシンテターゼのmRNAは同様にPGC−1を発現する細胞において増加される。ミトコンドリアの呼吸酵素シトクロムc−オキシダーゼサブユニットCOXII及びIVはそれぞれミトコンドリア及び核ゲノムにおいてコードされる。これらのmRNAは両方ともPGC−1を異所的に発現する細胞において2ないし3倍増加する。熱発生に関連しない白色及び褐色脂肪細胞遺伝子aP2及びリボソームタンパク質の36B4の発現を投入コントロールとして示す。これらの結果はPGC−1が低温露出した動物においてみられるものよりはるかに下のレベルで発現される場合にでもミトコンドリアの機能及び適応熱発生のいくつかの重要な遺伝子の発現を刺激できることを示す。
ミトコンドリアゲノムにおいてコードされるタンパク質(COX−II)のmRNAの発現に影響を与えるPGC−1の能力は、PGC−1がミトコンドリアの生合成自体に影響を与えることができる可能性があることを示唆する。ミトコンドリアDNAの細胞含有量の変化はミトコンドリア増殖の簡単な生化学アッセイとして用いられている(Martin等(1995)Biochem.J.308:749−752;Klingenspor等(1996)Biochem.J.316:607−613)。この可能性を検討するために、ミトコンドリアDNAのサザンブロット分析を実施した。Maniatis等(1989)Molecular Cloning:A Laboratory Manual第2版(Cold Spring Harbor、NY:Cold Spring Harbor Laboratory Press)中に記述されたようにゲノムDNAを単離し、処理することにより3T3−F442Aサザンブロットを実施した。3T3−F442A細胞を上記のように分化させた。全細胞DNAを単離し、NcoIで消化した。10μgのDNAを電気泳動し、ミトコンドリアDNAのプローブとしてCOX−II cDNAを用いてサザンブロットをハイブリダイズした。 ミトコンドリアゲノムDNAのサザンブロット分析により、PGC−1を発現する細胞がコントロール細胞に比較して2倍のミトコンドリアDNA含有量があることが示された。また、同じブロットを核においてコードされるリボソームタンパク質の36B4のcDNAでも調べた。次に、ブロットをはがし、核遺伝子3664でハイブリダイズした。これらの結果は異所PGC−1発現がミトコンドリアDNAの増加を刺激できることを示し、ミトコンドリアの増加した生合成を示す。
実施例IX: PGC−1感染細胞の長期間処置は酸素消費を増加する
熱発生をもたらすPGC−1の生理的役割を決定するために、上記のようなPGC−1を発現するレトロウイルスベクターに感染した3T3−F442A前脂肪細胞を用いて酸素消費アッセイを実施した。感染の効率を細胞の25%−30%であると概算する。Ludwik、J.等(1981)J.Biochemistry 256(24):12840−12848及びHermesh、O.(1998)J.Biochemistry 273(7):3937−3942中に記述されたように酸素消費アッセイを実施した。1μM
8−ブロモ−cAMP及び1mM 9−シス−レチノイン酸でのこれらの細胞の6時間の処置は、これらの細胞による酸素消費の100%の増加をもたらした(図6)。これらの細胞において検出された酸素消費の増加は、ミトコンドリアの脱共役タンパク質(UCP)またはプロトン輸送を促進することができる類似したタンパク質の活性及び/または発現の増加により引き起こされると思われる。
これらの実験はPGC−1がインビボで熱発生応答をもたらすことができることを示し、従って、ミトコンドリアDNA及び遺伝子発現の誘導を生理的応答に直接連結する。PGC−1の生理的機能を筋肉のような高レベルのこの分子を発現することが知られている組織においてさらに特性化することができる。例えば、C2−C12細胞のような筋管に分化するように誘導できるマウス筋芽細胞にPGC−1を発現するレトロウイルスを感染させ、上記の条件下で試験することができる。
実施例X: PGC−1は独特な核受容体コアクチベーターである。
本明細書に示される結果は、PGC−1の発現が組織選択性及び動物の生理的状態の両方に関して劇的に調節される点で既知の核受容体コアクチベーターの中で独特である。WATではなくBATにおけるPGC−1の発現によりそれはこれらの組織における大部分の既知の転写成分から区別され、そして低温によるその誘導はUCP−1で見られるものよりさらにより劇的である。また、PGC−1はそれが受容体−コアクチベーター対の両側でタンパク質−タンパク質連結のために異なる配列モチーフを用いるようである点でも既知のコアクチベーターと異なる。既知のコアクチベーター及びコリプレッサーのほとんど全てはカルボキシ末端AF−2ドメイン中のリガンドにより調節されるヘリックス12で結合するためにLXXLL配列を利用する(Heery等(1997)Nature 387:733−736;Torchia等(1997)Nature 387:677−684)。それに反して、PGC−1はPPARγのDNA結合及びヒンジ領域と重なる領域に結合するためにプロリン残基に富んだドメインを利用する。PPARγでは、これはPGC−1が1つまたはそれ以上のリガンドにより制御されるコアクチベーターの代わりのコアクチベーターではなく、むしろこれらのタンパク質と同時に結合してより大きい巨大分子複合体を与えることができる可能性を開く。一方、リガンド依存的連結はレチノイン酸受容体、エストロゲン受容体及びある程度で甲状腺受容体のようないくつかの他の受容体で見られる。リガンド依存的受容体連結のために必要且つ十分であることがいくつかの状況において示されたモチーフのLXXLL(配列番号:3)配列がPGC−1には1つあるので、それらの受容体へのPGC−1の結合がこの配列及び受容体AF−2ドメインに依ることは全く可能である。
AF−2ドメインで受容体に結合するコアクチベーターまたはコリプレッサーの大部分はヒストンアセチルトランスフェラーゼまたはヒスチンデアセチラーゼ活性のいずれかを保有することが現在分かっている(Pazin及びKadonaga(1997)Cell 89:325−328)。これらの活性はCBP及びSRC−1のようなある種のコアクチベーターに内在してもよく(Bannister及びKouzarides、(1996)Nature 384:641−643;Spencer等(1997)Nature 389:194−198)、またはSMRTと哺乳類ヒストンデアセチラーゼ間の複合体により示されるように、コリプレッサーと複合体を形成するタンパク質中に存在してもよい(Nagy等(1997)Cell 89:373−380;Torchia等(1997)Nature 387:677−684)。一次配列データに基づくと、PGC−1はヒストンアセチラーゼまたはデアセチラーゼ活性を示唆するいかなるモチーフも含有しない。また、それは既知の核受容体コアクチベーターまたはコリプレッサーのいずれとも著しい配列相同性がない。PGC−1が、RNAポリメラーゼの調節カルボキシ末端ドメイン(CTD)に結合する数個を初めとする多数のタンパク質において同定されている対になったSR及びRNA結合ドメインを有することは注目に値する可能性がある(Yuryev等(1996)Proc.Natl.Acad.Sci.USA 93:6975−6980)。また、本明細書に示される結果を遺伝子抑制機構を取り除くPGC−1により説明することもできる可能性がある。少なくとも1つの核受容体(TR)のヒンジ領域はコリプレッサーの結合に関与することが示されている(N−CoR;Horlein等(1995)Nature 377:394−404)。従って、PGC−1の作用はコリプレッサー結合を妨げることにより転写を活性化することである可能性がある。
実施例XI: 適応熱発生におけるPGC−1の役割
適応熱発生はエネルギー消費の成分をさし、それは身体的活動から分離し、そして環境条件を変えること、最も顕著には低温露出及び過食に応答してそれを高めることができる(Himms−Hagen(1989)Proc.Soc.Exp.Biol.Med.208:159−169)。ヒト肥満症の病因及び治療の両方における潜在的役割のためにこの主題にかなりの関心がある。
