JP4740503B2 - 分子導入装置及び分子導入方法 - Google Patents
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Description
本発明は、医学及び生物学等の分野において、遺伝子等の分子を細胞内に導入する分子導入装置及び分子導入方法に関するものである。
背景技術
近年、遺伝子治療が脚光を浴びてきている。ところが、未だ遺伝子を確実に生体内へ導入する方法は確立していない。現在、遺伝子導入方法には、リポゾーム法、ウイルス法、リン酸カルシウム法、ジーンガンなどの直接注入法及び電気穿孔法であるエレクトロポレーション法(electroporation)がある。電気的方法においては、矩形直流パルス又は指数関数減衰パルスを用いている。
【0001】
上記電気穿孔法を適用している分子導入装置には、日本特許第2739978号公報に開示されているものがある。この分子導入装置は、複数の生体粒子を溶液中の電極の間に配置し、パルス高周波の振動電界を上記電極の間に印加し、上記生体粒子のポレーション又は透過を行うものである。
解決課題
上述した従来の遺伝子導入方法としてのリポゾーム法、ウイルス法、リン酸カルシウム法、ジーンガン及びエレクトロポレーション法は、何れにおいても生体に無害で且つ安定した遺伝子導入をもたらすものとはいえないという問題があった。
【0002】
電気的方法においては、矩形直流パルス又は指数関数減衰パルスを用いるため、遺伝子の導入時に組織細胞の障害が避けられない。また、この電気的方法では、目的とした細胞又は組織全体に確実に遺伝子を導入させることが困難である。
【0003】
また、上記日本特許第2739978号公報に開示された分子導入装置は、RF高周波電流パルスを溶液中に通電する方法である。この場合、溶液中に流入する電流(電子の数)が大きくなるため、細胞傷害が生ずる。この細胞傷害を防止するためには、通電電力を低下させる必要がある。しかし、この通電電力を低下させると、細胞等の分子の振動能力が低下する。この結果、分子を細胞内へ確実に導入させることができないという問題があった。
【0004】
本発明は、斯かる点に鑑みてなされたものであり、動植物やその他の生物において、生体、培養組織接着細胞及び浮遊細胞の何れにおいても、傷害がなく且つ確実に遺伝子等の分子を細胞内に導入し、蛋白又は活性の発現をもたらすことを目的とするものである。
発明の開示
本発明は、分子間の結合エネルギーよりも大きい運動エネルギーを、細胞へ導入させる分子に付与するようにしたものである。この結果、細胞に穿孔等を形成することなく、分子を安全に細胞内に導入させることができる。
【0005】
本願発明者らは、大きい運動エネルギーを如何にして分子に付与するかに関し、永年鋭意研究をした結果、下記の手段を見出したものである。本発明は、体内組織又は細胞を標的に、電気的フィールド、磁気的フィールド又は音波的フィールドを形成する。そして、分子の共鳴運動と、細胞膜の可逆的な極性反転の反復脱分極とを励起させ、細胞内外における分子の膜通過を可能とする。すなわち、電気的には負の荷電をもつ細胞膜が正に極性反転すれば、同じく負に帯電した分子との相互反発が消失して互いに吸引し合う。この結果、遺伝子等の分子の細胞内への移行が惹起される。
【0006】
更に詳述すると、本発明において、放電されるのは、例えば、シングルスパイクのみでよく、スパイクの上行脚と下行脚が最初の1振動をもたらすのみでよい。その後の全ての振動は、生体系を含んだ共振回路の交響反応現象である。したがって、全ての振動反応は、単回の励起に伴う二次現象であり、振動波(高周波)の出力は、必ずしも必要としない。
【0007】
導入する分子が細胞内に移行する仕組みは、次の通りである。どの様な高電圧の瞬発励起であっても、全ての分子種は、分子量、帯電性と帯電部位又は立体構造などによって規定される固有振動特性がそれぞれ異なる。このために、分子の共鳴振動の位相偏差と、分子の相対運動におけるモーメントの減衰偏移とが生じる。時には、分子対分子が離反し合ったり、衝突しあう現象が出現する。したがって、導入する分子と細胞膜の構成分子とは、衝突と離反を繰り返す。そして、細胞膜の立体構造が歪んだ瞬間などに、分子が細胞内へ進入する機会を得る。
【0008】
この瞬発刺激に引き続く電気的減衰振動は、導入装置と生体内回路に包含される電子や分子の共鳴運動の総和として観察されるものであり、分子が細胞内へ進入する事象を反映するものである。
【0009】
また、本発明は、静水面に小石を落として液面の振動を得るのに対し、高周波法は、オールで液体を捌いて水面を振動させることに相当する。石を落とす場合は、オイルであれ、水であれ、何れの液体もその容量と液体自身の物性に適切な振動様式を来す。これに対し、液体を捌く場合には、捌くこと自体が液面に不適切な動揺を与えるため、大きな振動が得られない。同振幅の振動を得るためには、明らかに、小石を落とす方がオールによる手段よりもエネルギー損失が少ない。例えば、音の場合は、本発明の方法では、音叉をたたいて共鳴音を得るのに対し、高周波刺激では、音叉を細かく揺すっていることに相当する。明らかに、音叉をたたいた方がきれいな共鳴が得られる。
【0010】
詳述すると、第1の発明は、空気中に配置されて絶縁物を介して高電圧を発生させる複数の電極と、該電極に接続され、シングルパルスの高電圧を上記電極に印加する電圧印加手段とを備え、上記シングルパルスの高電圧を電極に印加することによって上記複数の電極の間に配置された生体組織又は細胞と該生体組織又は細胞に導入させる分子とに交響運動を生起させ、分子間の結合エネルギーよりも大きな運動エネルギーを分子に付与し、上記生体組織又は細胞に穿孔を形成することなく分子を生体組織又は細胞に導入させる。
【0011】
