以下、本発明のサスペンション装置を図に基づいて説明する。図1は、一実施の形態におけるサスペンション装置の断面図である。図2は、一実施の形態における流体圧ダンパのピストン部分の拡大縦断面図である。図3は、一実施の形態における流体圧ダンパのシリンダ端部の拡大縦断面図である。図4は、一実施の形態における第二アキュムレータの拡大縦断面図である。図5は、一実施の形態の一変形例における流体圧ダンパのピストン部分の拡大縦断面図である。
このサスペンション装置1は、一対の流体圧ダンパD1,D2と、一方の流体圧ダンパD1の一方室たるロッド側室R1と他方の流体圧ダンパD2の他方室たるピストン側室R2とを接続する第一流路L1と、一方の流体圧ダンパD1の他方室たるピストン側室R2と他方の流体圧ダンパD2の一方室たるロッド側室R1とを接続する第二流路L2と、第一流路L1に接続される第一アキュムレータA1と、第二流路L2に接続される第二アキュムレータA2とを備えて構成されており、たとえば、四輪自動車の左前輪車軸と車体との間に流体圧ダンパD1を介装し、右前輪車軸と車体との間に流体圧ダンパD2を介装するようにして使用されるものである。
まず、流体圧ダンパD1は、図1に示すように、筒状のシリンダ2と、シリンダ2の外方を覆う外筒3と、シリンダ2内に摺動自在に挿入されシリンダ2内を一方室たるロッド側室R1と他方室たるピストン側室R2に区画するピストン4と、一端をピストン4に連結した中空なピストンロッド5と、シリンダ2および外筒3の図1中上端側を封止するとともにピストンロッド5を軸支するヘッド部材6と、外筒3の図1中下端を閉塞するロアキャップ7と、シリンダ2の下端開口部内に嵌合するとともにシリンダ2の下端とロアキャップ7と挟持される仕切部材8とを備えて構成され、シリンダ2内およびシリンダ2と外筒3との間の隙間9内には作動流体として、たとえば、作動油が油密状態とされて充満されている。
この流体圧ダンパD1の各部について詳細に説明すると、ピストン4は、図2に示すように、有底筒状に形成され、底部4aの軸心部にピストンロッド5が挿通される挿通孔4bと、底部4aに設けたピストン通路を成す伸側ポート4cおよび圧側ポート4dと、各伸側ポート4cの出口端を連通する窓4eの外周側に形成される環状の弁座4fと、各圧側ポート4dの出口端を連通する窓4gの外周側に形成される環状の弁座4hと、底部4aの外周側から図2中下方へ突出する筒部4iと、底部4aの外周に装着されてシリンダ2の内周に摺接する環帯状のピストンバンド4kとを備えて構成されている。
つづいて、ピストンロッド5は、筒状に形成されて内部が中空とされており、ピストンロッド5の先端部5aの外径は、先端部5aより図1中上方側の外径より小径に設定され、上方側と先端部5aとの外径が異なる部分に段部5bが形成されている。そして、ピストン4の挿通孔4b内にピストンロッド5の先端部5aを挿通し、図2中下方からピストンナット10をピストンロッドの先端部5aの外周に形成の螺子部5cに螺着することによって、ピストンロッド5にピストン4を固定している。
このピストンナット10は、筒状に形成されるとともに上記螺子部5cに螺着される本体10aと、本体10aの上下を貫通するポート10bと、本体10aの外周に装着されてピストン4の筒部4iの内周に接してピストン4とピストンナット10との間をシールする環状のシール10cと、本体10aの図2中下端のポート10bの開口部より外周側から垂下される筒状のソケット10dと、ソケット10dの内周に装着され互いに対向する一対の円盤11,12と、円盤11,12の間の隙間に収容される浸透流通部材13とを備えて構成されている。
そして、このピストンナット10は、ポート10bを介してピストン4との間に形成される空間14をピストンロッド5内に連通しており、この空間14は上記したピストン通路を成す伸側ポート4cおよび圧側ポート4dによってロッド側室R1へ連通されているので、上記の構成により一方室たるロッド側室R1とピストンロッド5内とが連通されていることになる。
また、上記した円盤11,12には小孔11a,12aが開口されており、これら小孔11a,12aおよび浸透流通部材13が収容される隙間で形成される連通路20を介して他方室たるピストン側室R2とピストンロッド5内さらには一方室たるロッド側室R1とが連通され、ロッド側室R1とピストン側室R2との作動油の行き来は、連通路20の途中に設けられた浸透流通部材13を介して行われるようになっている。
