従来技術では、上記変化推移するpH値が、例えばオイルの全塩基価が零となるpHの規定値に到達するのを検知することで、オイルの交換時期を知ることが可能である。しかしながら、このようなオイル劣化の判定方法では、その交換時期がpH値に依存するため、正確なオイルの寿命を判定できないおそれがあるのに加え、エンジンの運転状態を考慮してエンジン摩耗を抑える狙いで寿命判定できないという問題がある。
即ち、発明者らは鋭意研究の結果、以下の事項の事項を見出した。エンジン運転の累積時間とオイルのpH値の関係は、図4(a)のように、概ねエンジン運転累積時間が増加するに従って、新油状態のオイルが酸化され、pH値が小さくなるという特性がある。しかし、ほぼ同じエンジン運転累積時間(図4(a)中のP状態)でありながら、エンジン始動直後は、図4(b)のように、pHが一時的に更に小さくなり、エンジンの腐食摩耗が促進されるおそれがあることを見出した。
エンジン始動直後にpHが一時的に小さくなるのは、始動直後はオイルの温度が低く、オイル中の水分が多いため、オイル中に発生する酸(硫酸、硝酸、有機酸など)の水素イオン(H+)が増えてpHが小さくなるからであると、発明者らは考えている。また、始動後、エンジン運転時間の経過に従って、オイルの温度が上昇し、オイル中の水分が少なくなるので、pHが次第に大きくなり上記P状態で安定するのである。
本発明は、このような事情を考慮してなされたものであり、その目的は、エンジン摩耗を抑える狙いでオイルの寿命判定が行なえるエンジンオイルの劣化判定方法およびその劣化判定装置を提供することにある。
本発明は、上記目的を達成するために以下の技術的手段を備える。
即ち、請求項1乃至6、及び8に記載の発明では、オイルの酸性、塩基性度に係わるpH値を検出するpHセンサを用いて、車両においてエンジンを潤滑するエンジンオイルのpH値を測定するとともに、予めpH値とエンジンの摩耗度合の関係を設定し、
当該関係より測定したpH値に対応する摩耗度合を算出し、摩耗度合とそのpH値が出現するエンジン運転時間とに基づいてエンジン摩耗量を決定し、決定されたエンジン摩耗量に基づいてエンジンオイルの劣化を判定することを特徴とする。
このように請求項1乃至6、及び8に記載の発明のエンジンオイルの劣化判定方法では、予めpH値測定対象のエンジンオイルにおいて予めpH値とエンジンの摩耗度合の関係を設定するので、例えばpH値とそのpH値に応じた摩耗進行速度などの摩耗度合の関係を示す特性曲線または特性マップが得られる。それ故に、この関係によって例えば始動時等の一時的にpHが低下するエンジン運転状態においても、測定したpH値に応じた摩耗度合を正確に算出することができる。また、pH値測定ごとに、そのpH値が出現するエンジン運転時間が測定されるので、pH値に応じたエンジンの摩耗度合およびエンジン運転時間に基づいて測定を実施した現時点までのエンジン摩耗量を推定することができる。
かかる発明では、算出した摩耗度合とそのpH値が出現するエンジン運転時間とに基づいてエンジン摩耗量を決定し、当該エンジン摩耗量に基づいてエンジンオイルの劣化を判定するので、エンジン摩耗を抑える狙いでオイルの寿命判定を行うことができる。
また、請求項2に記載の発明では、測定されたpH値が、前記関係においてエンジンオイルの劣化によりエンジン摩耗が生じるおそれのあるpH領域内に達した以降は、エンジンオイルのpH値を測定するとともに、エンジン運転期間においてエンジンオイルの劣化を繰り返し判定することが好ましい。
従来技術の如き例えば数回/日のpH測定の間隔では、エンジン運転の累積時間とオイルのpH値の関係が概ねエンジン運転累積時間が増加するに従って小さくなるため、オイル劣化(オイル寿命)の指標となるpH規定値に到達するオイル寿命時間が、数百時間程度の比較的長い時間を要した。しかしながら、発明者らが鋭意研究の結果より得た知見では、上記オイル寿命時間に達しなくとも、エンジン始動直後はpH値が一時的に更に小さくなることから、エンジンの腐食摩耗が促進される可能性がある。例えばエンジンのアイドルスットップ制御を行う車両や、エンジンと電動モータを駆動源とするハイブリッド車両などの車両では、エンジンの始動と停止が比較的高い頻度で繰り返えされる場合がある。
これに対して請求項2に記載の発明では、測定されたpH値が、前記関係においてエンジンオイルの劣化によりエンジン摩耗が生じるおそれのあるpH領域内に達した以降は、エンジン運転期間においてエンジンオイルの劣化を繰り返し判定するので、エンジン始動直後のエンジン摩耗が促進される状態にある場合においても、エンジン摩耗を抑える狙いでオイルの寿命判定を正確に行うことができる。
また、請求項3に記載の発明では、少なくともエンジンの始動直後にエンジンオイルのpH値を測定し、そのpH値が前記pH領域内にあるか否かを判定することが好ましい。