また、第2の発明は、上記第1の発明において、電圧発生手段が、電力を供給する電力供給手段と、該電力供給手段から電力供給されて高電圧を電極に供給する昇圧手段と、上記電力供給手段から昇圧手段への電力の供給及び断接を行いシングルパルスの高電圧を発生させる開閉手段と、該開閉手段の断接を制御する開閉制御手段とを備え、上記シングルパルスの高電圧の印加周期は、10Hz〜1000Hzであり、上記電極間の電圧は、±1万ボルト〜±100万ボルトである。
【0012】
一方、第3の発明は、分子導入方法に関する発明であって、空気中に配置されて絶縁物を介して高電圧を発生させる複数の電極と、該電極に接続され、シングルパルスの高電圧を上記電極に印加する電圧印加手段とを備え、上記シングルパルスの高電圧を電極に印加することによって上記複数の電極の間に配置され且つ容器に収納された生体組織又は細胞(ただし、生体組織および細胞として人体そのものを除く)と該生体組織又は細胞に導入させる分子とに交響運動を生起させ、分子間の結合エネルギーよりも大きな運動エネルギーを分子に付与し、上記生体組織又は細胞に穿孔を形成することなく分子を生体組織又は細胞に導入させる。
【0013】
つまり、一般に、分子導入装置、特に、電気的導入法の遺伝子導入装置においては、対象組織や細胞を傷害しないことが求められる。遺伝子導入装置が、細胞組織の破壊を招けば、装置自体の適格性が損なわれる。細胞破壊を招く原因は、対象細胞に対する供給電力量が過剰であることが多い。したがって、遺伝子導入装置は、細胞破壊の前に速やかに飽和蓄積電力を中和することによって、細胞破壊を回避することが肝要である。
【0014】
この回避方法としては、次の方法がある。先ず、体内の所定部位には、予め注射等により所望の遺伝子を導入しておく。そして、ハイインピーダンスの高圧電源より、充分に昇圧された電圧を上記所定部位に間欠的に繰り返し印加する。
【0015】
つまり、シングルパルスである瞬発的な高電圧を間欠的に発生させる。この瞬発の高電圧の印加によって、装置自身と生体によって形成される電気的自由共振回路が励起される。そして、この共振回路の構成成分で且つ電子や電荷を帯びた分子は、減衰振動を起こす。
【0016】
特に、本発明では、電極が高絶縁物を介して生体組織又は細胞と外側の遺伝子等の分子とに非接触状態で配置されている。換言すれば、高絶縁部で被覆された電極を生体組織又は細胞内に挿入しても電流が流れず、安全である。そして、上記電極の間で分子等に電圧を印加する。
【0017】
その際、周辺の細胞組織及び導入された遺伝子も周辺細胞の自由共振回路内に組み込まれ、各分子の固有の共振特性を発揮して自由減衰振動する。細胞膜の近傍に分布する遺伝子は、自らが帯電している電荷と同一の瞬発電界が与えられたときには、逆電界方向に、また、次の瞬時に逆電界が与えられたときには、順電界側に向けてファラデーの法則に基づく力学的モーメントを受ける。そして、自由減衰振動による遺伝子の連続運動と、細胞膜の可逆的な極性反転の反復との結果、遺伝子と細胞膜の分子との間には、加速度的な相対運動が生起し、遺伝子の膜通過がもたらされる。
【0018】
この結果、従来の電極の間の溶液に直流のみを印加する方法に比べて遺伝子の細胞内への導入確率は飛躍的に向上すると共に、対象部位と周辺の細胞の破壊を確実に防止することができる。
【0019】
細胞膜及び細胞壁の構造によって、その厚さを考慮したとき、その膜及び壁に印加される電圧から、薄膜間電子障壁を電子がすり抜けるトンネル効果も発揮される。
【0020】
また、高電界環境下における電子共鳴相互作用が周辺分子を加速度的に励起するポッピング現象によって、導入する分子が雪崩的に細胞膜又は細胞壁を通過することもできる。
【0021】
特に、後者は、従来、直流パルスを溶液中で供給し、電流を流しながら遺伝子を導入していた。本発明は、高電界は発生させるものの、ハイインピーダンスの高圧電源及び高絶縁電極を用いるため、導入する生体組織又は細胞に殆ど電流が流れす、安全性を確保することができる。
【0022】
また、磁場を形成することにより電流を偏移させ、電子スピンを生起させたり、遺伝子等の分子の共振を制御するようにしてもよい。
【0023】
また、単に自由共振に限られず、フーリエ波形合成などの多様な周期性の振動を付与するようにしてもよい。この場合、様々な組織細胞の共振を生じさせることができる。
【0024】
また、抵抗値や電極の形状及びサイズを変更することにより、適切な共振条件を観察しつつ分子の導入を進めるようにしてもよい。
発明の効果
本発明によれば、従来の直流のみを印加する方法に比べて遺伝子の細胞内への導入確率は飛躍的に向上すると共に、対象部位と周辺の細胞の破壊を確実に防止することができる。
【0025】
特に、電極と分子等とが非接触の状態であるので、広範囲の適用を可能とすることができる。
発明を実施するための最良の形態
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。
【0026】
−実施形態1−
図1に示すように、本実施形態の分子導入装置1は、体内の細胞に分子である遺伝子を導入する遺伝子導入装置であって、電圧発生手段11と電圧印加手段12とを備えている。この分子導入装置1は、図2に示すように、導入する遺伝子2を予め注射等の手段により生体内に存在させていることを前提としている。
【0027】
通常、遺伝子2を単に体内に注入するのみでは、細胞3の細胞膜3aによって遺伝子2の細胞3内への侵入が拒まれる。従って、注入した遺伝子2は、細胞3内及び細胞核4内に移行することができない。この結果、遺伝子2の注入によって期待すべき変化は発現しない。
【0028】
上記電圧発生手段11は、電力供給手段である電力供給回路20と、昇圧手段であって変圧器である昇圧トランス30と、開閉手段であるスイッチングトランジスタ22と、開閉制御手段である信号制御回路40とを備えている。
【0029】
上記電力供給回路20は、直流の電源21を備え、該電源21の両端が昇圧トランス30の一次側巻線31の両端に接続されている。上記電力供給回路20は、電源21から一定の直流電力を昇圧トランス30に供給するように構成されている。
