以下、添付の図面を参照しつつ本発明の実施形態について説明する。以下、本明細書中においては、圧縮機に吸入されるべき冷媒の密度を「圧縮機の吸入密度」、膨張機に吸入されるべき冷媒の密度を「膨張機の吸入密度」、圧縮機から吐出された冷媒の温度を「吐出温度」、圧縮機に吸入されるべき冷媒の温度を「吸入温度」と略記する。
(第1実施形態)
図1は、本実施形態にかかる冷凍サイクル装置の構成図であり、特に、給湯機に適用された例を示している。図1に示すように、冷凍サイクル装置100は、冷媒を圧縮する圧縮機11と、圧縮機11で圧縮された冷媒を冷却する放熱器12と、放熱器12で冷却された冷媒を膨張させるとともに、膨張する冷媒から動力を回収する膨張機13と、膨張機13で膨張した冷媒を蒸発させる蒸発器14とを備えている。圧縮機11、放熱器12、膨張機13および蒸発器14は、この順番で冷媒が循環するように冷媒配管によって相互に接続されており、冷媒回路Aを構成している。冷媒回路Aには、CO2などの冷媒が充填されている。実線矢印が冷媒の流れ方向を示している。被加熱流体である水は、放熱器12において加熱され、給湯回路Bに設けられた貯湯タンク16に貯められる。破線矢印が水(または湯)の流れ方向を示している。
圧縮機11と、膨張機13と、圧縮機11と膨張機13との間に配置されたモータ19と、圧縮機11、膨張機13およびモータ19を連結するシャフト18は、流体機械10を構成する。圧縮機11と膨張機13とは、圧縮機13を駆動するモータ19に対して一軸に連結されている。モータ19がシャフト18を駆動することにより、圧縮機11が作動する。膨張機13は、膨張する冷媒から動力を回収してシャフト18に与え、モータ19によるシャフト18の駆動をアシストする。圧縮機11と膨張機13とは、シャフト18で連結されているので回転数が一致する。圧縮機11および膨張機13には、スクロール式、レシプロ式、ロータリ式などの容積式の流体機構を採用できる。シャフト18は、単一の部品からなっていてもよいし、複数の部品からなっていてもよい。
放熱器12は、冷媒流路12aと水流路12bとを含む水熱交換器である。放熱器12と貯湯タンク16との間における水流路12bには、ポンプ15が設けられている。ポンプ15は、放熱器12で冷媒と熱交換するべき水を放熱器12に送る。ポンプ15の回転数に応じて、放熱器12を流通する水の量が変化する。
蒸発器14は、フィンチューブ型熱交換器に代表される空気熱交換器である。蒸発器14に隣接する形でファン17が設けられている。ファン17は、蒸発器14で冷媒と熱交換するべき空気(被冷却流体)を蒸発器14に供給する。ファン17の回転数に応じて、蒸発器14を流通する空気の量が変化する。なお、冷凍サイクル装置100が空気調和装置として利用される場合には、放熱器12も空気熱交換器で構成され、被加熱流体が室内または室外の空気となる。
冷凍サイクル装置100は、さらに、放熱器12を通過した冷媒の一部または全部が膨張機13をバイパスして蒸発器14に導かれるように、膨張機13の吸入管路に始端FEが接続され、膨張機13の吐出管路に終端DEが接続されたバイパス回路20を備えている。バイパス回路20上には、開度を調整可能なバイパス弁21が配置されている。バイパス回路20の始端FEよりも冷媒の流れ方向下流側における膨張機13の吸入管路には、開度を調整可能な予減圧弁22が設けられている。
バイパス弁21は、バイパス回路20を流通する冷媒を断熱膨張させるとともに、開度を制御することによりバイパス回路20を流通する冷媒の量を増減できる流量調整弁でありうる。予減圧弁22は、膨張機13に吸入されるべき冷媒を断熱膨張させるとともに、開度を制御することにより膨張機13に吸入される冷媒の流量を増減できる流量調整弁でありうる。バイパス弁21および予減圧弁22は、全閉のときは冷媒の通過を遮断する一方、全開のときは冷媒を膨張させることなく通過させる機能を持った流量調整弁であり、このような流量調整弁として、一般的な電動膨張弁を用いることができる。図2のモリエル線図に示すように、冷媒は、予減圧弁22において点bから点cに等エンタルピー膨張し、膨張機13において点cから点dに等エントロピー膨張する。点cと点dのエンタルピー差Wが回収動力に相当する。バイパス回路20を経由する冷媒は、点bから点gまで等エンタルピー膨張する。
冷凍サイクル装置100は、バイパス弁21の開度を制御する制御器としてバイパス弁制御器41を備え、予減圧弁22の開度を制御する制御器として予減圧弁制御器42を備え、それらの制御器41,42に命令(制御信号)を与える制御器として主制御器43を備えている。バイパス弁制御器41および予減圧弁制御器42は、それぞれ、主制御器43に接続されている。主制御器43には、各種温度センサ30〜34の検知信号が入力される。ユーザーによる操作信号や温度センサ30〜34の検知信号に基づき、主制御器43は、バイパス弁制御器41および予減圧弁制御器42に予め定められた命令を与える。また、主制御器43は、図示しないモータ制御器(インバータユニット)に命令を与え、モータ19の回転数を制御する。
主制御器43に検知信号を送る温度センサ30〜34は、外気温度センサ30、入水温度センサ31、吐出温度センサ32、蒸発温度センサ33および吸入温度センサ34を含む。外気温度センサ30は、蒸発器14の風上に配置されており、ファン17によって蒸発器14に送られる空気の温度Ta、つまり、外気温度Taを計測する。入水温度センサ31は、放熱器12の入口近傍の水流路12bに配置されており、ポンプ15によって放熱器12に送られる水の温度Tg、つまり、入水温度Tgを計測する。吐出温度センサ32は、圧縮機11と放熱器12との間における冷媒回路上に配置されており、圧縮機11から吐出された冷媒の温度Td(吐出温度Td)を計測する。蒸発温度センサ33は、蒸発器14の冷媒流路上に配置されており、冷媒の蒸発温度Teを計測する。蒸発温度Teを外気温度Taから推定する場合には、蒸発温度センサ33を省略してもよい。また、蒸発器14の風下に温度センサを設け、蒸発器14で冷却された空気の温度から蒸発温度Teを推定するようにしてもよい。吸入温度センサ34は、蒸発器14と圧縮機11との間における冷媒回路上に配置されており、圧縮機11に吸入されるべき冷媒の温度Ts(吸入温度Ts)を計測する。吸入温度Tsから蒸発温度Teを減じた値は、冷凍サイクルの過熱度SHに一致する。主制御器43は、これらの温度センサ30〜34の検知信号を必要に応じて取得する。
なお、図1においては、主制御器43、バイパス弁制御器41および予減圧弁制御器42を別々のブロックで記述しているが、このことは、各制御器が独立した部品であることを必ずしも意味しない。各制御器が実現するべき機能は、複数の制御器に兼用されるマイクロコンピュータまたはDSP(digital signal processor)によって提供されるものであってもよい。つまり本明細書において、「制御器」という用語は、物理的な構成に限定解釈されるものではなく、コンピュータプログラムによって実現されるべき機能を特定するものとしても用いられる。場合によっては、マイクロコンピュータを含まない論理回路によって各制御器が構成されていてもよいし、マイクロコンピュータと論理回路の組み合わせによって各制御器が構成されていてもよい。
