JP4736432B2 - エポキシ樹脂組成物及び半導体装置 - Google Patents

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本発明は、半導体封止用エポキシ樹脂組成物及び半導体装置に関するものであり、特に金属基板の片面に半導体素子を搭載し、その搭載面側の実質的に片面のみが樹脂封止されたエリア実装型半導体装置に好適に用いられるものである。
近年の電子機器の小型化、軽量化、高性能化の市場動向において、半導体素子の高集積化が年々進み、また、半導体装置の表面実装化が促進されるなかで、新規にエリア実装型半導体装置が開発され、従来構造の半導体装置から移行し始めている。半導体装置の小型化、薄型化に伴い、封止用エポキシ樹脂組成物に対しては、より一層の低粘度化、高強度化が要求されている。また、環境問題から臭素化合物、酸化アンチモン等の難燃剤を使わずに難燃化する要求が増えてきている。このような背景から、最近のエポキシ樹脂組成物の動向は、より低粘度の樹脂を適用し、より多くの無機充填剤を配合する傾向が強くなっている。また新たな動きとして、半導体装置を実装する際、従来よりも融点の高い無鉛半田の使用が高まってきている。この半田の適用により実装温度を従来に比べ約20℃高くする必要があり、実装後の半導体装置の信頼性が現状に比べ著しく低下する問題が生じている。このようなことからエポキシ樹脂組成物のレベルアップによる半導体装置の信頼性の向上要求が加速的に強くなってきており、樹脂の低粘度化と無機充填剤の高充填化に拍車がかかっている。
エリア実装型半導体装置としては、代表例としてBGA(ボールグリッドアレイ)、あるいは更に小型化を追求したCSP(チップスケールパッケージ)等があるが、これ以外にQFN、SONといった従来のQFPやSOPの実装エリア面積を小さくしたパッケージがある。QFNやSONは従来のQFPやSOPと同じ設計で製造されてきたが、最近金属基板(たとえば銅リードフレームやニッケルパラジウム+金メッキしたリードフレームにポリイミドフィルムを重ね合わせたものなど)の片側に半導体素子をマトリックス状に搭載し、封止用エポキシ樹脂組成物で一括封止し、その後所定の大きさに格子状にカットして個片化してパッケージを製造する方法(以下MAP−QFN、MAP−SONと表現)が増えてきている。(例えば、特許文献1参照。)
MAP−QFN、MAP−SONの構造は、基板の半導体素子搭載面のみをエポキシ樹脂組成物で封止する片面封止の形態をとっている。この場合、封止される面積は通常のパッケージ成形よりも大きく、しかも片面であることから金属基板とエポキシ樹脂組成物の硬化物との間での熱膨張・熱収縮の不整合、或いはエポキシ樹脂組成物の成形硬化時の硬化収縮による影響で、これらの半導体装置では成形直後から反りが発生しやすい。
また半導体装置に反りが発生すると、半導体装置を実装する回路基板から浮き上がってしまい、電気的接合の信頼性が低下する問題も起こる。
金属基板上の実質的に片面のみをエポキシ樹脂組成物で封止した半導体装置において、反りを低減するには、基板の熱膨張係数とエポキシ樹脂組成物の硬化物の熱膨張係数とを近づけること、及びエポキシ樹脂組成物の成形硬化時の硬化収縮を小さくすることの二つの方法が重要である。
対策として多官能型エポキシ樹脂と多官能型フェノール樹脂との組み合わせによりTgを高くし、無機充填剤の配合量でα1を合わせる手法が既に提案されている。しかし多官能型エポキシ樹脂と多官能型フェノール樹脂との組み合わせでは流動性が低下し未充填ボイドが生じる等の不具合があった。