【0030】
上記スイッチングトランジスタ22は、電力供給回路20から昇圧トランス30の一次側巻線31への電力の供給及び遮断を行うように構成されている。つまり、上記スイッチングトランジスタ22は、昇圧トランス30への電力供給を断接する。上記スイッチングトランジスタ22は、電源21の負側と昇圧トランス30の一次側巻線31との間に接続され、コレクタが昇圧トランス30の一次側巻線31に接続され、エミッタが接地されている。
【0031】
上記信号制御回路40は、周波数発信回路41と波形成形回路42とを備えている。該周波数発信回路41は、予め設定された所定周波数の制御信号を出力するように構成されている。上記波形成形回路42は、周波数発信回路41の制御信号を所定波形に成形して制御信号を出力するように構成されている。そして、該波形成形回路42は、スイッチングトランジスタ22のベースに接続され、該スイッチングトランジスタ22を所定タイミングでオン及びオフさせるように構成されている。
【0032】
上記昇圧トランス30は、低圧部の一次側巻線31と高圧部の二次側巻線32とを備えている。そして、該昇圧トランス30は、一次側巻線31と二次側巻線32との巻線比で定まる昇圧比に基づいて二次側巻線32に所定の高電圧を発生させるように構成されている。
【0033】
上記昇圧トランス30は、図3に示すように、スイッチングトランジスタ22のオン状態において、一次側巻線31が励磁され、該一次側巻線31に所定の電気エネルギーAを蓄える。一方、上記スイッチングトランジスタ22がオフすると、蓄えられた電気エネルギーを放出する。そして、図4に示すように、昇圧トランス30の二次側巻線32には、電界変動を介して電子の揺れ動きが誘起され、瞬発電圧と生振幅の残留減衰振動波の交番電圧Bが誘起される。
【0034】
つまり、シングルパルスである瞬発的な高電圧の発生によって、正弦減衰波の交番電圧Bが誘起される。
【0035】
上記電圧印加手段12は、一対の電極プローブ50,50を備え、該両電極プローブ50,50が配線60,60によって昇圧トランス30の二次側巻線32の各端に接続されて構成されている。上記各配線60には、過電流制限を行う限流抵抗61とコンデンサ62が直列に接続されている。
【0036】
上記電極プローブ50は、筒状の電極筒51と、該電極筒51の内部に収納され、上記配線60が接続された電極である先端電極52とを備えている。上記電極筒51の内部には、シリコンなどの絶縁材料の充填材53が充填されている。更に、上記電極プローブ50は、高絶縁被覆物63を備えている。つまり、上記電極筒51は、高絶縁性を有する高絶縁被覆物63で被覆されている。該電極プローブ50は、高絶縁被覆物63で被覆されているので、誘電率に従って構成される等価コンデンサとして機能する。
【0037】
上記一対の電極プローブ50,50は、生体の所定部位に設置され、つまり、所定の細胞3と非接触状態で配置される。上記一対の電極プローブ50,50は、所定の細胞3の付近に高圧の瞬発電圧を印加するように構成されている。そして、上記電圧印加手段12は、生体を含めた外部共振回路を構成し、一対の電極プローブ50,50が生体組織に接触通電した際、生体を含めた外部共振回路に対して微分器として働き、外部共振回路に大きなトリガー電圧を供給する。
【0038】
−遺伝子2の導入方法−
次に、上述した分子導入装置による遺伝子2の導入方法について説明する。
【0039】
先ず、導入する遺伝子2を予め注射等の手段により生体内に注入する。その後、上記遺伝子2を導入する細胞3を目標に一対の電極プローブ50,50を生体に対して固定する。続いて、昇圧トランス30の一次側巻線31に電源21から直流電力を供給する一方、周波数発信回路41から所定の制御信号を出力させる。この制御信号は、波形成形回路42によって波形が成形され、スイッチングトランジスタ22のベースに所定の制御信号を出力する。
【0040】
上記スイッチングトランジスタ22が制御信号によってオン状態になると、昇圧トランス30の一次側巻線31に所定の電気エネルギーが蓄えられる(図3参照)。その後、上記スイッチングトランジスタ22が制御信号によってオフすると、一次側巻線31に蓄えられた電気エネルギーを放出する。その際、図4に示すように、昇圧トランス30の二次側巻線32には、急峻な高電圧と共に、減衰振動波を伴う励起電圧Bが誘起される。
【0041】
この急峻な高電圧は、一対の電極プローブ50,50の間に作用し、電圧印加手段12は、生体を含めた外部共振回路を形成する。この生体を含めた外部共振回路は、瞬発電圧をトリガー電圧として励起され、共振を起こす。そして、細胞3の共振時において、図5に示すように、トリガー電圧に引き続く電子と荷電分子の共振動態の総和である振幅変調波形の電圧変動Cが観察される。
【0042】
この出力電圧によって生体に刺激を与えることにより、電圧の印加点を中心とした生体回路は、電気的自由共振回路を形成し、正弦波の減衰振動が誘起される。周辺の細胞3及び遺伝子2も自由共振回路内に組み込まれ、固有共振特性に同期して振動する。
【0043】
この結果、図2に示すように、細胞膜3aの近傍にある遺伝子2は、自らが帯電している電界と同一電界が与えられたときには逆電界側に移動し、また、逆電界が与えられたときには中和できる電界側に移動する。そして、固有共振特性に基づく連続運動と細胞膜3aの可逆的な極性反転の反復の結果、遺伝子2は加速度的な振る舞いを起こす。この結果、上記遺伝子2は、細胞膜3aを通過し、細胞3内の分子との衝突と拡散により、細胞核4の核内遺伝子5の構成の一部となり所望の効果を示す。
【0044】
つまり、一般に、分子導入装置1、特に、電気的導入法の遺伝子導入装置においては、対象の体内組織や細胞3を傷害しないことが求められる。遺伝子導入装置は、細胞3や体内組織の破壊を招けば、装置自体の適格性が損なわれる。細胞3や体内組織の破壊を招く原因は、対象とする細胞3に対する供給電力量が過剰であることが多い。したがって、遺伝子導入装置は、細胞3等の破壊の前に速やかに飽和蓄積電力を中和することによって、細胞3等の破壊を回避することが肝要である。