適応熱発生におけるPGC−1の役割は、まず、このプロセスに関係する主要な組織及びホルモンにそれが関連することにより示される。本明細書に示される結果は、骨格筋及び褐色脂肪に対する特に重要な役割を示唆する。PGC−1は筋肉及び褐色脂肪の両方において低温露出により誘導されるが、他の組織ではそうではない。褐色脂肪の熱発生及び抗肥満特性は齧歯類において決定的に立証されているが(Himms−Hagen(1995)Proc.Soc.exp.Biol.Med.208:159−169)、成人ヒト及び他の大きい哺乳類には明確に特定された褐色脂肪貯蔵物がないことによりBATの役割はヒトにおいてあまり明らかではない。成人の白色脂肪貯蔵物におけるUCP−1の発現は、褐色脂肪細胞が白色に見える貯蔵物中に含まれている可能性があり、そしてアドレナリン刺激時にそれを召集できることを示唆する(Garruti及びRicquier(1992)Int.J.Obes.Relat.Metab.Disord.16:383−390)。
ホルモンに関しては、甲状腺ホルモン及びβ−アドレナニンアゴニストが筋肉及び褐色脂肪における低温及び食事により誘導される熱発生の両方において最も重要な役割を果たすと思われる(Himms−Hagen(1989)Proc.Soc.Exp.Biol.Med.208:259−269;Cannon及びNedergaad(1996)Biochem.Soc.Trans.24:407−412)。β−アドレナリンアゴニストは少なくとも2つの異なる方法でPGC−1機能に影響を与えると思われる。第一に、それらはPGC−1発現を誘導することができる。第二に、図3Bに示されるように、サイクリックAMP(β−アドレナリン受容体活性の細胞内メディエーター)は発現が異所的に導かれる場合にPGC−1によりもたらされる転写活性を上げる。この分子的根拠は分からないが、プロテインキナーゼAの3つの共通リン酸化部位の存在は、そのタンパク質がこの経路により翻訳後に活性化される可能性があることを示唆する。甲状腺ホルモン及びその受容体の熱発生作用はよく知られている。甲状腺ホルモンレベルを上げることの最も明らかな作用の一つは骨格筋、褐色脂肪、心臓及び腎臓におけるミトコンドリア呼吸速度の刺激である。甲状腺ホルモンレベルを上げることにより甲状腺機能低下状態の特徴である異常に低い呼吸速度を上げることができる(Pillar及びSeitz(1997)Eur.J.Endocrinol.135:231−239)。PGC−1が発現される組織及びTRを共活性化するその能力に基づき、PGC−1はこれらの作用のいくつかをもたらす非常に妥当な候補であると思われる。
また、最近の証拠は熱発生におけるTZDの興味深い作用も示唆している。これらのPPARγリガンドは、おそらく褐色脂肪の増加した形成及びUcp−1遺伝子発現の増加のために、齧歯類に体系的に与えるとエネルギー消費を上げることができる。また、これらの作用は培養した細胞においても見られている(Foellmi−Adams等(1996)Biochem.Pharmacol.52:693−701;Tai等、J.Biol.Chem.271:29909−29914(1996))。UCP−1プロモーター及びおそらく熱発生経路の他のプロモーターに対するPPARγの機能を共活性化するPGC−1の能力はこれらの作用にいくつかの説明を与えることができる。
上記のこれらの関連に加えて、本明細書に示される異所発現実験はPGC−1が熱発生の成分を調節できることをより直接的に示す。細胞及び分子レベルで、適応熱発生は少なくとも3つの区別できる工程:ミトコンドリアの生合成、呼吸鎖のミトコンドリア酵素の発現及び特定の脱共役タンパク質の発現からなる。現在、UCP遺伝子ファミリーの3つの既知のメンバー:褐色脂肪においてのみ発現されるUCP−1;広く発現されるUcp−2並びに主に骨格筋及び褐色脂肪において発現されるUcp−3がある。与えられる生理的攻撃の時間の長さ及び激しさにより、筋肉、BATまたは他の組織において熱発生のこれらの特徴の1つまたはそれ以上に影響を与えることができる。
本明細書に記述されるPGC−1のレトロウイルス発現は白色脂肪細胞を用いている。この細胞型は内在性PGC−1発現がほとんどなく、そして比較的少数のミトコンドリア及びUCP−1またはUCP−3のわずかな発現を有することが知られているのでそれを選択した。比較的低いレベルのPGC−1
mRNA発現(低温で誘導したBATにおいて見られるものの6%)しか得ることができなかったが、適応熱発生系のいくつかの分子成分が改変されることは明らかである。第一に、これらの白色細胞に特徴的なほとんど検出できないレベルからUcp−1遺伝子の発現を導く。第二に、ATPシンテターゼ、Cox−II及びCox−IVのような、これらの細胞において通常発現される呼吸鎖のいくつかのミトコンドリア遺伝子を著しく増加する。最後に、全細胞DNAの単位当たりのミトコンドリアDNAの増加により明白に示されるように、ミトコンドリア含有量を倍にする。
PGC−1が適応熱発生に連結するミトコンドリアの工程を調節できる機構は以下のとおりである可能性がある。核においてコードされ、PPAR、TRまたは他の核受容体に応答するUCP−1のような遺伝子では、PGC−1は転写速度を上げるコアクチベーターとして直接働くことができる可能性がある。(Cox−IIのような)ミトコンドリアゲノムにおいてコードされる遺伝子では、PGC−1は直接的または間接的に働いている可能性がある。ミトコンドリア内のある種の遺伝子は機能的甲状腺応答配列を有することが示されている(TREs;Pillar及びSeitz(1997)Eur.J.Endocrinol.135:231−239)。PGC−1は主に核において見られるが、TR及びPGC−1のわずかな割合はミトコンドリア中に輸送され、これらの部位で直接機能する。同様に、ミトコンドリアDNA複製に関して、ミトコンドリアゲノムのDループは激しい鎖複製の部位であり、TRE−DR2配列を含み(Wrutniak等(1995)J.Biol.Chem.270:16347−16354)、TR及びPGC−1がここで直接作用できる可能性があることを示唆する。一方、PGC−1及び核受容体は、遺伝子転写及び/またはDNA複製を刺激するようにミトコンドリアにおいて機能することが示されている(Pillar及びSeitz、(1997)Eur.J.Endocrinol.135:231−239)NRFまたはミトコンドリア因子Aのような他の核因子の発現を調節できる可能性がある。
(背景のセクションを初めとする)本願の全体にわたって引用される(文献参考文献、発行された特許、公開された特許出願及び同時係属中の特許出願を初めとする)全ての引用された参考文献の内容は引用することにより明白に本明細書に組み込まれる。「適応熱発生に関連する核受容体の低温誘導性コアクチベーター」という表題をつけた(その中に示される図面を含む)付録Aの全内容も引用することにより組み込まれる。
同等物
当業者は本明細書に記述される本発明の特定の態様に対する多数の同等物を日常的実験のみを用いて認識するかまたは確認することができる。そのような同等物は本願の請求の範囲により含まれると考えられる。
配列表
(1)一般情報:
(i)出願人:Bruce M.Spiegelman、Pere
Puigserver及びZhidan Wu
(ii)発明の名称:PGC−1、新規な褐色脂肪PPARγコアクチベーター
(iii)配列の数:3
(iv)通信住所:
(A)受信人:LAHIVE
& COCKFIELD、LLP
(B)通り:28ステート通り
(C)市:ボストン
(D)州:マサチューセッツ
(E)国:米国
(F)郵便番号:02109
(v)コンピューター可読形態:
(A)媒質型:プロッピーディスク
(B)コンピューター:IBM PC互換性
(C)オペレーティングシステム:PC−DOS/MO−DOS
(D)ソフトウェア:パテントインリリース#1.0、バージョン#1.25
(vi)現在の出願データ:
(A)出願番号:US
00/000,000
(B)出願日:
(vii)先行する出願データ:
(A)出願番号:60/048,107
(B)出願日:1997年5月30日
(viii)弁護士/代理人情報:
(A)氏名:Mandragouras、Amy E.
(B)登録番号:36,207
(C)参照/整理番号:DFN−023
(ix)遠距離通信情報:
(A)電話:(617)227−7400
(B)テレファックス:(617)742−4214
(2)配列番号:1の情報
(i)配列の特徴:
(A)配列の長さ:3066塩基対
(B)配列の型:核酸
(C)鎖の数:一本鎖
(D)トポロジー:直鎖状
(ii)配列の種類:cDNA
(ix)配列の特徴:
(A)特徴を表す記号:CDS
(B)存在位置:92..2482
(xi)配列:配列番号:1
AATTCGGCAC GAGGTTGCCT
GCATGAGTGT GTGCTGTGTG TCAGAGTGGA TTGGAGTTGA 60
AAAAGCTTGA CTGGCGTCAT
TCGGGAGCTG G ATG GCT TGG GAC ATG TGC AGC 112

