図1は、GI型POFケーブル10の製造工程11の一例を示したフロー図である。製造工程11は、大別して重合容器形成工程12、コア形成工程13、クラッドパイプ装着工程14、延伸工程15、被覆工程16から構成される。なお、本発明は上記構成に限定されるものではない。
本実施形態では、重合容器形成工程12〜クラッドパイプ装着工程14において、GI型POF(GI型POF素線)17の母材となるプラスチック光ファイバプリフォーム(以下、単にプリフォームという)18を形成する。具体的には、重合容器形成工程12で重合容器19を形成した後、コア形成工程13で重合容器19の内面にコア20(図2参照)を形成する。形成されたコア20は重合容器19内から取り出される。クラッドパイプ装着工程14では、予め形成されたクラッドパイプ21内にコア20を挿入してプリフォーム18を形成する。延伸工程15では、プリフォーム18を延伸してGI型POF素線17を形成する。そして、被覆工程16では、GI型POF素線17を被覆してGI型POFケーブル10を形成する。
重合容器19は、略円筒形状の容器であり、用いる素材は特に限定されない。例えば、コア20の最外周の屈折率よりも低い屈折率を有するポリマー、好ましくはフッ素含有の低結晶性ポリマーやアモルファスポリマーなどから形成される略円筒形状の樹脂成形体を重合容器19として用いる事で、この樹脂成形体を後述のクラッドパイプ21とすることができる。この場合、重合容器19は、溶融押出製造法などを用いてフッ化ビニリデン樹脂(PVDF)等より形成された略円筒形状の樹脂成形体を用いることができる。また、重合容器19は多層で構成されていても良く、その場合は変形しにくい剛性素材を用いた外壁と、前述の低い屈折率を有するポリマーなどから形成される樹脂の内壁とする事で、同様に樹脂の内壁を後述のクラッド21とすることができる。一方、クラッドパイプ21をコア20の形成後に付与する場合であれば、この重合容器19は、如何なる素材より形成されていても良く、例えば、剛性の強い材料を用いて後述の回転容器32の機能を併せ持つ様にすることもできる。
図2は、プリフォーム18の断面図を示したものである。プリフォーム18は、略円管状のクラッドパイプ21と、このクラッドパイプ21の内部に設けられ、光伝送路となる略円管状のコア20とから構成される。クラッドパイプ21は、コア20よりも屈折率の低い材料、例えばテトラフルオロエチレン、ヘキサフルオロプロピレン、ビニリデンフルオライド三元系コポリマー(THV樹脂)等より形成される。なお、クラッドパイプ21は、コア20の保護や、伝送損失の増加の抑制及び曲げ損失の低減などの光学特性の向上の役割も果たす。そのため、重合容器19を径の異なる複数のパイプから構成してもよい。
コア20は、異なる屈折率を有する透光性の第1〜第N樹脂層22(α)[α=1〜N]を重合容器19の内面から同心円状に順次積層した複層構造に形成されているとみなしてよく、各樹脂層22(α)は、中心軸Cに近い層ほどその屈折率が高くなるように形成されている。つまり、第1樹脂層22(1)の屈折率が一番低くなり、第N樹脂層22(N)の屈折率が一番高くなる。従って、コア20は中心軸Cからクラッドパイプ21の内面に向かって屈折率がほぼ連続的に低くなるような屈折率分布(以下、単に屈折率分布という)を有する。
樹脂層22(α)の屈折率を各層ごとに変えるため、本実施形態では、重合後の屈折率が異なる2種類以上のコア形成用の重合性化合物を異なる配合比で共重合させることで、樹脂層22(α)を形成する。これにより、各層に屈折率の差を発現させることができる。例えば、重合後の屈折率が低い方のコア用重合性化合物の配合割合を増やすことで屈折率を低くすることができ、屈折率が高い方のコア用重合性化合物の配合割合を増やすことで屈折率を高くすることができる。
コア形成用の重合性化合物としては、アモルファスポリマーの原料、好ましくはラジカル重合性のアモルファスポリマーの原料、更に好ましくはフッ素または重水素含有のアモルファスポリマー原料などが用いられる。なお、本発明はこれらに限定されるものではなく、モノマーの単独あるいは共重合体からなるポリマーが光学的な透明性を有し、且つポリマーの屈折率がGI型POF素線17を形成したときに所定の性能を発揮するような範囲で調整できるものであれば任意の原料を用いてよい。
具体的に、本実施形態ではコア形成用の重合性化合物として、重合後の屈折率が約1.41を示す全重水素化2,2,2−トリフルオロエチルメタクリレート(以下、3FMd7という)と、重合後の屈折率が約1.49を示す全重水素化ペンタフルオロフェニルメタクリレート(以下、PFPMAd5という)とを用いる。そして、両者の配合比を調整することで、樹脂層22(α)の屈折率を各層ごとに変えることができる。
3FMd7、PFPMAd5を共重合させてコポリマーとする際には重合開始剤を使用する。本実施形態では、重合開始剤として2,2ジメチルアゾビスイソブチレート及びドデシルメルカプタンを使用する。なお、本発明はこれらに限定されるものではなく、適宜適切なものを選択してもよい。また、コポリマーとしたときの機械特性や熱物性などの各種物性値を全体にわたって均一に保つために、連鎖移動剤を添加して重合度の調整を行うようにしてもよい。
また、上述した方法以外に、各樹脂層22(α)の屈折率を各層ごとに変える方法として、各層を形成する重合性化合物に屈折率調整剤(ドーパント)を添加し、各層ごとにドーパントの添加量を変えることで各層に屈折率の差を発現させる方法もある。この場合には、ドーパントの添加量を多くすることで屈折率を高くし、ドーパントの添加量を少なくすることで屈折率を低くすることができる。このドーパントとしては、高屈折率で分子体積が大きく、重合に関与しないものを用いることが好ましい。