また、赤外線リフロー、ベーパーフェイズソルダリング、半田浸漬等の手段での半田処理による半田接合を行う場合、エポキシ樹脂組成物の硬化物の吸湿により、半導体装置内部に存在する水分が高温で急激に気化することによる応力で、半導体装置にクラックが発生することや、金属基板の半導体素子搭載面とエポキシ樹脂組成物の硬化物との界面で剥離が発生することもあり、エポキシ樹脂組成物の低応力化・低吸湿化・低反り化・高充填化・高耐熱化とともに、金属基板との高接着性も求められる。
従来のQFPやSOP等の表面実装型半導体装置において、成形時に低粘度で高流動性を維持するためには、溶融粘度の低い樹脂を用いる方法や(例えば、特許文献2参照。)、また無機充填剤の配合量を高めるために無機充填剤をシランカップリング剤で表面処理する方法が知られている(例えば、特許文献3参照。)。しかしこれらは種々ある要求特性のいずれかのみを満足するものが多い。エリア実装型半導体封止用エポキシ樹脂組成物において、高流動、低反りに優れた樹脂を用い、更に無機充填剤の配合量を高めて信頼性を満足させる技術がこれまで求められてきた。
特開2003−109983号公報(第2〜7頁) 特開平7−130919号公報(第2〜5頁) 特開平8−20673号公報(第2〜4頁)
本発明は、従来の背景技術の問題点を解決するためになされたものであり、その目的とするところは硬化性及び他の諸特性を劣化させることなく充填性、成形後や半田処理後の低反り、耐半田特性が著しく優れたエリア実装型半導体封止(特にMAP−QFNやMAP−SON)用に適したエポキシ樹脂組成物、及びこれを用いた半導体装置を提供することにある。
本発明は
[1]金属基板の片面に半導体素子が搭載され、この半導体素子が搭載された搭載面側の実質的に片面のみの封止に用いる樹脂組成物であって、(A)一般式(1)で表されるエポキシ樹脂、(B)一般式(2)で表される結晶性エポキシ樹脂、(C)一般式(3)で表されるフェノール樹脂、(D)硬化促進剤、(E)全エポキシ樹脂組成物中に対し85〜95重量%の無機充填剤、(F)一般式(4)で表されるシランカップリング剤、及び(G)分子内にオキシラン構造を有するポリブタジエンを必須成分とするエリア実装型半導体封止用エポキシ樹脂組成物であって、分子内にオキシラン構造を有するポリブタジエンのオキシラン酸素量が3〜10%であり、分子内にオキシラン構造を有するポリブタジエンの配合量が全エポキシ樹脂組成物中に対し0.05〜1.5重量%であることを特徴とするエリア実装型半導体封止用エポキシ樹脂組成物、
(R1、R2は水素又は炭素数1〜4のアルキル基で、互いに同一でも異なっていてもよい。aは0〜3の整数、bは0〜4の整数。nは平均値で、1〜5の正数)
(Xは単結合、−O−、−S−、−R2CR2−の中から選択される基で、R1は炭素数1〜6のアルキル基で同一でも異なってもよい。mは0〜4の整数。R2は水素又は炭素数1〜4アルキル基で同一でも異なっていてもよい。)
(R1、R2は水素又は炭素数1〜4のアルキル基で、互いに同一でも異なっていてもよい。aは0〜3の整数、bは0〜4の整数。nは平均値で、1〜5の正数)
(R3は炭素数1〜12の有機基。R4、R5、R6は炭素数1〜12の炭化水素基。nは1〜3の整数。)
]分子内にオキシラン構造を有するポリブタジエンの25℃での粘度が20〜700Pa・sである第[]項記載の半導体封止用エポキシ樹脂組成物、
]金属基板の片面に半導体素子が搭載され、この半導体素子が搭載された搭載面側の実質的に片面のみが第[]又は[]項記載の半導体封止用エポキシ樹脂組成物を用いて封止されていることを特徴とするエリア実装型半導体装置、
である。
本発明に従うと、従来の技術では得られなかった高充填化、低反り、耐半田特性が得られるので、特にMAP−QFNやMAP−SONといったエリア実装型半導体封止用エポキシ樹脂組成物およびこれを用いた半導体装置として好適である。