次に、冷凍サイクル装置100の運転時の動作について説明する。冷凍サイクル装置100の運転開始契機の発生に応じて、主制御器43は、各種検知値を用いてモータ19の目標回転数を算出する。各種検知値としては、外気温度Ta、入水温度Tg、沸上温度などを例示することができる。沸上温度は、貯湯タンクに貯めるべき湯の温度の目標値であり、例えば、使用者が選択する使用可能湯量や季節に応じて設定される。主制御器43で算出された目標回転数は、モータ19を駆動するためのインバータユニット(図示せず)に与えられる。インバータユニットは、与えられた目標回転数でモータ19が動作するように、モータ19への給電を制御する。
さらに、主制御器43は、上述した各種検知値を用いてバイパス弁21および予減圧弁22の開度を算出する。算出された目標開度は、各制御器41,42に与えられる。バイパス弁制御器41は、与えられた目標開度となるようにバイパス弁21を制御する。予減圧弁制御器42は、与えられた目標開度となるように予減圧弁22を制御する。バイパス弁21および予減圧弁22の開度制御の詳細は後述する。
図2に示すように、圧縮機11で圧縮された冷媒は、点aで示される高温高圧状態となる。CO2冷媒の場合、冷凍サイクルの高圧は臨界圧力を超える。ただし、本発明は、冷凍サイクルの高圧側で超臨界状態とならない冷媒にも適用されうる。点aの冷媒は、放熱器12の冷媒流路12aを流れる際に、水流路12bを流れる水に放熱し、点aから点bまで冷却される。放熱器12から流出した冷媒は、予減圧弁22で点bから点cまで減圧された後に、膨張機13に吸入される。
膨張機13に吸入された冷媒は、さらに膨張し、点dで示される低温低圧の気液二相状態となる。膨張機13で回収された冷媒の膨張時の圧力エネルギーは、シャフト18の回転力に変換され、モータ19の負荷を軽減する。冷媒の膨張時の圧力エネルギーを動力として回収し、圧縮機11の補助動力として利用することにより、冷凍サイクル装置100のCOPが向上する。バイパス弁21が開状態である場合には、一部の冷媒がバイパス回路20に流れ、バイパス弁21で点bから点gへと等エンタルピー膨張し、膨張機13で膨張した冷媒と合流する。
膨張機13およびバイパス弁21で膨張した冷媒は、蒸発器14に送られる。蒸発器14において、冷媒は、ファン17によって送り込まれた空気によって加熱され、乾き度の大きい気液二相または気相に変化する。点eと点fとの温度差である過熱度SHが所定値(例えば5K)となるように、予減圧弁22および/またはバイパス弁21の開度制御を行うことができる。蒸発器14を流出した冷媒は、再び、圧縮機11に吸入される。
給湯回路Bでは、ポンプ15の働きにより貯湯タンク16の底部から放熱器12の流体流路12bへ送られた水が、放熱器12の冷媒流路12aを流れる冷媒により加熱され、高温の湯となる。湯は、貯湯タンク16の頂部から貯められる。このようなサイクルを繰り返すことにより、冷凍サイクル装置100は、給湯機として利用できる。
次に、バイパス弁21および予減圧弁22の開度制御について詳しく説明する。本実施形態の制御方法では、吐出温度Td、外気温度Taおよび入水温度Tgの検知結果に基づいて、バイパス弁21および予減圧弁22の開度制御を行う。高価かつ耐久性が低い圧力センサを使用しないので、コスト低減に有利であるとともに信頼性も高い。さらに、バイパス弁21および予減圧弁22から選ばれる一方の弁の制御にフィードバック制御を適用し、他方の弁の制御にフィードフォワード制御を適用する。これにより、一方の弁の制御と他方の弁の制御との相互干渉を回避し、冷凍サイクル装置100の動作安定性を高めている。
<第1の制御方法>
運転開始契機を取得することを条件として、主制御器43は、図3のフローチャートに示す制御を実行する。給湯機においては、例えば、貯湯タンク16の湯量が一定レベルよりも低下することが運転開始契機となる。空気調和装置であれば、ユーザーによって運転スイッチがオンされることが運転開始契機となる。
運転開始時において、主制御器43は、バイパス弁21および予減圧弁22を予め定められた始動開度に調節する始動制御を行う。その後、冷凍サイクルが安定すると、主制御器43は、バイパス弁21および予減圧弁22を、外気温度Taおよび入水温度Tgに基づいて予め定められた初期開度に調節する初期化処理を行う。例えば、中間期(春秋)・低入水温度条件において、第1の制御方法では、バイパス弁21の初期開度はゼロ、つまり、バイパス弁21を全閉とし、バイパス回路20に冷媒を流さないようにしている。予減圧弁22の開度は、COPが最高になると予測される初期開度に調節する。言い換えれば、予減圧弁22をこのような初期開度とすることにより、中間期(春秋)・低入水温度条件において、最高のCOPが得られるように、圧縮機11と膨張機13との容積比等の設計値が定められているものとする。
さらに、予減圧弁22の開度は、圧縮機11の吐出温度Tdが適切な値となるように、S1〜S5の処理で調節される。このようにすれば、必要な吐出温度Tdを確保しつつ、COPを向上させることができる。
予減圧弁22の初期開度について詳しく説明する。本実施形態の冷凍サイクル装置100のCOPは、外気温度Ta(言い換えれば季節条件)および入水温度Tg(言い換えれば貯湯タンク16に貯められた湯の温度分布状態)に大きく左右されることが分かっている。そこで、バイパス回路20の流量がゼロ、かつ必要な加熱能力を確保することができる圧縮機11の運転条件(例えばモータ19の回転数で60Hz)で、外気温度Taと、入水温度Tgと、COPが最高となる予減圧弁22の初期開度との対応関係を実験や計算機シミュレーションで予め調査するとともに、調査結果をデータベースの形でROMなどの記憶装置に格納しておく。必要に応じて記憶装置にアクセスし、外気温度Taおよび入水温度Tgを検索キーとして用いてデータベースを参照することにより、主制御器43は、COPが最高になると予測される予減圧弁22の初期開度を直ちに見出すことが可能となる。データベースは、入水温度Tgおよび/または外気温度Taと、COPが最高になると予測される初期開度との対応関係を表したものであってもよい。データベースに代えて、入水温度Tgおよび/または外気温度Taを入力変数とする演算式を制御プログラムに組み込んでもよい。この初期開度は、暫定的な開度であってもよい。なぜなら、予減圧弁22の開度は、吐出温度Tdを制御量とするフィードバック制御で微調整するからである。
予減圧弁22の開度を初期開度に合わせた後、主制御器43は、吐出温度センサ32の検知信号を取得して吐出温度Tdを見出す(S1)。次に、目標吐出温度と、実際の吐出温度Tdとが一致するかどうかを判断する(S2)。目標吐出温度は、吐出温度Tdの目標値であり、主として、貯湯タンク16に貯めるべき湯の温度(沸上温度)に応じて定められる。給湯機においては、使用者が選択する使用可能湯量や季節に応じて設定される沸上温度(例えば、最大使用可能湯量かつ冬期の条件で90℃)まで水を加熱する必要がある。また、目標吐出温度は、外気温度Tdや入水温度Tgに応じて、COPを向上させる目的で補正されうる。したがって、本実施形態において、目標吐出温度は、(沸上温度+10K+入水温度Tdや外気温度Tgに応じた補正値)に設定される。また、目標吐出温度に一定の幅を持たせる、つまり、不感帯を設定することにより、予減圧弁22の開閉が必要以上に行われることを回避できる。