かかる発明では、エンジン運転期間において、始動直後のpH値が一時的に小さくなる状態を確実に捉えることができるので、エンジンオイルの劣化によりエンジン摩耗が生じるおそれのあるpH領域内に達したか否かを正確に判定することができる。
また、請求項4乃至5に記載の発明では、測定されたpH値が前記pH領域内にあること、およびエンジンオイルが所定の温度以下であることを満足することを条件として、エンジン運転期間のうち、前記条件を満足する条件成立期間において、エンジンオイルの劣化を繰り返し判定することが好ましい。
ここで、始動後においては、エンジンオイルの温度上昇に従ってpHが次第に大きくなるが、上記pH領域内に達した以降のエンジン運転期間においてエンジンオイルの劣化を繰り返し判定する方法では、そのpH値が前記pH領域外即ち摩耗が促進されないpH領域にあるときにおいても、エンジンオイルの劣化を繰り返し判定するおそれがある。
これに対して請求項4乃至5に記載の発明では、エンジン運転期間のうち、前記条件を満足する条件成立期間において、エンジンオイルの劣化を繰り返し判定するので、エンジン運転期間のうち、始動直後のpH値が前記pH領域にある期間を確実に捉えることができる。さらに、当該捉えられた始動直後の期間に限定してエンジンオイルの劣化の判定を繰り返すことで、エンジン摩耗を抑える狙いでオイルの寿命判定を効率的に行うことができる。
特に、上記所定の温度は、請求項5に記載の発明の如く、ブローバイガスに含まれる水分が結露する温度であることを特徴とする。
かかる発明では、始動直後においてエンジンオイルのpHが一時的に小さくなる要因の、エンジンオイル中の水分が結露により高められている状態を、効果的に捉えることができる。
請求項1乃至5に記載の発明のエンジンオイルの劣化判定方法では、エンジンオイルのpH値とエンジン摩耗度合の関係と、始動直後においてオイルの温度の変化に伴いpHも変化するという知見に基づいて、エンジン摩耗への影響を表すエンジン摩耗情報として摩耗量を直接的に推定し、摩耗量に基づいてエンジンオイルの劣化を判定したが、請求項6に記載の発明の如く、エンジン摩耗情報に係わる前記条件成立期間における累積エンジン運転時間に基づいてエンジンオイルの劣化を判定することによっても、エンジン摩耗を抑える狙いでオイルの寿命判定を行うことができる。
即ち、請求項6に記載の発明では、前記条件成立期間において、エンジン運転時間を積算し、当該積算したエンジン運転時間が所定のエンジン運転時間に達することを第2条件として、第2条件を満足すると、エンジンオイルの劣化を判定するためのエンジン摩耗量に達したと判断することを特徴とする。かかる発明では、オイルの寿命判定のためのエンジン摩耗情報を、摩耗度合とエンジン運転時間の組合せから導かれる摩耗量に代えて、エンジン運転時間とするので、エンジン摩耗を抑える狙いでオイルの寿命判定を比較的簡素な演算処理で行うことができる。
また、請求項8に記載の発明では、エンジンオイルの全塩基価が零となるpH値は、前記pH領域内にあることを特徴とする。かかる発明では、従来技術の如きオイル劣化(オイル寿命)の指標となるpH規定値を、エンジンオイルの全塩基価が零となるpH値に設定し、当該pH規定値に到達したか否かでオイル寿命を判定する方法に比べて、pH規定値に到達、未到達に関係なく、pH規定値に到達する過程のエンジン摩耗情報に基づいてオイル寿命を正確に判定することができる。
また、請求項7乃至8に記載の発明では、オイルの酸性、塩基性度に係わるpH値を検出するpHセンサを用いて、車両においてエンジンを潤滑するエンジンオイルのpH値を測定するとともに、予めpH値とエンジンの摩耗度合の関係を設定し、
測定されたpH値が、前記関係においてエンジンオイルの劣化によりエンジン摩耗が生じるおそれのあるpH領域内に達したこと、およびエンジンオイルが所定の温度以下であることを満足することを条件として、
前記条件を満足する期間において当該期間に対応するエンジン運転時間を積算し、当該積算したエンジン運転時間に基づいてエンジンオイルの劣化を判定することを特徴とする。
このように請求項7乃至8に記載の発明のエンジンオイルの劣化判定方法では、エンジンオイルのpH値とエンジン摩耗度合の関係と、始動直後においてオイルの温度の変化に伴いpHも変化するという知見に基づいて、エンジン摩耗への影響を表すエンジン摩耗情報として、当該エンジン摩耗情報に係わる前記条件成立期間における累積エンジン運転時間を算出し、累積エンジン運転時間に基づいてエンジンオイルの劣化を判定するので、エンジン摩耗を抑える狙いでオイルの寿命判定を行うことができる。
また、請求項9、12に記載の発明では、車両のエンジンを潤滑するオイルの酸性、塩基性度に係わるpH値を検出するpH検出手段と、pH検出手段で検出したpH値に基づいてエンジン摩耗度合を予測する摩耗度合予測手段と、摩耗度合予測手段によりエンジン摩耗が進行おそれのある摩耗上限pH値を検出すると、摩耗上限pH値以下でエンジンが運転される間においては、検出したpH値に応じたエンジン摩耗度合を積算し、エンジン摩耗量を推定する摩耗量推定手段と、エンジン摩耗量に基づいてオイル劣化を判定する判定手段と、を備えていることを特徴とする。
