JP4756792B2 - 内視鏡 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明はオートクレーブ滅菌装置で滅菌するようにした内視鏡に関する。
【0002】
【従来の技術】
医療の分野で使用される内視鏡は患者間の感染を防止する必要があることから検査・処置終了後には必ず洗浄消毒がなされる。近年では、煩雑な作業を伴なわず、滅菌後直ちに内視鏡の使用が可能であり、ランニングコストが安価なオートクレーブ滅菌(高圧蒸気滅菌)で、内視鏡類の消毒滅菌処理を行なうことが主流になりつつある。
【0003】
ところが、この種の高圧蒸気滅菌(以下、オートクレーブと呼ぶ)の処理環境は、精密電子機器である内視鏡にとっては、非常に過酷な条件の下にある。この条件に耐性を有する内視鏡を実現させるため、オートクレーブ滅菌装置で滅菌するようにした内視鏡は、一般の消毒・滅菌手段での使用を前提とした内視鏡に比べ、高圧対策、蒸気対策、高温対策等、さまざまな対策が施されている。
【0004】
しかしながら、挿入部に軟性部を有する内視鏡では、その挿入部が長いため、この挿入部を丸めた状態にして、オートクレーブ装置内に設置しなければならず、このような状態でオートクレーブ処理を内視鏡に施すと、挿入部の軟性部に曲がり癖が付き易く、オートクレーブ処理後の内視鏡検査の際、この軟性部の曲がり癖によって内視鏡の挿入性が低下するおそれがあった。
【0005】
また、これらの問題を解決する手段として、従来、内視鏡をオートクレーブにて処理する場合、前記内視鏡を収納する内視鏡収納具を備えたオートクレーブ装置がある。これに使用する内視鏡収納具は、内視鏡が着脱可能であり、前記軟性部の所定部位の曲げ半径が、他の部位の曲げ半径より大きくなるように配置状態を規制する位置決め部を設けたものや、オートクレーブ後の滅菌保持性を向上させるために、使用する滅菌トレイ自身に軟性部の所定部位の曲げ半径が他の部位の曲げ半径より大きくなるように配置状態を規制する位置決め部材を設けたものが提案されている(特願2000-237312号参照)。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
上述したように、オートクレーブ処理時の内視鏡挿入部の曲がり癖を解消するための内視鏡収納具や、挿入部の曲がり癖が起きないように内視鏡の配置状態を規制する手段を追加する滅菌トレイは有効な手段ではある。しかし、使い勝手に関しては以下のような課題があった。
【0007】
その課題の一つは、前記内視鏡収納具の場合、オートクレーブ装置に内視鏡を設置する時に、その都度、内視鏡収納具を準備し、これに内視鏡を設置するという手間が発生するのと、ユーザーが前記内視鏡収納具を無くさないように管理しなければならず、管理上の手間がかかることである。
【0008】
第2の課題は、滅菌トレイに曲がり癖が起きないように内視鏡の配置を規制する手段を追加する方式である場合、内視鏡専用の滅菌トレイを個々に準備する必要があり、ユーザーにはコスト的な負担を受けなければならない。更に、オートクレーブ処理を行う毎に、前記適合した滅菌トレイを選択してこれに内視鏡を装着しなければならず、煩雑で多くの手間がかかることである。
【0009】
これらの課題を解決する手段として、オートクレーブ装置のチャンバー内に、前記内視鏡挿入部の曲がり癖を解消するための補助具や、内視鏡の配置を規制する保持手段を設置(固定)する方式がある。
【0010】
しかし、この方式ではチャンバー本体の高熱がこれらの補助具等を介して内視鏡の樹脂部材に伝達され、内視鏡の樹脂部材を変形させてしまうおそれがあった。ユーザーにとって、負担が多く、更なる改善が望まれるとろであった。
【0011】
本発明は、これらの課題に着目してなされたもので、その目的とするところは、オートクレーブ装置のチャンバー内に設置しても、その配置規制手段等により熱的悪影響を受け難く、ユーザーの使い勝手を向上し、さらにコスト的負担も低減し得る内視鏡を提供することにある。
【0012】
【課題を解決するための手段】
請求項1に係る発明は、高圧蒸気滅菌処理を受ける内視鏡において、高圧蒸気滅菌装置におけるチャンバー内に内視鏡を配置するための内視鏡保持手段に接触する軟性部分を他の軟性部分よりも熱伝導率の低い熱伝導部材で構成したことを特徴とする内視鏡である。
【0014】
【発明の実施の形態】
(第1の実施形態)
