JP4731188B2 - 開口容易缶蓋 - Google Patents

Description

本発明は、全面開口タイプの開口容易缶蓋に関し、特に開蓋後のスコア線の破断端を安全にした開口容易缶蓋に関するものである。

従来から、果実缶詰、魚肉缶詰、牛肉缶詰、野菜缶詰等のような広い開口部を必要とする内容物を収容する缶詰において、缶蓋のパネル部の周辺に沿う環状のスコア線により開口片を規定し、開口片に固着したタブにより開口片を破断除去して内容物を取り出せるようにした、所謂全面開口（フルオープン）タイプの缶蓋というものが多く使用されている。

このような全面開口タイプの缶蓋において、缶蓋開口後に、開口片や巻締部側のスコア線の破断端によって、指などを負傷するのを防止するために、特許文献１や特許文献２に記載の発明のように、スコア線の破断端を覆う多層の折畳み部を形成したものがある。
特開平２−１８０１４８号公報 特表平２−５０２８１４号公報

しかしながら、特許文献１に記載の開口縁の安全な容器蓋では、開蓋後のスコア線の破断端を覆うように折畳み部をスコア線を越えて位置させているため、開蓋時に、スコア線の破断端と折畳み部または折畳み部同士が接触し、その結果、開蓋時に過剰な力が必要となり、開蓋性が悪いという問題がある。

また、特許文献２に記載の缶蓋では、折畳み部の先端は、スコア線を越えて位置していないが、その特許文献２に図示されているように、スコア線が設けられた面と折畳み部との隙間が、外側折畳み側で広く設定されているため、パネル部周辺での剛性が高くなく、開蓋性が良くないという問題があり、また、内側折畳み部側の隙間が狭く設定されているため、折畳み部の成形が難しく、また缶蓋の内面品質が悪くなるという問題がある。

この発明は上記の事情を背景としてなされたものであり、開口後のスコア線の破断端を保護できるとともに、開蓋性も良好な開口容易缶蓋を提供することを目的とするものである。

上記の目的を達成するために、請求項１の発明は、外周に缶胴固着用のフランジ部が一体成形されている略円板形状のパネル部と、前記パネル部の周辺近傍に形成された略円形状のスコア線によって区画された開口片と、前記開口片の周辺部近傍に固着された開口用タブとを備え、前記パネル部の周辺部には前記スコア線に対して半径方向外側に位置する外側重層部と前記スコア線に対して半径方向内側に位置する内側重層部とが形成されており、前記外側重層部は、前記フランジ部から半径方向内方に延びる環状の外側第一層と、前記外側第一層を前記スコア線近傍で折り返して半径方向外方に延びる環状の外側第二層と、前記外側第二層を折り返して半径方向内方に延びる環状の外側第三層とを有し、前記内側重層部は、前記スコア線から半径方向内方に延びる環状の内側第一層と、前記内側第一層を折り返して半径方向外方に延びる環状の内側第二層と、前記内側第二層を前記スコア線近傍で折り返して半径方向内方に延びる内側第三層とを有する開口容易缶蓋において、前記外側第一層と前記外側第二層との折返し部である外側保護部の先端が、前記スコア線に対して缶蓋外面側、かつ、前記スコア線と半径方向で同じまたはスコア線よりも外側に位置し、前記内側第二層と前記内側第三層との折返し部である内側保護部の先端が、前記スコア線に対して缶蓋内面側、かつ、前記スコア線と半径方向で同じまたはスコア線よりも内側に位置し、前記外側第二層と前記外側第三層との間の外側隙間部の開口幅よりも、前記内側第一層と前記内側第二層との間の内側隙間部の開口幅の方が広く、前記外側隙間部の開口幅は、０〜０．１ｍｍの範囲とされ、かつ前記内側隙間部の開口幅は、０．０５〜０．５ｍｍの範囲とされていることを特徴とするものである。

なお、請求項１の発明における略円形状のスコア線とは、パネル部の周辺近傍の全周に亘って連続して形成され、開口操作により缶蓋から完全に分離されるように形成されたものだけでなく、パネル部の少なくとも半分以上の範囲が開口するように、（１）部分的にスコア線が形成されていない部分を有したり、（２）他の部分に比べてスコア線の残厚の厚い部分を形成したりすることにより、開口時に開口片が缶蓋から完全に分離しないようにしたものも含むものである。

また、請求項２の発明は、請求項１の構成に加えて、前記外側保護部の先端とスコア線との半径方向での距離および前記内側保護部の先端とスコア線との半径方向での距離が、０〜１ｍｍであることを特徴とする開口容易缶蓋である。

さらに、請求項３の発明は、請求項１または２の構成に加えて、前記スコア線が、缶蓋の内面側からスコア金型を押し当てることにより形成されていることを特徴とする開口容易缶蓋である。

