JP4739461B2 - 転写用マスクの製造方法及び半導体デバイスの製造方法 - Google Patents
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Description
このマスクブランクを用いた転写マスクの製造は、マスクブランク上に形成されたレジスト膜に対し、所望のパターン描画を施す露光工程と、所望のパターン描画に従って前記レジスト膜を現像してレジストパターンを形成する現像工程と、レジストパターンに従って前記薄膜をエッチングするエッチング工程と、残存したレジストパターンを剥離除去する工程とを有して行われている。
上記現像工程では、マスクブランク上に形成されたレジスト膜に対し所望のパターン描画(露光)を施した後に現像液を供給して、現像液に可溶なレジスト膜の部位を溶解し、レジストパターンを形成する。また、上記エッチング工程では、このレジストパターンをマスクとして、ドライエッチング又はウェットエッチングによって、レジストパターンが形成されておらず薄膜が露出した部位を溶解し、これにより所望の転写パターンを透光性基板上に形成する。こうして、転写用マスクが作製される。
転写パターンの微細化が進むに従い、レジストパターンの幅は狭くなってきている。このため、従来のレジスト膜の膜厚ではアスペクト比が高くなってしまい、レジストパターンをマスクとして遮光膜をドライエッチングして転写パターンを形成することが難しくなってきている。
近年、ヘイズ対策技術の向上によって転写用マスクの洗浄回数が低減してきており、転写用マスクの繰返し使用期間が延びてきている。しかし、その分露光時間も延びたことから、特にArFエキシマレーザーなどの短波長光に対する耐光性の問題が新たに顕在化してきた。
また、本発明者は、ハーフトーン型位相シフトマスクの場合、露光光源のArFエキシマレーザー(波長193nm)照射により、ハーフトーン型位相シフト膜の転写パターンの幅が変化するという現象が発生し、さらに透過率や位相シフト量の変化が起ることを解明した。ハーフトーン型位相シフトマスクの場合、このような透過率、位相シフト量の変化は転写マスク性能に影響を与える重要な問題である。透過率の変化が大きくなると転写精度が悪化するとともに、位相シフト量の変化が大きくなると、パターン境界部における位相シフト効果が得られにくくなる。その結果、パターン境界部のコントラストが低下し、解像度が大きく低下してしまう。
本発明は、上記背景の下になされた発明であり、ArFエキシマレーザー等の波長200nm以下の露光光が適用される転写用マスクであって、長時間の露光光照射を受けることに起因するパターン形成用薄膜の転写パターンの幅の変化、透過率変化、位相シフト量の変化が抑制された、すなわち、ArF露光耐性が高い転写用マスクの製造方法の提供を目的とする。また、その転写用マスクの製造方法で作製された転写用マスクを用いた半導体デバイスの製造方法の提供を目的とする。
(構成1)
透光性基板上に、クロムを除く遷移金属およびケイ素を含有する材料からなるパターン形成用薄膜と、クロムを含有する材料からなるクロム系薄膜が順に積層したマスクブランクを用いた転写用マスクの製造方法において、
前記転写用マスクは、波長200nm以下の露光光が適用されるものであり、
クロム系薄膜上に、転写パターンを有するレジスト膜を形成する工程と、
転写パターンを有するレジスト膜をマスクとして、クロム系薄膜に転写パターンを形成する工程と、
転写パターンを有するクロム系薄膜をマスクとして、パターン形成用薄膜に転写パターンを形成する工程と、
前記クロム系薄膜をエッチングによって除去する工程と、
をこの順に行って転写用マスクを作製し、
作製した転写用マスクをアルカリ溶液洗浄、温水洗浄、オゾン含有水洗浄のうち1以上の洗浄を行う洗浄工程を、前記パターン形成用薄膜からなる転写パターンの幅が4nm減少するまで、あるいは前記パターン形成用薄膜からなるスペース幅が4nm増加するまで行うことを特徴とする転写用マスクの製造方法。
(構成2)
前記洗浄工程は、アルカリ溶液洗浄、温水洗浄、およびオゾン含有水洗浄をこの順に行うことを有することを特徴とする構成1記載の転写用マスクの製造方法。
(構成3)
