JP4743491B2 - 弾性表面波素子片、弾性表面波装置、及び電子機器 - Google Patents

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Description

本発明は、弾性表面波素子片、弾性表面波装置、及び電子機器に係り、特に、電極の膜厚、あるいは線幅を大きくすることにより高い反射係数を得た弾性表面波素子片のQ値を向上させる場合に好適な技術、並びに当該技術に係る弾性表面波素子片を搭載した弾性表面波装置、及び当該弾性表面波装置を搭載した電子機器に関する。
弾性表面波素子片(例えば共振子として使用するもの)を形成する上で、圧電基板の板面に形成する電極パターンの膜厚や線幅を大きくすることにより、高い反射係数を得られ、弾性表面波装置とした場合には広い範囲で良好な温度特性を得ることができることが知られている。しかし、電極パターンの膜厚や線幅を大きくすることにより高い反射係数を得た弾性表面波素子片(Surface Acoustic Wave:SAW素子片)は、Q値が悪くなるという性質がある。これは、圧電基板の板面に形成するすだれ状電極内で生じる弾性表面波がバルク波へモード変換される際のエネルギー損失が急増することに起因すると考えられている。
このような、反射係数の増加に伴ってQ値が低下するという特性は、このSAW素子片をSAW共振子として使用する場合のみならず、フィルタとして用いる場合にも見ることができる。特許文献1にはエネルギー損失の防止を目的としてコンダクタンス特性を低下させるSAWフィルタに関する技術が開示されている。特許文献1に開示されているSAWフィルタは、圧電基板の板面に形成するすだれ状電極(Interdigital Transducer:IDT)を構成する一対の櫛型電極における電極指の形成間隔を半波長毎、すなわち隣り合う電極指毎に周期的に異ならせるというものである。
特開平8−298432号公報
特許文献1には、弾性表面波フィルタとして用いるSAW素子片を上記のような構成とすることにより、通過帯域のコンダクタンスを低下させることができ、エネルギー損失を抑制することができる旨記載されている。
特許文献1に記載されているように、SAW素子片を構成するIDTの電極指形成周期長を変えた場合には、確かにコンダクタンス特性の変化を確認することはできるが、同時にエネルギーの漏れ量が増大してしまい、Q値は低下してしまうものと考えられる。
そこで、本発明は、弾性表面波共振子や弾性表面波フィルタとして用いた場合に、IDTを構成する電極指の膜厚を厚く保ったまま、高いQ値を得ることができる弾性表面波素子片を提供することを目的とする。また、本発明では、前記目的を達成することができる弾性表面波素子片を搭載した弾性表面波装置、及び当該弾性表面波装置を搭載した電子機器を提供することを目的とする。
上記目的を達成するためには、コンダクタンス値が低下することで損失するエネルギーをIDT以外の手段によって閉じ込めることができれば良いと考えられる。そこで、本発明の弾性表面波素子片は、圧電基板の板面に、当該圧電基板に励起される弾性表面波の進行方向と直交する方向に配された電極指を備えたすだれ状電極を有する弾性表面波素子片であって、隣接する複数の前記電極指を1つの組として、前記電極指を形成する周期長の異なる組を交互に配置し、前記すだれ状電極を、格子状に配された複数の導体ストリップを有する反射器で挟み込む構成としたことを特徴とした。このような構成のSAW素子片によれば、IDTの電極指形成周期長を群単位で周期的に変更することにより個々の電極指における反射係数、換言すれば電極膜厚を維持したまま、IDT全体としての実行的な反射係数を低下させることができ、バルク波放射によるエネルギー損失を抑制することができる。また、反射係数が低下したことにより閉じ込みが不十分となったIDTからの漏れ分のエネルギーを反射器によって閉じ込むことができるため、素子片全体としてのエネルギー損失を抑制することができ、高いQ値を得ることができる。
また、上記のような構成の弾性表面波素子片では、各組を形成する電極指は、すだれ状電極を構成する櫛型電極同士で隣り合う対を成す2本の電極指とすると良い。このような構成とすることにより、IDTの端部において組単位の周期構造が乱れることが無く、対数の少ないIDTを有するSAW素子片であっても有効性を持つこととなる。
