JP4730329B2 - 動力出力装置およびその制御方法並びに車両 - Google Patents

動力出力装置およびその制御方法並びに車両 Download PDF

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Description

本発明は、動力出力装置およびその制御方法並びに車両に関する。
従来、この種の動力出力装置としては、発電機モータによりエンジンをクランキングしてエンジンの始動を試みてエンジン始動に失敗したときには、発電機モータによるクランキングの際のエンジンの回転数を大きくしてエンジンの再始動を試みるものが提案されている(例えば、特許文献1参照)。また、内燃機関の始動制御時に装置温度が低い低温環境下にあるときには、内燃機関をクランキングする電動機およびこの電動機の駆動用のインバータにその最大定格を超える電流を一時的に供給して内燃機関を強制的に回転駆動して始動するものも提案されている(例えば、特許文献2参照)。
特開2000−220557号公報 特開2005−143270号公報
外気の温度が低い冷間時では、二次電池は、その性能が低下し、二次電池の劣化を抑制するために放電してもよい最大電力である出力制限は小さくなる。一方、冷間時では、内燃機関は潤滑油の粘性が高くなることから内燃機関のフリクショントルクが大きくなり、内燃機関をクランキングするのに必要なトルクは大きくなる。これらの要因により、二次電池の出力制限の範囲内で内燃機関をクランキングして内燃機関を始動しようとすると、内燃機関の始動を失敗する場合が生じる。このとき、上述の背景技術に記載したように内燃機関のクランキングの際の回転数を大きくして再始動を試みようとしても、二次電池の出力制限のために大きな回転数で内燃機関をクランキングすることができない。また、電動機やインバータにその最大定格を超える電流を一時的に供給しようとしても二次電池の出力制限により最大定格を超える電流を供給することができない場合が生じる。こうした動力出力装置を搭載するハイブリッド自動車では、内燃機関を始動しないと二次電池を充電することもできないため、内燃機関の始動が強く望まれる。
本発明の動力出力装置およびその制御方法並びに車両は、冷間時に二次電池の出力制限の範囲内で内燃機関をクランキングして始動しようと試みたが始動に失敗したときでも内燃機関を始動することを目的とする。
本発明の動力出力装置およびその制御方法並びに車両は、上述の目的を達成するために以下の手段を採った。
本発明の動力出力装置は、
駆動軸に動力を出力する動力出力装置であって、
前記駆動軸への動力の出力に用いられる内燃機関と、
前記内燃機関のクランキングに用いる電動機と、
前記電動機に電力を供給する二次電池と、
前記二次電池の温度と前記二次電池の出力電圧とを含む前記二次電池の状態に基づいて該二次電池から放電可能な許容放電最大電力である出力制限を設定する出力制限設定手段と、
冷間時に前記内燃機関の始動指示がなされたとき、前記設定された出力制限の範囲内で前記電動機を駆動することにより前記内燃機関をクランキングして前記内燃機関を始動するよう前記内燃機関と前記電動機とを制御する通常時始動制御を実行し、該通常時始動制御を実行しても前記内燃機関を始動することができなかったときには前記設定された出力制限に拘わらずに前記電動機を駆動することにより前記内燃機関をクランキングして前記内燃機関を始動するよう前記内燃機関と前記電動機とを制御する始動制御手段と、
を備えることを要旨とする。
この本発明の動力出力装置では、冷間時に内燃機関の始動指示がなされたときには、まず、二次電池の出力制限の範囲内で電動機を駆動することにより内燃機関をクランキングして内燃機関を始動するよう内燃機関と電動機とを制御する。そして、こうした通常時始動制御を実行しても内燃機関を始動することができなかったときには、二次電池の出力制限に拘わらずに電動機を駆動することにより内燃機関をクランキングして内燃機関を始動するよう内燃機関と電動機とを制御する。このとき、二次電池からは出力制限を超える電力の放電が行なわれる結果、二次電池には多少の劣化が生じるものの、内燃機関を始動することができる。即ち、通常時始動制御を実行しても内燃機関を始動することができなかったときでも、より確実に内燃機関を始動することができる。
こうした本発明の動力出力装置において、前記出力制限設定手段は、前記二次電池の出力電圧が所定の下限電圧未満のときには前記出力電圧と前記所定の下限電圧との差が大きいほど小さくなる傾向に前記出力制限を設定する手段であるものとすることもできる。また、前記始動時制御手段は、前記通常時始動制御を実行しても前記内燃機関を始動することができなかったときには、再度のクランキングを開始する際に前記出力制限設定手段により設定された出力制限に基づいて設定される前記内燃機関を始動するのに必要なトルクを前記電動機から継続して出力することにより前記内燃機関をクランキングして前記内燃機関を始動するよう前記内燃機関と前記電動機とを制御する手段であるものとすることもできる。こうすれば、二次電池を必要以上に劣化させるのを抑制することができる。