請求項１の発明によれば、開蓋時に、スコア線の破断端と保護部とが接触することがないため、開蓋性が良い。また、外側隙間部が相対的に狭いため、外側第二層と外側第三層との折返し部や外側保護部の変形量が大きくなり、外側重層部の加工硬化が大きくなることで、パネル部の周縁部の剛性が高まり、タブによる開蓋時に、スコア線に効果的に力が伝達し、開蓋性が向上する。さらに、内側隙間部が相対的に広いため、内側第一層と内側第二層との折返し部や内側保護部の変形量が小さくなり、内側重層部の成形時の内面被膜へのダメージを防止することができ、缶蓋内面の腐食を防止することができる。

また、請求項２の発明によれば、開蓋時にスコア線の破断端と保護部とが接触することがないため、開蓋性が良く、かつ、保護部からのスコア線の破断端の突出する長さを安全性を保てる範囲とすることができる。

さらに、請求項３の発明によれば、スコア線が、缶蓋の内面側からスコア金型を押し当てて形成されていることにより、スコア線成形後に、スコア線を塗料で補修する際に、缶蓋内面側は相対的に重層部の隙間部が缶蓋外面側よりも広くなっているため、容易かつ確実に塗料による補修を行うことができる。

また、スコア線を缶蓋外面側に形成した場合は、スコア成形時に缶蓋内面側もスコアアンビルの押し当てによって多少のダメージを受けるため、スコア線近傍の缶蓋外面側と缶蓋内面側の両方を塗料で補修しなければならないが、本発明では、スコア線を缶蓋内面側に形成したので、スコア線が形成された缶蓋内面側を補修すればよく、外面側は、多少のダメージがあっても、内容物と接触しないため補修しなくても良く、補修工程や補修塗料を少なくて済ませることができ、生産性を向上させることができる。

本発明の開口容易缶蓋１は、少なくともその内面２（缶詰内容物と接する面）に樹脂被膜（図示せず）を施した表面処理鋼板やアルミニウム合金板などの金属製薄板をプレス成形することにより、缶詰容器の上端壁となるパネル部３を成形した本体に対して、開口操作するための別体のタブ４を固着したものである。

そのパネル部３は、図１に示すように、缶蓋１の中央部側の大半占めるほぼ円板形状の部分であって、その外周部には、缶胴（図示せず）に対する固着部となるフランジ部５が一体に形成されている。また、パネル部３の外周側には、全周に亘ってほぼ円形状のスコア線６が形成されている。そのスコア線６は、図２および図３に示すように、内面２の外周側に形成されている。このスコア線６は、後述するように、破断箇所となる部分であり、したがってそのスコア線６の内周側の部分が開口片７となっている。

その開口片７の周辺部の所定箇所にタブ４が取り付けられている。このタブ４は、梃子の作用によってスコア線６の一部に破断を生じさせ、その後に開口片７を引き上げてスコア線６に沿う破断を進行させて開口片７を缶蓋１から取り外すためのものである。したがってタブ４の一端部側には、リング状の指掛け部８が形成され、これとは反対側の他端部は、スコア線６の近傍に延びて開口片７の上面に接触している。そして、このタブ４は、パネル部３に突出させられて形成されたリベット９によって開口片７に固着されている。この固着構造は、従来知られているものと同様であって、パネル部３の外周部の一部を有底円筒状に突出させてリベット９を形成し、そのリベット９にタブ４の中間部を嵌合させ、その状態でリベット９を軸線方向に押圧してかしめることにより、タブ４が開口片７に固着されている。

ここでスコア線６の断面形状について説明すると、スコア線６は図４に示すように、幅が広くかつ浅い台形形状の第１の凹部６ａと、その第１の凹部６ａの中央部分に形成された、先端の幅が狭く尖った台形形状の第２の凹部６ｂとから形成されている。このような形状としたのは、スコア線６の形成時における応力集中により、スコア線６の部分にくびれや損傷が生じることを防止するためである。

したがって、スコア線６を形成するための工具は、スコア線６の断面形状に倣った形状の先端部を有している。その例を図４に併せて示してあり、スコア線６を形成するためのスコア金型１０の先端部には、前述した第１の凹部６ａに対応する幅の広い台形形状の押圧部１０ａが形成され、その押圧部１０ａの幅方向での中央部に、前記第２の凹部６ｂに対応した先端の幅が狭く尖った台形形状の突起部１０ｂが形成されている。このスコア金型１０に対向して配置されるスコアアンビル１１は、スコア金型１０が缶蓋１を加圧する際の受け座となるものであって、缶蓋１の外面に接する先端部分が幅の広い台形形状に形成されている。したがって、スコア線６は、これらスコア金型１０とスコアアンビル１１とで缶蓋１を挟み込んで加圧することにより形成される。

