以下、図面を参照しながら、本発明の実施形態を説明する。
(実施形態1)
まず、本発明の液晶表示装置が有する電極構造とその作用とを説明する。本発明による液晶表示装置は、優れた表示特性を有するので、アクティブマトリクス型液晶表示装置に好適に利用される。以下では、薄膜トランジスタ(TFT)を用いたアクティブマトリクス型液晶表示装置について、本発明の実施形態を説明する。本発明はこれに限られず、MIMを用いたアクティブマトリクス型液晶表示装置や単純マトリクス型液晶表示装置に適用することができる。また、以下では、透過型液晶表示装置を例に本発明の実施形態を説明するが、本発明はこれに限られず、反射型液晶表示装置や、さらに、後述する透過反射両用型液晶表示装置に適用することができる。
なお、本願明細書においては、表示の最小単位である「絵素」に対応する液晶表示装置の領域を「絵素領域」と呼ぶ。カラー液晶表示装置においては、R,G,Bの「絵素」が1つの「画素」に対応する。絵素領域は、アクティブマトリクス型液晶表示装置においては、絵素電極と絵素電極と対向する対向電極とが絵素領域を規定する。また、単純マトリクス型液晶表示装置においては、ストライプ状に設けられる列電極と列電極と直交するように設けられる行電極とが互いに交差するそれぞれの領域が絵素領域を規定する。なお、ブラックマトリクスが設けられる構成においては、厳密には、表示すべき状態に応じて電圧が印加される領域のうち、ブラックマトリクスの開口部に対応する領域が絵素領域に対応することになる。
本発明による実施形態の液晶表示装置100の1つの絵素領域の断面を模式的に図1に示す。以下では、説明の簡単さのためにカラーフィルタやブラックマトリクスを省略する。また、以下の図面においては、液晶表示装置100の構成要素と実質的に同じ機能を有する構成要素を同じ参照符号で示し、その説明を省略する。なお、わかり易さのために、図1は液晶表示装置100の1つの絵素領域を示すこととするが、後に詳述するように、本発明による液晶表示装置は図1に示した電極構成を1つの絵素領域内に少なくとも1つ有せばよい。
液晶表示装置100は、アクティブマトリクス基板(以下「TFT基板」と呼ぶ。)100aと、対向基板(「カラーフィルタ基板」とも呼ぶ)100bと、TFT基板100aと対向基板100bとの間に設けられた液晶層30とを有している。液晶層30の液晶分子30aは、負の誘電率異方性を有し、TFT基板100aおよび対向基板100bの液晶層30側の表面に設けられた垂直配向層(不図示)によって、液晶層30に電圧が印加されていないとき、図1(a)に示したように、垂直配向膜の表面に対して垂直に配向する。このとき、液晶層30は垂直配向状態にあるという。但し、垂直配向状態にある液晶層30の液晶分子30aは、垂直配向膜の種類や液晶材料の種類によって、垂直配向膜の表面(基板の表面)の法線から若干傾斜することがある。一般に、垂直配向膜の表面に対して、液晶分子軸(「軸方位」とも言う。)が約85°以上の角度で配向した状態が垂直配向状態と呼ばれる。
液晶表示装置100のTFT基板100aは、透明基板(例えばガラス基板)11とその表面に形成された絵素電極15とを有している。対向基板100bは、透明基板(例えばガラス基板)21とその表面に形成された対向電極22とを有している。液晶層30を介して互いに対向するように配置された絵素電極15と対向電極22とに印加される電圧に応じて、絵素領域ごとの液晶層30の配向状態が変化する。液晶層30の配向状態の変化に伴い、液晶層30を透過する光の偏光状態や量が変化する現象を利用して表示が行われる。
液晶表示装置100が有する絵素電極15は、下層導電層12と、下層導電層12の少なくとも一部を覆う誘電体層13と、誘電体層の液晶層30側に設けれた上層導電層14とを有している。図1に示した液晶表示装置100においては、開口部14aに対向する基板11上の領域を全て含む領域に下層導電層12が形成されている(下層導電層12の面積>開口部14aの面積)。
なお、本実施形態の液晶表示装置における絵素電極15の構成は、上記の例に限られず、図2(a)に示す液晶表示装置100’のように、開口部14aに対向する基板11上の領域に下層導電層12を形成してもよい(下層導電層12の面積=開口部14aの面積)。また、図2(b)に示す液晶表示装置100’’のように、開口部14aに対向する基板11上の領域内に下層導電層12を形成してもよい(下層導電層12の面積<開口部14aの面積)。すなわち、下層導電層12は、誘電体層13を介して開口部14aの少なくとも一部と対向するように設けられていればよい。但し、下層導電層12が開口部14a内に形成された構成(図2(b))においては、基板11の法線方向から見た平面内に、下層導電層12および上層導電層14のいずれもが存在しない領域(隙間領域)が存在し、この隙間領域に対向する領域の液晶層30に十分な電圧が印加されないことがある。従って、液晶層30の配向を安定化するように、この隙間領域の幅(図2(b)中のWS)を十分に狭くすることが好ましい。WSは、典型的には、約4μmを越えないことが好ましい。
なお、下層導電層12および上層導電層14を備える絵素電極15を「2層構造電極」と呼ぶこともある。「下層」および「上層」は、2つの電極12および14の誘電体層13に対する相対的な関係を表すために用いた用語であり、液晶表示装置の使用時の空間的な配置を制限するものではない。さらに、「2層構造電極」は、下層導電層12および上層導電層14以外の電極を有する構成を排除するものではなく、少なくとも下層導電層12および上層導電層14を有し、以下に説明する作用を有する構成であればよい。また、2層構造電極は、TFT型液晶表示装置における絵素電極である必要はなく、絵素領域ごとに2層構造電極を有せば他のタイプの液晶表示装置にも適用され得る。具体的には、例えば、単純マトリクス型液晶表示装置における列電極(信号電極)が、絵素領域毎に2層構造を有せば、絵素領域内の列電極が2層構造電極として機能する。
次に、図1、図3および図4を参照しながら、2層構造電極を備える液晶表示装置の動作を、他の構成の電極を備える液晶表示装置の動作と比較しながら説明する。
まず、液晶表示装置100の動作を、図1を参照しながら説明する。
図1(a)は、電圧が印加されていない液晶層30内の液晶分子30aの配向状態(OFF状態)を模式的に示している。図1(b)は、液晶層30に印加された電圧に応じて、液晶分子30aの配向が変化し始めた状態(ON初期状態)を模式的に示している。図1(c)は、印加された電圧に応じて変化した液晶分子30aの配向が定常状態に達した状態を模式的に示している。図1では、簡単さのために、絵素電極15を構成する下層導電層12および上層導電層14に同一の電圧を印加した例を示している。図1(b)および(c)中の曲線EQは等電位線EQを示す。
図1(a)に示したように、絵素電極15と対向電極22が同電位のとき(液晶層30に電圧が印加されていない状態)には、絵素領域内の液晶分子30aは、両基板11および21の表面に対して垂直に配向している。
液晶層30に電圧を印加すると、図1(b)に示した等電位線EQ(電気力線と直交する)EQで表される電位勾配が形成される。絵素電極15の上層導電層14と対向電極22との間に位置する液晶層30内には、上層導電層14および対向電極22の表面に対して平行な等電位線EQで表される、均一な電位勾配が形成される。上層導電層14の開口部14aの上に位置する液晶層30には、下層導電層12と対向電極22との電位差に応じた電位勾配が形成される。このとき、液晶層30内に形成される電位勾配が、誘電体層13による電圧降下(容量分割)の影響を受けるので、液晶層30内に形成される等電位線EQは、開口部14aに対応する領域で落ち込む(等電位線EQに「谷」が形成される)。開口部14aに対応する領域で、等電位線EQの一部が誘電体層13内に侵入していることが、誘電体層13によって電圧降下(容量分割)が生じていることを表している。誘電体層13を介して開口部14aに対向する領域に下層導電層12が形成されているので、開口部14aの中央付近上に位置する液晶層30内にも、上層導電層14および対向電極22の面に対して平行な等電位線EQで表される電位勾配が形成される(等電位線EQの「谷の底」)。開口部14aのエッジ部(開口部14aの境界(外延)を含む開口部14aの内側周辺)EG上の液晶層30内には、傾斜した等電位線EQで表される斜め電界が形成される。
負の誘電異方性を有する液晶分子30aには、液晶分子30aの軸方位を等電位線EQに対して平行(電気力線に対して垂直)に配向させようとするトルクが作用する。従って、エッジ部EG上の液晶分子30aは、図1(b)中に矢印で示したように、図中の右側エッジ部EGでは時計回り方向に、図中の左側エッジ部EGでは反時計回り方向に、それぞれ傾斜(回転)し、等電位線EQに平行に配向する。
ここで、図5を参照しながら、液晶分子30aの配向の変化を詳細に説明する。
液晶層30に電界が生成されると、負の誘電率異方性を有する液晶分子30aには、その軸方位を等電位線EQに対して平行に配向させようとするトルクが作用する。図5(a)に示したように、液晶分子30aの軸方位に対して垂直な等電位線EQで表される電界が発生すると、液晶分子30aには時計回りまたは反時計回り方向に傾斜させるトルクが等しい確率で作用する。従って、図3を参照しながら後述するように、互いに対向する平行平板型配置の電極間にある液晶層30内には、時計回り方向のトルクを受ける液晶分子30aと、反時計回りに方向のトルクを受ける液晶分子30aとが混在する。その結果、液晶層30に印加された電圧に応じた配向状態への変化がスムーズに起こらないことがある。
図1(b)に示したように、本発明による液晶表示装置100の開口部14aのエッジ部EGにおいて、液晶分子30aの軸方位に対して傾斜した等電位線EQで表される電界(斜め電界)が発生すると、図5(b)に示したように、液晶分子30aは、等電位線EQと平行になるための傾斜量が少ない方向(図示の例では反時計回り)に傾斜する。また、液晶分子30aの軸方位に対して垂直方向の等電位線EQで表される電界が発生する領域に位置する液晶分子30aは、図5(c)に示したように、傾斜した等電位線EQ上に位置する液晶分子30aと配向が連続となるように(整合するように)、傾斜した等電位線EQ上に位置する液晶分子30aと同じ方向に傾斜する。なお、「等電位線EQ上に位置する」とは、「等電位線EQで表される電界内に位置する」ことを意味する。
上述したように、傾斜した等電位線EQ上に位置する液晶分子30aから始まる配向の変化が進み、定常状態に達すると、図1(c)に模式的に示した配向状態となる。開口部14aの中央付近に位置する液晶分子30aは、開口部14aの互いに対向する両側のエッジ部EGの液晶分子30aの配向の影響をほぼ同等に受けるので、等電位線EQに対して垂直な配向状態を保ち、開口部14aの中央から離れた領域の液晶分子30aは、それぞれ近い方のエッジ部EGの液晶分子30aの配向の影響を受けて傾斜し、開口部14aの中心SAに関して対称な傾斜配向を形成する。この配向状態は、液晶表示装置100の表示面に垂直な方向(基板11および21の表面に垂直な方向)からみると、液晶分子30aの軸方位が開口部14aの中心に関して放射状に配向した状態にある(不図示)。そこで、本願明細書においては、このような配向状態を「放射状傾斜配向」と呼ぶことにする。
液晶表示装置の視角依存性を全方位において改善するためには、それぞれの絵素領域内の液晶分子の配向が表示面に垂直な方向の軸を中心とする回転対称性を有することが好ましく、軸対称性を有することがさらに好ましい。従って、開口部14aは絵素領域の液晶層30の配向が回転対称性(または軸対称性)を有するように配置されることが好ましい。絵素領域毎に1つの開口部14aを形成する場合には、開口部14aを絵素領域の中央に設けることが好ましい。また、開口部14aの形状(液晶層30の層面内における形状)も、回転対称性(軸対称性)を有することが好ましく、正方形などの正多角形や円形であることが好ましい。絵素領域に複数の開口部14aを形成する場合の配置については、後述する。
図1(a)〜(c)を参照しながら説明したように、本発明による液晶表示装置100は、絵素領域毎に2層構造電極15を有しており、絵素領域内の液晶層30内に、傾斜した領域を有する等電位線EQで表される電界を生成する。電圧無印加時に垂直配向状態にある液晶層30内の負の誘電異方性を有する液晶分子30aは、傾斜した等電位線EQ上に位置する液晶分子30aの配向変化をトリガーとして、配向方向を変化し、安定な放射状傾斜配向を形成する。勿論、図2(a)および(b)に示した液晶表示装置100’および100’’も同様に動作する。但し、図2(b)の構成において、隙間領域WSがあまり大きくなると(例えば、約5μmを越えると)、開口部14aのエッジ部には十分な電圧が印加されず、表示に寄与しない領域となってしまうことがある。
次に、図3を参照しながら、従来の典型的な液晶表示装置200の動作を説明する。図3(a)〜(c)は、液晶表示装置200の1つの絵素領域を模式的に示している。
液晶表示装置200は、互いに対向するように配置された絵素電極15Aおよび対向電極22を有する。絵素電極15Aおよび対向電極22は、いずれも開口部14aを有しない、単一の導電層から形成されている。
図3(a)に示したように、液晶層30に電圧が印加されていないとき、液晶層30は垂直配向状態をとる。
液晶層30に電圧を印加することによって生成される電界は、図3(b)に示したように、絵素領域全体に亘って、絵素電極15Aおよび対向電極22の表面に対して平行な等電位線EQで表される。このとき、液晶分子30aは軸方位が等電位線EQに対して平行となるように配向方向を変えようとするが、液晶分子30aの軸方位と等電位線EQとが直交する電界下においては、図5(a)に示したように、液晶分子30aが傾斜(回転)する方向が一義的に定まらない。液晶分子30aは、典型的には、垂直配向膜の局所的な表面状態の違いの影響を受け、種々の方向に傾斜し始める。その結果、液晶分子30aの配向状態が複数の絵素領域間で異なり、液晶表示装置200による表示は、ざらついた表示となる。また、液晶層30の配向状態が図3(c)に示した定常状態に到達するまでに、上述した本発明の液晶表示装置100よりも長い時間が必要となる。
すなわち、本発明の液晶表示装置100は、従来の液晶表示装置200と比較し、ざらつきのない高品位の表示が可能であり、且つ、応答速度が速い、という特徴を有している。
次に、図4を参照しながら、絵素電極15Bに開口部15bを有する液晶表示装置300の動作を説明する。絵素電極15Bは開口部15bを有する単一の電極で構成されており、下層導電層12(例えば図1参照)を有していない点において本発明の液晶表示装置の絵素電極15と異なる。液晶表示装置300は、前述した特開平6−301036号公報に開示されている、対向電極に開口部14aを有する液晶表示装置と同様に斜め電界を液晶層30中に発生する。
液晶表示装置300の液晶層30は、図4(a)に示したように、電圧無印加時には垂直配向状態をとる。電圧無印加時の液晶層30の配向状態は、本発明の液晶表示装置(図1および図2)や従来の典型的な液晶表示装置(図3)と同じである。
液晶層30に電圧を印加すると、図4(b)に示した等電位線EQで表される電界が生成される。絵素電極15Bは、本実施形態の液晶表示装置100の絵素電極15(例えば図1参照)と同様に開口部15bを有するので、液晶表示装置200の液晶層30に生成される等電位線EQは、開口部15bに対応する領域で落ち込み、開口部15bのエッジ部EG上の液晶層30内に傾斜した等電位線EQで表される斜め電界が形成される。しかし、絵素電極15Bは単一の導電層から形成されており、開口部15bに対応する領域には下層導電層(絵素電極と同じ電位)を有しないので、開口部15b上に位置する液晶層30内には電界が生成されない領域(等電位線EQが描かれていない領域)が存在する。
上述のような電界下に置かれた負の誘電率異方性を有する液晶分子30aは、以下の様に振舞う。まず、開口部15bのエッジ部EG上の液晶分子30aは、図4(b)中に矢印で示したように、図中の右側エッジ部EGでは時計回り方向に、図中の左側エッジ部EGでは反時計回り方向に、それぞれ傾斜(回転)し、等電位線EQに平行に配向する。これは、図1(b)を参照しながら説明した、本実施形態の液晶表示装置100における液晶分子30aと同じ振る舞いであるり、エッジ部EG付近の液晶分子30aの傾斜(回転)方向を一義的に決定し、安定に配向変化を起こすことができる。
しかしながら、開口部15bのエッジ部EGを除く領域の上に位置する液晶層30には電界が発生しないので、配向を変化するトルクは発生しない。その結果、十分な時間が経過して液晶層30の配向変化が定常状態に達しても、図4(c)に示したように、開口部15bのエッジ部EGを除く領域の上に位置する液晶層30は、垂直配向状態のままである。勿論、エッジ部EG付近の液晶分子30aの配向変化の影響を受けて、一部の液晶分子30aは配向を変化するが、開口部15b上の液晶層30内の全ての液晶分子30aの配向を変化することはできない。開口部15bの端部からどれぐらいの位置にある液晶分子30aまで、その影響が及ぶかは、液晶層30の厚さや液晶材料の物性(誘電率異方性の大きさ、弾性率など)にも依存するが、開口部15bを介して互いに隣接する実際に導電層が存在する領域(「中実部」とも言う)間の距離が約4μmを越えると、開口部15bの中央付近の液晶分子30aは電界によって配向を変化することなく、垂直配向を維持する。従って、液晶表示装置300の液晶層30の内の開口部15b上に位置する領域は、表示に寄与しないので、表示品位の低下を招く。例えば、ノーマリブラックの表示モードにおいては、実効開口率が低下し、表示輝度が低下する。
このように、液晶表示装置300は、開口部15bを有する絵素電極15Bによって形成される斜め電界によって、液晶分子30aの配向が変化する方向を一義的に決定するので、従来の典型的な液晶表示装置200で起こる表示のざらつきを防止できるものの、輝度が暗くなる。本実施形態の液晶表示装置100は、開口部14aを有する上層導電層14と開口部14aと対向するように設けられた下層電極12とを有するので、開口部14a上に位置する液晶層30のほぼ全ての領域に電界を作用させ、表示に寄与させることができる。従って、本実施形態の液晶表示装置100は、高輝度で、且つざらつきが無い高品位の表示を実現することができる。
本実施形態の液晶表示装置が有する2層構造電極(絵素電極)15の上層導電層14が有する開口部14aの形状(基板法線方向から見た形状)について説明する。開口部14aの形状は、多角形でもよいし、円形や楕円形でもよい。
液晶表示装置の表示特性は、液晶分子の配向状態(光学的異方性)に起因して、方位角依存性を示す。表示特性の方位角依存性を低減するためには、液晶分子が全ての方位角に対して同等の確率で配向していることが好ましい。また、それぞれの絵素領域内の液晶分子が全ての方位角に対して同等の確率で配向していることがさらに好ましい。従って、開口部14aは、それぞれの絵素領域内の液晶分子が、すべての方位角に対して同等の確率で配向するような形状を有していることが好ましい。具体的には、開口部14aの形状は、それぞれ絵素領域の中心(法線方向)を対称軸とする回転対称性を有することが好ましい。2回回転軸以上の高い回転対称性の軸を有することがさらに好ましい。
開口部14aの形状が多角形の場合の液晶分子30aの配向状態を図6(a)〜図6(c)を参照しながら説明する。図6(a)〜(c)は、それぞれ、基板法線方向から見た液晶分子30aの配向状態を模式的に示している。図6(b)および(c)など、基板法線方向から見た液晶分子30aの配向状態を示す図において、楕円状に描かれた液晶分子30aの先が黒く示されている端は、その端が他端よりも、開口部14aを有する2層電極が設けらている基板側に近いように、液晶分子30aが傾斜していることを示している。以下の図面においても同様である。
ここでは、矩形(正方形と長方形を含む)の絵素領域に対応して、矩形の開口部14aを形成した構造を例に説明する。図6(a)中の1A−1A’線に沿った断面図は図1(a)に相当し、図6(b)中の1B−1B’線に沿った断面図は図1(b)に相当し、図6(c)中の1C−1C’線に沿った断面図は図1(c)に相当する。図1(a)〜図1(c)を合わせて参照しながら説明する。勿論、絵素領域(絵素電極15)の形状はこれに限られない。
下層導電層12と上層導電層14とを有する絵素電極15および対向電極22が同電位のとき、すなわち液晶層30に電圧が印加されていない状態においては、TFT基板100aおよび対向基板100bの液晶層30側表面に設けられた垂直配向層(不図示)によって配向方向が規制されている液晶分子30aは、図6(a)に示したように、垂直配向状態を取る。
液晶層30に電界を印加し、図1(a)に示した等電位線EQで表される電界が発生すると、負の誘電率異方性を有する液晶分子30aには、軸方位が等電位線EQに平行になるようなトルクが発生する。図5(a)および(b)を参照しながら説明したように、液晶分子30aの分子軸に対して垂直な等電位線EQで表される電場下の液晶分子30aは、液晶分子30a傾斜(回転)する方向が一義的に定まっていないため(図5(a))、配向の変化(傾斜または回転)が容易に起こらないのに対し、液晶分子30aの分子軸に対して傾斜した等電位線EQ下に置かれた液晶分子30aは、傾斜(回転)方向が一義的に決まるので、配向の変化が容易に起こる。図6に示した構造では、等電位線EQに対して液晶分子30aの分子軸が傾いている上層導電層14の矩形の開口部14aの4辺のエッジ部から液晶分子30aが傾斜し始める。そして、図5(c)を参照しながら説明したように、開口部14aのエッジ部の傾斜した液晶分子30aの配向と整合性をとるように周囲の液晶分子30aも傾斜し、図6(c)に示したように、液晶分子30aの軸方位は安定する(放射状傾斜配向)。
このように、上層導電層14の開口部14aが、スリット状(長さに対して幅(長さに直交する方向)が著しく狭い形状)ではなく、矩形状であると、絵素領域内の液晶分子30aは、電圧印加時に、開口部14aの4辺のエッジ部から開口部14aの中心に向かって液晶分子30aが傾斜するので、エッジ部からの液晶分子30aの配向規制力が釣り合う開口部14aの中心付近の液晶分子30aは基板面に対して垂直に配向した状態を維持し、その回りの液晶分子30aが開口部14aの中心付近の液晶分子30aを中心に放射状に液晶分子30aが連続的に傾斜した状態が得られる。このように、絵素領域毎に液晶分子30aが放射状傾斜配向をとると、全ての視角方向(方位角方向も含む)に対して、それぞれの軸方位の液晶分子30aの存在確率がほぼ等しくなり、あらゆる視角方向に対して、ざらつきのない高品位の表示を実現することができる。
さらに、開口部14aの形状を回転対称性(4回回転軸を有する)の高い正方形とすると、回転対称性の低い(2回回転軸を有する)長方形よりも、開口部14aの中心を対称軸とする液晶分子30aの放射状傾斜配向の対称性が高くなるので、視角方向に対して一層ざらつきのない良好な表示を実現できる。なお、開口部14aの形状として矩形を例示したが、開口部14aの内側の液晶分子30aが電圧印加時に安定した放射状傾斜配向をとるのであれば、他の多角形であってもよく、回転対称が高い正多角形がさらに好ましい。
