JP4745303B2 - 充填材及びその製造方法 - Google Patents
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Description
すなわち、樹脂で覆われていない部分から水分が滲入(吸水)すると木質系材料は膨張し、成形体を内部から押し広げるように作用する。成形体に内部から押し広げようとする力が働くと、木質系材料どうし繋ぐ樹脂の量が少ない部分ではその樹脂が切断される。このような理由により、成形体の強度が低下すると考えられる。
そこで、木質系材料を用いた成形品の耐水性を向上させる、すなわち、吸水による機械的強度の低下や吸水膨張を抑えることが望まれている。
(A)分子中に少なくとも一つの疎水基を有するカルボニル化合物、
(B)分子中に少なくとも一つの疎水基を有するカルボン酸、
(C)前記カルボン酸(B)の無水物、
(D)前記カルボン酸(B)の金属塩、
(E)前記物質(A)〜(D)の中から選ばれる物質の誘導体。
また、本発明の充填材の製造方法は、木質系材料と、該木質系材料を膨潤させる膨潤化剤と、を少なくとも混合し、該木質系材料を膨潤させ叩きながらフィブリル化させるフィブリル化処理を行い、さらに上記物質(A)〜(E)の中から選ばれる一種以上の物質(F)を段階的に添加して粉砕しながら混合して前記フィブリル化された木質系材料にメカノケミカル活性を付与するメカノケミカル活性処理を行うことにより充填材を製造することを特徴とする。すなわち、木質系材料は、膨潤化剤により膨潤し、叩かれてフィブリル化される。そのため、得られる充填材を用いた成形品は、木質系材料におけるフィブリル化された部分どうしが絡み合い、木質系材料どうしが強固に結合するので、強度が向上するとともに、耐水性が向上して吸水による機械的強度の低下や吸水膨張による寸法変化を抑えることができる。このような効果は、充填材の配合比が多い成形品で顕著である。
上記膨潤化剤は、水等の液体のみならず、水蒸気等の気体でもよい。
膨潤した木質系材料を叩く際には、機械に結合されていない処理媒体をぶつけて木質系材料を叩くと好適であるものの、このような処理媒体を用いない機械で木質系材料を叩いてもよい。
木質系材料を粉砕しながら混合する際には、機械に結合されていない処理媒体をぶつけて木質系材料を粉砕しながら混合すると好適であるものの、このような処理媒体を用いない機械で木質系材料を粉砕しながら混合してもよい。
請求項2に係る発明では、充填材を用いた成形品の耐水性をさらに向上させることができる。
請求項3に係る発明では、成形品の耐水性を向上させる充填材を木質系材料から製造する方法を提供することができる。
請求項4に係る発明では、充填材から膨潤化剤を除去する際に充填材の凝集を抑止することができるので、膨潤化剤の除去を容易にすることができる。
(1)充填材及び木質系成形体の製造方法の説明:
(2)充填材及びその製造方法の作用、効果、並びに、充填材の用途:
(3)実施例:
(4)具体例:
(5)まとめ:
図1は参考例にかかる充填材及び木質系成形体の製造方法を模式的に示す流れ図である。本充填材の製造方法では、木質系材料11と、該木質系材料を膨潤させる膨潤化剤12と、を少なくとも混合し、該木質系材料11を膨潤させ叩きながらフィブリル化させるフィブリル化処理を行うことにより充填材20を製造する。そして、得られる充填材20と流動状態の樹脂51とを少なくとも混合して成形することにより、木質系成形体(成形品)60を製造することができる。
フィブリル化処理の際に木質系材料11と混合される素材18は、膨潤化剤12のみでも、当該膨潤化剤とは異なる添加剤13を含む素材でもよい。木質系成形体60を形成するために用いられる素材58は、上記素材20,51のみでも、当該素材20,51とは異なる添加剤53を含む素材でもよい。