また、本発明の動力出力装置において、前記駆動軸と前記内燃機関の出力軸と前記電動機の回転軸との3軸に接続され、該3軸のうちのいずれか2軸に入出力される動力に基づいて残余の軸に動力を入出力する3軸式動力入出力手段と、前記駆動軸に動力を入出力可能な第2の電動機と、を備えるものとすることもできる。
本発明の車両は、上述のいずれかの態様の本発明の動力出力装置、即ち、基本的には、駆動軸に動力を出力する動力出力装置であって、前記駆動軸への動力の出力に用いられる内燃機関と、前記内燃機関のクランキングに用いる電動機と、前記電動機に電力を供給する二次電池と、前記二次電池の温度と前記二次電池の出力電圧とを含む前記二次電池の状態に基づいて該二次電池から放電可能な許容放電最大電力である出力制限を設定する出力制限設定手段と、冷間時に前記内燃機関の始動指示がなされたとき、前記設定された出力制限の範囲内で前記電動機を駆動することにより前記内燃機関をクランキングして前記内燃機関を始動するよう前記内燃機関と前記電動機とを制御する通常時始動制御を実行し、該通常時始動制御を実行しても前記内燃機関を始動することができなかったときには前記設定された出力制限に拘わらずに前記電動機を駆動することにより前記内燃機関をクランキングして前記内燃機関を始動するよう前記内燃機関と前記電動機とを制御する始動制御手段と、を備える動力出力装置を搭載し、車軸が前記駆動軸に連結されてなることを要旨とする。
この本発明の車両では、上述のいずれかの態様の本発明の動力出力装置を搭載するから、本発明の動力出力装置の奏する効果、例えば、通常時始動制御を実行しても内燃機関を始動することができなかったときでもより確実に内燃機関を始動することができる効果などと同様な効果を奏することができる。
本発明の動力出力装置の制御方法は、
駆動軸への動力の出力に用いられる内燃機関と、前記内燃機関のクランキングに用いる電動機と、前記電動機に電力を供給する二次電池と、前記二次電池の温度と前記二次電池の出力電圧とを含む前記二次電池の状態に基づいて該二次電池から放電可能な許容放電最大電力である出力制限を設定する出力制限設定手段と、を備える動力出力装置の制御方法であって、
冷間時に前記内燃機関の始動指示がなされたときには、前記出力制限設定手段により設定された出力制限の範囲内で前記電動機を駆動することにより前記内燃機関をクランキングして前記内燃機関を始動するよう前記内燃機関と前記電動機とを制御する通常時始動制御を実行し、該通常時始動制御を実行しても前記内燃機関を始動することができなかったときには前記出力制限設定手段により設定された出力制限に拘わらずに前記電動機を駆動することにより前記内燃機関をクランキングして前記内燃機関を始動するよう前記内燃機関と前記電動機とを制御する、
ことを特徴とする。
この本発明の動力出力装置の制御方法では、冷間時に内燃機関の始動指示がなされたときには、まず、二次電池の出力制限の範囲内で電動機を駆動することにより内燃機関をクランキングして内燃機関を始動するよう内燃機関と電動機とを制御する。そして、こうした通常時始動制御を実行しても内燃機関を始動することができなかったときには、二次電池の出力制限に拘わらずに電動機を駆動することにより内燃機関をクランキングして内燃機関を始動するよう内燃機関と電動機とを制御する。このとき、二次電池からは出力制限を超える電力の放電が行なわれる結果、二次電池には多少の劣化が生じるものの、内燃機関を始動することができる。即ち、通常時始動制御を実行しても内燃機関を始動することができなかったときでも、より確実に内燃機関を始動することができる。
次に、本発明を実施するための最良の形態を実施例を用いて説明する。
図1は、本発明の一実施例である動力出力装置を搭載したハイブリッド自動車20の構成の概略を示す構成図である。実施例のハイブリッド自動車20は、図示するように、エンジン22と、エンジン22の出力軸としてのクランクシャフト26にダンパ28を介して接続された3軸式の動力分配統合機構30と、動力分配統合機構30に接続された発電可能なモータMG1と、動力分配統合機構30に接続された駆動軸としてのリングギヤ軸32aに取り付けられた減速ギヤ35と、この減速ギヤ35に接続されたモータMG2と、動力出力装置全体をコントロールするハイブリッド用電子制御ユニット70とを備える。
エンジン22は、例えばガソリンまたは軽油などの炭化水素系の燃料により動力を出力可能な内燃機関として構成されており、図2に示すように、エアクリーナ122により清浄された空気をスロットルバルブ124を介して吸入すると共に燃料噴射弁126からガソリンを噴射して吸入された空気とガソリンとを混合し、この混合気を吸気バルブ128を介して燃料室に吸入し、点火プラグ130による電気火花によって爆発燃焼させて、そのエネルギにより押し下げられるピストン132の往復運動をクランクシャフト26の回転運動に変換する。エンジン22からの排気は、一酸化炭素(CO)や炭化水素(HC),窒素酸化物(NOx)の有害成分を浄化する浄化装置(三元触媒)134を介して外気へ排出される。