この浸透流通部材13は、ロッド側室R1とピストン側室R2のうち高圧側の室から低圧側の室に向かって浸透状態で作動油の通過が行われるようになっており、具体的には、多孔質体とされている。つまり、この浸透流通部材13は、ロッド側室R1とピストン側室R2との圧力に差が生じると、高圧側の室から低圧側の室へ作動油を通過させるが、浸透状態で作動油を通過させることから、作動油の浸透流通部材13を通過する量は圧力差が生じている時間に比例するようになっている。
すなわち、この浸透流通部材13は、車両走行中に路面からの振動入力時や発進制動、旋回時に流体圧ダンパD1が伸縮するような場面において生じるロッド側室R1とピストン側室R2との圧力変動によっては、当該圧力変動の交番の間隔が短いことから、作動油を殆ど通過させないような効果をもたらし、浸透流通部材13は周波数特性を備えていないものの、結果的には、流体圧ダンパD1の振動周波数が高い場合には、浸透流通部材13は作動油を殆ど通過させないことになる。
他方、浸透流通部材13は、たとえば、車両を長時間停車させるような状況等のようにロッド側室R1とピストン側室R2との圧力変動の交番が殆ど無い場合には、長時間をかけて非常にゆっくりと高圧側の室から低圧側の室へ作動油を通過させるようになり、結果的には、流体圧ダンパD1の振動周波数が極小さくなるような場合には、浸透流通部材13は非常にゆっくりと高圧側の室から低圧側の室へ作動油を通過させることになる。
また、浸透流通部材13は、上記した特性を備えていればよいので、たとえば、小孔11a,12aに連通される極小径のオリフィスを備えた円盤とされてもよい。
つづき、ピストン4の図2中上面には、圧側ポート4dを閉塞する切欠リーフバルブ30、ノンリタンバルブ31、間座32、バルブストッパ33が順に積層され、これらは共に環状とされて内方にはピストンロッド5の先端部5aが挿入される。
さらに、ピストン4の図2中下面には、伸側ポート4cを閉塞する複数枚のリーフを積層してなるリーフバルブ34、間座35、およびバルブストッパ36が順に積層され、これらも共に環状とされて内方にはピストンロッド5の先端部5aが挿入される。
そして、上述のように、ピストン4を含む各部材をピストンロッド5の先端部5aに組み付けておいて、図2中では最下方に配置されるピストンナット10を先端部5aの螺子部5cに螺着することによって、ピストン4を含む各部材がピストンロッド5の段部5bとピストンナット10の上端とで挟持されピストンロッド5に固定される。
ここで、この流体圧ダンパD1が車両走行中に伸縮してロッド側室R1の容積が増減する場合、上述のように車両走行中の圧力変動に対しては連通路20による作動油の行き来する量が極少量となることから、ロッド側室R1内で過不足となる作動油は、その殆どがピストンロッド5内を介して流出入することになる。そして、ロッド側室R1内の容積が減少する場合には、圧側ポート4dがノンリタンバルブ31で閉塞されているので、作動油は、リーフバルブ34を押し開いて伸側ポート4cを通過し、ピストンロッド5内を介してシリンダ2外へ排出されることになる。この作動油が伸側ポート4cを通過するときにリーフバルブ34が当該作動油の流れに抵抗を与えることになり、一方室たるロッド側室R1からシリンダ2外へ流出する作動油の流れに抵抗を与える減衰弁は、本実施の形態においては、リーフバルブ34である。
他方、ロッド側室R1内の容積が増大する場合には、伸側ポート4cがリーフバルブ34で閉塞されているので、作動油は、その殆どがシリンダ2外からピストンロッド5内を通過し、さらには、切欠リーフバルブ30およびノンリタンバルブ31を押し開いて圧側ポート4dを通過してロッド側室R1内に供給されることになる。
つづいて、仕切部材8は、図3に示すように、円盤状に形成される本体8aと、本体8aの外周側下端に設けられた鍔部8bと、本体8aの図3中下端に設けた凹部8cと、本体8aの軸芯部に設けられ後述のリーフバルブ40およびノンリタンバルブ41の内周を仕切部材8に固定するロッド42が挿通される挿通孔8dと、本体8aの図3中上面と凹部8cとを連通する伸側ポート8eと、圧側ポート8fと、圧側ポート8fの出口端となる窓8gの外周側に形成され凹部8cの底面よりリーフバルブ40側に突出する環状の弁座8hとを備えて構成され、シリンダ2の内周に本体8aを嵌合させ、シリンダ2とロアキャップ7とで鍔部8bが挟持されてシリンダ2に固定されている。