前記アルカリ溶液は、アンモニアと過酸化水素を含有する水溶液であることを特徴とする構成1または2のいずれかに記載の転写用マスクの製造方法。
(構成4)
前記パターン形成用薄膜は、光学濃度2.5以上を有する遮光膜であり、
前記クロム系薄膜は、エッチングによって除去する工程で全て除去されることを特徴とする構成1から3のいずれかに記載の転写用マスクの製造方法。
(構成5)
前記パターン形成用薄膜は、透光性基板側から遮光層および表面反射防止層の少なくとも2層以上の積層構造からなる遮光膜であることを特徴とする構成4または5のいずれかに記載の転写用マスクの製造方法。
(構成6)
前記パターン形成用薄膜は、DRAM hp45nm世代以降の転写パターンを有することを特徴とする構成1から5のいずれかに記載の転写用マスク。
(構成7)
前記パターン形成用薄膜は、ハーフトーン型位相シフト膜であり、
前記クロム系薄膜と転写パターン用薄膜との積層構造で光学濃度2.5以上を有し、
前記クロム系薄膜をエッチングによって除去する工程で、転写パターン領域外周の遮光帯領域以外の領域の前記クロム系薄膜は除去されることを特徴とする構成1から3のいずれかに記載の転写用マスクの製造方法。
(構成8)
前記パターン用薄膜中の遷移金属は、モリブデンであることを特徴とする構成lから7のいずれかに記載の転写用マスクの製造方法。
(構成9)
構成6記載の転写用マスクの製造方法で作製された転写用マスクを用い、半導体ウェハ上に回路パターンを形成することを特徴する半導体デバイスの製造方法。
(構成10)
半導体ウェハ上に形成される回路パターンは、DRAM hp45nm世代以降の回路パターンが含まれていることを特徴する構成9に記載の半導体デバイスの製造方法。
(構成11)
構成7または8のいずれかに記載の転写用マスクの製造方法で作製された転写用マスクを用い、半導体ウェハ上に回路パターンを形成することを特徴する半導体デバイスの製造方法。
本発明によれば、クロムを除く遷移金属およびケイ素を含有する材料からなるパターン形成用薄膜に関し、波長200nm以下の露光光が、従前の転写マスクの繰り返し使用期間を超えて累積的に照射された場合の耐光性を向上させ、転写マスクの寿命を改善できる転写マスク及びその製造方法を提供できる。また、その転写用マスクの製造方法で作製された転写用マスクを用いた半導体デバイスの製造方法を提供できる。
本発明者は、露光光源波長の短波長化に伴い、転写用マスクの繰返し使用による劣化が顕著になってきた要因を以下のように推測した。
本発明者は、繰返し使用によって転写パターン幅の変化(CD変動)が生じた転写マスクにおける遷移金属とケイ素を含有するパターン形成用薄膜のパターンを調べた。その結果、図5に示すように、遷移金属とケイ素を含有する薄膜2(遷移金属シリサイド系膜、例えばMoSi系膜)の表層側にSiとO、若干の金属(例えばMo)を含む変質層2aが出来ていた。そして、これが転写パターン幅の変化(太り)Δdや、透過率及び位相シフト量の変化、の主な原因のひとつであることを解明した。
このような変質層が生じる理由(メカニズム)は次のように考えられる。すなわち、従来のスパッタ成膜された遷移金属シリサイド系薄膜2は構造的には隙間があり、成膜後にアニールしたとしても遷移金属シリサイド系薄膜2の構造の変化が小さい。このため、転写用マスクの使用過程においてこの隙間にたとえば大気中の酸素(O2)や水(H2O)等が入り込む。さらには大気中の酸素(O2)がArFエキシマレーザーと反応することによって発生するオゾン(O3)等も前記隙間に入り込んで、遷移金属シリサイド系薄膜2を構成するSiや遷移金属M(例えばMo)と反応する。
以上のようなメカニズムによって、遷移金属シリサイド系のパターン形成用薄膜は、膜中のシリコン(Si)の酸化が原因と考えられる転写パターン幅の変化(CD太り)が発生する。
透光性基板上に、クロムを除く遷移金属およびケイ素を含有する材料からなるパターン形成用薄膜と、クロムを含有する材料からなるクロム系薄膜が順に積層したマスクブランクを用いた転写用マスクの製造方法において、
前記転写用マスクは、波長200nm以下の露光光が適用されるものであり、
クロム系薄膜上に、転写パターンを有するレジスト膜を形成する工程と、
