実釣においては、潮流が非常に速い場合も想定される。そのような場合には、釣人は、海中の所望のポイント(上記「タナ」の水深)に撒き餌を分散させるために、多量の撒き餌を撒かなければならないことがある。釣人は、多量の撒き餌を撒くために、杓を何度も操作して撒き餌を海中に投入する。
ところで、従来の釣用バケツは、一般に上面が開放された直方体容器状に形成されている。したがって、釣人が撒き餌を海中に投入するためには、釣人は、杓を操作して杓のカップに撒き餌を掬い入れ、そして、上記カップを持ち上げて釣用バケツの上面から当該カップを外へ出し、それから、杓を振って撒き餌を投入するという、3段階の動作を行う必要がある。しかしながら、撒き餌を多量に、しかも迅速に撒くために、上記各動作を高速に繰り返し行うと、杓が釣用バケツの側壁に衝突することがある。そのような場合、釣人は、結果的に必要な量の撒き餌を所望のポイントに投入できないばかりか、撒き餌が釣場に散らばってしまうおそれもある。
そこで、本発明の目的は、釣人が杓を用いて多量の撒き餌を確実かつ迅速に所望のポイントへ投入することができる釣用バケツを提供することである。
(1) 上記目的が達成されるため、本発明に係る釣用バケツは、矩形平板状に形成された底面部、当該底面部の一対の長辺縁及び短辺縁にそれぞれ立設された対向する側壁および開放された上面を有する容器状に形成され、撒き餌を収容することができるバケツ本体と、上記長辺縁に立設された側壁にそれぞれ設けられた一対の軸受部と、略U字形状を呈し、両端に形成された軸が上記軸受部に支持された一対の把手とを有する。各把手は、上記軸を中心に上方に回動することによって、当該把手の中央部に形成された把持部が上記バケツ本体の上方中央に配置されるように屈曲形成されており、上記バケツ本体の上面の少なくとも一部は、上記短辺縁に立設された側壁が対向する方向で当該バケツ本体の後方から前方向きに下り勾配となるように傾斜されている。
たとえば磯におけるウキ釣りでは、釣人は、釣用バケツに撒き餌を収容し、これを釣場に持ち込む。釣人は、撒き餌が収容されたバケツ本体を磯の所望の位置に載置する。釣人は、通常、撒餌用杓を用いてバケツ本体内の撒き餌を所望のポイントへ投入する。撒餌用杓は、一般に柄部および柄部の先端に設けられたカップとを有する。釣人は、柄部を操作してバケツ本体の上面から上記カップを当該バケツ本体内に進入させることにより当該カップに撒き餌を掬い入れる。さらに釣人は、柄部を操作することによってカップ内の撒き餌を所望のポイントへ投げ入れる。このとき、釣人は、いわゆるアンダースローにて撒き餌を投げる場合があるし、特に撒き餌を遠投したい場合には、いわゆるオーバースローにて撒き餌を投げることもある。いずれにしても、釣人は、柄部を操作することによってカップを一旦持ち上げて、バケツ本体の上面を通じてカップをバケツ本体から外へ出す必要がある。
本発明では、上記バケツ本体の上面の少なくとも一部が前述のように傾斜していることから、釣人は、撒餌用杓の柄部を操作することによって、上記傾斜によりバケツ本体の底面から最も低くなった部分から上記カップを簡単にバケツ本体の外へ出すことができる。仮にバケツ本体の上面が前述のように傾斜していないとすれば、釣人が柄部を操作してカップを一旦持ち上げてバケツ本体から外に出し、それからカップ内の撒き餌を投げようとすると、当該カップが上記上面の周縁部に衝突し、当該カップ内の撒き餌が釣場に飛び散ってしまうおそれがある。もっとも、釣人は、カップとバケツ本体との衝突を避けるように注意深く柄部を操作すればよいが、釣場の状況によっては、柄部を高速で激しく操作することによって多量の撒き餌を撒く必要に迫られる場合もあり、そのような場合には、カップとバケツ本体との衝突が頻繁に起こり得る。ところが、本発明では、バケツ本体の上面が傾斜しているため、バケツ本体の底面を基準とする上面の高さが低くなる部分が形成される。したがって、釣人は、その低くなった上面からカップを外へ出すようにすれば、バケツ本体との衝突を避けるために撒餌用杓を高く持ち上げる必要はなくなる。その結果、たとえ釣人が激しく柄部を操作した場合であっても、カップがバケツ本体に衝突することが防止される。
本発明では、上記バケツ本体の上面の少なくとも一部は、当該バケツ本体の後方から前方へ下り勾配となるように傾斜されている。
釣場では、上記構成の釣用バケツは、下り勾配に傾斜された上面のうち、バケツ本体の底面から最も低く設定された部分が釣人の所望するポイントと対向するように配置される。換言すれば、釣人の所望するポイントを基準にして、バケツ本体の底面から最も低く設定された部分が前方となるように、釣用バケツが配置される。本発明の釣用バケツを用いれば、釣人は、特にアンダースローにて撒き餌を投げる場合に、撒餌用杓の柄部を操作することによってカップに撒き餌を掬い入れた後に、その掬い入れ動作に連続して、上記傾斜によりバケツ本体の底面から最も低くなった前方側へ向けて撒餌用杓を振り抜くことができる。これにより、前方側の上面の上方を通過させるようにして上記カップをバケツ本体から簡単に外へ出すことができ、しかも、カップを外へ出す動作に連続して撒き餌を所望するポイントへ投入することができる。要するに、撒き餌を掬い入れる動作、カップをバケツ本体から出す動作、及び撒き餌を投げ入れる動作を連続する一連の杓操作により行うことができる。これにより、カップとバケツ本体との衝突を確実に避けることができ、その結果、迅速に多量の撒き餌を投げ入れることができる。
(2) また、上記目的が達成されるため、本発明に係る釣用バケツは、撒餌用杓により撒かれる撒き餌が収容される釣用バケツであって、前縁、一対の側縁および後縁を有する矩形平板状に形成された底部並びに当該底部の前縁、一対の側縁および後縁にそれぞれ設けられた前壁、一対の側壁および後壁を備えた壁部を有し、上面が開放された容器状のバケツ本体を備える。上記壁部は、上記前壁の上縁から上記底部に向かって延びる一対の対向縁と、当該各対向縁の上記底部側の端部同士を連続するように延びる下縁とによって構成され、上記撒餌用杓が当該壁部を通過して上記バケツ本体に出入りすることを許容する杓出入用切欠部を備えている。この杓出入用切欠部および上記上面を覆う閉塞姿勢と上記杓出入用切欠部および上記上面を開放する開放姿勢との間で姿勢変化し得るシート状の蓋部材が、上記バケツ本体に取り付けられている。上記一対の側壁の上端部および上記後壁の上端部に沿ってU字状の補強フレームが配置されており、上記蓋部材は、当該蓋部材が閉塞姿勢となったときに上記補強フレームの両端部間に配置され、当該両端部同士が接近することを防止する支持バーを備えている。