Met Ala
Trp Asp Met Cys Ser

1
5
CAA GAC TCT GTA TGG
AGT GAC ATA GAG TGT GCT GCT CTG GTT GGT GAG 160
Gln Asp Ser Val Trp
Ser Asp Ile Glu Cys Ala Ala Leu Val Gly Glu

10
15
20
GAC CAG CCT CTT TGC
CCA GAT CTT CCT GAA CTT GAC CTT TCT GAA CTT 208
Asp Gln Pro Leu Cys
Pro Asp Leu Pro Glu Leu Asp Leu Ser Glu Leu
25
30
35
GAT GTG AAT GAC TTG
GAT ACA GAC AGC TTT CTG GGT GGA TTG AAG TGG 256
Asp Val Asn Asp Leu
Asp Thr Asp Ser Phe Leu Gly Gly Leu Lys Trp
40
45
50
55
TGT AGC GAC CAA TCG
GAA ATC ATA TCC AAC CAG TAC AAC AAT GAG CCT 304
Cys Ser Asp Gln Ser
Glu Ile Ile Ser Asn Gln Tyr Asn Asn Glu Pro

60
65
70
GCG AAC ATA TTT GAG
AAG ATA GAT GAA GAG AAT GAG GCA AAC TTG CTA 352
Ala Asn Ile Phe Glu Lys Ile Asp Glu Glu Asn Glu Ala Asn Leu Leu

75
80
85
GCG GTC CTC ACA GAG
ACA CTG GAC AGT CTC CCC GTG GAT GAA GAC GGA 400
Ala Val Leu Thr Glu Thr Leu Asp
Ser Leu Pro Val Asp Glu Asp Gly

90
95
100
TTG CCC TCA TTT GAT
GCA CTG ACA GAT GGA GCC GTG ACC ACT GAC AAC 448
Leu Pro Ser Phe Asp Ala Leu Thr Asp Gly Ala
Val Thr Thr Asp Asn
105
110
115
GAG GCC AGT CCT TCC
TCC ATG CCT GAC GGC ACC CCT CCC CCT CAG GAG 496
Glu Ala Ser Pro Ser Ser Met
Pro Asp Gly Thr Pro Pro Pro Gln Glu
120
125
130
135
GCA GAA GAG CCG TCT
CTA CTT AAG AAG CTC TTA CTG GCA CCA GCC AAC 544
Ala Glu Glu Pro Ser Leu Leu Lys Lys Leu Leu Leu Ala Pro Ala
Asn

140
145
150
ACT CAG CTC AGC TAC AAT
GAA TGC AGC GGT CTT AGC ACT CAG AAC CAT 592
Thr Gln Leu Ser Tyr
Asn Glu Cys Ser Gly Leu Ser Thr Gln Asn His

155
160
165
GCA GCA AAC CAC ACC
CAC AGG ATC AGA ACA AAC CCT GCC ATT GTT AAG 640
Ala Ala Asn His Thr His Arg Ile Arg Thr Asn
Pro Ala Ile Val Lys

170
175
180
ACC GAG AAT TCA TGG
AGC AAT AAA GCG AAG AGC ATT TGT CAA CAG CAA 688
Thr Glu Asn Ser Trp
Ser Asn Lys Ala
Lys Ser Ile Cys Gln Gln Gln
185
190
195
AAG CCA CAA AGA CGT
CCC TGC TCA GAG CTT CTC AAG TAT CTG ACC ACA 736
Lys Pro Gln Arg Arg
Pro Cys Ser Glu Leu Leu Lys Tyr Leu Thr Thr
200
205
210
215
AAC GAT GAC CCT CCT
CAC ACC AAA CCC ACA GAA AAC AGG AAC AGC AGC 784
Asn Asp Asp Pro Pro
His Thr Lys Pro Thr Glu Asn Arg Asn Ser Ser

220
225
230
AGA GAC AAA TGT GCT
TCC AAA AAG AAG TCC CAT ACA CAA CCG CAG TCG 832
Arg Asp Lys Cys Ala Ser Lys Lys Lys Ser His Thr Gln Pro Gln Ser

235
240
245
CAA CAT GCT CAA GCC
AAA CCA ACA ACT TTA TCT CTT CCT CTG ACC CCA 880
Gln His Ala Gln Ala
Lys Pro Thr Thr Leu Ser Leu Pro Leu Thr Pro
250 255
260
GAG TCA CCA AAT GAC
CCC AAG GGT TCC CCA TTT GAG AAC AAG ACT ATT 928
Glu Ser Pro Asn Asp
Pro Lys Gly Ser Pro Phe Glu Asn Lys Thr Ile
265
270
275
GAG CGA ACC TTA AGT GTG
GAA CTC TCT GGA ACT GCA GGC CTA ACT CCT 976
Glu Arg Thr Leu Ser
Val Glu Leu Ser Gly Thr Ala Gly Leu Thr Pro
280
285
290
295
CCC ACA ACT CCT CCT
CAT AAA GCC AAC CAA GAT AAC CCT TTC AAG GCT 1024
Pro Thr Thr Pro Pro
His Lys Ala Asn Gln Asp Asn Pro Phe Lys Ala

300
305
310
TCG CCA AAG CTG AAG
CCC TCT TGC AAG ACC GTG GTG CCA CCG CCA ACC 1072
Ser Pro Lys Leu Lys Pro Ser Cys Lys Thr Val Val Pro Pro Pro Thr

315
320
325
AAG AGG GCC CGG TAC
AGT GAG TGT TCT GGT ACC CAA GGC AGC CAC TCC 1120
Lys Arg Ala Arg
Tyr Ser Glu Cys Ser Gly Thr Gln Gly Ser His Ser

330
335
340
ACC AAG AAA GGG CCC
GAG CAA TCT GAG TTG TAC GCA CAA CTC AGC AAG 1168
Thr Lys Lys Gly Pro
Glu Gln Ser Glu Leu Tyr Ala Gln Leu Ser Lys
345
350
355
TCC TCA GGG CTC AGC
CGA GGA CAC GAG GAA AGG AAG ACT AAA CGG CCC 1216
Ser Ser Gly Leu Ser
Arg Gly His Glu Glu Arg Lys Thr Lys Arg Pro
360
365
370
375
AGT CTC CGG CTG TTT
GGT GAC CAT GAC TAC TGT CAG TCA CTC AAT TCC 1264
Ser Leu Arg Leu Phe
Gly Asp His Asp Tyr Cys Gln Ser Leu Asn Ser
380
385
390
AAA ACG GAT ATA CTC
ATT AAC ATA TCA CAG GAG CTC CAA GAC TCT AGA 1312
Lys Thr Asp Ile Leu Ile Asn Ile Ser Gln Glu Leu Gln Asp Ser
Arg

