JP4748170B2 - 圧電単結晶材料及び該圧電単結晶材料を用いた圧電デバイス - Google Patents

圧電単結晶材料及び該圧電単結晶材料を用いた圧電デバイス Download PDF

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Description

本発明は新規な圧電単結晶材料及びこの圧電単結晶材料を用いた圧電デバイスに関する。
空間群P321に属しCaGaGe14構造を持つ圧電単結晶材料は、水晶と比較して大きな圧電特性を有しかつ水晶に近い圧電温度特性を有するため、近年、注目をあびている。
従ってこの種の単結晶材料の圧電に関する材料定数について多くの報告例があり、また、その材料定数を用いた計算機シミュレーションにより表面弾性波圧電デバイスの最適基板方位と波の伝播方向とに関する報告もなされている。最適基板方位としては、弾性波の温度変化に対する位相速度変動が圧電デバイスの要求を満たし、かつその内で最も電気機械結合係数が大きい方位が一般に選択される。このため、現在までに報告されている単結晶組成における最適基板方位及び伝播方向は電気機械結合係数が最も大きい方位とは異なっている。
近年のデジタル化の流れから、さらに電気機械結合係数の高い基板材料に対する要求が大きく、新しい組成に対する研究が行われてきている。しかしながら、これらの新しい組成に関する研究は「単結晶化が可能な」組成の探索から始まっており、デバイスにとって最も留意すべき圧電・材料定数の温度特性が探索の段階から考慮されていなかった。
表面弾性波圧電素子に関する最適カットについて、報告されているLaGaSiO14(LGS)、LaTa0.5Ga5.514(LTG)、LaNb0.5Ga5.514(LNG)という組成の圧電単結晶材料は、いずれも、最大の電気機械結合係数を示す結晶方位、伝播方向で弾性波の位相速度の温度係数一次項が正となることが分かっている。
本出願人は、このようなCaGaGe14構造を持つ圧電単結晶材料においては主にAサイトを調整することによって電気機械結合係数を高くできることを見出し、SrTaGaSi14(STGS)なる圧電単結晶材料を提案している(特許文献1)。しかしながら、この圧電単結晶材料STGSは、電気機械結合係数は高くなるものの、最大の電気機械結合係数を示す結晶方位、伝播方向で弾性波の位相速度の温度係数一次項が負となってしまうことが分かった。
本出願人は、さらに、CaGaGe14構造を持ち、電気機械結合係数を高くすることができる、La3−xSrTa0.5+0.5xGa5.5−0.5x14(LSTG)(0<x≦0.15)なる組成の圧電単結晶材料を提案している(特許文献2)。この圧電単結晶材料LSTGについて、X板Y方向伸び振動の共振周波数の温度依存性を測定したところ、図1に示したように元素置換前のLaTa0.5Ga5.514と比較して温度係数一次項が0に近づくことが確認された。この結果から、酸素8配位の陽イオンサイト置換元素をSr2+からLa3+に変えることで、弾性波の位相速度温度係数の一次項を負から正に変化させることができると推測される。
特開平11−171696公報 特開2000−349587号公報 H.Takeda等の論文(Journal of ALLOYSAND C0MPOUNDS 290(1999)79−84)
しかしながら、電気機械結合係数の高い結晶方位、伝播方向における弾性波の位相速度温度係数の一次項を0にするためには、この特許文献2で示される組成よりもSr置換量を増加させる必要があり、そのような融液組成からCaGaGe14構造の固相が得られないことは、非特許文献1で報告されている。
従って本発明の目的は、デバイスとして望ましい方位における圧電特性の温度依存性を改善した圧電単結晶材料及びこの圧電単結晶材料を用いた圧電デバイスを提供することにある。
本発明によれば、CaGaGe14構造を有しており、主要成分がLa、Sr、Ta、Ga及びSiよりなり、組成式La3−xSrTaGa6−y-zSi14で表され、この組成式のx、y、zが、(x=0、y=0.35、z=0.3)、(x=0.2、y=0.4、z=0.4)、(x=0.8、y=0.5、z=0.8)、(x=1.2、y=0.5、z=1.2)、(x=1.0、y=0.3、z=1.4)、(x=0.6、y=0.1、z=1.4)、(x=0.2、y=0、z=1.2)、(x=0、y=0.15、z=0.7)、(x=0、y=0.35、z=0.3)を順次結ぶことで得られる組成範囲にある圧電単結晶材料及びこの圧電単結晶材料を用いた圧電デバイスが提供される。
