JP4740578B2 - 壁構造 - Google Patents

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Description

本発明は、軸組又は枠組の内側を、格子状に配置してある金属製フレーム材で複数の開口部に区画し、前記開口部の夫々に板材を嵌め込んで塞いである壁構造に関する。
上記壁構造は、軸組又は枠組の内側を、格子状に配置してある金属製フレーム材で複数の開口部に区画して、開口部の夫々に板材を嵌め込んで塞いであるので、風や地震などの水平力による壁面の面内変形、例えば、軸組又は枠組の一方の対角線に沿って互いに対向する二つのコーナー部における軸部同士の交差角が拡がり、他方の対角線に沿って互いに対向する二つのコーナー部における軸部同士の交差角が狭まるような壁面の面内変形を、開口部の変形に伴うフレーム材とその開口部に嵌め込んである板材との接当で開口部の変形を規制することによって、強度が高い軸組又は枠組やフレーム材を特に使用することなく防止することができる。
しかしながら、壁の透視性を確保できるように、複数の開口部のうちの特定の開口部に多角形の面ガラスを嵌め込むような場合は、従来、ガラス面に沿う方向の外力が面ガラスに作用すると、その面ガラスの一部に応力が集中し易く、応力集中箇所に発生したクラックなどに起因して破損し易い点を考慮して、面ガラスを建築構造部材として開口部に嵌め込むようなことは行われておらず、面ガラスに外力が極力作用しないように、弾性緩衝材などを介して開口部に嵌め込んでいる(慣用技術であり、先行技術文献情報を開示できない)。
このため、壁の透視性を確保できるように、複数の開口部のうちの特定の開口部に多角形の面ガラスを嵌め込むような場合は、その面ガラスに開口部の変形を規制するような機能を期待することができず、壁全体としての耐力が大きく低下する欠点がある。
本発明は上記実情に鑑みてなされたものであって、壁の透視性を確保できるように、複数の開口部のうちの特定の開口部に多角形の面ガラスを嵌め込んでも、面ガラスを嵌め込んである開口部の変形も規制できるようにして、強度が高い軸組又は枠組やフレーム材を特に使用することなく、壁面の面内変形を防止できるようにすることを目的とする。
本発明の第1特徴構成は、軸組又は枠組の内側を、格子状に配置してある金属製フレーム材で複数の開口部に区画し、前記開口部夫々に板材を嵌め込んで塞いである壁構造であって、前記複数の開口部のうちの特定の開口部に嵌め込む前記板材に多角形の面ガラスを採用すると共に、残りの開口部に嵌め込む前記板材に金属製板材を採用し、前記面ガラス及び前記フレーム材よりも軟質で、かつ、前記フレーム材と前記面ガラスとに亘って外力を伝達可能なスペーサーを、前記面ガラスにおける各側辺に沿う端面と前記フレーム材との間に、前記面ガラスのコーナー部から離間させて、その面ガラスに対して非接着状態で前記開口部に装着してある点にある。
〔作用及び効果〕
複数の開口部のうちの特定の開口部に多角形の面ガラスを嵌め込み、残りの開口部には、開口部の変形に伴うフレーム材との接当で開口部の変形を規制できるように、金属製板材を嵌め込んであるので、壁の透視性を確保できる。
そして、面ガラス及びフレーム材よりも軟質で、かつ、フレーム材と面ガラスとに亘って外力を伝達可能なスペーサーを、面ガラスにおける各側辺に沿う端面とフレーム材との間に、面ガラスのコーナー部から離間させて、その面ガラスに対して非接着状態で開口部に装着して、特定の開口部に多角形の面ガラスを嵌め込んであるので、開口部の変形に伴って、その開口部を形成しているフレーム材から、スペーサーを介して、応力集中を防止しながら面ガラスに圧縮力を積極的に作用させることができ、もって、面ガラスの耐圧縮強度に基づいて開口部の変形を規制できるのであるが、このとき、面ガラスにおけるコーナー部周りの狭い範囲に、圧縮力が集中的に作用したり、面ガラスに引っ張り力が作用したりすると、面ガラスの肉厚内にそのガラス面に沿う方向に作用する剪断力で、面ガラスの肉厚内部に割れが発生し易い問題がある。