たとえば磯におけるウキ釣りでは、釣人は、釣用バケツに撒き餌を収容し、これを釣場に持ち込む。釣人は、撒き餌が収容されたバケツ本体を磯の所望の位置に載置する。釣人は、通常、撒餌用杓を用いてバケツ本体内の撒き餌を所望のポイントへ投入する。撒餌用杓は、一般に柄部および柄部の先端に設けられたカップとを有する。釣人は、柄部を操作してバケツ本体の上面から上記カップを当該バケツ本体内に進入させることにより当該カップに撒き餌を掬い入れる。さらに釣人は、柄部を操作することによってカップ内の撒き餌を所望のポイントへ投げ入れる。このとき、釣人は、いわゆるアンダースローにて撒き餌を投げる場合があるし、特に撒き餌を遠投したい場合には、いわゆるオーバースローにて撒き餌を投げることもある。いずれにしても、釣人は、柄部を操作することによってカップを一旦持ち上げて、バケツ本体の上面を通じてカップをバケツ本体から外へ出す必要がある。
本発明では、上記バケツ本体の壁部に杓出入用切欠部が設けられているから、釣人は、柄部を操作することによって、当該杓出入用切欠部を通じて簡単にカップをバケツ本体から外へ出すことができる。仮にこの杓出入用切欠部が設けられていないとすれば、釣人が柄部を操作してカップを一旦持ち上げてバケツ本体から外に出し、それからカップ内の撒き餌を投げようとすると、当該カップが上記上面の周縁部に衝突し、当該カップ内の撒き餌が釣場に飛び散ってしまうおそれがある。もっとも、釣人は、カップとバケツ本体との衝突を避けるように注意深く柄部を操作すればよいが、釣場の状況によっては、柄部を高速で激しく操作することによって多量の撒き餌を撒く必要に迫られる場合もあり、そのような場合には、カップとバケツ本体との衝突が頻繁に起こり得る。ところが、本発明では、上記杓出入用切欠部が設けられているため、釣人は、カップとバケツ本体との衝突を避けるために撒餌用杓を高く持ち上げる必要はなく、たとえ釣人が激しく柄部を操作した場合であっても、カップが杓出入用切欠部を通じて外へ出されるため、当該カップがバケツ本体に衝突することが防止される。
また、本発明の釣用バケツの壁部のうち、杓出入用切欠部が形成された側を所望するポイントに対向するようにして当該釣用バケツを釣場に載置すれば、釣人は、特にアンダースローにて撒き餌を投げる場合に、撒餌用杓の柄部を操作することによってカップに撒き餌を掬い入れた後に、その掬い入れ動作に連続して、上記杓出入用切欠部へ向けて杓を振り抜くことができる。これにより、上記杓出入用切欠部を通過させるようにして上記カップをバケツ本体から簡単に外へ出すことができ、しかも、カップを外へ出す動作に連続して撒き餌を所望するポイントへ投入することができる。要するに、撒き餌を掬い入れる動作、カップをバケツ本体から出す動作、及び撒き餌を投げ入れる動作を連続する一連の杓操作により行うことができる。これにより、カップとバケツ本体との衝突を確実に避けることができ、その結果、迅速に多量の撒き餌を投げ入れることができる。
上記底部は、前縁、一対の側縁および後縁を有する矩形平板状に形成され、上記壁部は、上記底部の前縁、一対の側縁および後縁にそれぞれ設けられた前壁、一対の側壁および後壁を備えている。そして、上記杓出入用切欠部は、上記前壁に設けられており、当該前壁の上縁から上記底部に向かって延びる一対の対向縁と、当該各対向縁の上記底部側の端部同士を連続するように延びる下縁とによって構成されるからバケツ本体は上面が開放された直方体の容器状に形成され、また、杓出入用切欠部は、バケツ本体の前壁の中央部が切り欠かれることによって構成される。すなわち、バケツ本体は直方体状に形成され、しかも、バケツ本体に外力が付加された際に大きなねじり応力や曲げ応力が発生する角部は切りかかれていない。したがって、上記杓出入用切欠部が設けられたとしても、バケツ本体の剛性は高く維持され得る。
上記姿勢変化を行うシート状の蓋部材が、上記バケツ本体に取り付けられていることにより、釣人は、任意にバケツ本体の上面および上記出入用切欠部を開閉することができる。これにより、バケツ本体に収容された撒き餌の量に応じて上記出入用切欠部を開閉することができる。したがって、例えば、バケツ本体の上縁まで撒き餌が収容されている場合は、上記出入用切欠部全体を蓋部材で覆うことができる。また、撒き餌が徐々に減少して撒き餌の上面が低下した場合は、出入用切欠部のうち、バケツ本体の上縁から撒き餌の上面までの部分だけを開放することができる。要するに、撒き餌の量に応じて上記出入用切欠部の開放率(開口率)を任意に設定することができる。
また、実釣中に雨が降った場合や日差しが強くなった場合には、出入用切欠部のみならずバケツ本体の上面全体を蓋部材で閉めて、撒き餌の劣化を防止することができる。さらに、多量の撒き餌を投じる必要がない状況においては、蓋部材によって上記杓出入用切欠部のみを閉塞することも可能である。
上記一対の側壁の上端部および上記後壁の上端部に沿ってU字状の補強フレームが配置されると共に、上記蓋部材は、当該蓋部材が閉塞姿勢となったときに上記補強フレームの両端部間に配置され、当該両端部同士が接近することを防止する支持バーが備えられていることにより、バケツ本体の剛性がさらに向上するので、釣用バケツの使い勝手が一層良くなる。ただし、この補強フレームはU字状に形成されているから、バケツ本体に外力が付加された場合に補強フレームの先端部側が変形しやすい傾向にある。しかし、蓋部材が閉塞姿勢となったとき(典型的には、釣人が実釣中に釣場を移動するために、釣用バケツを持ち上げるような場合に蓋部材は閉塞姿勢にされる)には、支持バーが補強フレームの両端部間に配置されることにより、補強フレームの変形が抑えられる。したがって、釣用バケツが持ち上げられてもバケツ本体が大きく変形せず、釣用バケツが持ち運びに便利なものとなる。
