JP4746206B2 - 経編地 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、伸縮性があり、さらに、ジャカード柄を有する経編地に関する。
【0002】
【従来の技術】
伸縮性を有する経編地中に柄を出す方法として、従来より行われているのは、レース編機を使用して弾性糸を交編したチュールなどの地組織に、別筬にセットされた非弾性糸の柄糸を、筬の振りの大小により任意の柄を形成する方法が多く用いられており、これによる伸縮性と柄を兼ね備えた経編地が製造されている。しかしこの方法は、任意な柄が容易に得られるという利点はあるが、経糸をセットする筬枚数が多くなり、必然的に生産性も悪く、編地の厚みも厚くなりがちであり、さらに、非弾性糸の柄糸による編地のざらつきが避けられず、特にインナーの様に肌に密着しやすい衣服に縫製した場合には、着用時に不快な思いをする事がある。
【0003】
また、フロント筬にジャカード機能を有するコンピュータを使用した柄編み可能な経編機を使用して、弾性糸を交編した伸縮性を有する柄編地が製造されているが、この場合には、柄出しを行うフロントに配置されたジャカード筬には非弾性糸を使用し、非弾性糸の振りにより柄形成され、弾性糸をミドル筬、あるいはバック筬に使用して、弾性糸は一定の組織の繰り返しによる地組織として編成されている。
【0004】
この場合、ジャカード筬の非弾性糸はルーピングされている場合が多く、ジャカード運動によりルーピング出来ない部分が出来るため、ルーピングしない部分を補うために非弾性糸の筬がもう一枚必要となり、その結果、非弾性糸のループが一つの部分、二つ以上のループが重なった部分が出来、編地は厚くなり、さらに、特に裏面がざらつく編地となり、柄もはっきりした繊細な柄は得られない。また、ジャカード筬に、弾性糸にナイロンなどの非弾性糸を被覆した被覆弾性糸を使用する場合も同様で、被覆弾性糸以外に、同じ被覆弾性糸、あるいは非弾性糸によりルーピングしない部分を補うための筬がもう一枚必要で、厚手の編地であるため凹凸が発生し、かつ、伸度も出にくく繊細な柄も得られない編地となる。
【0005】
以上の様に、伸縮性があり、さらに、ジャカード柄を有する経編地で、凹凸の小さい繊細な柄と良好な伸縮性を有しつつ、かつ、薄地である経編地は、これまで得られていない。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、上記のような問題を解決し、伸縮性があり、さらに、ジャカード柄を有する経編地を提供することを目的とするものである。
【0007】
【課題を解決するための手段】
本発明者は、柄を有する経編地を構成する各要素について検討した結果、弾性糸と非弾性糸、及び、ジャカードの筬配置、組織を特定することにより上記の課題が解決されることを見出し、本発明に到達した。
本発明は、ジャカード筬に弾性糸を使用し、ジャカード筬より前方に位置するフロント筬は非弾性糸を使用して振りの入ったルーピングされた組織とし、該弾性糸のジャカード運動で柄形成されたことを特徴とする経編地である。
【0008】
以下、本発明を詳細に説明する。
本発明は、ジャカード機構を有する経編機で、ジャカード機構のフロント側に、もう一枚の筬を使用する。例えば、カールマイヤー社製、コンピュータジャカードラッセル機のRSJ4/1などの経編機のフロント側に、もう1枚フロント筬を追加した機構であれば使用できる。これらのジャカード機構のフロント側に筬がもう一枚追加された編機を使用し、フロント筬には非弾性糸を配置する。
【0009】
非弾性糸としては、特に制限はなく、ポリエステル、ナイロン、アクリルなどの合成繊維、また、綿、羊毛、麻、等の繊維が使用でき、特に、ポリエステルやナイロンを使用すれば、寸法安定性の良いインナー衣料となり、吸水性や、吸湿性を付与する場合には、綿、キュプラ、レーヨンなどの繊維を使用すればよい。また、混紡、混繊、交撚、あるいは、編機上で交編するなどにより、2種以上の糸を混合して使用することも出来る。使用する糸の糸形態についても任意で、フィラメント糸、スパン糸、あるいは、異型断面糸などでも使用可能である。