395
400
405
CAA CTA GAC TTC AAA
GAT GCC TCC TGT GAC TGG CAG GGG CAC ATC TGT 1360
Gln Leu Asp Phe Lys Asp Ala
Ser Cys Asp Trp Gln Gly His Ile Cys

410
415
420
TCT TCC ACA GAT TCA
GGC CAG TGC TAC CTG AGA GAG ACT TTG GAG GCC 1408
Ser Ser Thr Asp Ser
Gly Gln Cys Tyr Leu Arg Glu Thr Leu Glu
Ala
425
430
435
AGC AAG CAG GTC TCT
CCT TGC AGC ACC AGA AAA CAG CTC CAA GAC CAG 1456
Ser Lys Gln Val Ser
Pro Cys Ser Thr Arg Lys Gln Leu Gln Asp Gln
440
445
450
455
GAA ATC CGA GCG GAG
CTG AAC AAG CAC TTC GGT CAT CCC TGT CAA GCT 1504
Glu Ile Arg Ala Glu Leu Asn Lys His Phe Gly His Pro Cys Gln Ala

460
465
470
GTG TTT GAC GAC AAA
TCA GAC AAG ACC AGT GAA CTA AGG GAT GGC GAC 1552
Val Phe Asp Asp Lys
Ser Asp Lys Thr Ser Glu Leu Arg Asp Gly Asp

475
480
485
TTC AGT AAT GAA CAA
TTC TCC AAA CTA CCT GTG TTT ATA AAT TCA GGA 1600
Phe Ser Asn Glu Gln
Phe Ser Lys Leu Pro Val Phe Ile Asn Ser Gly

490
495
500
CTA GCC ATG GAT GGC
CTA TTT GAT GAC AGT GAA GAT GAA AGT GAT AAA 1648
Leu Ala Met Asp Gly Leu Phe Asp Asp Ser Glu
Asp Glu Ser Asp Lys
505
510
515
CTG AGC TAC CCT TGG
GAT GGC ACG CAG CCC TAT TCA TTG TTC GAT GTG 1696
Leu Ser Tyr Pro Trp
Asp Gly Thr Gln Pro Tyr Ser Leu Phe Asp Val
520
525
530
535
TCG CCT TCT TGC TCT
TCC TTT AAC TCT CCG TGT CGA GAC TCA GTG TCA 1744
Ser Pro Ser Cys Ser
Ser Phe Asn Ser Pro Cys Arg Asp Ser Val Ser

540
545
550
CCA CCG AAA TCC TTA
TTT TCT CAA AGA CCC CAA AGG ATG CGC TCT CGT 1792
Pro Pro Lys Ser Leu Phe Ser Gln Arg Pro Gln Arg Met Arg Ser Arg

555
560
565
TCA AGA TCC TTT TCT
CGA CAC AGG TCG TGT TCC CGA TCA CCA TAT TCC 1840
Ser Arg Ser Phe Ser
Arg His Arg Ser Cys Ser Arg Ser Pro Tyr Ser

570
575
580
AGG TCA AGA TCA AGG
TCC CCA GGC AGT AGA TCC TCT TCA AGA TCC TGT 1888
Arg Ser Arg Ser Arg
Ser Pro Gly Ser Arg Ser Ser Ser Arg Ser Cys
585
590
595
TAC TAC TAT GAA TCA AGC
CAC TAC AGA CAC CGC ACA CAC CGC AAT TCT 1936
Tyr Tyr Tyr Glu Ser
Ser His Tyr Arg His Arg Thr His Arg Asn Ser
600
605
610
615
CCC TTG TAT GTG AGA
TCA CGT TCA AGG TCA CCC TAC AGC CGT AGG CCC 1984
Pro Leu Tyr Val Arg
Ser Arg Ser Arg Ser Pro Tyr Ser Arg Arg Pro

620
625
630
AGG TAC GAC AGC TAT
GAA GCC TAT GAG CAC GAA AGG CTC AAG AGG GAT 2032
Arg Tyr Asp Ser Tyr
Glu Ala Tyr Glu His Glu Arg Leu Lys Arg Asp

635
640
645
GAA TAC CGC AAA GAG
CAC GAG AAG CGG GAG TCT GAA AGG GCC AAA CAG 2080
Glu Tyr Arg Lys Glu
His Glu Lys Arg Glu Ser Glu Arg Ala Lys Gln

650
655
660
AGA GAG AGG CAG AAG
CAG AAA GCA ATT GAA GAG CGC CGT GTG ATT TAC 2128
Arg Glu Arg Gln Lys
Gln Lys Ala
Ile Glu Glu Arg Arg Val Ile Tyr
665
670
675
GTT GGT AAA ATC AGA
CCT GAC ACA ACG CGG ACA GAA TTG AGA GAC CGC 2176
Val Gly Lys Ile Arg
Pro Asp Thr Thr Arg Thr Glu Leu Arg Asp Arg
680
685
690
695
TTT GAA GTT TTT GGT
GAA ATT GAG GAA TGC ACC GTA AAT CTG CGG GAT 2224
Phe Glu Val Phe Gly
Glu Ile Glu Glu Cys Thr Val Asn Leu Arg Asp

700
705
710
GAT GGA GAC AGC TAT
GGT TTC ATC ACC TAC CGT TAC ACC TGT GAC GCT 2272
Asp Gly Asp Ser Tyr
Gly Phe Ile Thr Tyr Arg Tyr Thr Cys Asp
Ala

715
720
725
TTC GCT GCT CTT GAG
AAT GGA TAT ACT TTA CGC AGG TCG AAC GAA ACT 2320
Phe Ala Ala Leu Glu Asn Gly Tyr Thr Leu Arg Arg Ser
Asn Glu Thr

730
735
740
GAC TTC GAG CTG TAC
TTT TGT GGA CGG AAG CAA TTT TTC AAG TCT AAC 2368
Asp Phe Glu Leu Tyr
Phe Cys Gly Arg Lys Gln Phe Phe Lys Ser Asn
745
750
755
TAT GCA GAC CTA GAT
ACC AAC TCA GAC GAT TTT GAC CCT GCT TCC ACC 2416
Tyr Ala Asp Leu Asp Thr Asn Ser Asp Asp Phe
Asp Pro Ala
Ser Thr
760 765
770
775
AAG AGC AAG TAT GAC
TCT CTG GAT TTT GAT AGT TTA CTG AAG GAA GCT 2464
Lys Ser Lys Tyr Asp
Ser Leu Asp Phe Asp Ser Leu Leu Lys Glu
Ala

