JP4752777B2 - プラスチックの分解・回収方法 - Google Patents

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Description

本発明は、浴室用材やキッチンのカウンター材、家具材、内装材、外装材をはじめとする建材等として利用されている無機充填剤としてシリカを含有する熱硬化性アクリル樹脂を含むプラスチックから有価物を分離・回収するための分解・回収方法に関する。特に廃棄物である、アクリル系人造大理石から有価物を分離・回収するための分解・回収方法に関する。
従来、人造大理石を含むプラスチック廃棄物はその殆どが埋立処分あるいは焼却処理されており、資源として有効活用されていない。また埋立処分では埋立用地の確保の困難や埋立後の地盤の不安定化という問題があり、焼却処理では炉の損傷、有害ガスや悪臭の発生、CO2排出といった問題がある。このため、2001年4月施行の資源有効利用促進法で、プラスチック、人造大理石を多く使用している浴室ユニット、システムキッチンを特定再利用促進製品に指定するなど、各種リサイクル法の施行に伴って人造大理石を含むプラスチック製品の回収リサイクルへの流れは加速する傾向にある。
これらの状況に合わせて、近年、プラスチック廃棄物を再資源化することが試みられており、その一つとして、超臨界水を反応媒体とする反応により、プラスチック廃棄物を分解油化し、有用な油状物を回収する方法が提案されている。また、各種構造材料に使用される繊維強化プラスチックについては、超臨界水又は亜臨界水を用いて樹脂成分を分解し、ガラス繊維や炭素繊維等の繊維を回収し、再利用する方法が提案されている(例えば、特許文献1参照)。
これらの方法では、加水分解を受けやすいエステル結合を多く含むポリエステル樹脂のような樹脂であるならば原料となるモノマー成分を回収できる。しかし、ビニルエステル樹脂に代表される人造大理石に用いられる熱硬化性樹脂の場合、エステル結合が非常に少なく、樹脂成分は熱分解により低分子化して多種成分からなる油状成分となることから、この状態から有価物を分離・回収することは困難であった。このため、主に液体燃料として再利用することになるが、ゼオライトに代表される触媒を用いて油質の改質を行うなどの後処理が必要となってコスト高になり、また改質した生成油においても灯油や軽油などの石油製品そのものにすることは困難であり、実用化には至っていない。
そこで、本出願人は、人造大理石を、無機充填剤、熱硬化性樹脂ともに、人造大理石の原料として再利用できるように分解することができる人造大理石の分解方法として、無機充填剤と熱硬化性樹脂を主として含有する人造大理石を180℃〜370℃の温度範囲の亜臨界流体で処理して無機充填剤と熱硬化性樹脂を分離・回収する方法を提案している(例えば、特許文献2参照)。
特開平10−87872号公報 特開2006−206638号公報
しかしながら、上記特許文献2の方法においては、亜臨界流体で処理した後の回収中の熱硬化性樹脂に無機質分が混ざってしまい、回収物としての無機充填剤と熱硬化性樹脂とが必ずしも十分に分離しているとはいえない場合があった。
本発明は、以上の通りの事情に鑑みてなされたものであり、人造大理石等のプラスチックを人造大理石等の原料として再利用できるように分解することができるプラスチックの分解・回収方法を提供することを課題としている。
本発明のプラスチックの分解・回収方法は、上記の課題を解決するために、以下のことを特徴としている。
第1に、無機充填剤としてシリカを含有する熱硬化性アクリル樹脂を含むプラスチックを亜臨界流体で分解して分解物を分離・回収するプラスチックの分解・回収方法であって、熱硬化性アクリル樹脂の熱分解温度未満の温度であり、かつ、熱硬化性アクリル樹脂の架橋部とシリカを加水分解する亜臨界流体で、熱硬化性アクリル樹脂を分解する工程と、分解処理した後の処理液をろ過する工程と、ろ過したろ液に酸を供給してpHを3以下とし、80〜150℃に加熱する工程と、を有することを特徴とする。
第2に、亜臨界流体にアルカリを含有することを特徴とする。
第3に、亜臨界流体が、温度180〜280℃、圧力1〜6.4MPaの流体であることを特徴とする。
上記第1の発明によれば、人造大理石を含むプラスチック廃棄物を人造大理石等の原料として再利用できるように、簡便かつ効率的に分解することができる。
上記第2の発明によれば、上記の効果に加えて、さらに加水分解反応が促進されて樹脂溶解率が向上し、より効率的な分解が可能となる。
上記第3の発明によれば、亜臨界流体が、温度180〜280℃、圧力1〜6.4MPaの流体であることにより、上記の効果をより一層向上させることができる。
本発明は上記のとおりの特徴をもつものであるが、以下にその実施の形態を説明する。