【0045】
この回避方法としては、上述したように、先ず、体内の所定部位には、予め注射等により所望の遺伝子2を導入しておく。そして、ハイインピーダンスの高圧電源である昇圧トランス30より、昇圧された電圧を上記所定部位に間欠的に繰り返し印加する(図4参照)。この電圧の印加によって、印加点を中心とした生体回路は、電気的自由共振回路を形成し、分子減衰振動が誘起される。
【0046】
周辺の細胞3及び導入された遺伝子2も自由共振回路内に組み込まれ、遺伝子2の固有の共振特性に同期して振動する。すなわち、細胞膜3aの近傍に存在する遺伝子2は、自らが帯電している電荷と同一の瞬発電界が与えられたときには、逆電界方向に、また、次の瞬時に逆電界が与えられたときには、順電界側に向けてファラデーの法則に基づく力学的モーメントを受ける。
【0047】
この瞬時に極大を形成する分子振動は、遺伝子2の固有振動特性に基づいて収斂することになる。しかし、遺伝子2が完全静止する前に、次の瞬時の電界刺激が印加されるときには、新たな極大の分子振動を開始する。細胞膜3aを構成する分子群も同様の期序による振動を励起される。これにくわえて、細胞膜3aにおいては、電位に依存する電流チャンネルが開閉するため、膜電位が変換されることにもなる。固有共振特性に従った遺伝子2の連続振動と細胞膜3aの脱分極の反復の結果、遺伝子2は、加速度的運動を伴なった振る舞いを生起し、細胞膜3aを通過する。
【0048】
この結果、従来の直流のみを印加する方法やRF法に比べて遺伝子2の細胞3内への導入確率は飛躍的に向上すると共に、対象部位と周辺の細胞3の破壊を確実に防止することができる。
【0049】
また、磁場を形成することにより電流を偏移させ、電子スピンを生起させたり、遺伝子2等の分子の共振を制御するようにしてもよい。
【0050】
また、一層、強力な磁場を形成した場合、DNAの二重螺旋構造を緩めて遺伝子2等の分子を細胞3内に導入させることができる。また、遺伝子2等の分子をゲノム内に組み込むことも可能となる。
【0051】
また、単に自由共振に限られず、フーリエ波形合成などの多様な振動を付与するようにしてもよい。この場合、様々な体内組織や細胞3の共振を生じさせることができる。
【0052】
また、共振条件やや電極52又は電極プローブ50の形状及びサイズを変更することにより、適切な共振条件を観察しつつ分子の導入を進めるようにしてもよい。
【0053】
また、上記信号制御回路40が周波数可変の制御信号を出力するので、導入する遺伝子2に合致した電圧印加の周期に調整することができる。
【0054】
一方、上記高電圧の印加の周波数は、10Hz〜1000Hzが好ましく、交番電圧を印加する継続時間は、10秒〜10分が好ましい。そして、この10秒〜10分の印加を繰り返し行う。
【0055】
また、上記一対の電極プローブ50,50の間の電圧は、±1万ボルト〜±100万ボルトに設定され、電圧印加手段12のインピーダンスは、n×1010オーム以上であり、一対の電極プローブ50,50の間に流れる電流、つまり、細胞3等に流れる電流は、1マイクロアンペア以下である。したがって、細胞3の周辺は、電流が殆ど流れない微電流の環境で、且つ高電圧の環境が形成される。
【0056】
尚、上記スイッチングトランジスタ22がオフした後、次にオフするまでの1サイクルの時間Tに対するオフ時間tの比であるデューティ比(t/T)は、0.03〜0.4が好ましい。
【0057】
−実施例1−
孵化した後2日目の鶏とビフィズス菌を用いてGFP遺伝子の導入発現を試みた。一対の電極プローブ50の間には、±15万ボルトの高電圧を繰り返して印加することとした。
【0058】
GFP遺伝子を鶏の大腿筋に注射した後、30秒〜2分の間、上記高電圧を印加した。また、ビフィズス菌の場合は、プラスチック皿内で30秒〜60秒の間、上記高電圧を印加した。このとき、鶏の大腿筋には、単収縮現象(twitch現象)が観察され、筋細胞の脱分極が明らかであった。
【0059】
導入処置後の鶏及びビフィズス菌の増殖能力に異常は認められなかった。また、GFP遺伝子の導入後の5日目において、鶏では、正常な大腿筋の発育と均一且つ高レベルのGFP発現が認められた。
【0060】
また、GFP遺伝子の導入後、3日目において、本分子導入装置1を適用した使用群(GCS)と本分子導入装置1を適用しない未使用群(CTL)とを比較した。GCSでは、緑色蛍光を発生するヨーグルト上清がみられたのに対し、CTLでは、上清の蛍光が認められなかった。更に、吸光スペクトル解析によって、GCS群には、図19に示すように、特異的な340nm〜400nmに分布するエネルギー吸収域を確認した。
【0061】
この図19及び図20は、GCSとCTLのビフィズス菌を市販の牛乳中で37℃において、72時間振とう培養後、3000gにて20分間、遠心分離して両者の培養上清を得た結果を示している。石英キュペット内に上清を注入して分光光度計にてスペクトロスコピーを行ったところ、GCS群にのみ、図19に示すように、340nm〜400nmの吸光が明らかであった。
【0062】
一方、図20に示すように、CTL群には、GCS群の如く特異的なエネルギー吸収域は確認できなかった。
【0063】
−実施例2−
細胞を遠心チューブ内で沈殿させ、少量の高濃度GFPプラスミド液(20μg)を添加して懸濁させ、上述した分子導入装置1によって高電界を作用させた。電圧印加手段12における高電圧(±15万ボルト)の印加の周波数は、80Hz〜800Hzとし、2分の間電圧を印加させた。
【0064】
この場合、GFPの発現が確認された。このGFPの発現は、Hela細胞とPC12細胞を用い、2回の実験を行い、それぞれ再現性が確認された。また、この場合、上記高電圧印加の周波数は、160Hzが最も高効率であった。