転写パターンを有するレジスト膜をマスクとして、クロム系薄膜に転写パターンを形成する工程と、
転写パターンを有するクロム系薄膜をマスクとして、パターン形成用薄膜に転写パターンを形成する工程と、
前記クロム系薄膜をエッチングによって除去する工程と、
をこの順に行って転写用マスクを作製し、
作製した転写用マスクをアルカリ溶液洗浄、温水洗浄、オゾン含有水洗浄のうち1以上の洗浄を行う洗浄工程を、前記パターン形成用薄膜からなる転写パターンの幅が4nm減少するまで、あるいは前記パターン形成用薄膜からなるスペース幅が4nm増加するまで行うことを特徴とする(構成1)。
本発明において、前記パターン形成用薄膜は、DRAM hp45nm世代以降の転写パターンを有することを特徴とする(構成6)。
さらに、クロム系薄膜の転写パターンをマスクとしたドライエッチングによってパターン形成用薄膜に転写パターンを形成した。その後クロム系薄膜をエッチング除去した転写用マスクを用い、洗浄工程を行い、パターン側壁の除去量とArF露光光照射(総照射量40kJ/cm2)による転写パターンの幅の変化量(CD変動量)との関係を検証した。その結果、図1に示すように、転写パターンの幅が4nm減少するまで、あるいは、転写パターンのスペース幅が4nm増加するまで、洗浄工程を行うことでCD変動量を大幅に抑制できる(5nm以下に低減できる)ことを突き止めた。
本発明において、パターン形成用薄膜は、遷移金属(クロムを除く)およびケイ素を含有する材料からなる膜を意図して作製された膜であり、実質的にクロムは含まれないことを意図して形成された膜である。例えば、スパッタリング法でパターン形成用薄膜を透光性基板上に形成する場合、クロムを含有しないスパッタターゲットを用い、成膜ガスにもクロムは含まれないものを使用したものである。このため、パターン形成用薄膜からなる転写パターンの表層(クロム系薄膜に接する表面及び側壁部分)を除く膜中のクロム含有量は、D−SIMSによりクロム濃度の分析値が1.0×1016atom/cm3以下のレベル(実質的にクロムは含まれないとされるレベル)である。
図5(1)は孤立スペースやホールのようなスペース形状の場合で、CD変化量=a1
−a2=2Δdである。
図5(2)は孤立ラインやドットのようなパターン形状の場合で、CD変化量=a4−a3=2Δdである。
本発明者は、最初の洗浄が適切でないと、以後の工程で種々の洗浄を施しても改善しない傾向にあることを突き止めた。例えば、最初の洗浄が、硫酸過水、熱濃硫酸などの酸洗浄であると、以後の工程で種々の洗浄を施しても改善しない傾向にある。
本発明者は、前記最初の洗浄として、アルカリ溶液洗浄、温水洗浄、オゾン含有水洗浄のうち1以上の洗浄工程が適していることを突き止めた。これらの洗浄工程は、上述したクロム残留濃度の高いパターン側壁部分を溶解し、かつ溶解したクロムが再度転写パターンの内部に侵入することなく除去できる作用があることを突き止めた。さらに、これらの洗浄工程は、上記酸洗浄工程の如く、以後の工程で種々の洗浄を施しても改善しない傾向を示すことがない。
本発明者は、前記最初の洗浄として、アルカリ溶液洗浄、温水洗浄、オゾン含有水洗浄のうち1以上の洗浄工程を適用することによって、パターン形成用薄膜中のクロム残留濃度を、所望のレベルまで低減することが可能であることを見い出した。
アルカリ溶液の温度は、15〜80℃程度が好ましい。
アルカリ溶液による処理時間は、10〜20分程度が好ましい。
温水で洗浄する工程は、イオン交換水(DI water:deionized water)などの純水や超純水を用いることが好ましい。
温水の温度は、70〜90℃程度が好ましい。
温水による処理時間は、10〜20分程度が好ましい。
オゾン含有水で洗浄する工程は、40〜60ppmのオゾン含有水を用いることが好ましい。
オゾン含有水の温度は、15〜30℃程度が好ましい。
オゾン含有水による処理時間は、10〜20分程度が好ましい。
本発明者は、前記洗浄工程は、アルカリ溶液洗浄、温水洗浄、およびオゾン含有水洗浄をこの順に行うことによって、パターン形成用薄膜中のクロム残留濃度を、効率よく、所望のレベルまで低減することができることを見い出した。