本願発明者等は、特許文献2に提示されているLa、SrO、Ta、Gaの4成分系に対してSiOを加えた5成分系について結晶化の検討を行い、Sr置換量をより増大することができる組成範囲を探索し、最大でSr添加量が1.2まで配位させられる組成範囲を得たのである。これにより、電気機械結合係数を高くすることはもちろんのこと、その結晶方位、伝播方向における弾性波の位相速度温度係数を改善することができる。
本発明によれば、La、SrO、Ta、Ga、SiOの5成分系について、所定の組成範囲でLa3−xSrTaGa6−y−zSi14単結晶を育成することにより、目的とする圧電デバイスのモードに最適な、温度特性の向上した基板材料が得られる。即ち、電気機械結合係数を高くすることはもちろんのこと、その結晶方位、伝播方向における弾性波の位相速度温度係数を改善することができる。
CaGaGe14構造を有するLa、SrO、Ta、Ga、SiOの5成分系について結晶化の検討を行う。
CaGaGe14構造は酸素8配位のAサイト、6配位のBサイト、4配位で大きさの異なるC及びDサイトの4つのサイトからなる。このうちLa−SrO−Ta−Ga−SiO系においてAサイト(3つ)をLaとSr、Bサイト(1つ)をTaとGa、Dサイト(2つ)をSiとGaが部分置換しており、Cサイト(3つ)はGaが単独置換する。つまり、Ga以外の元素は、A、B及びDサイトの内の1つのサイトだけを置換するため、各サイトの平均電荷、イオン半径を独立して調整することが可能となる。また、CaGaGe14構造は酸素14であるため、陽イオンの電荷合計が+28となる必要がある。そのため、AサイトのSr配位数をx、BサイトのTa配位数をy、DサイトのSi配位数をzとすると、組成式は、La3−xSrTaGa6−y−zSi14で表され、その電荷式から以下の式
−x+2y+z=1 (0<x<3、0<y<1、0<z<2)
が満たされなくてはならない。
この関係式を用いると、電荷バランスの取れたLa−SrO−Ta−Ga−SiO系について通常の3成分系と同様な3角図が、図2のように作成できる。ただし、同図において、Ta配位数y及びSi配位数zは、通常とは逆方向に数値が付されている。
このようにして得られた組成範囲について、単結晶化が可能となる組成を実際に探索する。
組成探索の方法としては、μ−PD(マイクロプリングダウン)法を用いる。この方法は、図3に示すように、2つの管状炉1の間に設置したPt又はPt−Rh合金製のルツボ2内に原料粉を挿入し、このルツボ2に接続された図示されてない直流電源から電流を流すことによりそのジュール熱でルツボ2を加熱し、内部の原料粉を融解して融液3を作成する。
次いで、この融液3に棒状の種子結晶4を接触させ、アフターヒーター5により適当な温度勾配とした雰囲気下で引き下げ軸6を下げることにより、ファイバー状の単結晶7を育成するものである。
この手法で単結晶化できた組成は基本的に融液凝固による単結晶化の手法、即ち、Cz法、FZ法、ブリッジマン法といった商業的に有用な方法で単結晶化が可能である。従って、このμ−PD法は、組成探索の手法として有用である。
得られた単結晶については実体顕微鏡等による観察及び粉末X線回折による相の同定を行い、結晶性の確認を行う。
以上の方法に従って、La3−xSrTaGa6−y−zSi14組成のx、y、zを変えて融液からCaGaGe14構造の固相が単相で析出するかどうかの判別を行った。その結果が図4に示されている。
同図において、●はファイバーが育成開始から終了までランガサイト相単相となった場合であり、○は育成の後期に異相が現れた場合であり、×は育成初期相から異相が現れた場合である。○の場合については固化率が小さい領域では単結晶化が可能である。従って、La3−xSrTaGa6−y−zSi14組成において単結晶化が可能な組成域は、図4において、○及び●で示される領域、即ち0<x≦1.2、0<y≦0.5、0<z≦1.4であることが判明した。