図1〜図5を参照して本発明の第1の実施形態に係る高圧蒸気滅菌装置を説明する。
【0015】
図1は高圧蒸気滅菌装置(以下、オートクレーブ装置と呼ぶ)全体の概略的な構成を示す。このオートクレーブ装置本体1には被滅菌物を挿入(設置)するためのチャンバーを形成する高圧容器(以下、チャンバー本体と呼ぶ)2が設けられ、前記チャンバー本体2の前面にはそのチャンバーの気密性を保ち、被滅菌物の出し入れを行う際に開閉するためのチャンバー用蓋4が設けられている。
【0016】
前記チャンバー本体2には高圧蒸気滅菌(以下、オートクレーブ)を行う場合に使用する高圧蒸気を生成する蒸気発生装置5が設けられている。この蒸気発生装置5は図1(a)に示す給水用タンク6に接続され、また、図1(b)に示す給蒸管路7を経由してチャンバー本体2に接続されている。
【0017】
また、前記オートクレーブ装置本体1には真空ポンプ8が排気管路9を経由してチャンバー本体2に接続されている。そして、この真空ポンプ8はオートクレーブ処理を行う前にチャンバー本体2内の空気を吸引排出し、チャンバー内を真空にした後に高圧蒸気と置換することにより熱効率を高め、及びオートクレーブ終了後に被滅菌物の乾燥を促進させるために用いられる。
【0018】
このオートクレーブ装置に使用する真空ポンプ8は一般に蒸気を排出することから水封式のポンプが用いられる。このため、前記真空ポンプ8の動作に必要な水を供給するための真空ポンプ用タンク11がオートクレーブ装置本体1の中に搭載されている。
【0019】
さらに、オートクレーブ処理工程にて滅菌工程が終了したとき、チャンバー本体2内の蒸気を排蒸管路12を経由してチャンバー本体2の外に排出するが、このようにして排出する蒸気は非常に高温であるため、ある程度冷却しなければならず、そのための蒸気冷却用の排蒸用タンク13がオートクレーブ装置本体1の中に搭載されている。
【0020】
その他、各ユニットの制御を行うための制御基板、各種電磁弁、温度センサ、安全弁など多くの部品を使用しているが、ここではそれらの説明を省略する。
【0021】
ここで、オートクレーブ装置の全体的な動作を、予め説明しておく。最初に、被滅菌物をチャンバー本体2のチャンバー内に設置し、チャンバー用蓋4を確実に閉める。次に、滅菌開始スイッチ(図示無し)をオンすると、真空ポンプ8が動作し、前記チャンバー本体2のチャンバー内の空気を排出する。このように空気を排出するのは、余分な空気がチャンバー内に残留していると、高圧蒸気が確実にチャンバー内及び被滅菌物に接触しない部分(コールドスポット)が発生することによる滅菌不良を防止するためである。
【0022】
前記チャンバー本体2のチャンバー内が真空(−0.1MPa程度)になると、前記蒸気発生装置5よりチャンバー本体2のチャンバー内へ高圧蒸気を供給する。そして、チャンバー本体2のチャンバー内に蒸気が適度に供給され、チャンバー内部及び被滅菌物の温度が例えば滅菌条件である135℃に達すると、滅菌タイマ(図示なし)が動作し、例えば135℃で10分間の滅菌工程が運転される。この過程で、チャンバーの内壁温度は約140℃近くまで温度上昇する。
【0023】
10分間の滅菌工程が終了すると、次に排蒸管路12を経由してチャンバー内の蒸気が排蒸用タンク13に排出される。さらに、被滅菌物を乾燥させるために前記真空ポンプ8が再度稼動する。これらの乾燥工程が終了すると、被滅菌物が自然冷却若しくは強制冷却され、すべての工程が完了する。
【0024】
次に、オートクレーブ装置において、チャンバー本体2のチャンバー内に被滅菌物である内視鏡を所定の形態で設置する内視鏡保持手段について説明する。ここでの内視鏡保持手段は、チャンバー本体2のチャンバー内に被滅菌物である内視鏡を縦方向(吊り下げ)に設置する形式のものである。
【0025】
すなわち、図2に示すように、前記チャンバー本体2のチャンバー内における鉛直な奥内壁(斜線を付した部分)には内視鏡保持手段としての複数のフック21が設けられている。各フック21は前記被滅菌物である内視鏡20の形状を崩さない自然な状態で内視鏡20を吊り下げるように、内視鏡20の所定の配置形状に合わせて内視鏡20の異なる複数の部分をそれぞれ受け止めるように配置されている。
【0026】