本発明者は、前記アルカリ溶液は、アンモニアと過酸化水素を含有する水溶液であることによって、上述したCr残渣を、非常に効率よくかつ確実に低減することができることを見い出した。
アンモニアと過酸化水素を含有する水溶液は、例えば、水酸化アンモニウム(NH4OH 濃度 25wt%):過酸化水素(H2O2 濃度 30wt%):水(H2O)=2:1:4(体積比)の溶液を用いることが好ましい。
本発明において、パターン形成用薄膜は、遷移金属とケイ素の他に、窒素、酸素、炭素、水素、不活性ガス(ヘリウム,アルゴン,キセノン等)等を含有する材料が含まれる。
前記パターン形成用薄膜は、光学濃度2.5以上を有する遮光膜であり、
前記クロム系薄膜は、エッチングによって除去する工程で全て除去される態様が含まれる(構成4)。
この場合、クロム系薄膜は、エッチングマスクとして使用され、使用後は全て除去され、この転写用マスクはバイナリ型マスクとして使用される。
バイナリ型マスクの場合、シングル露光に対応するためには、パターン転写領域における遮光膜の光学濃度は最低でも2.5以上とする必要があるが、上記構成4によるとこの要件を満たすことができる。露光装置の構造や転写パターンを転写するウェハ上のレジスト膜等の感度特性等にもよっては、遮光膜により高い遮光性能が求められるため、光学濃度2.8以上であるとより好ましく、3.0以上であると種々のマスク使用環境に対応可能である。
前記パターン形成用薄膜は、透光性基板側から遮光層および表面反射防止層の少なくとも2層以上の積層構造からなる遮光膜である態様が含まれる(構成5)。
遮光膜が、遮光層と表面反射防止層の2層積層構造からなる場合、遮光層に裏面反射(透光性基板と遮光層との界面における露光光の反射)の防止機能を持たせる必要がある。
さらに、遮光膜は、遮光層の透光性基板側に裏面反射防止層も設けた3層積層構造としてもよい。この場合、裏面反射防止層が裏面反射防止機能を有するため、遮光層は光学濃度を確保することを重視した膜設計をすることができる。なお、遮光膜は、単層の組成傾斜膜としてもよく、表面反射防止膜、遮光層、裏面反射防止膜についても組成傾斜膜としてもよい。
前記パターン形成用薄膜は、ハーフトーン型位相シフト膜であり、
前記クロム系薄膜とパターン形成用薄膜との積層構造で光学濃度2.5以上を有し、
前記クロム系薄膜をエッチングによって除去する工程で、転写パターン領域外周の遮光帯領域以外の領域の前記クロム系薄膜は除去されて遮光帯が形成される態様が含まれる(構成7)。
この場合、クロム系薄膜は、エッチングマスクとしての機能に加え、遮光帯領域における遮光性(光学濃度)を付与する機能を有する。
ハーフトーン型位相シフトマスクの場合、遮光帯領域の光学濃度は最低でも2.5以上とする必要があるが、上記構成7によるとこの要件を満たすことができる。
なお、上記構成7においては、転写パターン領域内のハーフトーン型位相シフト膜に、大きな膜パターンであって遮光パッチが必要な部分については、クロム系薄膜を残してもよい。
ハーフトーン型位相シフト膜は、高透過率タイプを含む。高透過率タイプは、例えば、通常の透過率1〜10%未満に対し、相対的に高い透過率10〜30%を有するものをいう。
前記の通り、モリブデンは酸素やオゾンと結合(MoO3)となりやすく、MoO3は気化物質であるため、パターン側壁部分の変質層を抑制する本願発明が特に有効に機能するからである。
遷移金属のモリブデンとケイ素を含有する材料の光学濃度は、モリブデンの含有量[原子%]をモリブデンとケイ素の合計含有量[原子%]で除して百分率で表した比率(以下、(Mo/Mo+Si)比率という。)が、所定比率で頭打ちとなる傾向がある。材料中の他の元素(窒素等)の含有量によって、頭打ちとなる(Mo/Mo+Si)比率は多少変わるが40%より大きくはならない。モリブデンとケイ素を含有する材料は、モリブデンの含有量が高いと、耐薬性や耐洗浄性(特に、アルカリ洗浄や温水洗浄)が低下するという問題がある。これらのことを考慮すると、転写用マスクとして使用する際の必要最低限の耐薬性、耐洗浄性を確保できる(Mo/Mo+Si)比率である40%をモリブデンとケイ素を含有する遮光層として適用可能な上限とすることが好ましい。