この仕切部材8は、このように、シリンダ2の下端に固定されることによってシリンダ2内のピストン側室R2とシリンダ2と外筒3との間の隙間9とを区画し、鍔部8bに設けた切欠8iによって凹部8c内と隙間9との連通が確保され、ピストン側室R2と隙間9とは、仕切部材8に形成した上記各ポート8e,8fを介して連通されている。
そして、仕切部材8の本体8aの図3中下面には、リーフバルブ40が積層され、このリーフバルブ40は、環状に形成されたリーフを複数枚積層して構成されており、内周側がロッド42に固定され、弁座8hに着座して圧側ポート8fを閉塞している。他方、仕切部材8の本体8aの図3中上面には、ノンリタンバルブ41が積層され、このノンリタンバルブ41は、内周側がロッド42に固定され、伸側ポート8eを閉塞している。
ここで、この流体圧ダンパD1が車両走行中に伸縮してピストン側室R2の容積が増減する場合、連通路20による作動油の行き来が無いとすれば、ピストン側室R2内で過不足となる作動油は、シリンダ2と外筒3との間の隙間9を介して流出入することになる。そして、ピストン側室R2内の容積が減少する場合には、伸側ポート8eがノンリタンバルブ41で閉塞されているので、作動油は、リーフバルブ40を押し開いて圧側ポート8fを通過し、隙間9を介してシリンダ2外へ排出されることになる。この作動油が圧側ポート8fを通過するときにリーフバルブ40が当該作動油の流れに抵抗を与えることになり、他方室たるピストン側室R2からシリンダ2外へ流出する作動油の流れに抵抗を与える減衰弁は、本実施の形態においては、リーフバルブ40である。
他方、ピストン側室R2内の容積が増大する場合には、圧側ポート8fがリーフバルブ40で閉塞されているので、作動油は、シリンダ2外から隙間9を通過し、さらには、ノンリタンバルブ41を押し開いて伸側ポート8eを通過してピストン側室R2内に供給されることになる。
以上のように流体圧ダンパD1は構成されており、対となる流体圧ダンパD2も同様の構成とされている。
そして、各流体圧ダンパD1,D2は、第一流路L1および第二流路L2で接続され、具体的には、第一流路L1は、一方の流体圧ダンパD1のピストンロッド5の上端の開口と、他方の流体圧ダンパD2の外筒3の下端に設けた開口3aとを接続し、他方の第一流路L2は、一方の流体圧ダンパD1の外筒3の下端に設けた開口3aと、他方の流体圧ダンパD2のピストンロッド5の上端の開口とを接続している。
すなわち、第一流路L1は、流体圧ダンパD1のピストンロッド5内と流体圧ダンパD2のシリンダ2と外筒3との間の隙間9を介して、一方の流体圧ダンパD1の一方室たるロッド側室R1と他方の流体圧ダンパD2の他方室たるピストン側室R2とを接続しており、他方の第二流路L2も流体圧ダンパD2のピストンロッド5内と流体圧ダンパD1のシリンダ2と外筒3との間の隙間9を介して、一方の流体圧ダンパD1の他方室たるピストン側室R2と他方の流体圧ダンパD2の一方室たるロッド側室R1とを接続している。
したがって、このサスペンション装置にあっても、従来のサスペンション装置と同様に、一対の流体圧ダンパD1,D2のロッド側室R1とピストン側室R2とを襷掛け接続している。
戻って、第二アキュムレータA2は、流体圧ダンパD1の外筒3に連結される中空なハウジング50と、ハウジング50内に摺動自在に挿入されて気室Gと流体室rとを区画するフリーピストン51と、流体室rと上記隙間9との間を仕切る区画部材52と、区画部材52に設けられ流体室に流出入する流体の流れに抵抗を与える減衰弁53とを備えている。
ハウジング50は、図4に示すように、中空な本体50aと、本体50aの図4中下端側と外筒3の図4中下端に連結する中空な連結部50bとを備え、連結部50b内を介して本体50a内と流体圧ダンパD1の隙間9とが連通されている。なお、本体50aは、図中では加工を簡単とするため上下の二つの筒体で構成されているが、これらを一体として一つの筒体で構成されてよいことは勿論である。
