以下、図示実施形態に基づいて本発明を説明する。なお、以下の説明での前後方向や上下方向は、車両における前後方向、上下方向を意味する。図1に示すように、車両のボディ11側面に開口された乗降口11aの開口下縁にはロアレール12が設けられている。スライドドア13のドアパネル30(図3〜図5)の下部にロアアーム32が設けられており、このロアアーム32に設けた不図示のローラがロアレール12に対して摺動可能に嵌まっていて、スライドドア13はロアレール12に沿って車体前後方向に移動可能となっている。スライドドア13は、前方に移動することで乗降口11aを閉じ、後方に移動することで該乗降口11aを開く。なお、スライドドア13を開閉する機構は、手動操作タイプと電動駆動タイプのいずれでもよい。
スライドドア13には昇降可能な窓ガラス15が備えられている。窓ガラス15は、ウインドレギュレータによって昇降させることができる。図1ではウインドレギュレータの図示を省略しているが、ウインドレギュレータは周知のものでよい。
ボディ11における乗降口11aの下部側には金属製のステップパネル11bが設けられており、このステップパネル11bにボディ側ストッパユニット20が固定されている(図2)。図8ないし図11に示すように、ボディ側ストッパユニット20は、車両前後方向(スライドドア13の開閉方向)に長手方向を向けたベースプレート21と、このベースプレート21のうちスライドドア13の開放方向に向く一端部に固定された全開ストッパブラケット22と、該ベースプレート21と全開ストッパブラケット22の両方を跨いで固定されるC字状の補強プレート23とから構成されている。
全開ストッパブラケット22は、車体前方を向く面に硬質ゴムのクッション材からなる全開ストッパ部22aを有する。スライドドア13側のロアアーム32には、スライドドア13を開放方向にスライドさせたときに全開ストッパ部22aに対して当接する当接部31(図2、図5に一部を示す)を備え、当接部31と全開ストッパ部22aの当接によって、スライドドア13のそれ以上の開放方向への移動が規制される。
ベースプレート21は、長手方向に離間する一対の貫通孔21aF、21aRを有し、各貫通孔21aF、21aRに固定ボルト24F、24Rを挿通してナット25F、25Rと螺合させることで、その板厚平面を水平にした状態でステップパネル11bに固定される(図2)。一対の貫通孔21aF、21aRのうち後方の貫通孔21aRは長孔となっており、部品の精度誤差があっても確実に固定ボルト24Rを挿通して固定できるようになっている。
ベースプレート21は、コ字形の全開保持ストライカ26と中間ストッパアーム27とを有している。ベースプレート21をステップパネル11bに固定した状態では、全開保持ストライカ26と中間ストッパアーム27はそれぞれボディ下面方向へ突出されており、図3ないし図5に示すように、車両前後方向において、中間ストッパアーム27が前方で全開保持ストライカ26が後方という位置関係になる。スライドドア13は後方への移動で開かれるので、換言すれば、スライドドア13の進退方向に関し、全開保持ストライカ26が中間ストッパアーム27よりもドア開放方向側に位置している。中間ストッパアーム27は、車体前方を向く面に硬質ゴムのクッション材からなる中間ストッパ部27aを有する。
ベースプレート21、全開ストッパブラケット22及び補強プレート23は、それぞれ金属材料で形成されている。ベースプレート21は、貫通孔21aF、21aRが形成された平板状のステップパネル取付部21bよりも一段低く形成された板状のブラケット支持部21cを有する。このブラケット支持部21cと略平行な固定支持部22bを全開ストッパブラケット22が有し、該ステップパネル取付部21bと固定支持部22bが溶接部WE1(図10)によって固定されている。全開ストッパブラケット22は、固定支持部22bと略直交する下方延出アーム22cを有し、下方延出アーム22cの前面側に全開ストッパ部22aが設けられている。
図8に示すように、ブラケット支持部21cと固定支持部22bを貫通するスリット28が形成されている。スリット28は、その一端部(後端部)が開口されており、この開口部からスリット28内に補強プレート23を嵌め込むことができる。C字形をなす補強プレート23は、その中間部分がスリット28に嵌められた状態でベースプレート21と全開ストッパブラケット22に溶接固定される。詳細には、補強プレート23の一端部は下方延出アーム22cのうち全開ストッパ部22aの裏面側に溶接され、補強プレート23の他端部は、固定支持部22bとブラケット支持部21cを跨いでステップパネル取付部21bの上面側に溶接されている。これらの補強プレート23の溶接部をそれぞれ図中に符号WE2、WE3で示す。図9に示すように、このステップパネル取付部21b上における補強プレート23の溶接部WE3は、一対の貫通孔21aF、21aRのうち長孔である後方の貫通孔21aRの近傍に位置しており、かつ車両前後方向において該補強プレート23は一対の貫通孔21aF、21aRを結ぶ前後方向の直線の延長上に位置している。