そこで、面ガラスにおけるコーナー部周りの狭い範囲に応力が集中的に作用しないように、スペーサーを面ガラスのコーナー部から離間させて開口部に装着し、また、面ガラスに引っ張り力が作用しないように、そのスペーサーを面ガラスに対して非接着状態で開口部に装着してあるので、面ガラスの肉厚内に作用する剪断力で面ガラスの肉厚内部に割れが発生するおそれが少ない。
従って、壁の透視性を確保できるように、複数の開口部のうちの特定の開口部に多角形の面ガラスを嵌め込んでも、面ガラスを嵌め込んである開口部の変形も規制することができ、強度が高い軸組又は枠組やフレーム材を特に使用することなく、壁面の面内変形を防止できる。
本発明の第2特徴構成は、前記金属製板材で塞いである開口部の複数を、斜め上下方向に沿って配置してある点にある。
〔作用及び効果〕
金属製板材で塞いである開口部、つまり、開口部の変形に伴うフレーム材とその開口部に嵌め込んである金属製板材との接当で変形を規制し易い開口部の複数を、斜め上下方向に沿って配置してあるので、それらの開口部を形成しているフレーム材を、軸組又は枠組に対してブレース状に作用させて、軸組又は枠組の変形を防止できる。
本発明の第3の特徴構成は、前記スペーサーを、前記コーナー部から25.4mm(1インチ)〜50mmとなるように設定し離間させて装着してある点にある。









〔作用及び効果〕
面ガラスにおけるコーナー部周りの狭い範囲に圧縮力が集中的に作用しないように、スペーサーを、面ガラスのコーナー部から25.4mm(1インチ)以上離間させて装着してあるので、後述するように、軸組又は枠組の変形に伴う面ガラスの破壊荷重を大きく確保できる。
以下に本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。
〔第1実施形態〕
図1〜図3は本発明による壁構造を示し、四辺形に組まれた軸組又は枠組Aの内側を、格子状に配置してあるステンレス鋼などの金属製フレーム材1(1a,1b)で、縦横の夫々に5個(奇数個)ずつ並ぶ複数の開口部2に区画し、それらの開口部2の夫々に板材3,4を嵌め込んで塞いである。
前記軸組又は枠組Aは、上下の床スラブ5を各別に支持している木製や金属製,コンクリート製などの水平方向部材6と、その水平方向部材6を支持している木製や金属製,コンクリート製などの鉛直方向部材7とを建物外壁部に設けて、上下の水平方向部材6と左右の鉛直方向部材7とで多角形(本実施形態では四角形)に組んであり、その軸組又は枠組Aの内側に、縦フレーム材1aと横フレーム材1bとを格子状に組み付けてあるステンレス鋼などの金属製枠体8を固定してある。
そして、各フレーム材1a,1bで区画した複数の開口部2のうちの特定の開口部(本実施形態では複数の開口部)2aに嵌め込む板材3には多角形(本実施形態では四角形)の面ガラスを採用すると共に、残りの開口部2bに嵌め込む板材4には多角形(本実施形態では四角形)のステンレス鋼などの金属製板材を採用して、面ガラス3と金属製板材4との夫々を、その外周縁部を各縦フレーム材1aと各横フレーム材1bとに沿わせて固定してあり、金属製板材4で塞いである複数の開口部2bは、軸組又は枠組Aにおける対角線に沿って斜め上下方向に左右に配置してある。