780
785
790
CAG AGA AGC TTG CGC
AGG TAACGTGTTC CCAGGCTGAG GAATGACAGA
2512
Gln Arg Ser Leu Arg
Arg

795
GAGATGGTCA ATACCTCATG
GGACAGCGTG TCCTTTCCCA AGACTCTTGC AAGTCATACT 2572
TAGGAATTTC TCCTACTTTA
CACTCTCTGT ACAAAAATAA AACAAAACAA AACAACAATA 2632
ACAACAACAA CAACAACAAT
AACAACAACA ACCATACCAG AACAAGAACA ACGGTTTACA 2692
TGAACACAGC TGCTGAAGAG
GCAAGAGACA GAATGATAAT CCAGTAAGCA CACGTTTATT 2752
CACGGGTGTC AGCTTTGCTT
TCCCTGGAGG CTCTTGGTGA CAGTGTGTGT GCGTGTGTGT 2812
GTGTGGGTGT GCGTGTGTGT
ATGTGTGTGT GTGTACTTGT TTGGAAAGTA CATATGTACA 2872
CATGTGAGGA CTTGGGGGCA
CCTGAACAGA ACGAACAAGG GCGACCCCTT CAAATGGCAG 2932
CATTTCCATG AAGACACACT
TAAAACCTAC AACTTCAAAA TGTTCGTATT CTATACAAAA 2992
GGAAAATAAA TAAATATAAA
AAAAAAAAAA AAAAAACTCG AGAGATCTAT GAATCGTAGA 3052
TACTGAAAAA CCCC
3066
(2)配列番号:2の情報
(i)配列の特徴:
(A)配列の長さ:797アミノ酸
(B)配列の型:アミノ酸
(D)トポロジー:直鎖状
(ii)配列の種類:タンパク質
(iii)配列:配列番号:2
Met Ala Trp Asp Met Cys Ser Gln Asp Ser Val Trp
Ser Asp Ile Glu
1 5
10
15
Cys Ala Ala Leu Val Gly Glu Asp Gln Pro Leu Cys Pro
Asp Leu Pro

20
25
30
Glu Leu Asp Leu Ser
Glu Leu Asp Val Asn Asp Leu Asp Thr Asp Ser

35
40
45
Phe Leu Gly Gly Leu Lys Trp Cys Ser Asp Gln Ser Glu Ile Ile Ser
50
55
60
Asn Gln Tyr Asn Asn
Glu Pro Ala Asn Ile Phe Glu Lys
Ile Asp Glu
65
70
75 80
Glu Asn Glu Ala Asn Leu Leu
Ala Val Leu Thr Glu Thr Leu Asp
Ser

85
90
95
Leu Pro Val Asp Glu
Asp Gly Leu Pro Ser Phe Asp
Ala Leu Thr Asp

100
105
110
Gly Ala Val Thr Thr Asp Asn Glu Ala
Ser Pro Ser Ser Met Pro Asp

115
120
125
Gly Thr Pro Pro Pro
Gln Glu Ala Glu
Glu Pro Ser Leu Leu Lys Lys
130
135
140
Leu Leu Leu Ala Pro Ala Asn Thr Gln Leu Ser
Tyr Asn Glu Cys Ser
145
150
155
160
Gly Leu Ser Thr Gln
Asn His Ala Ala Asn His Thr His Arg Ile Arg

165
170
175
Thr Asn Pro Ala Ile Val Lys Thr Glu Asn Ser Trp Ser Asn Lys Ala

180
185
190
Lys Ser Ile Cys Gln Gln Gln Lys Pro Gln Arg Arg Pro Cys Ser
Glu

195
200
205
Leu Leu Lys Tyr Leu Thr Thr Asn Asp Asp Pro Pro His Thr Lys Pro
210
215
220
Thr Glu Asn Arg Asn
Ser Ser Arg Asp Lys Cys Ala
Ser Lys Lys Lys
225
230
235
240
Ser His Thr Gln Pro
Gln Ser Gln His Ala Gln
Ala Lys Pro
Thr Thr
245
250
255
Leu Ser Leu Pro Leu
Thr Pro Glu Ser Pro Asn Asp Pro Lys Gly Ser

260
265
270
Pro Phe Glu Asn Lys Thr Ile Glu Arg Thr Leu Ser Val Glu Leu Ser

275 280
285
Gly Thr
Ala Gly Leu Thr Pro Pro Thr Thr Pro Pro His
Lys Ala Asn
290
295
300
Gln Asp Asn Pro Phe
Lys Ala Ser Pro Lys Leu Lys Pro Ser Cys Lys
305
310
315
320
Thr Val Val Pro Pro
Pro Thr Lys Arg Ala Arg Tyr Ser Glu Cys Ser

325
330
335
Gly Thr Gln Gly Ser
His Ser Thr Lys Lys Gly Pro Glu Gln Ser Glu

340
345
350
Leu Tyr Ala Gln
Leu Ser Lys Ser Ser Gly Leu Ser Arg Gly His Glu

355
360
365
Glu Arg Lys Thr Lys Arg Pro Ser Leu Arg Leu Phe Gly Asp His Asp
370
375
380
Tyr Cys Gln Ser Leu
Asn Ser Lys Thr Asp Ile Leu Ile Asn Ile Ser
385
390
395
400
Gln Glu Leu Gln Asp
Ser Arg Gln Leu Asp Phe Lys Asp Ala Ser Cys

405
410
415
Asp Trp Gln Gly His
Ile Cys Ser Ser Thr Asp Ser Gly Gln Cys Tyr

420
425
430
Leu Arg Glu Thr Leu Glu Ala
Ser Lys Gln Val Ser Pro Cys Ser Thr

435
440
445
Arg Lys Gln Leu Gln
Asp Gln Glu Ile Arg Ala
Glu Leu Asn Lys His
450
455
460
Phe Gly His Pro Cys Gln Ala Val Phe Asp Asp
Lys Ser Asp Lys Thr
465
470
475
480
Ser Glu Leu Arg Asp
Gly Asp Phe Ser Asn Glu Gln Phe Ser Lys Leu

485
490
495
Pro Val Phe Ile Asn
Ser Gly Leu Ala
Met Asp Gly Leu Phe Asp Asp

500
505
510
Ser Glu Asp Glu Ser
Asp Lys Leu Ser Tyr Pro Trp Asp Gly Thr Gln
515
520
525
Pro Tyr Ser Leu Phe
Asp Val Ser Pro Ser Cys Ser Ser Phe Asn Ser
530
535
540
Pro Cys Arg Asp Ser
Val Ser Pro Pro Lys Ser Leu Phe Ser Gln Arg
545
550
555
560
Pro Gln Arg Met Arg
Ser Arg Ser Arg Ser Phe Ser Arg His Arg Ser

565
570
575
Cys Ser Arg Ser Pro
Tyr Ser Arg Ser Arg Ser Arg Ser Pro Gly Ser

580
585 590
Arg Ser Ser Ser Arg
Ser Cys Tyr Tyr Tyr Glu Ser Ser His Tyr Arg

595
600
605
His Arg Thr His Arg
Asn Ser Pro Leu Tyr Val Arg Ser Arg Ser Arg
610
615
620
Ser Pro Tyr Ser Arg
Arg Pro Arg Tyr Asp Ser Tyr Glu Ala
Tyr Glu
625
630
635
640
His Glu Arg Leu Lys
Arg Asp Glu Tyr Arg Lys Glu His Glu Lys Arg

645
650
655
Glu Ser Glu Arg Ala Lys Gln Arg Glu Arg Gln Lys Gln Lys Ala Ile

660
665
670
Glu Glu Arg Arg Val
Ile Tyr Val Gly Lys Ile Arg Pro Asp Thr Thr

675
680
685
Arg Thr Glu Leu Arg
Asp Arg Phe Glu Val Phe Gly Glu Ile Glu Glu
690
695
700
Cys Thr Val Asn Leu
Arg Asp Asp Gly Asp Ser Tyr Gly Phe Ile Thr
705
710
715
720
Tyr Arg Tyr Thr Cys Asp Ala Phe
Ala Ala
Leu Glu Asn Gly Tyr Thr

725
730
735
Leu Arg Arg Ser Asn
Glu Thr Asp Phe Glu Leu Tyr Phe Cys Gly Arg

740
745
750
Lys Gln Phe Phe Lys
Ser Asn Tyr Ala
Asp Leu Asp Thr Asn Ser Asp

755
760
765
Asp Phe Asp Pro Ala Ser Thr Lys Ser Lys
Tyr Asp Ser Leu Asp Phe
770
775
780
Asp Ser Leu Leu Lys Glu Ala
Gln Arg Ser Leu Arg Arg
785
790
795