本発明は、(A)一般式(1)で表されるエポキシ樹脂、(B)一般式(2)で表される結晶性エポキシ樹脂、(C)一般式(3)で表されるフェノール樹脂、(D)硬化促進剤、(E)全エポキシ樹脂組成物中に対し85〜95重量%の無機充填剤、(F)一般式(4)で表されるシランカップリング剤、及び(G)分子内にオキシラン構造を有するポリブタジエンを必須成分とする半導体封止用エポキシ樹脂組成物であって、分子内にオキシラン構造を有するポリブタジエンのオキシラン酸素量が3〜10%であることを特徴とする半導体封止用エポキシ樹脂組成物を用いることにより、エポキシ樹脂組成物およびこれを用いた半導体装置においては高充填化、低反り、耐半田特性に優れるという顕著な効果が得られるものである。
以下、本発明について詳細に説明する。
本発明で用いられる一般式(1)で表されるエポキシ樹脂は、エポキシ基間に疎水性で剛直なビフェニレン骨格を有しており、これを用いたエポキシ樹脂組成物の硬化物は吸湿率が低く、ガラス転移温度(以下、Tgという)を越えた高温域での弾性率が低く、半導体素子、有機基板、及び金属基板との密着性に優れる。また架橋密度が低い割には耐熱性が高いという特徴を有している。
一般式(1)中のnは平均値で、1〜5の正数、好ましくは1〜3の正数である。nが下限値を下回るとエポキシ樹脂組成物の硬化性が低下する可能性がある。nが上限値を越えると粘度が高くなりエポキシ樹脂組成物の流動性が低下する可能性がある。一般式(1)で表されるエポキシ樹脂(A)としては、例えばフェノールビフェニルアラルキル型エポキシ樹脂などが挙げられるが、式(1)の構造であれば特に限定するものではない。
(R1、R2は水素又は炭素数1〜4のアルキル基で、互いに同一でも異なっていてもよい。aは0〜3の整数、bは0〜4の整数。nは平均値で、1〜5の正数)
本発明に用いられる一般式(2)で示される結晶性エポキシ樹脂は、常温では結晶性の固体であるが、融点以上では極めて低粘度の液状となり、無機充填剤を高充填化できるので、これを用いたエポキシ樹脂組成物は、耐半田性に優れる特性を有する。一般式(2)で表される結晶性エポキシ樹脂としては、例えばビスフェノールA型エポキシ樹脂などが挙げられるが、一般式(2)の構造であれば特に限定するものではない。
(Xは単結合、−O−、−S−、−R2CR2−の中から選択される基で、R1は炭素数1〜6のアルキル基で同一でも異なってもよい。mは0〜4の整数。R2は水素又は炭素数1〜4アルキル基で同一でも異なってもよい。)
また本発明では、一般式(1)で示されるエポキシ樹脂、及び一般式(2)で示される結晶性エポキシ樹脂を用いることによる特徴を損なわない範囲で、他のエポキシ樹脂を併用してもよい。併用できるエポキシ樹脂としては、分子内にエポキシ基を有するモノマー、オリゴマー、及びポリマー全般を言う。例えば、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、オルソクレゾールノボラック型エポキシ樹脂、ナフトールノボラック型エポキシ樹脂、フェニレン骨格を有するフェノールアラルキル型エポキシ樹脂、ナフトールアラルキル型エポキシ樹脂(フェニレン骨格、ビフェニル骨格等を有する)、ジシクロペンタジエン変性フェノール型エポキシ樹脂、スチルベン型エポキシ樹脂、トリフェノールメタン型エポキシ樹脂、アルキル変性トリフェノールメタン型エポキシ樹脂、トリアジン核含有エポキシ樹脂等が挙げられ、これらは1種類を単独で用いても2種類以上を併用してもよい。他のエポキシ樹脂を併用する場合の配合量としては、全エポキシ樹脂に対して、一般式(1)で示されるエポキシ樹脂と一般式(2)で示されるエポキシ樹脂との合計量が、70〜100重量%であることが好ましい。一般式(1)で示されるエポキシ樹脂と一般式(2)で示されるエポキシ樹脂との合計量が下限値を下回ると、吸湿率の増大、耐クラック性の低下が起こる可能性がある。