なお、パルプとは、木材その他の植物から機械的又は化学的処理によって抽出したセルロース繊維の集合体をいうものとする。パルプ化とは、木材その他の植物を機械的又は化学的処理によってセルロース繊維を抽出する処理をいうものとする。フィブリル化とは、叩解(解繊)などの機械的処理を受けた材料が部分的に裂けて枝状化した状態になることをいうものとする。膨潤とは、木質系材料が膨潤化剤を吸収して木質系材料の体積が増加する現象をいうものとする。
混合された素材18から容易に除去可能な物質を膨潤化剤12に用いると、充填材に膨潤化剤が残存しないことが求められている場合に好適である。例えば、膨潤化剤12に揮発性を有する溶媒を用いると、素材18に含まれる膨潤化剤12を揮発させることにより素材18から膨潤化剤12を除去することができるので、好適である。揮発性を有する溶媒には、上述した水、各種有機溶剤、これらの混合物、等を用いることができる。
処理媒体の材質には、鋼鉄やステンレス等の金属、アルミナ等のセラミックス、ポリアミド(ナイロン)等の合成樹脂、等を用いることができる。ロッド状媒体には、例えば、径10.0〜50.0mmの円柱状媒体が用いられる。ボール状媒体には、例えば、径10.0〜50.0mmの球状媒体が用いられる。
粉砕室SP1の振動条件は、木質系材料のフィブリル化のし易さ等に応じて振動させる時間や強さ(例えば粉砕筒92の振幅の大きさや振動数)等を設定する。
上記素材18を混合する時間は、加えられる機械的エネルギー量や温度条件等に応じて設定すればよいが、例えば10〜120分とすることができる。
ここで、粉砕筒92の振幅を大きくしたり振動数を多くしたり、或いは混合時間を長くすると、フィブリル化された木質系材料を小さくすることができる。
以上説明したようにして、パルプ化していない木質系材料11から木質系の充填材(フィラー)20を製造することができる。得られる充填材20は、図1の模式図で示すように、非開裂部20aと開裂部20bを有し、一部が解繊された構造となる。
樹脂51には、溶融状態(流動状態)の熱可塑性樹脂、加熱することにより溶融可能な熱可塑性樹脂、液状(流動状態)の熱硬化性樹脂、これらの組み合わせ、等を用いることができる。前記液状は、低粘度の液状から高粘度の液状まで含む。
上記繊維状素材に、鉱物繊維(鉱物から得る天然繊維)、ガラス繊維、炭素繊維、金属繊維、これらの組み合わせを用いると、フィブリル化した木質系材料の開裂部に硬質の繊維状素材が付着するため、より拡がった繊維状構造が形成され、当該繊維状構造がフィブリル化後の木質系材料をつなぎ止めて木質系成形体を崩れにくくさせ、強度及び耐水性をより向上させる。鉱物繊維には、セピオライト、ワラストナイト、マグネシウムウイスカ、等、多孔質の鉱物繊維、多数の針状突起を有する鉱物繊維、多数の針状突起を有する多孔質鉱物繊維が好ましい。
樹脂51が流動状態であれば、樹脂51をそのまま成形機構A1に供給して素材58を軟化した素材にすることができる。樹脂51が熱可塑性樹脂である場合、加熱機構を有する成形機構に対して固形の原反として樹脂51を投入可能である。そして、素材58中の熱可塑性樹脂が固化したり熱硬化性樹脂が硬化したりすると、固形状の木質系成形体60が形成される。
素材58中の樹脂51の配合割合は、例えば、0.1〜50重量%、1〜40重量%、5〜30重量%、10〜25重量%とすることができる。
なお、メカノケミカル活性とは、固体物質に摩砕、摩擦、延伸、圧縮などの機械的エネルギーを加えることによってひきおこされる表面活性をいうものとする。従って、木質系材料は、メカノケミカル活性が大きいほど該木質系材料とは異なる物質との反応性が高くなり、疎水化変性剤との反応性が高くなってより疎水性となり、樹脂等の成形材料と混合して成形する際の成形性が向上する。この成形性とはメカノケミカル活性が付与された木質系材料と他の成形材料とを少なくとも混合して成形するときの成形の容易性をいうものとし、成形性が良いとは成形が容易であることをいうものとする。