エンジン22は、エンジン用電子制御ユニット(以下、エンジンECUという)24により制御されている。エンジンECU24は、CPU24aを中心とするマイクロプロセッサとして構成されており、CPU24aの他に処理プログラムを記憶するROM24bと、データを一時的に記憶するRAM24cと、図示しない入出力ポートおよび通信ポートとを備える。エンジンECU24には、エンジン22の状態を検出する種々のセンサからの信号、クランクシャフト26の回転位置を検出するクランクポジションセンサ140からのクランクポジションやエンジン22の冷却水の温度を検出する水温センサ142からの冷却水温,燃焼室内に取り付けられた圧力センサ143からの筒内圧力Pin,燃焼室へ吸排気を行なう吸気バルブ128や排気バルブを開閉するカムシャフトの回転位置を検出するカムポジションセンサ144からのカムポジション,スロットルバルブ124のポジションを検出するスロットルバルブポジションセンサ146からのスロットルポジション,吸気管に取り付けられたエアフローメータ148からのエアフローメータ信号AF,同じく吸気管に取り付けられた温度センサ149からの吸気温,空燃比センサ135aからの空燃比AF,酸素センサ135bからの酸素信号などが入力ポートを介して入力されている。また、エンジンECU24からは、エンジン22を駆動するための種々の制御信号、例えば、燃料噴射弁126への駆動信号や、スロットルバルブ124のポジションを調節するスロットルモータ136への駆動信号、イグナイタと一体化されたイグニッションコイル138への制御信号、吸気バルブ128の開閉タイミングの変更可能な可変バルブタイミング機構150への制御信号などが出力ポートを介して出力されている。なお、エンジンECU24は、ハイブリッド用電子制御ユニット70と通信しており、ハイブリッド用電子制御ユニット70からの制御信号によりエンジン22を運転制御すると共に必要に応じてエンジン22の運転状態に関するデータを出力する。なお、エンジンECU24は、クランクポジションセンサ140からのクランクポジションに基づいてクランクシャフト26の回転数、即ちエンジン22の回転数Neも演算している。
動力分配統合機構30は、外歯歯車のサンギヤ31と、このサンギヤ31と同心円上に配置された内歯歯車のリングギヤ32と、サンギヤ31に噛合すると共にリングギヤ32に噛合する複数のピニオンギヤ33と、複数のピニオンギヤ33を自転かつ公転自在に保持するキャリア34とを備え、サンギヤ31とリングギヤ32とキャリア34とを回転要素として差動作用を行なう遊星歯車機構として構成されている。動力分配統合機構30は、キャリア34にはエンジン22のクランクシャフト26が、サンギヤ31にはモータMG1が、リングギヤ32にはリングギヤ軸32aを介して減速ギヤ35がそれぞれ連結されており、モータMG1が発電機として機能するときにはキャリア34から入力されるエンジン22からの動力をサンギヤ31側とリングギヤ32側にそのギヤ比に応じて分配し、モータMG1が電動機として機能するときにはキャリア34から入力されるエンジン22からの動力とサンギヤ31から入力されるモータMG1からの動力を統合してリングギヤ32側に出力する。リングギヤ32に出力された動力は、リングギヤ軸32aからギヤ機構60およびデファレンシャルギヤ62を介して、最終的には車両の駆動輪63a,63bに出力される。
モータMG1およびモータMG2は、いずれも発電機として駆動することができると共に電動機として駆動できる周知の同期発電電動機として構成されており、インバータ41,42を介してバッテリ50と電力のやりとりを行なう。インバータ41,42とバッテリ50とを接続する電力ライン54は、各インバータ41,42が共用する正極母線および負極母線として構成されており、モータMG1,MG2のいずれかで発電される電力を他のモータで消費することができるようになっている。したがって、バッテリ50は、モータMG1,MG2のいずれかから生じた電力や不足する電力により充放電されることになる。なお、モータMG1,MG2により電力収支のバランスをとるものとすれば、バッテリ50は充放電されない。モータMG1,MG2は、いずれもモータ用電子制御ユニット(以下、モータECUという)40により駆動制御されている。モータECU40には、モータMG1,MG2を駆動制御するために必要な信号、例えばモータMG1,MG2の回転子の回転位置を検出する回転位置検出センサ43,44からの信号や図示しない電流センサにより検出されるモータMG1,MG2に印加される相電流などが入力されており、モータECU40からは、インバータ41,42へのスイッチング制御信号が出力されている。モータECU40は、ハイブリッド用電子制御ユニット70と通信しており、ハイブリッド用電子制御ユニット70からの制御信号によってモータMG1,MG2を駆動制御すると共に必要に応じてモータMG1,MG2の運転状態に関するデータをハイブリッド用電子制御ユニット70に出力する。なお、モータECU40は、回転位置検出センサ43,44からの信号に基づいてモータMG1,MG2の回転数Nm1,Nm2も演算している。
