JP4752096B2 - インクジェット記録液およびインクジェット記録方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、インクジェット記録液およびインクジェット記録方法に関し、詳しくは、吐出および保存安定性に優れ、印字濃度、印字面の光沢、印字面の耐擦性の全てに優れた印字物を得ることが出来るインクジェット記録液およびインクジェット記録方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
従来、インクジェット記録用の記録液(インクジェット記録液)としては、水性媒体中に酸性染料や直接染料が溶解された水性記録液(インク)や有機溶剤中に油溶性染料を溶解した溶剤系インクが使用されている。溶剤系インクは、溶剤を使用するために環境安全面で問題があり、オフィスや家庭などでの使用には適さない等の理由で用途が限定されている。一方、一般的な水性インクは、水溶性色材(染料)を使用しており、記録物の耐水性や耐光性が不十分であるという問題を抱えている。この問題点を改良するため、水性媒体中に色材として耐水性や耐光性に優れた顔料を分散した水性顔料分散インクが一部で使用されている。
【0003】
インクジェット記録用の水性顔料分散インクは、吐出安定性および保存安定性を確保するため、他の顔料インクに比べて分散剤樹脂の添加量が少なく、そのため、印字後に記録面を擦った際、印字塗膜が剥がれたり、周囲を汚損したりして記録物が損なわれてしまう、いわゆる耐擦過性に劣るという問題がある。特に、ワイドフォーマット又はラージフォーマット等と呼ばれる、軽印刷用途向けの大判インクジェットプリンタは、ポスター等の屋外掲示物の印刷用途に印字物を供することがあり、斯かる用途のインク及び記録シートに対しては、家庭・事務用途に比して高度の耐光性および耐水性が要求される。このため、斯かるプリンタにおいては、紙や樹脂フィルム等の支持体表面にインク受容層を具備した記録シートに顔料分散インクで記録する記録方法が採用されつつある。
【0004】
しかしながら、上記の記録方法の場合、色材である顔料の大部分がインク受容層内部までは浸透せず、記録シート表面上に残って塗膜を形成する。このため、普通紙に顔料分散インクを記録する場合や、一般にインク受容層内部まで浸透する染料インクを使用する場合に比し、記録面の耐擦過性や光沢が著しく劣るという問題がある。斯かる問題は、表面が平滑な、光沢紙や光沢フィルムと呼ばれる記録紙に記録する際に特に顕著となる。記録液中にバインダーとなる樹脂を大量に添加すれば、記録面の耐擦過性や光沢は向上するものの、吐出性が著しく悪化してインクジェット記録液としては使用できないという問題がある。
【0005】
例えば、特開平7−48538号公報には、特定のアクリル系樹脂とポリウレタン系樹脂およびカーボンブラックを含む水性塗料およびインク組成物が例示されている。しかしながら、ここに開示されたインク組成は、高粘度の伝統的な印刷インクに関するものであり、本発明者らの実験によれば、インクジェットプリンタでは吐出することが出来ず、インクジェット記録液として使用することが出来なかった。また、特開平6−279718号公報や特開2000−1639号公報には、特定のポリウレタン樹脂を含むインクジェット記録液が開示されているが、ここに開示された技術では、特定のインクジェット専用紙に対して印字した印字物の耐擦過性が使用するカーボンブラックの種類によって変化するという問題がある。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、上記実情に鑑みなされたものであり、その目的は、優れた吐出安定性、保存安定性、印字濃度、耐光性、耐水性を保持し、かつ、特に表面が平滑な記録紙に印字した際に光沢と耐擦過性に極めて優れた記録物を与え得る、インクジェット記録液および記録方法を提供することにある。
【0007】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、顔料としてカーボンブラックを含むインクジェット記録液および当該記録液を使用し且つ特定のインクジェット記録シートに記録する方法について種々検討した結果、通常のカーボンブラックに比べて一次粒子径が小さく且つストラクチャーの低い特定の骨格を有するカーボンブラックを使用し、かつ、特定の樹脂を併用することによって、上記の目的を容易に達成し得るとの知見を得、本発明の完成に至った。
【0008】
すなわち、本発明の第1の要旨は、少なくともカーボンブラック(a)と酸価が45以上であるポリウレタン系樹脂(b)と水(c)とを含むインクジェット記録液であって、カーボンブラック(a)の平均一次粒子径が18nm以下、DBP吸油量が120cm3/100g未満であることを特徴とするインクジェット記録液に存する。
【0009】
そして、本発明の第2の要旨は、支持体の少なくとも片面に平均細孔径が1μm以下の多孔質層から成るインク受容層が設けられて成る記録用シートに対して上記のインクジェット記録液で記録することを特徴とするインクジェット記録方法に存する。
【0010】
【発明の実施の形態】
