JP4746309B2 - 燃料電池 - Google Patents
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Description
前記単セルに組み込まれるシール材は、その機能から次のような特性を有することが望まれている。
(1)燃料極に供給されるメタノール水溶液に対して高い耐性を有すること。
(2)空気極に供給される酸化性ガス(例えば空気)に対して優れた不透過性を有すること。
(3)電極反応で生じるラジカル種や電池内部での電場により発生するラジカル種に対した高い耐性を有すること。
このようなゴムからなるシール材においては、前記(2)の酸化性ガスに対して優れた不透過性を有するものの、メタノール水溶液の存在下で膨張・収縮を起こして劣化する。また、このシール材は電極反応で生じるラジカル種や電池内部での電場により発生するラジカル種によって劣化する。その結果、シール材を構成するゴム本来の弾力性が低下し、前記膜状電極ユニットと流路板とのシール性が損なわれ、燃料および酸化性ガスの漏れ、単セルのスタック構造の崩れを招き、出力低下等の燃料電池の長期信頼性を低下させる問題があった。
前記シール材は、下記一般式(II)にて表される含金属元素系モノマーの共重合体を含むことを特徴とする燃料電池が提供される。
具体的には、前記単セルは図1〜図3に示す構造を有する。図1は、本発明の実施形態に係る燃料電池の単セルを示す概略斜視図、図2は図1の単セルに組み込まれた膜状電極ユニットを示す断面図、図3は図1の単セルに組み込まれた燃料用流路板および酸化性ガス用流路板を示す平面図である。
なお、実施形態に係る燃料電池の単セルは前述した図1〜図3に示すように膜状電極ユニット1と燃料用流路板11aおよび酸化性ガス用流路板11bの間に枠状のシール材21a,21bを介在した構造に限らず、例えば図4[(A)は平面図、(B)は同(A)の正面図]に示すようにシール材を流路板に一体化したモジュール構造にしてもよい。すなわち、燃料用流路板11a,酸化性ガス用流路板11bは前記膜状電極ユニット側の流路板本体12に流路13を囲むように枠状シール材22が取り付けられ、かつこの枠状シール材22の外側に位置する各穴16を囲撓するようにリング状シール材23がそれぞれ取り付けられている。
前記単セルに組み込まれるシール材は、下記化4に示す一般式(I)にて表される含金属元素系モノマーの共重合体から作られる。
前記一般式(I)のM1,M2としては、例えばSi,Mg,Ti等が挙げられ、特にSiが好ましい。
前記一般式(I)のm、nは、5〜5000の整数であることが好ましい。
前記シール材は、特に下記化5に示す一般式(II)にて表される含金属元素系モノマーの共重合体から作られることが好ましい。
前記一般式(II)におけるR11、R12、R15、R16、R14〜R17のアルキル基、アルコキシ基は、炭素数が1〜20であることが好ましい。
前記一般式(II)におけるR11、R12、R15、R16、R14〜R17のハロゲン基としては、フッ素、塩素、臭素、ヨウ素が挙げられるが、特に塩素が好ましい。
前記一般式(II)に示す含金属元素系モノマーの共重合体において、R11、R12、R13がアルキル基、アルコキシ基、エーテル基から選ばれると共に、全て同じ基で、R14〜R17がアルキル基、アルコキシ基、エーテル基、ハロゲン基から選ばれると共に、全て同じ基であることが好ましい。
前記一般式(II)のM11,M12としては、例えばSi,Mg,Ti等が挙げられ、特にSiが好ましい。
前記一般式(II)のm、nは、5〜5000、さらに好ましくは15〜2200の整数であることが望ましい。
以上説明した実施形態に係る燃料電池の単セルに組み込まれるシール材は、前記一般式(I)で表される含金属元素系モノマーの共重合体から作られているため、燃料であるメタノール水溶液の存在下での膨張・収縮を抑制でき、かつそのメタノール水溶液による劣化も防止できる。また、このシール材はセル作動時の電極反応で生じるラジカル種や電池内部での電場により発生するラジカル種に対して高い耐性を示す。さらに、前記シール材は空気極に供給される酸化性ガス(例えば空気)に対して優れた不透過性を有する。
以下,本発明の実施例を詳細に説明する。