以上のようにして得られた組成のうち、後述する実施例1としてLaSrTa0.5Ga4.5SiO14、実施例2としてLa2.8Sr0.2Ta0.4Ga5.2Si0.414組成の結晶育成を行い、X板Y方向伸び振動モードにおける共振周波数の温度変化を測定した。その測定結果が、図5に示されている。同図には比較として、LaGaSiO14(LGS)、LaTa0.5Ga5.514(LTG)、SrTaGaSi14(STGS)及び特開2000−349587号公報に開示されているものと同一組成のLa2.925Sr0.075Ta0.5375Ga5.462514(LSTG)の測定結果も示されている。
同図より、特に実施例1の組成では、Sr量の増加により温度の上昇に伴って共振周波数が低下する傾向が見られる。
また、Y板X方向厚みずれ振動モードにおける共振周波数の温度変化を測定した。その測定結果が、図6に示されている。同図には、図5の場合と同様に既存のランガサイト結晶との比較もなされている。図5と比較して共振周波数の温度に対する2次係数が大きくなったために、特性が放物線状となっている。今回の検討で得られた実施例2のLa2.8Sr0.2Ta0.4Ga5.2Si0.414については、極大値が約50℃と室温近くにあり、その共振周波数の−20℃から80℃における最大変化量が330ppmまで減少した。このように、Sr量を調整した組成の単結晶を育成することで、基本的な振動モードの共振周波数温度特性を大きく変化させられることが確認された。このことは、組成パラメータであるx、y、zを調整することで材料定数の温度特性を大きく変化させられることを意味している。実際にモノリシックフィルタとしては厚みずれのモードが使われているが、La2.8Sr0.2Ta0.4Ga5.2Si0.414組成についてはYカットで、図6のように良好な温度特性が得られる。またさらに、Sr量を増加させることで共振周波数の温度に対する極大値を30℃程度に合わせ込むことで、より良好な温度特性が得られる。さらに、圧電デバイスの必要とするウエハカットが結晶面に平行の場合、方位精度を容易に0.1°以下に合わせられるため、工程の簡略化、デバイスばらつきの低減が実現できる。また、この圧電単結晶材料を用いた表面弾性波デバイスに関しても組成を調整することで、結合係数の最も大きなカットにおける温度特性を向上させることにより高帯域化が実現できる。
図7は、本実施例で用いた単結晶の製造装置の一例を示している。
同図に示すように、ルツボ10が断熱材11の中心に設置されており、ルツボ10の上部には耐火物ハウジング12を配置されている。この耐火物ハウジング12の頂部壁には中心に開口部12aが設けられており、下端に種子結晶13を取り付けた引き上げ軸14が図示しない動力源から垂直に延びてこの開口部12aを貫通している。断熱材11及び耐火物ハウジング12の周りには、頂部壁に結晶引き上げ軸14が貫通する開口部15aを有する耐火物円筒15が配置されている。耐火物ハウジング12の外側には高周波誘導コイル16が巻かれており、高周波電流を流すことでルツボ10を誘導加熱し、結晶材料の融液17を所定温度に維持する。
この実施例1では、高周波発振器として、周波数70kHzのものを用いた。図7に示す製造装置において、直径が50mm、高さが50mm、厚さが1.5mmのIr製のルツボ10に、LaSrTa0.5Ga4.5SiO14を約350g挿入した。育成は、Nに1vol%のOを混入した雰囲気で、種子結晶13として[001]方位のLaSrTa0.5Ga4.5SiO14単結晶を用い、0.5mm/hの速度で引き上げた。その結果、図8の写真に示すような、直径20mmφ、長さ110mmの透明なLaSrTa0.5Ga4.5SiO14単結晶18が得られた。なお、本実施例における組成式のx、y、zは、x=1.0、y=0.5、z=1.0である。
得られた結晶からX板の厚みY伸び振動共振子とY板の厚みXずれ振動共振子とを作成して−20℃から+80℃の範囲で共振周波数を求めたところ、温度に対する共振周波数の変化は、それぞれ1815ppm、732ppmとなった。