本発明において分解・回収の対象として用いるプラスチックは、無機充填剤としてシリカを含有する熱硬化性アクリル樹脂を含むものであり、例えば、その組成が主としてシリカと熱硬化性アクリル樹脂からなるアクリル系人造大理石と呼ばれる人造大理石を例示することができる。本発明におけるプラスチックは、例えば、メチルメタアクリレートモノマー、多官能のアクリルモノマーやプレポリマー、あるいはポリマーのそれぞれ2種以上の混合物で構成されたアクリルシロップと称される熱硬化性アクリル樹脂およびシリカとともに、硬化剤をはじめ、必要に応じて紫外線吸収剤、減粘剤、離型剤等の各種添加剤を配合した樹脂組成物を成形して得られる。
本発明では、このような人造大理石(主に廃棄物)等のプラスチックに、亜臨界流体である水やアルコール、エーテル等の有機溶媒を加え、温度および圧力を上昇させて、亜臨界状態下で、熱硬化性アクリル樹脂の架橋部とシリカを加水分解し、この分解物から熱硬化性アクリル樹脂の重合鎖とシリカ分解物を有価物として分離・回収する。
一般に亜臨界流体による熱硬化性樹脂の分解は、熱分解反応及び加水分解反応によって起こると考えられる。例えば、無機充填剤としてシリカを含有する熱硬化性アクリル樹脂を用いている人造大理石に亜臨界流体を接触させた場合には、エステル結合部分の加水分解反応がまず起こり、これが引き金となって熱分解反応が起こりやすくなり、重合体あるいはモノマーに分解された化合物となり、これらを分離・回収することで有価物を得ることができる。このような有価物は、具体的にはメタクリル酸重合体とメタノールとを主とするものである。また、無機充填剤であるシリカも亜臨界流体によりSi−O−Siの結合が加水分解され、珪酸イオン(シリカ分解物)となり、亜臨界流体に溶解する。このため、分解処理した後の処理液をろ過することによって、亜臨界流体で溶解しなかった固形物残渣が分離され、ろ液には、熱硬化性アクリル樹脂由来の重合体あるいはモノマーに分解された化合物と、無機充填剤由来の珪酸イオンが含まれることになる。そして、ろ液に酸を供給してpHを酸性にするとともに、これを加熱することで珪酸とし、生じた沈殿を分離・回収することで有価物を得ることができる。
分解のための溶媒としては、上述した水やアルコール、エーテル等の有機溶媒のほか、CO2、そしてそれらの混合物が適宜に用いられるが、その取扱い、回収、そしてコスト等の点において水を用いることがより好ましい。
本発明において、プラスチックと水や有機溶媒等の亜臨界状態となる溶媒の比率は特に制限されるものではないが、プラスチック100質量部に対して100〜10000質量部の範囲に設定することが好ましい。
また、本発明では、上記溶媒にアルカリを含有することが好ましい。これにより、さらに加水分解反応が促進されて樹脂溶解率が向上し、より効率的な分解が可能となる。アルカリの種類としては、第1A族(アルカリ金属)、第2A族(アルカリ土類金属)、塩基性リン酸塩のうちの1種以上のアルカリが好適なものとして考慮される。なかでも、より加水分解反応を促進させるためにKOHやNaOHを用いることが望ましい。このようなアルカリは、例えば、プラスチック100質量部に対して5〜100質量部の範囲で含有されるが、特に限定されるものではない。
亜臨界流体での分解反応において、その分解反応の温度は、上記熱硬化性アクリル樹脂の過度な熱分解反応が抑制されることによる熱硬化性樹脂製造原料としての再利用が容易な重合鎖の高分子の有価物をより効果的に回収することを考慮すると、熱硬化性アクリル樹脂の熱分解温度未満の温度であり、かつ、熱硬化性アクリル樹脂の架橋部とシリカを加水分解する亜臨界流体で行うことが必要であり、具体的には180〜280℃の範囲に設定することが好ましい。温度が180℃未満の場合には、分解に多大な時間がかかって処理コストが高くなることがあるので好ましくない。280℃を超える場合には熱硬化性アクリル樹脂の過度な熱分解が起こりやすく、熱硬化性アクリル樹脂由来の有価物の回収量が減少することがあるので好ましくない。圧力としては、上記温度などの条件によって異なるが、一般的には1〜15MPa、好ましくは1〜6.4MPaである。これによって、加水分解反応が促進されて樹脂溶解率が向上し、より効率的な分解が実現される。分解反応の時間は、反応温度、圧力の条件で異なるが、0.1〜10時間、好ましくは0.1〜4時間程度である。反応時間が短い方が処理コストは少なくなるのでより好ましい。なお、熱硬化性アクリル樹脂の熱分解温度は、亜臨界流体によって樹脂が熱分解する温度であり、分解した熱硬化性アクリル樹脂の架橋部のうち、30重量%以上の架橋部が分解して架橋部とは異なる各種分解物になる温度であり、反応圧力や用いる液によって異なるものである。
本発明では、亜臨界流体で分解処理した後のシリカ分解物を含むろ液に、酸を供給してpHを酸性にするとともに、これを加熱する。これによって珪酸を生じさせることができる。生じた珪酸は沈殿するため、遠心分離等によりこの沈殿物を分離・回収することで無機充填剤由来の有価物を得ることができる。ここで、より効果的に珪酸を生じさせるために、pHを3以下とし、加熱温度を80〜150℃とすることが好ましい。また、熱硬化性アクリル樹脂由来の有価物は分離液中に得ることができる。