木質系材料にメカノケミカル活性が付与されたか否かは、例えば、メカノケミカル活性処理前後で疎水化変性剤が無くなるか又は減少するかを分析し、木質系材料と疎水化変性剤との反応の存在を分析することにより確認することができる。疎水化変性剤にロジン(松脂)を用いる場合、メカノケミカル活性処理により、木質系材料のOH基とロジンのCOOH基とがエステル結合すると推測される。そこで、メカノケミカル活性処理前の木質系材料及びロジン並びに同処理後の木質系材料にFT−IR(フーリエ変換赤外分光分析)を行い、同処理前後で、ロジンのCOOH基による1700cm-1付近の吸収波長が無くなるか又は減少するかし、木質系材料のOH基とロジンのCOOH基とのエステル結合による1656〜1660cm-1付近の吸収波長が増加すれば、木質系材料にメカノケミカル活性が付与されたことになる。
メカノケミカル活性処理の際に木質系材料を粉砕して小さくすることができるものの、木質系材料11に粒状の材料を用いると、初期段階から比表面積(単位質量当たりの表面積)が大きく、高いメカノケミカル活性を木質系材料に付与することができる結果、樹脂成形品である木質系成形体60の成形を非常に容易にさせることができる。粒状の木質系材料の粒径は、例えば、0.1〜20.0mmとすることができ、粒径をより揃えるために0.5〜10.0mm、1.0〜5.0mmとしてもよい。木質系材料の粒度を調整すると、木質系成形体の強度を調整することができる。
粉砕室SP1の振動条件は、木質系材料へのメカノケミカル活性の付与のし難さ等に応じて振動させる時間や強さ(振幅の大きさや振動数)等を設定する。
上記素材28を混合する時間は、加えられる機械的エネルギー量や温度条件等に応じて設定すればよいが、例えば10〜120分とすることができる。
ここで、粉砕筒92の振幅を大きくしたり振動数を多くしたり、或いは混合時間を長くすると、メカノケミカル活性を付与した木質系材料を小さくすることができる。
フィブリル化された木質系材料20にメカノケミカル活性を付与する際、フィブリル化後の木質系材料20からは膨潤化剤12を除去しておくことが好ましい。そこで、膨潤化剤12は、混合された素材18から容易に除去可能な物質が好ましく、揮発性を有する溶媒が好ましい。
粒径0.1〜20.0mmの粒状の木質系材料とロジン(松脂)とを混合して木質系材料にメカノケミカル活性を付与する場合、木質系材料100重量部に対してロジンを1〜100重量部とすることができる。
本変形例のメカノケミカル活性処理にも、上述した各種のメカノケミカル活性処理に使用可能なミルMI2等を用いることができる。
(A)分子中に少なくとも一つの疎水基を有するカルボニル化合物、
(B)分子中に少なくとも一つの疎水基を有するカルボン酸、
(C)前記カルボン酸(B)の無水物、
(D)前記カルボン酸(B)の金属塩、
(E)前記物質(A)〜(D)の中から選ばれる物質の誘導体。
変性剤24は、木質系材料の表面を改質するための物質であり、例えばサイズ剤を用いることができる。
また、変性剤24は、上記物質(A)〜(D)と、該物質(A)〜(D)の誘導体と、の中から選ばれる二種以上の物質でもよい。
本実施形態では、変性剤24を少しずつ段階的に添加するので、膨潤化剤12により分解される変性剤24が少なくなり、木質系材料11に定着する変性剤24の量が増え、木質系充填材41,42のメカノケミカル活性を高めることができる。これにより、充填材41,42の反応性が高くなり、充填材41,42を用いた成形品(例えば図1に示す成形体60)の強度がさらに向上するとともに、成形品の耐水性がさらに向上して吸水による機械的強度の低下や吸水膨張が抑えられる。