かかる発明のエンジンオイルの劣化判定装置では、エンジンオイルのpH値とエンジン摩耗度合の関係と、始動直後においてオイルの温度の変化に伴いpHも変化するという知見に基づいて、エンジン摩耗への影響を表すエンジン摩耗情報として摩耗量を推定し、当該摩耗量に基づいてエンジンオイルの劣化を判定するので、エンジン摩耗を抑える狙いでオイルの寿命判定を行うことができる。
また、上記摩耗度合予測手段は、請求項12に記載の発明の如く、pH値とエンジンの摩耗度合の関係を示す特性曲線または特性マップを記憶する記憶手段を備えていることを特徴とする。
かかる発明のエンジンオイルの劣化判定装置では、車両においてエンジンを潤滑するエンジンオイルのpH値と摩耗進行速度などのエンジン摩耗度合の関係を、当該関係を示す特性曲線または特性マップで記憶するので、特性曲線または特性マップに基づいて検出したpH値に応じたエンジン摩耗度合を正確に決定することができる。
また、請求項10乃至12に記載の発明では、車両のエンジンを潤滑するオイルの酸性、塩基性度に係わるpH値を検出するpH検出手段と、pH検出手段で検出したpH値に基づいてエンジン摩耗度合を予測する摩耗度合予測手段と、摩耗度合予測手段によりエンジン摩耗が進行おそれのある摩耗上限pH値を検出すると、当該摩耗上限pH値以下でエンジンが運転される間においては、検出したpH値に応じたエンジン摩耗情報を積算する摩耗情報算出手段と、積算されたエンジン摩耗情報に基づいてオイル劣化を判定する判定手段と、を備えていることを特徴とする。
かかる発明のエンジンオイルの劣化判定装置では、エンジンオイルのpH値とエンジン摩耗度合の関係と、始動直後においてオイルの温度の変化に伴いpHも変化するという知見に基づいて、エンジン摩耗への影響を表すエンジン摩耗情報をpH値の変化に応じて積算し、積算されたエンジン摩耗情報に基づいてオイル劣化を判定するので、エンジン摩耗を抑える狙いでオイルの寿命判定を行うことができる。
また、上記エンジン摩耗情報は、請求項11に記載の発明の如く、検出したpH値の状態で運転されるエンジン運転時間であることを特徴とする。かかる発明では、上記pH値の変化に応じて積算されたエンジン摩耗情報が、摩耗上限pH値以下でエンジンが運転されるエンジン運転時間を積算するだけで決定されるので、エンジン摩耗を抑える狙いでオイルの寿命判定を比較的簡素な演算処理で行うことができる。
以下、本発明のエンジンオイルの劣化判定方法およびその劣化判定装置を、具体化した実施形態を図面に従って説明する。
(第1の実施形態)
図1は、本実施形態のオイル劣化判定装置の一例を示しめしている。以下、このオイル劣化判定装置の概略構成について説明する。
オイル劣化検出装置1は車両のオイルパン2に設置され、オイルパン2内のエンジンオイル4の劣化を検出する。ここで、オイルパン2内のエンジンオイル4は、車両のエンジン(図示しない)の潤滑等に使用されるものである。本実施形態のオイル劣化検出装置1は、具体的には、センサ本体10及び制御部としての処理回路40等から構成されている。
センサ本体10は、ケーシング12、基準電極20及び応答電極30を備えている。ケーシング12のベース部14は、オイルパン2の底部6を液密に貫通する形態で位置固定されており、オイルパン2内において基準電極20及び応答電極30を保持している。ケーシング12のカバー部16は、基準電極20及び応答電極30を内部に収容する形態でベース部14に接合されており、当該内部と外部とを連通させる連通孔18を有している。オイルパン2内のエンジンオイル4は、この連通孔18を通じてカバー部16内へと導入される。
基準電極20及び応答電極30は、互いに間隔をあけて略平行に配置されており、カバー部16内へ導入されたエンジンオイル4に浸漬されている。基準電極20及び応答電極30は、ベース部14のターミナル22、32を介して処理回路40の電位差計42と電気接続されており、それによって互いに導通している。ここで基準電極20の電位は、エンジンオイル4の水素イオン濃度に実質的に応答しない基準電位V0となる。一方、応答電極30の電位は、エンジンオイル4の水素イオン濃度に応答して変化する応答電位Vrとなる。
処理回路40は、pH値算出回路41及び摩耗情報判定回路43等から構成されている。pH値算出回路41は、電位差計42により測定した各電極20、30の電位V0、Vrの差(以下、単に「電位差」と言う)から、エンジンオイル4の水素イオン濃度を表すpH値を算出する。
また、摩耗情報判定回路43は、測定したpH値に応じてエンジン摩耗情報を決定し、このエンジン摩耗情報に基づいてエンジンオイル4の劣化の程度を判定するものである。なお、本発明の特徴である摩耗情報判定回路43の詳細については後述する。