なお、空気調和装置を想定した場合、圧縮機11の吐出温度Tdは暖房時における室内機の吹き出し温度に影響するが、給湯機における吐出温度Tdほどの厳密性は要求されない。したがって、空気調和装置における目標吐出温度は、外気温度や内気温度に応じて、COPが最高になると予測される値に定められるものであってもよい。
実際の吐出温度Tdが目標吐出温度に一致しない場合、S3に進み、目標吐出温度と実際の吐出温度Tdとの大小を比較する。目標吐出温度と実際の吐出温度Tdとの偏差に基づいて予減圧弁22の操作量を算出する。予減圧弁22の操作量は、例えば公知のPI制御により算出することができる。実際の吐出温度Tdが目標吐出温度よりも小さい場合、S4に進み、予減圧弁制御器42に対し、予減圧弁22の開度を縮小するべき旨の制御信号を出力する。予減圧制御器42は、制御信号の取得に応じて、予減圧弁22の開度を縮小する制御を行う。予減圧弁22の開度を縮小すると、膨張機13の吸入密度が小さくなり、吐出温度Tdが上昇する。
膨張機13の吸入密度が小さくなると、吐出温度Tdが上昇する理由について説明する。
圧縮機11の吸入容積(押しのけ容積)をVC、圧縮機11の吸入密度をDC、圧縮機11の単位時間あたりの回転数をRC、膨張機13の吸入容積(押しのけ容積)をVE、膨張機13の吸入密度をDE、膨張機13の単位時間あたりの回転数をREとする。バイパス回路20の流量がゼロの場合、圧縮機11と膨張機13の質量流量は等しいので、VC×DC×RC=VE×DE×RE、すなわち、(VC/VE)×(RC/RE)=(DE/DC)という関係が成立する。
容積比(VC/VE)は流体機械10の設計値である。流体機械10において、圧縮機11の回転数RCと膨張機13の回転数REは常に等しい。したがって、密度比(DE/DC)が常に一定となるように冷凍サイクルがバランスする。膨張機13の吸入密度DEの低下にともなって、圧縮機11の吸入密度DCも低下する。圧縮機11の吸入密度DCが低下すると、圧縮機11の吸入温度Tsが上昇し、結果として、吐出温度Tdが上昇する。
図3に戻って説明を続ける。実際の吐出温度Tdが目標吐出温度を超えている場合、S5に進み、予減圧弁制御器42に対し、予減圧弁22の開度を拡大するべき旨の制御信号を出力する。予減圧制御器42は、制御信号の取得に応じて、予減圧弁22の開度を拡大する制御を行う。予減圧弁22の開度を拡大すると、吐出温度Tdは低下する。
しかしながら、膨張機13の吸入密度DEが非常に小さい状況下(主に夏期)では、予減圧弁22の開度が全開となり、それ以上、膨張機13の吸入密度DEを予減圧弁22で調整できなくなる可能性がある。膨張機13の吸入密度DEが過小になると、吐出温度Tdを適正な範囲に保つことが困難となるので好ましくない。したがって、そのような状況を考慮し、予減圧弁22の制御と併せて、図4のフローチャートで示されるバイパス弁21の制御を実行する。
図4に示すフローチャートのS11において、主制御器43は、外気温度センサ30の検知信号を取得して外気温度Taを見出す。S12において、入水温度センサ31の検知信号を取得して入水温度Tgを見出す。S13において、外気温度Taおよび入水温度Tgに基づき、COPが最高になると予測されるバイパス弁21の開度(目標開度)を算出する。外気温度Taおよび入水温度Tgから選ばれる一方のみに基づいて、バイパス弁21の目標開度を算出してもよい(他の方法でも同様とする)。バイパス弁21の目標開度を算出するための演算式は、予減圧弁22の初期開度の場合と同様の手法で準備することができる。例えば、予減圧弁22を全開とする条件で、入水温度Tg(および/または外気温度Ta)と、COPと、バイパス弁21の開度との対応関係を実験やシミュレーションで調査し、調査結果に基づいて、バイパス弁21の開度を算出するための演算式を策定することができる。
図5Aは、冷凍サイクル装置100の任意の運転条件おける、膨張機13の吸入密度DEと外気温度Taとの関係を示している。図5Bは、膨張機13の吸入密度DEと入水温度Tgとの関係を示している。図5Aから分かるように、外気温度Taが高くなるにつれて、膨張機13の吸入密度DEは小さくなる。図5Bから分かるように、入水温度Tgが高くなるにつれて、膨張機13の吸入密度DEは小さくなる。
さらに、膨張機13の吸入密度DEとバイパス回路20の流量との間には、次のような関係がある。バイパス回路20の単位時間あたりの質量流量をGbとすると、VC×DC×RC=VE×DE×RE−Gb、すなわち、(VC/VE)×(RC/RE)=(DE/DC)−Gb/(VE×RE×DC)という関係が成立する。先に説明したように、(VC/VE)は設計値であり、RC=REである。したがって、(DE/DC)−Gb/(VE×RE×DC)が常に一定となるように冷凍サイクルがバランスする。バイパス回路20の流量Gbをゼロよりも大きくすれば、外気温度Taおよび入水温度Tgが高く、膨張機13の吸入密度DEが小さい場合(主に夏期)であっても、冷凍サイクルのバランスが保たれ、円滑な運転を実現することができる。つまり、予減圧弁22を全開にしなければならないほど膨張機13の吸入密度DEが小さい場合には、バイパス弁21を開いてバイパス回路20に冷媒を流せば、必要な吐出温度Tdを確保できるとともに、COPの低減を抑制できる。
図5Aによれば、膨張機13の吸入密度DEが過小になることと、外気温度Taが所定温度よりも高くなることとは、等価であると考えることができる。また、図5Bによれば、膨張機13の吸入密度DEが過小になることと、入水温度Tgが所定温度よりも高くなることとは、等価であると考えることができる。したがって、バイパス弁21を開放する制御は、(a)外気温度Taが所定温度TH1よりも高い場合、(b)入水温度Tgが所定温度TH2よりも高い場合、もしくは、(c)外気温度Taが所定温度TH1よりも高く、かつ入水温度Tgが所定温度TH2よりも高い場合、に実施されるようにしてもよい。
すなわち、外気温度Ta(被冷却流体の温度)が所定温度TH1を超えること、および/または、入水温度Tg(被加熱流体の温度)が所定温度TH2を超えることを条件として、バイパス弁制御器41により、バイパス弁21の開度を、それらの条件を満たす前の開度(例えば全閉)よりも拡大する制御が行われるようにしてもよい。
例えば、図6Aに示すように、外気温度Taが所定温度TH1以下の場合にはバイパス弁21の開度をゼロ(全閉)に保持し、外気温度Taが所定温度TH1を超えたらバイパス弁21を開放し、外気温度Taの上昇に応じてバイパス弁21の開度を拡大する制御を行う。つまり、外気温度Taが高いほど、バイパス弁21の開度を大きくする。あるいは、図6Bに示すように、入水温度Tgが所定温度TH2以下の場合にはバイパス弁21の開度をゼロ(全閉)に保持し、入水温度Tgが所定温度TH2を超えたらバイパス弁21を開放し、入水温度Tgの上昇に応じてバイパス弁21の開度を拡大する制御を行うようにしてもよい。つまり、入水温度Tgが高いほどバイパス弁21の開度を大きくする。さらに、外気温度Taと入水温度Tgの和が所定値TH3を超えた場合に、バイパス弁21を開放する制御を行うようにしてもよい。所定温度TH1,TH2は、予減圧弁22の開度がほぼ全開となるときの値として、実験またはシミュレーションにて予め求めておくことができる。
なお、図6Aおよび図6Bは、バイパス弁21の開度が連続的に変化することを必ずしも意味しない。例えば、ステップモータで開度を制御する電動膨張弁をバイパス回路21として用いる場合、開度の変化は、図6A,図6Bのような連続的にならず、段階的になる。このことは、予減圧弁22(図12A,図12B参照)にも当てはまる。