【0010】
これらの非弾性糸の太さについては特に限定されないが、好ましくは20〜170dtex、より好ましくは30〜110dtexの糸を使用する。編地に薄地、軽量を求める場合には、なるべく細い糸使いとし、強度向上を求める場合には、なるべく太い糸使いとすればよい。
本発明においては、非弾性糸を使い、振りの入ったルーピングされた組織を形成する。振りの入ったルーピングされた組織とは、1から数コース毎に1から3ウェール隣のウェールに振られてそこでルーピングし、また1から数コース後に元のウェールに振られてそこでルーピングを行うような組織で、例えば、10/12や、12/21/12/10/01/10、あるいは、23/21/12/10/12/21などのような組織が使用出来、10/01のような鎖編みは含まれない。なお、10/12は経編編成の記号で、ラッセル機の場合は、20/42の様に倍数の数字で標記される場合もある。
【0011】
本発明の経編地は、ジャカード筬のフロント側にもう1枚筬のあるトリコット編機、ラッセル編機などの経編機により製造可能で、編機のゲージについては特に限定されないものの、24〜32ゲージ/2.54cmの編機の使用が好ましい。
本発明では、ジャカード筬に弾性糸を使用しているが、弾性糸としては、ポリウレタン系、ポリエーテルエステル系等の弾性糸が使用可能であり、通常のポリウレタン系弾性糸で、例えば乾式紡糸又は溶融紡糸したものが使用でき、ポリマーや紡糸方法は特に限定されない。糸の太さは20〜700dtex(デシテックス)が好ましく、30〜500dtexの糸がさらに好ましい。破断伸度は、好ましくは400〜1000%のもので、伸縮性に優れ、染色加工時のプレセット工程における通常の処理温度180℃近辺で伸縮性を損なわないことが好ましい。
【0012】
ジャカード筬に配置された弾性糸は、ジャカード運動により柄出しされ、ジャカード筬の弾性糸を、柄を出すために、弾性糸を左右のウェールに振りつつ編成する方法がある。例えば、弾性糸は挿入編みとし、柄形状に沿ってウェール間の振りを行うように設定する。この場合、ジャカード筬は2枚とし、2枚の筬にゲージに相当する糸本数を分割して配置し、2枚のジャカード筬で柄出し編成すれば、サテンとチュールなどそれぞれ別々のジャカード運動も可能であり、より複雑な柄が可能となる。また、ジャカード筬の弾性糸は、挿入のみでなくルーピングも可能であり、さらに挿入とルーピングの組み合わせであっても多種の柄出しが可能となる。
【0013】
本発明により編成される編地の柄は、弾性糸のジャカード機構で弾性糸に振りが入ることにより、フロントに配置された非弾性糸を弾性糸が引っ張り、加えて組織によれば弾性糸自身も変形することにより、大小様々な形状のメッシュ調の柄が形成されることが大きな特徴であり、従来のレース編機による柄とは異なる柄表現が可能になる。すなわち、筬の振りにより変形させられた弾性糸の回復力を利用して、非弾性糸および弾性糸の各シンカーループを変えることにより、凹凸の小さい繊細なメッシュ調の柄構成を可能としたもので、メッシュ柄を規則的なメッシュ調とすれば、全体がメッシュ調の編地となり、不規則なメッシュ調とすれば、例えば花模様などの柄とする事が出来る。
【0014】
本発明による編地は、ジャカード筬の弾性糸とフロント側に配置されるフロント筬の非弾性糸により製造可能であり、ジャカード筬は、1枚でも、また、数枚でも可能である。また、ジャカード筬の後方の筬には、非弾性糸あるいは弾性糸など任意な糸を配置することができ、編み組織についても任意であり、規則的なルーピング組織、挿入組織の他、ジャカードにより柄編成を行っても良い。
