JP4747519B2 - 非水電解質二次電池用正極活物質および非水電解質二次電池 - Google Patents
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Description
図1は、リチウムイオン二次電池の充放電サイクル時の正極および負極の電位の変化を模式的に示すグラフである。図1に示されるように、従来例において、電池を充電すると、正極の電位は矢印aの経路で上昇し、負極の電位は矢印bの経路で下降する。
充電後、放電すると、負極の電位は上昇するが、負極にはリテンション(リチウムイオンが放出されないで残存する現象)が生じるため、その経路は矢印cのようになる。一方、正極の電位は矢印dの経路で下降する。したがって、点Aで正極と負極の電位が等しくなる。ここで、点Aの電位が、負極集電体として用いられるCuが溶出する電位より高いため、Cuが溶出してしまうのである。
しかしながら、この工程で得られる正極活物質では、上記の過放電特性を改善することができなかった。
リチウムイオンを吸蔵放出可能な炭素材料、またはリチウムイオンを吸蔵放出可能な化合物からなる負極活物質と、負極集電体とを有する負極と、を具備する非水電解質二次電池。
(1)に記載の正極活物質は、リチウムを含むコバルトおよび/またはニッケル複合酸化物が立方晶系結晶を有する。そのため、初期充電容量が大きく、初期放電容量が著しく小さくなり、不可逆容量が発生する。この正極活物質を用いることにより、負極のリテンション分を正極活物質の充電時容量で補うことができ、正極と負極のリテンションの量の差をなくし、電池電圧が上昇するのを抑制することができる。
図1において、充電後、放電すると、本発明例の負極の電位は従来例と同様に矢印cの経路で上昇するが、正極の電位は矢印eの経路で下降する。したがって、点Bで正極と負極の電位が等しくなる。ここで、点Bの電位が、負極集電体として用いられる金属、例えば、Cuが溶出する電位より低いため、Cuの溶出が抑制されるのである。即ち、本発明の正極活物質を用いた非水電解質二次電池は、過放電特性に優れる。
第二の活物質は、リチウムを含むコバルトおよび/またはニッケル複合酸化物が立方晶系結晶を有する。そのため、初期充電容量が大きく、初期放電容量が著しく小さくなり、不可逆容量が発生する。この第二の活物質を用いることにより、負極のリテンション分を第二の活物質の充電時容量で補うことができ、正極と負極のリテンションの量の差をなくし、電池電圧が上昇するのを抑制することができる。
本発明の構成を具備する非水電解質二次電池を、充電後、放電すると、図1において、本発明例の負極の電位は従来例と同様に矢印cの経路で上昇するが、正極の電位は矢印eの経路で下降する。したがって、点Bで正極と負極の電位が等しくなる。ここで、点Bの電位が、負極集電体として用いられる金属、例えば、Cuが溶出する電位より低いため、Cuの溶出が抑制されるのである。即ち、本発明の非水電解質二次電池は、過放電特性に優れる。
立方晶系結晶としては、次の結晶構造のものが挙げられる。スピネル構造、岩塩型、ペロブスカイト型等が挙げられる。本発明の正極活物質においては、少なくともスピネル構造からなるコバルトおよび/またはニッケル複合酸化物を有するのが好ましい。
スピネル構造からなるコバルトおよび/またはニッケル複合酸化物の結晶構造を示す模式図である。コバルトおよび/またはニッケル原子1は8aサイトの四面体サイトと16dサイトの八面体サイトを占有し、酸素原子2は32eサイトを占有している。
リチウム塩は、正極活物質に対して、0.15重量%以下であるのが好ましく、0.1重量%以下であるのがさらに好ましく、0.05重量%以下であるのがより好ましい。
リチウム塩としては、炭酸リチウム、水酸化リチウム、酢酸リチウムが挙げられる。中でも、炭酸リチウムが好ましい。
本発明において、リチウムが、コバルトおよび/またはニッケルのサイトに存在していることを解析する方法としては、例えば、リートベルト解析法を用いることができる。
リチウムは、どのような状態で存在していてもよい。リチウム原子の状態で存在していても、リチウムイオンの状態で存在していてもよい。
リチウムが存在しなければ、本発明の効果を発揮できず、リチウムが多すぎると、充放電容量が低下し、またゲル化等が生じるため取り扱いが困難となる。