なお、液晶分子30aの放射状傾斜配向は、図8(a)に示したような単純な放射状傾斜配向よりも、図8(b)および(c)に示したような、左回りまたは右回りの渦巻き状の放射状傾斜配向の方が安定である。なお、ここでいう渦巻き状配向は、液晶層面内(基板面内)における液晶分子の配向状態を表す。液晶材料に少量のカイラル剤を添加したときに見られる渦巻き状配向は、通常のツイスト配向のように液晶層30の厚さ方向に沿って液晶分子30aの配向方向が螺旋状にほとんど変化することがなく、液晶分子30aの配向方向を微小領域でみると、液晶層30の厚さ方向に沿ってほとんど変化していない。すなわち、液晶層30の厚さ方向のどこの位置の断面(層面に平行な面内での断面)においても、図8(b)または(c)と同じ配向状態にあり、液晶層30の厚さ方向に沿ったツイスト変形をほとんど生じていない。但し、開口部14aの全体でみると、ある程度のツイスト変形が発生している。
負の誘電異方性を有するネマチック液晶材料にカイラル剤を添加した材料を用いると、図7(a)および(b)にそれぞれ示すように、電圧印加時に、液晶分子30aは、開口部14aを中心に左回りまたは右回りの渦巻き状放射状傾斜配向をとる。右回りか左回りかは用いるカイラル剤の種類によって決まる。従って、電圧印加時に開口部14a内の液晶層30を渦巻き状放射状傾斜配向させることによって、放射状傾斜している液晶分子30aの、基板面に垂直に立っている液晶分子30aの周りを巻いている方向を全ての開口部14a内で一定にすることができるので、ざらつきの無い均一な表示が可能になる。さらに、基板面に垂直に立っている液晶分子30aの周りを巻いている方向が定まっているので、液晶層30に電圧を印加した際の応答速度も向上する。
更に、多くのカイラル剤を添加すると、渦巻き配向状態の液晶層においても、その微小領域に着目すると、通常のツイスト配向のように、液晶層30の厚さ方向に沿って液晶分子30aの配向が螺旋状に変化するようになる。
液晶層30の厚さ方向に沿って液晶分子30aの配向が螺旋状に変化しない配向状態では、偏光板の偏光軸に対して垂直方向または平行方向に配向している液晶分子30aは、入射光に対して位相差を与えないため、この様な配向状態の領域を通過する入射光は透過率に寄与しない。例えば、偏光板がクロスニコル状態に配置された液晶表示装置の白表示状態の絵素領域を観察すると、放射状傾斜配向した液晶ドメインの中央部に十字の消光模様が明確に観察される。
これに対し、液晶層30の厚さ方向に沿って液晶分子30aの配向が螺旋状に変化する配向状態においては、偏光板の偏光軸に垂直方向または平行方向に配向している液晶分子30aも、入射光に対して位相差を与えるとともに、光の旋光性を利用することもできる。従って、この様な配向状態の領域を通過する入射光も透過率に寄与するので、明るい表示が可能な液晶表示装置を得ることができる。例えば、偏光板がクロスニコル状態に配置された液晶表示装置の白表示状態の絵素領域を観察すると、放射状傾斜配向した液晶ドメインの中央部の十字の消光模様は不明確になり、全体に明るくなる。旋光性による光の利用効率を効率良く向上するために、液晶層のツイスト角は、約90度であることが好ましい。
開口部14aの形状は、上述した多角形に限られず、円形や楕円形でも良い。
開口部14aの形状が円形の場合の液晶分子30aの配向状態を図9(a)〜図9(c)を参照しながら説明する。図9(a)〜図9(c)は、それぞれ、基板法線方向から見た液晶分子30aの配向状態を模式的に示している。ここでは、矩形の絵素領域に対して、円形の開口部14aを形成した構造を例に説明する。図9(a)中の1A−1A’線に沿った断面図は図1(a)に相当し、図9(b)中の1B−1B’線に沿った断面図は図1(b)に相当し、図9(c)中の1C−1C’線に沿った断面図は図1(c)に相当する。図1(a)〜図1(c)を合わせて参照しながら説明する。
下層導電層12と上層導電層14とを有する絵素電極15および対向電極22が同電位のとき、すなわち液晶層30に電圧が印加されていない状態においては、TFT基板100aおよび対向基板100bの液晶層30側表面に設けられた垂直配向層(不図示)によって配向方向が規制されている液晶分子30aは、図9(a)に示したように、垂直配向状態を取る。
液晶層30に電界を印加し、図1(a)に示した等電位線EQで表される電界が発生すると、負の誘電率異方性を有する液晶分子30aには、軸方位が等電位線EQに平行になるようなトルクが発生する。図5(a)および(b)を参照しながら説明したように、液晶分子30aの分子軸に対して垂直な等電位線EQで表される電場下の液晶分子30aは、液晶分子30aが傾斜(回転)する方向が一義的に定まっていないため(図5(a))、配向の変化(傾斜または回転)が容易に起こらないのに対し、液晶分子30aの分子軸に対して傾斜した等電位線EQ下に置かれた液晶分子30aは、傾斜(回転)方向が一義的に決まるので、配向の変化が容易に起こる。図9に示した構造では、等電位線EQに対して液晶分子30aの分子軸が傾いている上層導電層14の円形の開口部14aの円周のエッジ部から液晶分子30aが傾斜し始める。そして、図5(c)を参照しながら説明したように、開口部14aのエッジ部の傾斜した液晶分子30aの配向と整合性をとるように周囲の液晶分子30aも傾斜し、図9(c)に示したような状態で液晶分子30aの軸方位は安定する(放射状傾斜配向)。
このように、上層導電層14の開口部14aが、円形状であると、絵素領域内の液晶分子30aは、電圧印加時に、開口部14aの円周のエッジ部から開口部14aの中心に向かって液晶分子30aが傾斜するので、エッジ部からの液晶分子30aの配向規制力が釣り合う開口部14aの中心付近の液晶分子30aは基板面に対して垂直に配向した状態を維持し、その回りの液晶分子30aが開口部14aの中心付近の液晶分子30aを中心に放射状に液晶分子30aが連続的に傾斜した状態(放射状傾斜配向)が得られる。開口部14aの形状が円形の場合には四角形の場合よりも、放射状傾斜配向の中心(基板面に垂直に配向した液晶分子30aの位置)が開口部14aの中心に安定に形成されるので、電圧印加時にあらゆる方向において、ざらつきのない高品位の表示を実現することができる。
開口部14aの形状が円形の場合に得られる、放射状傾斜配向の中心位置が安定するという作用は、円の回転対称性が高いことともに、液晶分子30aが傾斜する方向を決める開口部14aのエッジが連続していること、にあると考えられる。開口部14aのエッジが連続していることによる、放射状傾斜配向安定化の作用は、開口部14aの形状を楕円(長円)としても得られる。
なお、液晶分子30aの放射状傾斜配向は、図8を参照しながら上述したように、渦巻き状配向性を付与することによって、より安定化する。従って、図10(a)および図10(b)にそれぞれ示すように、開口部14aを中心に左回りまたは右回り渦巻き状放射状傾斜配向とする方が好ましい。特に、開口部14aの面積が大きくなり、開口部14aの辺から中心までの距離が長くなると、開口部14a内に位置する液晶分子30aの配向が安定しにくくなるので、渦巻き状配向性を付与することが好ましい。例えば、液晶材料にカイラル剤を添加することによって、放射状配向に渦巻き配向を付与することができる。
〔複数の開口部を有する構成〕
上記では、絵素領域毎に1つの開口部を有する構成を例に、開口部を有する2層構造電極の構成と作用とを説明したが、開口部を絵素領域毎に複数設けても良い。以下では、絵素領域毎に複数の開口部を有する2層構造の絵素電極を用いる構成について説明する。
絵素領域毎に複数の開口部を設ける場合には、絵素領域内の液晶分子が全方位的に均一な配向をとるように、上述したように複数の開口部のそれぞれが回転対称性を有する形状を有することが好ましく、さらに、複数の開口部の配置が回転対称性を有することが好ましい。以下では、絵素領域毎に複数の開口部を回転対称性を有するように配置した2層構造の絵素電極を有する液晶表示装置を例にその構成と動作を説明する。
図11に、複数の開口部14a(14a1および14a2を含む)を有する絵素電極15を備えた液晶表示装置400の1つの絵素領域の断面構造を模式的に示す。液晶表示装置400は、TFT基板400aと対向基板100b(図1に示した対向基板100bと実質的に同じ。)とを有している。
図11(a)は、電圧が印加されていない液晶層30内の液晶分子30aの配向状態(OFF状態)を模式的に示している。図11(b)は、液晶層30に印加された電圧に応じて、液晶分子30aの配向が変化し始めた状態(ON初期状態)を模式的に示している。図11(c)は、印加された電圧に応じて変化した液晶分子30aの配向が定常状態に達した状態を模式的に示している。図11(a)、(b)および(c)は、絵素領域毎に1つの開口部14aを有する絵素電極15を備えた液晶表示装置100についての図1(a)、(b)および(c)にそれぞれ対応する。なお、図11では、開口部14a1および14a2に誘電体層13を介して対向するように設けられた下層導電層12は、開口部14a1および14a2のそれぞれと重なり、且つ、開口部14a1および14a2との間の領域(上層導電層14が存在する領域)にも存在するように形成された例を示したが、下層導電層12の配置はこれに限られず、開口部14a1および14a2のそれぞれに対して、図11(a)〜(c)に示した配置関係を有するように配置されればよい。また、誘電体層13を介して上層導電層14の導電層が存在する領域と対向する位置に形成された下層導電層12は、液晶層30に印加される電界に実質的に影響しないので、特にパターングする必要はないが、パターニングしてもよい。
図11(a)に示したように、絵素電極15と対向電極22が同電位のとき(液晶層30に電圧が印加されていない状態)には、絵素領域内の液晶分子30aは、両基板11および21の表面に対して垂直に配向している。
液晶層30に電圧を印加すると、図11(b)に示した等電位線EQで表される電位勾配が形成される。絵素電極15の上層導電層14と対向電極22との間に位置する液晶層30内には、上層導電層14および対向電極22の表面に対して平行な等電位線EQで表される、均一な電位勾配が形成される。上層導電層14の開口部14a1および14a2の上に位置する液晶層30には、下層導電層12と対向電極22との電位差に応じた電位勾配が形成される。このとき、液晶層30内に形成される電位勾配が、誘電体層13による電圧降下の影響を受けるので、液晶層30内に形成される等電位線EQは、開口部14a1および14a2に対応する領域で落ち込む(等電位線EQに複数の「谷」が形成される)。誘電体層13を介して開口部14a1および14a2に対向する領域に下層導電層12が形成されているので、開口部14a1および14a2のそれぞれの中央付近上に位置する液晶層30内にも、上層導電層14および対向電極22の面に対して平行な等電位線EQで表される電位勾配が形成される(等電位線EQの「谷の底」)。開口部14a1および14a2のエッジ部(開口部の境界(外延)を含む開口部の内側周辺)EG上の液晶層30内には、傾斜した等電位線EQで表される斜め電界が形成される。
負の誘電異方性を有する液晶分子30aには、液晶分子30aの軸方位を等電位線EQに対して平行に配向させようとするトルクが作用する。従って、エッジ部EG上の液晶分子30aは、図11(b)中に矢印で示したように、図中の右側エッジ部EGでは時計回り方向に、図中の左側エッジ部EGでは反時計回り方向に、それぞれ傾斜(回転)し、等電位線EQに平行に配向する。
図11(b)に示したように、本発明による液晶表示装置400の開口部14a1および14a2のエッジ部EGにおいて、液晶分子30aの軸方位に対して傾斜した等電位線EQで表される電界(斜め電界)が発生すると、図5(b)に示したように、液晶分子30aは、等電位線EQと平行になるための傾斜量が少ない方向(図示の例では反時計回り)に傾斜する。また、液晶分子30aの軸方位に対して垂直方向の等電位線EQで表される電界が発生する領域に位置する液晶分子30aは、図5(c)に示したように、傾斜した等電位線EQ上に位置する液晶分子30aと配向が連続となるように(整合するように)、傾斜した等電位線EQ上に位置する液晶分子30aと同じ方向に傾斜する。
上述したように、傾斜した等電位線EQ上に位置する液晶分子30aから始まる配向の変化が進み、定常状態に達すると、図11(c)に模式的に示したように、開口部14a1および14a2のそれぞれの中心SAに関して対称な傾斜配向(放射状傾斜配向)を形成する。また、隣接する2つの開口部14a1および14a2との間に位置する上層導電層14の領域上の液晶分子30aも、開口部14a1および14a2のエッジ部の液晶分子30aと配向が連続となるように(整合するように)、傾斜配向する。開口部14a1および14a2のエッジの中央に位置する部分上の液晶分子30aは、それぞれのエッジ部の液晶分子30aの影響を同程度に受けるので、開口部14a1および14a2の中央部に位置する液晶分子30aと同様に、垂直配向状態を維持する。その結果、隣接する2つの開口部14a1と14a2との間に上層導電層14上の液晶層も放射状傾斜配向状態となる。但し、開口部14a1および14a2内の液晶層の放射状傾斜配向と開口部14a1と14a2との間の液晶層の放射状傾斜方向とでは、液晶分子の傾斜方向が異なる。図11(c)に示した、それぞれの放射状傾斜配向している領域の中央に位置する液晶分子30a付近の配向に注目すると、開口部14a1および14a2内では、対向電極に向かって広がるコーンを形成するように液晶分子30aが傾斜しているのに対し、開口部間では、上層導電層14に向かって広がるコーンを形成するように液晶分子30aが傾斜している。なお、いずれの放射状傾斜配向もエッジ部の液晶分子30aの傾斜配向と整合するように形成されているので、2つの放射状傾斜配向は互いに連続している。
上述したように、液晶層30に電圧を印加すると、上層導電層14に設けた複数の開口部14a1および14a2それぞれのエッジ部EG上の液晶分子30aから傾斜し始め、その後周辺領域の液晶分子30aがエッジ部EG上の液晶分子30aの傾斜配向と整合するように傾斜することによって、放射状傾斜配向が形成される。したがって、1つの絵素領域内に形成する開口部14aの数が多いほど、電界に応答して最初に傾斜し始める液晶分子30aの数が多くなるので、絵素領域全体に亘って放射状傾斜配向が形成されるのに要する時間が短くなる。すなわち、絵素領域毎に絵素電極に形成する開口部14aの数を増やすることによって、液晶表示装置の応答速度を改善することができる。
このように、絵素領域毎に複数の開口部14a1および14a2を形成することによって、全方位的に視角特性に優れた表示品位を有する液晶表示装置が実現されるとともに、液晶表示装置の応答特性も改善される。
次に、図12および図13を参照しながら、複数の開口部14aのそれぞれの形状および相対配置と液晶分子30aの配向との関係を説明する。図12(a)および図13(a)中の11A−11A’線に沿った断面図は図11(a)に相当し、図12(b)および図13(b)中の11B−11B’線に沿った断面図は図11(b)に相当し、図12(c)および図13(c)中の11C−11C’線に沿った断面図は図11(c)に相当する。
図12および図13は、矩形の絵素電極15(絵素領域)を例示しているが、絵素電極15(上層導電層14)の外形の形状はこれに限られない。また、本発明による液晶表示装置は、1つの絵素領域について図12や図13に示した電極構成を1つだけ有するものに限らず、図12や図13に示した電極構成を1つの絵素領域内に複数有してもよい。また、絵素電極15(上層導電層14)の外周と開口部14aとの相対的な配置関係に特に制限はなく、複数の開口部14aの一部が上層導電層14の外周を規定する辺または角に重なって形成されてもよい。このことは、複数の開口部14aを有する絵素領域を示す他の実施形態の液晶表示装置に対しても同じである。なお、絵素領域全体に亘って、液晶分子の配向を安定化(および応答速度の向上)するために好ましい、開口部14a間の相対配置については後述する。
まず、それぞれの開口部14aの形状は、先に説明したように、多角形や、円形または楕円形であってよい。液晶表示装置400の全ての方位角方向における視角特性を改善(表示のざらつきをなくす)ためには、開口部14aのそれぞれの形状は、高い回転対称性を有することが好ましいので、図12に示した正方形などの正多角形や、図13に示した円形が好ましい。それぞれの開口部14aの形状と液晶分子30aの配向状態との関係については、先の説明の通りなので、ここでは説明を省略する。
また、複数の開口部14aを形成した構成においては、複数の開口部14aの相対的な配置が回転対称性を有することが好ましい。例えば、図12に示したように、正方形の上層導電層14(すなわち、絵素領域が正方形の場合)に、正方形の開口部14aを4個形成する場合、4個の開口部14aを正方形の上層導電層14の中心SAを軸に、回転対称性を有するように配置することが好ましい。図示したように、正方形の上層導電層14の中心SAが4回回転軸となるよう配置することが好ましい。このように配置すると、図12(b)および(c)に示したように、液晶層30に電圧を印加したときにそれぞれの開口部14aを中心に形成される放射状傾斜配向を有する領域が、上層導電層14の中心SAを軸に4回回転対称性を有する。その結果、液晶表示装置400の視角特性は全方位角方向に亘ってさらに均一化される。
図12においは、1つの絵素領域に4つの開口部14aを形成した構成を例示したが、開口部14aの数はこれに限らない。1つの絵素領域に形成する開口部14aの数は、絵素領域の大きさや形状、1つの開口部14aによって安定に放射状傾斜配向が形成される領域の大きさ、および応答速度を考慮して適宜設定される。1つの絵素領域に多数の開口部14aを形成する場合、視角特性の均一性を向上するためには、絵素領域全体に亘って、開口部14aの配置が回転対称性を有するように配置することが好ましいが、絵素領域の形状によっては、絵素領域全体に亘って回転対称性を有するように配置できない場合がある。できるだけ、広い面積に亘って回転対称性を有するように配置することが好ましい。例えば、絵素領域が長方形の場合には、長方形を複数の正方形に分割し、それぞれの正方形に対して回転対称性を有するように複数の開口部14aを形成することによって、十分均一な視角特性を有する液晶表示装置を得ることができる。
図12に示した正方形の開口部14aに代えて、円形の開口部14aを設けた構成を図13に示す。
図12を参照しながら上述したのと同様に、4つの開口部14aを上層導電層14の中心SAが4回回転軸となるように配置することによって、液晶表示装置の視角特性をさらに改善することができる。また、開口部14aの形状が円形の方が、多角形よりも、それぞれの開口部14aのエッジ部に沿った液晶分子30aの配向の連続性が高いので、液晶分子30aの放射状傾斜配向がより安定する。さらに、複数の開口部14aを設ける構成において、開口部14aの形状を円形とすると、隣接する開口部14aによって形成される放射状傾斜配向の間の連続性が高く、絵素領域内に形成される複数の放射状傾斜配向が安定しやすいという利点が得られる。
例えば、図14に示したように、4つの円形の開口部14aがそれぞれの中心が長方形の角に位置するように配置された構成においても、その長方形の対角線上に位置する液晶分子30aが連続的な傾斜配向を形成することができる。これに対し、図14中の4つの開口部14aを正方形にすると、開口部14aの中心を結んで形成される長方形の対角線は、開口部14aの正方形の対角線と一致しないことから理解できるように、4つの開口部14aによって囲まれる領域内の液晶分子30aの配向は連続になり難い。一方、この4つの開口部14aの形状を、4つの開口部14aの中心が形成する長方形と相似関係にある長方形とすれば、上記の問題は解決するが、それぞれの開口部14a内に形成される放射状傾斜配向の連続性が低下する。したがって、開口部14aの形状や配置は、絵素領域の形状や大きさを考慮して適宜設定することが好ましい。なお、図14は液晶層に電圧を印加した状態を示しており、図14中の11C−11C’線に沿った断面図は図11(c)に相当する。
絵素領域毎に複数の開口部を有する電極構成(すなわち、絵素電極または対向電極が開口部を有する2層構造電極)における開口部の配置の好ましい例を更に詳細に説明する。
図15(a)を参照しながら、実施形態1の他の液晶表示装置400Aの上層導電層14の他のパターンを説明する。図15(b)は、図15(a)中の15B−15B'線に沿った断面図であり、上層導電層14の中実部に参照符号14bを付し、単位中実部に参照符号14b’を付していること以外は、図11(a)と実質的に同じである。
液晶表示装置400Aが有する上層導電層14は、複数の開口部14aと中実部14bとを有している。開口部14aは、導電膜(例えばITO膜)から形成される上層導電層14の内の導電膜が除去された部分を指し、中実部14bは導電膜が存在する部分(開口部14a以外の部分)を指す。開口部14aは1つの絵素電極ごとに複数形成されてるが、中実部14bは、基本的には連続した単一の導電膜から形成されている。
複数の開口部14aは、その中心が正方格子を形成するように配置されており、1つの単位格子を形成する4つの格子点上に中心が位置する4つの開口部14aによって実質的に囲まれる中実部(「単位中実部」と称する。)14b’は、略円形の形状を有している。それぞれの開口部14aは、4つの4分の1円弧状の辺(エッジ)を有し、且つ、その中心に4回回転軸を有する略星形である。なお、絵素領域の全体に亘って配向を安定させるために、上層導電層14の端部まで単位格子を形成することが好ましい。従って、図示したように、上層導電層14の端部は、開口部14aの約2分の1(辺に対応する領域)および開口部14aの約4分の1(角に対応する領域)に相当する形状にパターニングされていることが好ましい。なお、図15(a)中に実線で示した正方形(正方格子の集合)は、単一の導電層から形成された従来の絵素電極に対応する領域(外形)を示している。
絵素領域の中央部に位置する開口部14aは実質的に同じ形状で同じ大きさを有している。開口部14aによって形成される単位格子内に位置する単位中実部14b’は略円形であり、実質的に同じ形状で同じ大きさを有している。互いに隣接する単位中実部14b’は互いに接続されており、実質的に単一の導電膜として機能する中実部14bを構成している。
上述したような構成を有する上層導電層14と対向電極22との間に電圧を印加すると、開口部14aのエッジ部に生成される斜め電界によって、それぞれが放射状傾斜配向を有する複数の液晶ドメインが形成される。液晶ドメインは、それぞれの開口部14aに対応する領域と、単位格子内の単位中実部14b’に対応する領域とに、それぞれ1つずつ形成される。
ここでは、正方形の上層導電層14を例示しているが、絵素電極の14の形状はこれに限られない。上層導電層14の一般的な形状は、矩形(正方形と長方形を含む)に近似されるので、開口部14aを正方格子状に規則正しく配列することができる。上層導電層14が矩形以外の形状を有していても、絵素領域内の全ての領域に液晶ドメインが形成されるように、規則正しく(例えば例示したように正方格子状に)開口部14aを配置すれば、本発明の効果を得ることができる。
本実施形態の液晶表示装置400Aが有する上層導電層14が有する開口部14aの形状(基板法線方向から見た形状)およびその配置について説明する。