以下、本発明を詳細に説明する。先ず、本発明に係るインクジェット記録液について説明する。本発明においては、色材として特定物性のカーボンブラックを使用するが、その製法は特に制限されず、アセチレンブラック、チャンネルブラック、ファーネスブラック等の何れの製法によるものであってもよい。これらの中では、チャンネルブラック又はファーネスブラックが好ましく、ファーネスブラックが特に好ましい。
【0011】
本発明で使用するカーボンブラックは、その平均一次粒子径が18nm以下でなければならない。平均一次粒子径が小さいほど得られる記録物の耐擦過性および光沢は向上する傾向にあり、平均一次粒子径が18nmを超える場合は、得られる記録物の耐擦過性および光沢が悪化する。平均一次粒子径は、好ましくは16nm以下、更に好ましくは15nm以下である。
【0012】
また、本発明で使用するカーボンブラックは、そのDBP吸収量が120cm3/100g未満でなければならない。DBP吸収量が120cm3/100gを超える場合は、得られる記録物の耐擦過性および光沢が悪化する。DBP吸収量は、好ましくは110cm3/100g以下、更に好ましくは100cm3/100g以下である。
【0013】
カーボンブラックの窒素吸着比表面積は、好ましくは200m2/g以上、更に好ましくは230m2/g以上、特に好ましくは260m2/g以上である。窒素吸着比表面積が200m2/g未満の場合は、得られる記録物の耐擦過性および光沢が悪化する傾向がある。
【0014】
カーボンブラックの揮発分は、通常8重量%以下、好ましくは4重量%以下であり、そのpHは、特に制限されないが、記録液の保存安定性上の観点から、好ましくは3〜11、更に好ましくは6〜9である。
【0015】
上記の平均一次粒子径は次の様にして求めた値を意味する。すなわち、先ず、クロロホルム中にカーボンブラックを十分に希釈分散させる。この際、透過型電子顕微鏡(TEM)で撮影した際に各カーボンブラックのアグリゲート同士が重なり合わない程度の濃度とする。次いで、コロジオン膜付メッシュ上に上記の分散液を展開した後に乾燥させ、TEMで撮影する。撮影したTEM写真(引き延ばし後の倍率3万倍)をスキャナーに入力してデジタル化した後、コンピュータ画像解析を行う。そして、抽出された各一次粒子の投影面積と等しい面積を有する円の直径(等面積円径)の分布より求めた算術平均径(数平均値)を平均一次粒子径とする。また、上記のカーボンブラックのDBP吸油量はJIS K6221 A法で測定した値を、窒素吸着比表面積および揮発分はJIS K6221の方法で測定した値を、pHはカーボンブラック水懸濁液を煮沸後に冷却して得た泥状物のpH値を指す。
【0016】
本発明において、カーボンブラックのアグリゲート径が30nm以下であって且つ平均アグリゲート径(Dagg)でアグリゲート径分布の標準偏差(SD)を割った値(SD/Dagg)が0.4以下であることが好ましい。この値が0.4を超える場合は、得られる記録物の色調、光沢、耐擦過性が悪化する傾向がある。上記のアグリゲート径分布とは、前記の平均一次粒子径の測定の画像解析において、抽出された各アグリゲートの投影面積と等しい面積を有する円の直径(等面積円径)の分布をいい、平均アグリゲート径とは、得られたアグリゲート径分布より求めた算術平均径(数平均値)をいう。
【0017】
本発明で使用し得るカーボンブラックの具体例としては、三菱カーボンブラック #9100、#9180、#2700、#2650、#2600、#2450B、#2400B、#2350、#2300、#2200、#1000、#980、#970、#960、#950、#900、#850、MCF88(以上三菱化学社製品)、モナーク−1400、−1300、−1100、−900、−800、キャボジェット−300、−200(以上キャボット社製品)、プリンテックス−95、−90、−85、−80(以上デグサ社製品)、ラーベン−7000、−5750、−5250、−5000U、−2500U、−1500、−2000(以上コロンビヤン社製品)等を例示することが出来る。本発明で使用するカーボンブラックは粉状品であっても粒状品であってもよい。
【0018】
また、本発明においては、上記のカーボンブラックを化学的に処理したもの(酸化処理、フッ素化処理など)、分散剤や界面活性剤などを物理的または化学的に結合させたもの(グラフト化処理、分散剤を分散前に予め吸着させたもの等)等を使用してもよい。
【0019】
カーボンブラックの使用量は、記録液全重量に対し、通常1〜10重量%、好ましくは2〜8重量%である。
【0020】
本発明で使用するアミド結合および/またはウレタン結合を有する高分子としては、例えば、(メタ)アクリルアミド、ビニルピロリドン等を重合して得られるホモポリマー、それらとその他のビニルモノマーの共重合体、ポリウレタン系樹脂などを例示することが出来る。これらの中ではポリウレタン系樹脂が好ましい。
【0021】
ポリウレタン系樹脂としては、特に制限はなく、ジイソシアネート化合物とジオール化合物とを反応して得られる水溶性または水分散性のポリウレタン系樹脂を使用することが出来る。
【0022】