スライドドア13のロアアーム32には、ドア側ストッパユニット40が取り付けられている。図3ないし図7に示すように、ドア側ストッパユニット40は、アッパプレート41とロアプレート42の間に全開保持フック43、中間ストッパレバー44、第1ラチェット45、第2ラチェット46がそれぞれ支軸43x、44x、45x、46xによって回動可能に軸支されている。支軸43x、44x、45x、46xはそれぞれ円筒状のピンからなり、アッパプレート41とロアプレート42には各ピンが挿通可能な孔が形成されている。各ピンはアッパプレート41とロアプレート42の対応する孔に挿通され、その端部をかしめることによって固定の回動軸となる。なお、図3ないし図6は、部材の動作関係を見やすくするために、アッパプレート41を取り外した状態を示している。
全開保持フック43は一端部が支軸43xに軸支され、他端部がアッパプレート41及びロアプレート42から側方に突出されており、この突出端部の先端が二股状に別れてストライカ進入溝43aが形成されている。全開保持フック43は、このストライカ進入溝43aに全開保持ストライカ26が進入可能なアンロック位置(図3、図4)と、ストライカ進入溝43aに進入した状態の全開保持ストライカ26の離脱を禁止するロック位置(図5)との間で回動可能であり、付勢ばね47によってアンロック方向(図3ないし図6の反時計方向)に回転付勢されている。全開保持フック43はアンロック位置でストッパ48に当て付き、それ以上のアンロック方向への回転が規制される。ストッパ48は、ロアプレート42に形成されている。
全開保持フック43には、支軸43x近傍の外縁部に回転規制凹部43bと係合阻止凸部43cが形成されている。第1ラチェット45は一端部が支軸45xにより軸支され、他端部に回転規制凹部43bに係合可能な係合爪45aを有している。第1ラチェット45は、係合爪45aを回転規制凹部43bに係合させる方向、すなわち図3ないし図6の反時計方向へ向けて付勢ばね49によって回転付勢されている。全開保持フック43が前述のアンロック位置にあるときには、係合阻止凸部43cの外周部が係合爪45aに当接されるため、係合爪45aと回転規制凹部43bの係合が阻止される(図3、図4、図6)。一方、全開保持フック43が前述のロック位置に回動すると、付勢ばね49の付勢力によって第1ラチェット45が回動され、回転規制凹部43bと係合爪45aが係合する(図5)。この係合状態では全開保持フック43のアンロック方向への回動が第1ラチェット45によって禁止される。
第1ラチェット45には、スライドドア13のドアハンドル(不図示)によって操作されるケーブル50が接続している。ドアハンドルを操作することによってケーブル50が牽引され、付勢ばね49の付勢力に抗して第1ラチェット45が図3ないし図6の時計方向へ回転される。その結果、係合爪45aと回転規制凹部43bの係合が解除され、全開保持フック43はアンロック方向へ回動可能になる。ドアハンドルの操作を解除するとケーブル50は弛緩され、第1ラチェット45への回転操作力が解消される。
中間ストッパレバー44は一端部が支軸44xに軸支され、他端部がアッパプレート41及びロアプレート42から側方に突出されており、この突出端部にストッパ当接部44aが形成されている。中間ストッパレバー44は、このストッパ当接部44aが中間ストッパアーム27の中間ストッパ部27aに対して当接可能な突出位置(図4、図6)と、該中間ストッパアーム27に当接しない格納位置(空振り位置)(図3、図6)との間で回動可能であり、付勢ばね51によって突出位置方向(図3ないし図6の時計方向)に回転付勢されている。中間ストッパレバー44は突出位置で回動規制プレート52に当て付き、付勢ばね51の付勢方向へのそれ以上の回転が規制される。中間ストッパレバー44は、スライドドア13が全閉位置にあるときに、ボディ11側に設けられた格納位置保持部材14(図3)に押圧されて、付勢ばね51の付勢力に抗して格納位置に保持される。中間ストッパレバー44には、支軸44x近傍の外縁部に回転規制凹部44bと係合阻止凸部44cが形成されている。
