JP4734983B2 - プリフォーム用基材およびその製造方法 - Google Patents
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Description
かかるRTM成形法では、強化繊維からなるプリフォームを成形型の中に配置して、液状のマトリックス樹脂を注入することにより強化繊維中にマトリックス樹脂を含浸させ、その後、加熱硬化して強化繊維プラスチックを得ることができる。
RTM法などの樹脂注入成形法に適用するプリフォームは従来、平面上の強化繊維が配列したシートを一枚一枚厚み方向に配置したシート積層体を最終製品形状に準ずる形をした賦形型の上に搬送、配置して作成していた。しかしながら該シート積層体を用いてプリフォームを作成する場合、該シート積層体のシート間は接合されていないことから、型への沿い性という点では優れるものの、賦形型への搬送中に該シートの配向角がずれたり、型に配置しているときにシートがすべり落ちたりするなど、作業性が悪いこと、信頼性の高い強化繊維プラスチックが得にくいことに問題があった。
そこで予め何らかの手段でシート積層体のシート間を接合したプリフォーム用基材を製造することが考えられる。先行する特許文献に現れる技術として、シート間がステッチ糸により接合されたプリフォーム用基材が提案されている(特許文献1)。該プリフォーム用基材はシート間がステッチ糸で接合一体化されていることから、搬送性、取り扱い性などの作業性に優れる。しかしながら、該プリフォーム用基材を賦形型に沿わせて変形、固定させる場合、緩やかな形状には適用可能であるが、例えば、直角に曲げる部分に沿わせる場合、ステッチ糸の締め付けが規制となり、曲げ部分で内側と外側の周長の差が生じ、内側のシートに皺が発生し、強化繊維プラスチックにした時に本来の強度を発現できないという問題があった。
(1)強化繊維が配列したシートを3枚以上厚み方向に配置し、シート間が部分的に接合されたプリフォーム用基材であって、前記強化繊維が配列したシートの少なくとも片面に、熱可塑性樹脂を含む樹脂材料が配置されているとともに、下記(a)、(b)の少なくとも一方の手段を用いてなることにより、各シート間の剥離強さが厚み方向に変化することを特徴とするプリフォーム用基材。
(a)温度の異なる熱媒体で上下から加熱し、厚み方向に温度勾配を持たせて、前記樹脂材料の軟化具合を調整する加熱手段
(b)圧子を用いた押圧時間を短くして、押圧力を多方向に分散させる押圧手段
(2)強化繊維が配列したシートを4枚以上厚み方向に配置し、シート間が部分的に接合されたプリフォーム用基材であって、前記強化繊維が配列したシートの少なくとも片面に、熱可塑性樹脂を含む樹脂材料が配置されているとともに、下記(a)、(b)の少なくとも一方の手段を用いてなることにより、各シート間の剥離強さが、中心部から少なくとも一方の片側表面に向かって増加または減少することを特徴とするプリフォーム用基材。
(a)温度の異なる熱媒体で上下から加熱し、厚み方向に温度勾配を持たせて、前記樹脂材料の軟化具合を調整する加熱手段
(b)圧子を用いた押圧時間を短くして、押圧力を多方向に分散させる押圧手段
(3)各シートに配置されている熱可塑性樹脂を含む樹脂材料の配置量が異なる、前記(1)または(2)に記載のプリフォーム用基材。
(4)各シート間の剥離強さが10〜700N/m2の範囲である、前記(1)〜(3)のいずれかに記載のプリフォーム用基材。
(5)前記強化繊維の少なくとも一部が炭素繊維である、前記(1)〜(4)のいずれかに記載のプリフォーム用基材。
(6)前記熱可塑性樹脂を含む樹脂材料の配置量が強化繊維に対して0.5〜20重量%の範囲である、前記(1)〜(5)のいずれかに記載のプリフォーム用基材。
(7)前記(1)〜(6)のいずれかに記載のプリフォーム用基材を型に沿わせて賦形したプリフォーム。
(8)少なくとも次の工程(A)〜(C)を順次経ることを特徴とするプリフォーム用基材の製造方法。
(A)強化繊維を配列したシートの少なくとも片側表面に、熱可塑性樹脂を含む樹脂材料を配置する接合機能材料配置工程。
(B)少なくとも前記(A)工程で、前記熱可塑性樹脂を含む樹脂材料を配置したシートを複数枚厚み方向に配置する配置工程。
(C)熱可塑性樹脂を含む樹脂材料を媒体として、下記(a)、(b)の少なくとも一方の工程を用いて、加熱された圧子を用いて加熱・加圧することにより、前記シート同士を厚み方向に部分的に接合する接合工程。
(a)温度の異なる熱媒体で上下から加熱し、厚み方向に温度勾配を持たせて、前記樹脂材料の軟化具合を調整する加熱工程