上記のジイソシアネート化合物としては、例えば、ヘキサメチレンジイソシアネート、2,2,4−トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート等の脂肪族ジイソシアネート化合物、イソホロンジイソシアネート、水添キシリレンジイソシアネート、1,4−シクロヘキサンジイソシアネート、4,4’−ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート等の脂環式ジイソシアネート化合物、キシリレンジイソシアネート、テトラメチルキシレンジイソシアネート等の芳香脂肪族ジイソシアネート化合物、トルイレンジイソシアネート、フェニルメタンジイソシアネート等の芳香族ジイソシアネート化合物、これらジイソシアネートの変性物(カルボジイミド、ウレトジオン、ウレトイミン含有変成物など)等が挙げられる。これらのジイソシアネート化合物は2種以上を併用してもよい。
【0023】
ジオール化合物としては、例えば、エチレンオキシド、プロピレンオキシド等のアルキレンオキシドやテトラヒドロフラン等の複素環式エーテルを(共)重合させて得られるジオール化合物が挙げられる。斯かるジオール化合物の具体例としては、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリテトラメチレンエーテルグリコール、ポリヘキサメチレンエーテルグリコール等のポリエーテルジオール、ポリエチレンアジペート、ポリブチレンアジペート、ポリネオペンチルアジペート、ポリ−3−メチルペンチルアジペート、ポリエチレン/ブチレンアジペート、ポリネオペンチル/ヘキシルアジペート等のポリエステルジオール、ポリカプロラクトンジオール等のポリラクトンジオール、ポリカーボネートジオールが挙げられる。これらの中では、ポリエーテル系またはポリエステル系が好ましい。
【0024】
また、上記の他、カルボン酸基、スルホン酸基などの酸性基を有するジオール化合物も使用でき、その具体例としては、ジメチロール酢酸、ジメチロールプロピオン酸、ジメチロール酪酸などが挙げられる。これらの中では、ジメチロールプロピオン酸が好ましい。これらのジオール化合物は、2種以上を併用してもよい。
【0025】
ポリウレタン系樹脂の合成に際しては、低分子量のポリヒドロキシ化合物を添加してもよい。低分子量のポリヒドロキシ化合物としては、ポリエステルジオールの原料として使用される、グリコール、アルキレンオキシド低モル付加物、グリセリン、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン等の3価アルコール及びそのアルキレンオキシド低モル付加物が挙げられる。また、この様にして得られたウレタンプレポリマーは、ジメチロールアルカン酸に由来する酸基を中和した後または中和しながら水延長またはジ(トリ)アミンで鎖延長することが出来る。鎖延長の際に使用されるポリアミンとしては、ヘキサメチレンジアミン、イソホロンジアミン、ヒドラジン、ピペラジン等が挙げられ、これらは2種以上を併用してもよい。
【0026】
アミド結合および/またはウレタン結合を有する高分子は、中和して使用することが出来、中和に使用する塩基としては、例えば、ブチルアミン、トリエチルアミン等のアルキルアミン、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン等のアルカノールアミン、モルホリン、アンモニア、水酸化ナトリウム等の無機塩基などが挙げられる。
【0027】
アミド結合および/またはウレタン結合を有する高分子の酸価は、通常45mgKOH/g以上、好ましくは50mgKOH/g以上、更に好ましくは55mgKOH/g以上300mgKOH/g以下、特に好ましくは60mgKOH/g以上250mgKOH/g以下である。ここでいう酸価とは、高分子中に含まれる酸性官能基の割合を示す値であって、本発明においては未中和の樹脂1g(固形分として)を中和するために必要とされる水酸化カリウムの重量(mg単位)で以って表し、単位はmgKOH/gと表記する。酸価が上記の範囲に満たない場合には高分子の水溶性が不足し、吐出性が悪化する傾向となり、酸価が上記の範囲を超える場合には印字物の耐水性が悪化する傾向となる。
【0028】
アミド結合および/またはウレタン結合を有する高分子の使用量は、カーボンブラック100重量部に対する固形分換算値として、通常1〜100重量部、好ましくは5〜70重量部、更に好ましくは5〜50重量部である。上記の高分子の使用量が1重量部未満の場合は、得られる記録物の耐擦性および光沢が不十分となり、100重量部を超える場合は記録液の保存安定性および吐出性が悪化する傾向となる。
【0029】
本発明に係る記録液には種々の添加剤を使用することが出来、例えば、分散剤を使用してもよい。分散剤としては、例えば、各種の陰イオン性界面活性剤、ノニオン性界面活性剤、陽イオン性界面活性剤、両性界面活性剤、高分子系分散剤などが挙げられる。得られる記録物の耐擦過性および光沢性の観点から、高分子系分散剤が好適に使用される。
【0030】
陰イオン性界面活性剤としては、脂肪酸塩類、アルキル硫酸エステル塩類、アルキルベンゼンスルホン酸塩類、アルキルナフタレンスルホン酸塩類、アルキルスルホコハク酸塩類、アルキルジフェニルエーテルジスルホン酸塩類、アルキルリン酸塩類、ポリオキシエチレンアルキル硫酸エステル塩類、ポリオキシエチレンアルキルアリール硫酸エステル塩類、アルカンスルホン酸塩類、ナフタレンスルホン酸ホルマリン縮合物類、ポリオキシエチレンアルキルリン酸エステル類、N−メチル−N−オレオイルタウリン酸塩、α−オレフィンスルホン酸塩類などが挙げられる。