第2ラチェット46は一端部が支軸46xにより軸支され、他端部に、中間ストッパレバー44の回転規制凹部44bに係合可能な係合爪46aを有している。第2ラチェット46は、係合爪46aを回転規制凹部44bに係合させる方向、すなわち図3ないし図6の反時計方向へ向けて付勢ばね53によって回転付勢されている。中間ストッパレバー44が前述の突出位置にあるときには、係合阻止凸部44cの外周部が係合爪46aに当接されるため、係合爪46aと回転規制凹部44bの係合が阻止される(図4、図6)。一方、中間ストッパレバー44が前述の格納位置に回動すると、付勢ばね53の付勢力によって第2ラチェット46が回動され、回転規制凹部44bと係合爪46aが係合する(図3、図5)。この係合状態では中間ストッパレバー44の突出位置への回動が第2ラチェット46によって禁止される。
第2ラチェット46には、スライドドア13の窓ガラス15を一定以上開いたときに牽引され、窓ガラス15を閉じたときに弛緩されるケーブル54が接続している。このケーブル54が牽引されると、付勢ばね53の付勢力に抗して第2ラチェット46が図3ないし図6の時計方向へ回転される。その結果、係合爪46aと回転規制凹部44bの係合が解除され、中間ストッパレバー44は突出位置方向へ回動可能になる。なお、本実施形態では窓ガラス15を開閉(昇降)させる装置は周知のものでよく、その詳細説明は省略する。
付勢ばね47、49、51及び53はそれぞれ、対応する支軸43x、44x、45x及び46xに巻回されたトーションコイルばねからなっている。
ドア側ストッパユニット40はさらに、アッパプレート41とロアプレート42の間に挟まれる補強プレート55と補強ピン56(図6、図7)を有している。この補強プレート55と補強ピン56の詳細は後述する。なお、図3ないし図5では、他の要素の動作関係を分かりやすくするために、補強プレート55と補強ピン56の図示を省略している。
ドア側ストッパユニット40は、以上の各要素をアッパプレート41とロアプレート42の間に挟持した状態で組み立てられる。アッパプレート41とロアプレート42には前後方向の端部に一対の貫通孔57F、57Rが形成されており、それぞれの貫通孔57F、57Rに対して固定ボルト58F、58Rを挿通してロアアーム32に共締めされることで、アッパプレート41とロアプレート42が一体化される(図7)。
こうしてドア側ストッパユニット40をスライドドア13に組み付けた状態では、図3ないし図7に示すように、車両前後方向において、全開保持フック43が前方で中間ストッパレバー44が後方という位置関係になる。スライドドア13は後方へのスライドで開かれるので、換言すれば、スライドドア13の進退方向に関し、中間ストッパレバー44が全開保持フック43よりもドア開放方向側に位置している。また、図7に示すように、全開保持フック43と中間ストッパレバー44は車両の上下方向にオフセットした位置関係にあり、中間ストッパレバー44が上方(アッパプレート41側)、全開保持フック43が下方(ロアプレート42側)に位置する。
以上の構成による動作を説明する。まず窓ガラス15が閉じられた状態での、スライドドア13の全閉位置からの開放動作を説明する。図3はスライドドア13の全閉状態を示している。なお、図3では、ボディ側ストッパユニット20とドア側ストッパユニット40を、実際のドア全閉状態における互いの前後方向距離よりも近く描いている。このときドア側ストッパユニット40においては、全開保持フック43がアンロック位置にあり、中間ストッパレバー44が格納位置にある。中間ストッパレバー44は格納位置保持部材14に当接している。窓ガラス15が閉じられているためケーブル54は弛緩した状態にあり、ドア側ストッパユニット40における第2ラチェット46は付勢ばね53の付勢力によって係合爪46aを回転規制凹部44bに係合させる回転規制位置に保持されている。よって、中間ストッパレバー44は付勢ばね51の付勢力に抗して格納位置に保持される。また、ケーブル50が弛緩しており、第1ラチェット45は係合爪45aを全開保持フック43の係合阻止凸部43cの外周部に当接させた位置に保持されている。