本発明においては、立方晶系結晶からなるコバルトおよび/またはニッケル複合酸化物が、一次粒子およびその凝集体である二次粒子の一方または両方からなる粒子の形態で存在してもよい。即ち、立方晶系結晶からなるコバルトおよび/またはニッケル複合酸化物は、粒子の形態で存在し、その粒子は、一次粒子のみからなっていてもよく、一次粒子の凝集体である二次粒子のみからなっていてもよく、一次粒子と二次粒子の両者からなっていてもよい。
本発明において、リチウムは立方晶系結晶からなるコバルトおよび/またはニッケル複合酸化物の粒子の表面にどのような形で存在していても本発明の効果を発揮する。例えば、リチウムが立方晶系結晶からなるコバルトおよび/またはニッケル複合酸化物の粒子表面の全体を被覆している場合であっても、リチウムが立方晶系結晶からなるコバルトおよび/またはニッケル複合酸化物の粒子表面の一部を被覆している場合であっても、過放電特性が向上する。
また、リチウムの定量としては、種々の方法を用いることができる。例えば、誘導結合高周波プラズマ(ICP:Inductively Coupled Plasma)分光分析法、滴定法で定量することができる。
本発明において、初期効率とは、負極がリチウム金属である試験用二次電池を、充電電位4.3V、放電電位2.75V、放電負荷0.2mA/cm2の条件で、放電させたときの、最初の放電容量の値を、最初の充電容量の値で除した値をいう。
混合の方法は、特に限定されず、例えば、粉末状の化合物をそのまま混合して原料混合物とする方法;水および/または有機溶媒を用いてスラリー状として混合した後、乾燥させて原料混合物とする方法;上述した化合物の水溶液を混合して沈降させ、得られた沈殿物を乾燥させて原料混合物とする方法;これらを併用する方法が挙げられる。
本発明の正極活物質の製造方法においては、こうして得られた原料混合物を高速攪拌混合機に充填し、混合することが好ましい。
リチウム化合物は、特に限定されないが、例えば、Li2CO3、LiOH、LiOH・H2O、Li2O、LiCl、LiNO3、Li2SO4、LiHCO3、Li(CH3COO)、フッ化リチウム、臭化リチウム、ヨウ化リチウム、過酸化リチウムが挙げられる。中でも、Li2CO3、LiOH、LiOH・H2O、Li2O、LiCl、LiNO3、Li2SO4、LiHCO3、Li(CH3COO)が好ましい。
焼成温度は、500℃以下であるのが好ましく、400℃以下であるのがより好ましい。焼成温度が高すぎると、LiCoO2、LiNiO2等が生成し、本発明の効果を発揮しない。
焼成時間は、一般に、1〜24時間であるのが好ましく、6〜12時間であるのがより好ましい。焼成時間が短すぎると、原料粒子間の拡散反応が進行しない。焼成時間が長すぎると、拡散反応がほぼ完了した後の焼成が無駄となり、また、焼結による粗大粒子が形成されてしまう場合がある。
本発明の非水電解質二次電池は、少なくともスピネル構造および/または層状構造のリチウム遷移金属複合酸化物を有する第一の活物質と、リチウムを含む立方晶系結晶からなるコバルトおよび/またはニッケル複合酸化物を有する第二の活物質とを有する非水電解質二次電池用正極活物質と、正極集電体とを有する正極と、リチウムイオンを吸蔵放出可能な炭素材料、またはリチウムイオンを吸蔵放出可能な化合物からなる負極活物質と、負極集電体とを有する負極と、を具備する。
第一の活物質は、少なくともスピネル構造および/または層状構造のリチウム遷移金属複合酸化物を有していれば特に限定されない。
スピネル構造とは、複酸化物でAB2O4型の化合物(AとBは金属元素)にみられる代表的結晶構造型の一つである。
本発明の第一の活物質において、リチウム遷移金属複合酸化物は、コバルト酸リチウム、マンガン酸リチウム、ニッケル酸リチウム、ニッケルコバルト酸リチウム、ニッケルコバルトマンガン酸リチウムおよびニッケルコバルトアルミン酸リチウム、ニッケルマンガン酸リチウムからなる群から選ばれる少なくとも1種であるのが好ましい。
これにより、過放電特性、サイクル特性、負荷特性の向上だけでなく、更に充放電容量が上昇し、出力特性にも優れた非水電解質二次電池を得ることができる。