各樹脂層22(α)を形成する前には、第1〜第N混合溶液24(α)[α=1〜N](図3参照)をそれぞれ形成する。各混合溶液24(α)は、3FMd7、PFPMAd5、重合開始剤などを混合したものであり、形成する樹脂層22(α)に応じて3FMd7及びPFPMAd5の配合比が異なっている。そして、詳しくは後述するが、この混合溶液24(α)を重合容器19内部に注液して重合させることで、所望の屈折率を有する樹脂層22(α)が形成される。
次にコア20の形成について具体的に説明を行う。図1に示すようにコア形成工程13は、各樹脂層22(α)を形成する第1〜第N層形成工程13(α)[α=1〜N]から構成される。各層形成工程13(α)は、クラッドパイプ21内へ混合溶液24(α)を注液させる注液工程と、注液された混合溶液24(α)を重合させて樹脂層22(α)を形成する重合工程とからなる。つまり、コア形成工程13では、混合溶液24(α)の注液及び重合の工程を所望数だけ繰り返すことにより、上述の屈折率分布を有する複層構造のコア20を形成する。以下、コア形成工程13を構成するコア形成機25について図3及び図4を用いて説明する。
図3はコア形成機25の概略図であり、図4は図3中のIV−IVに沿う断面である。コア形成機25は、本発明の光学材料用プリフォームの製造装置に相当するものであり、大別して回転重合装置27と、本発明の注液手段に相当する注液装置28と、本発明の不活性ガス供給手段に相当するガス供給装置29と、本発明の圧力制御手段に相当する圧力制御装置30とから構成される。
回転重合装置27は、詳しくは後述する回転容器32内に収納された重合容器19を中心軸周りに回転させながら加熱して、この重合容器19内部に注液された混合溶液24(α)を重合させる所謂回転重合を行う。この回転重合装置27は、恒温槽として機能する装置本体33と、駆動ローラ34と、モータ35と、押さえローラ37と、ヒータ38と、温度センサ39とから構成される。装置本体33は、回転容器32が収納される恒温室41を有している。
駆動ローラ34及びモータ35は、本発明の回転手段に相当するものであり、重合容器19を収納した回転容器32を中心軸周りに回転させる。駆動ローラ34は、恒温室41内に平行且つ水平に複数配置されている(図4参照)。各駆動ローラ34は、その回転軸34aの両端部が装置本体33の側壁部33aに回動自在に保持されている。また、各駆動ローラ34の回転軸34aの一端は装置本体33外に設けられたモータ35に接続されおり、各駆動ローラ34はそれぞれ独立して回転駆動される。そして、回転容器32は、隣り合う駆動ローラ34の周面により形成される谷部にセットされ、駆動ローラ34の回転に応じて回転される。これにより、回転容器32内の重合容器19も中心軸周りに回転される。
押さえローラ37は、各駆動ローラ34との間で回転容器32を挟み込むように複数配置されており、その回転軸37aの両端が側壁部33aに回動自在、且つ着脱自在に保持されている。各押さえローラ37は、回転容器32の浮き上がりを防止する。
ヒータ38は、本発明のクラッド温度調整手段に相当するものであり、恒温室41内に配置されている。このヒータ38は、恒温室41の温度を調整することで、回転容器32内の重合容器19の温度を調整する。なお、ヒータ38としては、恒温室41内の温度を制御可能であれば任意のヒータを用いてよい。温度センサ39は、恒温室41内に配置されている。この温度センサ39は、恒温室41の温度、つまり、重合容器19の温度を検出して温度信号を出力する。従って、この温度センサ39から出力される温度信号に基づき、ヒータ38の駆動を制御することで、重合容器19の温度をその内部に注液された混合溶液24(α)が重合する所定の重合温度に保つことができる。
この際に、上述の重合温度は、下記(1)及び(2)の条件を満たす範囲内の温度であることが好ましい。
(1)混合溶液24(α)の沸点をT1bし、重合開始剤の半減期温度Thとしたときに 、重合容器19の内部の混合溶液24(α)の温度T1が、Th−30℃≦T1≦ T1b、好ましくはTh−20℃≦T1≦T1b、より好ましくはTh−10℃≦ T1≦T1bを満たすこと。
(2)重合容器19の温度をTpとしたときに、Tp≦T1bを満たすこと。
回転容器32に収納された重合容器19を回転させつつ、その温度を重合温度に保つことで、重合容器19内部に注液された混合溶液24(α)を重合させて、ほぼ均一な厚みを有する樹脂層22(α)を形成することができる。この際に、上述したように注液時と回転重合時とで重合容器19の温度が一定でないと、形成された各樹脂層22(α)、つまり、コア20の分子量及び分子量分散にばらつきが生じたり、コア20にクラックが発生したりするおそれがある。これを防止するため、本実施形態では重合容器19の温度を注液時と回転重合時とで一定にする。具体的には、重合容器19の温度が所定の重合温度に達し、且つ重合容器19が回転されている時に混合溶液24(α)を重合容器19内に注液する。そのため、回転容器32は、回転中でもその内部に収納された重合容器19内に混合溶液24(α)を注液可能な構造を有している。
図5に示すように、回転容器32は略円筒状の容器本体43と、栓ユニット44,45とから構成される。容器本体43は、例えばSUS材等から形成されている。この容器本体43は、その長手方向の長さが重合容器19の長さよりも長く形成されているとともに、その内径が重合容器19の外径よりも僅かに太くなるように形成されている。