本発明で用いられる一般式(3)で示されるフェノール樹脂は、フェノール性水酸基間に疎水性で剛直なビフェニレン骨格を有しており、これを用いたエポキシ樹脂組成物の硬化物は吸湿率が低く、Tgを越えた高温域での弾性率が低く、半導体素子、有機基板、及び金属基板との密着性に優れる。また架橋密度が低い割には耐熱性が高いという特徴を有している。従って、このフェノール樹脂を用いた樹脂組成で封止された半導体装置は、耐クラック性に優れる。
一般式(3)中のnは平均値で、1〜5の正数、好ましくは1〜3の正数である。nが下限値を下回るとエポキシ樹脂組成物の硬化性が低下する可能性がある。nが上限値を越えると、粘度が高くなりエポキシ樹脂組成物の流動性が低下する可能性がある。一般式(2)で示されるフェノール樹脂は、1種類を単独で用いても2種類以上を併用してもよい。
一般式(3)で示されるフェノール樹脂としては、例えばフェノールビフェニルアラルキル樹脂などが挙げられるが、一般式(3)の構造であれば特に限定するものではない。
(R1、R2は水素又は炭素数1〜4のアルキル基で、互いに同一でも異なっていてもよい。aは0〜3の整数、bは0〜4の整数。nは平均値で、1〜5の正数)
本発明で用いられる一般式(3)で示されるフェノール樹脂を用いることによる特徴を損なわない範囲で他のフェノール樹脂を併用してもよい。併用する場合は、分子中にフェノール性水酸基を有するモノマー、オリゴマー、ポリマー全般で、極力低粘度のものを使用することが望ましく、例えば、フェノールノボラック樹脂、クレゾールノボラック樹脂、フェノールアラルキル樹脂(フェニレン骨格を有する)、ナフトールアラルキル樹脂、トリフェノールメタン樹脂、テルペン変性フェノール樹脂、ジシクロペンタジエン変性フェノール樹脂等が挙げられ、これらは1種類を単独で用いても2種類以上を併用してもよい。半導体封止用エポキシ樹脂組成物としての耐湿信頼性を考慮すると、イオン性不純物であるNaイオンやClイオンが極力少ない方が好ましい。他のフェノール樹脂を併用する場合の配合量としては、全フェノール樹脂に対して、一般式(3)で示されるフェノール樹脂の配合量が、70〜100重量%であることが好ましい。一般式(3)で示されるフェノール樹脂の配合量が下限値を下回ると、吸湿率の増大、半田処理後の基材との密着性や耐半田性の低下が起こる可能性がある。
全エポキシ樹脂のエポキシ基とフェノール樹脂のフェノール性水酸基の当量比については、エポキシ基数/フェノール性水酸基数=0.7〜1.5の範囲が好ましく、この範囲を外れると、樹脂組成物の硬化性の低下、或いは硬化物のガラス転移温度の低下、耐湿信頼性の低下等が生じる可能性があるので好ましくない。一般式(1)で示されるエポキシ樹脂及び一般式(2)で示されるエポキシ樹脂、一般式(3)で示されるフェノール樹脂とを組合せて用いた場合には、吸湿後の半田処理での耐クラック性、反り等の点で最も高い効果が得られる。
本発明で用いられる硬化促進剤としては、エポキシ基とフェノール性水酸基の反応を促進するものであれば特に限定しないが、例えば1,8−ジアザビシクロ(5,4,0)ウンデセン−7等のジアザビシクロアルケン及びその誘導体、トリフェニルホスフィン、メチルジフェニルホスフィン等の有機ホスフィン類、テトラフェニルホスホニウム・テトラフェニルボレート、テトラフェニルホスホニウム・テトラ安息香酸ボレート、テトラフェニルホスホニウム・テトラナフトイックアシッドボレート、テトラフェニルホスホニウム・テトラナフトイルオキシボレート、テトラフェニルホスホニウム・テトラナフチルオキシボレート等のテトラ置換ホスホニウム・テトラ置換ボレート等が挙げられ、これらは1種類を単独で用いても2種類以上を併用してもよい。