(2)配列番号:3の情報
(i)配列の特徴:
(A)配列の長さ:5アミノ酸
(B)配列の型:アミノ酸
(D)トポロジー:直鎖状
(ii)配列の種類:ペプチド
(v)フラグメント型:中間部
(ix)配列の特徴:
(A)特徴を表す記号:Modified−site
(B)存在位置:2..3
(C)他の情報:/ラベル=modified−site
/備考=「x=あらゆるアミノ酸」
(xi)配列:配列番号:3
Leu Xaa Xaa Leu Leu
1
5
マウスPGC−1ヌクレオチド(配列番号:1)及びアミノ酸(配列番号:2)配列を示す。 マウスPGC−1ヌクレオチド(配列番号:1)及びアミノ酸(配列番号:2)配列を示す。 マウスPGC−1ヌクレオチド(配列番号:1)及びアミノ酸(配列番号:2)配列を示す。 マウスPGC−1配列の分析を示す。また、図2Aにおいて以下のドメイン:SRドメイン(アミノ酸565−598及び617−631)、RNA結合ドメイン(アミノ酸677−709)、プロテインキナーゼAリン酸化の3つの共通部位(アミノ酸238−241、373−376及び655−668)並びにLXXLL(配列番号:3)モチーフ(アミノ酸142−146)に下線をひく。 マウスPGC−1配列の分析を示す。また、図2BはマウスPGC−1の構造の概念図である。矢印は共通配列(R、K)2x(ST)を有する推定上のプロテインキナーゼAリン酸化部位を示す。灰色の箱はSRに富んだ領域ドメインを示し、そして黒色の箱はRNA結合ドメインを示す。 PPARγ及び甲状腺ホルモン受容体(TR)によるUCP−1プロモーターのトランス活性化を刺激することにおけるマウスPGC−1の影響を示す棒グラフである。また、図3AはRAT1IR細胞において示されるリガンド/ホルモンに関してUCP−1プロモーターの制御下のCATレポーター遺伝子の増加した転写活性化を示す。 PPARγ及び甲状腺ホルモン受容体(TR)によるUCP−1プロモーターのトランス活性化を刺激することにおけるマウスPGC−1の影響を示す棒グラフである。また、図3BはGAL4DBDに連結したマウスPGC−1を用いるUAS配列(5コピー)の制御下のレポーターCAT遺伝子の増加した転写活性化を示すグラフである。 PPARγと相互作用するPGC−1のドメインを同定するための異なるマウスPGC−1欠失の図である。図に示されるものはPPARγに結合した投入物質の対応するパーセンテージを有するPGC−1欠失の概念図である。LXXLL(配列番号:3)モチーフはアミノ酸残基142−146に位置する。黒色の箱はPGC−1のPPARγ結合ドメインに対応する(アミノ酸292−338)。 PGC−1と相互作用するPPARγのドメインを同定するための異なるマウスPPARγ欠失の図である。図に示されるものはPGC−1に結合する投入量の対応するパーセンテージを有するPPARγ欠失の概念図である。 cAMP及びレチノイン酸(RA)でのPGC−1感染及びコントロール細胞の長期間処置の酸素消費における影響を示す棒グラフである。

Claims (16)

  1. 配列番号:2に示されているタンパク質または配列番号:1に示されている核酸分子の相補体を検出することができる薬剤と生物学的サンプルを接触させることを含んでなる生物学的サンプル中の前記タンパク質または核酸分子の相補体の存在の検出方法であって、
    該薬剤が、下記A−1,A−2,A−3,A−4,A−5,A−6,A−7,A−8およびC−1からなる群から選ばれる核酸分子又は抗体である、検出方法。

    (A−1)タンパク質またはその一部をコードするヌクレオチドを含んでなる単離された核酸分子であって、ここにおいて、タンパク質またはその一部が以下の生物学的活性:UCP発現、脂肪細胞における熱発生、脂肪細胞の分化及び脂肪細胞のインシュリン感受性の1つまたはそれ以上を促進する能力を保つように配列番号:2のアミノ酸配列に少なくとも85%同一であるアミノ酸配列を含んでなる単離された核酸分子。

    (A−2)タンパク質が配列番号:2の全アミノ酸配列に少なくとも85%同一のアミノ酸配列を含んでなる(A−1)記載の単離された核酸分子。

    (A−3)タンパク質の一部が以下のドメインまたはモチーフ:
    a)cAMPリン酸化部位;
    b)チロシンリン酸化部位;
    c)RNA結合モチーフ;
    d)セリン−アルギニンに富んだドメイン;及び
    e)LXXLLモチーフ
    の1つまたはそれ以上を含んでなる、(A−1)記載の単離された核酸分子。

    (A−4)約45℃で6X塩化ナトリウム/クエン酸ナトリウム(SSC)中でのハイブリダイゼーションおよびそれに続く50−65℃で0.2XSSC、0.1%SDS中での1回以上の洗浄のストリンジェント条件下で配列番号:1のヌクレオチド配列を含んでなる核酸の相補分子にハイブリダイズし、かつ、生物学的活性:UCP発現、脂肪細胞における熱発生、脂肪細胞の分化及び脂肪細胞のインシュリン感受性の1つまたはそれ以上を促進する能力を有するタンパク質をコードする、配列番号1のヌクレオチド配列を含んでなる単離された核酸分子。

    (A−5)タンパク質またはその一部をコードするヌクレオチドを含んでなる単離された核酸分子であって、生物学的活性:UCP発現、脂肪細胞における熱発生、脂肪細胞の分化及び脂肪細胞のインシュリン感受性の1つまたはそれ以上を促進する能力を有するタンパク質をコードする、配列番号:1のヌクレオチド配列に少なくとも85%同一であるヌクレオチド配列を含んでなる単離された核酸分子。

    (A−6)配列番号:2のアミノ酸配列をコードする単離された核酸分子。

    (A−7)配列番号:1のヌクレオチド配列及び異種ポリペプチドをコードするヌクレオチド配列を含んでなる単離された核酸分子。

    (A−8)配列番号:1のヌクレオチド配列を含んでなる単離された核酸分子。

    (C−1)配列番号:2のアミノ酸配列からなるタンパク質に特異的に結合する抗体。
  2. 生物学的サンプル中の配列番号:2に示されているタンパク質または配列番号:1に示されている核酸分子の相補体を検出することができる標識されたまたは標識可能な薬剤;サンプル中の前記タンパク質または核酸分子の相補体の量を決定するための手段;及びサンプル中の前記タンパク質または核酸分子の相補体の量を基準と比較するための手段を含んでなる生物学的サンプル中の前記タンパク質または核酸分子の相補体の存在を検出するためのキットであって、
    該薬剤が、下記A−1,A−2,A−3,A−4,A−5,A−6,A−7,A−8およびC−1からなる群から選ばれる核酸分子又は抗体である、キット。

    (A−1)タンパク質またはその一部をコードするヌクレオチドを含んでなる単離された核酸分子であって、ここにおいて、タンパク質またはその一部が以下の生物学的活性:UCP発現、脂肪細胞における熱発生、脂肪細胞の分化及び脂肪細胞のインシュリン感受性の1つまたはそれ以上を促進する能力を保つように配列番号:2のアミノ酸配列に少なくとも85%同一であるアミノ酸配列を含んでなる単離された核酸分子。