液晶表示装置の表示特性は、液晶分子の配向状態(光学的異方性)に起因して、方位角依存性を示す。表示特性の方位角依存性を低減するためには、液晶分子が全ての方位角に対して同等の確率で配向していることが好ましい。また、それぞれの絵素領域内の液晶分子が全ての方位角に対して同等の確率で配向していることがさらに好ましい。従って、開口部14aは、それぞれの絵素領域内の液晶分子30aがすべての方位角に対して同等の確率で配向するように、液晶ドメインを形成するような形状を有していることが好ましい。具体的には、開口部14aの形状は、それぞれの中心(法線方向)を対称軸とする回転対称性(好ましくは2回回転軸以上の対称性)を有することが好ましく、また、複数の開口部14aが回転対称性を有するように配置されていることが好ましい。また、これらの開口部によって実質的に包囲される単位中実部14b’の形状も回転対称性を有することが好ましく、単位中実部14b’も回転対称性を有するように配置されることが好ましい。
但し、開口部14aや単位中実部14b’が絵素領域全体に亘って回転対称性を有するように配置される必要は必ずしも無く、図15(a)に示したように、例えば正方格子(4回回転軸を有する対称性)を最小単位とし、それらの組合せによって絵素領域が構成されれば、絵素領域全体に亘って液晶分子をすべての方位角に対して実質的に同等の確率で配向させることができる。
図15(a)に示した、回転対称性を有する略星形の開口部14aおよび略円形の単位中実部14b’が正方格子状に配列された場合の液晶分子30aの配向状態を図16(a)〜図16(c)を参照しながら説明する。
図16(a)〜(c)は、それぞれ、基板法線方向から見た液晶分子30aの配向状態を模式的に示している。図16(b)および(c)など、基板法線方向から見た液晶分子30aの配向状態を示す図において、楕円状に描かれた液晶分子30aの先が黒く示されている端は、その端が他端よりも、開口部14aを有する上層導電層14が設けらている基板側に近いように、液晶分子30aが傾斜していることを示している。以下の図面においても同様である。ここでは、図15(a)に示した絵素領域の内の1つの単位格子(4つの開口部14aによって形成される)について説明する。図16(a)〜図16(c)中の対角線に沿った断面図は、図11(a)〜図11(c)にそれぞれ対応し、これらの図を合わせて参照しながら説明する。
上層導電層14および対向電極22が同電位のとき、すなわち液晶層30に電圧が印加されていない状態においては、TFT基板400aおよび対向基板100bの液晶層30側表面に設けられた垂直配向層(不図示)によって配向方向が規制されている液晶分子30aは、図16(a)に示したように、垂直配向状態を取る。
液晶層30に電界を印加すると、図16(b)に示したように、開口部14aのエッジ部から液晶分子30aが傾斜し始める。そして、開口部14aのエッジ部の傾斜した液晶分子30aの配向と整合性をとるように周囲の液晶分子30aも傾斜し、図16(c)に示したような状態で液晶分子30aの軸方位は安定する(放射状傾斜配向)。
このように、開口部14aが回転対称性を有する形状であると、絵素領域内の液晶分子30aは、電圧印加時に、開口部14aのエッジ部から開口部14aの中心に向かって液晶分子30aが傾斜するので、エッジ部からの液晶分子30aの配向規制力が釣り合う開口部14aの中心付近の液晶分子30aは基板面に対して垂直に配向した状態を維持し、その回りの液晶分子30aが開口部14aの中心付近の液晶分子30aを中心に放射状に液晶分子30aが連続的に傾斜した状態が得られる。
また、正方格子状に配列された4つの略星形の開口部14aに包囲された略円形の単位中実部14b’に対応する領域の液晶分子30aも、開口部14aのエッジ部に生成される斜め電界で傾斜した液晶分子30aの配向と整合するように傾斜する。エッジ部からの液晶分子30aの配向規制力が釣り合う単位中実部14b’の中心付近の液晶分子30aは基板面に対して垂直に配向した状態を維持し、その回りの液晶分子30aが単位中実部14b’の中心付近の液晶分子30aを中心に放射状に液晶分子30aが連続的に傾斜した状態が得られる。
このように、絵素領域全体に亘って、液晶分子30aが放射状傾斜配向をとる液晶ドメインが正方格子状に配列されると、それぞれの軸方位の液晶分子30aの存在確率が回転対称性を有することになり、あらゆる視角方向に対して、ざらつきのない高品位の表示を実現することができる。放射状傾斜配向を有する液晶ドメインの視角依存性を低減するためには、液晶ドメインが高い回転対称性(2回回転軸以上が好ましく、4回回転軸以上がさらに好ましい。)を有することが好ましい。また、絵素領域全体の視角依存性を低減するためには、絵素領域に形成される複数の液晶ドメインが、高い回転対称性(2回回転軸以上が好ましく、4回回転軸以上がさらに好ましい。)を有する単位(例えば単位格子)の組合せで表される配列(例えば正方格子)を構成することが好ましい。
図15(a)では、開口部14aが略星形を有し、単位中実部14b’が略円形を有し、これらが正方格子状に配列された例を示したが、開口部14aおよび単位中実部14b’の形状ならびにこれらの配置は、上記の例に限られない。
図17(a)および(b)に、異なる形状の開口部14aおよび単位中実部14b’を有する上層導電層14Aおよび14Bの上面図をそれぞれ示す。
図17(a)および(b)にそれぞれ示した上層導電層14Aおよび14Bの開口部14aおよび単位中実部14b’は、図15(a)に示した絵素電極の開口部14aおよび単位中実部14b’が若干ひずんだ形を有している。上層導電層14Aおよび14Bの開口部14aおよび単位中実部14b’は、2回回転軸を有し(4回回転軸は有しない)、長方形の単位格子を形成するように規則的に配列されている。開口部14aは、いずれも歪んだ星形を有し、単位中実部14b’は、いずれも略楕円形(歪んだ円形)を有している。上層導電層14Aおよび14Bを用いても、表示品位が高い、視角特性に優れた液晶表示装置を得ることができる。
さらに、図18(a)および(b)にそれぞれ示すような上層導電層14Cおよび14Dを用いることもできる。
上層導電層14Cおよび14Dは、単位中実部14b’が略正方形となるように、略十字の開口部14aが正方格子状に配置されている。勿論、これらを歪ませて、長方形の単位格子を形成するように配置してもよい。このように、略矩形(矩形は正方形と長方形を含むとする。)の単位中実部14b’を規則正しく配列しても、表示品位が高い、視角特性に優れた液晶表示装置を得ることができる。
但し、開口部14aおよび/または単位中実部14b’の形状は、矩形よりも円形または楕円形の方が放射状傾斜配向を安定化できるので好ましい。これは、開口部14aの辺が連続的に(滑らかに)変化するので、液晶分子30aの配向方向も連続的に(滑らかに)変化するためと考えられる。
上述した液晶分子30aの配向方向の連続性の観点から、図19(a)および(b)に示す上層導電層14Eおよび14Fも考えられる。図19(a)に示した上層導電層14Eは、図15(a)に示した上層導電層14の変形例で、4つの円弧だけからなる開口部14aを有している。また、図19(b)に示した上層導電層14Fは、図18(b)に示した上層導電層14Dの変形例で、周囲の開口部14aによって規定される単位中実部14b’が4分の1円弧の組合せから形成されている。上層導電層14Eおよび14Fが有する開口部14aならびに単位中実部14b’は、いずれも4回回転軸を有しており、且つ、正方格子状(4回回転軸を有する)に配列されているが、図17(a)および(b)に示したように、開口部14aの単位中実部14b’の形状を歪ませて2回回転軸を有する形状とし、長方形の格子(2回回転軸を有する)を形成するように配置してもよい。
上述の例では、略星形や略十字形の開口部14aを形成し、単位中実部14b’の形状を略円形、略楕円形、略正方形(矩形)および角の取れた略矩形とした構成を説明した。これに対して、開口部14aと単位中実部14b’との関係をネガ−ポジ反転させてもよい。例えば、図15(a)に示した上層導電層14の開口部14aと単位中実部14b’とをネガ−ポジ反転したパターンを有する上層導電層14Gを図20に示す。このように、ネガ−ポジ反転したパターンを有する上層導電層14Gも図15(a)に示した上層導電層14と実質的に同様の機能を有する。なお、図21(a)および(b)にそれぞれ示す上層導電層14Hおよび14Iのように、開口部14aおよび単位中実部14b’がともに略正方形の場合には、ネガ−ポジ反転しても、もとのパターンと同じパターンとなるものもある。
図20に示したパターンのように、図15(a)に示したパターンをネガ−ポジ反転させた場合にも、上層導電層14のエッジ部に、回転対称性を有する単位中実部14b'が形成されるように、開口部14aの一部(約2分の1または約4分の1)を形成することが好ましい。このようなパターンとすることによって、絵素領域のエッジ部においても、絵素領域の中央部と同様に、斜め電界による効果が得られ、絵素領域の全体に亘って安定した放射状傾斜配向を実現することができる。
次に、図15(a)の上層導電層14と、上層導電層14の開口部14aと単位中実部14b’のパターンをネガ−ポジ反転させたパターンを有する図20に示した上層導電層14Gを例に、ネガ−ポジパターンのいずれを採用すべきかを説明する。
ネガ−ポジいずれのパターンを採用しても、開口部14aの辺の長さはどちらのパターンも同じである。従って、斜め電界を生成するという機能においては、これらのパターンによる差はない。しかしながら、単位中実部14b’の面積比率(上層導電層14の全面積に対する比率)は、両者の間で異なり得る。すなわち、液晶層の液晶分子に採用する電界を生成する中実部14b(実際に導電膜が存在する部分)の面積が異なり得る。
開口部14aに形成される液晶ドメインに印加される電圧は、中実部14bに形成される液晶ドメインに印加される電圧はよりも低くくなるので、例えば、ノーマリブラックモードの表示を行うと、開口部14aに形成された液晶ドメインは暗くなる。すなわち、開口部14aの面積比率が高くなると表示輝度が低下する傾向になる。従って、中実部14bの面積比率が高い方が好ましい。なお、ここでは、簡単のために下層導電層の作用を無視して説明するが、本発明による液晶表示装置が有する2層構造電極は、上層導電層14の開口部14aに対応する領域に下層導電層(例えば図1の下層導電層12)を有している。従って、開口部14aに対応する領域の液晶層30にも下層導電層からの電界が作用するので、開口部14aの面積比率が高くなることに伴って表示輝度が低下する程度は、図4(a)〜(c)を参照しながら説明した従来の液晶表示装置300より少ない。
図15(a)のパターンと図20のパターンとのいずれにおいて中実部14bの面積比率が高くなるかは、単位格子のピッチ(大きさ)に依存する。
図22(a)は、図15(a)に示したパターンの単位格子を示し、図22(b)は、図20に示したパターンの単位格子(但し、開口部14aを中心とする。)を示している。なお、図22(b)においては、図20における単位中実部14b’を相互に接続する役割を果たしている部分(円形部から四方に延びる枝部)を省略している。正方単位格子の一辺の長さ(ピッチ)をpとし、開口部14aまたは単位中実部14b’と単位格子との間隙の長さ(片側のスペース)をsとする。
ピッチpおよび片側スペースsの値が異なる種々の上層導電層14を形成し、放射状傾斜配向の安定性などを検討した。その結果、まず、図22(a)に示したパターン(以下、「ポジ型パターン」と称する。)を有する上層導電層14を用いて、放射状傾斜配向を得るために必要な斜め電界を生成するためには、片側スペースsが約2.75μm以上必要であることを見出した。一方、図22(b)に示したパターン(以下、「ネガ型パターン」と称する。)を有する上層導電層14について、放射状傾斜配向を得るための斜め電界を生成するために、片側スペースsが約2.25μm以上必要であることを見出した。片側スペースsをそれぞれこの下限値として、ピッチpの値を変化させたときの中実部14bの面積比率を検討した。結果を表1および図22(c)に示す。
表1および図22(c)から分かるように、ピッチpが約25μm以上のときにはポジ型(図22(a))パターンの方が中実部14bの面積比率が高くなり、約25μmよりも短くなるとネガ型(図22(b))の方が中実部14bの面積比率が大きくなる。従って、表示輝度および配向の安定性の観点から、ピッチpが約25μmを境にして、採用すべきパターンが変わる。例えば、幅75μmの上層導電層14の幅方向に、3個以下の単位格子を設ける場合には、図22(a)に示したポジ型パターンが好ましく、4個以上の単位格子を設ける場合には、図22(b)に示したネガ型パターンが好ましい。例示したパターン以外の場合においても、中実部14bの面積比率が大きくなるように、ポジ型またはネガ型の何れかを選択すればよい。
単位格子の数は、以下のようにして求められる。上層導電層14の幅(横または縦)に対して、1つまたは2以上の整数個の単位格子が配置されるように、単位格子のサイズを計算し、それぞれの単位格子サイズについて中実部面積比率を計算し、中実部面積比率が最大となる単位格子サイズを選ぶ。但し、ポジ型パターンの場合には単位中実部14b’の直径が15μm未満、ネガ型パターンの場合には開口部14aの直径が15μm未満になると、斜め電界による配向規制力が低下し、安定した放射状傾斜配向が得られ難くなる。なお、これら直径の下限値は、液晶層30の厚さが約3μmの場合であり、液晶層30の厚さがこれよりも薄いと、単位中実部14b’および開口部14aの直径は、上記の下限値よりもさらに小さくとも安定な放射状傾斜配向が得られ、液晶層30の厚さがこれよりも厚い場合に安定な放射状傾斜配向を得るために必要な、単位中実部14b’および開口部14aの直径の下限値は、上記の下限値よりも大きくなる。また、本発明の液晶表示装置においては、下層導電層による電界が作用するので、開口部14aの直径を上述の結果より若干大きくしても、表示品位の低下が抑制される。
上述した本実施形態1の液晶表示装置の構成は、絵素電極15が開口部を有する2層構造電極であること以外は、公知の垂直配向型液晶表示装置と同じ構成を採用することができ、公知の製造方法で製造することができる。ここでは、2層構造の絵素電極の形成方法を説明し、他は省略する。ここで再び、例えば図1(a)を参照する。
下層導電層12となる透明導電層(典型的にはITO層)の堆積工程までは、公知の製造方法で実施できる。この導電層は、従来の液晶表示装置のプロセスにおいては、所定の形状にパターニングされ、絵素電極とされる。従来の液晶表示装置の製造プロセスにおける絵素電極のパターニング工程において、本実施形態の液晶表示装置の下層導電層12をパターニングすることができる。下層導電層のパターンは、絵素電極と同じでも良いし、上層導電層14に形成される開口部14aに対応するように分割したパターンとしてもよい。下層導電層12は、従来の絵素電極と同様にTFTのドレイン電極等(ドレインと実質的に同電位の電極)に電気的に接続される。
下層導電層12をパターニングした基板100aの表面のほぼ全面に亘って誘電体層13を形成する。誘電体層13は例えば、透明な感光性樹脂を用いて形成することができる。誘電体層13上に再び導電層を堆積する。得られた導電層をパターニングすることによって、開口部14aを有する上層導電層14を形成する。
なお、上層導電層14をTFTのドレイン電極に接続するためのコンタクトホールを誘電体層13に予め形成しておく。この工程も公知のプロセスで実行することができる。上層導電層14と下層導電層12とを同電位で駆動させる構成を採用すると、例示したように、上層導電層14と下層導電層12とを同じTFTに接続すればよい。また、この構成を採用すると、従来の駆動回路をそのまま用いることができるという利点もある。
なお、典型的には、負の誘電異方性を有する液晶分子を垂直配向させるために、絵素電極15および対向電極22の液晶層30側表面には垂直配向層(不図示)が形成されている。垂直配向層は、開口部14aを有する上層導電層14が形成された後に、基板100aの表示領域に印刷によって形成される。
液晶材料としては、負の誘電異方性を有するネマチック液晶材料が用いられる。また、負の誘電異方性を有するネマチック液晶材料に2色性色素を添加することによって、ゲスト−ホストモードの液晶表示装置を得ることもできる。ゲスト−ホストモードの液晶表示装置は、偏光板を必要としない。
(実施形態2)
図23(a)および(b)を参照しながら、本発明による実施形態2の液晶表示装置400Bの1つの絵素領域の構造を説明する。また、以下の図面においては、図11に示した液晶表示装置400の構成要素と実質的に同じ機能を有する構成要素を同じ参照符号で示し、その説明を省略する。図23(a)は基板法線方向から見た上面図であり、図23(b)は図23(a)中の23B−23B’線に沿った断面図に相当する。図23(b)は、液晶層に電圧を印加していない状態を模式的に示している。
図23(a)および(b)に示したように、液晶表示装置400Bは、TFT基板400bが、上層導電層14の開口部14aの内側に凸部40を有する点において、図15(a)および(b)に示した実施形態1の液晶表示装置400Aと異なっている。凸部40の表面には、垂直配向膜(不図示)が設けられている。以下、開口部14aの内側に凸部40を有するTFT基板を凸部40の構造に関係なく参照符号400bで示すことにする。
なお、ここでは、図11に示した液晶表示装置400の上層導電層14の開口部14aに凸部40を設けた液晶表示装置400Bを例示するが、実施形態1の他の液晶表示装置に適用できる。
凸部40の基板11の面内方向の断面形状は、図23(a)に示したように、開口部14aの形状と同じであり、ここでは略星形である。但し、隣接する凸部40は互いに繋がっており、単位中実部14b’を略円形に完全に包囲するように形成されている。この凸部40の基板11に垂直な面内方向の断面形状は、図23(b)に示したように台形である。すなわち、基板面に平行な頂面40tと基板面に対してテーパ角θ(<90°)で傾斜した側面40sとを有している。凸部40を覆うように垂直配向膜(不図示)が形成されているので、凸部40の側面40sは、液晶層30の液晶分子30aに対して、斜め電界による配向規制方向と同じ方向の配向規制力を有することになり、放射状傾斜配向を安定化させるように作用する。
この凸部40の作用を図24(a)〜(d)、および図25(a)および(b)を参照しながら説明する。
まず、図24(a)〜(d)を参照しながら、液晶分子30aの配向と垂直配向性を有する表面の形状との関係を説明する。
図24(a)に示したように、水平な表面上の液晶分子30aは、垂直配向性を有する表面(典型的には、垂直配向膜の表面)の配向規制力によって、表面に対して垂直に配向する。このように垂直配向状態にある液晶分子30aに液晶分子30aの軸方位に対して垂直な等電位線EQで表される電界が印加されると、液晶分子30aには時計回りまたは反時計回り方向に傾斜させるトルクが等しい確率で作用する。従って、互いに対向する平行平板型配置の電極間にある液晶層30内には、時計回り方向のトルクを受ける液晶分子30aと、反時計回りに方向のトルクを受ける液晶分子30aとが混在する。その結果、液晶層30に印加された電圧に応じた配向状態への変化がスムーズに起こらないことがある。
図24(b)に示したように、傾斜した表面に対して垂直に配向している液晶分子30aに対して、水平な等電位線EQで表される電界が印加されると、液晶分子30aは、等電位線EQと平行になるための傾斜量が少ない方向(図示の例では時計回り)に傾斜する。また、水平な表面に対して垂直に配向している液晶分子30aは、図24(c)に示したように、傾斜した表面に対して垂直に配向している液晶分子30aと配向が連続となるように(整合するように)、傾斜した表面上に位置する液晶分子30aと同じ方向(時計回り)に傾斜する。
図24(d)に示したように、断面が台形の連続した凹凸状の表面に対しては、それぞれの傾斜した表面上の液晶分子30aによって規制される配向方向と整合するように、頂面および底面上の液晶分子30aが配向する。
本実施形態の液晶表示装置は、このような表面の形状(凸部)による配向規制力の方向と、斜め電界による配向規制方向とを一致させることによって、放射状傾斜配向を安定化させる。
図25(a)および(b)は、それぞれ図23(b)に示した液晶層30に電圧を印加した状態を示しており、図25(a)は、液晶層30に印加された電圧に応じて、液晶分子30aの配向が変化し始めた状態(ON初期状態)を模式的に示しており、図25(b)は、印加された電圧に応じて変化した液晶分子30aの配向が定常状態に達した状態を模式的に示している。図25(a)および(b)中の曲線EQは等電位線EQを示す。
上層導電層14および下層導電層12と対向電極22とが同電位のとき(液晶層30に電圧が印加されていない状態)には、図23(b)に示したように、絵素領域内の液晶分子30aは、両基板11および21の表面に対して垂直に配向している。このとき、凸部40の側面40sの垂直配向膜(不図示)に接する液晶分子30aは、側面40sに対して垂直に配向し、側面40sの近傍の液晶分子30aは、周辺の液晶分子30aとの相互作用(弾性連続体としての性質)によって、図示したように、傾斜した配向をとる。
液晶層30に電圧を印加すると、図25(a)に示した等電位線EQで表される電位勾配が形成される。この等電位線EQは、上層導電層14の中実部14bと対向電極22との間に位置する液晶層30内では、中実部14bおよび対向電極22の表面に対して平行であり、上層導電層14の開口部14aに対応する領域で落ち込み、開口部14aのエッジ部(開口部14aの境界(外延)を含む開口部14aの内側周辺)EG上の液晶層30内には、傾斜した等電位線EQで表される斜め電界が形成される。また、上層導電層14の開口部14aに対応する領域内で、上層導電層14の電位の影響を受けない領域の液晶層30には、下層導電層12および対向電極22の表面に平行な等電位線EQで表される電界が生成される。
この斜め電界によって、上述したように、エッジ部EG上の液晶分子30aは、図25(a)中に矢印で示したように、図中の右側エッジ部EGでは時計回り方向に、図中の左側エッジ部EGでは反時計回り方向に、それぞれ傾斜(回転)し、等電位線EQに平行に配向する。この斜め電界による配向規制方向は、それぞれのエッジ部EGに位置する側面40sによる配向規制方向と同じである。
上述したように、傾斜した等電位線EQ上に位置する液晶分子30aから始まる配向の変化が進み、定常状態に達すると、図25(b)に模式的に示した配向状態となる。開口部14aの中央付近、すなわち、凸部40の頂面40tの中央付近に位置する液晶分子30aは、開口部14aの互いに対向する両側のエッジ部EGの液晶分子30aの配向の影響をほぼ同等に受けるので、等電位線EQに対して垂直な配向状態を保ち、開口部14a(凸部40の頂面40t)の中央から離れた領域の液晶分子30aは、それぞれ近い方のエッジ部EGの液晶分子30aの配向の影響を受けて傾斜し、開口部14a(凸部40の頂面40t)の中心SAに関して対称な傾斜配向を形成する。また、開口部14aおよび凸部40によって実質的に包囲された単位中実部14b’に対応する領域においても、単位中実部14b’の中心SAに関して対称な傾斜配向を形成する。
このように、実施形態2の液晶表示装置400Bにおいても、実施形態1の液晶表示装置400Aと同様に、放射状傾斜配向を有する液晶ドメインが開口部14aおよび単位中実部14b’に対応して形成される(図16(c)参照)。凸部40は単位中実部14b’を略円形に完全に包囲するように形成されているので、液晶ドメインは凸部40で包囲された略円形の領域に対応して形成される。さらに、開口部14aの内側に設けられた凸部40の側面は、開口部14aのエッジ部EG付近の液晶分子30aを、斜め電界による配向方向と同じ方向に傾斜させるように作用するので、放射状傾斜配向を安定化させる。