上記のスコア線６は、樹脂被膜の形成されている缶蓋１の内面に形成されるから、その加工の際に樹脂被膜が破断する。そこで、スコア線６の部分で缶詰の内容物が金属に直接接触して腐食することを防止するために、スコア線６の部分に塗料を塗布して樹脂被膜の補修が施されている。このような塗料による被膜補修は、少なくともスコア線６が形成された缶蓋１の内面２側に施しておけばよい。

なお、上記のスコア線６は、全周に亘ってほぼ円形状に形成されているが、パネル部の少なくとも半分以上の範囲が開口するように、（１）部分的にスコア線が形成されていない部分を有したり、（２）他の部分に比べてスコア線の残厚の厚い部分を形成したりすることにより、開口時に開口片が缶蓋から完全に分離しないようにしてもよい。

さらに、開口初期操作におけるタブ４の引き上げを容易にするための補助スコア線１２が、パネル部３の表面に形成されている。すなわち、補助スコア線１２は、リベット９の周囲でかつリベット９より缶蓋１の中央側の周囲を円弧状に囲みかつその両端からタブ４の長手方向中心線と直交する方向へそれぞれ延びるような形状に形成されている。そして、この補助スコア線１２は、破断可能なように刻設されている。なお、図１に示す例では、タブ４の引き上げ時に破断されない副スコア線１３が、補助スコア線１２に沿って形成されている。この副スコア線１３は、補助スコア線１２の成形時に応力の集中による補助スコア線１２の部分のくびれや損傷が生じるのを防ぐためのものである。

また、パネル部３における開口片７には、パネル部３に剛性を付与するとともにタブ４の指掛け部８を掴みやすくする指掛け用凹部１４や、タブ４の下面に当接し、タブ４とパネル部３との間に隙間を設けるための突起部１５や、パネル部３に剛性を付与するためのリブ状の凹部１６などがそれぞれ形成されている。

本発明に係る缶蓋１は、更に、下記の特徴的構成を有している。すなわち、パネル部３の周辺部には、スコア線６に対して半径方向外側に位置する外側重層部１７と、スコア線６に対して半径方向内側に位置する内側重層部１８とが形成されている。外側重層部１７は、フランジ部５から半径方向内方に延びる環状の外側第一層１９と、外側第一層１９をスコア線６の近傍で下方に折り返して半径方向外方に延びる環状の外側第二層２０と、外側第二層２０を下方に折り返して半径方向内方に延びる環状の外側第三層２１とを有している。また、内側重層部１８は、スコア線６から半径方向内方に延びる環状の内側第一層２２と、内側第一層２２を下方に折り返して半径方向外方に延びる環状の内側第二層２３と、内側第二層２３をスコア線６近傍で下方に折り返して半径方向内方に延びる内側第三層２４とを有している。

外側重層部１７の外側第一層１９と外側第二層２０との外側折返し部は、スコア線６に対して半径方向で同等かそれよりも僅かに外方に位置し、かつ、スコア線６に対して上方に位置することで、スコア線６の破断端の外側保護部２５を形成している。また、内側重層部１８の内側第二層２３と内側第三層２４との内側折返し部は、スコア線６に対して半径方向で同等かそれよりも僅かに内方に位置し、かつ、スコア線６に対して下方に位置することで、スコア線６の破断端の内側保護部２６を形成している。

したがって、上記の構成を有する缶蓋１においては、外側保護部２５の先端と内側保護部２６の先端とが、スコア線６を越えて延びていないため、開蓋時に、保護部とそれに対向するスコア線６の破断端とが接触することがなく、その結果、開蓋時に大きな力が必要とならず、開蓋性が良好になる。また、スコア線６を塗料で補修する際に内側保護部２６によって塗装が妨げられることもなく、補修性が向上する。

特に、本実施例では、外側保護部２５の先端とスコア線６との距離及び内側保護部２６の先端とスコア線６との半径方向の距離をそれぞれ０〜１ｍｍとすることが好ましい。これにより、開蓋時に各保護部２５，２６とそれに対向するスコア線６の破断端とが接触することがないため、開蓋性が良好になるとともに、開蓋後の各保護部２５，２６からのスコア線６の破断端の突出する長さを安全性を保てる範囲とすることができる。

また、外側第二層２０と外側第三層２１との間の隙間である外側隙間部２７の開口幅（外側第二層２０の下面の略直線部の半径方向内端と外側第三層２１の上面との間の最短距離）は、０〜０．１ｍｍの範囲とし、内側第一層２２と内側第二層２３との間の隙間である内側隙間部２８の開口幅（内側第二層２３の上面の略直線部の半径方向外端と内側第一層２２の下面との間の最短距離）は、０．０５〜０．５ｍｍの範囲としており、外側隙間部２７より内側隙間部２８の方が隙間を広くしている。