スライドドア13をロアレール12に沿って開放方向にスライドさせると、該スライドドア13と共にドア側ストッパユニット40が移動する。スライドドア13が開放状態に近付くと中間ストッパレバー44が中間ストッパアーム27に接近するが、中間ストッパレバー44が格納位置にあるときはストッパ当接部44aが中間ストッパアーム27に当接しない(空振りする)位置関係にあるので、ドア側ストッパユニット40の移動は規制されることなく、スライドドア13はさらに全開位置へ向けてスライドする。スライドドア13が全開位置に近付くと、ストライカ進入溝43a内に全開保持ストライカ26が進入する。ここでスライドドア13がさらに開放方向に移動すると、その移動力によって全開保持フック43は付勢ばね47の付勢力に抗してアンロック位置からロック位置へ回動される(図5)。全開保持フック43がロック位置へ回動すると、付勢ばね49の付勢力によって第1ラチェット45が図5のように反時計方向へ回転して、係合爪45aが回転規制凹部43bに係合する。この係合状態では、全開保持フック43のアンロック方向への回動が規制される。その結果、ストライカ進入溝43aに全開保持ストライカ26が保持される状態が維持され、スライドドア13が閉方向へスライドすることが規制される。スライドドア13は、ロアアーム32の当接部31が全開ストッパブラケット22の全開ストッパ部22aに当接する位置まで開放方向にスライドして係止される。これが図5のドア全開状態である。なお、図5ではストライカ進入溝43aと全開保持ストライカ26の係合関係を見やすくするために実線で示しているが、実際には当該係合部はベースプレート21の下側に隠れる位置にある。
この全開状態からスライドドア13を閉じるには、ドアハンドルを操作する。すると、ケーブル50が牽引され、付勢ばね49の付勢力に抗して第1ラチェット45が図5の時計方向へ回転される。すると係合爪45aと回転規制凹部43bの係合が解除され、アンロック方向への全開保持フック43の回動が許される。ここでスライドドア13を開放方向へスライドさせると、全開保持フック43がロック位置からアンロック位置へと回動し、ストライカ進入溝43aから全開保持ストライカ26が離脱する。これによりスライドドア13の全開ロック状態が解除され、スライドドア13を閉じることができる。窓ガラス15が閉じているときは、以上のスライドドア13の開閉動作の間、中間ストッパレバー44は格納位置に保持された状態を保っている。
続いて、窓ガラス15を一定以上開いた場合における、スライドドア13の全閉位置からの開放動作を説明する。スライドドア13の全閉位置において全開保持フック43がアンロック位置にあるという点は、窓ガラス15が閉じられた状態と同じである。一方、窓ガラス15が一定以上開かれると、その開動作に応じてケーブル54が牽引され、付勢ばね53の付勢力に抗して第2ラチェット46が図3の時計方向へ回転される。すると、係合爪46aと回転規制凹部44bの係合が解除され、中間ストッパレバー44は突出位置へ回動可能となる。
この状態でスライドドア13をロアレール12に沿って開放方向にスライドさせると、中間ストッパレバー44が格納位置保持部材14から離れて、付勢ばね51の付勢力によって図4に示す突出位置に回動される。そして、スライドドア13が開放状態に近付いたとき、突出位置に突出された中間ストッパレバー44のストッパ当接部44aが中間ストッパアーム27の中間ストッパ部27aに当接する。中間ストッパレバー44は回動規制プレート52に当て付くことによって突出位置よりも先への(図4の時計方向への)回転が規制されているため、該中間ストッパレバー44(ストッパ当接部44a)と中間ストッパアーム27(中間ストッパ部27a)の当接関係によって、それ以上のスライドドア13の開放方向移動が制限される。つまり、スライドドア13が、全開位置よりも手前の中間開放位置で停止される。これが図4のドア中間開放状態である。
この中間開放位置での停止状態を解除するには、窓ガラス15を閉じてスライドドア13を全閉位置までスライドさせればよい。窓ガラス15が閉じられることによってケーブル54の牽引状態が解除される。ケーブル54の牽引が解除されることにより、第2ラチェット46が付勢ばね53の付勢力に応じて回動可能となる。そして、スライドドア13が全閉位置まで戻されると、中間ストッパレバー44が格納位置保持部材14(図3)に押圧されて、突出位置から格納位置まで回動される。すると、付勢ばね53の付勢力によって第2ラチェット46が図4の反時計方向に回動して係合爪46aが回転規制凹部44bに係合し、中間ストッパレバー44が格納位置に保持される。なお、中間開放位置からの復帰に際しては、先に窓ガラス15を閉じてからスライドドア13を全閉位置へスライドさせてもよいし、逆にスライドドア13を全閉位置までスライドさせてから窓ガラス15を閉じてもよい。