【0031】
ノニオン性界面活性剤としては、特にエチレンオキシド構造またはプロピレンオキシド構造を有するものが保存安定性および印字濃度の点で好ましい。また、その中でも、HLBが9〜17、特には10〜16であるものが更に好ましい。斯かるノニオン性界面活性剤としては、ポリオキシエチレンアルキルエーテル類、ポリオキシエチレンアルキルアリールエーテル類、ポリオキシエチレン誘導体類、エチレンオキシド−プロピレンオキシドブロック共重合体類、ソルビタン脂肪酸エステル類、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル類、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル類、ポリオキシエチレンソルビトール脂肪酸エステル類、グリセリン脂肪酸エステル類、ポリオキシエチレンソルビトール脂肪酸エステル類、グリセリン脂肪酸エステル類、ポリオキシエチレン脂肪酸エステル類、ポリオキシエチレンアルキルアミン類などが挙げられる。
【0032】
陽イオン性界面活性剤および両性界面活性剤としては、アルキルアミン塩類、第4級アンモニウム塩類、アルキルベタイン類、アミンオキシド類などが挙げられる。
【0033】
高分子系分散剤としては、カーボンブラックの分散安定性、得られる記録物の耐水性および耐擦過性の観点から、疎水性官能基および親水性官能基を共に含むものが好ましい。また、カルボン酸(塩)基、スルホン酸(塩)基およびリン酸(塩)基から選ばれるアニオン性官能基を有するアニオン性高分子系分散剤が好ましい。
【0034】
上記の様な高分子系分散剤としては、例えば、スチレン、α−メチルスチレン、(メタ)アクリル酸の脂肪族炭化水素および/または芳香族炭化水素エステル、マレイン酸の脂肪族炭化水素および/または芳香族炭化水素エステル等の疎水性ビニル単量体単位と、(メタ)アクリル酸、マレイン酸、2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸、これらの塩などのアニオン性ビニル単量体単位とを構成成分として含む水系アクリル樹脂が挙げられる。高分子系分散剤の重量平均分子量は、吐出安定性の観点から、通常5万以下、好ましくは1万5千以下、更に好ましくは1万以下である。また、高分子系分散剤は、(モノ、ジ、トリ)エタノールアミン等の有機アミン塩などの形で使用できる。
【0035】
以上の様な高分子分散剤の市販品としては、ジョンクリル67、678、680、682、690及び/またはその塩、ジョンクリル52、57、60、62、63、70、354、501、6610(以上ジョンソンポリマー社製)等が挙げられる。これらの高分子分散剤は、樹脂ペレット、溶液、エマルション等の形で入手することが出来る。高分子分散剤は、二種以上を併用してもよい。
【0036】
分散剤の使用量は、カーボンブラック100重量部に対し、通常1〜100重量部、好ましくは1〜70重量部、更に好ましくは5〜60重量部である。高分子分散剤の使用量が1重量部未満の場合は得られる記録物の耐擦過性が不十分となり、100重量部を超える場合は得られる記録液の吐出安定性が悪化する傾向がある。
【0037】
本発明に係る記録液のは媒体としては、通常、水を主体とする水性媒体が使用されるが、この場合、水に水溶性有機溶剤を添加して使用するのが好ましい。
【0038】
上記の水溶性有機溶剤としては、イソプロピルアルコールブチルアルコール等のアルコール類、アセトン、メチルエチルケトン等のケトン類、テトラヒドロフラン、ジオキサン等のエーテル類、エチルアセテート、プロピレンカーボネート等のエステル類、エチレングリコール、プロピレングリコール、1,3−プロパンジオール、ブチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、1,5−ペンタンジオール、1,2,6−ヘキサントリオール、チオジグリコール、グリセリン等の多価アルコール類、ピロリドン、N−メチル−2−ピロリドン、1,3−ジメチルイミダゾリノン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン等の窒素含有化合物、ジメチルスルホキシド、テトラメチレンスルホキシド、スルホラン等のイオウ含有化合物、多価アルコールの低級アルキルエーテル等が挙げられる。
【0039】
本発明においては、記録液の表面張力を下げ、インクの紙面への浸透速度、記録物の乾燥速度を向上させるため、低分子量のノニオン性界面活性剤を使用することが出来る。
【0040】