リチウム遷移金属複合酸化物は、2種以上の組み合わせからなる場合、コバルト酸リチウムとマンガン酸リチウム、コバルト酸リチウムとニッケルコバルトマンガン酸リチウム、コバルト酸リチウムとニッケルコバルトアルミン酸リチウム、コバルト酸リチウムとニッケルマンガン酸リチウム、マンガン酸リチウムとニッケルコバルトマンガン酸リチウム、マンガン酸リチウムとニッケルコバルトアルミン酸リチウム、マンガン酸リチウムとニッケルマンガン酸リチウム、ニッケルコバルトマンガン酸リチウムとニッケルコバルトアルミン酸リチウム、ニッケルコバルトマンガン酸リチウムとニッケルマンガン酸リチウム、ニッケルコバルトアルミン酸リチウムとニッケルマンガン酸リチウムからなる群から選ばれる1種であるのが好ましい。
これにより、過放電特性、サイクル特性および負荷特性の向上だけでなく、さらに出力特性が向上した正極活物質を得ることができる。
特に、0.4≦B/(A+B)≦0.6の範囲になるように混合するのがより好ましい。この範囲であれば、負荷特性、出力特性の向上が著しいからである。
混合の方法は、特に限定されず、例えば、粉末状の化合物をそのまま混合して原料混合物とする方法;水および/または有機溶媒を用いてスラリー状として混合した後、乾燥させて原料混合物とする方法;上述した化合物の水溶液を混合して沈降させ、得られた沈殿物を乾燥させて原料混合物とする方法;これらを併用する方法が挙げられる。
ついで、原料混合物を焼成し、主活物質が得られる。焼成の温度、時間、雰囲気等は、特に限定されず、目的に応じて適宜決定することができる。
焼成後、所望により、らいかい乳鉢、ボールミル、振動ミル、ピンミル、ジェットミル等を用いて粉砕し、目的とする粒度の粉体とすることもできる。
非水電解質二次電池は、従来公知の非水電解質二次電池において、正極活物質の少なくとも一部として本発明の正極活物質とすればよく、他の構成は特に限定されない。
即ち、本発明の非水電解質二次電池は、本発明の正極活物質を有する正極と、リチウムイオンを吸蔵放出可能な炭素材料、またはリチウムイオンを吸蔵放出可能な化合物からなる負極活物質と、負極集電体とを有する負極とを具備する非水電解質二次電池である。
溶媒としては、例えば、ジメトキシエタン,ジエトキシエタン,エチレンカーボネート,プロピレンカーボネート,ジメチルカーボネート,ジエチルカーボネート,エチルメチルカーボネート,メチルホルメート,γ−ブチロラクトン,2−メチルテトラヒドロフラン,ジメチルスルホキシド,スルホラン等の有機溶媒が挙げられる。これらは単独でまたは2種類以上を混合して用いることができる。
上述した溶媒とリチウム塩とを混合して電解液とする。ここで、ゲル化剤等を添加し、ゲル状として使用してもよい。また、吸湿性ポリマーに吸収させて使用してもよい。
更に、無機系または有機系のリチウムイオンの導電性を有する固体電解質を使用してもよい。
着剤を用いて、定法に従い、リチウムイオン二次電池とすることができる。
これにより従来達成できなかった優れた電池特性が実現できる。
本発明の正極活物質の粉末に、アセチレンブラック、黒鉛等のカーボン系導電剤、結着剤および結着剤の溶媒または分散媒とを混合することにより正極合剤を調製する。得られた正極合剤をスラリーまたは混練物とし、アルミニウム箔等の集電体に塗布し、または担持させ、プレス圧延して正極活物質層を集電体に形成させる。
図2は、正極の模式的な断面図である。図2に示されているように、正極13は、正極活物質6を結着剤5により集電体12上に保持させてなる。
更に、本発明の正極活物質は、粗大粒子を含まず、球状であるため、作製した正極の塗膜面の表面が平滑性に優れたものになる。このため、正極板の塗膜面は結着性に優れ、剥がれにくくなる。また、表面が平滑で充放電に伴う塗膜面表面のリチウムイオンの出入りが均一に行われるため、サイクル特性において顕著な改善がみられる。
図3は、円筒型電池の模式的な断面図である。図3に示されるように、円筒型電池20においては、集電体12上に正極活物質層を形成させた正極13と、集電体12上に負極活物質層を形成させた負極11とがセパレーター14を介して、繰り返し積層されている。
図4は、コイン型電池の模式的な部分断面図である。図4に示されるように、コイン型電池30においては、集電体12上に正極活物質層を形成させた正極13と、負極11とが、セパレーター14を介して、積層されている。