バッテリ50は、例えば、リチウムイオン二次電池として構成されており、バッテリ用電子制御ユニット(以下、バッテリECUという)52によって管理されている。バッテリECU52には、バッテリ50を管理するのに必要な信号、例えば、バッテリ50の端子間に設置された電圧センサ51aからのバッテリ電圧Vb,バッテリ50の出力端子に接続された電力ライン54に取り付けられた電流センサ51bからの充放電電流Ib,バッテリ50に取り付けられた温度センサ51cからの電池温度Tbなどが入力されており、必要に応じてバッテリ50の状態に関するデータを通信によりハイブリッド用電子制御ユニット70に出力する。また、バッテリECU52は、バッテリ50を管理するために電流センサ51bにより検出された充放電電流Ibの積算値に基づいて残容量(SOC)を演算したり、演算した残容量(SOC)と電池温度Tbとに基づいてバッテリ50を充放電してもよい最大許容電力である入出力制限Win,Woutを演算している。なお、バッテリ50の入出力制限Win,Woutは、電池温度Tbに基づいて入出力制限Win,Woutの基本値を設定し、バッテリ50の残容量(SOC)に基づいて出力制限用補正係数と入力制限用補正係数とを設定し、設定した入出力制限Win,Woutの基本値に補正係数を乗じることにより設定することができる。図3に電池温度Tbと入出力制限Win,Woutとの関係の一例を示し、図4にバッテリ50の残容量(SOC)と入出力制限Win,Woutの補正係数との関係の一例を示す。
ハイブリッド用電子制御ユニット70は、CPU72を中心とするマイクロプロセッサとして構成されており、CPU72の他に処理プログラムを記憶するROM74と、データを一時的に記憶するRAM76と、図示しない入出力ポートおよび通信ポートとを備える。ハイブリッド用電子制御ユニット70には、イグニッションスイッチ80からのイグニッション信号,シフトレバー81の操作位置を検出するシフトポジションセンサ82からのシフトポジションSP,アクセルペダル83の踏み込み量を検出するアクセルペダルポジションセンサ84からのアクセル開度Acc,ブレーキペダル85の踏み込み量を検出するブレーキペダルポジションセンサ86からのブレーキペダルポジションBP,車速センサ88からの車速V,車両のフロントグリル近傍に取り付けられた外気温センサ89からの外気温Toutなどが入力ポートを介して入力されている。ハイブリッド用電子制御ユニット70は、前述したように、エンジンECU24やモータECU40,バッテリECU52と通信ポートを介して接続されており、エンジンECU24やモータECU40,バッテリECU52と各種制御信号やデータのやりとりを行なっている。
こうして構成された実施例のハイブリッド自動車20は、運転者によるアクセルペダル83の踏み込み量に対応するアクセル開度Accと車速Vとに基づいて駆動軸としてのリングギヤ軸32aに出力すべき要求トルクを計算し、この要求トルクに対応する要求動力がリングギヤ軸32aに出力されるように、エンジン22とモータMG1とモータMG2とが運転制御される。エンジン22とモータMG1とモータMG2の運転制御としては、要求動力に見合う動力がエンジン22から出力されるようにエンジン22を運転制御すると共にエンジン22から出力される動力のすべてが動力分配統合機構30とモータMG1とモータMG2とによってトルク変換されてリングギヤ軸32aに出力されるようモータMG1およびモータMG2を駆動制御するトルク変換運転モードや要求動力とバッテリ50の充放電に必要な電力との和に見合う動力がエンジン22から出力されるようにエンジン22を運転制御すると共にバッテリ50の充放電を伴ってエンジン22から出力される動力の全部またはその一部が動力分配統合機構30とモータMG1とモータMG2とによるトルク変換を伴って要求動力がリングギヤ軸32aに出力されるようモータMG1およびモータMG2を駆動制御する充放電運転モード、エンジン22の運転を停止してモータMG2からの要求動力に見合う動力をリングギヤ軸32aに出力するよう運転制御するモータ運転モードなどがある。
次に、こうして構成された実施例のハイブリッド自動車20の動作、特に外気温Toutが所定温度(例えば、−15℃や−20℃など)以下の冷間時にシステム起動してエンジン22を始動する際の動作について説明する。図5は冷間時のシステム起動後に初めてエンジン22を始動する際にハイブリッド用電子制御ユニット70により実行される冷間時始動制御ルーチンの一例を示すフローチャートである。
冷間時始動制御ルーチンが実行されると、ハイブリッド用電子制御ユニット70のCPU72は、まず、エンジン22の回転数Ne,モータMG1の回転数Nm1,バッテリ電圧Vb,バッテリ50の出力制限Woutなど制御に必要なデータを入力する処理を実行する(ステップS100)。ここで、エンジン22の回転数Neはクランクポジションセンサ140からの信号に基づいて演算されたものをエンジンECU24から通信により入力するものとした。また、モータMG1の回転数Nm1は、回転位置検出センサ43により検出されたモータMG1の回転子の回転位置に基づいて演算されたものをモータECU40から通信により入力するものとした。さらに、バッテリ電圧Vbは、電圧センサ51aにより検出されたものをバッテリECU52から通信により入力するものとした。また、バッテリ50の入出力制限Win,Woutは、バッテリ50の電池温度Tbとバッテリ50の残容量(SOC)とに基づいて設定されたものをバッテリECU52から通信により入力するものとした。