    (A−2)タンパク質が配列番号:2の全アミノ酸配列に少なくとも85%同一のアミノ酸配列を含んでなる(A−1)記載の単離された核酸分子。

    (A−3)タンパク質の一部が以下のドメインまたはモチーフ:
    a)cAMPリン酸化部位;
    b)チロシンリン酸化部位;
    c)RNA結合モチーフ;
    d)セリン−アルギニンに富んだドメイン;及び
    e)LXXLLモチーフ
    の1つまたはそれ以上を含んでなる、(A−1)記載の単離された核酸分子。

    (A−4)約45℃で6X塩化ナトリウム/クエン酸ナトリウム(SSC)中でのハイブリダイゼーションおよびそれに続く50−65℃で0.2XSSC、0.1%SDS中での1回以上の洗浄のストリンジェント条件下で配列番号:1のヌクレオチド配列を含んでなる核酸の相補分子にハイブリダイズし、かつ、生物学的活性:UCP発現、脂肪細胞における熱発生、脂肪細胞の分化及び脂肪細胞のインシュリン感受性の1つまたはそれ以上を促進する能力を有するタンパク質をコードする、配列番号1のヌクレオチド配列を含んでなる単離された核酸分子。

    (A−5)タンパク質またはその一部をコードするヌクレオチドを含んでなる単離された核酸分子であって、生物学的活性:UCP発現、脂肪細胞における熱発生、脂肪細胞の分化及び脂肪細胞のインシュリン感受性の1つまたはそれ以上を促進する能力を有するタンパク質をコードする、配列番号:1のヌクレオチド配列に少なくとも85%同一であるヌクレオチド配列を含んでなる単離された核酸分子。

    (A−6)配列番号:2のアミノ酸配列をコードする単離された核酸分子。

    (A−7)配列番号:1のヌクレオチド配列及び異種ポリペプチドをコードするヌクレオチド配列を含んでなる単離された核酸分子。

    (A−8)配列番号:1のヌクレオチド配列を含んでなる単離された核酸分子。

    (C−1)配列番号:2のアミノ酸配列からなるタンパク質に特異的に結合する抗体。
  3. 配列番号:1に示されている核酸または配列番号:2に示されているタンパク質の発現および/または活性を促進する化合物を同定する方法であって、
    PGC−1を含むシグナル伝達経路により制御される、UCP発現、脂肪細胞における熱発生、脂肪細胞の分化または脂肪細胞のインシュリン感受性を促進する化合物または薬剤の能力をアッセイすることを含む、化合物の同定方法。
  4. 複合体を形成するように配列番号:2に示されているタンパク質に化合物を結合させる条件下で化合と前記タンパク質を接触させ;そして前記タンパク質と化合物の複合体形成を検出することを含んでなり、かつ、前記タンパク質に結合する化合物の能力が複合体中の化合物の存在により示される、前記タンパク質に結合する化合物の同定方法。
  5. 複合体を形成するように配列番号:2に示されているタンパク質に標的分子を結合させる条件下で化合物の存在下で前記タンパク質と標的分子接触させ;そして前記タンパク質と標的分子の複合体の形成を検出することを含んでなり、かつ、前記タンパク質と前記標的分子間の相互作用を妨げる化合物の能力が、化合物の非存在下で形成される複合体の量に比較した場合の複合体形成の減少により示される、前記標的分子と前記タンパク質の相互作用を妨げる化合物の同定方法であって、
    該標的分子が、PPARα、PPARβ、PPARγ、甲状腺ホルモン受容体、エストロゲン受容体、レチノイン酸受容体、C/EBPα、およびTRβからなる群から選ばれる、化合物の同定方法。
  6. 配列番号:1のヌクレオチド配列を有する核酸の異常な発現または配列番号:2のアミノ酸配列を有するポリペプチドの異常な活性を特徴とする疾患を治療するための医薬製剤の調製における、下記A−1,A−2,A−3,A−4,A−5,A−6、A−7およびA−8からなる群から選ばれるいずれかの一に記載の核酸、下記A−1,A−2,A−3,A−4,A−5,A−6、A−7およびA−8からなる群から選ばれるいずれかの一に記載の核酸分子を含んでなるベクター、下記B−1、B−2、B−3およびB−4からなる群から選ばれるいずれかの一に記載のタンパク質、または配列番号:2のアミノ酸配列からなるタンパク質に特異的に結合する抗体の使用。

    (A−1)タンパク質またはその一部をコードするヌクレオチドを含んでなる単離された核酸分子であって、ここにおいて、タンパク質またはその一部が以下の生物学的活性:UCP発現、脂肪細胞における熱発生、脂肪細胞の分化及び脂肪細胞のインシュリン感受性の1つまたはそれ以上を促進する能力を保つように配列番号:2のアミノ酸配列に少なくとも85%同一であるアミノ酸配列を含んでなる単離された核酸分子。

    (A−2)タンパク質が配列番号:2の全アミノ酸配列に少なくとも85%同一のアミノ酸配列を含んでなる(A−1)記載の単離された核酸分子。

    (A−3)タンパク質の一部が以下のドメインまたはモチーフ:
    a)cAMPリン酸化部位;
    b)チロシンリン酸化部位;
    c)RNA結合モチーフ;
    d)セリン−アルギニンに富んだドメイン;及び
    e)LXXLLモチーフ
    の1つまたはそれ以上を含んでなる、(A−1)記載の単離された核酸分子。

    (A−4)約45℃で6X塩化ナトリウム/クエン酸ナトリウム(SSC)中でのハイブリダイゼーションおよびそれに続く50−65℃で0.2XSSC、0.1%SDS中での1回以上の洗浄のストリンジェント条件下で配列番号:1のヌクレオチド配列を含んでなる核酸の相補分子にハイブリダイズし、かつ、生物学的活性:UCP発現、脂肪細胞における熱発生、脂肪細胞の分化及び脂肪細胞のインシュリン感受性の1つまたはそれ以上を促進する能力を有するタンパク質をコードする、配列番号1のヌクレオチド配列を含んでなる単離された核酸分子。

    (A−5)タンパク質またはその一部をコードするヌクレオチドを含んでなる単離された核酸分子であって、生物学的活性:UCP発現、脂肪細胞における熱発生、脂肪細胞の分化及び脂肪細胞のインシュリン感受性の1つまたはそれ以上を促進する能力を有するタンパク質をコードする、配列番号:1のヌクレオチド配列に少なくとも85%同一であるヌクレオチド配列を含んでなる単離された核酸分子。

    (A−6)配列番号:2のアミノ酸配列をコードする単離された核酸分子。

    (A−7)配列番号:1のヌクレオチド配列及び異種ポリペプチドをコードするヌクレオチド配列を含んでなる単離された核酸分子。

    (A−8)配列番号:1のヌクレオチド配列を含んでなる単離された核酸分子。

    (B−1)配列番号:2のアミノ酸配列を含んでなる単離されたタンパク質。

    (B−2)異種ポリペプチドに機能的に連結された配列番号:2のアミノ酸配列を含んでなる融合タンパク質。

    (B−3)配列番号:2のアミノ酸配列に少なくとも85%同一のアミノ酸配列を含んでなる単離されたタンパク質であって、ここにおいて、タンパク質またはその一部が以下の生物学的活性:UCP発現、脂肪細胞における熱発生、脂肪細胞の分化および脂肪細胞のインシュリン感受性の1つまたはそれ以上を促進する能力を保つ、タンパク質。