斜め電界に配向規制力は、当然のことながら、電圧印加時にしか作用せず、その強さは電界の強さ(印加電圧の大きさ)に依存する。したがって、電界強度が弱い(すなわち、印加電圧が低い)と、斜め電界による配向規制力は弱く、液晶パネルに外力が加わると、液晶材料の流動によって放射状傾斜配向が崩れることがある。一旦、放射状傾斜配向が崩れると、十分に強い配向規制力を発揮する斜め電界を生成するだけの電圧が印加されないと、放射状傾斜配向は復元されない。これに対し、凸部40の側面40sによる配向規制力は、印加電圧に関係なく作用し、配向膜のアンカリング効果として知られているように、非常に強い。従って、液晶材料の流動が生じて、一旦放射状傾斜配向が崩れても、凸部40の側面40sの近傍の液晶分子30aは放射状傾斜配向のときと同じ配向方向を維持している。従って、液晶材料の流動が止まりさえすれば、放射状傾斜配向が容易に復元される。
この様に、実施形態2の液晶表示装置400Bは、実施形態1の液晶表示装置400Aが有する特徴に加え、外力に対して強いという特徴を有している。従って、液晶表示装置400Bは、外力が印加されやすい、携帯して使用される機会の多いPCやPDAに好適に用いられる。
なお、凸部40は透明性の高い誘電体を用いて形成すると、開口部14aに対応して形成される液晶ドメインの表示への寄与率が向上しするという利点が得られる。一方、凸部40を不透明な誘電体を用いて形成すると、凸部40の側面340sによって傾斜配向している液晶分子30aのリタデーションに起因する光漏れを防止できるという利点が得られる。いずれを採用するかは、液晶表示装置の用途などの応じて決めればよい。いずれの場合にも、感光性樹脂を用いると、開口部14aに対応してパターニングする工程を簡略化できる利点がある。十分な配向規制力を得るためには、凸部40の高さは、液晶層30の厚さが約3μmの場合、約0.5μm〜約2μmの範囲にあることが好ましい。一般に、凸部40の高さは、液晶層30の厚さの約1/6〜約2/3の範囲内にあることが好ましい。
上述したように、液晶表示装置400Bは、上層導電層14の開口部14aの内側に凸部40を有し、凸部40の側面40sは、液晶層30の液晶分子30aに対して、斜め電界による配向規制方向と同じ方向の配向規制力を有する。側面40sが斜め電界による配向規制方向と同じ方向の配向規制力を有するための好ましい条件を図26(a)〜(c)を参照しながら説明する。
図26(a)〜(c)は、それぞれ液晶表示装置400C、400Dおよび400Eの断面図を模式的に示し、図25(a)に相当する。液晶表示装置400C、400Dおよび400Eは、いずれも開口部14aの少なくとも内側に凸部を有するが、1つの構造体としての凸部40全体と開口部14aとの配置関係が液晶表示装置400Bと異なっている。
上述した液晶表示装置400Bにおいては、図25(a)に示したように、構造体としての凸部40の全体が開口部14aの内側に形成されており、且つ、凸部40の底面は開口部14aよりも小さい。図26(a)に示した液晶表示装置400Cにおいては、凸部40Aの底面は開口部14aと一致しており、図26(b)に示した液晶表示装置400Dにおいては、凸部40Bは開口部14aよりも大きい底面を有し、開口部14aの周辺の中実部(導電膜)14bを覆うように形成されている。これらの凸部40、40Aおよび40Bのいずれの側面40s上にも中実部14bが形成されていない。その結果、それぞれの図に示したように、等電位線EQは、中実部14b上ではほぼ平坦で、そのまま開口部14aで落ち込む。従って、液晶表示装置400Cおよび400Dの凸部40Aおよび40Bの側面40sは、上述した液晶表示装置400Bの凸部40と同様に、斜め電界による配向規制力と同じ方向の配向規制力を発揮し、放射状傾斜配向を安定化する。
これに対し、図26(c)に示した液晶表示装置400Eの凸部40Cの底面は開口部14aよりも大きく、開口部14aの周辺の中実部14bは凸部40Cの側面40s上に形成されている。この側面40s上に形成された中実部14bの影響で、等電位線EQに山が形成される。等電位線EQの山は、開口部14aで落ち込む等電位線EQと反対の傾きを有しており、これは、液晶分子30aを放射状傾斜配向させる斜め電界とは逆向きの斜め電界を生成していることを示している。従って、側面40sが斜め電界による配向規制方向と同じ方向の配向規制力を有するためには、側面40s上に中実部(導電膜)14bが形成されていないことが好ましい。
次に、図27を参照しながら、図23(a)に示した凸部40の27A−27A’線に沿った断面構造を説明する。
上述したように、図23(a)に示した凸部40は、単位中実部14b’を略円形に完全に包囲するように形成されているので、隣接する単位中実部14b’を相互に接続する役割を果たしている部分(円形部から四方に延びる枝部)は、図27に示したように、凸部40上に形成される。従って、上層導電層14の中実部14bを形成する導電膜を堆積する工程において、凸部40上で断線が生じたり、あるいは、製造プロセスの後工程で剥離が生じる危険性が高い。
そこで、図28(a)および(b)に示す液晶表示装置400Fのように、開口部14a内に、それぞれ独立した凸部40Dが完全に含まれるように形成すると、中実部14bを形成する導電膜は、基板11の平坦な表面に形成されるので断線や剥離が起こる危険性が無くなる。なお、凸部40Dは、単位中実部14b’を略円形に完全に包囲するようには形成されていないが、単位中実部14b’に対応した略円形の液晶ドメインが形成され、先の例と同様に、その放射状傾斜配向は安定化される。
開口部14a内に凸部40を形成することによって、放射状傾斜配向を安定化させる効果は、例示したパターンの開口部14aに限られず、実施形態1で説明した全てのパターンの開口部14aに対して同様に適用でき、同様の効果を得ることができる。なお、凸部40による外力に対する配向安定化効果を十分に発揮させるためには、凸部40のパターン(基板法線方向から見たときにパターン)は、できるだけ広い領域の液晶層30を包囲する形状であることが好ましい。従って、例えば、円形の開口部14aを有するネガ型パターンよりも、円形の単位中実部14b’を有するポジ型パターンの方が、凸部40による配向安定化効果が大きい。
(実施形態3)
上記の実施形態1の液晶表示装置では、液晶層30を介して互いに対向し、絵素領域を規定する絵素電極15と対向電極22との内の一方の電極(絵素電極15の場合を例示した)を2層構造電極とし、上層導電層14に開口部14aを設けることによって、電圧印加時に斜め電界を生成させ、この斜め電界を用いて液晶分子を放射状傾斜配向させた。実施形態2の液晶表示装置は、上層導電層14の開口部14a内に凸部を設けることによって、放射状傾斜配向を安定化させた。
本実施形態3では、2層構造電極が形成された基板(上記の例ではTFT基板)とは異なる基板(上記の例では対向基板)にさらなる配向規制構造を備える液晶表示装置を説明する。以下の説明では、上述した斜め電界によって放射状傾斜配向を実現する電極構造を第1配向規制構造と呼び、液晶層に対して第1配向規制構造とは異なる側に設けられたさらなる配向規制構造を第2配向規制構造と呼ぶことにする。
次に、第2配向規制構造の具体的な構造と作用を説明する。これまでの説明に沿って、第1配向規制構造がTFT基板に設けられ、第2配向規制構造が対向基板に設けられている場合について説明する。
図29(a)〜(e)に、第2配向規制構造28を有する対向基板200bを模式的に示す。上述の液晶表示装置と実質的に同じ構成要素には共通の参照符号を付して、その説明をここでは省略する。
図29(a)〜(e)に示した第2配向規制構造28は、液晶層30の液晶分子30aを放射状傾斜配向させるように作用する。但し、図29(a)〜(d)に示した配向規制構造28と図29(e)に示した配向規制構造28とでは、液晶分子30aを傾斜させる方向が異なっている。
図29(a)〜(d)に示した第2配向規制構造28による液晶分子の傾斜方向は、第1配向規制構造によって上層導電層14の単位中実部14b’(例えば図11(c)参照)に対応する領域に形成される液晶ドメインの放射状傾斜配向の配向方向と整合する。これに対し、図29(e)に示した第2配向規制構造28による液晶分子の傾斜方向は、第1配向規制構造によって上層導電層14の開口部14a(例えば図11(c)参照)に対応する領域に形成される液晶ドメインの放射状傾斜配向の配向方向と整合する。
図29(a)に示した第2配向規制構造28は、上層導電層14(例えば図15(a)の単位中実部14b’)に対向する位置に設けられた、対向電極22の開口部22aによって構成されている。なお、対向基板200bの液晶層30側の表面には垂直配向膜(不図示)が設けられている。
この第2配向規制構造28は、上述の第1配向規制構造と同様に、電圧印加時にのみ配向規制力を発現する。第2配向規制構造28は、第1配向規制構造によって形成される放射状傾斜配向をとる液晶ドメイン内の液晶分子に対して配向規制力を作用すればよいので、開口部22aの大きさは、上層導電層14に設けられる開口部14aよりも小さく、また、開口部14aによって包囲される単位中実部14b’(例えば図15(a)参照)よりも小さい。例えば、開口部14aや単位中実部14b’の面積の半分以下で十分な効果を得ることができる。対向電極22の開口部22aを上層導電層14の単位中実部14b’の中央部に対向する位置に設けることによって、液晶分子の配向の連続性が高くなり、且つ、放射状傾斜配向の中心軸の位置を固定することができる。
このように、第2配向規制構造として、電圧印加時にのみ配向規制力を発現する構造を採用すると、電圧無印加状態において液晶層30のほとんど全ての液晶分子30aが垂直配向状態をとるので、ノーマリブラックモードを採用した場合に、黒表示状態のおいて光漏れがほとんど発生せず、良好なコントラスト比の表示を実現できる。
但し、電圧無印加状態に配向規制力が発生しないので放射状傾斜配向が形成されず、また、印加電圧が低いときには配向規制力が小さいので、あまり大きな応力が液晶パネルに印加されると、残像が視認されることがある。
図29(b)〜(d)に示した第2配向規制構造28は、電圧の印加無印加に関わらず、配向規制力を発現するので、全ての表示階調において安定した放射状傾斜配向が得られ、応力に対する耐性にも優れている。
まず、図29(b)に示した第2配向規制構造28は、対向電極22上に液晶層30側に突き出た凸部22bを有する。凸部22bを形成する材料に特に制限はないが、樹脂などの誘電体材料を用いて容易に形成することができる。なお、対向基板200bの液晶層30側の表面には垂直配向膜(不図示)が設けられている。凸部22bは、その表面(垂直配向性を有する)の形状効果によって、液晶分子30aを放射状に傾斜配向させる。また、熱によって変形する樹脂材料を用いると、パターニングの後の熱処理によって、図29(b)に示したような、なだらかな丘上の断面形状を有する凸部22bを容易に形成できるので好ましい。図示したように、頂点を有するなだらかな断面形状(例えば球の一部)を有する凸部22bや円錐状の形状を有する凸部は、放射状傾斜配向の中心位置を固定する効果に優れている。
図29(c)に示した第2配向規制構造28は、対向電極22の下(基板21側)に形成された誘電体層23に設けられた開口部(凹部でもよい)23a内の液晶層30側の水平配向性表面によって構成されている。ここでは、対向基板200bの液晶層30側に形成される垂直配向膜24を、開口部23a内にだけ形成しないことで、開口部23a内の表面を水平配向性表面としている。これに代えて、図29(d)に示したように、開口部23a内にだけ、水平配向膜25を形成してもよい。
図29(d)に示した水平配向膜は、例えば、一旦対向基板200bの全面に垂直配向膜24を形成し、開口部23a内に存在する垂直配向膜24に選択的に紫外線を照射するなどして、垂直配向性を低下させることよって形成してもよい。第2配向規制構造28を構成するために必要な水平配向性は、TN型液晶表示装置に用いられている配向膜のようにプレチルト角が小さい必要はなく、例えば、プレチルト角が45°以下であればよい。
図29(c)および(d)に示したように、開口部23a内の水平配向性表面上では、液晶分子30aが基板面に対して水平に配向しようとするので、周囲の垂直配向膜24上の垂直配向している液晶分子30aの配向と連続性を保つような配向が形成され、図示したような放射状傾斜配向が得られる。
対向電極22の表面に凹部(誘電体層23の開口部によって形成される)を設けずに、対向電極22の平坦な表面上に、水平配向性表面(電極の表面または水平配向膜など)を選択的に設けるだけでも放射状傾斜配向が得られるが、凹部の形状効果によって、放射状傾斜配向をさらに安定化することができる。
対向基板200bの液晶層30側の表面に凹部を形成するために、例えば、誘電体層23として、カラーフィルタ層やカラーフィルタ層のオーバーコート層を用いると、プロセスが増加することが無いので好ましい。また、図29(c)および(d)に示した構造は、図29(a)に示した構造のように、凸部22bを介して液晶層30に電圧が印加される領域が存在しないので、光の利用効率の低下が少ない。
図29(e)に示した第2配向規制構造28は、図29(d)に示した第2配向規制構造28と同様に、誘電体層23の開口部23aを用いて、対向基板200bの液晶層30側に凹部を形成し、その凹部の底部にのみ、水平配向膜26を形成している。水平配向膜26を形成する代わりに、図29(c)に示したように、対向電極22の表面を露出させてもよい。
上述した、第1配向規制構造および第2配向規制構造を備える液晶表示装置400Gを図30(a)および(b)に示す。図30(a)は上面図であり、図30(b)は、図30(a)中の22B−22B’線に沿った断面図に相当する。
液晶表示装置400Gは、第1配向規制構造を構成する開口部14aを有する上層導電層14を有するTFT基板400aと、第2配向規制構造28を有する対向基板200bとを有している。なお、第1配向規制構造は、ここで例示する構成に限られず、前述した種々の構成を適宜用いることができる。また、第2配向規制構造28として、電圧無印加時にも配向規制力を発現するもの(図29(b)〜(d)および図29(e))を例示するが、図29(b)〜(d)に示した第1配向規制構造に代えて、図29(a)に示したものを用いることもできる。
液晶表示装置400Gの対向基板200bに設けられている第2配向規制構造28のうち、上層導電層14の中実部14bに対向する領域の中央付近に設けられている第2配向規制構造28は、図29(b)〜(d)に示したもののいずれかであり、上層導電層14の開口部14aに対向する領域の中央付近に設けられている第2配向規制構造28は、図29(e)に示したものである。
このように配置することによって、液晶層30に電圧を印加した状態、すなわち、上層導電層14と対向電極22との間に電圧を印加した状態において、第1配向規制構造によって形成される放射状傾斜配向の方向と、第2配向規制構造28によって形成される放射状傾斜配向の方向が整合し、放射状傾斜配向が安定化する。この様子を図30(a)〜(c)に模式的に示している。図30(a)は電圧無印加時を示し、図30(b)は電圧印加後に配向が変化し始めた状態(ON初期状態)を示し、図30(c)は電圧印加中の定常状態を模式的に示している。
第2配向規制構造(図29(b)〜(d))による配向規制力は、図31(a)に示したように、電圧無印加状態においても、近傍の液晶分子30aに作用し、放射状傾斜配向を形成する。
電圧を印加し始めると、図31(b)に示したような等電位線EQで示される電界が発生し(第1配向規制構造による)、開口部14aおよび中実部14bに対応する領域に液晶分子30aが放射状傾斜配向した液晶ドメインが形成され、図31(c)に示したような定常状態に達する。このとき、それぞれの液晶ドメイン内の液晶分子30aの傾斜方向は、対応する領域に設けられた第2配向規制構造28の配向規制力による液晶分子30aの傾斜方向と一致する。
定常状態にある液晶表示装置400Gに応力が印加されると、液晶層30の放射状傾斜配向は一旦崩れるが、応力が取り除かれると、第1配向規制構造および第2配向規制構造による配向規制力が液晶分子30aに作用しているので、放射状傾斜配向状態に復帰する。従って、応力による残像の発生が抑制される。第2配向規制構造28による配向規制力が強すぎると、電圧無印加時にも放射状傾斜配向によるリタデーションが発生し、表示のコントラスト比を低下するおそれがあるが、第2配向規制構造28による配向規制力は、第1配向規制構造によって形成される放射状傾斜配向の安定化および中心軸位置を固定する効果を有せばいいので、強い配向規制力は必要なく、表示品位を低下させるほどのリタデーションを発生させない程度の配向規制力で十分である。
例えば、図29(b)に示した凸部22bを採用する場合、直径が約30μm〜約35μmの単位中実部14b’に対して、それぞれ直径が約15μmで高さ(厚さ)が約1μmの凸部22bを形成すれば、十分な配向規制力が得られ、且つ、リタデーションによるコントラスト比の低下も実用上問題の無いレベルに抑えられる。
図32(a)および(b)に、第1配向規制構造および第2配向規制構造を備える他の液晶表示装置400Hを示す。図32(a)は上面図、図32(b)は図32(a)の32B−32B’線に沿った断面図である。
液晶表示装置400Hは、TFT基板400aの上層導電層14の開口部14aに対向する領域には第2配向規制構造を有していない。開口部14aに対向する領域に形成されるべき図29(e)に示した第2配向規制構造28を形成することはプロセス上の困難さを伴うので、生産性の観点からは、図29(a)〜(d)に示した第2配向規制構造28のいずれかだけを用いることが好ましい。特に、図29(b)に示した第2配向規制構造28は簡便なプロセスで製造できるので好ましい。
液晶表示装置400Hのように、開口部14aに対応する領域に第2配向規制構造を設けなくとも、図33(a)〜(c)に模式的に示したように、液晶表示装置400Gと同様の放射状傾斜配向が得られ、その耐応力性も実用上問題が無い。
(実施形態4)
本実施形態の液晶表示装置は、絵素電極の上層導電層と下層導電層との間に設けられた誘電体層が、上層導電層の開口部内に穴(孔)または凹部を有する。すなわち、本実施形態の液晶表示装置の2層構造の絵素電極は、上層導電層の開口部内に位置する誘電体層の全部が除去された(穴が形成された)構造または一部が除去された(凹部が形成された)構造を有する。
まず、図34を参照しながら、誘電体層に穴が形成された絵素電極を備える液晶表示装置500の構造と動作を説明する。
液晶表示装置500は、絵素電極15の上層導電層14が開口部14aを有するとともに、下層導電層12と上層導電層14との間に設けられている誘電体層13が、上層導電層14が有する開口部14aに対応して形成された開口部13aを有しており、開口部13a内に下層導電層12が露出されている。誘電体層13の開口部13aの側壁は、一般にテーパ状(テーパ角:θ)に形成されている。液晶表示装置500は、誘電体層13が開口部13aを有していることを除いて、実施形態1の液晶表示装置100と実質的に同じ構造を有しており、2層構造の絵素電極15は、実質的に液晶表示装置100の絵素電極15と同じように作用し、電圧印加時に液晶層30を放射状傾斜配向状態とする。
液晶表示装置500の動作を図34(a)〜(c)を参照しながら説明する。図34(a)〜(c)は、実施形態1の液晶表示装置100についての図1(a)〜(c)にそれぞれ対応する。
図34(a)に示したように、電圧無印加時(OFF状態)には、絵素領域内の液晶分子30aは、両基板11および21の表面に対して垂直に配向している。ここでは、簡単さのために、開口部13aの側壁による配向規制力は無視して説明する。
液晶層30に電圧を印加すると、図34(b)に示した等電位線EQで表される電位勾配が形成される。等電位線EQが上層導電層14の開口部14aに対応する領域で落ち込んでいる(「谷」が形成されている。)ことから分かるように、液晶表示装置500の液晶層30にも図1(b)に示した電位勾配と同様に、傾斜電界が形成されている。しかしながら、絵素電極15の誘電体層13が、上層導電層14の開口部14aに対応する領域に開口部13aを有するので、開口部14a内(開口部13a内)に対応する領域の液晶層30に印加される電圧は、下層導電層12と対向電極22との電位差そのものであり、誘電体層13による電圧降下(容量分割)が発生しない。すなわち、上層導電層14と対向電極22との間に図示した7本の等電位線は、液晶層30全体に亘って7本であり(図1(b)では、5本の等電位線EQのうちの1本が誘電体層13中に侵入しているのに対し)、絵素領域全体に亘って一定の電圧が印加される。
このように、誘電体層13に開口部13aを形成することによって、開口部13aに対応する液晶層30にも、その他の領域に対応する液晶層30と同じ電圧を印加することできる。しかしながら、電圧が印加される液晶層30の厚さが絵素領域内の場所によって異なるので、電圧印加時のリタデーションの変化が場所によって異なり、その程度が著しく大きいと、表示品位が低下するという問題が発生する。
図34に示した構成においては、上層導電層(開口部14a以外)14上の液晶層30の厚さd1と、開口部14a(および開口部13a)内に位置する下層導電層12上の液晶層30の厚さd2とは、誘電体層13の厚さ分だけ異なる。厚さd1の液晶層30と厚さd2の液晶層30とを同じ電圧範囲で駆動すると、液晶層30の配向変化に伴うリタデーションの変化量は、それぞれの液晶層30の厚さの影響を受けて互いに異なる。印加電圧と液晶層30のリタデーション量との関係が場所によって著しく異なると、表示品位を重視した設計においては透過率が犠牲になり、透過率を重視すると白表示の色温度がシフトし表示品位が犠牲になるという問題が発生する。したがって、液晶表示装置500を透過型液晶表示装置として用いる場合には、誘電体層13の厚さは薄い方が良い。
次に、絵素電極の誘電体層が凹部を有する液晶表示装置600の1つの絵素領域の断面構造を図35に示す。
液晶表示装置600の絵素電極15を構成する誘電体層13は、上層導電層14の開口部14aに対応する凹部13bを有している。その他の構造は、図34に示した液晶表示装置500と実質的に同じ構造を有している。
液晶表示装置600においては、絵素電極15が有する上層導電層14の開口部14a内に位置する誘電体層13は完全に除去されていないので、開口部14a内に位置する液晶層30の厚さd3は、液晶表示装置500における開口部14a内に位置する液晶層30の厚さd2よりも、凹部13b内の誘電体層13の厚さ分だけ薄い。また、開口部14a内に位置する液晶層30に印加される電圧は、凹部13b内の誘電体層13による電圧降下(容量分割)を受けるので、上層導電層(開口部14aを除く領域)14上の液晶層30に印加される電圧よりも低くなる。したがって、凹部13b内の誘電体層13の厚さを調整することによって、液晶層30の厚さの違いに起因するリタデーション量の違いと、液晶層30に印加される電圧の場所による違い(開口部14a内の液晶層に印加される電圧の低下量)との関係を制御し、印加電圧とリタデーションとの関係が絵素領域内の場所に依存しないようにすることができる。より厳密には、液晶層の複屈折率、液晶層の厚さ、誘電体層の誘電率および誘電体層の厚さ、誘電体層の凹部の厚さ(凹部の深さ)を調整することによって、印加電圧とリタデーションとの関係を絵素領域内の場所で均一にすることができ、高品位な表示が可能となる。特に、表面が平坦な誘電体層を有する透過型表示装置と比較し、上層導電層14の開口部14aに対応する領域の液晶層30に印加される電圧の低下による透過率の減少(光の利用効率の低下)が抑制される利点がある。