栓ユニット44,45は、本発明の栓部材に相当するものであり、混合溶液24(α)中に溶解せず且つ可塑剤等を溶出させるような化合物を含まない素材で形成される。このような素材としては、例えばポリテトラフルオロエチレン(PTFE)等が挙げられる。これら栓ユニット44,45は、容器本体43の両端の開口部43a、及び重合容器19の両端の開口部20aを塞ぎつつ、容器本体43の回転に応じて重合容器19が回転されるように、この重合容器19を容器本体43内で保持する。
栓ユニット44は、略円筒状のユニット本体47と、第1栓部48と、第2栓部49と、連結部50とが一体に形成されている。ユニット本体47は、重合容器19の内部に連通する連通路51を有し、回転容器32が恒温室41内にセットされたときに装置本体33の側壁部33aに設けられた軸受け53(図3参照)に回転自在に嵌合される。そして、第1栓部48及び第2栓部49は、ユニット本体47の重合容器19と対向する側の一端部の周面上に略環状に形成され、連結部50は、ユニット本体47の他端部に形成されている。
第1栓部48は、図示しないシール材を介して重合容器19の一方の開口部19aを塞ぐ。第2栓部49は、図示しないシール材を介して容器本体43の一方の開口部43aを塞ぐ。連結部50は、装置本体33(図3参照)外に形成されており、ユニット本体47の連通路51に連通する嵌合孔53と、この嵌合孔53の内部に設けられた略環状のオムニシール(登録商標)54とを備えている。この連結部50には、詳しくは後述する注液装置28の第1ロータリジョイント56が着脱自在に連結される。
栓ユニット45も栓ユニット44と同じ構造であり、連通路58を有するユニット本体59と、第1栓部60と、第2栓部61と、嵌合孔62及びオムニシール(登録商標)63を備える連結部64とが一体に形成されている。この連結部64には、詳しくは後述する圧力制御装置30の第2ロータリジョイント66が着脱自在に連結される。なお、栓ユニット44,45は、上述したものに限定はされず、任意の形状のものを用いてよい。
図3に示すように、注液装置28は、栓ユニット44を介して回転容器32内の重合容器19の内部に混合溶液24(α)を注液するものであり、大別して液供給ユニット68と、送液配管69と、液温調整ユニット70と、上述の本発明の第1回転継手に相当する第1ロータリジョイント56とから構成される。
液供給ユニット68は、3FMd7が貯留される第1貯留槽72と、PFPMAd5が貯留される第2貯留槽73と、混合槽74と、フィルタ75と、送液ポンプ76とから構成される。第1貯留槽72及び第2貯留槽73はそれぞれ混合槽74に接続されており、両槽72,73からそれぞれ所定量ずつ送液された3FMd7及びPFPMAd5は混合槽74内で混合される。また、混合時には上述の重合開始剤、連鎖移動剤も同時に混合される。これにより、形成する樹脂層22(α)に応じた混合溶液24(α)が形成される。
混合槽74で形成された混合溶液24(α)は、フィルタ75で濾過されて異物が除去された後、送液ポンプ76に送られる。なお、フィルタ75としては、例えば孔径0.2μmのメンブランフィルタが用いられる。送液ポンプ76は、送液配管69を介して濾過された混合溶液24(α)を第1ロータリジョイント56に向けて送液する。
送液配管69は一端部が送液ポンプ76に接続され、他端部が第1ロータリジョイント56に接続されている。この送液配管69としては、孔径1mmのテフロン(登録商標)製のチューブが用いられる。また、この送液配管69の途中には液温調整ユニット70が設けられている。この液温調整ユニット70は、送液配管69に連結された熱交換器78と、この熱交換器78が配置されるウォータバス79とから構成される。そして、熱交換器78を介して混合溶液24(α)とバス79中の水との間で熱交換を行わせることで、重合容器19の内部に注液される混合溶液24(α)の温度を所定温度に調整できる。本実施形態では、重合容器の温度をTpとしたときに、混合溶液24(α)の温度TsをTp−50℃≦Ts≦Tpに調整する。このように、混合溶液24(α)の液温を調整することで、注液した際に重合を均一に進行させることができる。また、コア20を形成中にヒートショックによるクラックの発生も防ぐことができる。
図6に示すように第1ロータリジョイント56は、送液配管69に接続された液通路81を有しており、栓ユニット44の連結部50に相対回転自在、且つ着脱自在に連結される。第1ロータリジョイント56は、ジョイント本体82と、この本体82に回動自在に保持されている回転軸部83とからなる。そして、回転軸部83を連結部50のオムニシール(登録商標)54に嵌合させることで、両者が連結されて液通路81と連通路51とが密閉状態で接続される。これにより、両者の間からの混合溶液24(α)の漏れが防止される。なお、液通路81と連通路51とを密閉状態で接続可能であれば、オムニシール(登録商標)54の代わりにOリング等の樹脂リングを用いてもよい。また、第1ロータリジョイント56と栓ユニット44の連結部50とを油圧連結してもよい。
このように、栓ユニット44に第1ロータリジョイント56を連結させることで、栓ユニット44が容器本体43と一体に回転されているときでも、回転中の重合容器19内に混合溶液24(α)を注液することができる。これにより、重合容器19の温度が所定の重合温度に達し、且つ重合容器19の回転が開始された後でも混合溶液24(α)を重合容器19内に注液することが可能となる。