(3) 上記蓋部材の一端縁部は、上記杓出入用切欠部の下縁に沿ってヒンジ結合されていてもよい。そして、この蓋部材の一端縁部以外の他の縁部は、スライドファスナーを介して上記杓出入用切欠部の一対の対向縁および上記上面の縁部に連結されているのが好ましい。
この構成では、釣人は、スライドファスナーを操作することによって、蓋部材の開閉を自在に調整することができる。
(4) 上記補強フレームの両端部は、上記支持バーが安定的に当接し得る座を備えているのが好ましい。
この座が設けられることにより、支持バーが安定して補強フレームの両端部間に配置される。したがって、釣人が釣用バケツを持ち歩いたとしても、支持バーが補強フレームからずれてバケツ本体が大きく変形してしまうことはない。つまり、釣用バケツが持ち運びに一層便利なものとなる。
(5) 上記補強フレームは、断面が円形である線材から構成されているのが好ましい。また、上記座は、上記線材の端部が上記一対の側壁に沿って環状に湾曲されることにより形成されているのが好ましい。
補強フレームは上記線材が曲げ加工されることによって構成され得るから、補強フレームが安価に製造される。また、線材が環状に湾曲されることにより、上記座は、中央に孔が設けられたドーナツ状に形成される。しかも、線材の断面が円形であるから、上記孔を区画する面は、当該孔の周囲から内側へ滑らかに入り込む曲面となる。したがって、上記蓋部材が閉じられることによって上記支持バーと上記座とが相対的に接近した場合は、支持バーが上記曲面に沿って座の内側に案内される。その結果、支持バーは、一層安定して補強フレームの両端部間に配置される。
本発明によれば、釣人が撒餌用杓を高速で操作した場合であっても、当該撒餌用杓が釣用バケツに衝突することが防止されるので、釣人は、撒餌用杓を用いて多量の撒き餌を所望のポイントに投入することができる。その結果、釣人は、釣場の状況に応じて撒き餌の量およびタイミングを適切に調整することができる。
以下、適宜図面が参照されつつ、好ましい実施形態に基づいて本発明が詳細に説明される。
《第1の実施形態》
図1及び図2は、本発明の第1の実施形態に係る釣用バケツ1の斜視図であって、図1は、開口17が上蓋11で閉塞された状態を示し、図2は、開口17が開放された状態を示す。また、図3は、図1におけるIII−矢視図である。なお、図2では、説明の便宜上、上蓋11は省略されている。当該釣用バケツ1は、例えば、釣り道具を収容するための容器、或いは釣れた魚を生かしておくための生け簀として用いることが可能であるが、主として、魚釣りの際に用いられる撒き餌と称される釣り餌を収容するための容器として使用される。以下、本発明の第1の実施形態に係る釣用バケツ1の構成について詳述される。
釣用バケツ1は、図1から図3が示すように、バケツ本体10と、該バケツ本体10の上面に設けられた上蓋11とを備えている。
バケツ本体10は、その上面に開口17(図2参照)を有する容器状に形成されている。このバケツ本体10に、撒き餌などの釣り餌が収容される。一般に、撒き餌としては、生或いはボイルされたオキアミ、生のアミエビなどが多用される。そのため、バケツ本体10は、オキアミやアミエビから滲み出る水分が外部へ漏出しないように、防水構造を備えている。バケツ本体10のサイズは、冷凍されたオキアミやアミエビなどのブロック体を破壊することなくそのまま収容し得るサイズに設定されており、例えば、長手方向の長さが30cmから50cm程度のものとされている。なお、言うまでもなく、本釣用バケツ1は、上記サイズに限定されることはなく、多様なサイズを採用することが可能である。
バケツ本体10は、略矩形の平板状の底面部14と、この底面部14の周縁に立設された側壁部15とを備えている。側壁部15は、シート状の合成樹脂が筒状に形成された筒状シートからなる。この側壁部15の下端が上記底面部14の周縁(長辺縁22及び短辺縁23)に溶着されることによってバケツ本体10が形成され、さらに、側壁部15の上端部16(図2参照)によって開口17が形成される。底面部14及び側壁部15は、シート状の合成樹脂から構成されている。合成樹脂としては、例えば、エチレン酢酸ビニル共重合体(EVA)が好適に採用される。底面部14の肉厚寸法は、0.75mm〜2.0mm程度に設定され、側壁部15の肉厚寸法も、0.75mm〜2.0mm程度に設定され得る。
側壁部15の上端部16(図2参照)は、上記筒状シートの上端がバケツ本体10の外側に折り返され、さらに所定位置において当該筒状シートの外側の面に溶着されることによって形成されている。ここで、上記筒状シートの上端は、バケツ本体10の周囲全体にわたって連続して溶着されていてもよいし、間欠的に溶着されていてもよい。また、この第1の実施形態では、上記側壁部15の上端部16は、図示しない環状フレームに巻き掛けられている。この環状フレームは、上記開口17の周縁部に沿って配設されている。上記環状フレームは、例えばステンレススチールから構成され得る。この環状フレームが設けられることにより、バケツ本体10の開口17の周縁部の剛性が向上し、その結果、釣用バケツ1が釣り餌の容器として一層使い易いものとなる。
図2が示すように、側壁部15は、4つの側壁18〜21を有する。側壁18,19は、略矩形状に形成された底面部14の一対の長辺縁22それぞれに垂直方向に立設されている。また、側壁20,21は、底面部14の一対の短辺縁23それぞれに垂直方向に立設されている。側壁部15の上端部16のうち、側壁18,19それぞれの上端16A,16Bは、底面部14に対して同一方向に下り勾配となるように傾斜されている。具体的には、上端16A,16Bは、図2における紙面奥側(本発明の後方に相当)から手前側(本発明の後方に相当)へ向かう方向に下り勾配となるように傾斜されている。上端16A,16Bそれぞれの傾斜下方側の端部は、側壁18,19に隣接する紙面手前側の側壁20の上端16Cに連続している。また、上端16A,16Bそれぞれの傾斜上方側の端部は、側壁18,19に隣接する紙面奥側の側壁21の上端16Dに連続している。このように各側壁18〜21が形成されることで、バケツ本体10の開口17が矩形に形成されるとともに、バケツ本体10の上端部16が、側壁21側から側壁20側へ向かって下り勾配に傾斜された形状に形成される(図3参照)。かかる作用効果については後述される。