以上のスライドドア構造によれば、全開保持ストライカ26と中間ストッパアーム27の両方を乗車口11aの下部に設けたので、ボディ11において上下方向に延びるピラー部分にストッパ部材を設ける必要がない。そのため、ボディ形状の自由度を高めることができる。また、本実施形態のように全開保持ストライカ26と中間ストッパアーム27を一体のボディ側ストッパユニット20として形成することにより、部品点数を少なくしてシンプルな構成にすることができる。
さらに、ドア側ストッパユニット40における全開保持フック43と中間ストッパレバー44の位置関係を、車両前後方向において従来のスライドドアとは逆に配置している。従来は、スライドドアの進退方向に関し、ドア開放方向側に全開保持フック、ドア閉方向側に中間ストッパレバーを設けていた。これに対し本実施形態のスライドドア構造では、中間ストッパレバー44が全開保持フック43よりもドア開放方向(後方)側に設けられている。この構造には次のような利点がある。
従来技術の説明で述べたように、スライドドアを中間開放位置で停止させる理由は、窓ガラスが開かれた挿入された物体を、スライドドアの窓枠とボディピラーの間に挟み込まないようにするためである。ここで、想定される特定の対象物の挟み込みを防止するために、スライドドアの進退方向において全開位置と中間開放位置との間に距離Aが要求されるものとする。この距離Aは、スライドドアが全開位置と中間開放位置にあるときの全開保持フック(実施形態の全開保持フック43に相当)の軸位置の前後方向移動量として表すことができる。従来タイプのストッパ構造では、スライドドアが中間開放位置にあるときの当該全開保持フックの軸位置からボディ側の中間ストッパ用部材(実施形態の中間ストッパ部27aに相当)までの前後方向距離をBとした場合、このボディ側の中間ストッパ用部材と、同じくボディ側の全開ロック用部材(実施形態の全開保持ストライカ26に相当)の前後方向間隔Cは、距離Aと距離Bを合わせた長さになる(C=A+B)。一方、本実施形態のように前後を入れ替えた構造では、全開保持ストライカ26と中間ストッパアーム27の前後方向間隔C′は次のようになる。まず、スライドドア13の進退方向における全開位置と中間開放位置の距離(全開保持フック43の支軸43xの移動量)は、上記例と同じくAとする。そして、スライドドア13が中間開放位置にあるときの全開保持フック43の軸位置(支軸43x)から中間ストッパアーム27の中間ストッパ部27aまでの前後方向距離も上記例と同じくBと仮定する。すると、A=B+C′の関係が成り立つ。すなわちC′=A-Bであり、上記例に比べて全開ロック用部材である全開保持ストライカ26と中間ストッパ用部材である中間ストッパアーム27の前後方向間隔を接近させても、スライドドア13の全開位置と中間開放位置の間に必要な距離Aを確保することができる。これによって、車両前後方向での全開保持ストライカ26と中間ストッパアーム27の間隔を近くしてストッパ機構を小型化することが可能になっている。そして、全開保持ストライカ26と中間ストッパアーム27を接近させられるため、前述のように、全開ストッパブラケット22と全開保持ストライカ26と中間ストッパアーム27が一体化されたボディ側ストッパユニット20としてユニット化することが可能になっている。
なお、中間ストッパレバー44を全開保持フック43よりもドア開放方向側に位置させたことで、スライドドア13が中間開放位置を超えて全開位置へ移動するときには、全開保持フック43は中間ストッパアーム27の設置位置を通過してからストライカ進入溝43aを全開保持ストライカ26に係合させることになる。ここで、図7に示すように、全開保持フック43と中間ストッパレバー44は、互いに車両の上下方向に位置をオフセットさせて設けられている。ボディ11側の中間ストッパアーム27は中間ストッパレバー44のストッパ当接部44aと同じ高さ方向位置に設けられているので、結果として、全開保持フック43と中間ストッパアーム27も上下方向にオフセットした位置関係にある。そのため、スライドドア13が全開位置に移動するときには、全開保持フック43は中間ストッパアーム27に干渉することなく該中間ストッパアーム27よりも後方に移動して、全開保持ストライカ26に係合することができる。