また、木質系材料11に定着する変性剤24の量が増え、充填材41同士の凝集が抑止されることにより、膨潤化剤12で湿潤した充填材41から膨潤化剤を除去した充填材42を生成する際に充填材42の凝集を抑止することができ、膨潤化剤12の除去を容易にすることができる。
木質系材料11に粒状の材料を用いると、充填材41,42を用いた成形品の成形を非常に容易にさせることができる。粒状の木質系材料の粒径は、例えば、0.1〜20.0mm、0.5〜10.0mm、1.0〜5.0mmとすることができる。
上記素材11,12,24のみを混合してもよいが、上述した添加剤13を一緒に混合してもよい。微粒状の添加剤を添加する場合、例えば、木質感を十分に残すため、木質系材料100重量部に対する配合量を100重量部以下(より好ましくは50重量部以下)とする。
図1で示した製造方法では、パルプ化されていない木質系材料の繊維どうしの間に膨潤化剤が入り込み、繊維間の水素結合が切られて木質系材料が膨潤する。膨潤した木質系材料は、フィブリル化処理で叩かれてフィブリル化される。フィブリル化処理後の木質系材料(充填材20)は、解繊していない非開裂部20aと解繊した開裂部20bとを有する構造となり、一部が単繊維化された構造となる。そこで、得られる充填材を、樹脂を含む他の成形材料と混合して成形すると、樹脂で覆われていない開裂部20bどうしが絡み合い、木質系材料どうしが強固に結合する。これにより、木質系材料から得られる充填材を用いた成形品の強度及び耐水性が向上する。なお、絡み合った開裂部20bに水が触れるとその部分で開裂部20bどうしの絡み合いがほぐれてしまうが、絡み合った開裂部20bは多数存在するので、部分的にほぐれてしまっても極端な強度低下は起こらない。さらに、絡み合った開裂部20bが水の滲入を抑止する防護網として機能するので、耐水性が向上すると推察される。
以上により、本製造方法によると、充填材を用いて成形品を成形する際の成形性を向上させるとともに、充填材自体の生産効率を向上させることができる。
以上より、充填材から膨潤化剤を除去する際に充填材の凝集を抑止して膨潤化剤の除去を容易にすることが望まれている。
また、木質系充填材を用いた成形品の強度をさらに向上させるとともに、耐水性をさらに向上させる、すなわち、吸水による機械的強度の低下や吸水膨張を抑えることも望まれている。
例えば、膨潤化剤12が水で変性剤24がAKDの場合、木質系材料の開裂部20bに存在する水酸基とAKDの>C=O基とからエステルが形成され、AKDが開裂部20bに定着することが考えられる。同様に、変性剤24がロジン酸、ロジン酸の金属塩、ASA等であっても、木質系材料の開裂部20bに存在する水酸基と変性剤24のカルボキシル基等からエステルが形成され、変性剤24が開裂部20bに定着することが考えられる。AKDやASAは水により分解される性質を有しているが、変性剤24の段階添加によりAKDやASAが分解されにくくなり、木質系材料11に定着されやすくなる。これにより、充填材41のメカノケミカル活性が高められる。
また、充填材41から乾燥等により膨潤化剤12を除去するとき、図6の右下部分で模式的に示すように開裂部20bに変性剤24が定着しているので、開裂部20b同士の水素結合が抑止され、充填材42の凝集が抑止される。従って、膨潤化剤で湿潤した充填材から膨潤化剤を除去する際に充填材の凝集を抑止することができ、膨潤化剤の除去を容易にすることができる。
以下、実施例を示して具体的に本発明を説明するが、本発明は以下の例により限定されるものではない。
[参考実施例1]