そして、本体50a内には、上述のように、フリーピストン51が摺動自在に挿入されて、本体50a内が気室Gと流体室rとに区画され、さらに、本体50aの下端側内部に固定される区画部材52によって、流体室rと上記隙間9とが仕切られている。また、この区画部材52は、流体室rと隙間9とを連通する供給ポート52aと排出ポート52bとを備えており、供給ポート52aは区画部材52の図4中上面に積層される環状のリーフバルブ54によって閉塞され、他方の排出ポート52bは区画部材52の図4中下面に積層される環状のリーフバルブ55によって閉塞されている。
したがって、隙間9から流体室r内に作動油が供給される場合、作動油は、排出ポート52bがリーフバルブ55で閉塞されているので、リーフバルブ54を押し開いて供給ポート52aを通過して流体室r内に流入する。他方、流体室rから隙間9へ作動油が排出される場合、作動油は、供給ポート52aがリーフバルブ54で閉塞されているので、リーフバルブ55を押し開いて排出ポート52bを通過して隙間9内に流出する。
この作動油が流体室r内へ流入する場合には、リーフバルブ54が当該作動油の流れに抵抗を与えることになり、流体室rから排出される場合には、リーフバルブ55が当該作動油の流れに抵抗を与えることになり区画部材52に設けられる減衰弁53は、本実施の形態においては、リーフバルブ54,55である。
なお、フリーピストン51は、図4中下端に凹部51aを備えており、フリーピストン51の外周側の下面が区画部材52の上端外周に当接しても、上記凹部51a内にリーフバルブ54およびリーフバルブ54,55を区画部材52に固定しているロッド56がフリーピストン51に干渉することなく収容されるようになっている。フリーピストン51がリーフバルブ54やロッド56に干渉して劣化してしまうような事態が防止されている。
以上のように、第二アキュムレータA2が構成されているが、他方の第一アキュムレータA1も上記した第二アキュムレータA2と同様の構成とされており、こちらの第一アキュムレータA1は流体圧ダンパD2の外筒3の側方に連結されている。
すなわち、各アキュムレータA1,A2は、それぞれ、対応する第一流路L1および第二流路L2に対して、シリンダ2と外筒3との間の隙間9を介して接続されており、このように、各アキュムレータA1,A2は、それぞれ、対応する第一流路L1および第二流路L2に対して間接的に接続するようにしてもよい。
以上のように、サスペンション装置は構成され、続いて、その作動について説明する。
まず、流体圧ダンパD1,D2が同位相で伸縮する場合、つまり、シリンダ2に対するピストン4の変位の位相が各流体圧ダンパD1,D2で同一となる場合について説明する。
各流体圧ダンパD1,D2が共に同速度で伸長する場合、各流体圧ダンパD1,D2のロッド側室R1の容積が減少しピストン側室R2の容積が増大することになる。
そして、一方の流体圧ダンパD1におけるロッド側室R1から流出する作動油は、ピストン4に形成のピストン通路を成す伸側ポート4cと、ピストンナット10のポート10bと、ピストンロッド5内を通過し、第一流路L1を経由し、他方の流体圧ダンパD2のシリンダ2と外筒3との間の隙間9および仕切部材8の伸側ポート8eを通過し容積が増大する他方の流体圧ダンパD2のピストン側室R2へ流入する。
また、他方の流体圧ダンパD2におけるロッド側室R1から流出する作動油は、ピストン4に形成のピストン通路を成す伸側ポート4cと、ピストンナット10のポート10bと、ピストンロッド5内を通過し、第二流路L2を経由し、一方の流体圧ダンパD1のシリンダ2と外筒3との間の隙間9および仕切部材8の伸側ポート8eを通過し容積が増大する一方の流体圧ダンパD1のピストン側室R2へ流入する。
しかし、各流体圧ダンパD1,D2において、ロッド側室R1で減少する容積よりピストン側室R2で増大する容積の方が、ピストンロッド5がシリンダ2から退出する体積分だけ大きくなるので、ピストン側室R2内で作動油が不足する。
したがって、この不足する体積分の作動油は、流体圧ダンパD1にあっては第二アキュムレータA2の流体室rから、流体圧ダンパD2にあっては第一アキュムレータA1の流体室rから補充される。
逆に、各流体圧ダンパD1,D2が共に同速度で圧縮される場合、各流体圧ダンパD1,D2のロッド側室R1の容積が増大しピストン側室R2の容積が減少することになる。
