JP4738082B2 - ゲイン制御回路 - Google Patents

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魚群探知機等の水中探知装置におけるAGC回路(自動ゲイン制御回路)に関する。
超音波を海底に向けて送波し、水中および海底よりのエコーを映像化して表示する探知する魚群探知機などでは、魚群からエコーのレベルが微弱であるのに対し、海底よりのエコーのレベルは大きい。このようにダイナミックレンジの広いエコーを表示するために、レベル差を小さくするAGC(自動利得制御)が不可欠である。
従来のAGCでは次のような処理が一般的である。
(1) 海底エコーのレベルの平均値が一定になるようにゲインを制御する。
(2) 海底までの信号レベルの平均値が一定になるようにゲインを制御する。
(3) 上記二つの制御を併用する。
尚、ここで「平均」とは同じ深度のエコーレベルを数KP(送信)分平均することを指す。
(1)の制御では、魚群からのエコーを海底のものと誤検出すると、その誤検出したエコーはレベルがそれほどに大きくないために、AGCによって利得が高められ、そのため強いエコーでレベルオーバーとなって歪んでしまう。
(2)の制御では、水中よりのエコーは大きく変化して、AGCによって利得が頻繁に変更されるため表示画面にむらがでる。
(3)上記の欠点以外に応答が遅いという欠点が生じた。
本発明は、受信した水中よりのエコー信号のゲインを制御するゲイン制御回路において、
前記エコー信号を増幅する受信部と、
前記受信部の出力をA/D変換するA/D変換器と、
前記A/D変換器より得られるデータを記憶するメモリと、
前記データに対して、前記データを含む区間のデータから移動平均値を演算する移動平均演算部と、
前記移動平均演算部で演算された移動平均値から、ゲインを算出するゲイン演算部と、
前記データに対し、前記ゲイン演算部で得た前記ゲインを乗算する乗算器とを備えることを特徴とする。
補正対象のデータに対し、そのデータを中心に含む幅のデータの移動平均を用いてAGC処理するため、応答速度が向上し、ほぼリアルタイムでAGC処理を行える。
図1は、本発明のリアルタイムAGC回路が適用された魚群探知機の1実施形態を示す制御ブロック図である。船底などに装備された送受波器1は、トラップ回路2を介して送信部3から供給された超音波信号により超音波を送波するとともに、そのエコーを受波し、前記トラップ回路2を介して受信部4に供給する。
受信部4は、受信制御部5で設定した深度や感度に基づいて前記受波信号を所定のレベルに増幅する。増幅の際には、同一の探査物であれば深度に関係なく一定強度のエコーが得られるようにTVG(タイム・バリュアブル・ゲイン)制御がなされる。このTVG制御により、遠方の信号がより分かり易く表示されるようになる。このTVGの機能は、以下に示すA/D変換器6またはリアルタイムAGC8内に備えるようにしてもよい。このTVGについては「海洋音響用語辞典」の内容を以下に引用して説明する。
「TVG:アクティブソーナーにおいて、受信機の利得を送信直後に低下させて時間の経過とともに次第に回復させること。アクティブソーナーの受信信号は、送信直後の強い残響が時間の経過とともに減衰していくもので、一定の利得の増幅器では、送信直後からある区間の受信信号が飽和してしまうが、残響が減衰した場合に受信信号が自己雑音に埋もれてしまい、目標エコーの受信ができなくなってしまう。このため増幅利得を残響の時間減衰特性にあわせ、送信直後は大きく低下させて時間の経過とともに次第に回復させることにより受信信号の飽和を防いでいる」
受信部4で増幅された前記受波信号は、A/D変換器6にてアナログ信号から0〜255の8ビットのデジタル信号に変換され、そのデジタル信号は、メモリ7に一旦記憶される。このメモリ7には、1送波分のエコー信号を記憶する。メモリ7に記憶されたデータは、本発明に係わるリアルタイムAGC8に時系列的に供給されると共に、レベル変化から海底の深度を検出する深度検出部9に供給される。