図4に戻って説明を続ける。バイパス弁21の目標開度を算出した後、バイパス弁21の現在の開度が目標開度に一致するかどうかを判断する(S14)。一致しない場合、主制御器43は、バイパス弁制御器41に対し、バイパス弁21の開度を目標開度に一致させるべき旨の制御信号を出力する(S15)。バイパス弁制御器41は、制御信号の取得に応じて、バイパス弁21の開度を目標開度に調節する制御を行う。
バイパス回路20に冷媒を流すと、冷凍サイクルが変化し、吐出温度Tdも変化するが、図3のフローチャートに示す予減圧弁22の開度制御により、吐出温度Tdは適正値に保たれる。予減圧弁22の開度制御と、バイパス弁21の開度制御とを順次実行することにより、適正な吐出温度Tdを得るとともに、COPを向上させることができる。図3および図4に示す開度制御を必要に応じて、または定期的に実行することにより、バイパス弁21および予減圧弁22の開度は、常に適正開度に保たれる。
なお、外気温度Taは、蒸発器14に流入する冷媒温度で代用してもよい。また、入水温度Tgは放熱器12に流入する冷媒温度で代用してもよい。これらの冷媒温度は、少なからず冷凍サイクルの影響を受けるパラメータであり、これらを用いた制御は厳密にはフィードフォワード制御とはならない。しかしながら、吐出温度Tdや過熱度SHと比較すると、これらの冷媒温度に対する冷凍サイクルの影響は鈍感である。このため、これらの冷媒温度を用いた制御が、吐出温度Tdや過熱度SHを用いた制御と相互に干渉し合い、冷凍サイクル装置の動作安定性が損なわれる可能性は小さい。
また、予減圧弁22の現在の開度が全開となった場合、または最大開度に接近した場合(例えば最大開度の90%)に、バイパス弁21の開度を一定量拡大し、バイパス回路20に一部の冷媒を流すという簡便な方法でも、一定の効果が得られる。
<第2の制御方法>
第2の制御方法は、予減圧弁22の開度制御を、吐出温度Tdに代えて、過熱度SHに基づいて行う点で、第1の制御方法と相違する。過熱度SHを用いているので、予減圧弁22の開度制御がフィードバック制御となる点については変わりがない。第2の制御方法にかかるフローチャートを図7に示す。
主制御器43は、まず、吸入温度センサ34の検知信号を取得して吸入温度Tsを見出す(S21)。次に、蒸発温度センサ33の検知信号を取得して蒸発温度Teを見出す(S22)。吸入温度Tsから蒸発温度Teを減じることにより、過熱度SHを算出する(S23)。
次に、算出した実際の過熱度SHが目標過熱度に一致するかどうかを判断する(S24)。目標過熱度は、COPの向上および液圧縮防止を両立できるように、例えば5K程度に設定されている。目標過熱度には、±1K程度の幅(不感帯)を持たせておくとよい。実際の過熱度SHが目標過熱度に一致しない場合、S25に進み、実際の過熱度SHと目標過熱度との大小を比較する。目標過熱度と実際の過熱度SHとの偏差に基づいて予減圧弁22の操作量を算出する。
実際の過熱度SHが目標過熱度よりも小さい場合、S26に進み、予減圧弁制御器42に対し、予減圧弁22の開度を縮小するべき旨の制御信号を出力する。予減圧制御器42は、制御信号の取得に応じて、予減圧弁22の開度を縮小する制御を行う。予減圧弁22の開度を縮小すると、膨張機13の吸入密度DEが小さくなり、過熱度SHが上昇する。
一方、実際の過熱度SHが目標過熱度よりも大きい場合、S27に進み、予減圧弁制御器42に対し、予減圧弁22の開度を拡大するべき旨の制御信号を出力する。予減圧制御器42は、制御信号の取得に応じて、予減圧弁22の開度を拡大する制御を行う。予減圧弁22の開度を拡大すると、膨張機13の吸入密度DEが大きくなり、過熱度SHが低下する。
過熱度SHは、冷凍サイクルの変化に極めて敏感に反応するので、過熱度SHをフィードバックすることにより、冷凍サイクルの変化に迅速に対応することが可能である。なお、バイパス弁21の開度制御ついては、第1の制御方法で説明した通りであり、こちらについてはフィードフォワード制御が適用される。
<第3の制御方法>
第3の制御方法は、外気温度Taや入水温度Tgに基づいてバイパス弁21の開度制御を行い、吐出温度Tdに基づいて予減圧弁22の開度制御を行う点、すなわち、予減圧弁22の開度制御がフィードバック制御、バイパス弁21の開度制御がフィードフォワード制御となる点については、第1の制御方法と共通である。しかしながら、バイパス弁21の開度が変更された後、一定期間、予減圧弁22の開度制御を、外気温度Taや入水温度Tgに基づいた制御、すなわち、フィードフォワード制御とする点で、第1の制御方法と相違する。第3の制御方法にかかるフローチャートを図8に示す。
図8のフローチャートのS31〜S35では、先に説明した図4のフローチャートのS11〜S15と同じ処理を行う。主制御器43は、外気温度Taおよび入水温度Tgに基づいて、COPが最高になると予測されるバイパス弁21の開度を算出し、算出結果をバイパス弁制御器41に出力する。バイパス弁制御器41は、バイパス弁21の開度を、COPが最高になると予測される目標開度に調節する制御を行う。図6A,図6Bを参照して先に説明したように、外気温度Taが所定温度TH1以下および/または入水温度Tgが所定温度TH2以下の場合には、バイパス弁21の目標開度はゼロ(全閉)となる。
バイパス弁21の開度を調節した後、S36において、予減圧弁22の目標開度を算出する。予減圧弁22の開度は、必要な吐出温度Tdが確保されるようにS38〜S42の処理で微調整するので、S36で算出するべき目標開度は、暫定的な開度であってもよい。予減圧弁22の目標開度としては、第1の制御方法で説明した初期開度を採用することができる。主制御器43は、外気温度Taおよび/または入水温度Tgに基づき、COPが最高となると予測される予減圧弁22の目標開度(初期開度)を算出し、予減圧弁制御器42に対し、予減圧弁22の開度を目標開度に調節するべき旨の制御信号を出力する。予減圧弁制御器42は、予減圧弁22の開度を目標開度に調節する制御を行う。
S34において、バイパス弁21の開度が目標開度に一致すると判断した場合には、S38〜S42の処理を行う。S38〜S42では、図3のフローチャートのS1〜S5と同じ処理を行う。
第3の制御方法の効果を、第1の制御方法との対比として、図9Aおよび図9Bを用いて説明する。図9Aおよび図9Bは、それぞれ、バイパス弁21の開度変化、予減圧弁22の開度変化、および吐出温度Tdの変化を時間軸に沿って模式的に示している。図9Aのように、第1の制御方法では、バイパス弁21の開度が変更された時刻A以降も、予減圧弁22は時刻A以前と同様に、フィードバック制御されている。そのため、吐出温度Tdが大きく変化して、初めて、予減圧弁22の開度は、吐出温度Tdが目標吐出温度となるように変更される。
これに対し、第3の制御方法では、図9Bのように、バイパス弁21の開度が変更された時刻A’の直後において、予減圧弁22は、外気温度Taおよび/または入水温度Tgに基づき、バイパス弁21の開度が変更されたことによる吐出温度Tdの変化を見越して設定された予減圧弁22の目標開度(例えば初期開度)に変更される(図8のフローチャートのS34〜S37)。その後、予減圧弁22の制御は、再び時刻A’以前と同様に、フィードバック制御に戻ることとなる(図8のフローチャートのS38〜S42)。
