JP4752564B2 - 海草類等の着生基盤の改質又は造成方法 - Google Patents
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Description
海草類が群生している場所は海草藻場(通称、アマモ場)と呼ばれる。このような海草藻場は沿岸海域における海中動植物の生産場であり、有用魚介類の生息場、魚介類の産卵場、稚仔魚の生育場、餌場などとして不可欠な場所であると言える。
従来、衰退または消失したアマモ場を回復するために、人工栽培したアマモや他の天然アマモ場から採取したアマモを移植することが行われており、その際にアマモを植え付ける方法として、アマモを固定するマットを用いる方法(例えば、特許文献1,2)、アマモの根を粘土で包み固定する方法(例えば、特許文献3)などが提案されている。
さらに、微細藻類についても、それらが着生する底質に珪酸や珪酸化合物を供給することにより微細藻類の活性が高められ、底質での繁殖が効果的に促進されることが判明した。
[1]海草類又は/及び微細藻類が着生した若しくは海草類又は/及び微細藻類を着生させるべき水底において、鉄鋼製造プロセスで発生するスラグに有機物含有材を混合した敷設材を、海草類又は/及び微細藻類の着生基盤の少なくとも一部として水底に敷設し、前記スラグ中に含まれる珪酸又は/及び珪酸化合物を底質上又は/及び底質中に供給する海草類等の着生基盤の改質又は造成方法であって、
前記スラグは、高炉水砕スラグに平均粒径が1〜50mmの製鋼スラグを混合したスラグであり、前記有機物含有材は強熱減量が10〜20mass%であり、敷設材中の有機物含有材の割合が10〜30体積%であることを特徴とする海草類等の着生基盤の改質又は造成方法。
また、同様に水中に溶出した珪素や珪酸が微細藻類に取り込まれることで、微細藻類を活性化させ、底質表面や内部で安定的に生育・繁殖させることができる。
海草類は、水底の底質(天然の海草藻場であれば砂質又は砂泥質)中に地下茎を張り巡らせ、この地下茎から底質中に根を張って生育・繁殖するものである。海草類の代表的なものとしてアマモ類があり、アマモ類としては、例えば、アマモ、コアマモ、オオアマモ、リュウキュウスガモなどがある。
ここで、水底に現に着生した又は着生させるべきアマモとは、その水底で天然に成育しているアマモ、他所で採取し又は人工栽培したものを移植したアマモ、その水底で種子を播種して発芽・成育させたアマモなどのいずれでもよい。
珪酸化合物とは珪酸を化合物の一部として含有する物質である。本発明で使用される珪酸、珪酸化合物の種類に特別な制限はなく、例えば、シリカゲル、珪酸カルシウムなどのような珪酸塩などが挙げられる。
また、珪酸又は/及び珪酸化合物含有物質としては、鉄鋼製造プロセスで発生するスラグ(以下、便宜上“鉄鋼スラグ”という)が代表例として挙げられるが、これに限定されるものではない。
珪酸、珪酸化合物、珪酸又は/及び珪酸化合物含有物質は、それらの1種以上を用いることができる。
珪酸、珪酸化合物、珪酸又は/及び珪酸化合物含有物質のなかでは、コスト・機能面から鉄鋼スラグが好ましく、そのなかでも特に高炉水砕スラグが好ましい。
鉄鋼スラグを底質に配置する形態の一つとして、アマモが根を張る着生基盤の少なくとも一部として水底に敷設することができる。
このような高炉水砕スラグを底質に配置した場合、特にアマモが根を張る着生基盤の少なくとも一部として水底に敷設した場合には、スラグ粒子が多孔質であることからガスを保持しやすく、このため底質中に存在する酸素ガスを保持(捕捉)し、この保持した酸素ガスを間隙水中に徐々に供給する能力を持つ。