なお、バケツ本体10の上端部16の傾斜度、すなわち、底面部14に対する上端16A,16B傾斜角φ(図3参照)は、バケツ本体10のサイズや容積、素材などの各要因如何によって任意に設定することができるが、長径が30cmから50cm程度に設定された上記バケツ本体10においては、十分な剛性を確保するべく、上記傾斜角φは、概ね、5°(degree)から30°の範囲内で設定され得る。
図1から図3が示すように、バケツ本体10は一対の把手25,26を備えている。把手25,26は、バケツ本体10の両側壁18,19に設けられている。把手25,26は、取付ステー12を介してバケツ本体10の両側壁18,19に取り付けられている。これら把手25,26は、バケツ本体10と同じ素材のエチレン酢酸ビニル共重合体(EVA)、或いはポリエチレン等の合成樹脂により形成することができる。
図4は、取付ステー12の拡大斜視図である。取付ステー12は、同図が示すように、バケツ本体10の側壁18,19(図2参照)に固定されるベース部30と、このベース部30の中央部に形成されたブリッジ部31と、このブリッジ部31の両側方にそれぞれ形成された軸受部32とを備えている。取付ステー12は合成樹脂からなり、例えば射出成形されることによって上記ベース部30、ブリッジ部31及び軸受部32が一体に形成される。上記合成樹脂としては、例えば、バケツ本体10と同じ素材、具体的には、エチレン酢酸ビニル共重合体(EVA)が好適に採用される。なお、本第1の実施形態では、取付ステー12が射出成形などにより一体に形成されることととしたが、もちろん、上記ベース部30、ブリッジ部31及び軸受部32が別々に形成されて、それぞれが組み付けられることで取付ステー12が構成されてもよい。
上記ベース部30は、横長矩形の平板状に形成されている。このベース部30は、側壁18,19(図2参照)に溶着などによって取り付けられる。ブリッジ部31は、扁平したU字状に形成されており、ベース部30から外方向、つまり、側壁18,19に垂直な方向に突出している。このため、ブリッジ部31とベース部30との間に一定高さの空間が形成される。釣人は、このブリッジ部31に、タオルやコマセカッター、サシエケース、柄杓ホルダ等を引っ掛けて、これら各道具を便利良く使用する。軸受部32は、上記ブリッジ部31の両側方にそれぞれ設けられている。この軸受部32は、ベース部30から外方向、つまり、側壁18,19に垂直な方向に突出している。軸受部32には、ベース部30の長手方向に沿って円筒状の軸孔34が形成されている。軸受部32は、後述される把手25の軸46(図5参照)を回動自在に支持する。
ベース部30における軸受部32の下方には、当該軸受部32に連続するようにして切欠33が形成されている。この切欠33が設けられることにより、軸受部32の下側部分がベース部30から離れるように変形され得る。軸受部32の下側部分がベース部30から離れるように変形された状態で、軸受部32の下側に隙間が形成される。この隙間から上方へ向けて把手25の軸46(図5参照)が挿入されることで、軸受部32が外方へ広げられつつ、軸46が軸孔34へ案内される。これにより、軸46が軸孔34に嵌め込まれる。このようにして把手25の軸46が軸受部32に嵌め込まれた後に、軸受部32がバケツ本体10に溶着されると、把手25は、取付ステー12に対して回動自在な状態で取り付けられる。
図5は、把手25の斜視図である。同図では、バケツ本体10の一方の側壁18に取り付けられる把手25が図示されているが、他方の側壁19に取り付けられる把手26も略同様の形状である。そのため、把手26についての詳細な説明は省略される。
図5が示すように、把手25は、全体として略U字形状を呈している。この把手25は、略U字状に湾曲された湾曲部40と、該湾曲部40の両端からそれぞれ平行に延出されたアーム部41とを備えて構成されている。把手25は、上記取付ステー12と同様に合成樹脂からなり、例えば射出成形されることによって形成される。なお、合成樹脂としては、例えば、エチレン酢酸ビニル共重合体(EVA)が好適に採用される。
湾曲部40には、略丸棒状の把持部43が設けられている。釣人は、この把持部43を把持して釣用バケツ1を持ち運ぶことができる。アーム部41の端部42は、平板状に形成されている。各端部42それぞれの先端に、丸棒状の軸46が形成されている。
各端部42の先端は、それぞれ、フォーク状に形成されている。各軸46は、各端部42の先端同士を連結して上記把持部43と略平行な方向に延びている。換言すれば、各端部42の先端は、それぞれ、肉抜きされた空間44を有し、各軸46は、この空間44に架け渡すように配置されている。この空間44が形成されることにより、各軸46が上記軸受部32に容易に嵌め込まれる。また、各端部42は、該端部42の所定部位45において屈曲されている。このように各端部42が屈曲されていることにより、図1が示すように、把手25が上方へ回動起立された状態で上記把持部43が釣用バケツ1の上方中央に配置されることになる。なお、上記所定部位45は、把手25が上方へ回動起立されたときに側壁部15の上端部16(図2参照)、即ち、開口17(図2参照)の周縁部に当接する位置に概ね設定されている。
図1が示すように、上蓋11は、バケツ本体10の上面に形成された開口17(図2参照)を覆うようにして取り付けられている。そのため、上蓋11は、上記開口17に相応した形状に形成されており、具体的には、略矩形に形成されている。上蓋11は、上記開口17を開閉するものであり、該開口17を開放する状態(開放姿勢)と該開口17を閉塞する状態(閉塞姿勢)とに姿勢変化される。上蓋11は、上記バケツ本体10と同様に、シート状の合成樹脂から構成されており、適度な可撓性と弾性を有する。合成樹脂としては、例えば、エチレン酢酸ビニル共重合体(EVA)が好適に採用される。