また、上記のような構成の弾性表面波素子片において前記すだれ状電極は、各組毎に前記電極指を形成する周期長をPAとPBとして交互に配置する構成とし、前記反射器は、前記導体ストリップの周期長をPRとして構成し、前記PAとPB、およびPRの関係が、PA>PR>PBであるようにすると良い。
また、上記のような構成の弾性表面波素子片では、組単位の電極指形成周期長は2組の周期長から成り、組間の周期長比は7:10から9:10の範囲内とすることが望ましい。このような構成とすることにより、反射係数の低下傾向が顕著に表れ、バルク波放射によるエネルギー損失の抑制効果を高めることができる。
また、上記のような構成の弾性表面波素子片では、前記すだれ状電極は、予め定められた周期長で電極指を形成する際、電極指の線幅と間欠部の間隔とを一定の割合とすることが望ましい。このような構成とすることにより、弾性表面波装置として利用した場合における温度特性を安定させることができる。
また、上記目的を達成するための本発明に係る弾性表面波装置は、上記いずれかに記載の弾性表面波素子片を搭載したことを特徴とするものである。このような構成の弾性表面波装置は、広い帯域で良好な温度特性を保つことができ、エネルギー損失が少ない。
また、上記目的を達成するための本発明に係る電子機器は、上記構成の弾性表面波装置を搭載したことを特徴とするものである。このような構成の電子機器は、高効率で高い信頼性を得ることができる。
以下、本発明の弾性表面波素子片、並びに弾性表面波装置、及び電子機器に係る実施の形態について、図面を参照しつつ詳細に説明する。なお、以下に示す実施の形態は、本発明の好適な実施形態の一部を示す形態であり、本発明は以下の実施形態に拘束されるものでは無い。
図1は、本発明に係る弾性表面波素子片の実施の形態を示す図である。本実施形態のSAW素子片10は、圧電基板12と、この圧電基板12の板面に配されたすだれ状電極(IDT)14と、前記IDT14を挟み込む一対の反射器18(18a,18b)とを基本構成としており、SAW共振子やSAWフィルタとして使用することを目的としている。
前記圧電基板12は、水晶(SiO2)やタンタル酸リチウム(LiTaO3)などであれば良く、例えば水晶であれば、STカットと呼ばれるカット角で切り出された板体などであることが望ましい。
前記IDT14は、対を成す櫛型電極16(16a,16b)から構成される。前記櫛型電極16は、給電導体(バスバー)20から垂直に形成される複数の電極指22が設けられ、互いのバスバー20に設けられた電極指22が所定の間隔で交差するように噛合せられている。前記IDT14は櫛型電極16の電極指22が、弾性表面波の伝搬方向に直交するように配設されている。
前記反射器18は、両端が相互に連結された複数の導体ストリップ24からなり、格子状を成している。また反射器18は、前記複数の導体ストリップ24が、前記櫛型電極16の電極指22と平行になるように、すなわち弾性表面波の伝搬方向に直交するように配設されている。
本実施形態の場合、前記IDT14及び反射器18等の電極パターンは、アルミニウム、又はアルミニウム合金の薄膜によって構成されている。電極パターンの形成は、水晶基板、あるいは水晶ウェハの表面に蒸着やスパッタリングなどによってアルミニウム又はアルミニウム合金の薄膜を形成し、この薄膜をフォトエッチングにより所定の形状に形成することによって成される。なお、IDT14は図示しない電極パッドに電気的に接続されており、電力の入出力を可能としている。
本実施形態のSAW素子片10は、隣接して対を成す電極指22毎に組を構成し、電極指22間のピッチを各組毎に周期的に異ならせたことを第1の特徴としている。詳細すると、図1中、A区間に形成する電極指22の電極周期長(ピッチ)をそれぞれPAとした場合、B区間に形成する電極指22のピッチをPBとし、A区間に形成する電極指22のピッチは再びPAというようにピッチPAで形成する電極指群とピッチPBで形成する電極指群とを交互に配置したのである。