木質系材料として、木粉(大林工業製#100、平均粒子径500μm)を用いた。当該木粉の含水率は5%であった。膨潤化剤には、水を用いた。樹脂として、JIS K7210の附属書A表1の条件M(試験温度230℃、荷重2.16kg)におけるMFRが30g/10minのポリプロピレン(サンアロマー株式会社製PM930V、ランダム系)、及び、マレイン酸変性樹脂(三洋化成工業株式会社製ユーメックス1010)を用いた。
フィブリル化処理には、フリッチェジャパン製バッチ式遊星型ボールミルP−6を用い、このボールミルに500mlのポットを1個設置した。処理媒体として、直径20mmのアルミナボール25個を用いた。このとき、処理媒体の容積率は30%であった。
コンパウンドを生成するための加熱機付き混練押出機としてコニカル二軸押出成形機(シンシナティエクストルージョン社製タイタン80)を用い、素材の出口部にはダイを取り付けなかった。スクリューの回転速度は、10rpmとした。
成形品を形成するための加熱機付き混練押出機としてコニカル二軸押出成形機(シンシナティエクストルージョン社製タイタン68)を用い、素材の出口部に断面10mm×110mm角の押出成形品を形成するダイを取り付けた。スクリューの回転速度は、10rpmとした。
以下に記載した素材の配合量で乾燥木粉とポリプロピレンとマレイン酸変性樹脂とをコンパウンド生成用の混練押出機に投入し、素材を230℃に加熱して混合しながら出口部から不定形の状態で押し出してコンパウンドを調整した。
素材の配合量:
乾燥木粉 80重量%
ポリプロピレン 18重量%
マレイン酸変性樹脂 2重量%
木質系材料、膨潤化剤、樹脂には、参考実施例1と同じものを用いた。コンパウンド生成用及び成形品形成用の混練押出機も上記実施例と同じものを用い、スクリューの回転速度も実施例と同じにした。ただし、フィブリル化処理を行わず、木粉と水とを混合した。
木粉100重量部と水1500重量部とを混合し、水に浸潤させた木粉を乾燥台上に平たく薄く厚さ1cmとなるように載せ、送風乾燥機で加熱し、送風機にて該素材に風速0.5m/secで送風しながら、絶乾処理を行った。その後、送風乾燥機内を30℃に下げ、乾燥木粉(含水率0%)を得た。図8は、当該乾燥木粉を走査電子顕微鏡で撮影した写真を示している。ただし、図8の縮尺倍率は、図7の縮尺倍率の1/5倍としている。図8に示すように、当該乾燥木粉を走査電子顕微鏡で観察したところ、木粉がフィブリル化していないことが確認された。
参考実施例1と同じ配合量で乾燥木粉とポリプロピレンとマレイン酸変性樹脂とをコンパウンド生成用の混練押出機に投入し、素材を230℃に加熱して混合しながら出口部から不定形の状態で押し出してコンパウンドを調整した。
次に、上記コンパウンドを成形品形成用の混練押出機に投入し、10mm×110mm角に押出成形して長さ1000mmの木質系成形体を作製し、20℃に空冷した。
参考実施例1及び比較例1で得られた木質系成形体を20mm×100mm×9mmに切断して試験片を作成し、この試験片について、JIS K7171-1994(プラスチック−曲げ特性の試験方法)に準拠した曲げ強度(曲げ強さ)を測定した。
また、水を入れた容器内に20mm×100mm×9mmの試験片を入れて24時間放置した後の試験片の曲げ強度(吸水曲げ強度)を測定した。
試験結果を表1に示す。
以上より、木質系材料と膨潤化剤とを少なくとも混合し、該木質系材料を膨潤させ叩きながらフィブリル化させると、成形品の強度を向上させるとともに、耐水性を向上させる、すなわち、吸水による機械的強度の低下や吸水膨張を抑えることが確認された。
木質系材料、膨潤化剤、樹脂には、参考実施例1と同じものを用いた。
変性剤として、AKD(荒川化学工業株式会社製サイズパインK−287)を用いた。