リアルタイムAGC8(その機能は後述する)で処理された信号は、受信信号記憶部10に記憶され、そして受信信号記憶部10からの出力信号に基づき、映像信号作成部11は映像表示用信号を作成する。
色信号読出部12は、信号レベルに対応する表示色を出力するものであり、予め0〜255のレベル幅が8つのレベル幅に振り分けられ、それぞれのレベル幅に対応する画面表示色を記憶するテーブルROMを内部に備え、入力される信号レベルに対応した画面表示色を出力する。
表示制御部13は、前記色信号をモニター14における表示に同期した信号に変換すると共に、深度検出部9で検出した深度情報を数値にて表示するためのデータに変換する。
図2は、リアルタイムAGC回路8の詳細を示す。移動平均演算部81は、メモリ7からのデータに対し、移動平均Aveを順次演算する。その移動平均でデータを取り込む幅(移動平均幅という)は、図3に示すように、送波信号幅Lの7倍〜14倍で、好ましくはほぼ10倍としている。
AGCゲイン演算部82は、AGCゲインGを、
[数1]
G(i)=( K/Ave(i) )b
の演算式を用いて演算する。bはフィードバックゲインであり、0から1の範囲で変化させることにより、信号の圧縮率を調節する。Kは定数である。
移動平均演算部81は、移動平均幅分のデータ群( D(i-n)〜D(i)〜D(i+n) )から順次、平均値Ave(i)を求め、AGCゲイン演算部82は、前記平均値Ave(i)からAGCゲインG(i)を求める。乗算器83は、メモリ7から読み出したデータD(i)に、前記AGCゲインG(i)を乗算し、その乗算値( D(i)×G(i) )を、データD(i)のAGC処理データとして受信信号記憶部10に記憶する。
ここでデータD(i)を、移動平均幅分のデータ群( D(i-n)〜D(i+n) )の中心のデータとしたが、必ずしも中心のデータでなくてもよく、また、データ群( D(i-n)〜D(i+n) )内の全てのデータを用いるのではなく、間引いて用いてもよい。
上記魚群探知機の動作を以下述べる。送受波器1は、送信部3から所定の周期で出力される送波信号を受けて、海底に超音波を送波し、それのエコー信号は、受信部4、A/D変換器6を介してメモリ7に記憶される。
このメモリ7に、1送波分のエコーデータ( D(1),D(2),D(3)---D(i)---)が記憶されると、個々のデータに対してAGC制御がなされる。今、図4に示すように水中A点よりのデータD(i)に対してAGC処理を行う場合、当該データD(i)を中心に含むようにして、移動平均幅分のデータ群( D(i-n)〜D(i)〜D(i+n) )がメモリ7から読み出され、移動平均演算部81は、それらのデータ群から移動平均Ave(i)を演算する。又、深度検出部9は、メモリ7に記憶された1送波分のエコーデータのレベル変化から海底深度を検出する。
AGCゲイン演算部82は、入力される移動平均Ave(i)に基づき、上述のごとくAGCゲインG(i)を演算し、乗算器83は、データD(i)にAGCゲインG(i)を乗算し、その乗算値( D(i)×G(i) )が、データD(i)のAGC制御のデータとして受信信号記憶部10に記憶される。次のタイミングでは、データD(i+1)に同じようにしてAGC処理がなされる。
この受信信号記憶部10以降の動作は従来の装置と同様であり、1送波分のエコーデータのAGC処理が終わると、映像信号作成部11、色信号読出部12、および表示制御部13を通じてモニター14の左端に縦のラインで像が表示され、以前の表示は順次右送りされる。
図5は、送信パルス幅のほぼ10倍の幅で移動平均を得るようにした場合の入力信号と、移動平均処理後の信号を示す。処理対象受信データより前に受信したデータだけでなく、後に受信する受信データをも用いてゲインを制御するため、この図5に示すように、探知対象物の探知前後に出力の低下と上昇が対となって起こり、探知対象物の輪郭(エッジ)が強調され、使用者に見やすい映像を提供できる。