電極指22のピッチPA、PBは、後述する数式1に基づいて算出することができる。また、ピッチに対する電極指22の線幅は、予め定めたメタル比(メタライゼーションレシオ)に従って定めることで、温度特性を安定させることができる。なお、図1に示すように隣り合う電極指22を2本一組としてピッチ変更を行うことにより、IDT14の端部において組単位の周期構造が乱れることが無く、対数の少ないIDT14を有するSAW素子片10であっても有効性を持つこととなる。
電極指22の周期長PAとPBの比PPTを定めるにあたり好適な条件としては、以下に詳細を示すデータより、PA:PBを10:7〜10:9の範囲内とすることが望ましいという結論を導き出した。このとき、PAとPBはどちらを基準とするかを問うことは無く、例えばPAを基準とした場合には、PB/PA=0.7〜0.9と示すことができ、PBを基準とした場合には、PA/PB≒1.43〜1.11と示すことができる。
上記のような電極周期長比PPTの調整は、IDT部分にも反射器と同様に周期構造伝搬路が構成されると考えた場合、IDTの反射係数を大きくすると、弾性表面波からバルク波へのモード変換によるエネルギー損失(バルク波放射に基づくエネルギー損失)が急激に増大し、Q値の低下を招くという観点に基づいて創案された。前記のような考え方に基づくと、IDTを構成する櫛型電極における電極指のピッチPAとPBとの周期長比PPTを上記のように定めることにより、IDTを構成する電極パターンの質量のバランスがとれて弾性表面波を伝搬する際に、バルク波モードへの変換、すなわちバルク波放射が抑制され、損失の増大を抑えることができると考えられる。つまり、個々の電極指における反射係数を保ったまま、換言すれば電極の膜厚を維持したまま、IDT全体としての実効的な反射係数を低下させることができると考えられるのである。
しかし、上記のように電極周期長比PPTを調整することによってIDT全体としての実効的な反射係数を低下させるだけでは、SAW共振子やSAWフィルタとして利用する場合、閉じ込みが不十分となってしまいエネルギーの漏れ量が増大してしまう。これは、結果としてエネルギー損失が増え、Q値が低下することを意味する。
そこで本実施形態のSAW素子片10は、IDT14を挟み込む反射器18a,18bにより、エネルギーの閉じ込み効果を得ることで損失を抑制することを第2の特徴とし、電極指22の周期長と反射器18の導体ストリップ24の周期長との比を以下の数式にしたがって定めつつ、導体ストリップ24の数を増やすようにした。
上記のように、本実施形態に係るSAW素子片10は、第1の特徴である電極周期長比PPTの調整によるIDT14全体としての実効的な反射係数の低減と、第2の特徴である反射器18によるエネルギーの閉じ込みによる損失の低減とにより、電極指22を構成する金属薄膜の膜厚を厚く保ったまま高いQ値を得ることができる。すなわち、SAW共振子やSAWフィルタとして用いた場合に、温度特性に優れ、損失を少なくすることができるSAW素子片とすることができるのである。
以下、具体的な実施例について説明する。本実施例のSAW素子片に用いる圧電基板は、水晶板であって、オイラー角表示を(φ,θ,ψ)としたときに、カット角が(0°,θ,0°≦|ψ|≦90°)となっている。すなわち、水晶板(圧電基板)12は水晶結晶において図2に示すようなカット角となっている。このカット角は、次のようにして得られる。水晶結晶の電気軸をX軸、機械軸をY軸、光軸をZ軸としたときに、水晶板30は、オイラー角が(0°,0°,0°)のZ軸に垂直な水晶板となる。この水晶板30を、X軸を回転軸として反時計方向に角度θだけ回転させたときに新たに得られる座標軸を、X軸、Y´軸、Z´軸とする。このXY´Z´座標系において、X軸とY´軸とのなす面に平行な水晶板32を、さらにZ´軸を中心に角度ψだけ回転させて得られる新たな座標軸を、X´軸、Y´´軸、Z´軸とする。このX´Y´´Z´座標系において、X´軸とY´´軸とのなす面に平行な水晶板がオイラー角(0°,θ,ψ)の水晶板となる。このような水晶板においてX軸を中心とした回転角θは0°≦θ≦180°の範囲とすると良く、望ましくは95°≦θ≦155°とすると良い。また、ψについての好適な角度は、33°≦|ψ|≦46°の範囲である。したがって、本実施例における圧電基板12として望ましい水晶基板は、オイラー角を(0°,95°≦θ≦155°,33°≦|ψ|≦46°)としたものである。