上述のように混合溶液24(α)を重合容器19内に注液した際に、この混合溶液24(α)中に空気、特に酸素が溶存していると、この酸素が重合禁止剤として機能して重合反応が阻害される場合がある。また、重合が阻害された結果、多くの未反応モノマーが残存し、延伸工程15において気泡が発生する場合がある。重合が不均一であったり、気泡が生じたりするとその部位で光が散乱するため、GI型POF素線17の光学性能および生産性が低下してしまう。そこで、本実施形態では、混合溶液24(α)の注液が完了した後に上述のガス供給装置29を用いて重合容器19内部に不活性ガスである窒素ガスをパージする。なお、不活性ガスとしては、窒素ガスの代わりにアルゴンガス、ヘリウムガスなどの希ガスを用いても良い。
ガス供給装置29は、窒素ガス供給ユニット85と、ガス配管86とから構成される。窒素ガス供給ユニット85は、設定された任意の圧力で窒素ガスを供給する。なお、本実施形態では、送液配管69の一部と第1ロータリジョイント56とを用いて重合容器19内部に窒素ガスをパージする。そのため、ガス配管86は、一端部が窒素ガス供給ユニット85に接続され、他端部が送液配管69に接続される。また、本実施形態では、ガス配管86は二股に分岐されており、液供給ポンプ76と液温調整ユニット70との間、及び液温調整ユニット70と第1ロータリジョイント56との間の2箇所で送液配管69に接続されている。
このように、ガス供給装置29と注液装置28とで送液配管69の一部及び第1ロータリジョイント56を共用しているので、混合溶液24(α)の注液と窒素ガスの供給とを切替できるように、送液配管69の送液ポンプ76に接続されている側の端部と、ガス配管86の送液配管69に接続されている側の端部とに第1〜第3の電磁弁88,89,90が設けられている。そして、注液時には、第1電磁弁88のみが開かれ、第2及び第3電磁弁89,90が閉じられるので、混合溶液24(α)がガス配管86内に混入するおそれはなくなる。
また、窒素ガスパージ時には、第1電磁弁88が閉じられ、第2及び第3電磁弁89,90が開かれるため、送液配管69の一部及び第1ロータリジョイント56を介して、窒素ガスが重合容器19内部にパージされる。これと同時に、送液配管69内に残った混合溶液24(α)の大部分を重合容器19内に排出させることができる。この際、1つの樹脂層22(α)となる混合溶液24(α)の必要注液量は、送液配管69に残存している溶液を含めて計算することが好ましい。これにより、一つの樹脂層22(α)[ただし、α=1〜(N−1)]を形成した後、引き続き次の樹脂層22(α+1)を形成するときに、送液される混合溶液24(α+1)に先の混合溶液24(α)が混入する混入量を低減させることができる。
なお、本実施形態のように、回転中の重合容器19内に混合溶液24(α)を注液する場合に、注液中に重合容器19の内部圧力が高くなると注液ができなくなる。さらに、本実施形態では、回転重合時に重合容器19を加熱しているので、逆に内部圧力が低いと混合溶液24(α)が沸騰してコア20中に気泡が発生するおそれがある。そこで、本実施形態では、注液時は重合容器19の内部を常圧にし、回転重合時には上述の圧力制御装置30を用いて重合容器19の内部を加圧する。
また、別の実施形態としては液供給経路とガス供給経路を独立した経路とし(図示は省略)、連通路51内に管を通す事により2重の同心管として重合容器内にガスとモノマーを独立に導入させることも考えられる。このとき、内側管(図示せず)の固定をオムニシール(登録商標)等で行えば、シール材が低摩擦係数のため内側管を軸方向に移動させることも可能となる。これにより、内側管を長尺の重合容器に対して軸方向に移動させながら液やガスを供給する事ができるので、より均一に供給を行うことができる。
重合容器19の内部を常圧にするため、本実施形態では栓ユニット45の連結部64と、圧力制御装置30の第2ロータリジョイント66との連結を解除して、栓ユニット45の連通路58(図4参照)を開放する。これにより、重合容器19内に混合溶液24(α)が注液されても内部圧力が常圧に保たれるので、混合溶液24(α)の注液を問題なく行うことができる。また、注液時の内部圧力の変動で混合溶液24(α)が沸騰するおそれもなくなる。
圧力制御装置30は、回転重合時に重合される混合溶液24(α)の重合率が70〜100%に達するまでは重合容器19の内部を加圧する。また、この圧力制御装置30は、コア20が形成された後に重合容器19の内部を減圧する。この圧力制御装置30は、圧力制御ユニット91と、圧力制御用配管92と、本発明の第2回転継手に相当する第2ロータリジョイント66とから構成される。なお、本発明は上述の構成に限定されるものではない。
第2ロータリジョイント66は、回転重合時に栓ユニット45の連結部64に相対回転自在、且つ着脱自在に連結される。この際に、栓ユニット45は容器本体43と一体に回転しているので、第2ロータリジョイント66の連結は図示しない自動連結機構により行われる。この第2ロータリジョイント66は、図示は省略するが、栓ユニット45に連結されたときに連通路58に接続される圧力制御用通路を有している。また、第2ロータリジョイント66には、圧力制御用配管92を介して圧力制御ユニット91が接続されている。
