JP4751109B2 - 用毛搬送装置 - Google Patents

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本発明は歯ブラシ等を製造するための植毛機に用毛を供給するに好適な用毛搬送装置に関する。
回転歯車を用いた用毛搬送装置として、特許文献1に記載のものがある。即ち、特許文献1に記載の用毛搬送装置は、用毛供給側端部から供給される用毛を、搬送ガイドに沿って搬送し、用毛排出側端部から取り出して加工機に供給する用毛搬送装置であって、上記搬送ガイドによって形成される搬送通路内に上記用毛と平行方向の溝をそなえた回転歯車を突出させたものである。
実公平7-22098
特許文献1に記載の用毛搬送装置は、用毛の端部に球状膨張部が形成され、搬送中に姿勢が不安定になり易い用毛をスムースに搬送すると共に該用毛をピッキングして用毛加工機等にスムースに供給できるようにしたものであるが、用毛を定尺で裁断した際に端部に発生する加工バリを伴うような真直状用毛については、用毛を搬送経路内で常に継続的に流動させるようにしながらピッキングして、該用毛を用毛加工機等にスムースに供給することが困難である。
本発明の課題は、裁断された真直状用毛をスムースに搬送しピッキングすることにある。
請求項1の発明は、用毛供給側端部から供給される用毛を、搬送ガイドに沿って用毛排出側端部に搬送する用毛搬送装置であって、上記搬送ガイドによって形成される搬送通路内に上記用毛と平行方向の溝をそなえた回転歯車を突出し、該回転歯車は該搬送通路の用毛排出側に少なくとも2対設けられ、該回転歯車のトルクを0.1〜0.6N・mに設定可能にし、前記用毛排出側端部に近い方に設けられる一対の回転歯車のトルクが、用毛排出側端部から遠い方に設けられる一対の回転歯車のトルクよりも小さく設定されるようにしたものである。
尚、「用毛排出側」とは、搬送ガイドに沿う用毛側端部から用毛排出側端部までの長さLの中間地点(L/2)よりも用毛排出側端部寄りの範囲をいう。
回転歯車(以下、歯車という)を用いる用毛搬送の利点は次のように説明できる。用毛の端部にはその加工時にバリが発生するが、用毛の搬送中の流れに、そのバリに起因する塑性的な流動が発生し易い。塑性的な流動とは、用毛に加えられる搬送圧力がある値(降伏値)を越えたときに急激に用毛の流れが生じることである。用毛のかかる急激な流れを伴う断続的流動を最小限に抑えるためには、プッシャによる用毛搬送よりも、用毛の流れの細かい変化を制御できる歯車による用毛搬送が有利である。即ち、用毛排出側端部付近に歯車を設置し、そのトルク、回転数、回転様式(正転、逆転)等を変えることにより用毛の送り量を微調整することができる。
歯車を正逆回転させると、用毛の流れに降伏値を生じさせずに、用毛を継続的に流動させることが容易となる。用毛の流動中は、その流動を持続させるのにさほど搬送圧力を必要としない。用毛の流動が継続しているということは、用毛の流れに滞留が起らないということであり、用毛の搬送をスムースに行なうことができる。全長に渡る直径が均一な真直状(ストレート)の用毛の場合には、歯車のトルクは0.1〜0.6N・mにすることが重要であり、0.1N・m以下だと用毛の流動開始時にその降伏値を越えることが困難である。また0.6N・m以上だと、用毛に加わる圧力が大きくなり用毛同士が弾性変形を起こし、用毛のスムースな流れを達成することが困難となる。
用毛の取り出し(ピッキング)について述べるならば、一般的には、「スリーブ」と「摺り切り」によるピッキングに分けることができる。摺り切りによる場合、用毛排出部の用毛に加える圧力は高めに設定することが好ましいが、用毛と平行な方向から取り出すスリーブによる場合、用毛排出部の用毛に加える圧力が高いと、用毛束の密度が高くなり過ぎて、スリーブ挿入時の抵抗が大きくピッキング自体ができなかったり、ピッキングはできるが、一定数の用毛の取り出しが達成できなくなる(ピッキングされる用毛数にばらつきが生じる)おそれがある。スリーブによる場合、用毛取り出し用のスリーブ装置が用いられるが、上記の圧力が高いことによる上述の問題点を解消させるには、ピッキング時に歯車の回転を停止させるとか歯車を逆転させることで、用毛排出部における用毛束の密度を下げ、常に一定数の用毛がスリーブに挿入されるようにすることができる。