こうしてデータを入力すると、入力したバッテリ電圧Vbをバッテリ50に予め設定された下限電圧Vminと比較する(ステップS110)。ここで、下限電圧Vminは、バッテリ50がその機能を定格通りに発揮できる電圧範囲の下限であると共にこの電圧以下になるとバッテリ50の劣化が生じやすくなる電圧範囲の上限として設定されるものである。バッテリ電圧Vbが下限電圧Vmin未満のときには、バッテリ50の劣化を抑制するために、バッテリ電圧Vbが下限電圧Vminに近づくように次式(1)を用いて出力制限Woutの電圧補正を行なう(ステップS120)。式(1)は、フィードバック制御における関係式であり、式(1)中、kb1は比例項のゲインであり、kb2は積分項のゲインである。なお、バッテリ電圧Vbが下限電圧Vmin以上のときには、出力制限Woutの電圧補正は行なわれない。
Wout←Wout-kb1(Vmin-Vb)+kb2∫(Vmin-Vb)dt (1)
続いて、エンジン22の始動時のトルクマップとエンジン22の始動開始からの経過時間tとに基づいてモータMG1から出力すべきトルクとして仮トルクTm1tmpを設定する。(ステップS130)。エンジン22の始動時にモータMG1から出力すべきトルクを設定する際のトルクマップの一例とエンジン22の回転数Neの変化の様子の一例とを図6に示す。実施例のトルクマップは、エンジン22の始動指示がなされた時間T1の直後からレート処理を用いて比較的大きなトルクが設定されてエンジン22の回転数Neを迅速に増加させる。エンジン22の回転数Neが共振回転数帯を通過したか共振回転数帯を通過するのに必要な時間以降の時間T2にエンジン22を安定して回転数N1以上でモータリングすることができるトルクを設定し、電力消費や駆動軸としてのリングギヤ軸32aにおける反力を小さくする。そして、エンジン22の回転数Neが回転数N1に至った時間T3からレート処理を用いてトルクを値0とし、エンジン22の完爆が判定された時間T5から発電用のトルクを設定する。ここで、回転数N1は、通常温度のときにエンジン22を始動する際にエンジン22の燃料噴射制御や点火制御を開始する回転数であり、例えば800prmや1000rpmなどを用いることができる。いま、冷間時を考えており、冷間時にはエンジン22の潤滑油の粘性が高いためにエンジン22のクランキング(モータリング)の際のフリクショントルクが大きくなることや冷間時にはバッテリ50の出力制限Woutが制限されることから、共振による振動が生じてもエンジン22を迅速に始動することが望まれるから、エンジン22の燃料噴射制御や点火制御を開始する回転数としてエンジン22を始動可能な最低の回転数である始動最低回転数Nrefが用いられる。この始動最低回転数Nrefは、例えば200rpmや300rpmなどを用いることができる。したがって、冷間時でもバッテリ50からの放電電力が十分なときには、モータMG1によるクランキングによりエンジン22の回転数Neが始動最低回転数Nrefに至ったときに燃料噴射制御や点火制御が開始されるから、通常温度のときに比して迅速にエンジン22を始動することができる。
こうしてモータMG1の仮トルクTm1tmpを設定すると、バッテリ50の出力制限WoutをモータMG1の回転数Nm1で除してモータMG1から出力してもよいトルクの上限としてのトルク制限Tm1maxを計算し(ステップS140)、設定した仮トルクTm1tmpと計算したトルク制限Tm1maxのうち小さい方をモータMG1のトルク指令Tm1*として設定し(ステップS150)、設定したトルク指令Tm1*をモータECU40に送信する(ステップS160)。このように、図6に示すトルクマップにより仮トルクTm1tmpは設定されるが、仮トルクTm1tmpはバッテリ50の出力制限Woutから計算されるトルク制限Tm1maxによって制限されてトルク指令Tm1*が設定されるから、トルク指令Tm1*はバッテリ電圧Vbの降下により電圧補正がなされているときには小さな値となる。トルク指令Tm1*を受信したモータECU40は、トルク指令Tm1*でモータMG1が駆動されるようインバータ41のスイッチング素子のスイッチング制御を行なう。このとき、動力分配統合機構30からリングギヤ軸32aにはモータMG1のトルク出力によりトルクが出力されるが、シフトレバー81が駐車ポジションのときにはパーキングロックによりそのトルクは駆動輪63a,63bには伝達されず、シフトレバー81がニュートラルポジションのときには動力分配統合機構30のギヤ比ρ(サンギヤの歯数/リングギヤの歯数)を用いて−Tm1*/ρとして計算されるトルクがリングギヤ軸32aに作用してもリングギヤ軸32aが回転しないようモータMG2を電磁ロックすることによりトルクは駆動輪63a,63bには伝達されない。実施例では、シフトレバー81がニュートラルポジションのときのモータMG2の制御については本発明の中核をなさないため、その説明は省略した。
こうしたステップS100〜S160の処理を予め設定された始動予定時間が経過するかエンジン22の回転数Neが始動最低回転数Nref以上となるかのいずれかが成立するまで繰り返す。こうした繰り返し処理により、モータMG1からのトルク出力によってバッテリ50のバッテリ電圧Vbが降下して下限電圧Vminを下回る場合がある。このとき、上述したように、電池温度Tbと残容量(SOC)とにより設定されたバッテリ50の出力制限Woutは電圧補正が行なわれ、電圧補正が行なわれた出力制限Woutの範囲内でモータMG1によるエンジン22のクランキングが行なわれる。ここで、始動予定時間は、エンジン22の始動を行なうことができないのにモータMG1によるエンジン22のクランキングやモータリングを長時間行なわないようにするために、通常の始動を行なえばエンジン22を始動することができる時間より若干長い時間として設定されており、例えば、3秒や4秒などを用いることができる。