図2,図3は各面ガラス3と各金属製板材4の固定構造を示し、縦フレーム材1aと横フレーム材1bの開口部2aに臨む内周側に、面ガラス3の端縁が入り込む凹溝9を形成し、面ガラス3及びフレーム材1(1a,1b)よりも軟質で、かつ、フレーム材1(1a,1b)と面ガラス3とに亘って外力を伝達可能なスペーサー10を、面ガラス3における各側辺に沿う端面11とフレーム材1(1a,1b)との間に、面ガラス3の各コーナー部Cから離間させて、その面ガラス3に対して非接着状態で開口部2aに装着して、面ガラス3を開口部2aに嵌め込んであり、金属製板材4は、縦フレーム材1aと横フレーム材1bの開口部2bに臨む内周側に凹溝12を形成し、金属製板材4の周縁を、その端面13が溝底面に接触する状態で、その凹溝12に全周に亘って嵌合させて、開口部2bに嵌め込んである。
また、面ガラス3の各コーナー部C周りの端面11とフレーム材1(1a,1b)との間、及び、面ガラス3のガラス面とフレーム材1(1a,1b)との間には、フレーム材1(1a,1b)からの外力の伝達を防止する弾性緩衝材14を装着してある。
前記スペーサー10は、具体的には、ポリアセタール樹脂やアクリル樹脂,ナイロン66,アルミ合金などのヤング率(E)が1000〜70000N/mm2の硬質材料で形成してあり、また、弾性緩衝材14はヤング率(E)が1000N/mm2未満の軟質材料で形成してある。
〔第2実施形態〕
図4は本発明による壁構造の別実施形態を別示し、金属製板材4で塞いである開口部2bを上下一列に配置してある開口部列Dと、面ガラス3で塞いである開口部2aを上下一列に配置してある開口部列Eとを、軸組又は枠組Aの幅方向に沿って、金属製板材4で塞いである開口部列Dが幅方向の中間に位置するように、交互に配置してある。
その他の構成は第1実施形態と同様である。
〔第3実施形態〕
図5は本発明による壁構造の別実施形態を別示し、金属製板材4で塞いである開口部2bを一列に配置してある開口部列Dを井桁状に配置してある。
その他の構成は第1実施形態と同様である。
〔その他の実施形態〕
1.本発明による壁構造は、複数の開口部のうちの面ガラスを嵌め込む特定の開口部が、単一であっても複数であっても良い。
2.本発明による壁構造は、角数が3以上の多角形に組まれた軸組又は枠組の内側を、格子状に配置してある金属製フレーム材で複数の開口部に区画して、複数の開口部のうちの特定の開口部に面ガラスを嵌め込み、残りの開口部に金属製板材を嵌め込んであっても良い。
3.本発明による壁構造は、特定の開口部に、角数が3以上の多角形の面ガラスを嵌め込んであっても良い。
4.本発明による壁構造は、特定の開口部に、開口部の形状とは異なる任意の多角形の面ガラスを嵌め込んであっても良い。
5.本発明による壁構造は、建物内部に設けてある軸組又は枠組の内側を、格子状に配置してある金属製フレーム材で複数の開口部に区画して、複数の開口部のうちの特定の開口部に面ガラスを嵌め込み、残りの開口部に鋼製板材などの金属製板材を嵌め込んであっても良い。
6.本発明による壁構造は、面ガラスにおける各側辺に沿う端面と金属製フレーム材との間に、複数のスペーサーを断続的に装着してあっても良い。
7.本発明による壁構造は、複数枚の面ガラスを板厚方向に重なるように開口部に嵌め込んであっても良い。
8.本発明による壁構造は、金属製の軸組又は枠組自体を金属製フレーム材の一つに兼用してあっても良い。
9.本発明による壁構造は、スペーサーを、面ガラスにおける各コーナー部からの離間距離が各側辺において異なるように、開口部に装着してあっても良い。
10.本発明による壁構造は、木製の軸組又は枠組の内側を、格子状に配置してある金属製フレーム材で複数の開口部に区画して、複数の開口部のうちの特定の開口部に面ガラスを嵌め込み、残りの開口部に金属製板材を嵌め込んであっても良い。