裏面反射防止層、遮光層、表面反射防止層の3層積層構造の遮光膜の場合、遮光層に裏面および表面の反射防止機能を持たせる必要がないため、酸素や窒素を実質的に含有させなくてもよくなる。この場合においては、(Mo/Mo+Si)比率の下限が9%であっても薄い膜厚(60nm以下)でも遮光膜としての光学濃度2.5以上を十分に確保することができる。
他方、遮光層、表面反射防止層の2層積層構造の遮光膜の場合、遮光層に裏面反射防止機能を持たせる必要があるため、膜中の窒素含有量を30%以下の範囲で含有させる必要がある。この場合においては、(Mo/Mo+Si)比率の下限を15%とすることで、遮光膜としての光学濃度2.5以上を十分に確保することができる。
具体的には、表面反射防止層は、遷移金属(M)とケイ素を主成分とする材料(MSiO,MSiN,MSiON,MSiOC,MSiCN,MSiOCN等)が好ましい。これらのうちでも、耐薬品性、耐熱性の観点からはMSiO、MSiONが好ましく、マスクブランクスの欠陥品質の観点からMSiONが好ましい。
また、応力制御を目的として高温で加熱処理(アニール)する際、Moの含有率が高いと膜の表面が白く曇る(白濁する)現象が生じることがわかった。これは、MoOが表面に析出するためであると考えられる。このような現象を避ける観点からは、表面反射防止層であるMoSiON、MoSiO、MoSiN、MoSiOC、MoSiOCN等では、表面反射防止層中のMoの含有率は10原子%未満であることが好ましい。しかし、Mo含有率が少なすぎる場合、DCスパッタリングの際の異常放電が顕著になり、欠陥発生頻度が高まる。よって、Moは正常にスパッタできる範囲で含有していることが望ましい。他の成膜技術によってはMoを含有せずに成膜可能な場合がある。
また、表面反射率を所定値以下に抑制するためには、表面反射防止層の膜厚は5nmよりも大きいことが望ましい。また、より低反射率とするには、膜厚を7nm以上とすることが望ましい。さらに、生産安定性の観点や、転写用マスクを作製した後のマスク洗浄の繰り返しによる表面反射防止層の膜減りを考慮すると、表面反射防止層の膜厚は10nm以上あると好ましい。遮光膜全体での薄膜化を考慮すると、遮光膜の光学濃度への寄与度の低い表面反射防止層の膜厚は、20nm以下であることが望ましく、15nm以下であるとより望ましい。
裏面反射防止層を備える3層積層構造の遮光膜の場合、裏面反射率を所定値以下に抑制するためには、裏面反射防止層13の膜厚は5nmよりも大きいことが望ましい。また、より低反射率とするには、膜厚を7nm以上とすることが望ましい。遮光膜全体での薄膜化を考慮すると、遮光膜の光学濃度への寄与度の低い裏面反射防止層の膜厚は、15nm以下であることが望ましく、12nm以下であるとより望ましい。
これらのなかでも、窒化クロム、酸化クロム、窒化酸化クロム、酸化炭化窒化クロムのいずれかを主成分とする材料で形成されている態様が好ましい。前記クロム系薄膜の膜構造としては、上記膜材料からなる単層、複数層構造とすることができる。複数層構造では、異なる組成で段階的に形成した複数層構造や、連続的に組成が変化した膜構造とすることができる。
膜中のクロムの含有量が45原子%以下とすることにより、クロム系薄膜のエッチングレートを高めてレジスト膜厚の低減を図ることができる。
なお、膜の欠陥品質に優れる観点からは、酸化炭化窒化クロム、酸化炭化クロムが好ましい。また、応力の制御性(低応力膜を形成可能)の観点からは、酸化炭化窒化クロム(CrOCN)が好ましい。
本発明の半導体デバイスの製造方法は、半導体ウェハ上に形成される回路パターンは、DRAM hp45nm世代以降の回路パターンが含まれている態様を含む(構成10)。
本発明の半導体デバイスの製造方法は、構成7または8の転写用マスクの製造方法で作製された転写用マスクを用い、半導体ウェハ上に回路パターンを形成することを特徴する(構成11)。
本発明の転写用マスクの製造方法で作製された転写用マスクを用いることで、高い精度の回路パターンを有する半導体デバイスを同じ転写用マスクで、従来よりも多くの枚数を継続的に製造することができる。
本発明において、レジストは電子線描画用のレジストであること好ましい。高精度の加工に適するためである。
本発明は、電子線描画によりレジストパターンを形成する電子線描画用のマスクブランクに適用する。