すなわち、バイパス弁制御器41によりバイパス弁21の開度を変更する制御が行われた場合、予減圧弁制御器42は、外気温度Taおよび/または入水温度Tgに基づくフィードフォワード制御により、予減圧弁22の開度を修正する制御を行うことができる。吐出温度Tdが大きく変化する前に、予減圧弁22の開度を変更することで、バイパス弁21の開度が変更された時刻A’から吐出温度Tdが再び目標吐出温度となる時刻B’までの時間を短縮でき、ひいては冷凍サイクル装置100の動作安定性が高まる。なお、図8のフローチャートによると、S36〜S37の処理は、S35の処理の直後に1回のみ実行されるようになっているが、例えば、時刻A’から一定期間が経過するまで複数回行われるようにしてもよい。
<第4の制御方法>
第4の制御方法は、バイパス弁21の開度制御にフィードバック制御を適用し、予減圧弁22の開度制御にフィードフォワード制御を適用する点で、第1〜第3の制御方法と相違する。第4の制御方法にかかるフローチャートを図10に示す。なお、バイパス弁21および予減圧弁22の開度は、それぞれ、外気温度Taおよび入水温度Tgに基づいて予め定められた初期開度に合わされるものとする。例えば、中間期(春秋)・低入水温度条件において、バイパス弁21の初期開度を開度20%とし、予減圧弁22の初期開度を開度100%(全開)とすることができる。このような初期開度とすることにより、中間期(春秋)・低入水温度条件において、最高のCOPが得られるように、圧縮機11と膨張機13との容積比等の設計値が定められているものとする。
図10のフローチャートに示すように、主制御器43は、吐出温度センサ32の検知信号を取得して吐出温度Tdを見出す(S51)。次に、目標吐出温度と、実際の吐出温度Tdとが一致するかどうかを判断する(S52)。目標吐出温度は、第1の制御方法で説明したように、吐出温度Tdの目標値であり、例えば、前述の沸上温度に応じて定められる。
実際の吐出温度Tdが目標吐出温度に一致しない場合、S53に進み、目標吐出温度と実際の吐出温度Tdとの大小を比較する。目標吐出温度と実際の吐出温度Tdとの偏差に基づいてバイパス弁21の操作量を算出する。実際の吐出温度Tdが目標吐出温度よりも小さい場合、S54に進み、バイパス弁制御器41に対し、バイパス弁21の開度を縮小するべき旨の制御信号を出力する。バイパス弁制御器41は、制御信号の取得に応じて、バイパス弁21の開度を縮小する制御を行う。バイパス弁21の開度を縮小すると、膨張機13に吸入される冷媒の流量が増加し、吐出温度Tdが上昇する。
膨張機13に流入する冷媒の流量が増加すると、吐出温度Tdが上昇する理由について説明する。
先に説明したように、バイパス回路20の単位時間あたりの質量流量をGbとすると、VC×DC×RC=VE×DE×RE−Gb、すなわち、(VC/VE)×(RC/RE)=(DE−Gb/(VE×RE))/DCという関係が成立する。(VC/VE)は設計値であり、RC=REである。したがって、(DE−Gb/(VE×RE))/DCが常に一定となるように冷凍サイクルがバランスする。膨張機13に流入する冷媒の流量が増加する、すなわち、バイパス回路20を流通する冷媒の流量Gbが減少すると、圧縮機11の吸入密度DCが低下する。圧縮機11の吸入密度DCが低下すると、圧縮機11の吸入温度Tsが上昇し、結果として、吐出温度Tdが上昇する。
図10に戻って説明を続ける。実際の吐出温度Tdが目標吐出温度を超えている場合、S55に進み、バイパス弁制御器41に対し、バイパス弁21の開度を拡大するべき旨の制御信号を出力する。バイパス弁制御器41は、制御信号の取得に応じて、バイパス弁21の開度を拡大する制御を行う。バイパス弁21の開度を拡大すると、吐出温度Tdは低下する。
しかしながら、膨張機13の吸入密度DEが非常に大きい状況下(主に冬期)では、バイパス弁21が全閉となり、それ以上、膨張機13に流入する冷媒の流量を増加させることができなくなる。したがって、そのような状況を考慮し、バイパス弁21の制御と併せて、図11のフローチャートで示される予膨張弁22の制御を実行する。これにより、吐出温度Tdの適正化を図るとともに、COPの低下を抑制する。
図11に示すフローチャートのS61において、主制御器43は、外気温度センサ30の検知信号を取得して外気温度Taを見出す。S62において、入水温度センサ31の検知信号を取得して入水温度Tgを見出す。S63において、外気温度Taおよび入水温度Tgに基づき、COPが最高になると予測される予減圧弁22の開度(目標開度)を算出する。予減圧弁22の目標開度を算出するための演算式は、次のようにして準備しておくことができる。例えば、バイパス弁21を全閉とする条件で、入水温度Tg(および/または外気温度Ta)と、COPと、予減圧弁22の開度との対応関係を実験やシミュレーションで調査し、調査結果に基づいて、予減圧弁22の開度を算出するための演算式を策定することができる。こうした点は、第1の制御方法で説明したように、バイパス弁21の目標開度を算出する場合と共通である。
図5A,図5Bで説明したように、膨張機13の吸入密度DEは、外気温度Taおよび入水温度Tgが高くなるにつれて小さくなる。さらに、冷凍サイクルのバランスは、(DE−Gb/(VE×RE))/DCが常に一定となるように保たれる。したがって、バイパス弁21が全閉でバイパス回路20の流量Gbがゼロであったとしても、予減圧弁22の開度を縮小し、膨張機13の吸入密度DEを小さくすれば、外気温度Taおよび入水温度Tgが低い状況下(例えば冬期条件)においても、円滑な運転を実現することができる。つまり、バイパス弁21を全閉にしなければならないほど膨張機13の吸入密度DEが大きい場合には、予減圧弁22を絞ることにより、必要な吐出温度Tdを確保しつつ、COPを向上させることができる。
図5Aによれば、膨張機13の吸入密度DEが過大になることと、外気温度Taが所定温度よりも低くなることとは、等価であると考えることができる。また、図5Bによれば、膨張機13の吸入密度DEが過大になることと、入水温度Tgが所定温度よりも低くなることとは、等価であると考えることができる。したがって、予減圧弁22の開度を縮小する制御は、(a)外気温度Taが所定温度TL1よりも低い場合、(b)入水温度Tgが所定温度TL2よりも低い場合、もしくは、(c)外気温度Taが所定温度TL1よりも低く、かつ入水温度Tgが所定温度TL2よりも低い場合、に実施されるようにしてもよい。
すなわち、外気温度Ta(被冷却流体の温度)が所定温度TL1を下回ること、および/または、入水温度Tg(被加熱流体の温度)が所定温度TL2を下回ることを条件として、予減圧弁制御器42により、予減圧弁22の開度を、それらの条件を満たす前の開度(例えば全開)よりも縮小する制御が行われるようにしてもよい。例えば、図12Aに示すように、外気温度Taが所定温度TL1以上の場合には予減圧弁22を全開(開度100%)とし、外気温度Taが所定温度TL1を下回ったら予減圧弁22を閉方向に操作し、外気温度Taの低下に応じて予減圧弁22の開度を縮小する制御を行う。あるいは、図12Bに示すように、入水温度Tgが所定温度TL2以上の場合には予減圧弁22を全開(開度100%)とし、入水温度Tgが所定温度TL2を下回ったら予減圧弁22を閉方向に操作し、入水温度Tgの低下に応じて予減圧弁22の開度を縮小する制御を行う。さらに、外気温度Taと入水温度Tgの和が所定値TL3を下回った場合に、予減圧弁22の開度を縮小する制御を行うようにしてもよい。