そして、一方の流体圧ダンパD1におけるピストン側室R2から流出する作動油は、仕切部材8の圧側ポート8fと、シリンダ2と外筒3との間の隙間9を通過し、第二流路L2を経由し、他方の流体圧ダンパD2のピストンロッド5内、ピストンナット10のポート10bおよびピストン4に形成のピストン通路を成す圧側ポート4dを通過し容積が増大する他方の流体圧ダンパD2のロッド側室R1へ流入する。
また、他方の流体圧ダンパD2におけるピストン側室R2から流出する作動油は、仕切部材8の圧側ポート8fと、シリンダ2と外筒3との間の隙間9を通過し、第一流路L1を経由し、一方の流体圧ダンパD1のピストンロッド5内、ピストンナット10のポート10bおよびピストン4に形成のピストン通路を成す圧側ポート4dを通過し容積が増大する一方の流体圧ダンパD1のロッド側室R1へ流入する。
しかし、各流体圧ダンパD1,D2において、ロッド側室R1で増大する容積よりピストン側室R2で減少する容積の方が、ピストンロッド5がシリンダ2へ進入する体積分だけ大きくなるので、ピストン側室R2内で作動油が過剰となる。
したがって、この過剰となる体積分の作動油は、流体圧ダンパD1にあっては第二アキュムレータA2の流体室rへ、流体圧ダンパD2にあっては第一アキュムレータA1の流体室rへ流入する。
今、流体圧ダンパD1が静止状態で釣り合っている状態を基準とし、ピストンロッド5の外周縁で切り取った面積Ar、各アキュムレータA1,A2の体積弾性係数Kg(簡単のために線形とする)、ピストン4の断面積Ap、ロッド側室R1内の圧力Pr、ピストン側室R2内の圧力Pp、第一アキュムレータA1内の圧力Pg1、第二アキュムレータA2内の圧力Pg2、ピストン変位量S、流体圧ダンパD1の静的反力Fs(圧縮側反力を正とする)とすると、以下の(1)式から(4)式までの関係から、
流体圧ダンパD1の静的反力Fsは、以下の(5)式で表すことが出来る。
そして、(5)式を整理すると、各流体圧ダンパD1,D2が同位相で伸縮する場合の流体圧ダンパD1のバネ定数Kは、(6)式に示すとおりとなる。
なお、他方の流体圧ダンパD2も一方の流体圧ダンパD1と構造および動作が同じとなるので流体圧ダンパD2のバネ定数Kも同様となる。
また、一方室たるロッド側室R1からシリンダ2外へ流出する作動油の流れに抵抗を与える減衰弁としてのリーフバルブ34の通過作動油量に対する圧力変化の度合いを表す係数をCr、他方室たるピストン側室R2からシリンダ2外へ流出する作動油の流れに抵抗を与える減衰弁としてのリーフバルブ40の通過作動油量に対する圧力変化の度合いを表す係数をCc、第一アキュムレータA1,A2の減衰弁53の通過作動油量に対する圧力変化の度合いを表す係数をCa、ピストン速度をVp、流体圧ダンパD1,D2の発生減衰力をFdとすると、伸長行程では、
以上の(7)、(8)式の関係から、流体圧ダンパD1,D2の発生減衰力をFdは、(9)式に示すとおりとなる。
また、圧縮行程では、
以上の(10)、(11)式の関係から、流体圧ダンパD1,D2の発生減衰力をFdは、(12)式に示すとおりとなる。
つづいて、流体圧ダンパD1,D2が逆位相で伸縮する場合、つまり、シリンダ2に対するピストン4の変位の位相が各流体圧ダンパD1,D2で全く逆となる場合について説明する。
一方の流体圧ダンパD1が伸長し、他方の流体圧ダンパD2が一方の流体圧ダンパD1と同速度で逆に圧縮される場合、一方の流体圧ダンパD1のロッド側室R1の容積が減少しピストン側室R2の容積が増大することになり、他方の流体圧ダンパD2のロッド側室R1の容積が増大しピストン側室R2の容積が減少することになる。
この場合、第一流路L1で接続されている一方の流体圧ダンパD1におけるロッド側室R1および他方の流体圧ダンパD2におけるピストン側室R2の容積が共に減少することから、一方の流体圧ダンパD1におけるロッド側室R1および他方の流体圧ダンパD2におけるピストン側室R2から流出する作動油は、第一アキュムレータA1の流体室r内に流入する。
また、第二流路L2で接続されている一方の流体圧ダンパD1におけるピストン側室R2および他方の流体圧ダンパD2におけるロッド側室R1の容積が共に増大することから、一方の流体圧ダンパD1におけるピストン側室R2および他方の流体圧ダンパD2におけるロッド側室R1へ流入する作動油は、第二アキュムレータA2の流体室rから補充される。この第一アキュムレータA1へ流入する作動油量と第二アキュムレータA2から流出する作動油量は、各流体圧ダンパD1,D2が同位相で伸縮する場合に比較して多くなる。