上蓋11は、側壁部15の上端部16のうち、側壁21の上端16Dに沿ってヒンジ結合されている。具体的には、合成樹脂などの幅広のシート片(不図示)の上端側が上蓋11の端部に縫い付けられており、該シート片の下端側が側壁21の上端16Dに縫い付けられることで、上蓋11とバケツ本体10とが結合される。このように、上蓋11とバケツ本体10とがヒンジ結合されることにより、側壁21の上端16Dの側を回動軸として、上記バケツ本体10の開口17に対して上蓋11が回動可能となる。
図1が示すように、上蓋11は、スライドファスナー(以下「ファスナー」と略称される。)56を介して、側壁部15の上端部16(図2参照)、即ち、開口17(図2参照)の周縁部に連結されている。ファスナー56の基端及び終端は、上記シート片の裏側に収められており、該シート片と共に側壁21の上端16Dに縫い付けられている。ファスナー56は、図1が示すように、2つのスライダー57を有する。それぞれのスライダー57が、上記シート片の両端を起点として互いに近づく方向(シート片から離反する方向)へスライドされることにより、上蓋11とバケツ本体10とがファスナー56により連結される。また、スライダー57それぞれが互いに離反する方向(シート片に近づく方向)へスライドされることで、ファスナー56による連結が解除されて、バケツ本体10の開口17が開放可能となる。各スライダー57には、引き手58が取り付けられている。そのため、スライダー57の操作性が高められ、釣人は、スライダー57を容易に操作することができる。なお、図1には示されていないが、引き手58に、環状のゴム紐を取り付けることで、スライダー57の操作性をより一層高めることができる。
上蓋11の外側の面51には、該上蓋11の各短辺の中点を通る仮想直線50(図1参照)上に2つのボタンが配置されている。具体的には、図1が示すように、側壁21側の端部付近に雌ボタン53が設けられ、側壁20側の端部付近に雄ボタン52が設けられている。これら各ボタン52,53は、上蓋11の内側の面から上蓋11を貫通して各ボタン52,53を外側の面51に圧着する留め具54(図13参照)によって上蓋11に固定されている。
雄ボタン52と雌ボタン53は互いに係合解除可能に構成されたドットボタンである。これらのボタン52,53は既知の構造を有する。具体的には、雄ボタン52はスタッド部を備え、雌ボタン53はソケット部を備えており、スタッド部がソケット部に嵌め込まれることによって、両者は所定の嵌合力で係合する。そして、この所定の嵌合力に抗して雄ボタン52と雌ボタン53との嵌合を解除する力が作用した場合は、両者の係合は解除される。
このように、雄ボタン52及び雌ボタン53が上蓋11に設けられているため、上蓋11の側壁20側を半開状態にして、上蓋11の側壁20側の端部を側壁21側へ反転させたうえで、上記雄ボタン52を上記雌ボタン53に係合することができる。これにより、バケツ本体10の上面を半開状態に維持することができる。その結果、上蓋11が地面に垂れ落ちることが防止される。なお、上記半開状態にすることは、バケツ本体10の上面を全開状態とする場合に比べて、例えば、晴天時の実釣において撒き餌の乾燥を抑制したい場合や、悪天候時の実釣において雨水の浸入を抑えたい場合に好適である。
図6は、釣用バケツ1を用いて撒き餌を投入する動作を示す模式図である。上述の如く構成された釣用バケツ1の作用効果は以下の通りである。例えば、磯におけるウキ釣りでは、釣人は、釣用バケツ1に撒き餌を収容し、これを釣場に持ち込む。釣場では、釣人は、バケツ本体10の側壁20の側を所望のポイントに向けるようにして載置する。釣人は、バケツ本体10内の撒き餌を撒餌用杓60を用いて所望のポイントへ投入する。従来の釣用バケツでは、前述したように、カップ61に撒き餌を掬い入れ、カップ61を一旦持ち上げて釣用バケツから撒餌用杓60を外に出し、その後、撒餌用杓を振って撒き餌を投げ入れるという3段階の動作を行う必要がある。ところが、本発明の第1の実施形態に係る釣用バケツ1によれば、図1から図3が示すように、バケツ本体10の上端部16が側壁21側から側壁20側へ向かって傾斜角φの下り勾配に傾斜された形状に形成されているため、図6が示す如く、釣人は、撒餌用杓60の柄部を操作することによってカップ61に撒き餌を掬い入れた後、その掬い入れ動作に連続してカップ61を側壁20の上端16Cの上方を通過させて所望のポイント方向へ該カップ61を導くことができる。これにより、カップ61が側壁20に衝突してカップ61内の撒き餌を飛散させてしまうことはない。また、多量の撒き餌を所望のポイントに撒く必要に迫られた場合であっても、カップ61と側壁20との衝突を避けるべく撒餌用杓60を高く持ち上げるという煩わしい動作を要しないため、撒餌用杓60の高速操作が可能となり、確実にしかも迅速に多量の撒き餌を所望のポイントに投入することができる。
《第2の実施形態》
図7は、本発明の第2の実施形態に係る釣用バケツ100の斜視図である。この釣用バケツ100も、上述した第1実施形態に係る釣用バケツ1と同じ用途に用いられるものである。すなわち、主として、魚釣りの際に用いられる撒き餌と称される釣り餌を収容するための容器として使用される。以下、本発明の第2の実施形態に係る釣用バケツ100の構成について詳述される。なお、本実施形態に係る釣用バケツ100を構成する要素のうち、上述の第1の実施形態に係る釣用バケツ1と同じ要素については、釣用バケツ1の要素に付した符号と同番号の符号を付すことで、その詳細な説明が省略される。
本実施形態の釣用バケツ100は、図7が示すように、バケツ本体110と、バケツ本体110の上面に設けられた上蓋111(本発明の蓋部材に相当)と、取付ステー12と、把手25,26とを備えている。
図8は、開口117が開放された状態における釣用バケツ110の斜視図であり、図9は、開口117及び切欠口113(本発明の杓出入用切欠部に相当)が開放された状態における釣用バケツ110の斜視図である。また、図10は、側壁121側から見た釣用バケツ100の斜視図である。なお、図9では、説明の便宜上、上蓋111は省略されている。