なお、所定温度TL1,TL2は、バイパス弁21の開度がほぼ全閉となるときの値として、実験またはシミュレーションにて予め求めるとよい。
図11に戻って説明を続ける。予減圧弁22の目標開度を算出した後、予減圧弁22の現在の開度が目標開度に一致するかどうかを判断する(S64)。一致しない場合、主制御器43は、予減圧弁制御器42に対し、予減圧弁22の開度を目標開度に一致させるべき旨の制御信号を出力する(S65)。予減圧弁制御器42は、制御信号の取得に応じて、予減圧弁22の開度を目標開度に調節する制御を行う。
予減圧弁22の開度を変更すると、冷凍サイクルが変化し、吐出温度Tdも変化するが、図10のフローチャートに示すバイパス弁21の開度制御により、吐出温度Tdは適正値に保たれる。バイパス弁21の開度制御と、予減圧弁22の開度制御とを順次実行することにより、適正な吐出温度Tdを得ながら、COPの向上させることができる。図10および図11に示す開度制御を必要に応じて、または定期的に実行することにより、バイパス弁21および予減圧弁22の開度は、常に適正開度に保たれる。
なお、バイパス弁21の開度制御は、吐出温度Tdに代えて、過熱度SHに基づいて行うようにしてもよい。
また、バイパス弁21の開度が全閉となった場合、または全閉に接近した場合(例えば最大開度の10%)に、予減圧弁22の開度を一定量縮小するという簡便な方法でも、一定の効果が得られる。
<第5の制御方法>
第5の制御方法は、外気温度Taや入水温度Tgに基づいて予減圧弁22の開度制御を行い、吐出温度Tdに基づいてバイパス弁21の開度制御を行う点、すなわち、バイパス弁21の開度制御がフィードバック制御、予減圧弁22の開度制御がフィードフォワード制御となる点については、第4の制御方法と共通である。しかし、予減圧弁22の開度が変更された後、一定期間、バイパス弁21の開度制御を、外気温度Taや入水温度Tgに基づいた制御、すなわち、フィードフォワード制御とする点で、第4の制御方法と相違する。第5の制御方法にかかるフローチャートを図13に示す。
図13のフローチャートのS71〜S75では、先に説明した図11のフローチャートのS61〜S65と同じ処理を行う。外気温度Taおよび入水温度Tgに基づき、予減圧弁制御器42は、予減圧弁22の開度を、COPが最高になると予測される目標開度に調節する制御を行う。図12A,図12Bを参照して先に説明したように、外気温度Taが所定温度TL1以上および/または入水温度Tgが所定温度TL2以上の場合には、予減圧弁22の目標開度は全開となる。
予減圧弁22の開度を調節した後、S76において、バイパス弁21の目標開度を算出する。バイパス弁21の目標開度としては、第4の制御方法で説明した初期開度(例えば開度20%)を採用することができる。主制御器43は、外気温度Taおよび/または入水温度Tgに基づき、COPが最高となると予測されるバイパス弁21の目標開度(初期開度)を算出し、バイパス弁制御器41に対し、バイパス弁21の開度を目標開度に調節するべき旨の制御信号を出力する。バイパス弁制御器41は、バイパス弁21の開度を目標開度に調節する制御を行う。
このように、予減圧弁制御器42により予減圧弁22の開度を変更する制御が行われた後、一定期間(本実施形態では1回の制御ループ)、外気温度Tdおよび/または入水温度Tgに基づくフィードフォワード制御により、バイパス弁21の開度を修正する制御が行われるようにしてもよい。第5の制御方法の効果は、図9Aおよび図9Bで説明した第3の制御方法の効果と同様である。すなわち、バイパス弁21は、外気温度Taおよび/または入水温度Tgに基づき、予減圧弁22の開度が変更されたことによる吐出温度Tdの変化を見越して設定されたバイパス弁21の目標開度(初期開度)に変更される。これにより、吐出温度Tdが目標吐出温度に収束するまでの時間を短縮でき、ひいては冷凍サイクル装置100の動作安定性が高まる。
S74において、予減圧弁22の開度が目標開度に一致すると判断した場合には、S78〜S82の処理を行う。S78〜S82では、図10のフローチャートのS51〜S55と同じ処理を行う。
以上に説明した第1〜第5の制御方法によれば、一方の弁の開度制御にフィードバック制御を適用し、他方の弁の開度制御にフィードフォワード制御を適用するので、2つの弁の開度制御の相互干渉を防ぐことができ、ひいては冷凍サイクル装置100の動作安定性が高まる。また、圧縮機11の吐出温度Tdを保証することにより、水などの被加熱流体を放熱器12で必要な温度まで確実に加熱することができる。吐出温度Tdを確保しつつCOPを向上させることができるので、冷凍サイクル装置100のランニングコストも低廉となりうる。過熱度SHを保証することにより、液圧縮が防止され、圧縮機11の信頼性も高まる。また、バイパス弁21の開度制御および予減圧弁22の開度制御の両方をフィードバック系で構成する場合に比べ、簡単なアルゴリズムでプログラムを構築できるため、マイクロコンピュータなどの制御手段の低コスト化、ひいては冷凍サイクル装置100の低コスト化を期待できる。
(第2実施形態)
図14は、第2実施形態にかかる冷凍サイクル装置の構成図である。本実施形態の冷凍サイクル装置110は、圧縮機11の回転数と膨張機13の回転数とを独立して制御可能であるという点で、第1実施形態と相違する。図14において、第1実施形態と共通の要素には同一符号を用いている。
図14に示すように、圧縮機11とモータ19とがシャフト25により連結されている。膨張機13と発電機27とがシャフト26により連結されている。圧縮機11はモータ19と同期回転し、膨張機13は発電機27と同期回転する。膨張機13により、膨張する冷媒から回収された動力は、発電機27によって電力に変換される。発電機27で生成された電力は、モータ19の給電ラインに回生され、モータ19の消費電力の一部として利用される。これにより、冷凍サイクル装置110のCOPが向上する。
冷凍サイクル装置110は、さらに、モータ19の回転数を制御するモータ制御器51と、発電機27の回転数を制御する発電機制御器52とを備えている。モータ制御器51は、直流を三相交流に変換するインバータユニットであり、MOSFETのような半導体スイッチング素子と、それら半導体スイッチング素子のオンオフを制御するためのマイクロコンピュータとを含む。主制御器43からモータ制御器51にモータ19の目標回転数が与えられる。モータ制御器51は、モータ19の回転数が与えられた目標回転数に追従するように、例えばPWM(Pulse Width Modulation)技術により、半導体スイッチング素子のオンオフを制御する。発電機制御器52は、発電機27の三相交流を直流に変換するコンバータユニットであり、その構成や機能はモータ制御器51と概ね同じであり、主制御器43から与えられた目標回転数で発電機27を駆動する。
圧縮機11の回転数と膨張機13の回転数とを独立して制御可能な場合、回転数の比を変化させることにより、圧縮機11の吸入密度DCと、膨張機13の吸入密度DEとの比(DE/DC)を自由に調節することが可能である。したがって、バイパス弁21や予減圧弁22が本質的には不要であると考えられる。しかしながら、現実には、圧縮機11や膨張機13の回転数を変更できる範囲は狭く、回転数の比の変更だけでは、運転条件の変化に対応しきれない可能性がある。