上記判定の結果、例えば劣化の程度が設定基準を超えているような場合には、メータ、ナビゲーション装置等の車両の報知手段(図示しない)50を通じて、劣化の旨が車両の乗員へと報知される。
また、上記処理回路40には、上記基準電極20及び応答電極30の電位差の信号に加えて、エンジンのイグニッションスイッチ(以下、単に「IG」と言う)61のオン(ON)信号や、エンジンオイルの温度(以下、オイル温度)Toilを検出する油温センサ62の信号が入力されており、IG61のオン信号に基づいて車両のエンジンが運転されている状態、およびオイル温度Toilに基づいて特定の運転状態(始動直後の状態)等の各種エンジン情報を取得する。
図3は、エンジンオイルのpH値とエンジン摩耗の関係を示している。また、図4は当該pH値とエンジン運転時間との関係を示しており、図4(a)ではエンジン運転時間をワイドレンジで捉えた場合でのpH値の特性曲線(以下、ワイドレンジの第1pH特性曲線)、図4(b)ではエンジン運転時間を始動直後に限定して捉えた場合でのpH値の特性曲線(以下、ナロレンジの第2pH特性曲線)を示している。以下、上記処理回路40の摩耗情報判定回路43の詳細を説明する。
摩耗情報判定回路43は、摩耗度合算出回路45、エンジン摩耗情報積算回路47、及び判定回路49を有している。
処理回路40の記憶部には、エンジンオイルのpHとエンジンの摩耗度合VAの関係を示す図3の如き特性曲線pHVAが予め記憶されており、摩耗度合算出回路45は、この特性曲線pHVAに基づいてpH値に対応する摩耗度合VAを決定する。図3において、エンジンの摩耗はエンジンシリンダとピストンリングとの摺動部の摩耗であり、摩耗度合VAとは、そのpH値において摩耗が進行する摩耗進行速度(以下、単に「摩耗速度」と言う)である。言い換えると、摩耗量は、pH値に対応する摩耗度合を時間積分する、即ち摩耗速度及びpH出現時間に相当するエンジン運転時間を積算することにより決定される。
図3においては、上記エンジンの摩耗を、エンジンシリンダとピストンリングの摩耗として捉えたが、これに限らず、エンジンオイルで潤滑される摺動部であればいずれの摺動部の摩耗量であってもよい。また、その摩耗度合VAは、当該一つの摺動部での摩耗進行速度や、複数の摺動部の摩耗進行速度の積算値や、複数の摺動部の摩耗進行速度を例えば平均化など統計的処理で求めた代表摩耗進行速度であってもよい。
また、図3においては、エンジン摩耗速度VAが零より大きい領域(以下、第1pH領域)をIとすると、当該領域Iの摩耗上限pH値を、pHc(本実施例では、pH=4)としている。ここで、pHohはエンジンオイルの全塩基価が零となるpH値(本実施例では、pH=3.7)を示しており、上記第1pH領域I内にある。
第1pH領域Iにおいては、エンジン摩耗速度VAはpH値が小さくなるに従って漸増しており、pHohに到達する前にエンジン摩耗が促進される可能性があることを示している。一方、第1pH領域I外である第2pH領域IIでは、エンジン摩耗速度VAが零であるため、エンジンオイルの劣化による影響によりエンジン摩耗が促進されることはない。
また、図4(a)のワイドレンジの第1pH特性曲線と図4(b)のナロレンジの第2pH特性曲線との対比において、エンジンの始動直後にpH値が一時的に低下することで第1pH領域Iに到達する場合があると、エンジン始動の繰り返しによってエンジンの腐食摩耗が促進されることを、発明者らは鋭意検討の結果見出した。
即ち、例えば図4(a)のワイドレンジの第1pH特性曲線においては、図中のPの劣化状態(pH=5)にあるエンジンオイルが、pH=4(摩耗上限pH値に相当)に到達するのに200H程度のエンジン運転時間の経過が必要である。一方、上記Pの劣化状態のエンジンオイルでありながら、図4(b)のナロレンジの第2pH特性曲線では、始動直後においては、一時的にpH=4以下に低下し、エンジンの暖気運転に伴い次第にpH値が大きくなり僅か40min程度のエンジン運転時間の間に上記Pの劣化状態に安定することを示している。
上記エンジンの始動直後にpH値が一時的に小さくなるのは、始動直後はオイル温度Toilが低く、エンジンオイル中の水分が多いため、エンジンオイル中に発生する酸(硫酸、硝酸、有機酸など)の水素イオン(H+)が増えてpHが小さくなるからであると、発明者らは考えている。
上記エンジンシリンダとピストンリングの摺動部を介して燃焼室内の燃焼ガスがオイルパン2側に漏れ出てブローバイガスになることが知られているが、始動時において燃焼室からオイルパン2側へ漏れ出たブローバイガスがエンジンオイルとの境界面に触れると、ブローバイガスに含まれる水分(水蒸気)が結露する可能性がある。このようにエンジンの始動直後ではエンジンオイル中の水分が上記結露により高められるため、pH値が一時的に小さくなるのである。