100mLの二口フラスコ(反応容器)にジムロート冷却管、オイルバス、マグネチックスターラ、攪拌子、窒素風船を装着した。反応容器内にビニル−N−(t−ブチルジメチルシリル)フタルイミド(分子量287)0.5g(1.74×10-3モル)、ビニルジメチルビス(2−メチル−1H−インデン−1−イル)シラン(分子量342)0.35g(1.0×10-3モル)、ベンゾイルパーオキサイド(分子量242)0.05g(2.0×10-4モル)、テトラヒドロフラン40mLを入れた。反応容器内の攪拌子をマグネチックスターラで攪拌速度200rpmで回転させ、オイルバス温度を50℃に設定した。反応溶液の粘度上昇が観察されたところで、反応容器温度が40℃以下に冷えたことを確認し、反応容器の内容物をアセトン100mL中に入れ、沈殿物を生成させた。
ビニル−N−(t−ブチルジメチルシリル)フタルイミドの代わりにビニル−N−(メトキシジメトキシシリル)フタルイミド(分子量294)0.6g(2.0×10-3モル)、およびビニルジメチルビス(2−メチル−1H−インデン−1−イル)シランの代わりにビニルジメトキシビス(2−メトキシ−1H−インデン−1−イル)シラン(分子量407)0.9g(2.2×10-3モル)を用いた以外、合成例1とほぼ同様な方法により重合物を合成した。
ビニル−N−(t−ブチルジメチルシリル)フタルイミドの代わりにビニル−N−(エチルジエチルシリル)フタルイミド(分子量299)0.6g(2.0×10-3モル)、およびビニルジメチルビス(2−メチル−1H−インデン−1−イル)シランの代わりにビニルジエチルビス(2−エチル−1H−インデン−1−イル)シラン(分子量342)0.8g(2.3×10-3モル)を用いた以外、合成例1とほぼ同様な方法により重合物を合成した。
ビニル−N−(t−ブチルジメチルシリル)フタルイミドの代わりにビニル−N−(トリメトキシエトキシメチルシリル)フタルイミド(分子量360)0.6g(1.6×10-3モル)、およびビニルジメチルビス(2−メチル-1H−インデン−1−イル)シランの代わりにビニルジメトキシエトキシメチルビス(2−メトキシエトキシメチル−1H−インデン−1−イル)シラン(分子量638)0.9g(1.4×10-3モル)を用いた以外、合成例1とほぼ同様な方法により重合物を合成した。
ビニル−N−(t−ブチルジメチルシリル)フタルイミドの代わりにビニル−N−(メチルジメチルシシリル)フタルイミド(分子量287)0.6g(2.0×10-3モル)、およびビニルジメチルビス(2−メチル−1H−インデン−1−イル)シランの代わりにビニルジメトキシビス(2−メチル−1H−インデン−1−イル)シラン(分子量407)0.9g(2.2×10-3モル)を用いた以外、合成例1とほぼ同様な方法により重合物を合成した。
ビニル−N−(t−ブチルジメチルシリル)フタルイミドの代わりにビニル−N−(トリメトキシエトキシメチルシリル)フタルイミド(分子量467)0.8g(1.7×10-3モル)、およびビニルジメチルビス(2−メチル-1H−インデン−1−イル)シランの代わりにビニルジクロロビス(2−クロロ−1H−インデン−1−イル)シラン(分子量424)1.0g(2.3×10-3モル)を用いた以外、合成例1とほぼ同様な方法により重合物を合成した。
前記合成例1〜6で得られた重合物をN,N−ジメチルホルムアミド30mLに溶解させ、ガラス板状にバーコータを用いて引き伸ばし、風乾後、真空乾燥を4時間施した。得られた各キャスト膜をピンセットで剥離し、以下の測定法により空気透過性、メタノール透過性、耐ラジカル性、熱分解性および寸法安定性を評価した。
前記キャスト膜と同様な厚さのシリコーンゴム膜の空気透過度をジーエルサイエンス(株)製のガス透過度試験機により測定し、その値をS0とした。
また、前述した実施例1〜6のキャスト膜についても同様な方法で空気透過度S1,S2,S3,S4,S5,S6を測定した。測定された各キャスト膜の空気透過度をシリコーンゴムの空気透過度に対する相対比、すなわちS1/S0,S2/S0,S3/S0,S4/S0,S5/S0,S6/S0として求めた。これらの結果を下記表1に示す。
図5の(A)は、メタノール透過性の試験装置を示す断面図、同図(B)は同図(A)の右側面図である。