例えば、近年急速に需要が拡大している埋込永久磁石同期モータは、図16の模式図に示すように、回転数によって効率が大きく変化することが知られている。モータの効率低下はCOPの低下に直結するので、最大効率が発揮される回転数Foptに近い回転数での駆動が望ましい。したがって、このようなモータを本実施形態におけるモータ19や発電機27に使用する場合、COP向上の観点においては回転数を広範に変更するべきでない。
また、ホール素子やレゾルバのような位置センサを使用しないセンサレス制御を行う場合には、巻線に生ずる誘起電圧を検出することによってロータの位置を把握する方法が一般的であるが、回転数が低いと誘起電圧の変化を捉えきれず、脱調する可能性が高くなる。そのため、センサレス制御によって駆動されるモータの回転数には、安定した回転を維持できる下限値Fminが設定されているのが通常であり、設定された下限値Fminを下回るような領域での使用は信頼性が保証されていない。逆に、モータ19や発電機27の回転数が高くなりなりすぎると、圧縮機11や膨張機13の構成部品にダメージが及ぶ可能性があるので、通常、モータ19や発電機27の回転数には上限値Fmaxが設定される。また、放熱器12の加熱能力を保証するには、冷凍サイクルの質量流量を確保すること、つまり、圧縮機11の回転数をある程度高くすることが不可欠となる。
こうした事情があるので、回転数の比の変更によって、想定しうる全ての運転条件をカバーできるかというと、必ずしもそうではない。ゆえに、圧縮機11と膨張機13の回転数の比を変更可能な冷凍サイクル装置110であっても、第1実施形態で説明したように、バイパス弁21や予減圧弁22の助けを借りて、必要な吐出温度Tdを確保しつつ、COPを向上させることが望ましい。
次に、バイパス弁21および予減圧弁22の開度制御、ならびに膨張機13の回転数制御について詳しく説明する。本実施形態の制御方法では、外気温度Taおよび/または入水温度Tgの検知結果に基づいて、バイパス弁21および/または予減圧弁22の開度制御を行い、吐出温度Tdまたは過熱度SHに基づいて、膨張機13の回転数制御を行う。つまり、弁21,22の開閉制御にフィードフォワード制御を適用し、膨張機13の回転数制御にフィードバック制御を適用する。これにより、弁21,22の開度制御と、膨張機13の回転数制御との相互干渉を回避し、冷凍サイクル装置110の動作安定性を高めている。以下、3通りの制御方法(i)(ii)(iii)について説明する。
<制御方法(i)>
この制御方法では、予減圧弁22を常に全開とする。すなわち、予減圧弁22が設けられていないものと考えて、バイパス弁21の開度制御と膨張機13の回転数制御とを行う。運転開始契機を取得することを条件として、主制御器43は、必要な冷媒流量が得られるような回転数で圧縮機11を動作させるために、モータ制御器51に目標回転数を与える。さらに、COPが最高になると予測される回転数で膨張機13を動作させるために、外気温度Taおよび/または入水温度Tgに基づいて、膨張機13の目標回転数を算出し、算出した目標回転数(制御信号)を発電機制御器52に与える。また、バイパス弁21の初期開度をゼロ(全閉)とするべき旨の制御信号をバイパス弁制御器41に出力する。もちろん、バイパス弁21の初期開度はゼロでなくてもよい。
次に、図15のフローチャートに示す制御を実行する。主制御器43は、吐出温度センサ32の検知信号を取得して吐出温度Tdを見出す(S91)。次に、目標吐出温度と、実際の吐出温度Tdとが一致するかどうかを判断する(S92)。目標吐出温度は、第1実施形態で説明したように、沸上温度等の運転条件に応じて定められる。
実際の吐出温度Tdが目標吐出温度に一致しない場合、S93に進み、目標吐出温度と実際の吐出温度Tdとの大小を比較する。目標吐出温度と実際の吐出温度Tdとの偏差に基づいて膨張機13の目標回転数を算出する。実際の吐出温度Tdが目標吐出温度よりも小さい場合、S94に進み、算出した目標回転数を発電機制御器52に与えることにより、膨張機13の回転数を減少させる。膨張機13の回転数が減少すると、吐出温度Tdが上昇する。
膨張機13の回転数が減少すると、吐出温度Tdが上昇する理由について説明する。
バイパス回路20の流量をゼロとすると、圧縮機11の吸入容積VCと、圧縮機11の吸入密度DCと、圧縮機11の単位時間あたりの回転数RCと、膨張機13の吸入容積VEと、膨張機13の吸入密度DEと、膨張機13の単位時間あたりの回転数REとの間には、(VC/VE)=(DE/DC)×(RE/RC)という関係が成立する。これについては、第1実施形態で説明した通りである。
容積比(VC/VE)は設計値なので、(DE/DC)×(RE/RC)が常に一定となるように冷凍サイクルがバランスする。圧縮機11の回転数RCを変化させずに、膨張機13の回転数REを減少させると、圧縮機11の吸入密度DCが低下する。圧縮機11の吸入密度DCが低下すると、圧縮機11の吸入温度Tsが上昇し、結果として、吐出温度Tdが上昇する。
図15に戻って説明を続ける。実際の吐出温度Tdが目標吐出温度を超えている場合、S95に進み、算出した目標回転数を発電機制御器52に与えることにより、膨張機13の回転数を増加させる。膨張機13の回転数が増加すると、吐出温度Tdは低下する。
ところで、膨張機13の回転数を変更できる範囲が、膨張機13や発電機27の信頼性および効率を考慮して予め定められた範囲に限定される場合、膨張機13の吸入密度DEが非常に小さい状況下(主に夏期)では、適正な吐出温度Tdが得られなかったり、COPが大幅に低下したりする可能性がある。
したがって、そのような状況を考慮し、膨張機13の回転数制御と併せて、図4のフローチャートで示されるバイパス弁21の開度制御を実行し、バイパス回路20に一部の冷媒を流すとよい。例えば、バイパス弁21が全閉の状態で膨張機13の回転数が上限値F2に到達した場合に、バイパス弁21を開放する。入水温度Tgおよび/または外気温度Taが高くなるにつれて、バイパス弁21の開度を拡大する。膨張機13の回転数が上限値F2に達することに代えて、外気温度Taが所定温度TH1を超えた場合、および/または、入水温度Tgが所定温度TH2を超えた場合に、バイパス弁21を開放するようにしてもよい。こうした点については、第1実施形態において、図6Aおよび図6Bを参照して説明した通りである。
このように、発電機制御器52は、圧縮機11の吐出温度Tdが目標吐出温度よりも高い場合に、発電機27の回転数を増加させる制御を行う。発電機27の回転数を上限値F2よりも大きくすることなく、吐出温度Tdを目標吐出温度に近づけるために、バイパス弁制御器41は、(a)発電機27の回転数が所定の上限値F2に到達すること、(b)外気温度Taが所定温度TH1を超えること、(c)入水温度Tgが所定温度TH2を超えること、から選ばれる少なくとも1つの条件が満足された場合に、バイパス弁21の開度を、それらの条件を満たす前の開度よりも拡大する制御を行う。これにより、適正な吐出温度Tdを得つつ、COPの向上を図ることができる。
また、図15のフローチャートにおいて、吐出温度Tsに代えて、過熱度SHを制御量として用いるようにしてもよい。