なお、始動時においては、エンジンオイルのオイル温度がエンジン停止により低下しており、上記始動直後のオイル温度が、ブローバイガスに含まれる水分(水蒸気)を結露させ易い温度以下になっている可能性が比較的高いからである。
このような知見に基づき、エンジン摩耗情報積算回路45では、上記摩耗度合算出回路で算出したpH値(例えば図5に破線で例示の始動直後のpH変化)に対応する摩耗速度VA及びそのpH値が出現するエンジン運転時間に基づいて、図5(b)中の斜線面積の如く摩耗速度VAを時間積分することで、現時点tcrまでのエンジン摩耗量Aを推定する。
判定回路49では、このエンジン摩耗量Aの推定の結果、エンジン摩耗量Aが設定基準Acを超えている場合には、オイル交換が必要なオイル異常状態(オイル劣化した状態)であると判定する。また、判定回路49は、エンジン摩耗量Aが設定基準Ac以下である場合には、オイル交換の必要がないオイル正常状態であると判定する。
判定回路49においてエンジン摩耗量Aが設定基準Acを超え、オイル異常状態(オイル劣化した状態)であると判定される場合には、上記報知手段50を通じてオイル劣化(オイル交換時期であること)の旨が車両の乗員へと報知される。
なお、上記エンジン摩耗情報積算回路45においては、エンジン摩耗情報として、摩耗速度VAとエンジン運転時間の積算量からエンジン摩耗量を直接求めたが、これに限らずエンジン摩耗量の直接的または間接的な指標となるエンジン摩耗情報を求めるものであってもよい。例えばエンジン摩耗量の間接的な指標となるエンジン摩耗情報としては、測定したpH値が第1pH領域I内にあるエンジン運転時間を積算したものであってもよい。
次に、上述のオイル劣化判定装置によるオイル劣化判定方法について、図2及び図5に従って説明する。図2は、実施形態におけるオイルの劣化を判定する方法を示すフローチャートである。また、図5は、図2のフローチャートに従ってエンジンオイルのpH値に基づいてエンジン摩耗量Aを積算する過程を説明するためのタイムチャートであって、図5(a)はpH値の変化、図5(b)は摩耗情報としての摩耗度合(摩耗速度)VAの変化、図5(c)は摩耗度合VAの積算量を示している。
まず、S111(Sはステップ)では、車両のIG61がオン(ON)されているか否かを判定する。本発明のオイル劣化判定方法は、オイル劣化の影響によるエンジンの摺動部に係わる摩耗情報を、pH値の変化に応じて取得するものであるから、S111の制御処理では、摺動部が作動状態にあるエンジン運転状態か、摺動部が作動状態にないエンジン停止状態を判定する。
S111でIG61がオンされていると判断されると、エンジン運転状態、即ち始動状態にあると判定し、S112に移行する。S112では、前回のエンジン運転状態の終了(エンジン停止)時点でのエンジン摩耗量に相当する記憶値Amを、エンジン摩耗量Aに入力し、今回のエンジン運転状態の摩耗量を加算するためのエンジン摩耗量Aを初期化する。
S111でIG61がオフ状態と判断されると、次回IG61がオンされるまでS111の判定を繰り返す。
S111及びS112でエンジンの始動状態にあると判定され、エンジン摩耗量Aが上述の如く初期化されると、S121では、その始動直後より、エンジンオイルのpH値が測定され、S122へ移行する。
S122では、現在測定したpH値が図3の特性曲線pHVAにおいて第1pH領域Iにあるか否かを判定する。即ち具体的には、そのpH値が、摩耗上限pH値(以下、単に「摩耗上限値」と言う)のpHc以下であるか否かを判定する。pH値がpHc以下である場合には、そのpH値にあるエンジンオイルの劣化によりエンジン摩耗が生じるエンジン環境にあると判定し、S131へ移行する。
S122においてpH値がpHcを超える場合には、エンジン摩耗情報を取得する必要がないと判定し、S113へ移行する。S113では、今回のエンジン運転が終了(エンジン停止)したか否かを判定するものであり、具体的にはS113ではIG61がオフ(OFF)されているか否かを判定する。S113でIG61がオン状態であると判断されると、今回のエンジン運転が継続中であると判定し、S121へ戻りpH値の測定を繰り返す。一方、IG61がオフ状態であると判断されると、今回のエンジン運転が終了したと判定され、今回のエンジン運転状態の終了(エンジン停止)時点でのエンジン摩耗量Aを、記憶値Amに保管し、エンジン摩耗量Aをリセットする。
S122で現在測定したpH値が図5(a)の如き摩耗上限値pHc以下にある判断されると、S131では、処理回路40の記憶部に予め記憶されている上記特性曲線pHVAに基づいて摩耗速度VAを算出する。
S132では、図5(b)の斜線面積に相当する摩耗速度VAの時間積分を行う。具体的には、例えばエンジン運転時間tの所定間隔ΔtごとにpH値が測定され、このpH値より摩耗速度VAを算出する。更に、前回算出した摩耗速度VA1と今回算出した摩耗速度VA2に基づいて両摩耗速度VA1、VA2にて区画された図示しない略台形状の斜線面積に相当する摩耗量Arを求める。なお、上記摩耗速度VAの時間積分を近似して算出可能な方法であれば、これに限らずいずれの算出方法であってもよい。