フック21の配置形態の一例を図3に示す。この場合、フック21は3個所に設けられている。上側に1つと、その下側において水平方向に離れた2つのフック21が設けられている。そして、内視鏡20の挿入部20aを丸めて、この部分を上側のフック21に掛け、内視鏡20のライトガイドチューブ20bを丸めて、この部分を下側の2つのフック21に掛けて内視鏡20全体を吊る配置形態に規制するようになっている。
【0027】
この内視鏡20全体を吊る配置形態によれば、内視鏡20の挿入部20aはその先端から約700mmくらいまでの部分が略直線化されており、このため、オートクレーブ時の高温下でも曲がり癖が付きにくい配置形態になっている。
【0028】
オートクレーブ装置により被滅菌物である内視鏡20をオートクレーブ処理する場合、内視鏡20は図3に示すように前記チャンバー本体2のチャンバー内において、フック21に掛けられ、内視鏡20の形状を崩さない自然な状態で吊り下げられる。
【0029】
このオートクレーブ装置により、オートクレーブ滅菌される内視鏡20は挿入部20aとライトガイドチューブ20bが軟性部を有し、この部分を丸めて、チャンバー本体2のチャンバー内のフック21に掛けられ、吊り下げられる。
【0030】
図4で示す斜線部分はこの内視鏡20を保持するためのフック21が接触する部分を示し、前記接触部分は他の部分よりも熱伝導率が低い構造とした低熱伝導部23となっている。この低熱伝導部23は例えば図5に示すように熱伝導率が低い部材24を外周に組み込んで構成されている。さらに、前記フック21が接触する部分以外の挿入部20aとライトガイドチューブ20bの軟性部にも同様な低熱伝導部材を組み込んだ低熱伝導部25が設けられている。
【0031】
図5は内視鏡20の挿入部20aの軟性部(可撓管部)の構造を示した断面図であり、この内部には内視鏡的処置を行う場合の処置具を挿入し、かつ体内の汚物を吸引するための吸引チャンネル31、内視鏡先端に照明光を供給するためのライトガイド32、体内に送気・送水を行うための送気・送水チャンネル33及び挿入部先端部分を湾曲させるためのアングルワイヤー34等が挿通されている。また、この外装は一般にポリウレタン樹脂で構成されていたが、ここではポリウレタン樹脂の代わりに、低熱伝導部材としての発泡性ポリウレタン樹脂35を外装部材に使用している。前記発泡性ポリウレタン樹脂35はこれまで用いられてきたポリウレタン樹脂に比べ、熱伝導性が低い。
前記ライトガイドチューブ20bの低熱伝導部25も低熱伝導部材としての発泡性ポリウレタン樹脂35を外装部材に使用している。
【0032】
このように内視鏡20は内視鏡保持手段に接触する軟性部分を他の軟性部分よりも熱伝導率の低い熱伝導部材で構成して低熱伝導処理が施されている。従って、この内視鏡20をオートクレーブ滅菌する場合、低熱伝導部23,25をフック21に掛けてチャンバー本体2内に内視鏡20を所定の形に設置する。
【0033】
そして、前記オートクレーブ装置の運転が開始されると、チャンバー本体2のチャンバー内に高圧蒸気が供給される。チャンバー内に蒸気が適度に供給され、滅菌チャンバーの内部及び被滅菌物である内視鏡20の温度が、例えば滅菌条件である135℃に達する。そして、このまま、例えば10分間の滅菌工程を持続する。この過程で、チャンバーの内壁温度は約140℃近くまで温度上昇する。この熱はフック21を通じて内視鏡20に伝わるが、フック21には内視鏡20の低熱伝導部25が掛けられているので、その熱は内視鏡20の本体にそのまま直接に伝わることがなく、内視鏡20の本体は略135℃に近い温度までしか上昇がない。
【0034】
このように、内視鏡20をオートクレーブ装置内に設置し、滅菌工程をスタートさせると、チャンバーの内壁温度は約140℃近くまで温度上昇するが、内視鏡20は低熱伝導部23,25でフック21を受けているので、前記フック21からチャンバー内壁の熱が内視鏡20の本体に直接伝わることがなく、略135℃に近い温度までしか上昇しない。従って、内視鏡20に熱的なストレスを与えずにオートクレーブ滅菌を行うことが可能である。
【0035】
したがって、滅菌工程中に過剰な熱が、内視鏡20の配置を規制する内視鏡保持手段を介して内視鏡20の本体に伝達されることがない。このため、内視鏡20を劣化(変形、溶解など)させないで滅菌することができる。また、内視鏡保持手段を用いて、内視鏡20をオートクレーブ装置のチャンバー内に容易に設置することができる(工数の削減)ため、簡便に内視鏡20を滅菌処理できる。
【0036】