上述の説明は、絵素電極15を構成する上層導電層14と下層導電層12とに同じ電圧を供給した場合について説明したが、下層導電層12と上層導電層14とに異なる電圧を印加する構成とすれば、表示むらの無い表示が可能な液晶表示装置の構成のバリエーションを増やすことができる。例えば、上層導電層14の開口部14a内に誘電体層13を有する構成においては、上層導電層14に印加する電圧よりも、誘電体層13による電圧降下分だけ高い電圧を下層導電層12に印加することによって、液晶層30に印加される電圧が絵素領域内の場所によって異なることを防止することができる。
本実施形態4の液晶表示装置500および600においても、実施形態1の液晶表示装置100と同様に、開口部14aを有する上層導電層14を備える2層電極構造の絵素電極15によって生じる斜め電界の作用で、開口部14aのエッジ部の液晶分子30aから傾斜配向し、絵素領域内の液晶層30が開口部14aを中心に放射状傾斜配向状態となる。放射状傾斜配向が形成される現象の説明は、ここでは省略する。
図36を参照しながら、本実施形態の液晶表示装置の絵素電極の構造をさらに詳しく説明する。図36(a)および(b)は、絵素電極の近傍を拡大した模式的な断面図である。図36(a)は、誘電体層13の開口部13aの側壁に上層導電層14が形成されていない絵素電極構造を示し、図36(b)は、誘電体層13の開口部13aの側壁上にも上層導電層14が形成されている絵素電極構造を示している。
上述した図34および図35に示した液晶表示装置500および600が有している、図36(a)に示した構造は、図36(b)に示した絵素電極構造よりも好ましい。なぜならば、図36(a)に示した絵素電極構造の方が、上層導電層14の開口14aのエッジ部に生成される斜め電界の傾斜がきつく(傾斜角が大きく)、その結果、エッジ部近傍の液晶分子30aをより安定に(一義的な方向に)傾斜配向させることが可能になるからである。図36(a)中の等電位線EQから分かるように、開口部14a内の等電位線EQは、その一部が誘電体層13の開口部13aの側壁に侵入するので、等電位線EQの開口部14aのエッジ部における傾斜は、側壁の傾斜よりも強くなる。したがって、開口部13aの側壁の表面(側面上に形成された垂直配向膜(不図示)上)に垂直に配向規制されている液晶分子30aを一義的に(図示の例では反時計回り方向に)傾斜させることができる。また、図36(a)から分かるように、開口部13aの側壁上の液晶分子30aが斜め電界によって一義的な方向に傾斜(回転)するためには、側壁の傾斜角θは小さい方が好ましい。
これに対し、誘電体層13の開口部13aの側壁上に上層導電層14を形成すると、図36(b)中の等電位線EQに示したよう、側壁上では等電位線EQが上層導電層14の表面に平行になるので、開口部14aのエッジ部における等電位線EQの傾斜は側壁の傾斜よりも緩やかになる。したがって、誘電体層13の開口部13aの側壁の表面(上層導電層上に形成された垂直配向膜(不図示)上)に垂直に配向規制されている液晶分子30aに対して、等電位線EQは直交するので、液晶分子30aが傾斜する方向が一義的に決まらないという問題が発生することがある。なお、上層導電層14と下層導電層12とを電気的に接続するために、上層導電層14の一部を下層導電層12の一部に重ねてもよい。この場合、上層導電層14と下層導電層12とを電気的に接続するためのコンタクトホールを別途設ける必要が無くなる。特に、誘電体層13の平坦な表面(上面)上に形成された上層導電層14を反射電極(反射層)として用いる反射型液晶表示装置においては、開口率を向上することができる。
誘電体層13が開口部13aを有する構造についての上記の説明は、誘電体層13が凹部13bを有する構成にも適用される。
本実施形態の液晶表示装置として、上層導電層14が絵素領域に1つの開口部14aを有する絵素電極を備えた液晶表示装置を例示したが、本実施形態は、上記の例に限られず、絵素領域毎に複数の開口部14aを有する液晶表示装置に適用することができる。上述した、上層導電層14の開口部14a対応して、誘電体層13に開口部13aまたは凹部13bを形成する構成は、実施形態1として説明した全ての液晶表示装置に適用することができる。
(実施形態5)
実施形態5の液晶表示装置700の1つの絵素領域を模式的に図37に示す。図37(a)は液晶表示装置700の断面図、図37(b)は液晶表示装置700の平面図である。図37(a)は図37(b)中の37A−37A’線に沿った断面図に相当する。液晶表示装置700は下層導電層12がさらに開口部12aを有する以外は、実施形態4の液晶表示装置500と実質的に同じ構造を有しているので、共通する構造の説明をここでは省略する。
液晶表示装置700の絵素電極15の下層導電層は、誘電体層13の開口部13a内に露出された領域内に開口部12aを有している。図37(b)に示したように、誘電体層13の円形の開口部13aは、絵素領域の中央、すなわち上層導電層14の中央部に設けられた円形の開口部14aに対応して設けられている。誘電体層13の開口部13a内に露出された下層導電層12に形成されている開口部12aは、開口部14aおよび開口部13aの中央にある。
この液晶表示装置700の液晶層30に電圧を印加すると、図37(a)に示した等電位線EQで表される電界が発生する。上層導電層14の開口部14aのエッジ部EGで落ち込んだ等電位線EQは、下層導電層12の開口部12a内でさらに落ち込む。
下層導電層12の開口部12aのエッジ部にも斜め電界が形成されるので、電圧を印加された液晶層30中の液晶分子30aの配向変化は、開口部14aのエッジ部と開口部12aのエッジ部とにおける液晶分子30aの傾斜がトリガーとなって起こり、開口部12aの中心で垂直に配向した状態の液晶分子30aを中心に、放射状傾斜配向が形成される。このように、上層導電層14の開口部14aに加え、開口部14aに対向する位置にある下層導電層12の中央に開口部12aを設けることによって、開口部14a内の液晶分子30aの放射状傾斜配向の位置を正確に且つ安定に制御することができるので、放射状傾斜配向がさらに安定化するととともに、応答速度を向上することができる。
なお、開口部12aに対応する液晶層30には電圧が印加されないので、開口部12aは大きくないことが好ましい。典型的には8μm以下であることが好ましい。開口部12aは、放射状傾斜配向の中心にのみ形成すればよいので、開口部14a毎の中心に1つ形成すればよい。開口部12aの形状は、円形に限らず、楕円や多角形が用いられ得ることは、開口部14aについて上述したのと同じである。
誘電体層13に開口部13aを形成した構成について、開口部12aの作用を説明したが、誘電体層13に凹部13bを形成した場合(図35)や平坦な誘電体層13を用いる場合(例えば図1)に用いることができる。すなわち、液晶表示装置700を例に説明した、絵素電極15の下層導電層12が、上層導電層14の開口部14aに対向する領域に開口部12aを有する構成は、上述した実施形態1および2の液晶表示装置と適宜組み合わせることができる。但し、開口部12aは小さい(典型的には直径8μm以下)ので、開口部12a上の誘電体層13が厚い場合には十分な効果が得られないことがある。
(透過反射両用型液晶表示装置への適用)
透過反射両用型液晶表示装置(以下、「両用型液晶表示装置」と略す)は、絵素領域内に、透過モードで表示を行う透過領域と、反射モードで表示を行う反射領域とを有する液晶表示装置を指す。透過領域および反射領域は、典型的には、透明電極および反射電極によって規定される。反射電極に代えて、反射層と透明電極との組み合わせた構造によって、反射領域を規定することもできる。
この両用型液晶表示装置は、反射モードと透過モードとを切り替えて表示すること、または同時に両方の表示モードで表示することもできる。したがって、例えば、周囲光が明るい環境下では反射モードの表示を、暗い環境では透過モードの表示を実現することができる。また、両方のモードの表示を同時に行うと、透過モードの液晶表示装置を周囲光が明るい環境下(蛍光灯の光や太陽光が直接特定の角度で表示面に入射する状態)で使用したときに見られるコントラスト比の低下を抑制することができる。このように、透過型液晶表示装置の欠点を補うことができる。なお、透過領域と反射領域との面積の比率は、液晶表示装置の用途に応じて適宜設定され得る。また、専ら透過型として用いる液晶表示装置においては、反射モードでの表示ができない程度にまで反射領域の面積比率を小さくしても、上述した透過型液晶表示装置の欠点を補うことができる。
図38A、図38Bおよび図38Cを参照しながら両用型液晶表示装置の構造と動作を説明する。図38Aに示した両用型液晶表示装置150は実施形態1の液晶表示装置100と、図38Bに示した両用型液晶表示装置550は実施形態4の液晶表示装置500と、図38Cに示した両用型液晶表示装置650は実施形態4の液晶表示装置600と、それぞれ基本的に同じ構造を有している。両用型液晶表示装置は、図示したこれらの例に限られず、実施形態1、2および3で説明した全ての液晶表示装置において、上層電極層および下層電極層の内のいずれか一方を透明導電層とし、他方を反射導電層とすることによって得られる。
図38Aに示した液晶表示装置150は、絵素電極15の上層導電層14Tは透明導電層から形成されており、下層導電層12Rは光反射特性を有する導電層、典型的には金属層から形成されている。絵素電極15で規定される絵素領域は、反射下層導電層12Rによって規定される反射領域Rと、透明上層導電層14Tで規定される透過領域Tとを有している。なお、透明上層導電層14Tと反射下層導電層12Rとの重なりや、基板法線(表示面法線)に対して斜めに入射する光の表示への寄与を考慮すると、反射領域Rと透過領域Tとはその境界付近で互いに重なることになるが、簡単さのために、基板法線方向から入射する光による表示モードによって両領域を区別して図示することにする。
液晶表示装置150の基本的な構造は、液晶表示装置100と同じなので、実質的に同じように液晶層を駆動する。すなわち、液晶層30は、電圧印加時に、2層構造の絵素電極15の作用によって、安定した放射状傾斜配向をとり、視角特性に優れた液晶表示装置が実現される。
以下に、液晶表示装置150の表示動作を説明する。
液晶表示装置150が白表示状態のとき、TFT基板100aの外側(図中の下側)に設けられたバックライト(不図示)から透過領域Tに入射する光は、基板11、誘電体層13、透明上層導電層14Tを順次通過し、液晶層30を経て、対向基板100b側に出射される。対向基板100b側から入射する光(典型的には周囲光)は、基板21および対向電極22を順次通過し、液晶層30および誘電体層13を経て、反射下層導電層12Rに入射し、反射され、逆の経路を辿って、対向基板100b側に出射される。
このように、透過モードで表示を行う光は液晶層30を1回しか通過しないのに対し、反射モードの表示を行う光は液晶層30を2回通過する。したがって、絵素領域の全体(透過領域Tおよび反射領域R)に亘って均一な厚さ(d5)の液晶層30に、同じ電圧を印加すると、透過光が液晶層30によって受けるリタデーションの変化量と、反射光が液晶層30から受けるリタデーションの変化量とが一致しなくなり、液晶層30に電圧印加時に、透過光と反射光で同時に同じ階調を表示することができず、表示品位が低下するという問題が発生する。
しかしながら、以下に説明するように、本発明による液晶表示装置150では上記の問題の発生を回避することができる。
液晶表示装置150は2層構造の絵素電極15を備えるので、実施形態1の液晶表示装置について説明したように、反射領域R内の液晶層30に印加される電圧(下層導電層12Rと対向電極22との間の電圧)は、誘電体層13による電圧降下を受けるので、透過領域T内に液晶層30に印加される電圧(上層導電層14Tと対向電極22との間の電圧)よりも低くなる。その結果、反射領域R内の液晶層30によるリタデーション変化は、透過領域T内の液晶層30のリタデーション変化よりも少ない。したがって、液晶層30の複屈折率および厚さ、誘電体層13の誘電率および厚さを調整することによって、透過領域T内の液晶層30によるリタデーション変化と反射領域R内の液晶層30によるリタデーション変化とを近づけることができる。すなわち、反射光のリタデーションに対する光路長の影響を、印加電圧を調整することによって補償することができる。
上述したように、本発明の液晶表示装置150を用いると、透過モードの電圧−透過率特性と反射モードの電圧−反射率特性とを互いに近づけることが可能となり、全方位において視野角特性に優れ、且つあらゆる環境で視認性が高い透過反射両用型液晶表示装置が得られる。
次に、図38Bを参照しながら、他の両用型液晶表示装置550の構造と動作とを説明する。両用型液晶表示装置550の絵素電極15の上層導電層14Rは光反射特性を有する導電層から形成されており、下層導電層12Tは透明導電層から形成されている。絵素電極15で規定される絵素領域は、反射上層導電層14Rによって規定される反射領域Rと、透明下層導電層12Tで規定される透過領域Tとを有している。両用型液晶表示装置550のその他の基本的な構成は、図34に示した液晶表示装置500と同様なので、その説明はここでは省略する。
液晶表示装置550の反射上層導電層14Rの開口部14a以外の領域内(すなわち、反射領域R内)の液晶層30の厚さをd1、反射上層導電層14Rの開口部14a内および誘電体層13の開口部13a内(すなわち、透過領域T内)の液晶層30の厚さをd2とする。反射モードの表示に寄与する光(反射光)は、反射領域R内の厚さd1の液晶層30を2回通過し、透過モードの表示に寄与する光(透過光)は、透過領域T内の厚さd2の液晶層30を1回通過する。従って、誘電体層13の厚さをd1と等しくすることによって、d1=d2/2とすれば、反射光および透過光がそれぞれ液晶層30を通過する距離を互いに等しくできる。また、液晶表示装置550の絵素電極15は、透明下層導電層12Tが誘電体層13の開口部13a内に露出されている構成(透明下層導電層12T上に誘電体層13が存在しない構成)を有しているので、透過領域T内の液晶層30に印加される電圧は、反射領域R内の液晶層30に印加される電圧と等しい。
従って、反射領域R内の液晶層30の厚さd1と透過領域T内の液晶層30の厚さd2とが2・d1=d2の関係を満足するように設定すれば、下層導電層12Rと上層導電層14Tに同じ電圧を印加した場合に透過光が液晶層30によって受けるリタデーションの変化量と、反射光が液晶層30から受けるリタデーションの変化量とが一致する。但し、反射領域R内の液晶層30の厚さと透過領域T内の液晶層30の厚さとが互いに異なると、印加する電圧が等しくても電界強度は異なるため、この違いを考慮して、2・d1=d2の関係からずらした方がより好ましい。
上述したように、本発明の液晶表示装置550を用いると、透過モードの電圧−透過率特性と反射モードの電圧−反射率特性とを互いに近づけることが可能となり、全方位において視野角特性に優れ、且つあらゆる環境で視認性が高い透過反射両用型液晶表示装置が得られる。
次に、図38Cを参照しながら、他の両用型液晶表示装置650の構造と動作とを説明する。両用型液晶表示装置650の絵素電極15の上層導電層14Rは光反射特性を有する導電層から形成されており、下層導電層12Tは透明導電層から形成されている。絵素電極15で規定される絵素領域は、反射上層導電層14Rによって規定される反射領域Rと、透明下層導電層12Tで規定される透過領域Tとを有している。両用型液晶表示装置650のその他の基本的な構成は、図35に示した液晶表示装置600と同様なので、その説明はここでは省略する。
液晶表示装置650の反射上層導電層14Rの開口部14a以外の領域内(すなわち、反射領域R内)の液晶層30の厚さをd1、反射上層導電層14Rの開口部14a内および誘電体層13の凹部13b内(すなわち、透過領域T内)の液晶層30の厚さをd3とする。透過領域T内の液晶層30の厚さd3は、反射領域R内の液晶層30の厚さd1よりも、誘電体層13の凹部13bの深さ分だけ厚い。反射モードの表示に寄与する光(反射光)は、反射領域R内の厚さd1の液晶層30を2回通過し、透過モードの表示に寄与する光(透過光)は、透過領域T内の厚さd3の液晶層30を1回通過する。すなわち、透過光が液晶層30内を通過する距離はd3で、反射光が液晶層30内を通過する距離は2・d1でである。
一方、透過領域T内の液晶層30に印加される電圧は、凹部13b内の誘電体層13による電圧降下(容量分割)を受けるので、反射領域Rの液晶層30に印加される電圧よりも低くなる。したがって、凹部13b内の誘電体層13の厚さを調整することによって、液晶層30内を通過する距離の違いに起因するリタデーション量の違いと、液晶層30に印加される電圧の場所による違い(透過領域T内の液晶層30に印加される電圧の低下量)との関係を制御し、印加電圧とリタデーションとの関係が透過領域Tと反射領域Rとで一致するさせることができる。より厳密には、液晶層の複屈折率、液晶層の厚さ、誘電体層の誘電率および誘電体層の厚さ、誘電体層の凹部の厚さ(凹部の深さ)を調整することによって、印加電圧とリタデーションとの関係を透過領域と反射領域とに亘って均一にすることができる。
上述したように、本発明の液晶表示装置650を用いると、透過モードの電圧−透過率特性と反射モードの電圧−反射率特性とを互いに近づけることが可能となり、全方位において視野角特性に優れ、且つあらゆる環境で視認性が高い透過反射両用型液晶表示装置が得られる。
透過反射両用型液晶表示装置150、550および650を図38A,38Bおよび38Cでは、反射導電層(上層または下層導電層)の表面を平坦に描いたが、反射導電層の表面を凹凸状に加工することによって、光を拡散反射(または散乱)させる機能を付与することもできる。反射導電層に光拡散機能を付与することによって、視差が無く、表示品位の高い反射モードの表示を実現することが出来る。
反射導電層の表面に凹凸を形成する方法としては、例えば、特開平6−75238号公報に開示されている方法が挙げられる。
例えば、フォトレジスト(ネガ型またはポジ型のいずれでもよい)を用いて誘電体層13を形成し、所定のパターンの透光部(または遮光部)を有するフォトマスクを用いたフォトリソグラフィプロセスで、レジスト層の表面に凹凸を加工する。必要に応じて、凹凸が形成されたレジスト層を加熱し、レジスト層の表面が熱によって変形する現象(熱だれ)を利用し、凹凸を滑らか(連続した波状)としてもよい。このようにして形成された誘電体層13の凹凸を有する表面上に反射上層導電層を形成することによって、反射上層導電層の表面に凹凸を形成することができる。
但し、図38Bおよび38Cに示した両用型液晶表示装置550および650の様に、反射上層導電層14Rを用いる構成においては、図40(a)および(b)に示した様に、開口部14aのエッジ部における誘電体層13の高さが均一とすることが好ましい。
本発明の液晶表示装置においては、開口部14aを有する反射上層導電層14Rを備える2層構造の絵素電極15によって、開口部14aのエッジ部に生成される斜め電界を利用して液晶分子を放射状傾斜配向させている。
しかしながら、図39(a)に示した様に、誘電体層13の表面に形成した凹凸(図中の円は凹部または凸部を模式的に示している。)が、誘電体層13の開口部13aや凹部13bと重なるように配置されると、図39(b)に示した様に、開口部14aのエッジ部における誘電体層13の厚さが場所によって異なる。このように、エッジ部の誘電体層13の表面に凹凸が存在すると、エッジ部に生成される斜め電界の方向(等電位線の傾斜方向)が場所によって変化することになり、開口部14aを中心とする放射状傾斜配向の安定性が低下したり、開口部14aの位置によって放射状傾斜配向の状態が異なったりする。
そこで、図40(a)に示すように、開口部14a(誘電体層13の開口部13aまたは凹部13b)の周辺の誘電体層13の表面には凹凸を形成せず、平坦な表面とすると、図40(b)に示すように、開口部14aの全周に亘ってエッジ部付近の誘電体層13が均一な厚さを有する構造が得られる。
なお、反射導電層の表面を凹凸状に加工することによって反射導電層に光拡散機能を付与する代わりに、光拡散機能を有する拡散層を反射導電層の光入射側に設けてもよい。拡散層は、液晶パネルの内側(基板の液晶層側)に設けてもよいし、外側(観察者側)に設けてもよい。拡散層は、液晶表示装置の反射領域に選択的に設けることが好ましい。
(偏光板、位相差板の配置)
負の誘電率異方性を有する液晶分子が電圧無印加時に垂直配向する液晶層を備える、いわゆる垂直配向型液晶表示装置は、種々の表示モードで表示を行うことができるが、そのなかで、液晶層の複屈折率を電界によって制御することによって表示する複屈折モードが、表示品位の観点から好ましい。複屈折モードの垂直配向型液晶表示装置の表示品位を向上するための、偏光板や位相差板(波長板)の配置関係を以下に説明する。先の実施形態1から5で説明した全ての液晶表示装置の一対の基板(例えば、TFT基板と対向基板)の外側(液晶層30と反対側)に一対の偏光板を設けることによって、複屈折モードの液晶表示装置を得ることができる。
まず、偏光板の配置を図41および図42を参照しながら説明する。図41は電圧無印加状態(OFF状態)を、図42は電圧印加状態(ON状態)をそれぞれ示している。
図41(a)は、TFT基板100aおよび対向基板100bのそれぞれの外側に偏光板50aおよび50bをそれぞれ有する液晶表示装置100Aの模式的な断面図である。液晶表示装置100Aは、先の実施形態1から5の任意の液晶表示装置であり得る。図41(a)に示したように、液晶層30内の液晶分子30aは電圧無印加時には垂直配向状態にある。
図41(b)は、液晶表示装置100Aを対向基板100b側(観察者側)から表示面法線方向(基板法線方向)に沿って見たときの、偏光板50aおよび50bの透過軸(偏光軸)PAの配置関係を模式的に示している。図中の実線矢印PA1は偏光板(上側)50bの透過軸を、破線矢印は偏光板(下側)50aの透過軸PA2をそれぞれ示している。図41(b)に示したように、偏光板50aおよび50bの透過軸PA2およびPA1は、互いに直交するように配置されている。すなわち、偏光板50aおよび50bはクロスニコル状態に配置されている。
電圧無印加時の液晶層30の液晶分子30aの軸方位は基板面に対して垂直であるため、液晶層30に垂直に入射する偏光に対しては位相差を与えない。なお、「液晶層30に垂直」とは、基板100aおよび100bに平行な液晶層30の面に対して垂直であることを意味する。
垂直配向状態の液晶層30は、垂直入射する偏光に位相差を与えないので、例えば、TFT基板100a側から液晶層30に垂直に入射する光は、偏光板50aを通過することによって透過軸PA2に沿った偏光方向を有する直線偏光となり、液晶層30に垂直に入射し、その偏光方向を維持したままで液晶層30を通って偏光板50bに入射する。偏光板50aおよび偏光板50bの透過軸PA2およびPA1は互いに直交しているので、対向基板100bを通過した直線偏光は偏光板50bで吸収される。その結果、電圧無印加状態の液晶表示装置100Aは黒表示となる。