圧力制御ユニット91は、加圧時には圧力制御用配管92、第2ロータリジョイント66、連通路58を介して重合容器19の内部に加圧気体を送り込むことで、重合容器19の内部を加圧する。この加圧気体としては、空気の混入を防ぐために窒素ガス、アルゴンガス、ヘリウムガスなどの不活性ガスが用いられる。なお、本実施形態において圧力制御ユニット91は、配管92の途中に設けられたパイプ内部圧力検出センサ93からの検出信号に基づき、加圧量が0.01Mpa〜1Mpa、好ましくは0.01Mpa〜0.5Mpa、より好ましくは0.01Mpa〜0.1Mpaになるように加圧する。これにより、回転重合時の混合溶液24(α)が反応熱により沸点以上に上昇した場合でも、その沸騰を防止することができる。
また、圧力制御ユニット91は、減圧時には圧力制御用配管92と第2ロータリジョイント及び連通路58を介して重合容器19の内部を吸引することで、重合容器19の内部を減圧する。本実施形態において圧力制御ユニット91は、パイプ内部圧力検出センサ93からの検出信号に基づき、減圧量が−0.01Mpa〜−0.101Mpa、好ましくは−0.05Mpa〜−0.101Mpa、より好ましくは−0.08Mpa〜−0.101になるように減圧する。このように、コア形成後に減圧させることでコア20中に残った加圧気体や残存した未反応のモノマーなどを除去することができる。なお、本実施形態では減圧時に重合容器19を上述の重合温度で所定時間加熱して、残存している重合性化合物(3FMd7及びPFPMAd5)を全て重合および除去させる。
なお、ガス供給装置29と圧力制御装置30を連結する経路を設けてガスを循環可能として使用ガス量やガスの温度調整コストを低減させるなどが考えられ、また、循環経路にガスクロマトグラフ等の分析機器を接続する経路を設けて、内部の反応状態を詳細に分析しながらフィードバック制御を行う様にすることもできる。
図7に示すように、これらコア形成機25を構成するモータ35、ヒータ38、液供給ユニット68、液温調整ユニット70、窒素ガス供給ユニット85、第1〜第3電磁弁88〜90、圧力制御ユニット91の駆動は、コントローラ95により制御される。このコントローラ95としては、例えば市販のパーソナルコンピュータ(PC)などの各種コンピュータが用いられる。このコントローラ95は、モータ制御部97と、温度制御部98と、液供給制御部99と、液温制御部100と、電磁弁制御部101と、ガス供給制御部102と、圧力制御部103と、図示は省略するが温度センサ39及びパイプ内部圧力検出センサ93からの検出信号が入力される入力ポートとを有している。
モータ制御部97は、モータ35の駆動を制御する。温度制御部98は、ヒータ38とともに本発明のクラッド温度調整手段を構成するものであり、ヒータ38の駆動を制御して恒温室41内の温度、つまり、回転容器32内に収納された重合容器19の温度を調整する。
液供給制御部99は、液供給ユニット68の駆動を制御する。具体的には、液供給制御部99は、形成する樹脂層22(α)に応じて、両貯留槽72,73から混合槽74に向けてそれぞれ送液される3FMd7及びPFPMAd5の送液量を調整して混合溶液24(α)を形成する。また、液供給制御部99は、温度センサ39から出力される検出信号に基づき重合容器19の温度が所定の重合温度に達し、且つ回転容器32(重合容器19)が回転されている時に、送液ポンプ76を駆動して混合溶液24(α)の送液を開始する。
液温制御部100は、液温調整ユニット70のウォータバス79の温度を制御して、送液される混合溶液24(α)の温度を所定温度に調整する。また、電磁弁制御部101は、第1〜第3電磁弁88〜91の開閉を制御する。
ガス供給制御部102は、電磁弁制御部101により第1電磁弁88が閉じられ、且つ第2及び第3電磁弁89,90が開かれたら、窒素ガス供給ユニット85を駆動して重合容器19の内部に窒素ガスをパージさせる。
圧力制御部103は、混合溶液24(α)の注液が完了して、上述の自動連結機構(図示せず)により第2ロータリジョイント66が栓ユニット45に連結された後、混合溶液24(α)の重合率が70〜100%に達するまでは、圧力制御ユニット91を駆動して重合容器19の内部に加圧気体を送り込み、この重合容器19の内部を加圧する。このとき、圧力制御部103は、パイプ内部圧力検出センサ93からの検出信号に基づき、加圧量が所定範囲内に収まるように加圧気体の送り込み量などを調整する。
また、圧力制御部103は、コア20の形成が完了したら、圧力制御ユニット91を駆動して重合容器19の内部を吸引し、この重合容器19の内部を減圧させる。このときも同様に、圧力制御部103は、パイプ内部圧力検出センサ93からの検出信号に基づき、減圧量が所定範囲内に収まるように吸引量などを制御する。
なお、図示は省略するが、コントローラ95としてPCを用いた場合には、そのモニタ(図示せず)に、例えば何番目の樹脂層22(α)まで形成されたかなどのコア形成工程13の進捗状況を表示させることができる。
コア形成時には、温度制御部98はヒータ38を駆動して回転容器32内に収納された重合容器19の温度を所定の重合温度に調整し、モータ制御部97は、モータ35を駆動して重合容器19を回転させる。これと同時に液供給制御部99は、両貯留槽72,73から混合槽74に向けて3FMd7及びPFPMAd5を所定量ずつ送液して、混合槽74内で第1混合溶液24(1)(図示せず)を形成する。この第1混合溶液24(1)はフィルタ75で濾過された後、送液ポンプ76に送られる。