フィブリル化処理及びメカノケミカル活性処理には、フリッチェジャパン製バッチ式遊星ボールミルP−6を用い、このボールミルに500mlのポットを1個設置した。処理媒体として、直径20mmのアルミナボール25個を用いた。このとき、処理媒体の容積率は30%であった。
コンパウンドを生成するための加熱機付き混練押出機としてコニカル二軸押出成形機(シンシナティエクストルージョン社製タイタン80)を用い、素材の出口部にはダイを取り付けなかった。スクリューの回転速度は、10rpmとした。
成形品を形成するための加熱機付き混練押出機としてコニカル二軸押出成形機(シンシナティエクストルージョン社製タイタン68)を用い、素材の出口部に断面10mm×110mm角の押出成形品を形成するダイを取り付けた。スクリューの回転速度は、10rpmとした。
以下に記載した素材の配合量で乾燥木粉とポリプロピレンとマレイン酸変性樹脂とをコンパウンド生成用の混練押出機に投入し、素材を230℃に加熱して混合しながら出口部から不定形の状態で押し出してコンパウンドを調整した。
素材の配合量:
乾燥木粉 80重量%
ポリプロピレン 18重量%
マレイン酸変性樹脂 2重量%
木質系材料、膨潤化剤、樹脂、変性剤には、実施例2と同じものを用いた。コンパウンド生成用及び成形品形成用の混練押出機も上記実施例と同じものを用い、スクリューの回転速度も実施例と同じにした。
木粉100重量部に水500重量部を加え、水に浸潤させた木粉をボールミルに投入した。そして、変性剤20重量部を一度にボールミルに投入し、回転数250rpmの回転条件で240分間ポットを回転させた。フィブリル化処理及びメカノケミカル活性処理後の素材を乾燥台上に平たく薄く厚さ1cmとなるように載せ、送風乾燥機で加熱し、送風機にて該素材に風速0.5m/secで送風しながら、絶乾処理を行った。その後、送風乾燥機内を30℃に下げ、処理後の乾燥木粉(含水率0%)を得た。図10は、当該乾燥木粉を走査電子顕微鏡で撮影した写真を示している。図10の縮尺倍率は、図9の縮尺倍率と同じにしている。図10に示すように、当該乾燥木粉を走査電子顕微鏡で観察したところ、木粉がフィブリル化していることが確認された。
実施例2と同じ配合量で乾燥木粉とポリプロピレンとマレイン酸変性樹脂とをコンパウンド生成用の混練押出機に投入し、素材を230℃に加熱して混合しながら出口部から不定形の状態で押し出してコンパウンドを調整した。
次に、上記コンパウンドを成形品形成用の混練押出機に投入し、10mm×110mm角に押出成形して長さ1000mmの木質系成形体を作製し、20℃に空冷した。
木質系材料、膨潤化剤、樹脂には、実施例2と同じものを用いた。コンパウンド生成用及び成形品形成用の混練押出機も上記実施例と同じものを用い、スクリューの回転速度も実施例と同じにした。
木粉100重量部に水500重量部を加え、水に浸潤させた木粉をボールミルに投入した。ただし、変性剤は投入しなかった。そして、回転数250rpmの回転条件で240分間ポットを回転させた。フィブリル化処理の素材を乾燥台上に平たく薄く厚さ1cmとなるように載せ、送風乾燥機で加熱し、送風機にて該素材に風速0.5m/secで送風しながら、絶乾処理を行った。その後、送風乾燥機内を30℃に下げ、処理後の乾燥木粉(含水率0%)を得た。
実施例2と同じ配合量で乾燥木粉とポリプロピレンとマレイン酸変性樹脂とをコンパウンド生成用の混練押出機に投入し、素材を230℃に加熱して混合しながら出口部から不定形の状態で押し出してコンパウンドを調整した。
次に、上記コンパウンドを成形品形成用の混練押出機に投入し、10mm×110mm角に押出成形して長さ1000mmの木質系成形体を作製し、20℃に空冷した。
実施例2,3及び比較例2で得られた乾燥木粉と処理前の木粉とについてFT−IRを行い、OH基による2800〜3000cm-1の吸光度に対するエステルの1656〜1660cm-1の吸収度の比(エステル/水酸基吸光度比)を求めた。