電圧印加状態では、図42(a)および(b)に示したように、液晶分子30aは放射状傾斜配向している。図42(a)および(b)では、簡単さのために1つの放射状傾斜配向領域を図示しているが、先の実施形態1から5で説明したように、1つの絵素領域内に複数の放射状傾斜配向領域が形成されてもよい。以下の図面においても、1つの放射状傾斜配向を図示することがあるが、1つの絵素領域内に複数の放射状傾斜配向領域が形成されてもよい。
放射状傾斜配向した液晶分子30aを含む液晶層30は、例えば、TFT基板100a側から液晶層30に垂直に入射する光は、偏光板50aを通過することによって透過軸PA2に沿った偏光方向を有する直線偏光となり、液晶層30に垂直に入射する。基板法線方向から見た軸方位がこの直線偏光の偏光方向に対して平行または直交するように配向している液晶分子30a、および垂直配向状態にある液晶分子(放射状傾斜配向の中心に位置する液晶分子)30aは、液晶層30に垂直に入射した直線偏光に位相差を与えない。従って、液晶分子30aが上記の配向方向にある領域に入射した直線偏光は、偏光状態を維持したままで液晶層30を通過し、対向基板100bを通って偏光板50bに入射する。偏光板50aおよび偏光板50bの透過軸PA2およびPA1は互いに直交しているので、この直線偏光は偏光板50bで吸収される。すなわち、放射状傾斜配向状態の液晶層30の一部の領域は、電圧印加状態においても、黒表示状態となる。
一方、偏光板50aの透過軸PA2に平行な偏光方向を有する直線偏光のうち、基板法線方向から見た軸方位がこの直線偏光の偏光方向に対して平行または直交するように配向している液晶分子30a、および垂直配向状態にある液晶分子30a以外の液晶分子30aを含む領域に入射した直線偏光は、液晶層30によって位相差が与えられる。すなわち、直線偏光は偏光状態を崩され、楕円偏光となる。また、この位相差は、入射直線偏光の偏光方向と、基板法線方向から見たときの液晶分子30aの軸方位が45度をなす領域で最大となり、入射直線偏光の偏光方向に対して、基板法線方向から見たときの液晶分子30aの軸方位が平行または直交に近づくにつれて小さくなる。従って、入射直線偏光の偏光方向に対して、基板法線方向から見たときの液晶分子30aの軸方位が平行または直交以外、または液晶分子30aの分子軸が基板法線方向に平行ではない領域で、且つ、基板法線方向から見たときの液晶分子30aの軸方位が平行または直交以外の領域では、液晶層30に入射する直線偏光に位相差が与えられ、直線偏光が崩される(一般的には楕円偏光となる)。従って、液晶層30を通過することによって偏光状態が変換された偏光が、偏光板50bに入射すると、その一部は偏光板50bを透過する。この透過する偏光の量は、液晶層30によって与えられる位相差の大きさに依存するので、液晶層30に印加する電圧を制御することによって調整され得る。従って、液晶層30に印加する電圧を制御することによって、階調表示が可能となる。
(λ/4板)
液晶層の両側に配置された一対の偏光板と液晶層との間に、4分の一波長板(λ/4板)を設けることによって、さらに表示品位を向上することができる。すなわち、放射状傾斜配向を呈する液晶層30に円偏光を入射させることによって、光の利用効率を高めることができる。例えば、特開平10−301114号公報に開示されている4分割マルチドメイン配向の垂直配向型液晶層に直線偏光を入射させる液晶表示装置は、マルチドメインのドメイン間の境界領域を表示に寄与させることができないのに対し、連続的に配向方向が変化する放射状傾斜配向を呈する液晶層に円偏光を入射させる構成を採用すると、より明るい(光の利用効率の高い)液晶表示装置を実現することができる。
図43および図44を参照しながら、λ/4板の作用を説明する。図43は電圧無印加状態を、図44は電圧印加状態をそれぞれ模式的に示している。なお、本願明細書において、特にことわらない限り、「λ/4板」は、単層のものを指し、複数の位相差板を積層して全体としてλ/4条件を満足する位相差板を、特に「広帯域λ/4板」と呼ぶことにする。ここでは、単層のλ/4板を用いた構成について説明する。
図43および図44に示した液晶表示装置100Bは、液晶表示装置100の両側に、偏光板50aおよび50bと、λ/4板60aおよび60bとを有している。λ/4板60aおよび60bは、その遅相軸に対して45°の偏光方向を有する直線偏光を円偏光に変換または逆に円偏光をその遅相軸に対して45°の偏光方向を有する直線偏光に変換する位相差板である。なお、液晶表示装置100に限られず、実施形態1から5の任意の液晶表示装置を用いることができる。
液晶表示装置100Bは、TFT基板100aとその外側(液晶層30とは反対側)に設けられた偏光板50aとの間にλ/4板60a有し、対向基板100bと、その外側に設けられた偏光板50bとの間にλ/4板60bを有している。偏光板50aおよび50bのそれぞれの透過軸PA2およびPA1、λ/4板60aおよび60bのそれぞれの遅相軸SL2およびSL1は、図43(b)に示したように配置されている。
λ/4板60aの遅相軸SL2は偏光板50aの透過軸PA2と45°の角度をなし、λ/4板60bの遅相軸SL1は偏光板50bの透過軸PA1と45°の角度をなすように配置されている。透過軸PA1およびPA2と遅相軸SL2およびSL1とがなす角は、同じ方向(例えば、図示したように、対向基板100b側から基板法線方向に沿って見たとき、いずれも同一方向、右回りなら両方とも右回り、左回りなら両方とも左回り)に45度をなすように配置されている。
図43(a)に示したように、電圧無印加時には、液晶層30は垂直配向状態にあるので、液晶層30に垂直に入射する光に位相差を与えない。従って、例えば、TFT基板100a側から液晶層30に垂直に入射する光は、偏光板50aを通り、偏光方向がλ/4板60aの遅相軸SL2に対して45°の直線偏光となり、λ/4板60aに入射する。この直線偏光はλ/4板60aを通過することによって円偏光に変換される。円偏光は偏光状態を維持したままで液晶層30を通過し、λ/4板60bに入射する。λ/4板60bを通過することによって円偏光は、偏光方向が遅相軸SL1に対して45度の直線偏光となり、偏光板50bに入射する。λ/4板60bを通過した直線偏光の偏光方向は、偏光板50bの透過軸PA1と直交しているので、この直線偏光は偏光板50bで吸収される。従って、液晶表示装置100Bは、電圧無印加状態で黒表示状態となる。
電圧印加状態では、図44(a)および(b)に示したように、液晶分子30aは放射状傾斜配向している。
放射状傾斜配向した液晶分子30aを含む液晶層30は、液晶層30に入射する光にその偏光方向に応じた位相差を与える。例えば、TFT基板100a側から液晶層30に垂直に入射する光は、偏光板50aを通過することによって、偏光方向がλ/4板60aの遅相軸SL2に対して45°の直線偏光となり、λ/4板60aに入射する。この直線偏光はλ/4板60aを通過することによって円偏光に変換される。このとき、垂直配向状態にある液晶分子(放射状傾斜配向の中心に位置する液晶分子)30aは、液晶層30に垂直に入射した偏光に位相差を与えない。従って、液晶分子30aが垂直配向している領域に入射した円偏光は、偏光状態を維持したままで液晶層30を通過し、λ/4板60bに入射する。λ/4板60bを通過することによって円偏光は、偏光方向が遅相軸SL1に対して45度の直線偏光となり、偏光板50bに入射する。λ/4板60bを通過した直線偏光の偏光方向は、偏光板50bの透過軸PA1と直交しているので、この直線偏光は偏光板50bで吸収される。すなわち、放射状傾斜配向状態の液晶層30の一部の領域(垂直配向領域のみ)は、電圧印加状態においても、黒表示状態となる。
一方、λ/4板60bによって直線偏光から変換された円偏光のうち、垂直配向状態にある液晶分子30a以外の液晶分子30aを含む領域に入射した円偏光は、液晶層30によって位相差が与えられる。すなわち、円偏光の偏光状態が変化する(一般には楕円偏光となる)。従って、λ/4板60bを通過した偏光の一部は偏光板50bを透過する。この透過する偏光の量は、液晶層30によって与えられる位相差の大きさに依存するので、液晶層30に印加する電圧を制御することによって調整され得る。従って、液晶層30に印加する電圧を制御することによって、階調表示が可能となる。
上述したように、λ/4板60aおよび60bをさらに有する液晶表示装置100Bは、電圧印加状態で黒表示状態となる領域が、垂直配向領域(放射状傾斜配向の中心)だけであり、垂直配向領域および偏光板の透過軸に平行または直交する方向に配向した領域が黒表示状態となる液晶表示装置100Aと比較し、電圧印加状態で黒表示となる領域が少ない。すなわち、液晶表示装置100Bは、液晶表示装置100Aよりも光利用効率(実効開口率)が高く、輝度の高い表示を実現することができる。
一般に、単層のλ/4板60aおよび60bの波長分散を完全に無くすことは容易ではない。例えば、λ/4板60aおよび60bとして、視感度が最も高い波長が550nmの光に対してλ/4条件を満足するように作製されたλ/4板を用いると、光の波長が550nmからずれるに従いλ/4条件からはずれることになる。その結果、液晶表示装置100Bでは、黒表示状態において、波長が550nmからずれた可視光が偏光板50bを通過し、その結果、色づき現象が発生する。
この黒表示状態における色づき現象の発生を抑制するために、図45に示す液晶表示装置100Cのように、偏光板50aおよび50bの透過軸PA2およびPA1を互いに直交させ、且つ、λ/4板60aおよび60bの遅相軸SL2およびSL1を互いに直交させる。偏光板50aの透過軸PA2とλ/4板60aの遅相軸SL2と、および偏光板50bの透過軸PA1とλ/4板60bの遅相軸SL1とは、液晶表示装置100Bと同様に、それぞれ同一方向に45°の角度をなしている。このように、λ/4板60aの遅相軸SL2とλ/4板60bの遅相軸SL1とを互いに直交するように配置することによって、λ/4板60aおよびλ/4板60bのそれぞれが有する屈折率異方性の波長分散が互いに相殺するので、黒表示状態において、広い波長範囲の可視光が偏光板50bによって吸収され、良好な黒表示が実現される。特に、λ/4板60aおよびλ/4板60bとして同一のλ/4板(少なくとも同じ材料から形成されたλ/4板)を用いることが好ましい。このような構成を採用すると、以下に説明する広帯域λ/4板を用いる構成よりも安価に、液晶表示装置を構成することができる。
上述した単層のλ/4板60aおよび60bの屈折率異方性の波長分散に起因する黒表示状態における色づき現象の発生を抑制する他の方法として、単層のλ/4板に代えて、広帯域λ/4板を用いる方法がある。広帯域λ/4板は、複数の位相差板を積層することによって波長分散の影響を相殺し、可視光全体(400nm〜800nm)に亘ってλ/4条件を満足する。広帯域λ/4板は、例えば、単層のλ/4板と単層の半波長板(以下、「λ/2板」と称する。)とを積層することによって形成することができる。
図46に示した液晶表示装置100Dは、液晶表示装置100の両側に、偏光板50aおよび50bと、λ/4板60aおよび60bと、λ/2板70aおよび70bを有している。TFT基板100aの外側(液晶層30とは反対側)には、液晶層30側から順に、λ/4板60a、λ/2板70a、および偏光板50aが設けられ、対向基板100bの外側には、液晶層30側から順に、λ/4板60b、λ/2板70b、および偏光板50bが設けられている。
対向基板100b上に配置されたλ/4板60b、λ/2板70b、および偏光板50bは、図46(b)に示すようにそれぞれの光学軸が配置されている。偏光板50bの透過軸PA1とλ/2板70bの遅相軸SL3との間の角をα(°)とするとき、偏光板50bの透過軸PA1とλ/4板60bの遅相軸SL1との間の角が2α±45°となるように配置されている。
一方、TFT基板100a上に配置されたλ/4板60a、λ/2板70a、および偏光板50aは、図46(c)に示すようにそれぞれの光学軸が配置されている。偏光板50aの透過軸PA2とλ/2板70aの遅相軸SL4との間の角をβ(°)とするとき、偏光板50aの透過軸PA2とλ/4板60aの遅相軸SL2との間の角が2β±45°となるように配置されている。また、偏光板50aの透過軸PA2とλ/4板60aの遅相軸SL2との間のこの角(2β±45°)は、偏光板50bの透過軸PA1とλ/4板60bの遅相軸SL1との間の角(2α±45°)と符号が一致するように設定されている。すなわち、PA1と遅相軸SL1との間の角が2α+45°のとき、透過軸PA2と遅相軸SL2との間の角が2β+45°となるように設定されている。
TFT基板100a側から垂直配向状態にある液晶層30に垂直に入射した光は、偏光板50aを通り直線偏光となり、λ/2板70aを通って偏光板50aの透過軸PA2に対して2βの角度の偏光方向を有する直線偏光になる。この直線偏光は、λ/4板60aに入射し、円偏光に変換される。この円偏光は、偏光状態を維持したまま液晶層30を通過し、λ/4板60bに入射する。λ/4板60bによって、λ/4板60bの遅相軸SL1に対して45度の角度の偏光方向を有する直線偏光に変換される。この直線偏光は、λ/2板70bに入射してλ/4板60bの遅相軸SL1に対して2β+45度の角度の直線偏光となり、偏光板50bに入射する。ここで、λ/2板70bを通過した直線偏光の偏光方向は、偏光板50bの透過軸PA1と直交しているので、この直線偏光は偏光板50bで吸収される。従って、液晶表示装置100Dは、電圧無印加状態で黒表示状態となる。
液晶表示装置100Dにおいては、λ/4板60aと偏光板50aとの間、およびλ/4板60bと偏光板50bとの間に、λ/2板70aおよびλ/2板70bをそれぞれ有しており、λ/2板70aおよび70bがλ/4板60aおよび60bの屈折率異方性の波長分散を緩和するので、色付きのない良好な黒表示が可能となる。
この黒表示状態における色づき現象の発生をさらに抑制するために、図47に示す液晶表示装置100Eのように、偏光板50aおよび50bの透過軸PA2およびPA1を互いに直交させ、且つ、λ/4板60aおよび60bの遅相軸SL2およびSL1を互いに直交させ、さらに、λ/2板70aおよび70bの遅相軸SL4およびSL3を互いに直交させる。また、偏光板50bの透過軸PA1とλ/2板70bの遅相軸SL3との間の角をα(°)とするとき、偏光板50bの透過軸PA1とλ/4板60bの遅相軸SL1との間の角が2α±45°となるように配置されており、偏光板50aの透過軸PA2とλ/2板70aの遅相軸SL4との間の角がα、偏光板50aの透過軸PA2とλ/4板60aの遅相軸SL2との間の角が2α±45°となるように配置されている。また、偏光板50aの透過軸PA2とλ/4板60aの遅相軸SL2との間のこの角(2α±45°)は、偏光板50bの透過軸PA1とλ/4板60bの遅相軸SL1との間の角(2α±45°)と符号が一致するように設定されている。
このように、偏光板50aおよび50bの透過軸同士、λ/4板60aおよび60bの遅相軸同士、さらに、λ/2板70aおよび70bの遅相軸同士をそれぞれ互いに直交させることによって、λ/4板60aおよびλ/4板60bのそれぞれが有する屈折率異方性の波長分散を相殺することができ、黒表示状態において、広い波長範囲の可視光が偏光板50bによって吸収され、液晶表示装置100Eは、液晶表示装置100Dよりもさらに良好な黒表示が実現される。
上述の説明では、液晶層30に垂直に入射する光に対する液晶層30の作用を説明した。液晶表示装置において、特に透過型においては、液晶層30に垂直に入射する光が表示に最も寄与するが、液晶層30に斜めに入射する光も表示に寄与する。液晶層30に斜めに入射する光は、垂直配向状態の液晶層30によっても位相差が与えられる。従って、液晶表示装置の表示面を斜め(表示面法線から傾斜した方向)から見たとき、本来黒表示状態であるべき垂直配向状態において光漏れが発生し、表示のコントラスト比が低下することがある。
この斜め入射光に対する位相差を相殺するような屈折率異方性を有する位相差板(視角補償板)をさらに設けることによって、あらゆる視角範囲で良好なコントラスト比を有する液晶表示装置を実現することができる。なお、この視角補償板は、単一の位相差板である必要はなく、複数の位相差板を積層したものでもよい。また、視角補償板を設ける位置は、TFT基板100aの外側(液晶層30から最も遠い側)だけでも、対向基板100bの外側だけでも、またTFT基板100aと対向基板100bの両方の外側に設けてもよい。
なお、上記のλ/4波長板の説明は、透過型液晶表示装置の場合について説明したが、反射型または透過反射両用型液晶表示装置における反射モードの表示の品質を向上するためには、液晶表示装置の観察者側に配置されるλ/4板の位相差板の波長分散を低減させる必要がある。従って、広帯域λ/4板を用いることが好ましい。また、両用型液晶表示装置においては、透過型液晶表示装置について上述したように、広帯域λ/4板を液晶表示装置の両側に配置し、広帯域λ/4板の波長分散を互いに相殺させる構成を採用してもよい。
以下に、実施例に基づいて本発明を説明する。本発明は以下の実施例によって限定されるものではない。特に、上層導電層が有する開口部および中実部のパターン(形状や配置)は、実施形態1で説明した種々のパターンであってよい。
(実施例1)
実施例1の透過型液晶表示装置800の断面図を図48に、平面図を図49にそれぞれ示す。図48は、図49中の48A−48A’線に沿った断面図である。
透過型液晶表示装置800は、例えば、3.5型18万絵素(ドット数横840×縦220、ドットピッチ横86μm×縦229μm)のTFT型液晶表示装置である。
液晶表示装置800は、TFT基板800aと、対向基板800bと、これらの間に配設された垂直配向液晶層30とを有している。マトリクス状に配列された絵素領域のそれぞれは、絵素電極105と対向電極122とに印加される電圧によって駆動される。絵素電極105は、信号電圧が与えられるソース配線114にTFT118を介して接続されており、TFT118はゲート配線108から与えれらる走査信号によってそのスイッチング制御される。走査信号によってON状態とされたTFT118に接続されている絵素電極105に信号電圧が印加される。
絵素電極105は、下層導電層102と、上層導電層104と、これらに間に設けられた誘電体層(層間絶縁層107および感光性樹脂層103)とを有している。下層導電層102と上層導電層104とは、コンタクトホール107aにおいて互いに電気的に接続されている。上層導電層104は、開口部104aを有しており、電圧印加時にはそのエッジ部に斜め電界を発生する。開口部104aは、ゲート配線108と、ソース配線114と、補助容量配線119とによって囲まれる領域に1個形成されている。絵素領域ごとに2つの開口部104aが形成されている。
なお、補助容量配線119は、絵素領域のほぼ中央付近をゲート配線108と平行に延びるように形成されている。補助容量配線119は、ゲート絶縁層110を介して対向する下層導電層102と、補助容量を形成する。補助容量は、絵素容量の保持率を向上するために設けられる。勿論、補助容量を省略してもよいし、補助容量の構造は上記の例に限られない。
まず、図50Aを参照しながら、液晶表示装置800のTFT基板800aの製造方法を説明する。
図50A(a)に示すように、絶縁性透明基板101上に、必要に応じて、ベースコート膜としてTa2 O5 、SiO2 などからなる絶縁層(不図示)を形成する。その後、Al、Mo、Taなどからなる金属層をスパッタリング法で形成し、パターニングすることによってゲート電極(ゲート配線も含む)108を形成する。ここでは、Taを用いてゲート電極108を形成する。このとき、補助容量配線119を同じ材料を用いて同じ工程で形成してもよい。
次に、ゲート電極108を覆うように、基板101の表面のほぼ全面にゲート絶縁層110を形成する。ここでは、厚さ約300nmのSiNx膜をPCVD法により堆積し、ゲート絶縁層110を形成する。なお、ゲート電極108を陽極酸化して、この陽極酸化膜をゲート絶縁層として用いることもできる。勿論、陽極酸化膜とSiNxなどの絶縁膜とを備える2層構造としてもよい。
ゲート絶縁層110上に、チャネル層111および電極コンタクト層112となるSi層を連続してCVD法で堆積する。チャネル層111には、厚さ約150nmのアモルファスSi層を用い、電極コンタクト層112には厚さ約50nmのリン等の不純物をドーピングしたアモルファスSiまたは微結晶Si層を用いる。これらのSi層をHCl+SF6 の混合ガスによるドライエッチング法などによりパターニングすることによって、チャネル層111および電極コンタクト層112を形成する。
その後、図50A(b)に示すように、下層導電層を構成する透明導電層(ITO)102をスパッタリング法により約150nm堆積する。続いて、Al、Mo、Taなどからなる金属層114、115を積層する。ここでは、Taを用いる。これらの金属層をパターニングすることによって、ソース電極113、114およびドレイン電極113、115を形成する(以下、「ソース電極114」および「ドレイン電極115」と表記する。)。ソース電極114およびドレイン電極115はそれぞれ2層構造を有し、ITO層102からなる導電層に参照符号113を付している。ITO層102は、2層構造の絵素電極の下層導電層として機能する。
次に、図50A(c)に示すように、SiNxなどからなる絶縁層をCVD法にて約300nm堆積した後、パターニングして層間絶縁層107を形成する。パターニングの際には、後に形成する上層導電層103とITO層102とを電気的に接続するためのコンタクトホール107aを補助容量配線119上の層間絶縁層107に形成する。
次に、図50A(d)に示すように、この層間絶縁層107上に誘電体層となる感光性樹脂層103を形成し、感光性樹脂層103を露光および現像することによって、層間絶縁層107のコンタクトホール107a内にドレイン電極102を露出させる開口部103aを成形する。感光性樹脂層103は、例えば、ポジ型感光性樹脂(JSR社製のアクリル樹脂:比誘電率3.7)を用い、約1.5μmの厚さに形成される。なお、感光性樹脂層103を感光性の無い樹脂を用いて形成し、別途フォトレジストを用いるフォトリソグラフィ工程で非感光性樹脂層に開口部103aを形成してもよい。
次に、図50A(e)に示すように、層間絶縁層107および感光性樹脂層103を形成した基板101上に、上層導電層を構成する透明導電層(ITO)104をスパッタリング法により約100nmの厚さに形成する。
この後、透明導電層104に開口部104aを形成することによって、図48に示したTFT基板800aが得られる。開口部104aの形成は、例えば、以下の方法で実行できる。
透明導電層104上に、フォトレジスト材料を塗布し、フォトリソグラフィープロセスで、所定のパターンのフォトレジスト層を形成する。このフォトレジスト層をマスクとしてエッチングすることによって開口部104aを形成する。その後、フォトレジスト層を剥離する。ここでは、透明導電層104の開口部104aとして、a=68μm、b=59μm(図中の上側)と、a=68μm、b=36μm(図中の下側)の2種類を長方形の開口部14aを形成する。
このようにして、ITO層からなる下層導電層102と、ITO層からなる上層導電層104と、これらの間にある層間絶縁層107および誘電体層103とから構成される2層構造の絵素電極を備えるTFT基板800aが得られる。