エンジン22の始動を開始してから始動予定時間を経過する前にエンジン22の回転数Neが始動最低回転数Nref以上に至ると、燃料噴射制御や点火制御を開始する制御信号をエンジンECU24に送信して燃料噴射と点火を開始し(ステップS190)、始動予定時間を経過する前に完爆するのを確認して(ステップS200,S210)、冷間時始動制御ルーチンを終了する。
バッテリ50の出力制限Woutの電圧補正などによりモータMG1から十分なトルクを出力することができないために、エンジン22の始動を開始してから始動予定時間が経過するまでにエンジン22の回転数Neが始動最低回転数Nref以上に至らない場合も生じる。この場合のモータMG1の出力トルクTm1とエンジン22の回転数Neの時間変化の一例を図7に示す。この場合、一旦、モータMG1の駆動を停止して(ステップS220)、所定時間(例えば、2秒や3秒)が経過するのを待って(ステップS230)、再び、エンジン22の始動を試みる。エンジン22の再始動の試みは、まず、バッテリ50の出力制限Woutを入力し(ステップS240)、出力制限Woutに基づいて冷間時でもエンジン22を始動最低回転数Nref以上で回転させるのに必要なトルクより大きなトルクをトルク制限Tm1maxとして設定する(ステップS250)。このとき、トルク制限Tm1maxは、出力制限Woutが大きいほど大きな値に設定される。実施例では、出力制限Woutとトルク制限Tm1maxとの関係を予め設定してトルク制限設定用マップとしてROM74に記憶しておき、出力制限Woutが与えられるとマップから対応するトルクを導出してトルク制限Tm1maxを設定するものとした。トルク制限設定用マップの一例を図8に示す。
続いて、図6のトルクマップを用いてエンジン22の再始動を開始してからの経過時間tに基づいてモータMG1から出力すべきトルクとして仮トルクTm1tmpを設定すると共に(ステップS260)、設定した仮トルクTm1tmpと設定したトルク制限Tm1maxのうち小さい方をモータMG1のトルク指令Tm1*として設定し(ステップS270)、設定したトルク指令Tm1*をモータECU40に送信する(ステップS280)。そして、エンジン22の回転数Neを入力し(ステップS290)、入力した回転数Neが始動最低回転数Nrefに至ったかを判定し(ステップS300)、回転数Neが始動最低回転数Nrefに至っていないときには、ステップS260のモータMG1の仮トルクTm1tmpを設定する処理に戻り、エンジン22の回転数Neが始動最低回転数Nrefに至るまでステップS260〜S300の処理を繰り返す。このとき、モータMG1からのトルク出力によってバッテリ50のバッテリ電圧Vbが降下して下限電圧Vminを下回る場合も生じるが、モータMG1からの出力トルクはエンジン22の再始動では再始動を開始する際における電池温度Tbと残容量(SOC)とにより設定されたバッテリ50の出力制限Woutに基づいて設定されたトルク制限Tm1maxによって制限されるだけで、バッテリ電圧Vbの降下によっては制限されないから、エンジン22の回転数Neは始動最低回転数Nrefに至るようになる。このように、モータMG1からの出力トルクをバッテリ電圧Vbの降下によって制限しないために、バッテリ電圧Vbが下限電圧Vmin未満となる状態が継続し、バッテリ50の劣化が生じることもあり得るが、エンジン22の回転数Neを始動最低回転数Nrefに至らせるまでの短時間であるから、劣化の程度は小さいものとなる。
そして、エンジン22の回転数Neが始動最低回転数Nrefに至ると、燃料噴射制御や点火制御を開始する制御信号をエンジンECU24に送信して燃料噴射と点火を開始し(ステップS310)、完爆を確認して(ステップS320)、冷間時始動制御ルーチンを終了する。エンジン22を再始動する際のモータMG1の出力トルクTm1とエンジン22の回転数Neの時間変化の一例を図9に示す。図示するように、エンジン22の回転数Neが始動最低回転数Nrefに至ったときに燃料噴射と点火が開始されることにより、エンジン22が始動される。
なお、ステップS100〜S180の処理を繰り返している最中にエンジン22の回転数Neが始動最低回転数Nrefに至って燃料噴射や点火を開始したものの、完爆に至る前に始動予定時間を経過したときにも、ステップS220〜S320のエンジン22の再始動が行なわれる。
以上説明した実施例のハイブリッド自動車20によれば、冷間時にバッテリ50の出力制限Woutの電圧補正などによりモータMG1から十分なトルクを出力することができないためにエンジン22の始動を開始してから始動予定時間が経過するまでにエンジン22の回転数Neが始動最低回転数Nref以上に至らなかった場合には、そのときのバッテリ50の出力制限Woutに基づいて冷間時でもエンジン22を始動最低回転数Nref以上で回転させるのに必要なトルクより大きなトルクとして設定されたトルク制限Tm1maxによって制限したトルクをモータMG1から出力することにより、バッテリ電圧Vbが下限電圧Vmin未満になることにも拘わらず、エンジン22をクランキングしてエンジン22を始動するから、冷間時にエンジン22をより確実に始動することができる。即ち、冷間時にエンジン22の始動に失敗してもエンジン22を始動することができるのである。これにより、エンジン22からの動力を用いてバッテリ50を充電することができるる。