IDT14を構成する櫛型電極16における電極指22のピッチに対するメタライゼーションレシオηは、0.7〜0.8程度とすると良い。また、電極を構成する薄膜の厚さHは、圧電基板12に励起される弾性表面波の波長をλとした場合、H/λ=0.09〜0.11の範囲とすることが望ましい。電極の膜厚をこのような範囲に設定することにより、温度特性の向上を図ることができるからである。
以下に説明する電極の構成について本実施例では、電極指対数:M、反射器導体本数:N、交差指幅:WCR、電極周期長比:PPT=PB/PA、電極指反射係数TANC0、反射器導体周期長:PR、反射器導体とIDT電極指の周期長比:PTN=PR/PAとして説明することとする。
まず、IDT14の放射コンダクタンスGの特性、並びに反射係数Γの特性と、電極周期長比PPTとの関係について説明する。図3は、電極指対数M=10、電極周期長比PPT=0.810とした場合におけるIDT14の放射コンダクタンスGの特性(図3(A))と、IDT14の反射係数Γの特性(図3(B))とを表すグラフである。また、図4は、電極指対数Mを10、電極指周期長比PPTを0.999とした場合におけるIDT14の放射コンダクタンスGの特性(図4(A))と、IDT14の反射係数Γの特性(図4(B))とを表すグラフである。
図3と図4を比較すると読み取れるように、IDT14の放射コンダクタンスGの特性は、電極周期長比PPTの変化によって偏移するのに対し、IDT14の反射係数Γの特性には変化は無く、中心周波数がシフトするだけである。この関係より、電極周期長をPAとPBとに分けて周期的に繰り返す2電極周期構造によって電極指22の配置間隔に誤差が生じ、反射と放射との配置に変化がもたらされ、IDT14の放射コンダクタンスの特性が変化したという結論を出すことができる。
この結論に基づくと、次のような仮説を立てることができる。インダクタンスRの逆数である放射コンダクタンスGの値が変化するということは、インダクタンスRの値も変化しているということを意味する。例えば、インダクタンスRの値が大きくなった場合には、IDT内のエネルギーの閉じ込みが不十分であり、漏れの割合が大きいと考えることができる。つまり、IDT全体としての実効的な反射係数が低下したと考えることができるのである。これらを勘案すると、電極周期長比PPTを変化させることにより、放射コンダクタンスGの値の低下、あるいはインダクタンスRの値の上昇が見られた場合には、IDTの実効的な反射係数が低下したと考えることができる。
次に、SAW素子片10を実際に設計する上でのIDT14を構成する櫛型電極16の電極指22におけるピッチPA、並びにPB、及び反射器導体のピッチPRの設定について説明する。図5は、電極周期長比PPTとIDT14の周波数偏差ft(ppm)の偏移との関係を示すグラフであり、横軸をPPT、縦軸を主共振からの周波数偏差量dft/f0として示す。図5から読みとれるように、PPTが1に近づくほどIDT14の周波数偏差量は低下する傾向にあり、その関係は略比例しているといえる。なお、図5は、共振周波数f0=312MHz、電極指対数M=90、反射器導体本数N=3とした場合における2電極指周期構造のSAW素子片における例を示している。
図6は、反射器18の反射係数rと反射器18のストップバンドの周波数偏差の偏移との関係を示すグラフであり、横軸を反射器18の反射係数r、縦軸を主共振からの周波数偏差量dfr/f0として示す。なお、図6において、fuはストップバンドの上限を示し、flはストップバンドの下限を示し、frはストップバンドの中心周波数を示す。図6から、反射係数が上昇するほどストップバンドの中心周波数も上昇し、ストップバンドの帯域幅も広がっていることが読み取れる。なお、図6は、共振周波数f0=312MHz、電極指対数M=20、反射器導体本数N=2とした場合における2電極指周期構造のSAW素子片10における例を示している。