(b)圧子を用いた押圧時間を短くして、押圧力を多方向に分散させる押圧工程
(9)前記工程(A)において、熱可塑性樹脂を含む樹脂材料を、前記強化繊維を配列したシートに加熱して付着させる、前記(8)に記載のプリフォーム用基材の製造方法。
(10)前記工程(B)において、熱可塑性樹脂を含む樹脂材料の配置量が異なるシートを厚み方向に配置する、前記(8)または(9)のいずれかに記載のプリフォーム用基材の製造方法。
(1)剥離強さの変化を片側表面から厚み方向に減少または増加するようにすれば、剥離強さの強い側を内側にして図4の(a)のような賦形型9を用いてC型形状に賦形した場合、シート間の剥離強さが外側に向かって弱くなるため、外側のシート間の滑りが効率よく起こり、その結果皺のないプリフォームを得ることができる。ここでいう剥離強さの減少および増加の比率Raは、曲げ部分で皺を防止するようなすべりが発生するのであれば特に限定されるものではないが、周長の差が大きくなるほどシート間のすべりも量も大きくする必要があることから、以下の関係式を満たすことが好ましい。
これに限定されず、賦形の仕方や作業性に応じて、剥離強さの強い側を外側にしても良い。
(2)剥離強さの変化を両側表面からから中心部に向かって増加するようにすれば、両側とも曲げの内側になったり外側になったりする図4の(b)のようなZ型形状に好適であり、皺を防止するシート間のすべりを円滑に発生させることができる。
(3)剥離強さの変化を両側表面から中心部に向かって減少するようにすれば、外力を受けやすい両側表面のシートの剥離を予防することができ、取り扱い性に優れるプリフォーム用基材が得られる。
次に試験体の片側を十分な荷重を支持可能な構造体(引っ張り試験機用の治具など)にセットし、もう片側に重りをゆっくりと取り付け、シート間が剥がれたときの重さを読みとる。試験結果はシート間が剥離した時の重さ(kg)を剥離荷重とし、これを用いて以下の算出式から剥離強さを求め、各種水準の剥離強さの大小を比較・評価する。
(A)接合機能材料配置工程
強化繊維が配列したシート2上に少なくとも片面に、樹脂材料などの接合機能を有する材料3を配置する。適宜加熱して、接合機能を有する材料3をシート2に付着させれば、取り扱い性に優れるシートを得ることができる。
(B)配置工程
ツール板10上に接合機能を有する材料3が配置されたシート2を所定枚数配置し、積層体11を作る。剥離強さを厚み方向に変化させるために、所望の力学特性が得られる範囲で接合機能を有する材料3の配置量が異なるシート2を配置することができる。また、該配置工程でシートの間に接合機能を有する材料3を配置しても良く、例えば熱可塑性樹脂から糸状体で構成される網状体を配置すれば、マトリックス樹脂の含浸特性や力学特性を向上させることができる。また、ツール板は熱伝導率が高いこと、剛性が高く変形しにくいことから、鉄やアルミなどの金属性のものが好ましいが、FRP性のものでも良い。
(C)接合工程
前記(B)工程で作成した積層体のシート2同士を、接合機能を有する材料3を媒体として部分的に接合する。シート2同士を部分的に接合する手段として、レーザーによる溶着、超音波による溶着、ステッチ糸による接合、熱プレスによる溶着などが挙げられるが、なかでも加熱された圧子を用いて加熱、加圧をしてシート間を接合する熱プレスによる方法が、作成した成形品が高い力学特性を発現できる。以下に、熱プレスで、シート間を部分的に接合する例を示す。
(A)接合機能を有する材料を配置する工程では、ポリエーテルスルホンとエポキシ樹脂の配合割合が70:30の混合樹脂を粉砕した樹脂材料(Tg:70℃)の粉体を、シート2(長1000mm*幅300mm、厚み1mm)の表面に散布した後、過熱して付着させた。配置量は適宜調整し、樹脂の配置量が異なるシートを各種水準(水準1:5g/m2、水準2:10g/m2、水準3:15g/m2)準備した。
(B)配置工程において、ツール板10上に合計6枚(水準1の2枚から水準2の2枚、水準3の2枚の順)厚み方向に配置した。配置構成は90°ずれで、(0/90°/0°/90°/0°/90°)の構成となるように配置し、積層体11を作成した。
(C)接合工程において、まず、積層体11、圧子12、圧着用治具13、プレス機14を80℃の雰囲気下で40分間静置した。次に該積層体11に圧着用治具13を載せ、プレス機14により各圧子12の押圧が0.1MPa、接合ピッチが15mmとなるようにして熱プレスを5分間行い、プリフォーム用基材1を作成した。
(B)配置工程でツール板10上に合計6枚のシートを厚み方向に配置した。配置構成は90°ずれで、(0°/90°/0°/90°/0°/90°)の構成となるように配置し、積層体11を作成した。