位相シフトマスクには、ハーフトーン型(トライトーン型)、レベンソン型、補助パターン型、自己整合型(エッジ強調型)等の位相シフトマスクが含まれる。
(マスクブランクの作製)
図6(1)は、実施例1のバイナリ型マスクブランクの断面図である。
透光性基板1としてサイズ6インチ角、厚さ0.25インチの合成石英ガラス基板を用い、透光性基板1上に、パターン形成用膜である遮光膜10として、MoSiN膜(遮光層)、MoSiON膜(表面反射防止層)をそれぞれ形成し、2層積層構造とした。
具体的には、透光性基板1上に、モリブデン(Mo)とケイ素(Si)の混合ターゲット(Mo:Si=21原子%:79原子%)を用い、アルゴン(Ar)と窒素(N2)の混合ガス雰囲気で、反応性スパッタリング(DCスパッタリング)により、遮光層(MoSiN膜,Mo:Si:N=14.7原子%:56.2原子%:29.1原子%)を50nmの膜厚で形成した。
次に、遮光層上に、モリブデン(Mo)とケイ素(Si)の混合ターゲット(Mo:Si=4原子%:96原子%)を用い、アルゴン(Ar)と酸素(O2)と窒素(N2)とヘリウム(He)の混合ガス雰囲気で、反応性スパッタリング(DCスパッタリング)により、表面反射防止層(MoSiON膜,Mo:Si:O:N=2.6原子%:57.1原子%:15.9原子%:24.4原子%)を10nmの膜厚で形成した。
なお、各層(遮光膜)の元素分析は、ラザフォード後方散乱分析法を用いた。
遮光膜10の合計膜厚は60nmとした。遮光膜10の光学濃度(OD)はArFエキシマレーザー露光光の波長193nmにおいて3.0であった。
次に、上記基板を450℃で30分間加熱処理(アニール処理)した。
具体的には、DCマグネトロンスパッタ装置を用い、クロムターゲットを使用し、アルゴン(Ar)と二酸化炭素(CO2)と窒素(N2)とヘリウム(He)の混合ガス雰囲気で成膜を行い、エッチングマスク膜(CrOCN膜,Cr:O:C:N=33.0原子%:38.9原子%:11.1原子%:17.0原子%)を15nmの膜厚で形成した。
なお、CrOCN膜(エッチングマスク膜)の元素分析は、ラザフォード後方散乱分析法を用いた。
上記により、ArFエキシマレーザー露光用の遮光膜を形成したバイナリ型マスクブランクを得た。また、同様の手順により必要枚数製造した。
マスクブランクのエッチングマスク膜20の上に、電子線描画(露光)用化学増幅型ポジレジスト100(PRL009:富士フィルムエレクトロニクスマテリアルズ社製)をスピンコート法により膜厚が100nmとなるように塗布した(図6(1))。
次に、レジスト膜100に対し、電子線描画装置を用いて所望のパターンの描画を行った後、所定の現像液で現像してレジストパターン100aを形成した(図6(2))。
次に、レジストパターン100aをマスクとして、エッチングマスク膜20のドライエッチングを行い、エッチングマスク膜のパターン20aを形成した(図6(3))。ドライエッチングガスとして、Cl2とO2の混合ガス(Cl2:O2=4:1)を用いた。
次いで、残留したレジストパターン100aを除去した(図6(4))。
次いで、エッチングマスク膜のパターン20aをマスクにして、遮光膜10を、SF6とHeの混合ガスを用い、ドライエッチングを行い、遮光膜パターン10aを形成した(図6(5))。
次いで、エッチングマスク膜のパターン20aを、Cl2とO2の混合ガス(Cl2:O2=4:1)を用い、ドライエッチングを行い、剥離除去した(図6(6))。Cr剥離の時間は25秒とした。また、前記の製造したバイナリ型マスクブランクすべてに対し、同様の手順で同じ転写パターンを有する転写用マスク(バイナリ型マスク)を作製した。
アルカリ溶液で洗浄する工程は、水酸化アンモニウム(NH4OH 濃度 25wt%):過酸化水素(H2O2 濃度 30wt%):水(H2O)=2:1:4(体積比)の溶液を室温で使用した。処理時間は、比較例1−1で0分(即ち処理せず)、比較例1−2で5分、比較例1−3で10分、実施例1−1で15分、実施例1−2で30分とした。