そして、S133では、当該摩耗量Arを前回算出した摩耗量Aに加えることで現時点でのエンジン摩耗量Aを決定する。
S141では、図5(c)に示すように、上記S131からS133の制御処理で求めた現時点tcrでのエンジン摩耗量Aが設定基準Ac以下か否かを判定する。この設定基準Acは、許容されるエンジン摩耗量に対して十分な余裕率を有するエンジン摩耗量とする判定値である。
S141でエンジン摩耗量Aが設定基準Acを超えていると判断されると、S142へ移行し、オイル劣化の影響によりオイル交換が必要なオイル異常状態(オイル劣化状態)であると判定される。そして、S143では、オイル劣化状態、即ちオイル交換時期であることの旨が車両の乗員へと報知され、S113へ移行する。
一方、S141でエンジン摩耗量Aが設定基準Ac以下あると判断されると、S144へ移行しオイル交換の必要のないオイル正常状態にあると判定され、S113へ移行する。
なお、ここで、S121及びS122の制御処理は、請求範囲に記載の摩耗度合予測手段に相当する。また、S131からS133の制御処理は、請求範囲に記載の摩耗量推定手段に相当する。また、S141の制御処理は、請求範囲に記載の判定手段に相当する。
また、第1pH領域Iは、特性曲線pHVAにおいてエンジンオイルの劣化の影響によりエンジン摩耗が生じるおそれのある領域に相当する。センサ本体10は、請求範囲に記載のpHセンサに相当する。さらに、センサ本体10及び処理回路40のpH値算出回路41は、請求範囲に記載のpH検出手段に相当する。
以上説明した本実施形態では、オイル劣化判定対象のエンジンオイルにおいて予めpH値とエンジンの摩耗速度VAの関係を設定することで、図3の上記関係を示す特性曲線pHVAを得るように構成されている。それ故に、この特性曲線pHVAによる上記関係に基づいて始動時等の一時的にpHが低下するエンジン運転状態においても、測定したpH値に応じた摩耗速度VAを正確に算出することができる。また、pH値測定ごとに、そのpH値が出現するエンジン運転時間が測定されるので、pH値に応じたエンジンの摩耗速度VAおよびエンジン運転時間に基づいて測定を実施した現時点tcrまでのエンジン摩耗量Aを推定することができる。
かかる本実施形態の発明においては、算出した摩耗速度VAとそのpH値が出現するエンジン運転時間とに基づいてエンジン摩耗量Aを決定し、このエンジン摩耗量Aに基づいてエンジンオイルの劣化状態を判定するので、エンジン摩耗を抑える狙いでオイルの寿命判定を行うことができる。
また、以上説明した本実施形態において、S122では、測定したpH値が特性曲線pHVAでの第1pH領域Iにあるか否かを判定する。そしてそのpH値が第1pH領域に到達した以降では、S131からS133の制御処理にて当該pH値に基づいてエンジン摩耗量を決定し、S141にてそのエンジン摩耗量に基づいてオイル劣化を判定している。
従来技術の如き例えば数回/日の間隔で測定するようなワイドレンジの第1pH特性曲では、エンジン運転の累積時間とオイルのpH値の関係が概ねエンジン運転累積時間が増加するに従って小さくなるため、オイル劣化(オイル寿命)の指標となるpH規定値に到達するオイル寿命時間が、数百時間程度の比較的長い時間を要した。しかしながら、発明者らが鋭意検討結果より得た知見では、上記オイル寿命時間に達しなくとも、エンジン始動直後はナロレンジの第2pH特性曲線の如くpH値が一時的に更に小さくなることから、エンジンの腐食摩耗が促進される可能性がある。例えばエンジンのアイドルスットップ制御を行う車両や、エンジンと電動モータを駆動源とするハイブリッド車両などの車両では、エンジンの始動と停止が比較的高い頻度で繰り返えされる場合がある。
これに対して本実施形態では、測定されたpH値が第1pH領域I内に達した以降は、エンジン運転状態にある期間においてエンジンオイルの劣化を繰り返し判定するので、そのエンジン運転状態が、エンジン始動直後のエンジン摩耗が促進される状態にある場合においても、エンジン摩耗を抑える狙いでオイルの寿命判定を正確に行うことができる。
また、以上説明した本実施形態においては、S111、S121及びS122の制御処理にて、エンジン始動直後にpH値を測定し、そのpH値が第1pH領域Iにあるか否かを判定している。かかる本実施形態の発明においては、S111の判定処理にて始動状態にあると判定されると、その後のエンジン運転期間において始動直後に生じるpH値が一時的に小さくなる状態を確実に捉えることができる。それ故に、S122の制御処理にて、第1pH領域I、即ちエンジンオイルの劣化によりエンジン摩耗が生じるおそれのあるpH領域内に達したか否かを正確に判定することができる。