    (B−4)タンパク質の一部が以下のドメインまたはモチーフ:
    a) cAMPリン酸化部位、
    b) チロシンリン酸化部位、
    c) RNA結合モチーフ、
    d) セリン-アルギニンに富んだドメイン、及び
    e) LXXLLモチーフ、
    のうち1つまたはそれ以上を含んでなる、(B−3)に記載の単離されたタンパク質。
  7. 疾患が体重疾患または不十分なインシュリン活性と関係する疾患である、請求項6に記載の使用。
  8. 体重疾患が肥満症、悪液質または食欲不振である、請求項7に記載の使用。
  9. 不十分なインシュリン活性と関係する疾患が糖尿病である、請求項に記載の使用。
  10. 下記A−1,A−2,A−3,A−4,A−5,A−6、A−7およびA−8からなる群から選ばれる1つの核酸分子に対してアンチセンスの単離された核酸分子。

    (A−1)タンパク質またはその一部をコードするヌクレオチドを含んでなる単離された核酸分子であって、ここにおいて、タンパク質またはその一部が以下の生物学的活性:UCP発現、脂肪細胞における熱発生、脂肪細胞の分化及び脂肪細胞のインシュリン感受性の1つまたはそれ以上を促進する能力を保つように配列番号:2のアミノ酸配列に少なくとも85%同一であるアミノ酸配列を含んでなる単離された核酸分子。

    (A−2)タンパク質が配列番号:2の全アミノ酸配列に少なくとも85%同一のアミノ酸配列を含んでなる(A−1)記載の単離された核酸分子。

    (A−3)タンパク質の一部が以下のドメインまたはモチーフ:
    a)cAMPリン酸化部位;
    b)チロシンリン酸化部位;
    c)RNA結合モチーフ;
    d)セリン−アルギニンに富んだドメイン;及び
    e)LXXLLモチーフ
    の1つまたはそれ以上を含んでなる、(A−1)記載の単離された核酸分子。

    (A−4)約45℃で6X塩化ナトリウム/クエン酸ナトリウム(SSC)中でのハイブリダイゼーションおよびそれに続く50−65℃で0.2XSSC、0.1%SDS中での1回以上の洗浄のストリンジェント条件下で配列番号:1のヌクレオチド配列を含んでなる核酸の相補分子にハイブリダイズし、かつ、生物学的活性:UCP発現、脂肪細胞における熱発生、脂肪細胞の分化及び脂肪細胞のインシュリン感受性の1つまたはそれ以上を促進する能力を有するタンパク質をコードする、配列番号1のヌクレオチド配列を含んでなる単離された核酸分子。

    (A−5)タンパク質またはその一部をコードするヌクレオチドを含んでなる単離された核酸分子であって、生物学的活性:UCP発現、脂肪細胞における熱発生、脂肪細胞の分化及び脂肪細胞のインシュリン感受性の1つまたはそれ以上を促進する能力を有するタンパク質をコードする、配列番号:1のヌクレオチド配列に少なくとも85%同一であるヌクレオチド配列を含んでなる単離された核酸分子。

    (A−6)配列番号:2のアミノ酸配列をコードする単離された核酸分子。

    (A−7)配列番号:1のヌクレオチド配列及び異種ポリペプチドをコードするヌクレオチド配列を含んでなる単離された核酸分子。

    (A−8)配列番号:1のヌクレオチド配列を含んでなる単離された核酸分子。
  11. 下記A−1,A−2,A−3,A−4,A−5,A−6、A−7およびA−8からなる群から選ばれる1つの核酸分子を含むベクター。

    (A−1)タンパク質またはその一部をコードするヌクレオチドを含んでなる単離された核酸分子であって、ここにおいて、タンパク質またはその一部が以下の生物学的活性:UCP発現、脂肪細胞における熱発生、脂肪細胞の分化及び脂肪細胞のインシュリン感受性の1つまたはそれ以上を促進する能力を保つように配列番号:2のアミノ酸配列に少なくとも85%同一であるアミノ酸配列を含んでなる単離された核酸分子。

    (A−2)タンパク質が配列番号:2の全アミノ酸配列に少なくとも85%同一のアミノ酸配列を含んでなる(A−1)記載の単離された核酸分子。

    (A−3)タンパク質の一部が以下のドメインまたはモチーフ:
    a)cAMPリン酸化部位;
    b)チロシンリン酸化部位;
    c)RNA結合モチーフ;
    d)セリン−アルギニンに富んだドメイン;及び
    e)LXXLLモチーフ
    の1つまたはそれ以上を含んでなる、(A−1)記載の単離された核酸分子。

    (A−4)約45℃で6X塩化ナトリウム/クエン酸ナトリウム(SSC)中でのハイブリダイゼーションおよびそれに続く50−65℃で0.2XSSC、0.1%SDS中での1回以上の洗浄のストリンジェント条件下で配列番号:1のヌクレオチド配列を含んでなる核酸の相補分子にハイブリダイズし、かつ、生物学的活性:UCP発現、脂肪細胞における熱発生、脂肪細胞の分化及び脂肪細胞のインシュリン感受性の1つまたはそれ以上を促進する能力を有するタンパク質をコードする、配列番号1のヌクレオチド配列を含んでなる単離された核酸分子。

    (A−5)タンパク質またはその一部をコードするヌクレオチドを含んでなる単離された核酸分子であって、生物学的活性:UCP発現、脂肪細胞における熱発生、脂肪細胞の分化及び脂肪細胞のインシュリン感受性の1つまたはそれ以上を促進する能力を有するタンパク質をコードする、配列番号:1のヌクレオチド配列に少なくとも85%同一であるヌクレオチド配列を含んでなる単離された核酸分子。

    (A−6)配列番号:2のアミノ酸配列をコードする単離された核酸分子。

    (A−7)配列番号:1のヌクレオチド配列及び異種ポリペプチドをコードするヌクレオチド配列を含んでなる単離された核酸分子。

    (A−8)配列番号:1のヌクレオチド配列を含んでなる単離された核酸分子。
  12. 請求項11に記載のベクターを含有する宿主細胞。
  13. 配列番号:2のアミノ酸配列に少なくとも85%同一のアミノ酸配列を含む単離されたタンパク質であって、ここにおいて、タンパク質またはその一部が以下の生物学的活性、つまりUCP発現、脂肪細胞における熱産生、脂肪細胞の分化、および脂肪細胞のインシュリン感受性のうち1つ以上を促進する能力を保つ、タンパク質。
  14. タンパク質の一部が以下のドメインまたはモチーフ:
    a) cAMPリン酸化部位、
    b) チロシンリン酸化部位、
    c) RNA結合モチーフ、
    d) セリン-アルギニンに富んだドメイン、及び
    e) LXXLLモチーフ、
    のうち1つまたはそれ以上を含んでなる、請求項13に記載の単離されたタンパク質。
  15. 配列番号:2のアミノ酸配列からなるタンパク質に特異的に結合する抗体。
  16. 下記A−1,A−2,A−3,A−4,A−5,A−6、A−7およびA−8からなる群から選ばれるいずれかに従った、医薬製剤で使用のための核酸分子を含むベクター。

    (A−1)タンパク質またはその一部をコードするヌクレオチドを含んでなる単離された核酸分子であって、ここにおいて、タンパク質またはその一部が以下の生物学的活性:UCP発現、脂肪細胞における熱発生、脂肪細胞の分化及び脂肪細胞のインシュリン感受性の1つまたはそれ以上を促進する能力を保つように配列番号:2のアミノ酸配列に少なくとも85%同一であるアミノ酸配列を含んでなる単離された核酸分子。

    (A−2)タンパク質が配列番号:2の全アミノ酸配列に少なくとも85%同一のアミノ酸配列を含んでなる(A−1)記載の単離された核酸分子。

    (A−3)タンパク質の一部が以下のドメインまたはモチーフ:
    a)cAMPリン酸化部位;
    b)チロシンリン酸化部位;
    c)RNA結合モチーフ;
    d)セリン−アルギニンに富んだドメイン;及び
    e)LXXLLモチーフ
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