上記の低分子量のノニオン性界面活性剤の具体例としては、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールジメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールジエチルエーテル、エチレングリコールモノ−n−プロピルエーテル、エチレングリコールモノイソプロピルエーテル、エチレングリコールモノ−n−ブチルエーテル、エチレングリコールモノ−sec−ブチルエーテル、エチレングリコールモノイソブチルエーテル、エチレングリコールモノ−tert−ブチルエーテル、エチレングリコールモノ−n−アミルエーテル、エチレングリコールモノ−n−ヘキシルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールジメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールジエチルエーテル、プロピレングリコールモノ−n−プロピルエーテル、プロピレングリコールモノイソプロピルエーテル、プロピレングリコールモノ−n−ブチルエーテル、プロピレングリコールモノ−sec−ブチルエーテル、プロピレングリコールモノイソブチルエーテル、プロピレングリコールモノ−tert−ブチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノ−n−プロピルエーテル、ジエチレングリコールモノイソプロピルエーテル、ジエチレングリコールモノ−n−ブチルエーテル、ジエチレングリコールモノ−sec−ブチルエーテル、ジエチレングリコールモノイソブチルエーテル、ジエチレングリコールモノ−tert−ブチルエーテル、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、ジプロピレングリコールモノエチルエーテル、ジプロピレングリコールモノ−n−プロピルエーテル、ジプロピレングリコールモノ−n−ブチルエーテル、ポリエチレングリコールモノプロピルエーテル、ポリエチレングリコールモノブチルエーテル、グリセリンのエチレングリコール付加物(具体例:リポニックEG−1(リポケミカル社製)等)、アセチレングリコール類のエチレングリコール付加物(具体例:サーフィノール440、サーフィノール465、サーフィノール485(日信化学工業製)、アセチレノールEH、アセチレノールEL(以上、川研ファインケミカル製)等が挙げられる。
【0041】
低分子量のノニオン性界面活性剤の使用量は、記録液100重量部に対し、通常0.5〜50重量部、好ましくは2〜30重量部、更に好ましくは5〜20重量部である。低分子量のノニオン系界面活性剤により、記録液の表面張力は、通常50mN/m以下、好ましくは40mN/mに調節される。その結果、得られる記録液の紙面への浸透速度、記録物の乾燥速度が向上する。
【0042】
本発明に係る記録液には、上記の他、pH調整剤、粘度調整剤、防腐剤、水溶性樹脂、防黴剤、殺菌剤、キレート樹脂、含窒素化合物(例えば尿素)等の吐出性改良剤を必要に応じて添加してもよい。
【0043】
記録液の調製のために使用する分散機としては、ボールミル、ロールミル、サンドグラインドミルの他、メディアを使用せずに粉砕処理できるナノマイザー、アルティマイザー等のジェットミルが挙げられるが、特にサンドグラインドミル又はメディアに由来する汚染の少ないジェットミルが好ましい。本発明においては、上記の分散機による摩砕・分散処理の後、濾過機または遠心分離機により粗大粒子を除去する。また、摩砕・分散処理は、高濃度で効率的に行うことが出来るため、高濃度で調製した処理液を水性媒体で希釈して記録液の濃度を調整する方法を採用してもよい。
【0044】
記録液中に分散されたカーボンブラックの平均分散粒子径は、通常200nm以下、好ましくは150nm以下、更に好ましくは130nm以下、特に好ましくは110nm以下である。平均分散粒子径が小さい程、得られる記録物の印字濃度が向上する傾向がある。分散粒子径分布は標準偏差として、通常70nm以下、好ましくは5〜60nm、更に好ましくは10〜50nmである。斯かる分散粒子径分布により、記録液の保存安定性、吐出安定性、記録濃度が向上する。更に、カーボンブラックの最大分散粒子径は、得られる分散液の保存安定性および吐出安定性の観点から、5μm以下であることが好ましい。ただし、上記の平均分散粒径および分散粒径分布は、「サブミクロン粒子アナライザーN4S」(Coulter社製品)を使用した光散乱法によって測定した値とする。
【0045】
次に、本発明に係るインクジェット記録方法について説明する。本発明においては、オンデマンド方式、コンティニュアス方式、ピエゾ方式、サーマル方式などのあらゆるタイプのインクジェット記録方法を採用することが出来る。
【0046】
本発明においては、支持体の少なくとも片面にインク受容層が設けられて成る記録用シートを使用する。
【0047】
支持体としては、化学パルプ、機械パルプ、古紙パルプ等の木材パルプと顔料から成る主成分に、バインダー、サイズ剤、定着剤、歩留向上剤、カチオン化剤、紙力増強剤などの添加成分を混合し、長網抄紙機、円網抄紙機、ツインワイヤー抄紙機などの各種装置で製造した原紙が使用される。また、原紙の上にコート層を設けたアート紙、コート紙、キャストコート紙の他、ポリオレフィン等の樹脂層を設けたものも使用できる。更に、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエステル、ナイロン、レーヨン、ポリウレタン、ポリエチレンテレフタレート等の合成樹脂やこれらの混合物から成るフィルム(又はシート)であってもよい。これらの支持体は、記録目的、記録画像の用途、インク受容層との密着性などを考慮して適宜選択される。