図5、及び図6の関係より、PPT=0.80、M=90、r=−0.15とした場合におけるftとfrを求めると、ft=213000(ppm)、fr=47842(ppm)という値を得ることができる。ここで、frr=fr/f0、ftr=ft/f0と定義すると、IDT電極周期長PA、PB、反射器導体周期長PRはそれぞれ、次式により算出することができる。
Figure 0004743491
ここで、V=3244(m/sec)、f0=312MHz=312×10とした場合において、適宜数値を上記数式1に代入すると、
Figure 0004743491
とそれぞれの周期長を算出することができる。
図7は、電極指対数M=90、反射器導体数N=3、共振周波数f0=312MHzとするSAW素子片について、上記数式1に従って電極指周期長PA並びにPB、及び反射器導体周期長PRの値を算出する際にPPTを変化させた場合における放射コンダクタンスGの最大値の偏移を表したグラフである。図7から読みとれるように、放射コンダクタンスGの最大値は、PPT=0.7〜0.9の範囲において、PPT=1の場合に比べ、低下する割合が大きくなっていることが認められる。すなわちPPT=0.7〜0.9とした場合には、電極指22の膜厚を確保しつつIDT14全体としての実効的な反射係数を大きな割合で低減することができるものと考えられるのである。
次に数式1に基づいて電極指周期長PA並びにPB、及び反射器導体周期長PRの値を算出したSAW素子片について、反射器の有無、あるいは反射器の導体本数Nの増減によるエネルギーの閉じ込み効果について検討する。以下にSAW素子片の設計例1と設計例2を示し、その設計上の違いと、算出されるQ値の違いを述べる。
設計例1:M=90、N=30、WCR=32、TANC0=−0.15、PPT=0.800、PTN=0.864
設計例2:M=90、N=3、WCR=32、TANC0=−0.15、PPT=0.800、PTN=0.864
上記のように、設計例1と設計例2は、反射器の導体本数N以外の値を同一としており、設計例2におけるNの値は、設計例1におけるNの値よりも著しく小さく設定している。ここで、電極指対数Mと反射器導体本数Nとの割合を考慮すると、設計例2においては、反射器は無いものとみなすこともできる。
このような条件に基づいてQ値を算出すると、設計例1におけるQ値は6666、設計例2におけるQ値は5263という値を得ることができた。この結果より、設計例1のSAW素子片と設計例2のSAW素子片との間には、Q値について約1400の変化を認めることができたこととなる。これは、反射器の導体本数の増減により、IDT、反射器を含む電極全体の反射係数の増減を図ることができたことを意味する。すなわち、PPTの調整によりIDT全体としての実効的な反射係数を低下させると共にQ値を低下させたSAW素子片に対し、反射器を付加することで電極全体の反射係数を高めてエネルギーの閉じ込み効果を図ることで、Q値を向上させることができることが確認できたのである。なお、上記のような関係をふまえると、設定される諸条件によっても異なるが、電極指周期長PA並びにPB、及び反射器導体周期長PRとの間には、PB<PR<PAの関係が成り立つことが望ましいと考えられる。
上記より、電極周期長PPTの設定によりIDT14内におけるバルク波放射を減少させ、反射器18の導体ストリップ数の設定によりエネルギーの閉じ込み効果を得ることにより、電極指22の膜厚を増大させ、電極指22の反射係数を増大させた場合であっても、高いQ値を持つSAW素子片10を得ることができるものと考えられる。
次に、上記実施形態に示したSAW素子片10を搭載した弾性表面波装置について説明する。図8は、上記実施形態に示したSAW素子片10を共振子として用いる場合の具体的実施例を示すものである。
図8においてSAW共振子100は、セラミックなどからなるパッケージ本体102を有する。パッケージ本体102は、上端が開口した箱型に形成されており、その底面にSAW素子片10が接着剤等を介して固定されている。SAW素子片10は、IDT14の両側に接続パッド26が設けられている。前記接続パッド26は、ボンディングワイヤ108等を介してパッケージ本体102に設けた電極106に接続されている。そして、前記パッケージ本体102の開口部には、金属やガラス等からなる蓋体104が配置され、図示しない封止剤によって気密に封止する。このような構成のSAW共振子100は、広い帯域で良好な温度特性を保つことができ、エネルギー損失が少なく高いQ値を得ることができる。