【0015】
本発明の経編地は、弾性糸のジャカード運動により、主に非弾性糸のシンカーループが変形する事により柄形成されるのが大きな特徴であるが、これにより、例えば、カールマイヤー社製、コンピュータジャカードラッセル機のRSJ4/1などの従来の柄出し機構による経編機を使用した場合、フロント筬の非弾性糸によるジャカード運動で形成される柄よりも、本発明の経編地では薄地になり、同時に形成される柄も凹凸の小さいはっきりした繊細な柄とすることが可能となる。また、編地の伸縮性も優れた編地となり、経、緯方向の伸びバランスの良い経編地とする事が容易に可能である。また、編地の全体に柄を入れるのではなく、全体は無地とし、部分的にメッシュ調の柄とすることなども可能で、また、全体の柄の中に、違ったパターンの柄を部分的に編成することも可能である。
【0016】
これら部分的に異なった柄を出した編地では、例えば、インナーのトップスで、身頃部分は無地とし、バスト部分のカップ部に柄を出した様な表現が可能で、柄部はメッシュ調とするため無地部より密度が粗となって、バスト部分のふくらみにフィットするインナーとなる。
本発明の経編地は、通常の染色加工により仕上げることが可能で、弾性糸のジャカード筬を含む2枚以上の筬を使うことにより、特に伸縮性に優れた、薄地の経編地とすることができ、インナー、アウター用などの衣料の他、レースなどの資材にも使用可能である。
【0017】
【発明の実施の形態】
〔実施例1〕
仕掛け巾130インチ(330cm)の28ゲージ/2.54cmのコンピュータジャカードラッセル機で、ジャカード筬のフロント側にもう1枚フロント筬を有する経編機を使用して、図1に示す様な柄の経編地を製造するに当たり、各筬と糸種、編成条件設定を下記のように行った。
【0018】
L1(フロント筬):ナイロン44dtex(デシテックス)/34f(フィラメント)を使用し、組織を12/21/12/10/01/10とした。
J2―1、J2−2(ジャカード筬):ロイカ(旭化成株式会社製、ポリウレタン弾性糸:以下同じ表示とする)78dtexを使用し、これらはジャカード筬で2枚の筬にゲージに相当する糸本数を2分割して1本交互にL2−1、L2−2に糸通しして、2枚のジャカード筬で柄出し編成する。
【0019】
使用した編機は、ジャカード筬で編成する基本組織を、ジャカード機構によりガイドが移動して柄形成するタイプで、その基本組織を22/11/22/00/11/00とし、この基本組織にジャカード機構による柄出しを図2の様に行った。なお、図2において、基本組織とジャカード筬であるJ2の振りを変化させた状態を表し、記号T、Hは、ジャカード筬の振り変化で基本組織とは異なった振りとし、メッシュ1、メッシュ2、メッシュ3を編成した。また、糸通し図で、・印は、筬に糸通ししている状態である。
【0020】
これらにより、図1において、A部はジャカード筬の振りをメッシュ1とし、B部はメッシュ2の振りとし、C部はメッシュ3の振りとして編成した。
L3:ロイカ78dtexを使用し、組織を11/00/11/00/11/00とした。
以上のような糸配列、組織により図1に示す柄の経編地を編成した後、染色、加工を行った。
【0021】
このようにして得られた経編地は、薄地で、3種の柄にもそれぞれ特徴がある繊細な柄で、さらに、特に伸縮性に優れる経編地となり、テンシロン引張試験機による伸長テストで、巾2.5cm、把持間隔10cm、伸長スピード300mm/分の条件で、22N荷重下の伸度が、タテ方向、ヨコ方向とも150%を越える経編地であり、従来の柄編み地では達成できないような伸縮性を有する経編地であった。
【0022】
〔実施例2〕
実施例1において、L3の筬もジャカード筬使いとし、ロイカ44dtexによるジャカード編成とし、基本組織からジャカード筬を図3の様に変化させ、メッシュ4、メッシュ5、メッシュ6をそれぞれ編成した。