また、以上説明した本実施形態においては、エンジンオイルの全塩基価が零となるpH値であるpHohは、上記第1pH領域I内にある。
これにより、従来技術の如きオイル劣化(オイル寿命)の指標となるpH規定値を上記pHcに設定し、当該pH規定値に到達したか否かでオイル寿命を判定する方法に比べて、本実施形態では、pH規定値に到達、未到達に関係なく、pH規定値に到達する過程のエンジン摩耗情報(エンジン摩耗量)Aに基づいてオイル寿命を正確に判定することができる。
また、以上説明した本実施形態において、エンジン摩耗速度とpH値の関係を、処理回路40の記憶部に、上記特性曲線pHVAとして予め記憶するように構成した。これに限らず、上記関係を上記記憶部に記憶し読み出し可能なデータであれば、特性マップであってもよい。かかる本実施形態の発明では、特性曲線または特性マップに基づいて検出したpH値に応じたエンジン摩耗度合を正確に決定することができる。
(第2の実施形態)
以下、本発明を適用した他の実施形態を説明する。なお、以下の実施形態においては、第1の実施形態と同じもしくは均等の構成には同一の符号を付し、説明を繰返さない。
第2の実施形態を図6に示す。第2の実施形態では、上記エンジン摩耗情報Aを、エンジン摩耗量に代えて、検出したpH値が第1pH領域I内にあるエンジン運転時間とした一例を示すものである。図6は、本実施形態に係わるオイルの劣化を判定する方法を示すフローチャートである。図7は、図6のフローチャートに従ってエンジンオイルのpH値に基づいてエンジン運転時間Aを積算する過程を説明するためのタイムチャートであって、図7(a)はpH値の変化、図7(b)はエンジンオイルの温度の変化、図7(c)はエンジン運転時間Aの積算量を示している。
S111、S121及びS122の制御処理にて、エンジン始動直後にpH値を測定し、そのpH値が第1pH領域Iにあるか否かを判定する。
S122においてpH値がpHcを超える場合には、エンジン摩耗情報を取得する必要がないと判定し、S113へ移行する。一方、pH値がpHc以下である場合には、本実施形態の特徴であるS231及びS232の制御処理に進む。
ここで、図7(a)において二点鎖線で示すpH特性曲線は、図7(b)のオイル温度ToilがTcであるときの仮想の特性曲線を示すものである。また、図中のta(ta1、ta2)及びtb(tb1、tb2)は、いずれも検出したpH値が第1pH領域I内にある(摩耗上限値pHc以下の)エンジン運転時間tを示しており、taはオイル温度ToilがTc以下である場合のエンジン運転時間、tbはオイル温度ToilがTcを超える場合のエンジン運転時間に区分けされている。
上記オイル温度Toilの設定値Tcは、エンジンのオイルパン2内に滞留するブローバイガスにおいて、当該ガスに含まれる水分(水蒸気成分)が結露する温度(以下、結露温度)に設定されている。具体的には、この設定値Tcは、結露温度以下の温度を保障するオイル温度(例えば80℃)に設定されている。これにより、始動直後においてpHが一時的に小さくなる要因の、エンジンオイル中の水分が結露により高められている状態を、効果的に捉えることができる。
上記オイル温度ToilがTc以下である場合のエンジン運転時間ta(ta2)は、結露によりエンジンオイル中の水分が高められる始動直後のpH変化の状態に相当するものとする。一方、上記オイル温度Toilが設定値Tcを超える場合のエンジン運転時間tb(tb2)は、エンジンの暖気運転によりエンジンオイル中の水分が少なくなっており、上記始動直後のpH変化に比べて小さくなりpH値がほぼ安定する状態(以下、pH安定状態)に相当するものである。
また、ta1は上記始動直後の状態の一部(ta1<ta2)であり、tb1は上記pH安定状態の一部(tb1<tb2)である。
次に、S231及びS232の制御処理では、pH値が第1pH領域I内にあるエンジン運転時間ta、tbを積算し、その積算量Aを決定する。具体的には、S231では、検出したpH値状態ごとにエンジン運転時間Arを測定し、S232でpH値に応じた運転時間Arを加算し現時点tcrでの積算されたエンジン運転時間A(例えば図中のta1+ta2)を決定する。
S141では、上記S231及びS232の制御処理で求めたエンジン運転時間Aが設定基準Ac以下か否かを判定する。
かかる本実施形態の発明においても、第1の実施形態と同等に、エンジン摩耗を抑える狙いでオイルの寿命判定を行うことができる。
さらに、本実施形態では、エンジン摩耗情報Aを、pH値が摩耗上限値pHc以下のエンジン運転時間を積算するだけで決定できるので、エンジン摩耗を抑える狙いでオイルの寿命判定を比較的簡素な演算処理で行うことができる。
ここで、この設定基準Acは、許容されるエンジン摩耗量を間接的に示す指標値であって、許容されるエンジン摩耗量に対して所定の余裕率を有するエンジン摩耗量に相当する指標設定値であることが好ましい。