実施例のハイブリッド自動車20では、バッテリ50の出力制限Woutの電圧補正などによりエンジン22を始動できなかったときには、そのときのバッテリ50の出力制限Woutに基づいて冷間時でもエンジン22を始動最低回転数Nref以上で回転させるのに必要なトルクより大きなトルクとしてトルク制限Tm1maxを設定し、エンジン22の始動時のトルクマップから導出される仮トルクTm1tmpを設定したトルク制限Tm1maxで制限してモータMG1のトルク指令Tm1*を設定してエンジン22をクランキングするものとしたが、バッテリ50の出力制限Woutの電圧補正などによりエンジン22を始動できなかったときには、そのときのバッテリ50の出力制限Woutに拘わらずに冷間時でもエンジン22を始動最低回転数Nref以上で回転させるのに必要なトルクより大きな所定トルクをトルク制限Tm1maxに設定し、エンジン22の始動時のトルクマップから導出される仮トルクTm1tmpを設定したトルク制限Tm1maxで制限してモータMG1のトルク指令Tm1*を設定してエンジン22をクランキングするものとしてもよいし、バッテリ50の出力制限Woutの電圧補正などによりエンジン22を始動できなかったときには、そのときのバッテリ50の出力制限Woutに拘わらずに、エンジン22を始動最低回転数Nref以上で回転させるのに必要なトルクより大きなトルクを直接モータMG1のトルク指令Tm1*として設定してエンジン22をクランキングするものとしてもよい。
実施例のハイブリッド自動車20では、冷間時にエンジン22を始動するときに、バッテリ電圧Vbが下限電圧Vmin未満のときにはバッテリ電圧Vbが下限電圧Vminとなるようバッテリ50の出力制限Woutをフィードバック制御により電圧補正するものとしたが、こうした出力制限Woutのフィードバック制御による電圧補正とは異なる電圧補正、例えば、バッテリ電圧Vbが下限電圧Vmin未満のときには所定電力ΔWだけバッテリ50の出力制限Woutを小さくする電圧補正などを行なうものとしてもよい。また、こうしたバッテリ50の出力制限Woutの電圧補正を行なわないものとしても構わない。
実施例のハイブリッド自動車20では、冷間時にエンジン22を始動するときには、エンジン22の回転数Neが始動最低回転数Nrefに至ったときに燃料噴射制御や点火制御を開始するものとしたが、エンジン22の回転数Neが始動最低回転数Nrefより若干大きな回転数に至ったときに燃料噴射制御や点火制御を開始するものとしてもよい。
実施例のハイブリッド自動車20では、減速ギヤ35を介して駆動軸としてのリングギヤ軸32aにモータMG2を取り付けるものとしたが、リングギヤ軸32aにモータMG2を直接取り付けるものとしてもよいし、減速ギヤ35に代えて2段変速や3段変速,4段変速などの変速機を介してリングギヤ軸32aにモータMG2を取り付けるものとしても構わない。
実施例のハイブリッド自動車20では、モータMG2の動力を減速ギヤ35により変速してリングギヤ軸32aに出力するものとしたが、図10の変形例のハイブリッド自動車120に例示するように、モータMG2の動力をリングギヤ軸32aが接続された車軸(駆動輪63a,63bが接続された車軸)とは異なる車軸(図10における車輪64a,64bに接続された車軸)に接続するものとしてもよい。
実施例のハイブリッド自動車20では、エンジン22の動力を動力分配統合機構30を介して駆動輪63a,63bに接続された駆動軸としてのリングギヤ軸32aに出力するものとしたが、図11の変形例のハイブリッド自動車220に例示するように、エンジン22のクランクシャフト26に接続されたインナーロータ232と駆動輪63a,63bに動力を出力する駆動軸に接続されたアウターロータ234とを有し、エンジン22の動力の一部を駆動軸に伝達すると共に残余の動力を電力に変換する対ロータ電動機230を備えるものとしてもよい。
実施例では、ハイブリッド自動車20として構成したが、エンジンと、エンジンをクランキング可能な電動機と、電動機に電力を供給する二次電池とを備える自動車であれば上述の冷間時始動制御を適用することができるから、如何なる自動車であっても構わない。また、こうした自動車に適用するものに限定されるものではなく、自動車以外の車両や船舶,航空機などの移動体に搭載される動力出力装置の形態や建設設備などの移動しない設備に組み込まれた動力出力装置の形態としても構わない。さらに、こうした動力出力装置の制御方法の形態としてもよい。