ここでは、上層導電層104と下層導電層102の間に挟まれた誘電体層は層間絶縁層107と感光性樹脂103との2層で形成されているが、その必要は無く、いずれか一方で形成してもよいし、さらに他の層を含んでもよい。上層導電層と下層導電層との間に設けられる誘電体層は、上層導電層の開口部104aのエッジ部に液晶分子を傾斜させる斜め電界を生じるように形成されればよく、材料の種類や厚さ、層数に制限は無い。光の利用効率が低下しないように、透明性の高い材料を用いることが好ましい。
図50Bを参照しながら、液晶表示装置800のTFT基板800aの他の製造方法を説明する。
図50B(a)に示すように、絶縁性透明基板101上に、必要に応じて、ベースコート膜としてTa2 O5 、SiO2 などからなる絶縁層(不図示)を形成する。その後、A1、Mo、Taなどからなる金属層をスパッタリング法で形成し、パターニングすることによってゲート電極(ゲート配線も含む)108を形成する。ここでは、Ti/A1/Tiの積層膜を用いてゲート電極108を形成する。このとき、補助容量配線119を同じ材料を用いて同じ工程で形成してもよい。
次に、ゲート電極108を覆うように、基板101の表面のほぼ全面にゲート絶縁層110を形成する。ここでは、厚さ約300nmのSiNx膜をPCVD法により堆積し、ゲート絶縁層110を形成する。
ゲート絶縁層110上に、チャネル層111および電極コンタクト層112となるSi層を連続してCVD法で堆積する。チャネル層111には、厚さ約150nmのアモルファスSi層を用い、電極コンタクト層112には厚さ約50nmのリン等の不純物をドーピングしたアモルファスSiまたは微結晶Si層を用いる。これらのSi層をHCl+SF6 の混合ガスによるドライエッチング法などによりパターニングすることによって、チャネル層111および電極コンタクト層112を形成する。
その後、図50B(b)に示すように、A1、Mo、Taなどからなる金属層7114、115を積層する。ここでは、A1/Tiの積層膜を用いる。これらの金属層をパターニングすることによって、ソース電極114およびドレイン電極115を形成する。次に、ソース電極114およびドレイン電極115をマスクにして、HCl+SF6 の混合ガスによるドライエッチング法などによりパターニグすることによって、電極コンタクト層112のギャップ部112gをエッチングする。
次に、図50B(c)に示すように、SiNxなどからなる絶縁層をCVD法にて約300nm堆積した後、パターニングして層間絶縁層107を形成する。パターニングの際には、後に形成するITO層からなる下層導電層102とドレイン電極115とを電気的に接続するためのコンタクトホール107aを補助容量配線119上の層間絶縁層107に形成する。
次に、図50B(d)に示すように、下層導電層を構成する透明導電層(ITO)102をスパッタリング法により約140nmの厚さに形成する。
次に、図50B(e)に示すように、このITO層からなる下層導電層102上に誘電体層となる感光性樹脂層103を形成し、感光性樹脂層103を露光および現像することによって、ITO層からなる下層導電層102を露出させる開口部103aを成形する。感光性樹脂層103は、例えば、ポジ型感光性樹脂(JSR社製のアクリル樹脂:比誘電率3.7)を用い、約1.5μmの厚さに形成される。なお、感光性樹脂層103を感光性の無い樹脂を用いて形成し、別途フォトレジストを用いるフォトリソグラフィ工程で非感光性樹脂層に開口部103aを形成してもよい。
次に、図50B(f)に示すように、感光性樹脂層103を形成した基板101上に、上層導電層を構成する透明導電層(ITO)104をスパッタリング法により約100nmの厚さに形成する。
この後、透明導電層104に開口部104aを形成することによって、図48に示したTFT基板800aが得られる。開口部104aの形成は、例えば、以下の方法で実行できる。
透明導電層104上に、フォトレジスト材料を塗布し、フォトリソグラフィープロセスで、所定のパターンのフォトレジスト層を形成する。このレジスト層をマスクとしてエッチングすることによって開口部104aを形成する。その後、フォトレジスト層を剥離する。
このようにして、ITO層からなる下層導電層102と、ITO層からなる上層導電層104と、これらの間にある層間絶縁層107および誘電体層103とから構成される2層構造の絵素電極を備えるTFT基板800aが得られる。
上層導電層と下層導電層との間に設けられる誘電体層は、上層導電層の開口部104aのエッジ部に液晶分子を傾斜させる斜め電界を生じるように形成されればよく、安定した放射状傾斜配向が得られるのであれば、材料の種類や厚さ、層数に制限は無い。光の利用効率が低下しないように、透明性の高い材料を用いることが好ましい。
一方、対向基板800bは、絶縁性透明基板121上にスパッタリング法を用いてITOからなる対向電極122を形成する。
上述のようにして得られたTFT基板800aおよび対向基板800bの内側表面に垂直配向処理を行う。例えば、JSR社製垂直配向性ポリイミドを用いて、垂直配向層を形成する。垂直配向層にラビング処理は行わない。
対向基板800bの内側表面に、例えば、直径3μmの球状プラスチックビーズを散布し、公知のシール剤を用いて、対向基板800bとTFT基板800aとを貼り合わせる。その後、例えば、メルク社製の負の誘電異方性を有するネマチック液晶材料(△n=0.0996)にカイラル剤を添加した材料を注入する。このようにして、液晶パネルが得られる。なお、液晶表示装置を構成する構造単位のうち、一対の基板(ここでは、TFT基板800aと対向基板800b)と、これらの間に挟持された液晶層とを有する構造単位を「液晶パネル」と称する。
得られた液晶パネルのTFT基板800aの外側に偏光板50aを、対向基板800bの外側に偏光板50bを配置する。偏光板50aと偏光板50aの透過軸は互いに直交するように配置する(図41(b)参照)。また、偏光板50aおよび偏光板50bの透過軸が、それぞれ液晶パネルのゲート配線の延設方向に対して45度になるように配置する。
このようにして得られる液晶表示装置は、電圧無印加時(しきい値電圧未満の電圧を印加している時を含む)、良好な黒表示を実現する。
また、この液晶表示装置800の液晶層に電圧(しきい値電圧以上の電圧)を印加したときの絵素領域の様子を模式的に図51に示す。図51は隣接する2つの絵素領域を示している。
図51に示したように、開口部104a毎に、開口部104aの中央を中心とする消光模様(暗部)が見られる。消光模様の中心(曲線の交差部)では液晶分子が垂直配向状態にあり、中心の周りの液晶分子は、垂直配向状態の液晶分子を中心に放射状傾斜配向している。これは、開口部104aを有する2層構造の絵素電極によって斜め電界が生成されたためである。なお、電圧印加状態において略クロス状に暗部が観察されるのは、先に説明したように、液晶層に入射した直線偏光の偏光方向と平行または直交する方向(すなわち、偏光板50aの透過軸と平行または直交する方向)に液晶分子が配向している領域を通過した直線偏光は、液晶層によって位相差が与えらず、偏光状態を維持したまま液晶層を通過するので、偏光板50bによって吸収され、表示に寄与しないからである。この例では、カイラル剤が添加された液晶材料を用いているので、液晶層は渦巻き状の放射状傾斜配向となっており、その結果、互いに直交する偏光板の吸収軸からずれた位置で消光が観察されている。
また、電圧印加状態で、白く(明るく)観察される領域は、液晶層に入射した直線偏光が液晶層によって位相差を与えられた領域であり、白さ(明るさ)の程度は、液晶層によって与えられる位相差の大きさに依存する。従って、液晶層に印加する電圧の大きさを制御することによって液晶層の配向状態を変化させ、そ液晶層が与える位相差の大きさを調整すれば、階調表示が実現できる。
透過軸が互いに直交する一対の偏光板50aおよび50bの配置は上記の例に限られず、ゲート配線と平行または直交するように配置してもよい。本発明による液晶表示装置の液晶層は、電圧印加時に放射状傾斜配向状態となる垂直配向型液晶層なので、偏光板の透過軸の方向は、任意の方向に設定され得る。液晶表示装置の用途に応じて、視角特性等を考慮して適宜設定される。特に、ゲート配線(又はソース配線)と平行または直交する方向に偏光板の透過軸を設定することによって、表示面の上下方向および左右方向の視野角特性を向上することができる。これは、偏光板の偏光選択性は、透過軸に平行または直交する方向において最も高く、透過軸から45°において最も低くなるからである。さらに、ゲート配線と平行または直交する方向に偏光板の透過軸を設定すると、ゲート配線からの斜め電界によって、ゲート配線の近傍に存在する液晶分子が、ゲート配線の延設方向に直交する方向に傾斜しても、光漏れは発生しないという利点がある。
また、λ/4板を用いることによって液晶層に円偏光を入射させる構成とすると、偏光板の透過軸にほぼ沿って観察される消光模様を無くすことができ、光の利用効率を向上することができる。さらに、λ/2板や視角補償板を設けることによって、黒表示の色づきの発生を抑制し、高品位の表示を実現できる液晶表示装置を得ることができる。
本実施例の液晶表示装置800は、垂直配向型のノーマリブラックモードの液晶表示であり、高コントラスト比の表示が可能であり、且つ、放射状傾斜配向した液晶層を利用しているので、あらゆる方位において広視野角特性を有している。さらに、放射状傾斜配向の形成には、開口部を有する2層構造電極によって形成する斜め電界を用いているので、制御性が良く、良好な放射状傾斜配向を実現することができる。
勿論、絵素電極の構造は、例示した構造に限られず、先の実施形態で説明した種々の構造の2層構造を採用することができる。さらに、上層導電層および/または下層導電層を形成する材料を変更することによって、反射型液晶表示装置や透過反射両用型液晶表示装置を得ることができる。
(実施例2)
実施例2の透過型液晶表示装置の絵素電極は、実施例1の液晶表示装置800に比べ、比較的小さい開口部を多数有し、開口部が絵素電極(上層導電層)の全体に亘って形成されている。開口部および中実部の形状や配置は、一例に過ぎず、実施形態1で例示した種々のパターンを用いることができる。表示輝度の観点からは、図19(b)に示したパターンが好ましい。また、開口部および中実部の面積比率は、図22を参照しながら説明した指針に従って最適化される。
実施例2の液晶表示装置の構造および動作を説明する前に、実施例1の液晶表示装置800が有し得る欠点を説明する。なお、この欠点は、液晶表示装置の用途によっては問題とならないこともある。
まず、液晶表示装置800の上層導電層104が有する開口部104a(特に大きい方、図49中の上側の開口部:a=68μm、b=59μm)は、サイズが比較的大きいので、液晶層30に電圧を印加してから、開口部104a内に位置する液晶層30が安定した放射状傾斜配向をとるまでの時間が長い。従って、用途によっては、応答速度が遅いという問題が生じる。
また、図49中の下側の開口部104aの下側エッジ部とゲート配線108との間の領域(ソース線に平行な方向の幅が約25μm)のように、開口部104aのエッジ部からの距離が長い領域の液晶層30は、安定な放射状傾斜配向をとるまでに比較的長い時間がかかる。また、開口部104aのエッジ部から離れた上層導電層104のエッジ部(例えば、図49中の右下付近)に位置する液晶層30は、開口部104aによって生成される斜め電界と、ソース配線114(113)に印加されている信号電圧によって生成される電界との影響を受けるので、液晶分子30aの傾斜方向が画素ごとに安定しないことがある。その結果、表示にざらつきが見られることがある。
図52および図53を参照しながら、実施例2の液晶表示装置900の構造と動作とを説明する。液晶表示装置900の断面図を図52に、平面図を図53にそれぞれ示す。図52は、図53中の52A−52A’線に沿った断面図である。以下の説明では、液晶表示装置900の構成要素のうち実施例1の液晶表示装置800の構成要素と実質的に同じ機能を有する構成要素を同じ参照符号で示し、その説明を省略する。液晶表示装置900は液晶表示装置800と実質的に同じプロセスで製造することができる。
図52に示したように、液晶表示装置900の上層導電層104は、比較的に多数の、比較的小さな開口部104aを有している。ここでは、絵素電極105毎(上層導電層104毎)に、23個の円形の開口部104aを形成している。開口部104aの直径は20μmとして、行方向または列方向(ゲート配線またはソース配線に平行な方向)に隣接する開口部104a間の間隔は、それぞれ4μmで一定としている。開口部104aは、絵素電極105の全体に亘って正方格子状に配列されており、格子点に位置する4個(2×2)の開口部104aが回転対称性を有するように配置されている。また、開口部104aのうちの最も外側(上層導電層104のエッジに近い)開口部104aのエッジと、上層導電層104のエッジとの距離は約5μmとしている。
液晶表示装置900の上層導電層104が有する開口部104aの直径は20μmと比較的小さいので、電圧印加によって、開口部104a内に位置する液晶層30が速やかに安定な放射状傾斜配向をとる。また、開口部104aは正方格子状に配列されており、格子点に位置する4個(2×2)の開口部104aが回転対称性を有するように配置されているので、開口部104aの間に位置する液晶層30も安定な放射状傾斜配向をとる。さらに、隣接する開口部104a間の距離は4μmと比較的短いので、開口部104a間に位置する液晶層30も速やかに配向変化する。また、上層導電層104のエッジ部の近く(約5μm)にも開口部104aを配置することによって、上層導電層104のエッジ部近傍において、液晶分子の傾斜方向が安定しない領域を狭くすることができる。
本実施例の液晶表示装置900は、液晶表示装置800に比べ、応答速度が速く、且つ表示のざらつきは見られないことを実際に確認した。
上述したように、絵素電極105毎に複数の開口部104aを設ける構成を採用すると、開口部104aのサイズや配置を最適化することが可能となり、応答速度や放射状傾斜配向の安定性(再現性を含む)が向上した液晶表示装置を得ることができる。
上述した実施例1および2の透過型液晶表示装置800および900において、上層導電層104の開口部104a上に位置する液晶層30に印加される電圧は、感光性樹脂層103による電圧降下の影響を受ける。従って、開口部104a上に位置する液晶層30に印加される電圧が、上層導電層104(開口部104aを除く領域)上に位置する液晶層30に印加される電圧よりも低くなる。従って、上層導電層104と下層導電層102とに同じ電圧(信号電圧)を印加すると、電圧−透過率特性が、絵素領域内の場所によって異なり、開口部104a上に位置する液晶層30の透過率が相対的に低くなる。液晶表示装置800および900は、ノーマリブラックモードで表示を行うので、黒レベルが浮く(電圧無印加時の透過率が上昇する)ことは無いが、十分な白レベル(実際使う上での一番明るい表示状態)を実現するためには、通常よりも高い電圧を液晶層に印加する必要がある。
開口部104a内に位置する液晶層30に印加される電圧の、感光性樹脂層103による電圧降下を抑制するためには、図34および図35を参照しながら説明したように、開口部104a内に位置する感光性樹脂層103に凹部または穴を形成すればよい。実施例1および2では感光性樹脂を用いているので、公知のフォトリソグラフィプロセスで凹部または穴を形成することができる。
開口部104a内に位置する感光性樹脂層103に凹部または穴を形成すれば、開口部104a内に位置する液晶層30に印加される電圧の感光性樹脂層103による電圧降下を低減できるとともに、感光性樹脂層103による透過率の低下を低減し、光の利用効率を向上することができる。また、開口部103a内の感光性樹脂層103の厚さを薄くすると、開口部104a以外の上層導電層104上の液晶層30の厚さに比べて、開口部104a上の液晶層30厚さが厚くなり、すなわち、リタデーションが大きくなるので、透過率(光利用効率)が向上する。
(実施例3)
実施例3の透過反射両用型液晶表示装置1000の断面図を図54に、平面図を図55にそれぞれ示す。図54は、図55中の54A−54A’線に沿った断面図である。以下の説明では、液晶表示装置1000の構成要素のうち実施例1の液晶表示装置800の構成要素と実質的に同じ機能を有する構成要素を同じ参照符号で示し、その説明を省略する。
液晶表示装置1000は、TFT基板1000aと、対向基板800bと、これらの間に配設された垂直配向液晶層30とを有している。マトリクス状に配列された絵素領域のそれぞれは、絵素電極105と対向電極122とに印加される電圧によって駆動される。絵素電極105はTFT118を介してソース配線114に接続されている。TFT118はゲート配線108から与えれらる走査信号によってそのスイッチングが制御される。走査信号によってON状態とされたTFT118に接続されている絵素電極105に信号電圧が印加される。
絵素電極105は、透明電極として機能する透明下層導電層102Tと、反射電極として機能する反射上層導電層104Rと、これらの間に設けられた誘電体層(層間絶縁層107および感光性樹脂層103)とを有している。透明下層導電層102Tと反射上層導電層104Rとは、コンタクトホール107aにおいて互いに電気的に接続されている。反射上層導電層104Rは、開口部104aを有しており、電圧印加時にはそのエッジ部に斜め電界を発生する。感光性樹脂層103は開口部104aに対応するように形成された開口部103aを有している。開口部103a内に透明下層導電層102Tが露出されている。絵素領域ごとに8つの開口部104aおよび開口部103aが形成されている。
液晶表示装置1000は以下の様にして製造することができる。液晶表示装置800の製造方法と同様の工程の説明を省略する。
TFT基板1000aは、感光性樹脂層103の塗布工程までは、TFT基板800aと同様の工程で形成することができる(図50A(a)〜(c)参照)。
次に、図56(a)に示すように、層間絶縁層107上に感光性樹脂を塗布する。例えば、感光性樹脂としてポジ型の感光性樹脂(JSR社製のアクリル樹脂)を用い、約3.7μm程度の厚みに塗布する。なお、この厚さは、ポストベーク工程完了後に約3μmの厚さとなるよう設定されている。
この露光工程において、感光性樹脂層103の表面に複数の滑らかな凹凸部を形成するための所定のパターンを有するフォトマスク(例えば図40参照)を用いて、感光性樹脂103を露光(例えば、露光量約50mJ)する。
露光された感光性樹脂層103を現像することによって、コンタクトホール107a、開口部103aおよび表面の凹凸(不図示)が形成される。また、必要に応じて熱処理を行なうことによって、感光性樹脂層103の表面に形成される凹凸を滑らかにすることができる。
次に、図56(b)に示すように、基板101のほぼ全面に、上層導電層となるMo層104R1およびAl層104R2をスパッタリング法によって、それぞれ約100nmの厚さにこの順で形成する。
この後、Al層104R2/Mo層104R1からなる反射上層導電層104Rをフォトリソグラフィー工程を用いて所定のパターンに加工することによて、開口部104aを形成する。開口部104aは、実施例1につて説明した方法で実施することができる。
また、ここでは、上層導電層104と下層導電層113の間に挟まれた誘電体層は層間絶縁層107と感光性樹脂103の2層で形成されているが、どちらか1層で形成しても構わないし、2層以上の多層で形成しても構わないのは、実施例1と同じである。
次に、上述のようにして得られたTFT基板800aおよび常法に従って作製された対向基板800bの内側表面に垂直配向処理を行う。例えば、JSR社製垂直配向性ポリイミドを用いて、垂直配向層を形成する。垂直配向層にラビング処理は行わない。
対向基板800bの内側表面に、例えば、直径3.0μmの球状プラスチックビーズを散布し、公知のシール剤を用いて、対向基板800bとTFT基板1000aとを貼り合わせる。その後、例えば、メルク社製の負の誘電異方性を有するネマチック液晶材料(△n=0.0649)を注入する。このようにして、液晶パネルが得られる。
得られた液晶パネルの反射領域(反射上層導電層104R上)の液晶層30の厚さは、プラスチックビーズ径の3μmとなり、透過領域(開口部104aに対応する領域)では、プラスチックビーズ径の3μmとポストベーク後の感光性樹脂層103の厚さ約3μmとを足した約6μmになる。このように、感光性樹脂層103の厚さを調整することによって、表示に用いられる光に対するリタデーション(液晶厚さd×複屈折率△n)が透過領域と反射領域とでほぼ一致させることが可能となり、光の利用効率が向上する。
得られた液晶パネルに、図43(a)および(b)に示したように、一対の偏光板50aおよび50bと、一対のλ/4板60aおよび60bを配置する。透過モードによる表示動作は先に説明したので、ここでは、液晶表示装置1000の反射領域における反射モードによる表示動作を説明する。
まず、電圧無印加時の表示動作を説明する。対向基板800b側から対向基板800bに垂直に、反射領域に入射する光は、偏光板50bを通り直線偏光となり、λ/4板60bに入射する。λ/4板60bによって円偏光に変換された後、液晶層30に入射する。液晶層30を通過して反射上層導電層104Rに到達した円偏光は、反射上層導電層104Rの表面で反射され、逆回りの円偏光となり、再び液晶層30を通過し、λ/4板60bに入射する。この円偏光はλ/4板60bによって、λ/4板60bの遅相軸SL1に対して45度方向の偏光方向を有する直線偏光となり、偏光板50bに入射する。偏光板50bの透過軸PA1とλ/4板60bを通過した直線偏光の偏光軸は直交しているので、この直線偏光は偏光板50bで吸収される。従って、液晶表示装置1000の反射領域は、透過領域と同様に、電圧無印加状態で黒表示状態となる。
次に、電圧印加状態の表示動作を説明する。
電圧印加状態において放射状傾斜配向状態にある液晶層30の内、基板表面に対して垂直配向していしている液晶分子30aは円偏光に位相差を与えないので、この領域は黒表示状態となる。液晶層30のその他の領域(垂直配向領域以外の領域)に入射した円偏光は、液晶層30を2回通過する間に液晶層30によって位相差が与えられ、λ/4板60bに入射する。λ/4板60bに入射する光の偏光状態は円偏光状態からずれているので、λ/4板60bを通過した光の一部は偏光板50bを透過する。この透過する偏光の量は、液晶層30によって与えられる位相差の大きさに依存するので、液晶層30に印加する電圧を制御することによって調整され得る。従って、液晶層30に印加する電圧を制御することによって、反射領域においても階調表示が可能となる。
偏光板や位相差板の配置は上記の例に限られず、図41〜図47を参照しながら説明したように、λ/2板や視角補償板などをさらに設けてもよい。
本発明による液晶表示装置を用いて両用型液晶表示装置を構成する場合、開口部104aの形状、大きさ、数や配置は、放射状傾斜配向を得るためだけでなく、所望する表示特性(透過領域と反射領域との面積比)によっても制限される。
例えば、反射光を利用することを重視するような両用型液晶表示装置では、開口部104a以外の反射上層導電層104Rが占める面積比を大きくする必要がある。十分な大きさの開口部104aを十分な個数形成できない場合、反射領域(反射上層導電層104R上)の液晶層30を安定に放射状傾斜配向させることが難しくなる。すなわち、電圧印加時における液晶分子30aの分子軸の傾斜方向の方位角が安定しない(基板法線方向から見た液晶分子30aの基板面内における配向方向が放射状にならず、場所によって異なる)。従って、液晶分子30aの分子軸の基板面内の配向状態が絵素領域によって異なることが多くなる。