他方、各流体圧ダンパD1,D2の伸縮が逆となると、第一流路L1に接続されている第一アキュムレータA1に作動油が流入し、第二流路L2に接続されている第二アキュムレータA2から作動油が流出することになる。
今、流体圧ダンパD1が静止状態で釣り合っている状態を基準とし、ピストンロッド5の外周縁で切り取った面積Ar、各アキュムレータA1,A2の体積弾性係数Kg(簡単のために線形とする)、ピストン4の断面積Ap、ロッド側室R1内の圧力Pr、ピストン側室R2内の圧力Pp、第一アキュムレータA1内の圧力Pg1、第二アキュムレータA2内の圧力Pg2、ピストン変位量S、流体圧ダンパD1の静的反力Fs(圧縮側反力を正とする)とすると、各流体圧ダンパD1,D2が逆位相で伸縮する場合、以下の(13)式から(16)式までの関係から、
流体圧ダンパD1の静的反力Fsは、以下の(17)式で表すことが出来る。
そして、(17)式を整理すると、各流体圧ダンパD1,D2が逆位相で伸縮する場合の流体圧ダンパD1のバネ定数Kは、(18)式に示すとおりとなる。
したがって、各流体圧ダンパD1,D2が逆位相で伸縮する場合の流体圧ダンパD1のバネ定数Kは、この(18)式および上述の(6)式から、各流体圧ダンパD1,D2が同位相で伸縮する場合の流体圧ダンパD1のバネ定数Kに比較して、(2Ap−Ar)
2/Ar
2倍の大きな値となることが理解できよう。
また、流体圧ダンパD1,D2の発生減衰力をFdとすると、伸長行程では、
以上の(19)、(20)式の関係から、流体圧ダンパD1,D2の発生減衰力をFdは、(21)式に示すとおりとなる。
また、圧縮行程では、
以上の(22)、(23)式の関係から、流体圧ダンパD1,D2の発生減衰力をFdは、(24)式に示すとおりとなる。
したがって、各流体圧ダンパD1,D2が逆位相で伸縮する場合の発生減衰力Fdは、各アキュムレータA1,A2の減衰弁53で発生する減衰力が各流体圧ダンパD1,D2が同位相で伸縮する場合の(2Ap−Ar)
2/Ar
2倍となり、各流体圧ダンパD1,D2が同位相で伸縮する場合の発生減衰力Fdに比較して大きな値となる。
なお、上記の説明では、各流体圧ダンパD1,D2が同位相および逆移動で伸縮し、かつ、ピストン速度が同じ状況について説明しているが、各流体圧ダンパD1,D2の発生減衰力Fdおよびバネ定数Kは、各アキュムレータA1,A2に供給・排出される作動油量に依存して変化し、各流体圧ダンパD1,D2の一方の実が伸縮したり、これら各流体圧ダンパD1,D2が位相をずらして伸縮したりするような場合には、各流体圧ダンパD1,D2は各アキュムレータA1,A2に供給・排出される作動油量に応じて、各流体圧ダンパD1,D2が同位相で伸縮する場合と各流体圧ダンパD1,D2が逆位相で伸縮する場合の中間の発生減衰力Fdおよびバネ定数Kを呈することなる。
上述したところから理解できるように、各流体圧ダンパD1,D2が同位相で伸縮する場合における各流体圧ダンパD1,D2のバネ定数Kおよび発生減衰力Fdは、各流体圧ダンパD1,D2が逆位相で伸縮する場合における各流体圧ダンパD1,D2のバネ定数Kおよび発生減衰力Fdに比較して小さくなり、それゆえ、車両旋回時の車体のローリングに対しては各流体圧ダンパD1,D2の発生減衰力Fdを高めて当該車体のローリング速度を低減するとともに、バネ定数Kを高めて車体のローリングの度合い(傾斜量)を低減することができ、優れた操縦安定性を得ることが可能となる。なお、車体と前後輪の二箇所に流体圧ダンパD1,D2を配置する場合には、スクォートやピッチングを抑制することが出来、また、車体の右前輪と左後輪あるいは左前輪と右後輪の二箇所に流体圧ダンパD1,D2を配置する場合には、車体のローリングに加えてスクォートやピッチングを抑制することが出来る。
対して、車体全体が沈み込んだり浮き上がったりするような姿勢変化を示す場合には、各流体圧ダンパD1,D2の発生減衰力Fdおよびバネ定数Kは小さくなるので、車輪に入力される振動を車体へ伝達しにくくなり、車体への振動絶縁性を高めることができ、車両における乗心地が向上する。