そこで以下に実施例を示し、さらに詳しく説明する。もちろん以下の例によって発明が限定されることはない。
<実施例1>
熱硬化性樹脂として熱硬化性アクリル樹脂を、無機充填剤として熔融シリカを用いた人造大理石を使用した。熱硬化性アクリル樹脂はアクリルシロップ(ルーサイトジャパン社製)を用いて作製した。樹脂とシリカの組成比は55対45(重量比)であった。
この人造大理石粉砕物(2mmメッシュアンダー)を3.0g、アルカリ水(分解処理溶媒)17.0gを計量し反応管(内容量25mL)に密閉した。アルカリ水は、NaOH 2Nのものを用いた。
これを230℃の高温槽に浸漬し、反応管内を230℃、2.8MPaの亜臨界状態にして、2時間浸漬したまま放置し、人造大理石の分解処理を2時間行った。この後、反応管を高温槽から取り出して、水冷冷却槽に浸漬し、急冷して室温まで戻した。
この後、図1に示す手順に従って、処理を行った。
図1の分解率(1))は、亜臨界分解後の溶液をろ過し、その残渣量を求め、次式に従って求めた。
分解率(%)=〔分解前試料量(g)−固形残渣量(g)〕×100/分解前試料量(g)
亜臨界分解後のろ液は、1N塩酸を用いて、pH2.6以下に調整し、シリコンオイルバスにて1時間以上還流させたのち、全溶液を遠心力(G)1500で、30分間遠心分離機にかけた。遠心分離後の上澄み(以下、分離液)は、105℃の雰囲気下で蒸発乾固させた。この乾固物を赤外吸収分光分析(以下、FT−IR分析、2))で物質を同定した。また、乾固物を別途、600℃で強熱灰化させ、その残渣が無機物由来として、残渣量から乾固物中の無機物量を求めるとともに、X線回折(3))で内容物の同定を行った。
上記遠心分離後の上澄み除去後の残渣(以下、ケーキ)は、取り出した後に105℃で2時間乾燥させた。この乾燥物についてX線分析(4))を行い、さらに600℃で強熱灰化させ、残渣をX線回折(5))で内容物の同定を行った。
<実施例2>
アルカリ水に用いるアルカリをKOHにした以外は、実施例1と同様な操作を行った。
<比較例1>
実施例1のうち、分解温度を170℃にした以外は、実施例1と同様であった。
<比較例2>
実施例1のうち、分解温度を290℃にした以外は、実施例1と同様であった。
<比較例3>
実施例1と同様な条件で分解後、図1中の分解、ろ過後のろ液をpH2.6に調整した後、加熱せずに遠心分離した以外は、以下同様の操作であった。
以上の結果を表1に示す。
Figure 0004752777
表1中に記載のメタクリル酸重合体は、標準IRスペクトルとの比較から、メタクリル酸重合体と同定した。また、O−Si−O結合である1082cm−1にIR吸収をもつ場合に珪酸と同定した。
また、実施例1で回収したメタクリル酸重合体の分子量を測定した結果を表2に示す。
Figure 0004752777
表2より、メタクリル酸重合体の分子量が約30万のオリゴマーであることがわかる。
実施例1,2では、樹脂の組成の一部であるメタクリル酸重合体と、珪酸が生成し、さらに分離できていることがわかる。この結果から、熱硬化性樹脂由来成分としてメタクリル酸重合体のオリゴマーと、無機充填剤由来成分とを分離・回収することができることがわかった。
比較例1のように分解温度が低いと反応が進まず、逆に、比較例2のように分解温度が高いと熱分解が主流となって原料由来のメタクリル酸重合体からさらに分解が進んで、メタクリル酸重合体が得られない。
また、比較例3のように、pH調整後に加熱しない場合には、沈殿が不十分となり分離液中に珪酸が混ざり、分離性が低下することがわかった。
人造大理石の亜臨界水分解後の処理フローチャートである。

Claims (3)

  1. 無機充填剤としてシリカを含有する熱硬化性アクリル樹脂を含むプラスチックを亜臨界流体で分解して分解物を分離・回収するプラスチックの分解・回収方法であって、熱硬化性アクリル樹脂の熱分解温度未満の温度であり、かつ、熱硬化性アクリル樹脂の架橋部とシリカを加水分解する亜臨界流体で、熱硬化性アクリル樹脂を分解する工程と、分解処理した後の処理液をろ過する工程と、ろ過したろ液に酸を供給してpHを3以下とし、80〜150℃に加熱する工程と、を有することを特徴とするプラスチックの分解・回収方法。
  2. 亜臨界流体にアルカリを含有することを特徴とする請求項1に記載のプラスチックの分解・回収方法。
  3. 亜臨界流体が、温度180〜280℃、圧力1〜6.4MPaの流体であることを特徴とする請求項1または2に記載のプラスチックの分解・回収方法。
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