液供給制御部99は、温度センサ39からの検出信号に基づき、重合容器19の温度が所定の重合温度に達したら、送液ポンプ76を駆動して第1混合溶液24(1)を第1ロータリジョイント56に向けて送液する。この際に、電磁弁制御部101は、予め第1電磁弁88を開き、且つ第2及び第3電磁弁89,90を閉じておく。また、液温制御部100は、ウォータバス79の温度を制御して、第1混合溶液24(1)の温度Tsを上述したようにTp−50℃≦Ts≦Tpに調整する。また、栓ユニット45の連結部64と第2ロータリジョイント66との連結を解除しておき、連通路58を開放しておく。
第1ロータリジョイント56に達した第1混合溶液24(1)は、ジョイント56内の液通路81、及び栓ユニット44内の連通路51を介して、回転中の重合容器19の内部に注液される。そして、注液が完了したら、電磁弁制御部101は第1電磁弁88を閉じ、且つ第2及び第3電磁弁89,90を開く。次いで、ガス供給制御部102は、窒素ガス供給ユニット85を駆動して、回転中の重合容器19の内部に窒素ガスをパージさせる。
窒素ガスパージが完了したら、自動連結機構(図示せず)により第2ロータリジョイント66が栓ユニット45に連結される。そして、圧力制御部103は、第1混合溶液24(1)の重合率が70〜100%に達するまでの間、圧力制御ユニット91を駆動して回転中の重合容器19の内部に加圧気体を送り込み、この重合容器19の内部を所定の加圧量で加圧する。重合容器19を重合温度にて回転させながら所定時間保持することで、重合容器19の内面に第1樹脂層22(1)が形成される(図2参照)。
以上により第1層形成工程13(1)が完了する。以下、同様の手順で第2層形成14(2)〜第N層形成工程13(N)を繰り返すことで、第2〜第N樹脂層22(2〜N)が順次形成される(図1参照)。上述したように各樹脂層22(α)は、コア20の中心軸Cに近い層ほど屈折率が高くなるように形成されている。これにより、上述の屈折分布を有する複層構造のコア20が形成される。
コア20が形成されたら、温度制御部98は、ヒータ38を駆動して重合容器19を所定温度で一定時間加熱してアニールを行う。次いで、圧力制御部103は、圧力制御ユニット91を駆動して重合容器19の内部を吸引し、この重合容器19の内部を所定の減圧量で減圧してコア20中に残った加圧気体などを抜く。また、温度制御部98は、減圧前にヒータ38を駆動して重合容器19をそのまま上述の重合温度で一定時間加熱して、残存している3FMd7及びPFPMAd5を全て重合させる。なお、アニールに関しては減圧後に行ってもよい。アニールを行うことで重合による密度揺らぎを除去し過剰な光散乱を抑制することができる。また、残存する未反応モノマーの重合を進め、より残存するモノマーを減少させることができる。この観点では、アニールは減圧前に行うことが好ましい。
減圧が終了したら、回転容器32を回転重合装置27外に取り外す。次いで、重合容器19内からコア20を取り外す。そして、図1に示すようにクラッドパイプ装着工程14において、予め形成されたTHV樹脂製のクラッドパイプ21にコア20を挿入してプリフォーム18を形成する。このプリフォーム18を延伸工程15において長手方向に加熱延伸することにより、所望の径のGI型POF素線17が形成される。この際に、プリフォーム18を減圧しながら延伸させることで、プリフォーム18(コア20)の中空部(図2参照)を完全に消失させて、空隙のないGI型POF素線17が得られる。
被覆工程16では、GI型POF素線17にポリエチレン、ポリプロピレン等からなる第1被覆材(図示せず)を被覆してGI型POFコード(図示せず)を形成する。次いで、このGI型POFコードにアラミド繊維、ポリエステル繊維などからなる抗張力繊維(図示せず)、及びポリエチレン、ポリプロピレン等からなる第2被覆材(図示せず)を順次被覆してGI型POFケーブル10を形成する。このGI型POFケーブル10は、コイル状に巻き取られた後、出荷される。
次に、本実施形態の作用について説明を行う。最初に重合容器製造工程13において、溶融押出製造法などを用いてフッ化ビニリデン樹脂(PVDF)製の重合容器19が形成される。この重合容器19は、回転容器32に収納された後、回転重合装置27の恒温室41内にセットされる。また、重合容器製造工程13と同様の方法で、THV樹脂製のクラッドパイプ21が別途形成される。
回転容器32のセットが完了したら、コントローラ95の温度制御部98はヒータ38を駆動して重合容器19の温度を所定の重合温度に調整し、モータ制御部97は、モータ35を駆動して回転容器32と一体に重合容器19を回転させる。また、液供給制御部99は、混合槽74内で第1混合溶液24(1)(図示せず)を形成し、この第1混合溶液24(1)をフィルタ75で濾過した後に送液ポンプ76に送液する。
液供給制御部99は、温度センサ39からの検出信号に基づき、重合容器19の温度が所定の重合温度に達したら、送液ポンプ76を駆動して第1混合溶液24(1)を送液する。この前に、電磁弁制御部101は、第1電磁弁88を開き、且つ第2及び第3電磁弁89,90を閉じておく。また、液温制御部100は、ウォータバス79の温度を制御して、第1混合溶液24(1)の温度Tsを上述のように調整する。
第1混合溶液24(1)は、第1ロータリジョイント56等を介して回転中の重合容器19の内部に注液される。この際に、予め栓ユニット45の連結部64と第2ロータリジョイント66との連結を解除しておき、連通路58を開放しておく。これにより、注液時にも重合容器19の内部は常圧に保たれるので、第1混合溶液24(1)の注液ができなくなるおそれはない。また、注液時の内部圧力の変動で第1混合溶液24(1)が沸騰するおそれもなくなる。