次に、上述した弾性表面波装置(SAW共振子100)を実装した電子機器について、図9に示す携帯電話装置を一例に挙げて説明する。
携帯電話装置200では、送信者からの音声信号は、マイクロフォン202によって電気信号に変換され、デモジュレータ・コーデック等を備える信号切替部206で変調等され、送信部208にて周波数変換等され、アンテナ212を介して基地局(不図示)に送信される。
これに対し、基地局から送信された信号は、アンテナ212を介して受信し、受信部214にて周波数変換され、信号切替部206にて音声信号に変換されて、スピーカ204から出力される。
このような信号制御が成される携帯電話装置200の動作は、CPU(Central Processing Unit)216によって全体が制御されている。CPU216は、液晶画面やキーボード等の入出力部218や、制御プログラムや電話帳等を記録するメモリ220をはじめ、信号の送受信を制御する切替スイッチ210の動作も制御している。
上記のような基本構成を有する携帯電話装置200において、上述したSAW共振子100は特に、CPU216に接続され、CPU216の基本クロック等の役割を果たす。なお、上述した弾性表面波装置をフィルタとした場合には、送信部208や受信部214におけるフィルタとして用いることもできるし、共振子として受信部214における局部発振器の役割を担うこともできる。
本発明に係る弾性表面波素子の構成を示す概略図である。 実施例に係る水晶板のカット角を説明する図である。 IDT14の放射コンダクタンスGの特性と、反射係数Γの特性を示すグラフである。 IDT14の放射コンダクタンスGの特性と、反射係数Γの特性を示すグラフである。 電極周期長比とIDTの周波数偏差との関係を示すグラフである。 反射器の反射係数とストップバンドの周波数偏差との関係を示すグラフである。 電極周期長比とコンダクタンスの最大値との関係を示すグラフである。 本発明に係る弾性表面波装置の例を示す図である。 本発明に係る電子機器の例を示す図である。
符号の説明
10………弾性表面波素子片(SAW素子片)、12………圧電基板(水晶板)、14………すだれ状電極(IDT)、16(16a,16b)………櫛型電極、18(18a,18b)………反射器、20………給電導体(バスバー)、22………電極指、24………導体ストリップ。

Claims (6)

  1. 圧電基板の板面に、当該圧電基板に励起される弾性表面波の進行方向と直交する方向に配された電極指を備えたすだれ状電極を有する弾性表面波素子片であって、
    前記すだれ状電極を構成する櫛型電極同士で隣り合う対を成す2本の電極指を1つの組として、前記電極指を形成する周期長の異なる組を交互に配置し、
    前記すだれ状電極を、格子状に配された複数の導体ストリップを有する反射器で挟み込む構成としたことを特徴とする弾性表面波素子片。
  2. 前記すだれ状電極は、各組毎に前記電極指を形成する周期長をPAとPBとして交互に配置する構成とし、
    前記反射器は、前記導体ストリップの周期長をPRとして構成し、
    前記PAとPB、およびPRの関係が、PA>PR>PBであることを特徴とする請求項1に記載の弾性表面波素子。
  3. 組単位の電極指形成周期長は2組の周期長から成り、組間の周期長比は7:10から9:10の範囲内としたことを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の弾性表面波素子片。
  4. 前記すだれ状電極は、予め定められた周期長で電極指を形成する際、電極指の線幅と間欠部の間隔とを一定の割合とすることを特徴とする請求項1乃至請求項3のいずれかに記載の弾性表面波素子片。
  5. 請求項1乃至請求項4のいずれかに記載の弾性表面波素子片を搭載したことを特徴とする弾性表面波装置。
  6. 請求項5に記載の弾性表面波装置を搭載したことを特徴とする電子機器。
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