【0048】
インク受容層は、支持体の表面に無機微粒子(白色顔料)が分散されたバインダ樹脂を塗布することによって形成される。
【0049】
無機微粒子としては、例えば、軽質炭酸カルシウム、重質炭酸カルシウム、カオリン、タルク、硫酸カルシウム、硫酸バリウム、二酸化チタン、酸化亜鉛、硫化亜鉛、炭酸亜鉛、サチンホワイト、珪酸アルミニウム、珪藻土、珪酸カルシウム、合成非晶質シリカ、水酸化アルミニウム、リトポン、ゼオライト、加水ハロイサイト、水酸化マグネシウム、アルミナゾル、ヒュームドシリカ、コロイダルシリカ等が挙げられる。また、酸化アルミニウム水和物、酸化ジルコニウム水和物、酸化スズ水和物などの金属酸化水和物から成るカチオン変性剤で被覆されたコロイダルシリカを使用することも出来る。これらの無機微粒子は、2種以上を併用してもよい。
【0050】
無機微粒子の平均粒子径は、通常1μm以下、好ましくは0.5μm以下、更に好ましくは0.3μm以下である。無機微粒子の平均粒子径が1μmを超える場合は、得られる印字物の表面光沢が不十分となり、しかも、無機微粒子が形成する間隙が大きくなるため、記録液がインク受容層に浸透する際に、記録液中のカーボンブラックの多くがインク受容層中に浸透して印字濃度が不十分となる可能性がある。
【0051】
なお、無機微粒子の平均粒子径とは、記録シート表面の走査型電子顕微鏡写真をスキャナーに入力してデジタル化した後、コンピュータ画像解析によって抽出された各粒子部分の面積と等しい面積を有する円の直径(等面積円径)の分布を算出して求めた算術平均径(数平均)をいう。
【0052】
バインダ樹脂として、例えば、ポリビニルアルコール、酢酸ビニル、酸化澱粉、エーテル化澱粉、カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース等のセルロース誘導体、無水マレイン酸樹脂、スチレン−ブタジエン共重合体、メチルメタクリレート−ブタジエン共重合体などの共役ジエン系重合ラテックス類、(メタ)アクリル酸エステルの(共)重合体などのアクリル系重合ラテックス類、エチレン酢酸ビニル共重合体などのビニル系重合ラテックス類、これらの各種重合体のカルボキシル基などの官能基含有単量体による官能基変性重合ラテックス類、ポリメチルメタクリレート、ポリウレタン樹脂、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体、ポリビニルブチラール、カゼイン、ゼラチン、大豆蛋白、シリル変性ポリビニルアルコールの他、不飽和ポリエステル樹脂、アルキッド樹脂、メラミン樹脂、尿素樹脂などの熱硬化性合成樹脂が挙げられる。
【0053】
また、本発明において、色材としてのカーボンブラックの定着性を高める目的でカチオン性有機物質を併用することが出来る。斯かるカチオン性有機物質としては、例えば、4級アンモニウム塩、アルキルアミン等のアミン類、アミド類などが挙げられる。また、この様なカチオン性残基を側鎖に有する高分子もカチオン性有機物質として使用することが出来る。
【0054】
更にその他の添加剤として、顔料分散剤、増粘剤、流動性改良剤、消泡剤、抑泡剤、離型剤、発泡剤、浸透剤、着色染料、着色顔料、蛍光増白剤、酸化防止剤、防腐剤、防カビ剤、耐水化剤、湿潤紙力増強剤などを適宜配合することが出来る。
【0055】
インク受容層の形成は、各種ブレードコータ、ロールコータ、エアーナイフコータ、バーコータ、ロッドブレードコータ、カーテンコータ、ショートドウェルコータ、サイズプレス等の公知の各種装置使用して行われる。
【0056】
本発明において、インク受容層は平均細孔径は1μm以下の多孔質層から成ることが重要である。多孔質層の平均細孔径は、好ましくは0.5μm以下、更に好ましくは0.3μmである。多孔質層の平均細孔径が1μmを超える場合は、記録液が印字された際、記録液中のカーボンブラック分散粒子がインク受容層中に浸透してシート上に残らないため、印字濃度が不十分となる。
【0057】
上記の平均細孔径とは、記録シート表面の走査型電子顕微鏡写真を複数の倍率で撮影し、スキャナー入力法でデジタル化した後、コンピュータ画像解析によって抽出された各空隙部分の面積と等しい面積を有する円の直径(等面積円径)の分布を算出して求めた、算術平均径(数平均)をいう。
【0058】
本発明に係る前述の記録液は、表面に光沢を有する記録シートに対して特に有用である。従って、上記のインク受容層表面の、60°における光沢度は、通常10グロスユニット以上、好ましくは20グロスユニット以上、更に好ましくは30グロスユニット以上とされる。この場合、光沢および耐擦過性の極めて良好な記録物が得られる。
【0059】
上記の光沢度は、DIN 67 530により黒色ガラス標準板での反射指数1.567を100グロスユニットとして表した値である。当該光沢度は、独ビック−ガードナー社製の「ヘイズ−グロスリフレクトメータ」によって測定することが出来る。
【0060】
また、本発明に係る前述の記録液は、表面が平滑である記録シートに対して特に有用である。従って、上記のインク受容層表面のS.A.D.(Surface Area Difference)は60.0未満であることが好ましい。この場合、光沢および耐擦過性の極めて良好な記録物が得られる。