11.本発明による壁構造は、型板ガラス,フロートガラス,強化ガラス,合わせガラス,複層ガラスなどのいずれの面ガラスを開口部に嵌め込んであっても良く、その品種や構成は限定されない。また、前記の面ガラスは、鏡であっても良い。
図6に示すように、本発明による壁構造における開口部2の試験用模型Bに水平荷重Fを作用させる試験装置を使用して、スペーサー10のコーナー部Cからの離間距離Lを変えた場合の開口部2(2a)の変形に伴う面ガラス3の破壊荷重を測定した。
前記試験用模型Bは、金属製フレーム材1としての四個の鋼材15をピン16で相対変位可能に枠状に連結して開口部2(2a)を形成し、面ガラス(一辺の長さ:500mm,厚さ:19mm)3の端面11と鋼材15の内周側との間にポリアセタール樹脂製のスペーサー(厚さ:5mm)10を挟み込んで、面ガラス3を開口部2aに嵌め込んである。
尚、面ガラス3の各コーナー部C周りの端面11と鋼材15との間は空隙で、弾性緩衝材14を装着していない。
そして、スペーサー10の各コーナー部Cからの離間距離Lが15mmのサンプル1と、25.4mm(1インチ)のサンプル2と、40mmのサンプル3と、50mmのサンプル4とを作成し、比較のために、スペーサー10の各コーナー部Cからの離間距離Lが0mmの比較用サンプルを作成して、各サンプルについて軸組又は枠組Aの上部に水平荷重Fを作用させ、面ガラス3に割れが生じるときの水平荷重Fを破壊荷重として測定した。
表1は、その測定結果を示し、離間距離Lが25.4mm(1インチ)以上のサンプル2,3,4は、軸組又は枠組Aの変形に伴う面ガラス3の破壊荷重を、4トン(39.2kN)用耐震壁に使用できる80kN以上の大きさで確保できることが分かる。
Figure 0004740578
壁構造の正面図 要部の一部切欠き正面図 図2のIII−III線断面図 第2実施形態を示す正面図 第3実施形態を示す正面図 試験装置の正面図
符号の説明
1 フレーム材
2 開口部
3 板材(面ガラス)
4 板材(金属製板材)
10 スペーサー
11 端面
A 軸組又は枠組
C コーナー部

Claims (2)

  1. 軸組又は枠組の内側を、格子状に配置してある金属製フレーム材で複数の開口部に区画し、前記開口部の夫々に板材を嵌め込んで塞いである壁構造であって、
    前記複数の開口部のうちの特定の開口部に嵌め込む前記板材に多角形の面ガラスを採用すると共に、残りの開口部に嵌め込む前記板材に金属製板材を採用し、
    前記面ガラス及び前記フレーム材よりも軟質で、かつ、前記フレーム材と前記面ガラスとに亘って外力を伝達可能なスペーサーを、前記面ガラスにおける各側辺に沿う端面と前記フレーム材との間に、前記面ガラスのコーナー部から離間させて、その面ガラスに対して非接着状態で前記開口部に装着してあり、
    前記スペーサーは、ヤング率(E)が1000〜70000N/mm の硬質材料で形成してあり、前記コーナー部からの離間距離が、各側辺で等しく、かつ、25.4〜50mmとなるように設定してあり、
    面ガラスの各コーナー部周りの端面とフレーム材との間、及び、面ガラスのガラス面とフレーム材との間には、前記スペーサーよりも軟質で、ヤング率(E)が1000N/mm 未満であり、フレーム材からの外力の伝達を防止するスペーサーよりも軟質の弾性緩衝材(14)を備えることを特徴とする壁構造。
  2. 前記金属製板材で塞いである開口部の複数を、斜め上下方向に沿って配置したことを特徴とする請求項1記載の壁構造。
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