バケツ本体110は、略直方体形状に形成されており、その上面には開口117が形成されている。この開口117は、後述される切欠口113(図9参照)と共に、上蓋111によって塞がれる。バケツ本体110は、防水構造が採用されており、当該バケツ本体110に、撒き餌などの釣り餌が収容される。バケツ本体110のサイズは、撒き餌として多用される冷凍オキアミや冷凍ボイルオキアミのブロックが収容可能なサイズに設定されており、例えば、長手方向の長さが30cmから50cm程度のものである。なお、言うまでもなく、本釣用バケツ100は、上記サイズに限定されることはなく、多様なサイズを採用することが可能である。
図8及び図9が示すように、バケツ本体110は、略矩形の平板状の底面部14(本発明の底部に相当)と、この底面部14の周縁に立設された側壁部115(本発明の壁部に相当)とを備えている。底面部14及び側壁部115は、シート状の合成樹脂から構成されている。合成樹脂としては、例えば、エチレン酢酸ビニル共重合体(EVA)が好適に採用される。底面部14及び側壁部115の肉厚寸法は、0.75mm〜2.0mm程度に設定され得る。側壁部115は、幅が均等なシート状の合成樹脂が概ね筒状に形成された筒状シートからなる。この側壁部115の下端が底面部14の周縁に溶着されることによって、概ね直方体形状のバケツ本体110が形成される。このようにバケツ本体110が形成されることにより、バケツ本体110の上面に底面部14と略同じ形状で同じサイズの開口117が形成される。
図7から図10が示すように、側壁部115は、4つの側壁118〜121を有する。側壁118,119は、底面部14の一対の長辺縁22(本発明の一対の側縁に相当)に垂直方向に立設されており、これらは互いに対向している。また、側壁120(本発明の後壁に相当)及び側壁121(本発明の前壁に相当)は、底面部14の一対の短辺縁23に垂直方向に立設されており、これらも互いに対向している。一対の短辺縁23のうち、一方の短辺縁23A(本発明の前縁に相当)、すなわち、図10の紙面手前側の短辺縁23Aに、側壁121が立設されている。この側壁121には、切欠口113(図9参照)が設けられている。この切欠口113は、側壁121の上縁から底面部14に向かって当該側壁121が切り欠かれることによって形成される。より詳細には、側壁121の上縁の両端(側壁118,119の上端116A,116Bの側壁121側の端部)から底面部14に向かって先細りとなるように側壁121が切り欠かれることによって当該切欠口113が形成されている。このように切欠口113が形成されることにより、バケツ本体110の上面の開口117と当該切欠口113とが連続する。
本第2の実施形態では、切欠口113は、底辺が上辺よりも短い等脚台形状に側壁121が切り欠かれて構成されている。なお、本発明を実現するうえで、必ずしも上記切欠口113が上記等脚台形状に形成されることを要しない。したがって、切欠口113として、矩形や逆三角形、或いは半円、扇形などに切り欠かれた形状を呈するものを採用してもよい。要するに、後述するように、撒餌用杓60が側壁121を通過することを許容する形状に形成されていれば、切欠口113としては如何なる形状のものであっても採用され得る。
図9が示すように、切欠口113は、側壁121の上縁の両端から底面部13に向かって延びる一対の側縁130,131(本発明の一対の対向縁に相当)と、これら側縁130,131の底面部14側の端部と連続する下縁132とを有する。下縁132は、側壁121の内側に折り返されており、所定位置133において当該側壁121の内側の面に溶着されている。上記所定位置133における溶着は、側壁121の幅方向に渡って全域になされていてもよく、或いは間欠的になされていてもよい。これにより、上記下縁132が補強される。切欠口113の側縁130,131から側壁部115の上端部116に至ってスライドファスナー(以下「ファスナー」と略称する。)124が取り付けられている。このファスナー124を介して、側縁130,131及び上端部116が上蓋111に連結される。なお、本第2の実施形態では、側壁121に上記切欠口113が形成されていることから、側壁部115の上端部116は、互いに対向する側壁118,119の上端116A,116Bと、上記側壁121に対向する側壁120の上端116Cとにより構成される。
図9が示すように、側壁121に上記切欠口113が設けられていることから、仮に、切欠口113がファスナー124で閉じられていたとしても、バケツ本体110に撒き餌を収容したときに、ファスナー124から水分が滲み出るという問題が懸念される。したがって、本第2の実施形態では、ファスナー124として、例えばダイビングの際に着用されるウェットスーツやドライスーツに使用されている所謂防水ファスナーを採用している。
図7から図10が示すように、上蓋111は、バケツ本体110の上面に形成された開口117(図9参照)及び側壁121に形成された切欠口113(図9参照)を覆うようにしてバケツ本体110に取り付けられる。そのため、上蓋111は、上記開口117及び上記切欠口113に相応した形状に形成されており、具体的には、上記開口117を覆う略矩形状に形成された矩形部135(図10参照)と、上記切欠口113を覆う略台形状に形成された台形部136(図10参照)とを有する。上蓋111は、上記バケツ本体110と同様に、シート状の合成樹脂から構成されており、適度な可撓性と弾性を有する。合成樹脂としては、例えば、エチレン酢酸ビニル共重合体(EVA)が好適に採用される。
上蓋111は、図10が示すように、切欠口113の下縁132に沿ってヒンジ結合されている。具体的には、シート状の合成樹脂からなる細幅のシート片137の短手方向の一方端部(図10では上端部)が上蓋111の台形部136の端部に溶着され、該シート片137の短手方向の他方端部(図10では下端部)及び長手方向の両端部(図10では左右端部)が切欠口113の下縁132側の側壁121に溶着されることで、上蓋111とバケツ本体110とが結合されている。このようにして上蓋111とバケツ本体110とがヒンジ結合されることにより、切欠口113の下縁132近傍を回動軸として、バケツ本体119の開口117及び切欠口113に対して上蓋111が回動可能となる。これにより、上蓋111は、開口117及び切欠口113を開放する状態(開放姿勢)と開口117及び切欠口113を閉塞する状態(閉塞姿勢)とに姿勢変化され得る。