さらに、木質系成形体を20mm×100mm×9mmに切断して試験片を作成し、この試験片について、JIS K7171-1994に準拠した曲げ強度(曲げ強さ)を測定した。
また、水を入れた容器内に20mm×100mm×9mmの試験片を入れて24時間放置した後の試験片の曲げ強度(吸水曲げ強度)を測定した。
試験結果を表2に示す。
また、実施例2,3を比較すると、エステル/水酸基吸光度比は、実施例3よりも実施例2の方が大きかった。従って、変性剤を段階的に添加することにより、木質系材料に付与されるメカノケミカル活性が高められることが確認された。
さらに、曲げ強度及び吸水曲げ強度ともに、比較例2よりも実施例2,3の方が大きかった。従って、変性剤を添加することにより、成形品の強度を向上させるとともに、耐水性を向上させる、すなわち、吸水による機械的強度の低下や吸水膨張を抑えることが確認された。
また、実施例2,3を比較すると、曲げ強度及び吸水曲げ強度ともに、実施例3よりも実施例2の方が大きかった。従って、変性剤を段階的に添加することにより、成形品の強度をさらに向上させるとともに、耐水性をさらに向上させる、すなわち、吸水による機械的強度の低下や吸水膨張をさらに抑えることが可能であることが確認された。
以下、本充填材の製造方法の参考具体例を示す。
木質系材料、膨潤化剤、樹脂には、参考実施例1と同じものを用いる。
疎水化変性剤として、ロジン(荒川化学工業株式会社製サイズパインNT−76)を用いる。
メカノケミカル活性処理には、中央化工機株式会社製バッチ式振動ミルFV−20Lを用いる。処理媒体として、径19mmの円柱状スチールロッド192本を用いる。このとき、処理媒体の容積率は60%となる。
フィブリル化処理の処理媒体、コンパウンド生成用及び成形品形成用の混練押出機も参考実施例1と同じものを用い、スクリューの回転速度も参考実施例1と同じにする。
その後、該木粉100重量部に水1500重量部を加え、水に浸潤させた木粉を振動ミルに投入する。そして、湿式条件下、振動数1200cpm、全振幅8mmの振動条件で15分間粉砕筒を振動させ、木粉のフィブリル化処理を行う。該素材を乾燥台上に平たく薄く厚さ1cmとなるように載せ、送風乾燥機で加熱し、送風機にて該素材に風速0.5m/secで送風しながら、絶乾処理を行う。その後、送風乾燥機内を30℃に下げ、フィブリル化処理後の乾燥木粉を得る。
参考実施例1と同じ配合量で乾燥木粉とポリプロピレンとマレイン酸変性樹脂とをコンパウンド生成用の混練押出機に投入し、素材を230℃に加熱して混合しながら出口部から不定形の状態で押し出してコンパウンドを調整する。
次に、上記コンパウンドを成形品形成用の混練押出機に投入し、10mm×110mm角に押出成形して長さ1000mmの木質系成形体を作製し、20℃に空冷する。
以上により、木粉にメカノケミカル活性が付与されて疎水性になるので、木粉を混合する成形材料と木粉とのなじみがよくなり、木質系成形体を形成するときの成形性が向上すると推測される。
木質系材料、膨潤化剤、樹脂、疎水化変性剤には、参考実施例1と同じものを用いる。
メカノケミカル活性処理には、中央化工機株式会社製バッチ式振動ミルFV−20Lを用いる。処理媒体として、径19mmの円柱状スチールロッド192本を用いる。このとき、処理媒体の容積率は60%となる。
フィブリル化処理の処理媒体、メカノケミカル活性処理の処理媒体、コンパウンド生成用及び成形品形成用の混練押出機も参考実施例1と同じものを用い、スクリューの回転速度も参考実施例1と同じにする。
その後、乾燥木粉100重量部にロジン15重量部を加え、ロジンを加えた木粉を振動ミルに投入する。そして、乾式条件下、振動数1200cpm、全振幅8mmの振動条件で15分間粉砕筒を振動させ、乾燥木粉にメカノケミカル活性を付与して疎水性にする。