【0065】
−実施例3−
100μg(1μg/μl)のβ-Gal発現プラスミドをマウス大腿筋に数カ所に渡り筋注した。その後、右足には、下記の条件で瞬発の高電圧を印加し、左足には、高電圧を印加しなかった。
【0066】
条件(1) ±15万vの瞬発高電圧を160Hzの周波数で5分間印加し、続けて、100vの瞬発高電圧を80Hzの周波数で5分間印加した。
【0067】
条件(2) ±15万vの瞬発高電圧を200Hzの周波数で5分間印加し、続けて、100vの瞬発高電圧を300Hzの周波数で5分間印加した。
【0068】
4日後、マウス大腿筋より組織切片を採取し、X-Galによる染色を行った。
【0069】
結果は、β-Gal陽性細胞、すなわち緑色染色細胞が検出され、筋肉組織への遺伝子の導入が確認された。遺伝子の導入効率は、条件(2)が高効率であった。
【0070】
−実施例4−
孵化後1日の鶏の大腿筋に、抗サイクリンB1マウスモノクローナル抗体を注入し、蛋白分子の細胞内への導入を試みた。一対の電極プローブ50,50の間には、試験体の固定具の接地点電位を中心として±25万vの高電圧を60Hzにて1分間印加して共振回路を励起した。
【0071】
このとき、電極プローブ50では、生体組織の空間分布様式により、空間窒素プラズマの生成、空間唸り音や電界観察用オシロスコープ上の減衰波の形状と周期に多様な変動がみられた。この事実から、本発明によれば、装置外部において、電界内に分布する電子やイオン化元素、また、組織や種々の分子自体の振動が瞬発電圧以後の電圧波形を構成することが明らかであった。すなわち、図4及び図5に示す減衰波は、装置内外を包含して形成される自由共振回路において、電荷を有する分子群の減衰振動を観察した。
【0072】
遺伝子を導入した後、26時間後に、大腿筋をホルマリン固定して、パラフィン切片を作成した。その後、抗マウスIgG二次抗体とストレプトアビジンービオチン結合を介して、ペルオキシダーゼ発色反応により抗サイクリンB1抗体の核内への導入分布を確認した。これにより、抗体蛋白が共振励起により細胞内へ移行した後、標的分子であるサイクリンB1の局在部位である細胞核へ集積したことが証明された。
【0073】
更に、孵化後2日の鶏大腿筋には、FITCでラベルされたIgGを注入し、電極プローブ50,50の間に、試験体の固定具の接地点電位を中心として±25万vの高電圧を150Hzにて1分間印加して共振回路を励起した。5分後に、大腿筋を急速冷凍し、凍結切片を作成したところ、図18に示すように、蛍光顕微鏡下にて骨格筋細胞内に広範なFITC蛍光の分布を認めた。
【0074】
この図18は、FITCラベルされた抗体蛋白を導入された骨格筋を示している。ノマルスキー法による細胞輪郭とFITC蛍光の重ね合わせ画像によれば、背景である細胞外には蛍光を認めず、殆ど全ての筋肉細胞内細胞質に緑色蛍光が明瞭である。
【0075】
−実施形態2−
図6は、電極プローブ50の他の実施形態を示している。
【0076】
この図6の電極プローブ50は、可変容量型であり、筒状の電極筒51の内部内に先端電極52とリアクタンス部54とコンデンサ部55とを備えて構成されている。
【0077】
上記先端電極52は、電極筒51の先端部に収納固定されている。上記リアクタンス部54の一端は先端電極52に接続されている。上記コンデンサ部55は、実施形態1のコンデンサ62に相当し、固定電極55aと可動電極55bとより構成されている。そして、上記固定電極55aはリアクタンス部54に接続されている。一方、上記可動電極55bは、ネジ部56を介して配線60が接続されている。該ネジ部56は、電極筒51の基端部にねじ嵌合されている。
【0078】
したがって、上記電極筒51を配線60に対して回転させると、固定電極55aと可動電極55bとギャップが変化し、コンデンサ部55の容量が変化する。この結果、装置内部の共振特性が変化する。尚、上記電極筒51は高絶縁被覆物63で被覆されている。
【0079】
この結果、導入する遺伝子2等の分子振動に有効な過渡的電圧と生振幅の残留減衰振動波の高電圧Bを生成することができる。
【0080】
−実施形態3−
図7は、更に電極プローブ50の他の実施形態を示している。
【0081】
この図7の電極プローブ50は、可変リアクタンス型であり、筒状の電極筒51の内部内に先端電極52とコンデンサ部55とリアクタンス部54とを備えて構成されている。
【0082】
上記先端電極52は、電極筒51の先端部に収納固定されている。上記コンデンサ部55は、2つの固定電極55c,55cより構成されている。1つの固定電極55cは、先端電極52に接続され、他の固定電極55cは、リアクタンス部54が接続されている。
【0083】
上記リアクタンス部54は、コイル54aと該コイルに接する集導片54bとより構成されている。上記コイル54aは、コンデンサ部55の固定電極55cに接続されている。上記集導片54bは、ネジ部56を介して配線60が接続されている。該ネジ部56は、電極筒51の基端部にねじ嵌合されている。
【0084】
したがって、上記電極筒51を配線60に対して回転させると、コイル54aと集導片54bとの接触位置が変化し、リアクタンス部54のインダクタンスが変化する。この結果、装置内部の共振特性が変化する。尚、上記電極筒51は高絶縁被覆物63で被覆されている。
【0085】
この結果、導入する遺伝子2等の分子振動に有効な高電圧Bを調整することができる。
【0086】
−実施形態4−
図8は、電力供給回路20の他の実施形態を示している。
【0087】
この図8の電力供給回路20は、電力調整回路70を備えたものである。つまり、上記電力調整回路70は、電源21より供給される電力を所定の制御電力に調整するように構成されている。そして、該電力調整回路70は、制御電力を昇圧トランス30の一次側巻線31と、信号制御回路40の周波数発信回路41に出力するように該昇圧トランス30と信号制御回路40に接続されている。