このように設定された設定基準Acにおいては、当該設定基準Acに到達時点でのエンジン運転時間Aは、図7(c)に示す如くpH値が摩耗上限値pHc以下、かつオイル温度ToilがTc以下のエンジン運転時間taの積算量で実質的に占められることになる。
言い換えると、上記S231及びS232の制御処理においてpH値が摩耗上限値pHc以下のエンジン運転時間A(ta、tbの総和)を求める方法は、pH値が摩耗上限値pHc以下、かつオイル温度ToilがTc以下のエンジン運転時間taの積算量を求める方法に置き換えることが可能である。
具体的には、例えば図9に示すフローチャート(以下、第2実施形態の変形例)如く、S122の制御処理において肯定判定された後に、S323の制御処理においてオイル温度ToilがTc以下か否かを判定する。S323の制御処理において肯定判定(オイル温度ToilがTc以下である)される場合にはS231へ移行し、一方、否定判定される場合には、S113へ移行するように構成することができる。
上述の如き第2実施形態の変形例では、測定されたpH値が第1pH領域I内にあること、およびオイル温度ToilがTc以下であることを満足することを条件として、エンジン運転期間のうち、前記条件を満足する条件成立期間において、エンジン運転時間Aを積算する。しかも、その積算したエンジン運転時間Aが設定基準Acに達することを第2条件として、第2条件を満足すると、エンジンオイルの劣化を判定するためのエンジン摩耗量に達したと判断するものである。
以上説明した本実施形態およびその変形例においては、オイルの寿命判定のためのエンジン摩耗情報Aを、摩耗速度とエンジン運転時間の組合せから導かれる摩耗量に代えて、エンジン運転時間とするので、エンジン摩耗を抑える狙いでオイルの寿命判定を比較的簡素な演算処理で行うことができる。
なお、ここで、S231及びS232の制御処理は、請求範囲に記載の摩耗情報算出手段に相当する。
(第3の実施形態)
第3の実施形態を図8に示す。第3の実施形態では、上記エンジン摩耗情報(エンジン摩耗量)を決定するのに、pH値が摩耗上限値pHc以下か否かを判定し、かつオイル温度ToilがTc以下か否かを判定する一例を示すものである。図8は、本実施形態に係わるオイルの劣化を判定する方法を示すフローチャートである。
S111、S121及びS122の制御処理にて、エンジン始動直後にpH値を測定し、そのpH値が第1pH領域Iにあるか否かを判定する。
S122においてpH値がpHcを超える場合には、エンジン摩耗情報を取得する必要がないと判定し、S113へ移行する。一方、pH値がpHc以下である場合には、本実施形態の特徴であるS323の制御処理に進む。
S323では、オイル温度ToilがTc以下か否かを判定する。オイル温度ToilがTc以下である場合には、エンジン始動直後のpH変化の状態であると判定し、S324へ進む。S324では、pH値測定のためのエンジン運転時間tの所定間隔Δtを第1間隔Δt1に設定する。
一方、オイル温度ToilがTcを超える場合には、pH安定状態にあると判定し、S325へ進む。S325では、pH安定状態あるので、所定間隔Δtを第2間隔Δt2に設定する(Δt1<Δt2)。
このように構成することで、S132の制御処理にて行う摩耗速度VAの時間積分、即ちエンジン摩耗量Aの算出精度が、pH変化レベルに応じて向上させることができる。
なお、ここで、本実施形態においても、第2実施形態と同様に、設定基準Acに到達時点でのエンジン摩耗情報(エンジン摩耗量)Aは、pH値が摩耗上限値pHc以下、かつオイル温度ToilがTc以下のエンジン摩耗量の積算量で実質的に占められることになる。
従って、本実施形態のフローチャートに代えて、以下のフローチャチャートとしてもよい。即ちフローチャートの変形例としては、S323の制御処理において肯定判定(オイル温度ToilがTc以下である)される場合にはS231へ移行し、一方、否定判定される場合には、S113へ移行するように構成することができる。
言い換えると、測定されたpH値が第1pH領域I内にあること、およびオイル温度ToilがTc以下であることを満足することを条件として、エンジン運転期間のうち、前記条件を満足する条件成立期間において、エンジン摩耗情報(摩耗量)Aに基づいてエンジンオイルの劣化を繰り返し判定するように構成することができる。
これにより、エンジン運転期間のうち、始動直後のpH値が第1pH領域I内にある期間を確実に捉えることができるとともに、当該捉えられた始動直後の期間に限定してエンジンオイルの劣化の判定を繰り返すことで、エンジン摩耗を抑える狙いでオイルの寿命判定を効率的に行うことができる。
以上、本発明の実施形態及び実施例について説明したが、本発明はそれら実施形態及び実施例に限定して解釈されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲内において種々の実施形態に適用可能である。