ここで、図57を参照しながら、液晶表示装置1000の反射領域内の液晶層30に電圧印加した時の表示動作を説明する。図57は、液晶分子30aの傾斜方向(方位角)が180度異なっている領域を模式的に示している。
図57中に示したように、傾斜方向が異なる左右2つの液晶分子30aに入射した光が、反射上層導電層104Rで反射され、観察者側に出射されるまでに、液晶分子30aから与えられる位相差は同じである。このことから理解できるように、反射モードで表示を行う反射領域の液晶層における配向方向の方位角方向のばらつきは、透過モードの場合のように表示のざらつきとして視認されにくい。
(実施例4)
実施例4の透過反射両用型液晶表示装置1100の断面図を図58に示す。両用型液晶表示装置1100の平面図は、図55と実質的に同じなので省略する。図58は、図55中の54A−54A’線に沿った断面図に相当する。
以下の説明では、液晶表示装置1100の構成要素のうち実施例3の液晶表示装置1000の構成要素と実質的に同じ機能を有する構成要素を同じ参照符号で示し、その説明を省略する。液晶表示装置1100は液晶表示装置1000と実質的に同じプロセスで製造することができる。
液晶表示装置1100は、感光性樹脂層103が凹部103bを有する点において、実施例3の両用型液晶表示装置1000と異なる。感光性樹脂層103の凹部103bは、例えば、以下の様にして形成することができる。
図56を参照しながら説明した液晶表示装置1000の製造工程において、3.7μm程度の厚さ(ポストベーク後の厚さ約3μm)に塗布されたポジ型の感光性樹脂(JSR社製アクリル樹脂)を、開口部104a内(透過領域)の感光性樹脂103の一部(例えば、厚さ約1μm)を残すように露光(例えば、露光量約100mJ)すればよい。後の現像工程を経ることによって、所定の深さ(ここでは、約2μm)の凹部103bが形成される。
以下、実施例3の液晶表示装置1000と同様にして、液晶表示装置1100の液晶パネルが得られる。ここでは、セルギャップの設定や液晶材料を実施例3と同じにする。
得られた液晶パネルの反射領域(反射上層導電層104R上)の液晶層30の厚さは、プラスチックビーズ径の3μmとなり、透過領域(開口部104aに対応する領域)では、プラスチックビーズ径の3μmとポストベーク後の感光性樹脂層103の厚さ約3μmとを足し、それから開口部104a内の感光性樹脂層103の残膜量約1μmを引いた約5μmとなる。このように、感光性樹脂層103の厚さを調整することによって、表示に用いられる光に対するリタデーション(液晶厚さd×複屈折率△n)が透過領域と反射領域とでほぼ一致させることが可能となり、光の利用効率が向上する。
次に、図59(a)および(b)を参照しながら、実施例3の液晶表示装置1000における感光性樹脂層103の開口部103aおよび実施例4の液晶表示装置1100における感光性樹脂層103の凹部103bのエッジ部の構造を説明する。
図59(a)に示したように、感光性樹脂層103の開口部103aのエッジ部では、感光性樹脂が存在する領域から存在しない領域へ、連続した膜厚変化をしながら徐々に変化している。すなわち、開口部103aの側面はテーパ状になっている。開口部103aの側面がテーパ状となるのは、感光性樹脂の感光特性および現像特性による。
実施例3における開口部103aのエッジ部では、図59(a)に示したように、テーパ角θが約45度のテーパ状側面が形成される。このテーパ状側面に垂直配向層(不図示)を形成すると、液晶分子30aはテーパ状側面に対して垂直に配向しようとする。従って、テーパ状側面上の液晶分子30aは、図示したように、電圧無印加時においても、基板の表面に垂直な方向(基板法線)から傾いた状態となっている。テーパ角が大きいと、テーパ状側面上の液晶分子30aは、電圧印加時に生成される斜め電界による傾斜方向とは逆方向に傾斜していることとなり、放射状傾斜配向が乱れる原因となる。
一方、実施例4における凹部103bでは、図59(b)に示したように、開口部104a内の感光性樹脂層103の一部を残すことで、テーパ状側面のテーパー角θを小さくできるとともに、開口部104a内の液晶層30と下層導電層102Tの間に感光性樹脂103が存在するため、電圧印加時において液晶層30に斜め電界が有効に作用し、安定した放射状傾斜配向が得られる。その結果、ざらつきのない良好な表示品位を有する液晶表示装置が得られる。
(実施例5)
実施例5の透過型液晶表示装置の絵素電極は、実施例2の透過型液晶表示装置900と異なり、開口部が絵素電極(上層導電層)のエッジ部にも形成されている。実施例5の液晶表示装置は、上層導電層104が有する開口部の配置が異なる以外は、実施例2の液晶表示装置と実質的に同じ構成を有するので、共通する構造の説明をここでは省略する。
実施例5の液晶表示装置の構造および動作を説明する前に、実施例2の液晶表示装置900が有し得る欠点を説明する。なお、この欠点は、液晶表示装置の用途によっては問題とならないこともある。
図60に実施例2の液晶表示装置900の上層導電層104の一部を模式的に示す。上層導電層104は、比較的多数の、比較的小さな開口部104aを有しているとともに、開口部104aは、絵素電極105の全体に亘って正方格子状に配列されており、格子点に位置する4個(2×2)の開口部104aが回転対称性を有するように配置されている。
液晶層30に電圧を印加すると、上層導電層104が有する円形の開口部104a内(領域A)に位置する液晶層30は、速やかに、開口部104aの中心SAを中心とする安定な放射状傾斜配向をとる。また、図60の領域Bに示すような、格子点に位置する4個(2×2)の開口部104aに囲まれる領域の液晶層30は、電圧の印加によって、格子点に囲まれる正方形の対角線の交点SAを中心とする安定な放射状傾斜配向をとる。
しかしながら、図60の領域Cに示すような、開口部104aのうちの最も外側(上層導電層104のエッジに近い)開口部104aと上層導電層104のエッジの間に位置する液晶層30は、図60の領域Bに示す4個の格子点に囲まれる領域に比べて、上層導電層104のエッジ部に生成される斜め電界と、開口部104aのエッジ部に生成される斜め電界の対称性が低い(電界の方向および強度の分布の対称性)ため、安定した配向状態が得られない。その結果、表示のざらつきや、残像などが視認され、表示品位が低下することがある。
上記の欠点は、実施例2の液晶表示装置900のように上層導電層104のエッジの近く(約5μm)に開口部104aを配置し、上層導電層104のエッジ部近傍の、液晶分子の傾斜方向が安定しない領域(領域C)を狭くすることによって、ある程度解決できるが、その領域を表示領域として利用する限り、表示品位に対して何らかの悪影響を与える。
また、上層導電層104のエッジに余りにも近づけて開口部104aを形成すると、上層導電層104のエッジ部の斜め電界の影響により、開口部104a内の液晶層30が安定した放射状傾斜配向をとれなくなる。従って、上層導電層104のエッジの近傍の液晶分子の傾斜方向が安定しない領域(領域C)を狭くすることにも限界がある。ここで、図60の領域Cに示す、液晶分子の傾斜方向が安定しない領域を遮光するのも1つの解決策であるが、開口率の低下を伴うので好ましくない。
これに対し、実施例5の液晶表示装置の上層導電層104は、図61、図62および図63に模式的に示したように、上層導電層104のエッジ(辺および角)に開口部104a’を有する。以下に、これらの図を参照しながら、実施例5の上層導電層104の構造と、液晶層30に電圧を印加した時の液晶分子の動作とを説明する。なお、上層導電層104のエッジは、上層導電層104の外延(最も外側の辺を直線で結んで得られる形状)で規定され、図61、図62および図63では、実線で示している。
図61、図62および図63に示したように、実施例5の液晶表示装置の上層導電層104は、そのエッジに開口部104a’を有している。エッジ以外に設けられた開口部104aのそれぞれは、好ましくは回転対称性を有する形状(ここでは、円形)を有し、それぞれの大きさは互いに等しい。また、複数の開口部104aの中心(回転対称軸の位置)は、回転対称性を有するように(典型的には、図示したように正方格子状に)配置されている。また、エッジに形成された開口部104a’は、開口部104aの中心を上層導電層104のエッジに配置したものに相当し、開口部104aと異なり、回転対称性を有する形状とはならず、その一部が欠けた形状を有する。例えば、開口部104aが円形の場合、中心が上層導電層104の辺に位置する開口部104a’の形状は、図61に示したように半円となる。また、中心が上層導電層104の角(角度:90°)に位置する開口部104a’の形状は、図62に示したように、4分の1円となる。さらに、上層導電層104が矩形の一部を切り欠いた形状を有する場合、切り欠き部の角(角度:270°)に位置する開口部104a’は、図63に示したように、4分の3円となる。
このように、上層導電層104のエッジに設けられた開口部104a’の形状は、回転対称性を有する形状の一部が欠落した形状なので、正方格子の4つの格子点上に中心を有する4つの開口部104aのうちの少なくとも1つが、エッジに設けられた開口部104a’を含むと、これらの配置は回転対称性を有しないことになる。しかしながら、開口部104aおよび開口部104a’の中心が形成する正方格子(正方形)に注目すると、それぞれの正方形の角部は、4つの開口部104aおよび開口部104a’のそれぞれの4分の1円で占められており、これら4つの開口部104aおよび開口部104a’の4分の1円は、回転対称性を有するように配置されている。
ここで、それぞれの正方形の角部に位置する、開口部104aおよび開口部104a’の4分の1円の部分(これを「サブ開口部」と呼ぶことにする。)を基準に考えると、上層導電層104のエッジで規定される領域の全てが、サブ開口部によって規定される、互いに等価な多数の正方形の領域に分割されていることになる。また、互いに隣接する4つのサブ開口部は、1つの回転対称性を有する形状(ここでは円形)の開口部104aを形成する。なお、上層導電層104の辺を含む正方形の領域を規定するサブ開口部には、隣接する3つのサブ開口部が存在しないので、回転対称性を有する形状(円形)の一部が欠けた形状の開口部(3/4円、半円または1/4円)104a’を形成する。
すなわち、上述したように開口部104aおよび104a’を配置すると、上層導電層104のエッジで規定される領域(典型的には、画素に対応する)のうち、エッジに位置する開口部104a’に対応する領域は対称性の低い形状となるが、その他の領域は、回転対称性を有する領域(正方形の領域と円形の開口部104a)の集合体となる。
従って、上述したように配置された開口部104aおよび104a’を有する上層導電層104を備えた液晶表示装置の液晶層30に電圧を印加すると、開口部104a内の領域Aおよび開口部104aで包囲される領域Bだけでなく、開口部104aと開口部104a’で包囲される領域C(上層導電層104の辺を含む(角を含まない)領域)および領域D(上層導電層104の角を含む領域)の液晶層30が放射状傾斜配向をとる。その結果、本実施例5の液晶表示装置において、電圧印加時に放射状傾斜配向をとる領域の面積は、実施例2の液晶表示装置900においてよりも広くなり、ざらつきや残像等の無い、高品位の表示を実現できる。
なお、図61、図62および図63においては、上層導電層104のエッジに形成した開口部104a’の形状は、開口部104aの4分の3、2分の1もしくは4分の1としたが、画素ピッチおよび上層導電層104の大きさによっては、図示したように開口部104a’を配置できるとは限らない。このような場合、電圧印加時に上層導電層104のエッジ部の液晶層30が安定な放射状傾斜配向をとるのであれば、上層導電層104のエッジに形成した開口部104a’の形状は、開口部104aの4分の3、2分の1もしくは4分の1でなくても構わないし、開口部104a’の中心を回転対称を有する位置からずらして配置しても構わない。
更に、上層導電層104の辺および角の全てに開口部104a’を形成しなくてもよい。特に、光を透過しないバス配線(信号配線や走査配線)などの構成要素上に位置する上層導電層104の辺および角には、開口部104a’を形成しなくても、実施例2の液晶表示装置900の表示品位を大幅に向上することができる。
また、実施例1および2の透過型液晶表示装置と同様に、開口部104a内に位置する液晶層30に印加される電圧の、感光性樹脂層103による電圧降下を抑制するために、図34および図35を参照しながら説明したように、一部の開口部104a内に位置する感光性樹脂層103に凹部または穴を形成しても良い。
本実施例では、透過型液晶表示装置を例示したが、上述した開口部104aおよび104a’の配置は、勿論、透過反射両用型液晶表示装置に適用することができる。この場合、実施例3および4の透過反射両用型液晶表示装置と同様に、感光性樹脂層103による電圧降下を抑制するために、一部の開口部104a内に位置する感光性樹脂層103に凹部または穴を形成しても良い。
(実施例6)
実施例6の透過型液晶表示装置の絵素電極(上層導電層)は、実施例5とは異なる配置の開口部104aを有し、上層導電層のエッジ部の液晶層30の放射状傾斜配向を安定化している。実施例6の液晶表示装置は、上層導電層104が有する開口部の配置が異なる以外は、実施例2および実施例5の液晶表示装置と実質的に同じ構成を有するので、共通する構造の説明をここでは省略する。
図64に実施例6の液晶表示装置の上層導電層104の一部を示す。図64を参照しながら、実施例6の上層導電層104の構造と液晶層30に電圧印加時の液晶分子の動作とを説明する。図64に示したように、上層導電層104が有する開口部104aは正方格子状に配列されており、格子点に位置する4個(2×2)の開口部104aが回転対称性を有するように配置されている。さらに、これらの開口部104aは、この開口部104aのうち、上層導電層104のエッジに最も近い開口部104aが、上層導電層104の外側に設けられた仮想開口部104a’’(実際には存在しない)と正方格子を形成し、且つ、その仮想開口部104a’’のエッジが上層導電層104のエッジに重なるように、配列されている。
すなわち、上層導電層104の外側の導電層が形成されていない領域を開口部と見なしたときに、上層導電層104に形成されている開口部104aとともに回転対称性を有する相対配置(ここでは正方格子)を構成するように、開口部104aが配列されている。実施例5における開口部(104aと104a’を含む)の配置との違いは、上層導電層104に形成される開口部の全てが同じ形状(好ましくは回転対称性を有する形状(ここでは円形))を有している点である。
この上層導電層104を有する液晶表示装置の液晶層30に電圧を印加すると、上層導電層104が有する開口部104a内(領域A)に位置する液晶層30が速やかに安定な放射状傾斜配向をとる。また、開口部104aは正方格子状に配列されており、格子点に位置する4個(2×2)の開口部104aが回転対称性を有するように配置されているので、開口部104aの間(領域B)に位置する液晶層30も安定な放射状傾斜配向をとる。さらに、上層導電層104のエッジ部近傍の領域C(上層導電層104の辺を含む領域)では、格子点に位置する3個の開口部104aと、それに対応した格子点に位置し、上層導電層104のエッジとそのエッジが重なる仮想開口部104a’’(導電層の無い領域)により、液晶層30は安定な放射状傾斜配向をとる。また、上層導電層104の角を含む領域Dでは、上層導電層104の角に最も近い位置にある2個の開口部104aと、それに対応した格子点に位置し、上層導電層104のエッジとそのエッジが重なる2個の仮想開口部104a’’(導電層の無い領域)により、液晶層30は安定な放射状傾斜配向をとる。
なお、図64においては、上層導電層104の辺に、格子点に位置する仮想開口部104a’’のエッジが重なるように、開口部104aを形成しているが、画素ピッチおよび上層導電層104の大きさによっては、図示したように開口部104aを配置できるとは限らない。このような場合、電圧印加時に上層導電層104のエッジ部の液晶層30が安定な放射状傾斜配向をとるのであれば、仮想開口部104a’’のエッジが上層導電層104のエッジからずれた位置で正方格子を形成するように開口部104aを形成してもよい。
図65に、図64とは別の配置例を示す。図65に示した上層導電層104は、図64の上層導電層104と同様に、格子点に位置する仮想開口部104a’’が上層導電層104のエッジと重なるように形成されている。しかしながら、図64において、上層導電層104のエッジに最も近い開口部104aが他の開口部104aと同様に回転対称性を有する形状を有していたのに対し、図65においては、上層導電層104のエッジに最も近い開口部104a’は、他の開口部104aの一部が欠落した形状を有している。なお、開口部104aの一部が欠落した形状を有するこの開口部104a’は、実施例5の上層導電層104が有する開口部104a’(例えば図61参照)と異なり、その中心は上層導電層104のエッジよりも内側に位置している。
図65に示したように開口部104aおよび104a’を配置しても、図64を参照しながら上述したのと同様に、電圧印加時に、上層導電層104のエッジ部(領域Cおよび領域D)の液晶層30は安定した放射状傾斜配向をとる。また、上述したのと同様に、電圧印加時に上層導電層104のエッジ部の液晶層30が安定な放射状傾斜配向をとるのであれば、仮想開口部104a’’のエッジが上層導電層104のエッジからずれた位置で正方格子を形成するように開口部104aを形成してもよい。
(実施例7)
実施例7の透過型液晶表示装置1200は、実施例2の透過型液晶表示装置900と異なり、上層導電層103と下層導電層102とを電気的に接続するためのコンタクトホール117aが、複数の開口部104aの配列が形成する正方格子の格子点に形成されている。
実施例7の液晶表示装置1200の構造および動作を説明する前に、実施例2の液晶表示装置900が有し得る欠点を説明する。なお、この欠点は、液晶表示装置の用途によっては問題とならないこともある。
図53に示したように、実施例2の液晶表示装置900の上層導電層104は、比較的に多数の比較的小さな開口部104aが、絵素電極105の全体に亘って正方格子状に配列されており、格子点に位置する4個(2×2)の開口部104aが回転対称性を有するように配置されている。従って、液晶層30に電圧を印加すると、上層導電層104が有する開口部104a内に位置する液晶層30が速やかに安定な放射状傾斜配向をとる。また、格子点に位置する4個(2×2)の開口部104aに囲まれる領域では、液晶層30に電圧を印加すると、格子点に囲まれる正方形の対角線の交点に中心を持つ、安定な放射状傾斜配向が得られる。
しかしながら、コンタクトホール107aと重なるように開口部104aを形成すると、その部分では下層導電層102と上層導電層104との電気的接続を行うことが出来ないため、コンタクトホール107aの周辺部の上層導電層104には、開口部104aを正方格子状に配列することが困難である。従って、コンタクトホール107aの周辺では、斜め電界の対称性(電界の方向および強度の分布の対称性)が低いため、安定した配向状態が得られない。その結果、表示のざらつきや残像などが視認され、表示品位が低下することがある。
この欠点は、実施例2のように補助容量配線119等のバックライト光が遮光される領域上にコンタクトホール107aを形成することで、コンタクトホール107aの周辺において、液晶分子の傾斜方向が安定しない領域をほとんど見えなくすることによって、ある程度解決できるが、その領域が光透過部に一部でも存在する限り、表示品位に対して何らかの悪影響を与える。ここで、図53のコンタクトホール107a周辺の液晶分子の傾斜方向が安定しない領域を完全に遮光するのも1つの解決策であるが、開口率の低下を伴うの好ましくない。
これに対し、実施例7の液晶表示装置1200は、図66および図67に示すすように、開口部104aが絵素電極105の全体に亘って正方格子状に配列されているとともに、コンタクトホール117aがその正方格子の格子点の位置に形成されている。これらの図を参照しながら、実施例7の液晶表示装置1200の構造と動作とを説明する。なお、以下の説明では、液晶表示装置1200の構成要素のうち、実施例2の液晶表示装置900の構成要素と実質的に同じ機能を有する構成要素を同じ参照符号で示し、その説明を省略する。また、液晶表示装置1200は液晶表示装置900と実質的に同じプロセスで製造することができる。
図66および図67に示したように、開口部104aは、絵素電極105の全体に亘って正方格子状に配列されているとともに、コンタクトホール117aが格子点の位置に形成されている。また、補助容量配線119上のバックライト光が透過しない領域にも、上層導電層104の開口部104aが格子点に形成されている。従って、液晶層30に電圧を印加すると、上層導電層104が有する開口部104a内に位置する液晶層30が速やかに安定な放射状傾斜配向をとる。コンタクトホール117a上に位置する液晶層30も速やかに安定な放射状傾斜配向をとる。これは、コンタクトホール117aが、図58に示した実施例4の透過反射両用型液晶表示装置1100において感光性樹脂層103に形成された凹部103bと同様に機能するからである。
また、開口部104aは正方格子状に配列されており、格子点に位置する4個(2×2)の開口部104aが回転対称性を有するように配置されているので、開口部104aの間に位置する液晶層30も安定な放射状傾斜配向をとる。さらに、コンタクトホール117aと開口部104aは正方格子状に配列されており、格子点に位置する4個(2×2)の開口部104aとコンタクトホール117aとが回転対称性を有するように配置されているので、コンタクトホール117aと開口部104aとの間に位置する、コンタクトホール117aの近傍の液晶層30も安定な放射状傾斜配向をとる。
上述したように、実施例7の液晶表示装置1200では、実施例2の液晶表示装置900で見られたコンタクトホール107aの周辺での液晶分子の傾斜方向が安定しない領域を無くすことができ、表示のざらつき、残像などが視認されない、良好な表示品位の液晶表示装置が得られる。
ここで、図66に示したように、コンタクトホール117aが開口部104aとなるべく同じように液晶分子に作用するように、コンタクトホール117aの大きさは開口部104aの大きさと同じであることが好ましい。特に、コンタクトホール117aが開口部104aと同じ大きさで同じ形状を有していると、コンタクトホール117aの周辺部の配向安定性が特に優れた液晶表示装置が得られる。但し、画素ピッチや、構造上の制約から、コンタクトホール117aと開口部104aとを同じ大きさおよび同じ形状で形成することが困難な場合でも、コンタクトホール117aと開口部104aとを回転対称性を有するように(典型的には例示した正方格子状)に配列することによって、コンタクトホール117aの周辺の液晶層の配向を十分に安定化できる。
勿論、本実施例で例示した構成は、透過反射両用型液晶表示装置に適用することも可能であり、また、先の実施例と適宜組み合わせることができる。
本発明による液晶表示装置のいくつかの実施例を説明したが、本発明の実施形態1から5の液晶表示装置を同様に実施できる。