【0088】
したがって、本実施形態では、上記電力調整回路70が導入する遺伝子2又は細胞3等に対応した制御電力を生成する。つまり、上記電力調整回路70が電源21の電流又は電圧を調整することになる。
【0089】
したがって、上記電力調整回路70を設けているので、導入する遺伝子2などに合致した瞬発高電圧Bを生成することができる。この結果、遺伝子2の膜通過を確実に行わせることができる。特に、上記電力調整回路70が電流及び電圧を制御するので、導入する遺伝子2などの分子振動に有効な高電圧Bをより精度よく生成することができる。
【0090】
−実施形態5−
図9及び図10は、分子導入装置1の他の実施形態を示している。
【0091】
この分子導入装置1は、複数対の電極プローブ50a,50b,50c,…を備えている。具体的に、上記分子導入装置1は、3対の電極プローブ50a,50b,50cを備えている。そして、電圧発生手段11は、3つの昇圧トランス30a,30b,30cを備えている。
【0092】
上記電圧発生手段11の電力供給回路20は、第1電源21aと第2電源21bとを備え、該第2電源21bの正側が各昇圧トランス30a,30b,30cの一端に接続されている。
【0093】
また、上記電圧発生手段11は、3つのスイッチ24を備え、該各スイッチ24は、2つのスイッチングトランジスタ22a,22bより構成されている。該各スイッチ24の2つのスイッチングトランジスタ22a,22bは、コレクタとエミッタとが接続されると共に、ベースに信号制御回路40が接続されている。
【0094】
上記各スイッチ24の第1スイッチングトランジスタ22aのコレクタは、第1電源21aの正側に接続され、第2スイッチングトラジスタ22bのエミッタは、第2電源21bの負側に接続されている。そして、上記各スイッチ24の2つのスイッチングトランジスタ22a,22bにおけるコレクタとエミッタとの間には、各昇圧トランス30a,30b,30cの一端が接続されている。
【0095】
上記信号制御回路40は、単相交流様、三相交流様、多相交流様、複数周波又は合成波形を各スイッチングトランジスタ22a,22b,…に出力可能に構成されている。
【0096】
したがって、上記各スイッチ24の第1スイッチングトランジスタ22aがオンすると、第1電源21aによって各昇圧トランス30a,30b,30cの一次側巻線31に正の電流が流れ、該第1スイッチングトランジスタ22aがオフすると、各昇圧トランス30a,30b,30cの二次側巻線32に正電圧バーストが生じる。
【0097】
また、上記各スイッチ24の第2スイッチングトランジスタ22bがオンすると、第2電源21bによって各昇圧トランス30a,30b,30cの一次側巻線31に負の電流が流れ、該第2スイッチングトランジスタ22bがオフすると、各昇圧トランス30a,30b,30cの二次側巻線32に負電圧バーストが生じる。
【0098】
一方、上記6つの電極プローブ50a,50b,50c,…は、図10に示すように、遺伝子を導入する細胞3に対して放射状に配置されている。そして、対となる電極プローブ50a,50b,50cの間に所定の電位差が生じる。
【0099】
したがって、上記各昇圧トランス30a,30b,30cの昇圧によって3対の電極プローブ50a,50b,50cの間の電圧を異なるようにしてもよい。また、上記各スイッチングトランジスタ22a,22b,…のスイッチング動作によって遺伝子2などに異なる方向から電圧が印加されることになる。
【0100】
この結果、3つの瞬発高電圧ベクトルが合成された瞬発高電圧を形成して、遺伝子などに有効な共振を励起させることができる。その他の構成、作用及び効果は、実施形態1と同様である。
【0101】
尚、本実施形態においては、3対の電極プローブ50a,50b,50cと3つのスイッチ24を備えたが、実施形態1に対応して、1対の電極プローブ50aと1つのスイッチ24を設けるようにしてもよい。これによって正電圧バースト又は負電圧バーストを生じさせることができる。
【0102】
−実施形態6−
図11は、分子導入装置1を用いて遺伝子を細胞に導入するための補助具である容器70を示している。
【0103】
上記容器70は、細胞溶液を収納するものであって、所定の誘電特性を有する材料で形成され、碗状の本体71と、該本体71の上部開口を閉鎖する蓋体72とより構成されている。そして、該蓋体72には、抜気用の開口である空気孔73が形成されている。
【0104】
上記容器70の材料としては、ガラス、セラミックス、高分子材料(ポリエチレン、ポリカボネート、テフロン等)が挙げられる。
【0105】
上記本体71の内部には、凹部74が形成され、該凹部74に強い電界が生じるように構成されている。更に、上記本体71は、凹部74に強い電界が生じるように絶縁部と導電部とが形成されている。
【0106】
つまり、上記本体71に細胞溶液と共に、該細胞に導入する遺伝子を注入し、蓋体72によって本体71を閉鎖する。その際、本体71の内部空気は空気孔73から排出される。そして、上記本体71の細胞溶液中の細胞は、凹部74に集中することになる。
【0107】
その後、例えば、実施形態1の電極プローブ50,50によって容器70の内部に高電圧を印加する。その際、本体71において、細胞密度の高い凹部74に電界が集中して該電界が強くなるので、より多くの細胞周辺における遺伝子等の共振が大きくなり、スムーズに遺伝子2が細胞3に導入される。
【0108】
尚、上記容器70は、本体71と蓋体72とが一体物であってもよい。また、上記凹部74は、本体71又は蓋体72の内面又は外面の少なくとも一部に形成されておいればよい。
【0109】
−変形例−
上記容器70の本体71の凹部74は、図12から図14に示すように、各種の形状に形成してもよい。
【0110】
つまり、図12に示すように、上記凹部74は、中央部から外側に向かって渦巻状に旋回する螺旋状に形成してもよい。また、上記凹部74は、複数の同心円であってもよい。