以上のように、歯車を用いることで、用毛の流れと密度を最適化し、長時間に亘って用毛のピッキングを支障なく行なうことが可能になる。即ち、歯車を用いることにより、用毛のスムースな搬送とピッキングを達成することが可能になる。
ところで、ミス(ピッキング自体できない、或いはピッキングはできるがピッキングされる用毛数が一定しない、等)のないピッキング(正常なピッキング)を行なうためには、歯車のトルクが重要であることが判明した。それは、トルクが低すぎると用毛排出部に適切な圧力を与えることが困難になり、高すぎると用毛に前述の弾性変形が起こり、用毛密度を適切な値に設定することが困難になるためと考えられる。
正常なピッキングが長時間継続できるようにするには、少なくとも2対の歯車のトルクを、前述の如く、いずれも0.1〜0.6N・mの範囲に設定する必要がある。用毛排出側端部に近い一対(2個)の歯車(G1)のピッチ円半径と歯数は同一とし、それらのトルクも同一にした方が好ましい。また、用毛排出側端部から遠い一対(2個)の歯車(G2)に関してもピッチ円半径と歯数は同一とし、それらのトルクも同一にした方が好ましい。更に、G1のトルクはG2のトルクよりも小さく設定し、そのトルク比(G2/G1)は3〜9が好ましい。歯車を回転させる駆動源として、サーボモータを選択することによりそれらのトルクを所望の範囲に設定することができる。歯車のモジュール(ピッチ円半径を歯数で除した値)についていえば、用毛排出側端部に近い一対の歯車のモジュール(Mz1)は、用毛排出側端部から遠い一対の歯車のモジュール(Mz2)よりも小さく設定し、その比(Mz2/Mz1)は1.1〜3.0が好ましい。
歯車は、前述の如く少なくとも2対(4個)設けることが必要であり、対をなす歯車は、搬送ガイドが直線状(即ち、用毛の流れが直進の場合)ならば、互いに搬送経路を挟んで対向する位置に配するのが良い。搬送ガイドが湾曲している場合は、対をなす歯車を搬送経路を挟んで互い違いに配することもある。また、G1とG2の間隔が大きくなった場合は、用毛の密度を調整するために、これらの間に補助的な一対又はそれ以上の複数対の歯車(G3)を対向或いは互い違いに配することもできる。用毛搬送装置における用毛の搬送経路の長さLにより、G1とG2の間隔が大きいか否かが決まるので、その間隔がどの程度に大きくなったときにG3を設けたら良いかは一概には言えないが、G3を設けることを考慮する間隔としては100mm以上(歯車G1とG2の歯の頂点間の最小距離として)を挙げることができる。更に、歯車による用毛の搬送とピッキング地点(用毛排出部)での歯車による適切な用毛密度の実現を考慮すると、用毛排出側端部に近い位置に配される一対の歯車G1と、用毛排出側端部から遠い位置に配される一対の歯車G2の設置場所としては、前記の搬送経路の長さLのL/2の更に1/2、即ちL/4の地点よりも用毛排出側端部に近い場所に一対の歯車G1を設け、L/2とL/4との間に他の一対の歯車G2を設けることが好ましい(図5)。用毛のピッキング時に歯車の停止や逆転を行なう方が、正常なピッキングをより長時間継続することができる場合があり、歯車の正転と逆転ができるように設定するのが好ましい。
用毛を用毛供給側端部に供給する手段に特に制限はない。用毛供給側端部に用毛を、例えばグリッパや人手によって束にして載置すれば良い。その後、プッシャで用毛を押して用毛を搬送する。プッシャに換えて用毛供給排出側端部付近に設けた歯車を回転させて用毛を搬送する方法もある。
用毛搬送装置では、搬送される用毛と接触する部分(搬送ガイドや歯車)をフッ素系の素材(例えば、商品名:テフロン(登録商標)等)で形成するか、フッ素系の素材をコーティングするのが好ましい。これにより、用毛と上記の部分との摩擦力が低減し、用毛をより円滑に搬送できる。
用毛搬送装置では、搬送中の用毛の乱れを矯正し用毛を整列させる、特に垂直方向に飛び出した用毛を整列させる用毛整列機構を設けるのが好ましい。
用毛は、歯車による移動の際に、搬送ガイドが存在しない搬送経路の上方向に飛び出そうとする傾向がある。そこで、かかる飛び出しを矯正する手段として、搬送経路内にある用毛の上端部を上方向から押さえるような用毛整列機構が有効である。具体的には、搬送経路の上面全体を覆う固定プレートを設けることが挙げられるが、かかる固定プレートは、搬送中の用毛の上端部と常に接触し、用毛との間に摩擦力を発生させて用毛の搬送速度を低下させるおそれがある。そこで、固定プレートよりも可動プレートが好ましい。即ち、用毛搬送の殆どの時間帯は、可動プレートは用毛の上端部から上方に離れており、用毛の飛び出しが認められ、それを矯正したいと思われる時間帯のみ、可動プレートが下方に移動して用毛の上端部に当接し、用毛の飛び出しを矯正する。