また、各流体圧ダンパD1,D2が伸縮する場合に、ピストン4の外周に装着されるピストンバンド4kのシリンダ2に摺接する摺動面に油膜が形成されるが、この油膜の膜厚は、摺動速度やその他の要因によって変化する。したがって、従来のサスペンション装置では、各流体圧ダンパD1,D2が伸縮を長期間に渡って繰り返すと、ピストン4の外周に装着されるピストンバンド4kとシリンダ2との間を作動油が行き来するが、ロッド側室R1からピストン側室R2へ移動する作動油量とピストン側室R2からロッド側室R1へ移動する作動油量との収支が釣り合わず、各アキュムレータA1,A2のハウジング50に対するフリーピストン51の位置が夫々で大きく異なるような事態が生じる虞がある。各アキュムレータA1,A2のハウジング50に対するフリーピストン51の位置が夫々で大きく異なるような事態が生じると、サスペンション装置は車体のローリングの方向に対して異なる減衰力とバネ反力を呈するようになるなど、サスペンション装置の適切な作動を保証できなくなる不具合を発生するようになるが、本実施の形態におけるサスペンション装置1にあっては、連通路20の途中に浸透流通部材13が設けられているので、車両を長時間停車して懸架バネによって車体が支持されて釣り合っているような状況となると、この浸透流通部材13を介してロッド側室R1とピストン側室R2との間を長時間かけて非常にゆっくりと作動油が行き来するようになるので、最終的にはロッド側室R1とピストン側室R2の圧力がバランスするようになる。したがって、このロッド側室R1とピストン側室R2の圧力をバランスさせる作用によって、各アキュムレータA1,A2のハウジング50に対するフリーピストン51の位置が略同じ位置となるように矯正され、すなわち、各アキュムレータA1,A2内の圧力が略同じとなるように矯正され、サスペンション装置1が車体のロールの方向に対して異なる減衰力とバネ反力を呈するような事態がなく、常にサスペンション装置1の適切な作動を保証することができ、長期間に渡り適切な作動を実現することができる。
なお、本実施の形態にあっては、各流体圧ダンパD1,D2のそれぞれに浸透流通部材13を設けているが、いずれか一方のみの流体圧ダンパD1(D2)にのみ連通路20を設けて浸透流通部材13を設けるようにしてもよいし、また、第一流路L1と第二流路L2とのを直接的に接続するように連通路を設けて流体圧ダンパD1,D2のロッド側室R1とピストン側室R2とを連通し、この連通路の途中に浸透流通部材を設けるようにしてもよい。なお、本実施の形態にあっては、連通路20を流体圧ダンパD1,D2のピストン部分に設けているので、外部に浸透流通部材を設けるスペースを確保する必要がなく、また、浸透流通部材が外部から干渉を受けてしまう虞が無いので、車両搭載性の点および信頼性の点で有利となる。
そして、本実施の形態におけるサスペンション装置1にあっては、第一流路L1および第二流路L2が流体圧ダンパD1,D2のピストンロッド5内を介して一方室たるロッド側室R1へ連通されるとともに流体圧ダンパD1,D2のシリンダ2と外筒3との間を介して他方室たるピストン側室R2へ連通され、さらに、第一アキュムレータA1は他方の流体圧ダンパD2の外筒3の側方に連結されるとともにシリンダ2と外筒3との間を介して第一流路L1に接続され、第二アキュムレータA2は一方の流体圧ダンパD1の外筒3の側方に連結されるとともにシリンダ2と外筒3との間を介して第二流路L2に接続されるようになっているので、シリンダ2のピストンロッド5側の端部に第一流路L1および第二流路L2の接続部を設ける必要が無く、ピストンロッド5の摺動部を保護するカバーを取り付ける事が出来、サスペンション装置1の経年劣化を防止することが出来る。つまり、サスペンション装置1の実用性が向上する。
さらに、各アキュムレータA1,A2は、対応する第一流路L1および第二流路L2に対して、直接的に接続されるのではなく、外筒3とシリンダ2との間の隙間9を介して接続されるので、当該隙間9と各アキュムレータA1,A2内とを連結する連結部50bの内径を大きく設定しておくことでピストン側室R2から流出あるいはピストン側室R2へ流入する作動油の流通を確保でき、第一流路L1および第二流路L2の内径を大きく設定する必要が無くなる。したがって、第一流路L1および第二流路L2の外径の大型化を阻止でき、その為、サスペンション装置1の車両への搭載性が飛躍的に向上する。