【0111】
また、図13に示すように、上記凹部74は、格子状に形成してもよい。
【0112】
また、図14に示すように、上記凹部74は、波線状に形成し、凹部74の全長さをより延長したり、複数の波線凹部としてもよい。
【0113】
−実施形態7−
図15は、分子導入装置1を用いて遺伝子を細胞に導入するための補助具80を示している。
【0114】
上記補助具80は、体内の所定部位に強い電界を生じさせるようにしたものである。該補助具80は、所定の誘電特性を有する軟性の接着プレートに形成されている。そして、上記補助具80は、例えば、線状の導電体が網状に形成され、絶縁面と人体90の表面に接着されるように構成されている。
【0115】
したがって、遺伝子2を体内に注入した後、上記補助具80を人体90の表面に接着する。その後、例えば、実施形態1の電極プローブ50,50によって体内の所定部位に高電圧を印加する。その際、補助具80によって所定部分に電界が集中して該電界が強くなるので、遺伝子2などの共振振幅が大きくなり、遺伝子2が細胞3にスムーズに導入する。
【0116】
−実施形態8−
図16は、分子導入装置1を用いて遺伝子を細胞に導入するための補助具80の他の実施形態を示している。
【0117】
上記補助具80は、図17に示すように、線状の導電体81を網状に形成して鞘状に形成されている。該補助具80は、例えば、血管91の内部に絶縁鞘を介して導入配置される。
【0118】
上記補助具80の材料としては、ガラス、セラミックス、高分子材料(ポリエチレン、ポリカボネート、テフロン等)が挙げられる。
【0119】
したがって、上記補助具80を血管91内に挿入すると共に、遺伝子2を体内に注入する。または、補助具80とゲルなどの基質に展開した遺伝子2を一体化してもよい。その後、例えば、実施形態1の電極プローブ50,50によって体内の所定部位に高電圧を印加する。その際、補助具80の導電体81によって所定部分に電界が集中して該電界が強くなるので、遺伝子2などの共振振幅が大きくなり、遺伝子2が細胞3にスムーズに導入する。
【0120】
−その他の実施形態−
上記各実施形態において、昇圧手段は、変圧器である昇圧トランス30を用いたが、圧電効果を利用した圧電素子を用いてもよい。その際、上記圧電素子は、歪みを加えて所定の瞬発高電圧を発生させるように構成する。
【0121】
また、本各実施形態は、電圧印加手段12が瞬発の高電圧を印加するようにしたが、交番電圧を印加するようにしてもよく、また、瞬発の高電圧と交番電圧とを重畳した電圧を印加するようにしてもよい。
【0122】
また、上記電圧印加手段12は、昇圧手段と直列又は並列にスパークギャップ又は放電管を備えていてもよい。
【0123】
また、上記電圧印加手段12の高絶縁部は、電極52に近接して配置される高絶縁遮蔽物であってもよい。
【0124】
また、上記電極プローブ50は、金属、セラミックス又は有機物質を含む電導物質によって構成されていてもよい。
【0125】
また、分子の膜通過は、投入する印加電圧、共振定数又は電極位置の変動により、共振特性を変化させて調整するようにしてもよい。
【0126】
また、上記各実施形態において、電極プローブ50,50の間に形成される電界を可視化するために、ファントム(模擬生体組織)を適用するようにしてもよい。
【0127】
また、上記各実施形態において、電極プローブ50,50の間に形成される電界の強度を測定するために、放電センサを用いるようにしてもよい。
【0128】
また、補助具80は、実施形態に限定されず、絶縁部と導電部とが形成されておればよく、要するに、所定部位に強い電界が形成されるように構成されておればよい。
【0129】
一方、導入する分子は、ポリヌクレオチド、蛋白質、ウィルス、各種薬剤を含む低分子化合物又は異種若しくは同種の細胞分子であってもよい。
【0130】
上記ポリヌクレオチドとしては、例えば、DNA、RNA、ポリヌクレオチド誘導体などが挙げられる。
【0131】
これらの具体例としては、CDNA、ゲノムDNA、遺伝子発現ベクター、デコイ核酸などが挙げられる。
【0132】
上記蛋白質としては、例えば、アナログ蛋白質、生理的活性蛋白質、生理的活性物質のレセプター、抗原、モノクローナル抗体、ポリクローナル抗体、抗体様合成分子、ケージド分子などが挙げられる。
【0133】
上記各種薬剤を含む低分子化合物としては、例えば、抗がん剤、抗生物質、免疫抑制剤、色素物質、発光蛍光物質などが挙げられる。
【0134】
また、上記導入する分子の導入を促進する物質としては、電子、電子スピンプローブ分子、膜電位プローブ分子、光学プローブ分子、麻酔薬、クロルプロマジン類、ポリミキシンBなどの抗生物質、フィブロネクチンなどの細胞接着分子、蛋白、リボ蛋白、ペプチド、アミノ酸などが挙げられる。
【0135】
また、生体組織は、動物又は植物の組織であってもよく、細胞3は、動物、植物若しくは微生物の細胞又は動物、植物若しくは微生物からクローンした細胞であってもよい。
【0136】
上記動物としては、例えば、原虫、昆虫、無脊椎動物、脊椎動物、ヒト、生殖器を有する生体の雌雄同体生物などが挙げられる。
【0137】
上記微生物としては、例えば、ウィルス、細菌、カビなどが挙げられる。
【0138】
上記生物由来の細胞としては、例えば、受精卵、精子、卵子、始原生殖細胞、ブラストシスト、細胞種系統、ES細胞を含む各種幹細胞及びプロジェニター細胞、植物の種子、カルスなどが挙げられる。
【0139】
上記クローン化された細胞としては、例えば、初代培養細胞、経代培養細胞などが挙げられる。
【0140】
また、分子は、サポニン、ジギトニン、ジメチルスルフォキサイドなどの界面活性剤、イオノフォア、リピッド、セラミド、アルブミン、グリセリン、ゼラチン若しくは血清の少なくとも一つ、又は細胞内外の浸透圧若しくはイオンバランスを制御する分子を含有した液で調製されていてもよい。