スリーブによる用毛の取り出し後の用毛(スリーブに収容された用毛ではなく、用毛排出端部付近に残存している用毛の一部)は、スリーブ先端の壁面で下方に押されることにより、その下部に折れ曲りが生じ、用毛の姿勢が不安定になることもある。スリーブによる用毛の取り出し直後に、用毛排出側端部付近で搬送経路の下面を構成する可動プレートを若干下方に移動させ、続いて元に戻すように上方に移動させると、用毛の下部折れ曲りが矯正され易くなるので、かかる動作の用毛整列機構を設けても良い。
用毛搬送装置10は、図1〜図3に示す如く、架台11の金属板からなる基板12上に、左右で対をなす金属板からなる搬送ガイド13、13(上下の搬送ガイド13A、13B(図2、図3))を設け、左右の搬送ガイド13、13の間に用毛搬送通路14を形成している。基板12の上面と上搬送ガイド13Aの上面とがなす長さを用毛1の長さに設定する。
用毛搬送装置10は、搬送通路14の用毛供給側端部にプッシャ15を設け、搬送通路14の用毛排出側端部に用毛排出部16を設ける。例えば直径約0.2mmの真直状用毛1を束にして手動で用毛供給側端部に投入し、シリンダ装置15Aにより押動されるプッシャ15により用毛1を押圧し、用毛1を基板12上で左右の搬送ガイド13、13に沿って搬送し、用毛排出部16に到達した用毛1をスリーブ装置17により取り出しピッキングし、用毛1を用毛加工機に供給可能にする。
用毛搬送装置10は、スリーブ装置17として、図6に示す如く、不図示のサーボモータにより上下動するスリーブ17Aを用いる。スリーブ17Aは用毛排出部16に存在する用毛1の集合体に上方から差し込まれてそれらの用毛1を収容する。スリーブ17Aに収容した用毛1は押出しピン18により押出される。
用毛搬送装置10は、左右の搬送ガイド13、13が形成する搬送通路14を、用毛供給側端部から用毛排出側端部に向けて幅狭にし、用毛排出部16に到達する用毛1の用毛密度を適度に高める。
用毛搬送装置10は、左右の搬送ガイド13、13が形成する搬送通路14内に、基板12上にて直立する用毛1と平行方向の溝を備えた回転歯車G1、G2を突出する。搬送ガイド13に沿って用毛排出側端部に近い位置Aに、搬送通路14を挟んで対向する一対の歯車G1を設け、用毛排出側端部から遠い位置Bに、搬送通路14を挟んで対向する他の一対の歯車G2を設ける。歯車G1の位置Aは、搬送ガイド13(長さL)に沿って用毛排出部16と該用毛排出部16からL/4の地点との間に設置される。歯車G2の位置Bは、用毛排出部16からL/4の地点と該用毛排出部16からL/2との地点との間に設置される(図5)。歯車G1、G2は、図2、図3に示す如く、上下の搬送ガイド13A、13Bの間の空隙部に配置され、それらの周方向の一部の歯面を搬送通路14内に突出する。
用毛搬送装置10は、歯車G1、G2のそれぞれを駆動するサーボモータ21、22を有し、歯車G1、G2の回転によって用毛1を用毛排出側端部に向けて搬送する。このとき、歯車G1、G2のトルクを、それらのサーボモータの制御により、0.1〜0.6N・mの範囲内に設定する。歯車G1のトルクを歯車G2のトルクより小さく設定し、そのトルク比(G2/G1)を3〜9の範囲内に設定する。歯車G1を構成する2個の歯車のトルクは同一とし、歯車G2を構成する2個の歯車のトルクも同一とする。
用毛搬送装置10は、歯車G1、G2のピッチ円半径を、それらが設置される地点における搬送ガイド13、13の幅によって適宜変更する。幅が大きくなれば、ピッチ円半径も大きくする。このとき、歯車G1のピッチ円半径を歯車G2のピッチ円半径よりも小さくし、そのモジュール比(Mz2/Mz1)を1.1〜3.0の範囲内に設定する。歯車G1を構成する2個の歯車のピッチ円半径とモジュールは同一とし、歯車G2を構成する2個の歯車のピッチ円半径とモジュールも同一とする。