これにより、外側隙間部２７が相対的に狭いため、外側第二層と外側第三層との折返し部や外側保護部の変形量が大きくなり、外側重層部の加工硬化が大きくなることで、パネル部３の周縁部の剛性が高まり、タブによる開蓋時に、スコア線６に効果的に力が伝達し、開蓋性が向上する。また、内側隙間部２８が相対的に広いため、内側第一層と内側第二層との折返し部や内側保護部の変形量が小さくなり、内側重層部１８の成形時の内面樹脂被膜へのダメージを抑制することができ、内容物による缶蓋１内面の腐食を防止することができる。

さらに、缶蓋１の内面２側からスコア金型１０を押し当てることによりスコア線６が形成されることに伴い、被膜の補修を缶蓋１の内面２側で行うことになるが、缶蓋１の内面２側における前記内周側隙間部２８が、缶蓋１の外面側における前記外側隙間部２７によりも相対的に広くなっているため、容易かつ確実に塗料によるスコア線６の補修を行うことができる。

また、スコア線６を缶蓋１の外面側に形成した場合は、スコア成形時に缶蓋１の内面２側もスコアアンビル１１の押し当てによって多少のダメージを受けるため、スコア線６の近傍の缶蓋１の外面側と缶蓋１の内面２側との両方を塗料で補修しなければならないが、本発明では、スコア線６を缶蓋１の内面２側に形成してあるから、スコア線６が形成された缶蓋１の内面２側のみを補修すれば、外面側は多少のダメージがあっても、内容物と接触しないため、補修しなくても良く、補修工程や補修塗料を少なくて済ませることができ、生産性が良好になる。

本発明に係る缶蓋の一例を示す正面図である。 その缶蓋の縦断側面図である。 その缶蓋の外周部の拡大断面図である。 そのスコア線の断面形状を示す断面図である。

符号の説明

１…缶蓋、 ３…パネル部、 ４…タブ、 ５…フランジ部、 ６…スコア線、 ７…開口片、 １０…スコア金型、 １７…外側重層部、 １８…内側重層部、 １９…外側第一層、 ２０…外側第二層、 ２１…外側第三層、 ２２…内側第一層、 ２３…内側第二層、 ２４…内側第三層、 ２５…外側保護部、 ２６…内側保護部。

Claims (3)

1. 外周に缶胴固着用のフランジ部が一体成形されている略円板形状のパネル部と、前記パネル部の周辺近傍に形成された略円形状のスコア線によって区画された開口片と、前記開口片の周辺部近傍に固着された開口用タブとを備え、前記パネル部の周辺部には前記スコア線に対して半径方向外側に位置する外側重層部と前記スコア線に対して半径方向内側に位置する内側重層部とが形成されており、前記外側重層部は、前記フランジ部から半径方向内方に延びる環状の外側第一層と、前記外側第一層を前記スコア線近傍で折り返して半径方向外方に延びる環状の外側第二層と、前記外側第二層を折り返して半径方向内方に延びる環状の外側第三層とを有し、前記内側重層部は、前記スコア線から半径方向内方に延びる環状の内側第一層と、前記内側第一層を折り返して半径方向外方に延びる環状の内側第二層と、前記内側第二層を前記スコア線近傍で折り返して半径方向内方に延びる内側第三層とを有する開口容易缶蓋において、
   前記外側第一層と前記外側第二層との折返し部である外側保護部の先端が、前記スコア線に対して缶蓋外側面、かつ、前記スコア線と半径方向で同じまたはスコア線よりも外側に位置し、前記内側第二層と前記内側第三層との折返し部である内側保護部の先端が、前記スコア線に対して缶蓋内面側、かつ、前記スコア線と半径方向で同じまたはスコア線よりも内側に位置し、
   前記外側第二層と前記外側第三層との間の外側隙間部の開口幅よりも、前記内側第一層と前記内側第二層との間の内側隙間部の開口幅の方が広く、
   前記外側隙間部の開口幅は、０〜０．１ｍｍの範囲とされ、かつ前記内側隙間部の開口幅は、０．０５〜０．５ｍｍの範囲とされている
   ことを特徴とする開口容易缶蓋。
   
2. 前記外側保護部の先端とスコア線との半径方向での距離および前記内側保護部の先端とスコア線との半径方向での距離が、０〜１ｍｍであることを特徴とする請求項１に記載の開口容易缶蓋。
3. 前記スコア線が、缶蓋の内面側からスコア金型を押し当てることにより形成されていることを特徴とする請求項１または２に記載の開口容易缶蓋。

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