また、各流体圧ダンパD1,D2は、ピストン4のピストン通路の途中に設けた減衰弁となるリーフバルブ34と、当該仕切部材8に設けた減衰弁となるリーフバルブ40とを備えているので、各流体圧ダンパD1,D2の伸縮時の減衰力は各アキュムレータA1,A2内の圧力の制約を受ける事がなくなる。そして、流体圧ダンパD1,D2は、一般的には、圧縮時より伸長時の減衰力を大きくするように設定されるが、本実施の形態におけるサスペンション装置1にあっては、伸縮時の減衰力が上記各アキュムレータA1,A2内の圧力の制約を受けることが無いので、各流体圧ダンパD1,D2の発生減衰力を車両に好ましい設定とすることができる。
さらに、また、各流体圧ダンパD1,D2は、ピストン4のピストン通路の途中に設けた減衰弁となるリーフバルブ34と、当該仕切部材8に設けた減衰弁となるリーフバルブ40とを備えているので、第一流路L1および第二流路L2の途中に減衰弁を設ける必要が無いので、車両への搭載性がより一層向上することになる。
つづいて、一実施の形態におけるサスペンション装置の一変形例について説明する。この一変形例では、図5に示すように、ピストン部分の構造が上記した一実施の形態における各流体圧ダンパD1,D2と異なるのみである。
以下、この異なる部分について詳細に説明し、一実施の形態と同様の部分については、同一の符号を付するのみとして詳しい説明を省略することとする。
この一変形例におけるピストンは、ピストンロッド5の先端部5aに組み付けられる環状仕切60と、ピストンロッド5の先端部5aの螺子部5cに螺着されて環状仕切60をピストンロッド5に固定するナット61とを備えて構成されている。
詳細には、環状仕切60は、環状に形成され、ピストン通路を成す伸側ポート60aおよび圧側ポート60bと、外周に装着されてシリンダ2の内周に摺接する環帯状のピストンバンド60cとを備えて構成され、伸側ポート60aの出口端は環状仕切60の図5中下端に積層されるリーフバルブ62で閉塞され、他方の圧側ポート60bの出口端は環状仕切60の図5中上端に積層されるノンリタンバルブ63で閉塞されている。
このナット61は、筒状に形成されるとともに上記螺子部5cに螺着される本体61aと、本体61aの上下を貫通するポート61bと、本体61aの外周に装着されてシリンダ2の内周に摺接する環状のシール61cと、本体61aの図5中下端のポート61bの開口部より外周側から垂下される筒状のソケット61dと、ソケット61dの内周に装着され互いに対向する一対の円盤11,12と、円盤11,12の間の隙間に収容される浸透流通部材13とを備えて構成されている。
そして、このナット61は、ポート61bを介して環状仕切60との間に形成される空間65をピストンロッド5内に連通しており、この空間65はピストン通路を成す伸側ポート60a、圧側ポート60bおよびポート61bによってロッド側室R1へ連通されているので、上記の構成により一方室たるロッド側室R1とピストンロッド5内とが連通されていることになり、また、環状仕切60およびナット61は共にシリンダ2内に摺動自在に挿入され、協働してシリンダ2内にロッド側室R1とピストン側室R2とを区画するピストンとして機能する。
このようにピストンには、複数の部材を組み合わせてピストンとして機能するピストン組立体も含まれる。
そして、この一変形例のサスペンション装置にあっては、一実施の形態のサスペンション装置のようにピストン4に筒部4iを設け、この筒部4i内にピストンナット10を挿入するような構成を採りづらい状況、具体的には、シリンダ2の内径が小さい場合でも、環状仕切60のみならずナット61をもシリンダ2に摺接させることによって、無理なくピストンロッド5内を介して一方室たるロッド側室R1を第一流路L1あるいは第二流路L2に接続することが出来るのである。
さらに、この一変形例のサスペンション装置にあっては、上記したピストン部分の構造上の利点がある他は、その作動は上記一実施の形態のサスペンション装置1と同様であり、上記利点に加えて上記一実施の形態のサスペンション装置1と同様の作用効果を奏することが可能である。
また、各実施の形態において、減衰弁を全てリーフバルブで構成してあるが、リーフバルブ以外にもサスペンション装置1における流体圧ダンパD1,D2に減衰力を発生させることができ得る減衰弁を採用することが可能である。
以上で、本発明の実施の形態についての説明を終えるが、本発明の範囲は図示されまたは説明された詳細そのものには限定されないことは勿論である。