本発明で用いられる無機充填剤としては、一般に半導体封止用エポキシ樹脂組成物に使用されているものを用いることができる。例えば、溶融球状シリカ、溶融破砕シリカ、結晶シリカ、タルク、アルミナ、チタンホワイト、窒化珪素等が挙げられ、最も好適に使用されるものとしては、溶融球状シリカである。これらの無機充填剤は、単独でも混合して用いても差し支えない。またこれらがカップリング剤により表面処理されていてもかまわない。無機充填剤の形状としては、流動性改善のために、できるだけ真球状であり、かつ粒度分布がブロードであることが好ましい。本発明で用いられる無機充填剤の配合量は、全エポキシ樹脂組成物中に85〜95重量%であり、好ましくは87〜93重量%である。下限値を下回ると、低吸湿性、低熱膨張性が得られず耐半田性が不十分となったり、反りが大きくなったりする恐れがあるので好ましくない。上限値を越えると、流動性が低下し、成形時に充填不良等が生じたり、高粘度化による半導体装置内の金線変形等の不都合が生じたりする恐れがあるので好ましくない
本発明において一般式(4)で表されるシランカップリング剤は必須である。一般式(4)で表されるシランカップリング剤を用いると、エポキシ樹脂組成物の粘度が低下し、流動性がよくなる効果が得られる。一般式(4)で表されるシランカップリング剤は1種類を単独で使用しても2種類以上を併用してもよい。また配合量は、特に限定されないが、全エポキシ樹脂組成物中0.05〜1重量%、更に好ましくは0.1〜0.8重量%である。一般式(4)で表されるシランカップリング剤の配合量が上記下限値を下回ると、期待するような密着性、流動性が得られない可能性があり、上記上限値を超えると硬化性が低下する可能性がある。また、一般式(4)で表されるシランカップリング剤を用いることによる効果を損なわない範囲であれば、その他のカップリング剤を併用しても差し支えない。併用できるカップリング剤としては、例えば、エポキシシラン、メルカプトシラン、アミノシラン、アルキルシラン、ウレイドシラン、ビニルシラン等のシランカップリング剤や、チタネートカップリング剤、アルミニウムカップリング剤、アルミニウム/ジルコニウムカップリング剤等が挙げられる。
(R3は炭素数1〜12の有機基。R4、R5、R6は炭素数1〜12の炭化水素基。nは1〜3の整数。)
本発明において分子内にオキシラン構造を有するポリブタジエンは必須である。これを用いると、エポキシ樹脂組成物と金属基板(ニッケル−パラジウムやニッケル−パラジウム−金メッキなど)の密着性が向上し、高リフロー耐熱性の効果が得られる。分子内にオキシラン構造を有するポリブタジエンのオキシラン酸素量は密着性に影響を及ぼす。基準油脂分析試験法(オキシラン酸素)に準拠した測定で得られたオキシラン酸素量は3〜10%、更に好ましくは5〜8%である。上記下限値を下回ると密着性が低下し、上限値を超えると流動性が低下し、未充填となる可能性が大きい。分子内にオキシラン構造を有するポリブタジエンの粘度は半導体封止用樹脂組成物の粘度に影響を及ぼす。JIS Z−8803に準拠した測定で得られた25℃での粘度は20〜700Pa・s、更に好ましくは50〜500Pa・sである。上記上下限値から外れると、期待するような流動性や密着性、反りが得られない。また配合量については0.05〜1.5重量%、好ましくは0.1〜1重量%である。上記下限値を下回ると密着性が低下し、上限値を超えると流動性が低下し、未充填となる可能性が大きい。また、一般式(5)で表される分子内にオキシラン構造を有するポリブタジエンを用いることによる効果を損なわない範囲であれば、その他の低応力剤を併用しても差し支えない。併用できる低応力剤としては、例えば、オルガノポリシロキサンといったシリコーンオイルや、シリコーンゴム、アクリロニトリルゴムといった常温で固形状のゴムなどがある。