参考実施例1と同じ配合量で乾燥木粉とポリプロピレンとマレイン酸変性樹脂とをコンパウンド生成用の混練押出機に投入し、素材を230℃に加熱して混合しながら出口部から不定形の状態で押し出してコンパウンドを調整する。
次に、上記コンパウンドを成形品形成用の混練押出機に投入し、10mm×110mm角に押出成形して長さ1000mmの木質系成形体を作製し、20℃に空冷する。
以上によっても、木粉にメカノケミカル活性が付与されて疎水性になるので、成形材料と木粉とのなじみがよくなり、木質系成形体を形成するときの成形性が向上すると推測される。
以上説明したように、本発明によると、種々の態様により、木質系材料を用いた成形品の強度及び耐水性を向上させることが可能になる。
なお、本発明は、上述した実施形態や変形例に限られず、上述した実施形態及び変形例の中で開示した各構成を相互に置換したり組み合わせを変更したりした構成、公知技術並びに上述した実施形態及び変形例の中で開示した各構成を相互に置換したり組み合わせを変更したりした構成、等も含まれる。
12…膨潤化剤、
13,23,53…添加剤、
20,40,41,42…充填材、20a…非開裂部、20b…開裂部、
21…疎水化変性剤、24…変性剤(物質(F))、
30…メカノケミカル活性を付与された木質系材料、
51…樹脂、
60…木質系成形体(成形品)、
ME1,ME2,ME3…処理媒体、
MI1,MI2,MI3…ミル
Claims (4)
- 木質系材料と、該木質系材料を膨潤させる膨潤化剤と、を少なくとも混合し、該木質系材料を膨潤させ叩きながらフィブリル化させるフィブリル化処理を行い、さらに下記の物質(A)〜(E)の中から選ばれる一種以上の物質(F)を段階的に添加して粉砕しながら混合して前記フィブリル化された木質系材料にメカノケミカル活性を付与するメカノケミカル活性処理を行うことにより得られる充填材。
(A)分子中に少なくとも一つの疎水基を有するカルボニル化合物、
(B)分子中に少なくとも一つの疎水基を有するカルボン酸、
(C)前記カルボン酸(B)の無水物、
(D)前記カルボン酸(B)の金属塩、
(E)前記物質(A)〜(D)の中から選ばれる物質の誘導体。 - 前記木質系材料は、粒状の材料とされ、
前記膨潤化剤は、水、水蒸気、又は、これらの組み合わせとされ、
前記粒状の木質系材料と前記膨潤化剤とを少なくとも含む材料に処理媒体をぶつけて該材料を混合し、前記木質系材料を膨潤させ叩きながら前記フィブリル化処理を行い、さらに前記メカノケミカル活性処理を行うことにより得られる、請求項1に記載の充填材。 - 木質系材料と、該木質系材料を膨潤させる膨潤化剤と、を少なくとも混合し、該木質系材料を膨潤させ叩きながらフィブリル化させるフィブリル化処理を行い、さらに下記の物質(A)〜(E)の中から選ばれる一種以上の物質(F)を段階的に添加して粉砕しながら混合して前記フィブリル化された木質系材料にメカノケミカル活性を付与するメカノケミカル活性処理を行うことにより充填材を製造することを特徴とする充填材の製造方法。
(A)分子中に少なくとも一つの疎水基を有するカルボニル化合物、
(B)分子中に少なくとも一つの疎水基を有するカルボン酸、
(C)前記カルボン酸(B)の無水物、
(D)前記カルボン酸(B)の金属塩、
(E)前記物質(A)〜(D)の中から選ばれる物質の誘導体。 - 前記フィブリル化処理を行い、さらに前記メカノケミカル活性処理を行い、前記膨潤化剤を除去することにより充填材を製造することを特徴とする請求項3に記載の充填材の製造方法。
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