温水で洗浄する工程は、温度90℃のイオン交換水(DI water:deionized water)を用いた。処理時間は、比較例1−1で0分(即ち処理せず)、比較例1−2で5分、比較例1−3で10分、実施例1−1で15分、実施例1−2で30分、とした。
オゾン含有水で洗浄する工程は、50ppmのオゾン含有水を室温で用いた。処理時間は、比較例1−1で0分(即ち処理せず)、比較例1−2で5分、比較例1−3で10分、実施例1−1で15分、実施例1−2で30分、とした。
以上のようにして、マスクブランクから、実施例1−1、実施例1−2、比較例1−1、比較例1−2、比較例1−3についての転写用マスクをそれぞれ作製した。
上記転写用マスクの洗浄工程において、洗浄による遮光膜(パターン形成用薄膜)の転写パターンの幅の減少量を調べた。
洗浄による遮光膜の転写パターンの幅の減少量は、180nm幅のラインであって、面内に均等に配した6箇所にある各ラインについて、CD変動量(洗浄前のCD−洗浄後のCD)を測定し、平均値を求めた。
その結果、洗浄による側壁除去量は、180nm幅のラインの両側合計で、比較例1−1(即ち洗浄処理せず)で0nm、比較例1−2(洗浄時間各5分)で1.3nm、比較例1−2(洗浄時間各10分)で2.9nm、実施例1−1(洗浄時間各15分)で3.9nm、実施例1−2(洗浄時間各30)で6.6nmであった。
上記で得られた転写用マスクについて、ArFエキシマレーザー(波長193nm)照射によるCD変化量を調べた。
照射条件は、繰り返し周波数300Hz、パルスエネルギー16mJ/cm2/pulse、積算照射量40kJ/cm2、とした。
なお、積算照射量40kJ/cm2は、転写マスクを用いて、ウェハ150,000枚のレジスト膜に対して転写パターンを露光転写したことに相当する。
CDの測定は、180nm幅のラインであって、面内に均等に配した6箇所にある各ラインについて、CD変化量(照射後のCD−照射前のCD)を測定し、平均値を求めた。
その結果、CD変化量(平均値)は、比較例1−1(即ち洗浄処理せず)で19.5nm、比較例1−2(洗浄時間各5分)で15.9nm、比較例1−3(洗浄時間各10分)で12.1nm、実施例1−1(洗浄時間各15分)で4.7nm、実施例1−2(洗浄時間各30分)で3.9nm、であった。
MoSi系遮光膜の転写パターンの幅が1.3nm減少するまで、又は、スペース幅が1.3nm増加するまで、洗浄によって側壁を除去することによって、比較例1−1(即ち洗浄処理せず)に比べ、CD変動(CDの太り)を19.5nmから約15.9nmへ低減できるが、不十分である。
MoSi系遮光膜のパターン幅が2.9nm減少するまで、又は、スペース幅が2.9nm増加するまで、洗浄によって側壁を除去することによって、比較例1−1(即ち洗浄処理せず)に比べ、CD変動(CDの太り)を19.5nmから約12.1nmへ低減できCD変動を約1/2に低減できるが、CD変動量は10nm以上であり依然大きい。
MoSi系遮光膜のパターン幅が3.9nm減少するまで、又は、スペース幅が3.9nm増加するまで、洗浄によって側壁を除去することによって、比較例1−1(即ち洗浄処理せず)に比べ、CD変動量(CDの太り)を19.5nmから4.7nmへ低減できCD変動を約1/4に低減でき、効果が極めて大きい。
実施例1において、アルカリ溶液で洗浄する工程の前に、酸洗浄工程を追加する(すなわち、クロム系材料からなるエッチングマスク膜のパターン20aをエッチング除去後は、アルカリ溶液の洗浄工程ではなく、酸洗浄工程を行う)と共に、オゾン含有水で洗浄する工程を省略したこと以外は、実施例1と同様とした。
酸洗浄工程は、硫酸(H2SO4 濃度 98wt%):過酸化水素(H2O2 濃度 30wt%):=4:1:(体積比)の溶液を90℃に加熱して使用し、処理時間は10分とした。
実施例1と同様に洗浄による転写パターンの幅の減少量を調べ、実施例1と同じ条件でArFエキシマレーザー照射によるCD変化量を調べた。その結果、各ライン(面内均等6箇所)のCD変動量(平均値)は、11〜19nmであった。