(k、l、m、nは1〜50の整数であり、R7はCで示される構造を有し、pは0〜10の整数、qは1〜21の整数。)
本発明のエポキシ樹脂組成物は、(A)〜(G)成分の他、必要に応じてカルナバワックス等の天然ワックス、ポリエチレンワックス等の合成ワックス、ステアリン酸やステアリン酸亜鉛等の高級脂肪酸及びその金属塩類若しくはパラフィン等の離型剤、カーボンブラック、ベンガラ等の着色剤、臭素化エポキシ樹脂、三酸化アンチモン、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、硼酸亜鉛、モリブデン酸亜鉛、フォスファゼン等の難燃剤、酸化ビスマス水和物等の無機イオン交換体、シリコーンオイル、ゴム等の低応力成分、酸化防止剤等の各種添加剤が適宜配合可能である。
本発明に用いるエポキシ樹脂組成物は、(A)〜(G)成分、その他の添加剤等をミキサーを用いて常温混合し、ロール、ニーダー等の押出機等の混練機で溶融混練し、冷却後粉砕して得られる。
本発明のエポキシ樹脂組成物を用いて、半導体素子等の電子部品を封止し、半導体装置を製造するには、トランスファーモールド、コンプレッションモールド、インジェクションモールド等の従来からの成形方法で硬化成形すればよい。特に本発明のエポキシ樹脂組成物は、エリア実装型半導体装置用に最適である。
以下、本発明を実施例にて具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例により限定されるものではない。配合割合は重量部とする。
実施例1
エポキシ樹脂1:フェノールビフェニルアラルキル型エポキシ樹脂(日本化薬(株)製、NC3000P、エポキシ当量274、軟化点58℃) 1.47重量部
エポキシ樹脂2:ビスフェノールA型結晶性エポキシ樹脂(ジャパンエポキシレジン(株)製、YL6810、エポキシ当量171、融点45℃) 3.41重量部
フェノール樹脂1:フェノールビフェニルアラルキル樹脂(明和化成(株)製、MEH−7851SS、水酸基当量203、軟化点65℃) 5.12重量部
トリフェニルホスフィン 0.15重量部
球状溶融シリカ(平均粒径30μm) 88.85重量部
ポリブタジエン1(25℃での粘度:350Pa・s、オキシラン酸素量:6.5%)
0.30重量部
Nフェニルγ−アミノプロピルトリメトキシシラン 0.20重量部
カルナバワックス 0.20重量部
カーボンブラック 0.30重量部
を、常温においてミキサーで混合し、70〜120℃で2本ロールにより混練し、冷却後粉砕してエポキシ樹脂組成物を得た。得られたエポキシ樹脂組成物を以下の方法で評価した。結果を表1に示す。
評価方法
スパイラルフロー:EMMI−1−66に準じたスパイラルフロー測定用の金型を用いて、金型温度175℃、注入圧力6.9MPa、硬化時間120秒で測定した。単位はcm。
MAP成形(未充填ボイド):トランスファー成形機を用いて、金型温度175℃、注入圧力6.9MPa、硬化時間90秒で、MAP−QFN(金属基板は銅フレームにニッケル−パラジウム−金メッキを施したもの、封入部分のサイズは45mm×62mm、厚み0.65mm、個片化した半導体装置(QFN−16L)サイズは4.0mm×4.0mm、半導体素子のサイズ1.5mm×1.5mm、厚み0.2mm パッシベーション種類はSiN)を成形し、未充填ボイドの個数をカウントする。
パッケージ反り量:MAP成形(未充填ボイド)の評価で成形したMAP−QFNの長手方向について、表面粗さ計を用いて高さ方向の変位を測定し、変位差の最も大きい値をパッケージ反り量とした。単位はμm。