【0061】
上記のS.A.D.とは、表面の粗度を表す指標の一つであり、具体的には表面の比表面積を表すものであり、下記の式(I)で定義される。本発明においては、下記の表1に示す条件でS.A.D.を測定して算出する。但し、式(I)中、Siは隣接した3つのデータポイントによって形成された全ての三角形の面積、PiはSiをXY平面に投影した際の面積、ΣSiは全てのsiの和、ΣPiは全てのPiの和を表す。
【0062】
【数1】
S.A.D.={(ΣSi/ΣPi)−1}×100(%)
【0063】
【表1】
(測定方法)
装置:Scanning Probe Microscope
機種:Digital Instruments 社製 NanoScope III
Scanner:J-Head
測定領域:1μm×1μm
ピクセル数:512×512
Scan Rate:1.5Hz
測定モード:Tapping AFM
探針:セイコーインスツルメンツ社製 Si-DF 20
画像処理:Planefit Auto 3次
【0064】
【実施例】
以下、本発明を実施例によって更に詳細に説明するが、本発明は、その要旨を超えない限り、以下の実施例に限定されるものではない。なお、以下の実施例において「部」及び「%」は重量基準である。また、使用したカーボンブラックの種類ならびに物性の測定および評価方法は次の通りである。
【0065】
【表2】
【0066】
(1)分散粒径分布測定:
得られた記録液をイオン交換水で希釈して粒子径測定機(Coulter社製粒子アナライザーN4S)にて分散粒径分布測定を行った。3回の測定の平均値を記録液の平均分散粒径の値とした。
【0067】
(2)保存安定性試験:
得られた記録液を70℃で1週間保存した後に室温に戻してから上記方法にて粒子径測定を行った。得られた結果を保存前の粒子径の測定結果と比較し、平均粒子径の差分を算出し、差分が10%以下であれば保存安定性良好(○)であると評価した。
【0068】
(3)印字試験:
市販のインクジェットプリンターに記録液が充填されたインクカートリッジを装着し、市販のインクジェット記録用光沢フィルムA(キヤノン(株)製「フォト光沢フィルムHG−201」)及び光沢フィルムB(セイコーエプソン(株)製「専用光沢フィルムMJA4SP6」)にベタ印字して印字試験を行った。得られた印字物を目視観察し、インクの吐出性を次の表3に示す4段階の基準で評価した。
【0069】
【表3】
◎:印字抜けが全くなく、印字端部の品位も極めて良好であった。
○:僅かにかすれが生じたものの、実用上問題ないと判断された。
△:若干のノズル詰まりが発生し、印字物にかすれが発生した。
×:ノズル詰まりが発生し、インクの吐出が出来なかった。
【0070】
(4)印字濃度評価:
上記の印字試験で得た印字物の濃度をマクベス反射濃度計(RD914)で測定した。数値が大きいほど印字濃度が良好であり、1.5以上であれば合格と判定した。
【0071】
(5)光沢評価:
ヘイズ−グロスリフレクトメータ(独ビック−ガードナー社製)により、上記の印字試験で得た印字物の光沢値(単位:グロスユニット)を測定し、DIN 67 530により、黒色ガラス標準板での反射指数1.567を100グロスユニットとした値を示した。印字部の表面光沢値は反射角60°における値を使用した。数値が大きいほど光沢が良好であることを示し、70以上であれば合格と判定した。また、上記と同様の方法により、印字試験に用いた市販のインクジェット記録用光沢フィルムの非印字部の表面光沢値も測定し、結果を表7に示した。
【0072】
(6)色調評価:
上記の印字試験で得た印字物の色調を目視にて評価し、次の表4に示す3段階の基準で評価した。
【0073】
【表4】
○:深みのある漆黒を示し、色調は優良である。
△:やや灰がかった黒色ではあるが、実用上問題はない。
×:白茶けた色調であり、黒色記録液としては実用的でない。
【0074】
(7)耐擦過性試験:
上記の印字試験で得た印字物において、記録液が乾燥して定着した後に印字ベタ部を金属性スプーンで軽く擦り、次の表5に示す3段階の基準で評価した。
【0075】
【表5】
○:塗膜の剥離がなく、耐擦性は優良である。
△:僅かに塗膜の剥がれがあるが実用上問題ない。
×:塗膜が剥離して実用上問題がある。
【0076】
(8)インク受容層の平均細孔径および白色顔料の平均粒子径の測定:
記録シート表面の走査型電子顕微鏡(SEM)写真(引き伸ばし後の倍率6万倍)をスキャナに入力してデジタル化した後、コンピュータ画像処理を行い、抽出された各空隙部分および各白色顔料粒子の面積と等しい面積を有する円の直径(等面積円径)の分布の算術平均径(数平均)を求めて、各々インク受容層の平均細孔径および白色顔料の平均粒子径とした。また、上記と同様の方法により、印字試験に用いた市販のインクジェット記録用光沢フィルムのインク受容層の平均細孔径も測定し、結果を表7に示した。
【0077】
(9)インク受容層表面のS.A.D.の測定:
インク受容層表面の5点(5領域)について本文に記載の方法で測定し、その平均値を採用した。また、上記と同様の方法により、印字試験に用いた市販のインクジェット記録用光沢フィルムのインク受容層のS.A.D.も測定し、結果を表7に示した。