図5は、角型電池の模式的な斜視図である。図5に示されるように、角型電池40においては、集電体12上に正極活物質層を形成させた正極13と、集電体12上に負極活物質層を形成させた負極11とが、セパレーター14を介して、繰り返し積層されている。
正極、負極、セパレーターおよび非水電解質を有する非水電解質二次電池であって、下記Iを正極の正極活物質として、下記IIを負極の負極活物質として用いる非水電解質二次電池を得ることができる。
I:上述した本発明の正極活物質。
II:リチウムイオンを吸蔵放出可能な炭素材料またはリチウムイオンを吸蔵放出可能な化合物からなる非水電解質二次電池用負極活物質。
この非水電解質二次電池は、過放電特性、サイクル特性および負荷特性に優れる。
また、照明機器、エアコン、テレビ、ステレオ、温水器、冷蔵庫、オーブン電子レンジ、食器洗浄器、洗濯機、乾燥器、ゲーム機器、玩具、ロードコンディショナ、医療機器、自動車、電気自動車、ゴルフカート、電動カート、電力貯蔵システム等の電源として用いることができる。
さらに、用途は、民生用に限定されず、軍需用または宇宙用とすることもできる。
〔実施例1〕
四酸化三コバルトと、水酸化リチウムを混合し、得られた混合物を約300℃で約24時間焼成した。得られた焼成物を粉砕して、本発明の正極活物質を得た。
得られた正極活物質をX線回折装置(RINT2500V、理学電気社製)で測定したところ、リチウムを含む四酸化三コバルトであった。
四酸化三コバルトと、炭酸リチウムを高速攪拌混合機にて、約5分間混合して、本発明の正極活物質を得た。
得られた正極活物質をX線回折装置(RINT2500V、理学電気社製)で測定したところ、リチウムを含む四酸化三コバルトであった。
四酸化三コバルトと、炭酸リチウムを混合し、得られた混合物を約300℃で約24時間焼成した。得られた焼成物を粉砕して、本発明の正極活物質を得た。
得られた正極活物質をX線回折装置(RINT2500V、理学電気社製)で測定したところ、リチウムを含む四酸化三コバルトであった。
四酸化三コバルトのみを用いて正極活物質とした。
炭酸リチウムのみを用いて正極活物質とした。
上記で得られた各正極活物質を用いて、試験用二次電池を作製して、以下のようにして評価した。
正極活物質の粉末60重量部と、導電剤となる炭素粉末20重量部と、ポリフッ化ビニリデンのノルマルメチルピロリドン溶液(ポリフッ化ビニリデン量として20重量部)とを混練してペーストを調製する以外は、実施例1で得られた正極活物質を用いた試験用二次電池と同様に、実施例2および3で得られた正極活物質を用いた試験用二次電池を作製した。
充電電位4.3V、放電電位2.75V、放電負荷0.2mA/cm2の条件で、初期充電容量と初期放電容量を測定し、初期充電容量と初期放電容量の差を不可逆容量とした。不可逆容量が大きいほど、過放電特性に優れている。
表1から明らかなように、本発明の正極活物質は、比較例の正極活物質に比べて不可逆容量が大きく、過放電特性に優れていることがわかる。
本発明の非水電解質二次電池は、携帯電話、ノート型パソコン、デジタルカメラ等のモバイル機器および電気自動車用バッテリー等の電源等に利用することができる。
6 正極活物質
11 負極
12 集電体
13 正極
14 セパレーター
20 円筒型電池
30 コイン型電池
40 角型電池
Claims (3)
- リチウム化合物と四酸化三コバルトとを混合し、500℃以下で焼成して得られる、リチウムを含む四酸化三コバルトを有する非水電解質二次電池用正極活物質。
- 前記リチウムは、前記四酸化三コバルトに対して0重量部より大きく20重量部以下である請求項1に記載の非水電解質二次電池用正極活物質。
- 少なくともスピネル構造および/または層状構造のリチウム遷移金属複合酸化物を有する第一の活物質と、請求項1又は2に記載の非水電解質二次電池用正極活物質と、正極集電体とを有する正極と、
リチウムイオンを吸蔵放出可能な炭素材料、またはリチウムイオンを吸蔵放出可能な化合物からなる負極活物質と、負極集電体とを有する負極と、を具備する非水電解質二次電池。
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