耐半田クラック性:前記のMAP−QFNを成形し、175℃、4時間で後硬化した後に個片にカットして半導体装置(QFN−16L)サンプルを得た。各20個のサンプルを別々に60℃、相対湿度60%の環境下で120時間と85℃、相対湿度60%の環境下で168時間処理し、その後IRリフロ−(260℃)で10秒間処理した。超音波探傷装置を用いて観察し、各種界面剥離の有無を調べた。不良パッケージ(剥離が発生しているもの)の個数がn個であるとき、n/20と表示する。
実施例2〜12、比較例1〜9
表1及び表2の配合に従い、実施例1と同様にしてエポキシ樹脂組成物を製造し、実施例1と同様にして評価した。評価結果を表1及び表2に示す。実施例1以外で用いた成分について、以下に示す。
エポキシ樹脂3:ビフェニル型エポキシ樹脂(ジャパンエポキシレジン(株)製、YX4000K、軟化点105℃、エポキシ当量185)
フェノール樹脂2:フェノールアラルキル樹脂(三井化学(株)製,XLC−LL,軟化点75℃、水酸基当量175)
γ−グリシジルプロピルトリメトキシシラン
ポリブタジエン2〜6
ポリブタジエンのオキシラン酸素量、25℃の粘度については表3に示す。
本発明により得られる半導体封止用エポキシ樹脂を用いた半導体装置は反り量が小さく、耐半田クラック性に優れている。そのため、金属リードフレームの片面に半導体素子を搭載し、その搭載面側の実質的に片面のみを樹脂封止されたいわゆるエリア実装型半導体装置に対して、本発明により得られる半導体封止用エポキシ樹脂を適用することで、その信頼性を向上させることが可能である。

Claims (3)

  1. 金属基板の片面に半導体素子が搭載され、この半導体素子が搭載された搭載面側の実質的に片面のみの封止に用いるものであって、(A)一般式(1)で表されるエポキシ樹脂、(B)一般式(2)で表される結晶性エポキシ樹脂、(C)一般式(3)で表されるフェノール樹脂、(D)硬化促進剤、(E)全エポキシ樹脂組成物中に対し85〜95重量%の無機充填剤、(F)一般式(4)で表されるシランカップリング剤、及び(G)分子内にオキシラン構造を有するポリブタジエンを必須成分とするエリア実装型半導体封止用エポキシ樹脂組成物であって、分子内にオキシラン構造を有するポリブタジエンのオキシラン酸素量が3〜10%であり、分子内にオキシラン構造を有するポリブタジエンの配合量が全エポキシ樹脂組成物中に対し0.05〜1.5重量%であることを特徴とするエリア実装型半導体封止用エポキシ樹脂組成物。


    (R1、R2は水素又は炭素数1〜4のアルキル基で、互いに同一でも異なっていてもよい。aは0〜3の整数、bは0〜4の整数。nは平均値で、1〜5の正数)


    (Xは−R2CR2−で表される基で、R1は炭素数1〜6のアルキル基で同一でも異なってもよい。mは0〜4の整数。R2は水素又は炭素数1〜4アルキル基で同一でも異なっていてもよい。)


    (R1、R2は水素又は炭素数1〜4のアルキル基で、互いに同一でも異なっていてもよい。aは0〜3の整数、bは0〜4の整数。nは平均値で、1〜5の正数)


    (R3は炭素数1〜12の有機基。R4、R5、R6は炭素数1〜12の炭化水素基。nは1〜3の整数。)
  2. 分子内にオキシラン構造を有するポリブタジエンの25℃での粘度が20〜700Pa・sである請求項1記載の半導体封止用エポキシ樹脂組成物。
  3. 金属基板の片面に半導体素子が搭載され、この半導体素子が搭載された搭載面側の実質的に片面のみが請求項1又は2記載の半導体封止用エポキシ樹脂組成物を用いて封止されていることを特徴とするエリア実装型半導体装置。
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