次に、実施例1−1〜1−2、比較例1−1〜1−3、比較例2と同様の手順で、DRAM hp45nm世代の転写パターンがパターン形成用薄膜に形成された転写用マスクを作製した。出来上がった各転写用マスクのパターン形成用薄膜に対し、ArFエキシマレーザー(波長193nm)の照射を実施例1−1と同じ条件で行った。これにより、半導体ウェハ150,000枚のレジスト膜に対して転写パターンを露光転写した後と同等の状態の転写用マスクをそれぞれ準備した。この準備した各転写用マスクを用い、半導体ウェハ上のレジスト膜に対して、転写パターンを露光転写する工程を行った。露光装置には、ArFエキシマレーザーを光源とする液浸方式のものが用いられた。具体的には、露光装置のマスクステージに、準備した各転写用マスクをセットし、半導体ウェハ上のArF液浸露光用のレジスト膜に対して、露光転写を行った。露光後のレジスト膜に対して、所定の現像処理を行い、レジストパターンを形成した。さらに、レジストパターンを用いて、半導体ウェハ上にDRAMハーフピッチ(hp)45nmの回路パターンを形成した。
2 パターン形成用薄膜
2a 変質層
10 遮光膜
20 エッチングマスク膜
100 レジスト膜
Claims (11)
- 透光性基板上に、クロムを除く遷移金属およびケイ素を含有する材料からなるパターン形成用薄膜と、クロムを含有する材料からなるクロム系薄膜が順に積層したマスクブランクを用いた転写用マスクの製造方法において、
前記転写用マスクは、波長200nm以下の露光光が適用されるものであり、
クロム系薄膜上に、転写パターンを有するレジスト膜を形成する工程と、
転写パターンを有するレジスト膜をマスクとして、クロム系薄膜に転写パターンを形成する工程と、
転写パターンを有するクロム系薄膜をマスクとして、パターン形成用薄膜に転写パターンを形成する工程と、
前記クロム系薄膜をエッチングによって除去する工程と、
をこの順に行って転写用マスクを作製し、
作製した転写用マスクをアルカリ溶液洗浄、温水洗浄、オゾン含有水洗浄のうち1以上の洗浄を行う洗浄工程を、前記パターン形成用薄膜からなる転写パターンの幅が4nm減少するまで、あるいは前記パターン形成用薄膜からなるスペース幅が4nm増加するまで行うことを特徴とする転写用マスクの製造方法。 - 前記洗浄工程は、アルカリ溶液洗浄、温水洗浄、およびオゾン含有水洗浄をこの順に行うことを有することを特徴とする請求項1記載の転写用マスクの製造方法。
- 前記アルカリ溶液は、アンモニアと過酸化水素を含有する水溶液であることを特徴とする請求項1または2のいずれかに記載の転写用マスクの製造方法。
- 前記パターン形成用薄膜は、光学濃度2.5以上を有する遮光膜であり、
前記クロム系薄膜は、エッチングによって除去する工程で全て除去されることを特徴とする請求項1から3のいずれかに記載の転写用マスクの製造方法。 - 前記パターン形成用薄膜は、透光性基板側から遮光層および表面反射防止層の少なくとも2層以上の積層構造からなる遮光膜であることを特徴とする請求項4に記載の転写用マスクの製造方法。
- 前記パターン形成用薄膜は、DRAM hp45nm世代以降の転写パターンを有することを特徴とする請求項1から5のいずれかに記載の転写用マスクの製造方法。
- 前記パターン形成用薄膜は、ハーフトーン型位相シフト膜であり、
前記クロム系薄膜と転写パターン用薄膜との積層構造で光学濃度2.5以上を有し、
前記クロム系薄膜をエッチングによって除去する工程で、転写パターン領域外周の遮光帯領域以外の領域の前記クロム系薄膜は除去されることを特徴とする請求項1から3のいずれかに記載の転写用マスクの製造方法。 - 前記パターン用薄膜中の遷移金属は、モリブデンであることを特徴とする請求項lから7のいずれかに記載の転写用マスクの製造方法。
- 請求項6記載の転写用マスクの製造方法で作製された転写用マスクを用い、半導体ウェハ上に回路パターンを形成することを特徴する半導体デバイスの製造方法。
- 半導体ウェハ上に形成される回路パターンは、DRAM hp45nm世代以降の回路パターンが含まれていることを特徴する請求項9に記載の半導体デバイスの製造方法。
- 請求項7または8のいずれかに記載の転写用マスクの製造方法で作製された転写用マスクを用い、半導体ウェハ上に回路パターンを形成することを特徴する半導体デバイスの製造方法。
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