スライドドア13を全開位置まで開いたときには、全開保持ストライカ26が全開保持フック43のストライカ進入溝43a内に進入するロック動作を行いつつ、ロアアーム32の当接部31が全開ストッパブラケット22の全開ストッパ部22aに当て付いてスライドドア13の開放方向への移動を規制する。一方、スライドドア13を中間開放位置で停止させるときには、突出位置に突出した中間ストッパレバー44のストッパ当接部44aが中間ストッパアーム27の中間ストッパ部27aに当て付くことによって、スライドドア13の開放方向への移動を規制する。ロアアーム32はスライドドア13における固定部材であるから高い剛性を有するが、中間ストッパレバー44は小型の回動部材でありながら、ロアアーム32と同等の耐荷重性能が要求される。特に本実施形態では、ドア側ストッパユニット40における全開保持フック43と中間ストッパレバー44の前後位置を逆にした関係で、中間ストッパレバー44の支軸44xは前後方向に長いドア側ストッパユニット40の略中央部に位置している。ドア側ストッパユニット40のうち固定ボルト58F、58Rで固定される前後の端部付近は強度を得やすいが、中間ストッパレバー44が軸支されるのはこれら前後端部から離れた中央部であるため、次のようにして中間ストッパレバー44周りの耐荷重性能を高めている。
図6と図7に示すように、中間ストッパレバー44を突出位置で係止させる回動規制プレート52は、中間ストッパレバー44の側面に当接する当接部52aを一端部に有し、該当接部52aからドア側ストッパユニット40の前端部側に向けて延設されている。回動規制プレート52は、支軸43xと支軸45xと補強ピン56を挿通させる貫通孔を有し、アッパプレート41とロアプレート42の間に固定されている。より詳細には、図7に示すように、回動規制プレート52はアッパプレート41側に支持されていて、該回動規制プレート52とロアプレート42の間に、全開保持フック43とその付勢ばね47、第1ラチェット45とその付勢ばね49をそれぞれ挟んで保持している。
開放方向へのスライドドア13の移動に応じて、突出位置にある中間ストッパレバー44のストッパ当接部44aが中間ストッパアーム27の中間ストッパ部27aに衝突したとき、その衝突の反作用として、中間ストッパレバー44には図6における時計方向への回転モーメントが作用し、この回転モーメントは当接部52aを介して回動規制プレート52に対する圧縮荷重として作用する。回動規制プレート52に挿通された支軸43x、45xと補強ピン56は、この圧縮荷重の作用方向延長上に位置しているため、支軸43x、45xと補強ピン56によって荷重を受けることができる。
これらの支軸やピンのうち、特に中心となって荷重を受けるのが支軸45xである。図6から分かるように、支軸45xは圧縮荷重の入力領域である当接部52aの至近位置に設けられているので、強い圧縮荷重がかかっても回動規制プレート52が撓むことなく支軸45x経由で荷重を逃がすことができる。より詳しくは、中間ストッパレバー44から回動規制プレート52に作用する荷重は、図6における支軸44xを中心とした回転方向であるF1方向に向けて加わる。そして、この回転方向の荷重は、支軸44xから遠い位置、すなわち当接部52aのうち図6に符号Kで示す位置で最も強く作用する。支軸45xは、当該K位置を基準にして概ね矢印F1方向の延長上に位置するため、より効果的に圧縮荷重を受けることができる。ここで、支軸45xよりもさらに当接部52aに近い位置に補強ピン56を設けることにより、支軸45xのみで荷重を受けるよりも、強度的により優れた構造となっている。また、図7から分かるように、回動規制プレート52自体もアッパプレート41やロアプレート42といった薄板状の部材に比して厚みを有しているので、中間ストッパレバー44からの荷重が入力されたときに撓みにくい。
また、中間ストッパレバー44から回動規制プレート52に入力される荷重が大きい場合、回動規制プレート52を支持しているアッパプレート41とロアプレート42の間で平面方向の位置ずれを誘発させるような力が働く。また、アッパプレート41とロアプレート42の間隔を広げるような力が働く場合もある。補強ピン56は、このような力に対して、アッパプレート41とロアプレート42の間の位置ずれや変形を防ぐ機能を有する。
なお、本実施形態では、回動規制プレート52のうち当接部52aと反対側の端部は支軸43xの位置で止まっているが、構造上可能であれば、前方の固定ボルト58Fに挿通される位置まで回動規制プレート52を延長してもよい。このようにすることで、固定ボルト58Fにも荷重が分散され、より強度的に優れた構造となる。