なお、膨張機13の回転数やバイパス弁の開度が変更された場合であっても、圧縮機11の回転数を変更させないことが望ましい。すなわち、モータ制御器51は、吐出温度Tdが目標吐出温度に一致するように膨張機13の回転数が変更された場合と、バイパス弁21の開度が変更された場合との、いずれの場合においても、変更の前後にわたってモータ19の回転数、ひいては圧縮機11の回転数を一定に保つ。圧縮機11の回転数を一定に保つと、変数が膨張機13の回転数とバイパス弁21の開度に限られるので、制御が容易化するとともに、冷凍サイクル装置110の動作安定性が高まる。
<制御方法(ii)>
本制御方法(ii)においては、バイパス弁21を使用せず(常に全閉)、予減圧弁22の開度制御と、膨張機13の回転数制御とを行う。予減圧弁22の初期開度は、開度100%(全開)であるものとする。
膨張機13の回転数を変更できる範囲が、膨張機13や発電機27の信頼性および効率を考慮して予め定められた範囲に限定される場合、膨張機13の吸入密度DEが非常に大きい状況下(主に冬期)で円滑な運転が行えず、COPが大幅に低下する可能性がある。
したがって、そのような状況を考慮し、膨張機13の回転数制御と併せて、図11のフローチャートで示される予減圧弁22の開度制御を実行するとよい。例えば、予減圧弁22が全開の状態で膨張機13の回転数が下限値F1まで減少した場合に、予減圧弁22の開度を縮小し始める。入水温度Tgおよび/または外気温度Taが低くなるにつれて、予減圧弁22の開度を縮小する。膨張機13の回転数が下限値F1まで低下することに代えて、外気温度Taが所定温度TL1を下回った場合、および/または、入水温度Tgが所定温度TL2を下回った場合に、予減圧弁22の開度を縮小するようにしてもよい。こうした点については、第1実施形態において、図12Aおよび図12Bを参照して説明した通りである。
このように、発電機制御器51は、圧縮機11の吐出温度Tdが目標吐出温度よりも低い場合に、発電機27の回転数を減少させる制御を行う。発電機27の回転数を下限値F1よりも小さくすることなく、吐出温度Tdを目標吐出温度に近づけるために、予減圧弁制御器42は、(a)発電機27の回転数が所定の下限値F1まで減少すること、(b)外気温度Taが所定温度TL1を下回ること、(c)入水温度Tgが所定温度TL2を下回ること、から選ばれる少なくとも1つの条件が満足された場合に、予膨張弁22の開度を、それらの条件を満たす前の開度よりも縮小する制御を行う。これにより、適正な吐出温度Tdを得つつ、COPの向上を図ることができる。
また、制御方法(i)と同様に、吐出温度Tsに代えて、過熱度SHに基づいて発電機27の回転数を制御するようにしてもよい。
<制御方法(iii)>
本制御方法(iii)においては、バイパス弁21の開度制御と、予減圧弁22の開度制御と、膨張機13の回転数制御とを行う。バイパス弁21および予減圧弁22の2つの弁を用いることにより、より広範囲な運転条件に対応できる、言い換えれば、より大きい気温変化や入水温度変化に対応できる冷凍サイクル装置を提供することが可能となる。
図17のフローチャートのS101〜S105では、先に説明した図4のフローチャートのS11〜S15と同じ処理を行う。主制御器43は、外気温度Taおよび入水温度Tgに基づいて、COPが最高になると予測されるバイパス弁21の開度を算出し、算出結果をバイパス弁制御器41に出力する。バイパス弁制御器41は、バイパス弁21の開度を、COPが最高になると予測される目標開度に調節する制御を行う。図6A,図6Bを参照して先に説明したように、外気温度Taが所定温度TH1以下および/または入水温度Tgが所定温度TH2以下の場合には、バイパス弁21の目標開度はゼロ(全閉)とすることができる。
バイパス弁21の開度を調節した後、S106において、膨張機103の目標回転数を算出する。膨張機13の目標回転数は、必要な吐出温度Tdが確保されるようにS111〜S115の処理で微調整するので、S106で算出するべき目標回転数は、暫定的な回転数であってもよい。そのような目標回転数は、例えば、外気温度Taおよび/または入水温度Tgに応じて予め定めておくことができる。主制御器43は、外気温度Taおよび/または入水温度Tgに基づき、COPが最高となると予測される膨張機13の目標回転数(初期回転数)を算出し、算出した目標回転数を発電機制御器52に与える。発電機制御器52は、与えられた目標回転数で発電機27を駆動する。
このように、バイパス弁制御器41によりバイパス弁21の開度を変更する制御が行われた場合、一定期間(本実施形態では1回の制御ループ)、外気温度Tdおよび/または入水温度Tgに基づくフィードフォワード制御により、発電機27の回転数を修正する制御が行われるとよい(S106,S107)。これにより、吐出温度Tdが目標吐出温度に収束するまでの時間を短縮でき、冷凍サイクル装置110の動作安定性が高まる。
S104において、バイパス弁21の開度が目標開度に一致すると判断した場合には、S108〜S110の処理を行う。S108〜S110では、図11のフローチャートのS63〜S65と同じ処理を行う。すなわち、主制御器43は、外気温度Taおよび/または入水温度Tgに基づき、COPが最高となると予測される予減圧弁22の目標開度を算出し、算出結果を予減圧弁制御器42に出力する。予減圧弁制御器42は、予減圧弁22の開度を、COPが最高になると予測される目標開度に調節する制御を行う。図12A,図12Bを参照して先に説明したように、外気温度Taが所定温度TL1以上および/または入水温度Tgが所定温度TL2以上の場合には、予減圧弁22の目標開度は100%(全開)とすることができる。
このように、予減圧弁制御器42により予減圧弁22の開度を変更する制御が行われた場合、一定期間(本実施形態では1回の制御ループ)、外気温度Tdおよび/または入水温度Tgに基づくフィードフォワード制御により、発電機27の回転数を修正する制御が行われるとよい(S106,S107)。これにより、吐出温度Tdが目標吐出温度に収束するまでの時間を短縮でき、冷凍サイクル装置110の動作安定性が高まる。
S109において、予減圧弁21の開度が目標開度に一致すると判断した場合には、S111〜S115の処理を行う。S111〜S115では、図15のフローチャートのS91〜S95と同じ処理を行う。もちろん、吐出温度Tdに代えて、過熱度SHを制御量として用いてもよい。
図17に示す開度制御を必要に応じて、または定期的に実行することにより、バイパス弁21および予減圧弁22の開度は、常に適正開度に保たれ、膨張機13の回転数も常に適正な回転数に保たれる。これにより、適正な吐出温度Tdを得るとともに、COPを向上させることができる。
以上に説明した制御方法(i)(ii)(iii)によれば、弁21,22の開度制御にフィードフォワード制御を適用し、膨張機13の回転数制御にフィードバック制御を適用するので、弁21,22の開度制御と膨張機13の回転数制御との相互干渉を防ぐことができ、ひいては冷凍サイクル装置100の動作安定性が高まる。また、圧縮機11の吐出温度Tdを保証することにより、水などの被加熱流体を放熱器12で必要な温度まで確実に加熱することができる。吐出温度Tdを確保しつつCOPを向上させることができるので、冷凍サイクル装置100のランニングコストも低廉となりうる。弁21,22の開度制御をフィードフォワード制御とすることにより、マイクロコンピュータなどの制御手段の低コスト化、ひいては冷凍サイクル装置100の低コスト化を期待できる。