以上のような糸配列、組織により経編地を編成した後、染色、加工を行った。
【0023】
得られた経編地は、伸縮性に優れ、特に柄に特徴ある経編地であった。
〔実施例3〕
実施例1において、L3のロイカ78dtexを外して、L1のナイロン44dtex/34f、J2のロイカ78dtex使いジャカード筬を使用して、J2のジャカード筬の振りを、基本組織から図4の様に変化させ、メッシュ7、メッシュ8、メッシュ9をそれぞれ編成した。
【0024】
以上のような糸配列、組織により経編地を編成した後、染色、加工を行った。
得られた経編地は、特に薄地で伸縮性に優れ、繊細な柄である、インナーに好適な経編地であった。
〔実施例4〕
実施例1において、L1とJ2−1、J2−2筬のみ使用し、各筬と組織を下記のように変更して編地を編成した。
【0025】
L1(フロント筬):組織を10/23とした。
J2―1、J2−2(ジャカード筬):基本組織を12/10とした。
以上の条件により、ジャカード筬の基本組織をジャカードによる振りを加え、メッシュ10、メッシュ11、メッシュ12とし、弾性糸は挿入でなくルーピングされた状態である。
【0026】
こうして出来た経編地の染色加工を行い、薄地で伸縮性に優れ、かつ、形態安定性に優れる経編地を得た。
〔比較例1〕
仕掛け巾130インチ(330cm)の28ゲージ/2.54cmのコンピュータジャカードラッセル機でRSJ4/1を使用し、下記のような糸配列により、図1に示す柄編み地を編成した。
【0027】
J1―1、J1−2(ジャカード筬):ナイロン44dtex/34fを使用し、ジャカード筬2枚の筬にゲージに相当する糸本数を2分割して1本交互にJ1−1、J1−2に糸通しして、基本組織を12/10/12/10/12/10とし、ジャカード筬で図6に示すような柄を編成した。ここで、図1に示すA部は柄1、B部は柄2、C部は柄3とした。
【0028】
L2(地組織筬):ナイロン44dtex/34fを使用し、組織を12/21/12/10/01/10として編成した。
L3(地組織筬):ロイカ154dtexを使用し、組織を22/11/22/00/11/00として編成した。
以上のようにして図1に示す柄の経編地を編成した後、染色、加工を行った。
【0029】
得られた経編地は、凹凸もあり、繊細な柄とならず、伸縮性が阻害され、薄手感もやや不足した編地であった。
【0030】
【発明の効果】
本発明により、凹凸の少ない繊細な柄が可能で、伸縮性に優れる薄手の柄編地が得られ、インナー、アウター用途、資材に最適な経編地が得られる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の経編地における柄の一例を示す図である。
【図2】本発明の実施例1の経編地を編成する基本組織、ジャカード筬の変化、糸通し状態を示す図である。
【図3】本発明の実施例2の経編地を編成する基本組織、ジャカード筬の変化、糸通し状態を示す図である。
【図4】本発明の実施例3の経編地を編成する基本組織、ジャカード筬の変化、糸通し状態を示す図である。
【図5】本発明の実施例4の経編地を編成する基本組織、ジャカード筬の変化、糸通し状態を示す図である。
【図6】本発明の比較例1の経編地を編成する基本組織、ジャカード筬の変化、糸通し状態を示す図である。
【符号の説明】
A…柄A部
B…柄B部
C…柄C部
Claims (2)
- ジャカード筬に弾性糸を使用し、ジャカード筬より前方に位置するフロント筬は非弾性糸を使用して振りの入ったルーピングされた組織とし、該弾性糸のジャカード運動で柄形成されたことを特徴とする経編地。
- ジャカードラッセル経編機により製造された、請求項1に記載の経編地。
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