【0141】
また、分子は、軟膏、クリーム、ゲル状の基材又は注射用水に展開し、体表面への塗布、体表面への貼付又は体内への注入が行われるようにしてもよい。
【0142】
また、本発明は、細胞融合に適用してもよいことは勿論である。つまり、通常、細胞融合は、ポリエチレングリコールを用いて細胞間の融合を行う。また、細胞壁を有する細胞では、プロトプラスト化処理した後に行う。しかし、ポリエチレングリコールには、細胞毒性があり融合効率の向上に支障をきたす。そこで、本発明の分子導入装置を適用し、細胞膜を振動させる。この結果、ポリエチレングリコールを使用することなく細胞融合が行われる。
【0143】
また、本発明は、品種改良及び遺伝子組換え植物に適用してもよいことは勿論である。遺伝子組換え植物の作成は、以下の過程で行われる。
【0144】
先ず、培養植物細胞に対しアデノウイルスやパーティクルガンを用いて遺伝子を導入する。次に、遺伝子が導入された細胞を選別し、その細胞を組織培養して個体の植物をへと分化をさせる。
【0145】
しかし、植物の遺伝子組換えは、先に述べた培養細胞の確立と、細胞から個体への組織培養法の確立が必須であるために、全ての植物に遺伝子組換えが可能なわけではない。タバコやイネといった比較的遺伝子操作が容易に行える植物以外は、遺伝子組換えが現段階では困難である。
【0146】
そこで、本発明の分子導入装置を適用し、ジーンシンフォナイザーを用いて種子全体に遺伝子を導入する。この結果、組織培養の過程を省略することができ、また、植物種を選ばない新しい遺伝子組換え植物作成法が可能である。
【0147】
通常植物への遺伝子導入は、アグロバクテリウム ベクター、パーティクルガン又はエレクトロポレイション法を用いる。しかし、動物細胞とは異なり、細胞壁を持つことから植物細胞内への遺伝子導入効率が低く、この細胞壁を分解するプロトプラスト化又はカルスを誘導させることが不可欠とされてきた。本発明は、細胞壁、細胞膜ともに振動させるので、プロトプラスト化やカルス誘導を行なうことなく遺伝子の導入が可能になる。また、本発明は、細胞に対する障害性が低いことから、遺伝子導入効率の高い植物細胞へ遺伝子導入方法になる。
【0148】
【産業上の利用可能性】
以上のように、本発明による分子導入装置及び分子導入方法は、分子を細胞に導入する場合に有用であり、遺伝子治療、再生治療、標的組織又は標的細胞への薬物導入、動植物の品種改良、トランスジェニック、遺伝子組換え生物の作成、細胞融合及び人為的物質合成などに適している。
【図面の簡単な説明】
図1は、分子導入装置を示す電気回路図である。
図2は、遺伝子の細胞膜通過を概略的に示す状態図である。
図3は、昇圧トランスの励磁波形を示す波形図である。
図4は、昇圧トランスの二次側巻線に生ずる瞬発電圧及び減衰電圧の波形図である。
図5は、細胞の共振時を示す電圧波形図である。
図6は、実施形態2の電極プローブを示す断面図である。
図7は、実施形態3の電極プローブを示す断面図である。
図8は、実施形態4の分子導入装置を示す電気回路図である。
図9は、実施形態5の分子導入装置を示す電気回路図である。
図10は、実施形態5の電極プローブの配置を示す配置図である。
図11は、実施形態6の分子導入装置に用いる容器を示す斜視図である。
図12は、実施形態6の容器における凹部の変形例を示す図11X−X線における断面図である。
図13は、実施形態6の容器における凹部の他の変形例を示す図11X−X線における断面図である。
図14は、実施形態6の容器における凹部の他の変形例を示す図11X−X線における断面図である。
図15は、実施形態7の分子導入装置に用いる補助具を示す図である。
図16は、実施形態8の分子導入装置に用いる補助具を示す断面図である。
図17は、実施形態8の補助具を示す斜視図である。
図18は、実施形態1における実施例4を示す鶏大腿筋の顕微鏡写真である。
図19は、実施形態1における実施例1の試験結果を示し、本分子導入装置を適用した使用群(GCS)の吸光図である。
図20は、実施形態1における実施例1の試験結果を示し、本分子導入装置を適用しない未使用群(CTL)の吸光図である。
Claims (3)
- 空気中に配置されて絶縁物を介して高電圧を発生させる複数の電極を有し、シングルパルスの高電圧を上記電極に印加する電圧印加手段を備え、
上記シングルパルスの高電圧を電極に印加することによって上記複数の電極の間に配置された生体組織又は細胞と該生体組織又は細胞に導入させる分子とに交響運動を生起させ、分子間の結合エネルギーよりも大きな運動エネルギーを分子に付与し、上記生体組織又は細胞に穿孔を形成することなく分子を生体組織又は細胞に導入させる
ことを特徴とする分子導入装置。 - 請求項1において、
電圧発生手段は、電力を供給する電力供給手段と、該電力供給手段から電力供給されて高電圧を電極に供給する昇圧手段と、上記電力供給手段から昇圧手段への電力の供給及び断接を行いシングルパルスの高電圧を発生させる開閉手段と、該開閉手段の断接を制御する開閉制御手段とを備え、
上記シングルパルスの高電圧の印加周期は、10Hz〜1000Hzであり、
上記電極間の電圧は、±1万ボルト〜±100万ボルトである
ことを特徴とする分子導入装置。 - 空気中に配置されて絶縁物を介して高電圧を発生させる複数の電極にシングルパルスの高電圧を印加し、
上記シングルパルスの高電圧を電極に印加することによって上記複数の電極の間に配置され且つ容器に収納された生体組織又は細胞(ただし、生体組織および細胞として人体そのものを除く)と該生体組織又は細胞に導入させる分子とに交響運動を生起させ、分子間の結合エネルギーよりも大きな運動エネルギーを分子に付与し、上記生体組織又は細胞に穿孔を形成することなく分子を生体組織又は細胞に導入させる
ことを特徴とする分子導入方法。
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