さらには、内視鏡20の挿入部20aやライトガイドチューブ20bの軟性部の複数の場所に前記低熱伝導部材で構成された低熱伝導部25を設けることにより、オートクレーブ処理時に発生する可能性のある、内視鏡の熱的な劣化(熱変形)をさらに低減することが可能になる。これによれば、配置規制手段としてのフック21等との接触の有無に拘わらず、内視鏡本体の極端な熱的変形を抑制することができる。
【0037】
さらに、従来例のような、オートクレーブ時の内視鏡の挿入部の曲がり癖を極力防止するための特別な設置規制部材や専用滅菌トレイ等の部材が不要であり、ユーザーの費用負担も低減できる。
【0038】
(第2の実施形態)
図6は本発明の第2の実施形態を示し、前記外装部材であるポリウレタン樹脂35の代わりに、低熱伝導部25の外装部材にチューブ充填部材36を使用したものである。このチューブ充填部材36は樹脂の中に空気層を構成するチューブ37がインサートされており、従来のポリウレタン樹脂に比べ、熱伝導性が低い。これらの材料や形態は一例であり、メッシュ部材(接触面積が小さい部材)、断熱材(ガラスウール、空気など)を使用することが可能である。
【0039】
(第3の実施形態)
前述した実施形態でのオートクレーブ装置ではチャンバー本体2のチャンバー内において、フック21に掛けて内視鏡20を吊り下げ、内視鏡20を規制配置するようにしたが、本実施形態ではチャンバー本体2内に被滅菌物である内視鏡20を水平面状に載置して設置するようにした。従って、チャンバー本体2は図7で示すように平面形状のもので良い。
【0040】
本実施形態では台座41を用いて内視鏡20の挿入部20aやライトガイドチューブ20bの軟性部の曲がり癖が極力起きないように、チャンバー本体2内に内視鏡20を水平面状に載置して設置するようにしている。各台座41は内視鏡20の配置を規制する位置に、4〜5個所に設けられている。
【0041】
図8は内視鏡20の配置状態の平面図であり、この配置によれば、内視鏡挿入部(内視鏡先端から約700mmくらいまでの部分)は略直線化されており、オートクレーブ時の高温下でも曲がり癖が付きにくい配置になっている。
【0042】
さらに、本実施形態の内視鏡20にあっては図9に示すように、前記台座51が接触する部分以外の挿入部20aやライトガイドチューブ20bの軟性部にも同様な低熱伝導部材を組み込んだ低熱伝導部38が設けられている。つまり、前記低熱伝導部材を内視鏡と台座が接触する部分だけに使用するのではなく、他の軟性部に適用することも十分が可能である。
その他の構成及び作用効果は前述した第1の実施形態に同じである。
【0043】
【発明の効果】
以上説明したように本発明によれば、内視鏡をオートクレーブ装置のチャンバー内部に設置してもオートクレーブ処理時のチャンバー本体からの熱伝導による内視鏡の劣化(変形)の悪影響を与えず、かつユーザーの使い勝手を向上し、さらに、コスト的負担も低減できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の第1の実施形態に係る高圧蒸気滅菌装置を示し、(a)はその高圧蒸気滅菌装置の正面図、(b)はその高圧蒸気滅菌装置の側面図である。
【図2】本発明の第1の実施形態に係る高圧蒸気滅菌装置におけるチャンバー本体の斜視図である。
【図3】本発明の第1の実施形態に係る高圧蒸気滅菌装置のチャンバー本体におけるフックの配置形態を示す正面図である。
【図4】本発明の第1の実施形態に係る内視鏡の配置形状での平面図である。
【図5】本発明の第1の実施形態に係る内視鏡の低熱伝導部の断面図である。
【図6】本発明の第2の実施形態に係る内視鏡の低熱伝導部の断面図である。
【図7】本発明の第3の実施形態でのオートクレーブ装置のチャンバー本体の斜視図である。
【図8】本発明の第3の実施形態でのオートクレーブ装置のチャンバー本体に内視鏡を配置した平面図である。
【図9】本発明の第3の実施形態に係る他の形態の内視鏡の配置形状での平面図である。
【符号の説明】
20…内視鏡
20a…挿入部
20b…ライトガイドチューブ
21…フック
23…低熱伝導部
25…低熱伝導部
Claims (1)
- 高圧蒸気滅菌処理を受ける内視鏡において、高圧蒸気滅菌装置におけるチャンバー内に内視鏡を配置するための内視鏡保持手段に接触する軟性部分を他の軟性部分よりも熱伝導率の低い熱伝導部材で構成したことを特徴とする内視鏡である。
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