図11は、図10における切断線XI−XIの断面図である。同図は、バケツ本体110の上部の構造及び上蓋111との取付構造を示している。
図11が示すように、上記側壁部115の上端部116は、上記筒状シートの上端がバケツ本体110の外側に折り返され、さらに所定位置128において当該筒状シートの外側の面に溶着されることによって形成されている。ここで、上記筒状シートの上端は、バケツ本体110の周囲全体にわたって連続して溶着されていてもよいし、間欠的に溶着されていてもよい。同図が示すように、本実施形態では、上記側壁部115の上端部116は、U字フレーム129(本発明の補強フレームに相当)に巻き掛けられるようにして折り返されている。上記U字フレーム129は、上端部116、すなわち、側壁118,119,120それぞれの上端116A,116B,116Cに沿って配設されている。このようなU字フレーム129が設けられることにより、バケツ本体110の開口117の周縁部の剛性が向上し、その結果、バケツ本体110が撒き餌を収容し得る容器として一層使い易いものとなる。
図12は、側壁部115の上端部116に巻き掛けられたU字フレーム129の斜視図である。上記U字フレーム129は、同図が示すように、U字状に形成されている。このU字フレーム129は、例えばステンレススチール等の線材が屈曲加工されることにより形成され得る。U字フレーム129の両端部146には、後述される支持バー140が安定的に当接し得る座147が形成されている。本第2の実施形態では、U字フレーム129は、U字状に湾曲された湾曲部129Cが側壁120の上端116Cに沿うように配設され、ストレート部129A,129Bが側壁118,119の上端116A,116Bに沿うように配設され、そして、上記座147が、上記上端116A,116Bの側壁121側の端部に位置するように配設される。
上記座147は、U字フレーム129の両端部146の先端148が側壁118,119に沿って環状に湾曲されることにより形成される。このように形成されたそれぞれの座147には、その中心部に内径D1の孔149が形成される。本第2の実施形態では、U字フレーム129として、断面が円形の線材が用いられる。したがって、上記U字フレーム129の加工、詳細には、上記座147の加工が容易となる。また、U字フレーム129が巻き掛けられた際に上端部116の外面に現れるシルエット(輪郭)が球面となる。言い換えれば、上端部116の外面に角が立たない。そのため、上端部116におけるバケツ本体110の破損が軽減され得る。
上述したように、釣用バケツ100のバケツ本体110には切欠口113が形成されている。したがって、バケツ本体110の切欠口113における剛性は該切欠口113が設けられていない側壁120に比べて低い。そのため、例えばバケツ本体110に撒き餌を収容した状態で把手25,26を掴んで釣用バケツ100を持ち上げると、バケツ本体110は、撒き餌の重量によって、側壁118と側壁119とが近づく方向(図16(b)の矢印145で示す方向)に作用する外力を受ける。この外力に対抗し得る剛性が上記切欠口113の周辺部材に無い場合は、U字フレーム129の両端部146が互いに接近する方向に撓まされる。これに伴い、上端116A,116Bの側壁121側の端部同士が接近して、バケツ本体110が変形される。この場合、釣用バケツ100の持ち運びが不便となる。また、バケツ本体110の変形により、バケツ本体110の容積が小さくなり、該バケツ本体110に収容された撒き餌が開口117あふれ出でるおそれもある。
本第2の実施形態では、図13が示すように、上蓋111の裏面138に、バケツ本体110の撓みを防止するための支持バー140が設けられている。ここに、図13は、上蓋111を展開した展開図であって、上蓋111の裏面138から見た外観が示されている。上記支持バー140は、上蓋111の矩形部135と台形部136との境界線に沿うように配設されている。換言すれば、上蓋111の閉塞状態において、U字フレーム129の両端部146に設けられた各座147(図12参照)を結ぶ線分と支持バー140の軸線とが一致するように配設されている。
上記支持バー140は、シート片141によって上蓋111の裏面138に取り付けられている。具体的には、シート状の合成樹脂からなる細幅のシート片141を上記境界線に沿うようにして、シート片141の短手方向の両端を上蓋111の裏面138に溶着し、シート片141と裏面138との間に形成された間隙に上記支持バー140を挿通することによって、支持バー140が上記裏面138に取り付けられる。この支持バー140は、例えばステンレススチールや合成樹脂などのストレート状の部材から構成され得る。本第2の実施形態では、上記U字フレーム129と同様に断面が円形の丸棒部材からなる支持バー140を用いる。この支持バー140は、シート片141の長手方向の長さよりも長く、U字フレーム129の両端部146に設けられた各座147(図12参照)の離間距離よりも若干短く設定されている。したがって、釣用バケツ100が自然な状態、すなわちバケツ本体110に側壁118と側壁119とが互いに近づく方向の外力が作用していない状態では、支持バー140が上記座147に引っ掛かることはない。
図14は、支持バー140の端部142が詳細に示された拡大詳細図である。同図が示すように、支持バー140の端部142は、先端に向けて先細りとなるようにテーパー状に加工されたテーパー部143と、先端が球面に加工された球面部144とを有する。テーパー部143の最小径、すなわちテーパー部143の先端側の外径D2は、孔149の内径D1(図12参照)よりも小さく設定されている。また、テーパー部143の最大径、すなわちテーパー部143の基端側の外径D3は、孔149の内径D1よりも大きく設定されている。要するに、内径D1、外径D2および外径D3それぞれには、D2<D1<D3の関係が成立している。したがって、支持バー140の端部142が座147に形成された孔149に挿入されたとしても、先端144は孔149に進入するが、テーパー部143が所定の位置で孔149に当接して、それ以上の進入が規制される。