高周波発振器として、周波数70kHzのものを用いた。図7に示す製造装置において、直径が50mm、高さが50mm、厚さが1.5mmのIr製のルツボ10に、La2.8Sr0.2Ta0.4Ga5.2Si0.414を約370g挿入した。育成は、Nに1vol%のOを混入した雰囲気で、種子結晶13として[001]方位のLaTa0.5Ga5.514単結晶を用い、0.5mm/hの速度で引き上げた。その結果、図9の写真に示すような、直径20mmφ、長さ100mmの透明なLa2.8Sr0.2Ta0.4Ga5.2Si0.414単結晶18が得られた。なお、本実施例における組成式のx、y、zは、x=0.2、y=0.4、z=0.4である。
得られた結晶からX板の厚みY伸び振動共振子とY板の厚みXずれ振動共振子とを作成して−20℃から+80℃の範囲で共振周波数を求めたところ、温度に対する共振周波数の変化はそれぞれ732ppm、332ppmとなった。
高周波発振器として、周波数70kHzのものを用いた。図7に示す製造装置において、直径が50mm、高さが50mm、厚さが1.5mmのPt製のルツボ10に、La2.4Sr0.6Ta0.4Ga4.8Si0.814を約360g挿入した。育成は、Nに1vol%のOを混入した雰囲気で、種子結晶13として[001]方位のLa2.4Sr0.6Ta0.4Ga4.8Si0.814単結晶を用い、0.3mm/hの速度で引き上げた。その結果、図10の写真に示すような、直径20mmφ、長さ68mmの透明なLa2.4Sr0.3Ta0.4Ga4.8Si0.814単結晶18が得られた。なお、本実施例における組成式のx、y、zは、x=0.6、y=0.4、z=0.8である。
以上述べた実施形態及び実施例は全て本発明を例示的に示すものであって限定的に示すものではなく、本発明は他の種々の変形態様及び変更態様で実施することができる。従って本発明の範囲は特許請求の範囲及びその均等範囲によってのみ規定されるものである。
従来材料のX板Y方向伸び振動における共振周波数の対温度変化を示す図である。 本発明における組成の3角図である。 μ−PD法によるファイバー結晶育成を説明するための図である。 本発明において得られた単結晶化可能な組成範囲を示す図である。 本発明の実施例で得られた単結晶の伸び振動モードの共振周波数の温度変化を表す図である。 本発明の実施例で得られた単結晶の厚みすべりモードの共振周波数の温度変化を表す図である。 本発明の実施例で用いた単結晶製造装置を説明するための図である。 実施例1におけるLaSrTa0.5Ga4.5SiO14単結晶の育成例を示す写真である。 実施例2におけるLa2.8Sr0.2Ta0.4Ga5.2Si0.414単結晶の育成例を示す写真である。 実施例3におけるLa2.4Sr0.6Ta0.4Ga4.8Si0.814単結晶の育成例を示す写真である。
符号の説明
1 管状炉
2、10 ルツボ
3、17 融液
4、13 種子結晶
5 アフターヒーター
6 引き下げ軸
7、18 単結晶
11 断熱材
12 耐火物ハウジング
14 引き上げ軸
15 耐火物円筒
16 高周波誘導コイル

Claims (5)

  1. CaGaGe14構造を有しており、主要成分がLa、Sr、Ta、Ga及びSiよりなり、組成式La3−xSrTaGa6−y-zSi14で表され、前記組成式のx、y、zが、(x=0、y=0.35、z=0.3)、(x=0.2、y=0.4、z=0.4)、(x=0.8、y=0.5、z=0.8)、(x=1.2、y=0.5、z=1.2)、(x=1.0、y=0.3、z=1.4)、(x=0.6、y=0.1、z=1.4)、(x=0.2、y=0、z=1.2)、(x=0、y=0.15、z=0.7)、(x=0、y=0.35、z=0.3)を順次結ぶことで得られる組成範囲にあることを特徴とする圧電単結晶材料。
  2. 前記組成式のx、y、zが、x=0.2、y=0.4、z=0.4であることを特徴とする請求項1に記載の圧電単結晶材料。
  3. 前記組成式のx、y、zが、x=1、y=0.5、z=1であることを特徴とする請求項1に記載の圧電単結晶材料。
  4. 前記組成式のx、y、zが、x=0.6、y=0.4、z=0.8であることを特徴とする請求項1に記載の圧電単結晶材料。
  5. 請求項1から4のいずれか1項に記載の圧電単結晶材料を用いたことを特徴とする圧電デバイス。
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