図5に示すように、b=0.5の時の移動平均処理で好ましい結果が得られた。b=1の場合には、TVGのゲインコントロール量は省略することもできる。尚、図5において、入力信号の3つのピークは、すべて魚群からのエコーである。
さて、図4において、水中B点よりのデータD(j)に対するAGC制御では、上記と同様に、そのデータD(j)を中心に含む移動平均幅U分のデータ( D(j-n)〜D(j)〜D(j+n) )で移動平均を求める場合、それらのデータに海底よりの高レベルのデータが含まれるために、その移動平均値は大きくなり、そのためデータD(j)はAGC処理で低レベルにされ、海底付近の底つき魚はモニター14に表示されなくなる。
従ってサンプリング区間の一部が海底に重なる場合には、海底よりのデータを移動平均に取り込まないようにする必要がある。そのために、図示した移動平均幅Vのように、現在のデータD(J)より過去のデータ( D(j-n)〜D(j) )を移動平均に用いるか、あるいは、移動平均幅Wのように、深度検出部9よりの深度情報に基づき、海底直前までのデータを移動平均に用いる。海底以下の検出に対しては、移動平均幅Xのごとく、通常の移動平均幅(検出点のデータを中心に含む幅)で移動平均を求める。
このように移動平均に海底よりのデータを排除すれば、底つき魚もモニター14に表示することができる。
また、海面近くの水中C点よりのデータに対しては、送波信号そのものを高レベルのエコーとして検出しているため、移動平均幅vのように、現在検出のデータ以前のデータを移動平均に用いると、移動平均値が大きくなって海面直下の魚群が表示されなくなる。そこで、移動平均幅uのように、現在検出のデータ以降のデータを移動平均に用いる。
図1のリアルタイムAGC回路8内の移動平均の処理は、ローパスフィルタの機能に等しい。従って、移動平均の処理に替えて、ローパスフィルタを使用することもできる。ローパスフィルタとしてはFIRフィルタやIIRフィルタ等のデジタルフィルタを用いてもよい。
本発明のリアルタイムAGCは、魚群探知器以外に、海底探査機やPPIソナーのごとき水中探知装置にも適用できる。
本発明のリアルタイムAGC回路を適用した魚群探知機の制御ブロック図 本発明のリアルタイムAGC回路の1実施形態を示した制御ブロック図 移動平均の幅を示した図 種々の移動平均の幅を示した図 AGC処理前後の信号の変化を示した図
符号の説明
7:メモリ
8:リアルタイムAGC
9:深度検出部
10:受信信号記憶部
81:移動平均演算部
82:AGCゲイン演算部
83:乗算器

Claims (4)

  1. 受信した水中よりのエコー信号のゲインを制御するゲイン制御回路において、
    前記エコー信号を増幅する受信部と、
    前記受信部の出力をA/D変換するA/D変換器と、
    前記A/D変換器より得られるデータを記憶するメモリと、
    前記データに対して、前記データを含む区間のデータから移動平均値を演算する移動平均演算部と、
    前記移動平均演算部で演算された移動平均値から、下記のゲイン算出式
    G(i)=(K/Ave(i)) 、0<b<1、Kは定数、
    を用いてゲインG(i)を算出するゲイン演算部と、
    前記データに対し、前記ゲイン演算部で得た前記ゲインG(i)を乗算する乗算器とを備え
    上記受信部にTVG制御を併用したことを特徴とするゲイン制御回路。
  2. 前記移動平均でデータを取り込む幅を、送波信号幅のほぼ10倍とした請求項1記載のゲイン制御回路。
  3. 水底の深度を検出する水底深度検出手段を備え、前記水底の深度情報から、前記移動平均幅で検出される信号に、水底よりのエコー信号が含まれる場合には、前記水底よりのエコー信号を移動平均に用いないようにした請求項1または2記載のゲイン制御回路。
  4. 水面直下よりのエコー信号から得たデータのAGC処理時において、移動平均には、前記エコー信号より後に検出される信号のデータを用いる請求項1〜3のいずれかに記載のゲイン制御回路。
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