【0078】
実施例1
円筒形のステンレス容器に次の表6に示す各成分を採取し、平均0.6mm径のジルコニアビーズを使用しサンドグラインダーにて3時間分散処理を行った。
【0079】
【表6】
【0080】
上記で得られた液に、ポリエステル系水性ウレタン樹脂A(酸価50、分子量6000)0.75部(固形分換算)の水溶液、ジエチレングリコールモノブチルエーテル10部を加え、更にイオン交換水を加えて全量を100部とした。この液をNo.5Cの濾紙で加圧濾過した。ここで得られた液を記録液とし、評価を行った。結果を表8に示した。
【0081】
実施例2
実施例1において、ポリエステル系水性ウレタン樹脂Aの水溶液に代えて、ポリエステル系水性ウレタン樹脂B(酸価70、分子量20万)1.8部(固形分換算)の水溶液を添加した以外は、実施例1と同様に記録液を調製し、評価を行った。結果を表8に示した。
【0082】
実施例3
実施例1において、カーボンブラックAに代えて市販のカーボンブラックB(三菱化学社「三菱カーボンブラック#2600」)を使用した以外は、実施例1と同様に記録液を調製し、評価を行った。結果を表8に示した。
【0083】
比較例1
スチレン−アクリル酸系共重合体水溶液の添加量を3部に変更した以外は実施例1と同様にして分散処理して得られた液に、ジエチレングリコールモノブチルエーテル10部を加えた後、更にイオン交換水を加えて全量を100部としてから、No.5Cの濾紙で加圧濾過した。得られた液を記録液とし、評価を行った。結果を表8に示した。
【0084】
比較例2
実施例1において、カーボンブラックAに代えてカーボンブラックCを使用した以外は、実施例1と同様に記録液を調製し、評価を行った。結果を表8に示した。
【0085】
【表7】
【0086】
【表8】
【0087】
実施例1〜3の結果より次のことが分かる。すなわち、平均一次粒子径が小さく且つDBP吸収量が低いカーボンブラックと共にウレタン結合を有する高分子を使用したことにより、記録液の保存安定性と吐出性が改良され、そして、特定のインク受容層を有するインクジェット記録用シートにインクジェット記録した際に、耐擦過性、光沢、印字濃度に極めて優れた記録物が得られる。
【0088】
一方、比較例1から、記録液がウレタン結合を有する高分子を含まない場合には記録物の耐擦過性、光沢、印字濃度には優れるものの、保存安定性と耐擦性に劣ることが分かる。また、比較例2から、平均一次粒子径およびDBP吸収量が本発明の範囲外にあるカーボンブラックを使用した場合は、得られる記録物の光沢と耐擦過性が不良となることが分かる。
【0089】
なお、本発明の前記効果は次の様な作用に基づくものと考えられる。すなわち、色材として特定のカーボンブラックを選定し、塗膜形成樹脂として水系ウレタン樹脂を使用したことにより、乾燥後の記録物塗膜中に非常に緻密なカーボンブラックの凝集構造が形成され、その結果、樹脂の使用量が少量でありながらも塗膜強度が向上して表面が平滑となり、耐擦過性および光沢が飛躍的に向上する。
【0090】
【発明の効果】
以上説明した本発明によれば、使用するカーボンブラックの骨格を特定の範囲内に制御すると共に特定の高分子を併用することにより、優れた保存安定性と吐出性を有するインクジェット記録液が得られ、更に、特定のインク受容層を有するインクジェット記録シートにインクジェット記録した際、耐擦過性、光沢、印字濃度に極めて優れた記録物が得られる。
Claims (8)
- 少なくともカーボンブラック(a)と酸価が45以上であるポリウレタン系樹脂(b)と水(c)とを含むインクジェット記録液であって、カーボンブラック(a)の平均一次粒子径が18nm以下、DBP吸油量が120cm3/100g未満であることを特徴とするインクジェット記録液。
- カーボンブラック(a)のアグリゲート径が30nm以下であって且つアグリゲート径(Dagg)でアグリゲート径分布の標準偏差(SD)を割った値(SD/Dagg)が0.4以下である請求項1に記載のインクジェット記録液。
- カーボンブラック(a)100重量部に対し、酸価が45以上であるポリウレタン系樹脂(b)を固形分換算として1〜100重量部含有する請求項1又は2に記載のインクジェット記録液。
- 更に、カルボン酸(塩)基、スルホン酸(塩)基およびリン酸(塩)基から選ばれるアニオン性官能基を有するアニオン性高分子系分散剤を含有する請求項1〜3の何れかに記載のインクジェット記録液。
- 更にノニオン系界面活性剤を0.5〜50重量%含む請求項1〜4の何れかに記載のインクジェット記録液。
- 支持体の少なくとも片面に平均細孔径が1μm以下の多孔質層から成るインク受容層が設けられて成る記録用シートに対して請求項1〜5の何れかに記載のインクジェット記録液で記録することを特徴とするインクジェット記録方法。
- インク受容層表面の、60°における光沢度が10グロスユニット以上である請求項6に記載のインクジェット記録方法。
- インク受容層表面のS.A.D.(Surface Area Difference)が60以下である請求項6又は7に記載のインクジェット記録方法。
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