(C)接合工程において、積層体11のツール面側を90℃、押圧側を70℃の熱媒体を用いて、積層体の厚み方向に温度勾配がでるように加熱し、圧着用治具13で熱プレスを5分間行い、プリフォーム用基材を作成した。該プリフォーム用基材からツール板側から2−3シート間と4−5シート間を剥がし、シート間の剥離強さ測定用の試験体を作成し、評価・比較したところ、σ内(ツール側)=100N/m2、σ中(中心部)=110N/m2、σ外(押圧側)=120N/m2であった。また該プリフォーム用基材から150mm角の大きさを切り出し、剥離強さの強い側(ツール側)を内側にして、賦形型9に配置・賦形してC型のプリフォームを作成したところ、皺のないプリフォームが得られた。また上記比率の関係式から増加比率RaとRlを求めたところ、いずれも上記条件{(σ内とσ中:Ra=10.0%、Rl=4.2%、Ra>Rl)、(σ内とσ外:Ra=20.0%、Rl=8.4%、Ra>Rl)}を満たしていた。
2 強化繊維が配列したシート
3 接合機能を有する材料
4 窪み
5 一方向織物基材
6 強化繊維
7 横糸
8 縦糸方向補助糸
9 賦形型
10 ツール板
11 積層体
12 圧子
13 圧着用治具
14 プレス機
Claims (10)
- 強化繊維が配列したシートを3枚以上厚み方向に配置し、シート間が部分的に接合されたプリフォーム用基材であって、前記強化繊維が配列したシートの少なくとも片面に、熱可塑性樹脂を含む樹脂材料が配置されているとともに、下記(a)、(b)の少なくとも一方の手段を用いてなることにより、各シート間の剥離強さが厚み方向に変化することを特徴とするプリフォーム用基材。
(a)温度の異なる熱媒体で上下から加熱し、厚み方向に温度勾配を持たせて、前記樹脂材料の軟化具合を調整する加熱手段
(b)圧子を用いた押圧時間を短くして、押圧力を多方向に分散させる押圧手段 - 強化繊維が配列したシートを4枚以上厚み方向に配置し、シート間が部分的に接合されたプリフォーム用基材であって、前記強化繊維が配列したシートの少なくとも片面に、熱可塑性樹脂を含む樹脂材料が配置されているとともに、下記(a)、(b)の少なくとも一方の手段を用いてなることにより、各シート間の剥離強さが、中心部から少なくとも一方の片側表面に向かって増加または減少することを特徴とするプリフォーム用基材。
(a)温度の異なる熱媒体で上下から加熱し、厚み方向に温度勾配を持たせて、前記樹脂材料の軟化具合を調整する加熱手段
(b)圧子を用いた押圧時間を短くして、押圧力を多方向に分散させる押圧手段 - 各シートに配置されている熱可塑性樹脂を含む樹脂材料の配置量が異なる、請求項1または2に記載のプリフォーム用基材。
- 各シート間の剥離強さが10〜700N/m2の範囲である、請求項1〜3のいずれかに記載のプリフォーム用基材。
- 前記強化繊維の少なくとも一部が炭素繊維である、請求項1〜4のいずれかに記載のプリフォーム用基材。
- 前記熱可塑性樹脂を含む樹脂材料の配置量が強化繊維に対して0.5〜20重量%の範囲である、請求項1〜5のいずれかに記載のプリフォーム用基材。
- 請求項1〜6のいずれかに記載のプリフォーム用基材を型に沿わせて賦形したプリフォーム。
- 少なくとも次の工程(A)〜(C)を順次経ることを特徴とするプリフォーム用基材の製造方法。
(A)強化繊維を配列したシートの少なくとも片側表面に、熱可塑性樹脂を含む樹脂材料を配置する接合機能材料配置工程。
(B)少なくとも前記(A)工程で、前記熱可塑性樹脂を含む樹脂材料を配置したシートを複数枚厚み方向に配置する配置工程。
(C)熱可塑性樹脂を含む樹脂材料を媒体として、下記(a)、(b)の少なくとも一方の工程を用いて、加熱された圧子を用いて加熱・加圧することにより、前記シート同士を厚み方向に部分的に接合する接合工程。
(a)温度の異なる熱媒体で上下から加熱し、厚み方向に温度勾配を持たせて、前記樹脂材料の軟化具合を調整する加熱工程
(b)圧子を用いた押圧時間を短くして、押圧力を多方向に分散させる押圧工程 - 前記工程(A)において、熱可塑性樹脂を含む樹脂材料を、前記強化繊維を配列したシートに加熱して付着させる、請求項8に記載のプリフォーム用基材の製造方法。
- 前記工程(B)において、熱可塑性樹脂を含む樹脂材料の配置量が異なるシートを厚み方向に配置する、請求項8または9のいずれかに記載のプリフォーム用基材の製造方法。
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