中間ストッパレバー44が及ぼす上記のモーメントが回動規制プレート52側だけで受け切れなかった場合は、その反作用として、中間ストッパレバー44には、該当接部分(図6のK位置)を中心に支軸44xを図6中の時計方向に回動させようとするモーメントが働く。このモーメントは、中間ストッパレバー44の支軸44xを、後方の固定ボルト58R側に向けて押し込む荷重として作用する。この荷重に対する強度を確保するべく、ドア側ストッパユニット40は補強プレート55を備えている。
図6と図7に示すように、補強プレート55は、ドア側ストッパユニット40の後端部付近でアッパプレート41とロアプレート42に挟着固定されており、この被挟着部に後方の固定ボルト58Rを挿通させる貫通孔55aが形成されている。補強プレート55はまた、この被挟着部と反対側の前端部に支軸44xを挿通させる貫通孔を有し、さらに中間部に支軸46xを挿通させる貫通孔を有している。したがって、中間ストッパレバー44の支軸44xから固定ボルト58R方向へ向けて作用する前述のモーメントは、補強プレート55に対する圧縮荷重として作用する。この圧縮荷重は、補強プレート55に挿通された固定ボルト58Rによって受けられ、さらには支軸46xによって受けられる。また、図7から分かるように、補強プレート55自体もアッパプレート41やロアプレート42といった薄板状の部材に比して厚みを有しているので、中間ストッパレバー44の支軸44x側からの荷重が入力されたときに撓みにくい。
まとめると、突出位置にある中間ストッパレバー44がボディ側の中間ストッパアーム27に当て付いたとき、図6に示すように、中間ストッパレバー44と回動規制プレート52の当接箇所(図6のK位置)を中心として、前後方向にそれぞれ荷重(圧縮荷重)が作用する。このうち前方に作用する荷重は、回動規制プレート52に入力され、該回動規制プレート52を介して、中間ストッパレバー44の前方に位置する全開保持フック43と第1ラチェット45の支軸43x、45xや補強ピン56で受けられる。また、後方に作用する荷重は、補強プレート55に入力され、該補強プレート55を介して、中間ストッパレバー44の後方に位置する第2ラチェット46の支軸46xや固定ボルト58Rで受けられる。荷重を受けるこれらの支軸43x、45x及び46x、補強ピン56、そして固定ボルト58Rは、それぞれがアッパプレート41とロアプレート42に支持固定されており、該アッパプレート41とロアプレート42が、スライドドア13側のロアアーム32に固定されている。したがって、このアッパプレート41とロアプレート42を含むドア側ストッパユニット40の箱形構造全体で、中間ストッパレバー44にかかる負荷を吸収することができ、中間ストッパレバー44をドア側ストッパユニット40の中央部に軸支しても十分な強度を確保することが可能になった。
以上のように、ドア側ストッパユニット40は、中間ストッパレバー44を略中央部に軸支しつつ、スライドドア13からの衝突荷重に対して十分な強度を有する構造となっている。これに加え、次に説明するように、ボディ側ストッパユニット20も、スライドドア13から加わる衝突荷重に対して十分な強度を有するように構成されている。
前述のように、スライドドア13が全開位置へスライドされるときには、ロアアーム32の当接部31が全開ストッパブラケット22の全開ストッパ部22aに当接(衝突)する。ここで勢いよくスライドドア13を全開位置にスライドさせた場合、ロアアーム32の当接部31が当て付く全開ストッパブラケット22には強い衝突荷重が作用する。具体的には、全開ストッパブラケット22はベースプレート21に対して溶接部WE1で固定された突出部材であるため、図10での矢印F2方向へ向けて下方延出アーム22cを押圧するモーメントが加わる。このモーメントは、全開ストッパブラケット22とブラケット支持部21cを上方へ曲げようとする力、あるいはブラケット支持部21cからストッパブラケット22の固定支持部22bを剥離させようとする力として働く。
しかし、補強プレート23を用いた構造によって、全開ストッパブラケット22周りにおける変形や破損を防ぐことができる。図10に示すように、補強プレート23の一端部である第1固定部23aは、下方延出アーム22cのうち全開ストッパ部22aの裏面側に溶接部WE2で固定されており、補強プレート23の他端部である第2固定部23bは、ベースプレート21のうち全開ストッパブラケット22を支持する下面側とは反対側の上面側に延長され、該ベースプレート21のステップパネル取付部21bの上面側に溶接部WE3で固定されている。この溶接部WE3は、スライドドア13の進退方向において第1固定部23a(溶接部WE2)よりもドア閉方向(前方)に位置している。そして補強プレート23は、この第1固定部23aと第2固定部23bを接続する中間部23cが、全開ストッパブラケット22とブラケット支持部21cを上方へ曲げようとする曲げ荷重の作用方向と概ね平行なC字形をなしている。よって、全開ストッパブラケット22の下方延出アーム22cを矢印F2方向へ押圧するモーメントは、補強プレート23に対する圧縮荷重として作用し、この荷重をベースプレート21のステップパネル取付部21bで受けることになる。