また、高炉水砕スラグに平均粒径が1〜50mm程度の鉄鋼スラグ(例えば、製鋼スラグ)を適量混合し、これを着生基盤の少なくとも一部として水底に敷設した場合には、アマモの根がスラグ粒子に巻き付いて固定化されやすくなるため、波浪などの水流に対してアマモがより抜けにくくなる効果が得られる。
以上、本発明の詳細と好ましい実施形態をアマモを例に説明したが、他の海草類についても同様である。
底質に供給される珪酸や珪酸化合物の条件、供給源、供給方法・形態はさきに述べたとおりであり、供給場所も海草類とほぼ同じである。水深については、微細藻類の生育に必要な水中光量は年平均で約7ly/dでよいことから、海草類より深い水深でも適用可能である。
なお、微細藻類としては、例えば、珪藻類、ラン藻類、緑藻類、藍藻類、紅藻類、灰色藻類、クリプト藻類、渦鞭藻類、黄金色藻類、褐藻類、黄緑藻類、ハプト藻類、ラフィド藻類、ボーケリア藻類、ミドリムシ藻類、プラシノ藻類、車軸藻類等を挙げることができる。なかでも、付着性微細藻類である珪藻類、ラン藻類、緑藻類が特に有用である。
沿岸海域において、底質が還元的になった水底(水深約5m)にアマモを移植する試験を行った。各々1m×1mの広さの試験区A,Bを1m離れた場所に設け、両試験区を下記のような試験条件とした上で、アマモを40本ずつ移植した。
・試験区A:何も処置をせず、元からある底質にアマモを移植した。
・試験区B:深さ30cmまでの底質に混合率が15体積%となるように脱珪スラグ(平均粒径20mm)を混合した。
アマモを移植してから1ヶ月後、2ヶ月後及び3ヶ月後におけるアマモの生存・繁殖状態を調べた結果を表1に示す。
これによれば、試験区Aでは移植したアマモは次第に本数が減少したのに対して、底質中に珪酸又は/及び珪酸化合物含有物質である脱珪スラグを埋設した試験区Bでは、アマモが順調に生育・繁殖し、本数が増加した。
沿岸海域において、底質が還元的になった水底(水深約5m)で微細藻類の繁殖性を調査する試験を行った。各々1m×1mの広さの試験区A,Bを1m離れた場所に設けた。試験区A,Bは、下記のような試験条件とした。
・試験区A:何も処置をせず、元からある底質とした。
・試験区B:深さ30cmまでの底質に混合率が15体積%となるように脱珪スラグ(平均粒径20mm)を混合した。
試験を開始してから1ヶ月後、2ヶ月後及び3ヶ月後に、それぞれの試験区の数カ所から底泥を採取して乾燥底泥1g当たりのクロロフィルA量を測定し、その平均値を求めた結果を表2に示す。このクロロフィルA量は底質に生息する微細藻類の量と比例する。また、実際に底泥を顕微鏡観察して微細藻類が存在していることを確認した。
表2によれば、試験区Aでは微細藻類は殆ど増殖していないのに対して、底質中に珪酸又は/及び珪酸化合物含有物質である脱珪スラグを混合した試験区Bでは、微細藻類が順調に生育・増殖していることが判る。
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- 海草類又は/及び微細藻類が着生した若しくは海草類又は/及び微細藻類を着生させるべき水底において、鉄鋼製造プロセスで発生するスラグに有機物含有材を混合した敷設材を、海草類又は/及び微細藻類の着生基盤の少なくとも一部として水底に敷設し、前記スラグ中に含まれる珪酸又は/及び珪酸化合物を底質上又は/及び底質中に供給する海草類等の着生基盤の改質又は造成方法であって、
前記スラグは、高炉水砕スラグに平均粒径が1〜50mmの製鋼スラグを混合したスラグであり、前記有機物含有材は強熱減量が10〜20mass%であり、敷設材中の有機物含有材の割合が10〜30体積%であることを特徴とする海草類等の着生基盤の改質又は造成方法。 - 製鋼スラグが脱珪スラグであることを特徴とする請求項1に記載の海草類等の着生基盤の改質又は造成方法。
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