図15は、釣用バケツ100を用いて撒き餌を投入する動作を示す模式図である。上述の如く構成された釣用バケツ100によれば、側壁121に切欠口113が設けられているため、図15(a)が示す如く、釣人は、撒餌用杓60を操作することによってカップ61に撒き餌を掬い入れた後、切欠口113を通じて素早くしかも簡単にカップ61をバケツ本体110から外へ出すことができる。したがって、釣人は、従来の如く、撒餌用杓を高く持ち上げてカップ61をバケツ本体110の上面の開口117から出すという煩雑な動作を行う必要はない。また、たとえ釣人が激しく撒餌用杓60を操作した場合であっても、カップ61が切欠口113を通じて外へ出されるため、当該カップ61がバケツ本体110に衝突することもない。これにより、 撒餌用杓60の高速操作が可能となり、確実にしかも迅速に多量の撒き餌を所望のポイントに投入することができる。
また、切欠口113が形成された側壁121を所望するポイントに対向するようにして当該釣用バケツ100を釣場に載置すれば、釣人は、特にアンダースローにて撒き餌を投げる場合に、撒餌用杓60を操作することによってカップ61に撒き餌を掬い入れた後に、その掬い入れ動作に連続して、上記切欠口113へ向けて撒餌用杓60を振り抜くことができる(図15(a)参照)。これにより、上記切欠口113を通過させるようにして上記カップ61をバケツ本体110から簡単に外へ出すことができ、しかも、カップ61を外へ出す動作に連続して撒き餌を所望するポイントへ投入することができる。要するに、撒き餌を掬い入れる動作、カップ61をバケツ本体110から出す動作、及び撒き餌を投げ入れる動作を連続する一連の杓操作により行うことができる。これにより、カップ61とバケツ本体110との衝突を確実に避けることができ、しかも、迅速に多量の撒き餌を投げ入れることができる。
また、本釣用バケツ100は、バケツ本体110が略直方体形状に形成され、その一側面である側壁121に切欠口113が設けられている。すなわち、バケツ本体110に外力が付加された際に大きなねじり応力や曲げ応力が発生する角部は切り欠かれていない。したがって、上記切欠口113が設けられたとしても、バケツ本体110の剛性を高く維持することができる。
また、本釣用バケツ100には、バケツ本体110の上面の開口117を覆う上蓋111が設けられている(図10参照)。上述したように、この上蓋111は、開口117及び切欠口113を開放する状態(開放姿勢)と開口117及び切欠口113を閉塞する状態(閉塞姿勢)とに姿勢変化される。そのため、釣人は、任意にバケツ本体110の開口117および切欠口113を開閉することができる。したがって、例えば、バケツ本体110の上縁まで撒き餌が収容されている場合は、上記切欠口113の全体を上蓋111で覆うことができる。また、撒き餌が徐々に減少して撒き餌の上面が低下した場合は、図15(a)及び(b)が示すように、切欠口113のうち、バケツ本体110の上縁から撒き餌の上面までの部分だけを開放することができる。要するに、撒き餌の量に応じて上記切欠口113を開放率(開口率)を任意に設定することができる。もちろん、上蓋111によって、雨や直射日光を遮断して、撒き餌の劣化を防止することができる。
図16は、上蓋111が閉塞された釣用バケツ100におけるU字フレーム129及び支持バー140の位置関係を示す模式図であって、同図の(a)は、バケツ本体110が変形される前の状態が示され、同図の(b)は、バケツ本体110が矢印145の方向に変形された状態が示されている。なお、同図では、U字フレーム129及び支持バー140が実線で示され、その他の部分が仮想線(二点鎖線)で示されている。図16が示すように、本釣用バケツ100には、側壁部115の上端部116に沿ってU字フレーム129が設けられている。そのため、釣用バケツ100の剛性が向上して、釣用バケツ100の使い勝手が一層良くなる。また、U字フレーム129の両端部143の剛性が劣り、バケツ本体110が変形しやすい傾向にあるが、上蓋111が閉塞姿勢となったときに、U字フレーム129が矢印145で示す方向に変形しようとしても、支持バー140がこれを規制する。言い換えれば、U字フレーム129及び支持バー140によって、側壁部115の上端部116に、略矩形の補強フレームが形成される。これにより、U字フレーム129の変形が抑えられる。したがって、釣用バケツ100が持ち上げられてもバケツ本体110は大きく変形しない。
また、本第2の実施形態では、U字フレーム129は、支持バー140の端部142が当接される座147を備えている。この座147は、バケツ本体110が変形した場合に、支持バー140の両端部142を受け止める。したがって、釣人が釣用バケツ100を持ち上げた際にバケツ本体110が変形しても、支持バー140がバケツ本体110の側壁を押し付けて、バケツ本体110を損傷させることはない。また、釣人が釣用バケツ100を持ち歩いたときにバケツ本体110が大きく揺れ動いたとしても、支持バー140がU字フレームからずれてバケツ本体110が大きく変形してしまうことはない。つまり、釣用バケツ100が持ち運びに一層便利なものとなる。
また、U字フレーム129は、断面が円形である線材から構成されているから、曲げ加工が容易である。したがって、U字フレーム129を容易且つ安価に製造することができる。また、上記線材の先端が、側壁118,119に沿って環状に湾曲されることにより、上記座147が形成されている。そのため、座147は、中央に孔149を有するドーナツ状に形成される。しかも、線材の断面が円形であるから、上記孔149を区画する面は、周囲から内側へ滑らかに入り込む曲面となる。したがって、上記上蓋111が閉じられることによって上記支持バー140と上記座147とが相対的に接近した場合は、支持バー140の端部142が上記曲面に沿って座147の内側に案内される。その結果、支持バー140は、一層安定してU字フレーム129の両端部146間に配置される。