一端に幅2cmのフランジ32aを有する内径4cm、長さcmのガラス製の第1片封じ円筒管31aを準備する。この第1片封じ円筒管31aの側壁には、内径6mmの穴33aが開口され、この穴33aにはシリコンゴム栓34aが挿着されている。もう一つ別で同形同サイズのガラス製の第2片封じ円筒管、すなわち一端に幅2cmのフランジ32bを有し、側壁にシリコンゴム栓34bが挿着された内径6mmの穴33bを開口した第2片封じ円筒管31bを準備する。これら2つの片封じ円筒管31a,31bのフランジ32a,32b間にJIS B 2401 4種C適合のシリコーンゴム製のシール材35を挟み込み、フランジ32a,32bの上部および下部を固定クリップ36でそれぞれ挟持して固定した。このとき、第1片封じ円筒管31aおよびシール材35で区画される室を第1室37a、第2片封じ円筒管31bおよびシール材35で区画される室を第2室37bとした。また、第1、第2の室37a,37bには下方に配置したマグネチックスターラ38a,38bで回転される撹拌子39a,39bをそれぞれ収納した。
次いで、第1片封じ円筒管31aのシリコンゴム栓34aを抜き、3%濃度のメタノール水溶液を穴33aを通して第1室37aに注入、収容し、塩酸を適量添加することによってpHを4に調整し、直ちにシリコンゴム栓34aを第1片封じ円筒管31aの穴33aに挿着して塞いだ。また、第2片封じ円筒管31bのシリコンゴム栓34bにゴム風船40の針41を突き刺した。
測定結果から横軸に時間(分間)、縦軸にメタノール濃度(ppm)をプロットし、100分間後のメタノール濃度を時間で除した値をシリコーンゴムのメタノール拡散速度D0(ppm/分間)とした。
100mLのビーカをオイルバス中に固定し、過酸化水素水3%とFeSO440ppmからなる酸化性水溶液(OHラジカルを発生するフェント試薬)をビーカ内に入れ、オイルの温度を60℃に合わせた。シリコーンゴム膜を3.0gにカットし、重量を測定し、この重量をW0とした。つづいて、シリコーンゴム膜のカットサンプルを前記酸化性溶液中に入れ、10時間静置した。その後、サンプルを引き上げ、水洗、風乾、真空乾燥を施した後の重量を測定し、この重量をW1とした。これらの重量W0,W1から重量減少量(WF0)=W0−W1を求めた。この酸化分解に伴う重量減少量は、耐ラジカル性の尺度になる。
シリコーンゴムから10mg採取し、TG−DTA装置(リガク社製商標名:Thermo Plus 2)を用いて窒素ガス中の熱分解温度を測定した。このときの昇温速度は10℃/分で行った。測定されたシリコーンゴムの酸化分解温度をT0(℃)とした。
JIS B 2401 4種C適合のシリコーンゴム製シール材からなるシートを幅30mm×長さ150mmにカットしてサンプルとした。このサンプルを塩酸添加によりpH4に調整した3%濃度のメタノール水溶液(室温)に浸漬した。4時間経過後にサンプルを引き上げ、メタノール水溶液を拭き取り、長さを測定した。測定されたサンプルの長さをL0とした。
デュポン社製商標名のナフィオン112膜の燃料極側に白金−ルテニウム電極、空気極側に白金触媒を炭素粉末およびカーボンペーパを熱圧着した膜電極(電極面積5cm2)をそれぞれ配置して膜状電極ユニットを作製した。触媒担持量は、燃料極側が2.2mg/cm2、空気極側が1.4mg/cm2とした。この膜状ユニットの両側にサーペンタイン流路を有するカーボン製の燃料用流路板および同製の酸化性ガス用流路板を実施例1〜6および比較例1のシール材を介して配置し、さらにこれら流路板に集電体をそれぞれ配置し、ボルト締めすることにより前述した図1に示す7種の評価用単セルとした。
Claims (2)
- メタノール水溶液が燃料として供給される燃料極、酸化性ガスが供給される空気極およびこれらの極間に介在される電解質膜を含む膜状電極ユニットと、この膜状電極ユニットの両面に配置される燃料用流路板および酸化性ガス用流路板と、前記膜状電極ユニットと燃料用流路板および酸化性ガス用流路板との間にそれぞれ配置されるシール材とを有する単セルを備えた燃料電池であって、
前記シール材は、下記一般式(II)にて表される含金属元素系モノマーの共重合体を含むことを特徴とする燃料電池。
- 前記一般式(II)のR 11 、R 12 、R 13 がアルキル基、アルコキシ基、エーテル基から選ばれると共に、全て同じ基で、R 14 〜R 17 がアルキル基、アルコキシ基、エーテル基、ハロゲン基から選ばれると共に、全て同じ基であることを特徴とする請求項1記載の燃料電池。
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