注液が完了したら、電磁弁制御部101は、第1電磁弁88を閉じ、且つ第2及び第3電磁弁89,90を開く。次いで、ガス供給制御部102は、窒素ガス供給ユニット85を駆動して、重合容器19の内部に窒素ガスをパージさせて、重合容器19の内部の空気を除去する。これにより、第1混合溶液24(1)中に溶存している空気が除去されて、コア20中に重合の不均一性が生じたり、多量のモノマーが残存したりすることが防止される。
窒素ガスパージが完了したら、自動連結機構(図示せず)により第2ロータリジョイント66が栓ユニット45に連結される。次いで、圧力制御部103は、第1混合溶液24(1)の重合率が70〜100%に達するまでの間、圧力制御ユニット91を駆動して重合容器19の内部を加圧する。これにより、重合中の第1混合溶液24(1)の沸騰が防止されるので、同様に後工程でコア20の中に気泡が生じることが防止される。そして、重合容器19を重合温度にて回転させながら所定時間保持することで、重合容器19の内面に第1樹脂層22(1)が形成される。
以上により第1層形成工程13(1)が完了する。以下、同様の手順で第2層形成14(2)〜第N層形成工程13(N)を繰り返すことで、第2〜第N樹脂層22(2〜N)が順次形成されて、重合容器19の内面にコア20が形成される。コア20が形成され、アニールが行われたら、圧力制御部103は圧力制御ユニット91を駆動してこの重合容器19の内部を所定の減圧量で減圧する。これにより、コア20中に残った加圧気体などが抜かれて、コア20の中に気泡が生じることが防止される。また、この減圧時に重合容器19を上述の重合温度で一定時間加熱して、残存している3FMd7及びPFPMAd5を全て重合または除去させる。
このように、本実施形態では重合容器19の温度が所定の重合温度に達し、且つこの重合容器19が回転されてから混合溶液24(α)の注液を行い、この重合温度を保持したまま混合溶液24(α)中の3FMd7及びPFPMAd5(重合性化合物)を重合させるようにしたので、注液時と重合時とで重合容器19の内部の混合溶液24(α)の温度をほぼ一定にすることができる。これにより、形成されたコア20の分子量及び分子量分散のばらつきが低減される。また、コア20が歪んでクラックが発生することを防止できる。その結果、良好な光学性能を有するGI型POFを製造可能なプリフォーム18が得られる。
また、本実施形態では回転容器32を回転重合装置27の外に取り外すことなく、混合溶液24(α)の注液及び重合を繰り返すことができるので、プリフォーム18の製造工程数及び製造に掛かる時間を減らすことができる。
減圧が終了したら、回転容器32を回転重合装置27外に取り外すとともに、重合容器19内からコア20を取り外す。そして、予め形成されたTHV樹脂製のクラッドパイプ21にコア20を挿入してプリフォーム18を形成する。
延伸工程15では、プリフォーム18を長手方向に加熱延伸してGI型POF素線17を形成する。次いで、被覆工程16では、GI型POF素線17に第1被覆材(図示せず)を被覆してGI型POFコード(図示せず)を形成し、このGI型POFコードに抗張力繊維(図示せず)及び第2被覆材(図示せず)を順次被覆してGI型POFケーブル10を形成する。このGI型POFケーブル10は、コイル状に巻き取られた後、出荷される。
なお、上記実施形態では、注液装置28とガス供給装置29とで送液配管69の一部を共用するようにしているが、本発明はこれに限定されるものではく、ガス配管86を第1ロータリジョイント56に接続して、このジョイント56内で注液と窒素ガスパージとを切り替えるようにしてもよい。また、上記実施形態では、加圧時に圧力制御ユニット16は、窒素ガス等の不活性ガスからなる加圧気体を重合容器19の内部に送り込んでいるので、この圧力制御ユニット91をガス供給装置として用いて窒素パージ等を行わせるようにしてもよい。
なお、上記実施形態では、注液時に重合容器19の内部を常圧に保つために、栓ユニット45の連結部64と、第2ロータリジョイント66との連結を解除して、連通路58を開放するようにしているが、本発明はこれに限定されるものではない。例えば、圧力制御用配管92の途中に分岐配管を設けるとともに、この分岐配管の途中に電磁弁等を設けようにしてもよい。この場合には、注液時にのみ電磁弁を開くことで重合容器19の内部を常圧に保つことができる。その結果、栓ユニット45の連結部64と、第2ロータリジョイント66との連結及び連結解除を行う必要がなくなる。
また、上記実施形態では、回転中の重合容器19の内部に混合溶液24(α)を注液するために、栓ユニット44に第1ロータリジョイント56を連結させるようにしたが、本発明はこれに限定されるものではなく、栓ユニット44に対して相対回転自在に連結可能であれば、任意の回転継手を用いてもよい。例えば、栓ユニット44の略円筒状のユニット本体47の周面に、その周方向に沿って連通路51に連通する貫通孔を複数形成する。そして、各貫通孔を覆うようにユニット本体47の周面上に略環状の回転継手を回転自在に取り付けるようにしてもよい。
なお、上記実施形態では、回転容器32を隣り合う駆動ローラ34の周面により形成される谷部にセットして、各駆動ローラ34を回転させることで回転容器32と一体に重合容器19を回転させるようにしているが、本発明はこれに限定されるものでない。例えば、図示は省略するが栓ユニット44,45のいずれか一方に駆動連結機構を介してモータを接続して、直接回転容器32を回転させるようにしてもよい。
また、上記実施形態では、重合容器19として略円筒状のものが用いられているが、本発明はこれに限定されるものではなく、中空部を有する断面形状が多角形状のクラッドパイプを用いても良い。この場合には、上述したように直接回転容器32を回転させる。