用毛搬送装置10は、歯車G1、G2を正逆転可能にする。スリーブ装置17のスリーブ17Aを用毛排出部16の用毛1に差し込むときには歯車G1、G2の回転を停止し、用毛1を収容したスリーブ17Aが上方に移動開始するタイミングで、歯車G1、G2の正転と逆転を0.1秒程度のインターバルで数回くり返し、歯車G1、G2の逆転側でスリーブ17Aによるピッキング終了となるようにする。
用毛搬送装置10は、図4に示す如く、搬送ガイド13の概ね全長に渡り、上用毛整列機構を構成する上可動プレート31を有する。上可動プレート31は、シリンダ装置31Aにより、上搬送ガイド13Aに対する上方待機位置と上搬送ガイド13Aの上面に接する位置との間で上下動する。上可動プレート31はスリーブ装置17が用毛排出部16の用毛1をピッキング終了した直後に、待機位置から下降し、用毛1の上端部を上から押さえてその飛び出しを矯正する。
用毛搬送装置10は、図4に示す如く、基板12のうち、用毛排出部16に位置する部分を、下用毛整列機構になる下可動プレート32とする。下可動プレート32は、シリンダ装置32Aにより、基板12の通常の用毛搬送レベルとその下方位置との間で上下動する。下可動プレート32は用毛排出部16の用毛を収容したスリーブ装置17が上方に移動開始するタイミングで若干下降し、直後に元に戻るように上方移動し、用毛1の下部折れ曲がりを矯正する。
用毛搬送装置10において、基板12、搬送ガイド13(13A、13B)、歯車G1、G2の表面は、テフロン(登録商標)コーティングされる。
以下、用毛搬送装置10により直径約0.2mmの真直状用毛1を搬送し、スリーブ装置17によりピッキングした具体例について説明する。歯車G1のピッチ円半径を25.5mm、歯車G2のピッチ円半径を44.0mm、歯車G1のトルクを0.1N・m、歯車G2のトルクを0.6N・m、歯車G1と歯車G2のモジュール比(Mz2/Mz1)を1.3に設定して用毛1を搬送しピッキングを行なったところ、連続3時間以上の稼動で用毛のスムースな搬送と正常なピッキングを継続することができた。これに対し、歯車G1のトルクを0.05N・mに変更した場合、及び0.8N・mに変更した場合(トルク以外の条件の変更はない)、約5分の稼動で用毛1の正常なピッキングができなくなった。
図1は用毛搬送装置を示す正面図である。 図2は図1の側面図である。 図3は図1のIII−III線に沿う矢視図である。 図4は用毛整列機構を示す側面図である。 図5は搬送ガイドと搬送通路を示す平面図である。 図6はスリーブ装置を示す模式図である。
符号の説明
1 用毛
10 用毛搬送装置
13 搬送ガイド
14 搬送通路
16 用毛排出部
31、32 可動プレート(用毛整列機構)
G1、G2 回転歯車

Claims (4)

  1. 用毛供給側端部から供給される用毛を、搬送ガイドに沿って用毛排出側端部に搬送する用毛搬送装置であって、
    上記搬送ガイドによって形成される搬送通路内に上記用毛と平行方向の溝をそなえた回転歯車を突出し、該回転歯車は該搬送通路の用毛排出側に少なくとも2対設けられ、該回転歯車のトルクを0.1〜0.6N・mに設定可能にし
    前記用毛排出側端部に近い方に設けられる一対の回転歯車のトルクが、用毛排出側端部から遠い方に設けられる一対の回転歯車のトルクよりも小さく設定される用毛搬送装置。
  2. 用毛供給側端部から供給される用毛を、搬送ガイドに沿って用毛排出側端部に搬送する用毛搬送装置であって、
    上記搬送ガイドによって形成される搬送通路内に上記用毛と平行方向の溝をそなえた回転歯車を突出し、該回転歯車は該搬送通路の用毛排出側に少なくとも2対設けられ、該回転歯車のトルクを0.1〜0.6N・mに設定可能にし、
    前記用毛排出側端部に近い方に設けられる一対の回転歯車のモジュール(Mz1)と用毛排出側端部から遠い方に設けられる一対の回転歯車のモジュール(Mz2)の比が、Mz2/Mz1=1.1〜3.0である用毛搬送装置。
  3. 前記回転歯車の正転と逆転が可能なように設定された請求項1又は2に記載の用毛搬送装置。
  4. 前記搬送ガイドと回転歯車が、フッ素系の素材から構成され、又はフッ素系の素材がその表面にコーティングされており、用毛の搬送方向に対して垂直方向に用毛を整列させる用毛整列機構が設けられる請求項1〜のいずれかに記載の用毛搬送装置。
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