図2に示すように、ベースプレート21は、前後の固定ボルト24F、24Rとナット25F、25Rを介してステップパネル11bに取り付けられている。このベースプレート21の前後の取付部は、概ねスライドドア13の進退方向に並んで位置しており、さらに補強プレート23も、スライドドア13の進退方向において該前後の取付部と並んで位置している。ベースプレート21においては、この前後の取付部を結ぶ領域が特に剛性に優れる領域である。したがって、この位置関係により、補強プレート23に作用する荷重を、ベースプレート21のうちでも特に高い剛性を有する部分で受けることができる。より詳細には、補強プレート23の第2固定部23bの固定部である溶接部WE3が、後方の固定ボルト24Rに隣接して位置されており、第2固定部23b側からベースプレート21側に荷重が作用したとき、至近にある固定ボルト24Rからステップパネル11b側に荷重を分散させることができる。
さらに、図2に示すように、補強プレート23の第2固定部23bは、ベースプレート21とステップパネル11bが重なっている位置まで前方に延設されており、第2固定部23b(溶接部WE3)は、車両の上下方向においてベースプレート21のみならずステップパネル11bともオーバーラップした関係にある。つまり、補強プレート23に入力された荷重は、ベースプレート21に加えてステップパネル11bによっても受けられる。ステップパネル11bは乗車口11aを出入りする搭乗者の体重を受ける固定部材であり、高い剛性を有している。
さらに図8ないし図11から分かるように、補強プレート23の中間部23cがスリット28に嵌まることにより、補強プレート23の板厚方向への変形が抑制されている。スライドドア13の全開動作時において、ロアアーム32の当接部31が傾いて全開ストッパ部22aに当て付く可能性がある。この場合、補強プレート23に対して圧縮荷重のみならずねじれ方向の荷重が作用するが、補強プレート23の中間部23cがスリット28に嵌まっていることにより、ねじれ変形が防がれる。そして、ねじれを防がれた補強プレート23は確実にステップパネル取付部21b側へ荷重を伝えるので、全開ストッパ部22aに対するロアアーム32の当接部31の当接角度が傾いた場合でも、前述した補強効果を確実に得ることができる。
図8及び図9に示すように、スリット28は、ベースプレート21のブラケット支持部21cと全開ストッパブラケット22の固定支持部22bの後端部に開口されている。組立時には、この後端開口部からスリット28内へと補強プレート23を挿入させればよく、組付作業を容易に行うことができる。
以上のように、全開ストッパブラケット22(下方延出アーム22c)に加わる衝突荷重を、該全開ストッパブラケット22とこれを支持するブラケット支持部21cの部分だけで受けるのではなく、補強プレート23を介してステップパネル取付部21bやステップパネル11bに荷重がかかるようにしたので、ボディ上下方向に延びるピラーで衝突荷重を受ける構造をとらずとも、スライドドア13全開時の衝突荷重に対して、ボディ側ストッパユニット20で十分な強度を得ることが可能となった。つまり、全開ストッパ機構の強度を損なうことなく、その配置の自由度が向上している。
以上、図示実施形態に基づき説明したが、本発明はこの実施形態に限定されるものではない。例えば、図示実施形態では、補強プレート23の第1固定部23aは、全開ストッパブラケット22の下方延出アーム22cのうち、全開ストッパ部22aが設けられている前面側の裏面側(スライドア開放方向側の面)に固定されているが、補強プレート23の一端部を、下方延出アーム22cのうち全開ストッパ部22aが設けられている前面側に固定する態様も可能である。この場合、少なくとも前端部が下方延出アーム22cよりも車体前後方向における前方まで延びるように、図示実施形態のスリット28を前方に延長した形状のスリットを形成し、このスリットに補強プレートを挿通支持させればよい。この態様であっても、下方延出アーム22cにスライドドアの衝突荷重が作用したときに、補強プレートによって荷重を受けることができる。