なお、上記実施形態では、重合容器19内にコア20を形成して、このコア20を別途に形成されたクラッドパイプ21に挿入させることでプリフォーム18を形成するようにしたが本発明はこれに限定されるものではなく、重合容器19としてクラッドパイプ21を用いるようにしてもよい。この場合には、クラッドパイプ21の内部に直接コア20を形成できるので、工程数を減らすことができるという利点がある。
[実施例]
以下、本発明の効果を明確にするために、本発明の製造法で製造されたプリフォーム18を加熱延伸させたGI型POF素線17と、従来の方法で製造されたプリフォームを加熱延伸させたGI型POF素線との伝送損失をそれぞれ測定して比較を行った。最初に本発明の製造法で製造されたプリフォーム18の製造条件についての説明を行う。
PVDF製の重合容器19が収納された回転容器32を回転重合装置27の恒温室41内にセットした。次いで、この重合容器19を温度が90℃に達するまで2000rpmの回転を与えながら保持した。同時に、液供給ユニット68は、下記表1−(1)に示す配合比で3FMd7、PFPMAd5を混合して第1混合溶液24(1)を形成した。なお、第1混合溶液24(1)中には、重合開始剤として2,2ジメチルアゾビスイソブチレートを0.1mol%及びドデシルメルカプタンを0.05mol%添加した。そして、形成された第1混合溶液24(1)を、フィルタ75(孔径0.2μmのメンブランフィルタ)で濾過した後、送液ポンプ76に送った。
重合容器19の温度が90℃に達したら、第1混合溶液24(1)を重合容器19の内部に注液した。この際に、液温調整ユニット70のウォータバス79の温度を50℃に調整して、重合容器19の内部に注液される第1混合溶液24(1)の液温を50℃に調整した。また、注液時には栓ユニット45の連結部64と第2ロータリジョイント66との連結を解除しておき、連通路58を開放しておいた。重合容器19の内部で圧力変化はなく、注液時の液漏れもなかった。
注液完了後、窒素ガスを重合容器19の内部に圧力0.05Mpaで10秒間パージした。次いで、栓ユニット45の連結部64と第2ロータリジョイント66とを連結して、重合容器19の内部を加圧した。そして、加圧したまま温度90℃にて1時間保持して第1混合溶液24(1)を重合させ、重合容器19の内面に第1樹脂層22(1)を形成した。この第1樹脂層22(1)の重合率は90%であった。
以下、同様にして第2〜第11混合溶液24(2〜11)の注液及び重合を繰り返して、第2〜第11樹脂層22(2〜11)を形成した。これにより、11層構造のコア20が形成された。なお、第2〜第11混合溶液24(2〜11)を形成する際には、3FMd7とPFPMAd5とをそれぞれ下記表1−(2)〜(11)に示す配合比で混合した。コア20が形成されたら、130℃にて24時間のアニールを行った。次いで、重合容器19の内部を減圧しながら90℃にて6時間保持して残存している重合性化合物(3FMd7及びPFPMAd5)を全て重合または除去させた。
減圧後、コア20を重合容器19内から取り出して、このコア20を予め形成されたTHV樹脂(Dyneon:住友スリーエム(株)製)からなるクラッドパイプ21に挿入した。これにより、プリフォーム18が得られた。
プリフォーム18のコア20は、図8に示したような断面径方向における屈折率を有していた。このコア20の重量平均分子量は、第1樹脂層22(1)が20万であり、第11樹脂層22(11)が25万であった。また、分子量分散は、第1樹脂層22(1)が3であり、第11樹脂層22(11)が4であった。
次いで、このプリフォーム18を、そのコア20の中空部を減圧しながら200℃にて加熱延伸してGI型POF素線17を形成した。なお、延伸時には屈折率分布を有する領域、つまり、コア20の径が220μmになるように延伸倍率を調整した。得られたGI型POF素線17の外径の変動は±15μmであった。
次に、従来の方法で製造されたプリフォームの製造条件について説明を行う。このプリフォームの製造時には、上述の注液装置28を用いずに回転重合装置27のみを用いて第1〜第11樹脂層22(1〜11)を形成した。具体的には、一つの樹脂層22(α)が形成されたら回転容器32を装置外に取り出して、容器32が冷却された後に次の混合溶液24(α+1)を注液した。そして、この回転容器32を再度回転重合装置32内にセットして混合溶液24(α+1)を重合させることを繰り返した。なお、重合時の温度、加熱時間は上述のプリフォーム18形成時と同じ条件にした。得られたプリフォームのコアの重量平均分子量は、第1樹脂層(1)が30万であり、第11樹脂層が50万であった。また、分子量分散は、第1樹脂層が4であり、第11樹脂層が8であった。また、このプリフォームを加熱延伸して得られたGI型POFの外径の変動は±30μmであった。
GI型POF素線17と、比較例のGI型POF素線との伝送損失をそれぞれ測定した。GI型POF素線17の伝送損失は、650nmで90dB/km、780nmで80dB/km、850nmで100dB/kmであった。また、従来の方法で製造されたGI型POF素線の伝送損失は、650nmで150dB/km、780nmで100dB/km、850nmで130dB/kmであった。
以上の結果より、本発明の製造法で製造されたプリフォーム18を加熱延伸したGI型POF素線17が、従来の方法で製造されたプリフォームを加熱延伸したGI型POF素線よりも伝送損失が小さくなることが確認された。