ここで、実施例の主要な要素と課題を解決するための手段の欄に記載した発明の主要な要素との対応関係について説明する。実施例では、エンジン22が「内燃機関」に相当し、モータMG1が「電動機」に相当し、バッテリ50が「二次電池」に相当し、電流センサ51bにより検出された充放電電流Ibの積算値に基づくバッテリ50の残容量(SOC)とバッテリ50の電池温度Tbとに基づいてバッテリ50を充放電してもよい最大許容電力である入出力制限Win,Woutを演算するバッテリECU52とバッテリ電圧Vbに基づいて出力制限Woutを電圧補正するハイブリッド用電子制御ユニット70とが「出力制限設定手段」に相当し、冷間時にエンジン22を始動する際に、電圧補正された範囲内でモータMG1によりエンジン22をクランキングするようモータMG1のトルク指令Tm1*を設定してモータECU40に送信すると共にエンジンECU24に燃料噴射制御や点火制御を開始する制御信号を送信する図5のステップS100〜S210の始動制御を実行し、こうした始動制御ではエンジン22を始動することができないときには、そのときのバッテリ50の出力制限Woutに基づいて冷間時でもエンジン22を始動最低回転数Nref以上で回転させるのに必要なトルクより大きなトルクとして設定されたトルク制限Tm1maxの範囲内のトルクをモータMG1のトルク指令Tm1*として設定してモータECU40に送信すると共にエンジンECU24に燃料噴射制御や点火制御を開始する制御信号を送信する図5のステップS240〜S320の処理を実行するハイブリッド用電子制御ユニット70とトルク指令Tm1*を受信してモータMG1を駆動制御することによりエンジン22をクランキングするモータECU40と燃料噴射制御や点火制御を開始する制御信号を受信してエンジン22の燃料噴射や点火を制御するエンジンECU24とが「始動制御手段」に相当する。また、動力分配統合機構30が「3軸式動力入出力手段」に相当し、モータMG2が「第2の電動機」に相当する。ここで、「内燃機関」としては、ガソリンまたは軽油などの炭化水素系の燃料により動力を出力する内燃機関に限定されるものではなく、水素エンジンなど如何なるタイプの内燃機関であっても構わない。「電動機」としては、同期発電電動機として構成されたモータMG1に限定されるものではなく、誘導電動機など、内燃機関のクランキングに用いるものであれば如何なるタイプの電動機であっても構わない。「二次電池」としては、リチウムイオン二次電池として構成されたバッテリ50に限定されるものではなく、ニッケル水素二次電池や鉛蓄電池などの如何なる構成の二次電池としても構わない。「出力制限設定手段」としては、電流センサ51bにより検出された充放電電流Ibの積算値に基づくバッテリ50の残容量(SOC)とバッテリ50の電池温度Tbとに基づいてバッテリ50を充放電してもよい最大許容電力である入出力制限Win,Woutを演算すると共にバッテリ電圧Vbに基づいて出力制限Woutを電圧補正するものに限定されるものではなく、残容量(SOC)や電池温度Tbの他に例えばバッテリ50の内部抵抗と電池温度Tbなどに基づいて出力制限Woutを演算すると共にバッテリ電圧Vbに基づいて出力制限Woutを電圧補正するものとするなど、二次電池の温度と二次電池の出力電圧とを含む二次電池の状態に基づいて二次電池から放電可能な許容放電最大電力である出力制限を設定するものであれば如何なるものとしても構わない。「始動時制御手段」としては、ハイブリッド用電子制御ユニット70とエンジンECU24とモータECU40とからなる組み合わせに限定されるものではなく単一の電子制御ユニットにより構成されるなどとしてもよい。また、「始動制御手段」としては、冷間時にエンジン22を始動する際に、電圧補正された範囲内でモータMG1によりエンジン22をクランキングするようモータMG1を制御してエンジン22を始動する始動制御を実行し、こうした始動制御ではエンジン22を始動することができないときには、そのときのバッテリ50の出力制限Woutに基づいて冷間時でもエンジン22を始動最低回転数Nref以上で回転させるのに必要なトルクより大きなトルクとして設定されたトルク制限Tm1maxの範囲内のトルクをモータMG1から出力してエンジン22をクランキングしてエンジン22を始動するものに限定されるものではなく、エンジン22の再始動を試みるときには、そのときのバッテリ50の出力制限Woutに拘わらずに冷間時でもエンジン22を始動最低回転数Nref以上で回転させるのに必要なトルクより大きな所定トルクをモータMG1から出力してエンジン22をクランキングして始動するものとしたり、冷間時にエンジン22を始動するときには、バッテリ電圧Vbが下限電圧Vmin未満のときには所定電力ΔWだけバッテリ50の出力制限Woutを小さくする電圧補正を行ない、この電圧補正した出力制限Woutの範囲内でモータMG1によりエンジン22をクランキングして始動するものとしたりするなど、冷間時に内燃機関の始動指示がなされたときには、二次電池の出力制限の範囲内で電動機を駆動することにより内燃機関をクランキングして内燃機関を始動するよう内燃機関と電動機とを制御する通常時始動制御を実行し、この通常時始動制御を実行しても内燃機関を始動することができなかったときには二次電池の出力制限に拘わらずに電動機を駆動することにより内燃機関をクランキングして内燃機関を始動するよう内燃機関と電動機とを制御するものであれば如何なるものとしても構わない。「3軸式動力入出力手段」としては、上述の動力分配統合機構30に限定されるものではなく、ダブルピニオン式の遊星歯車機構を用いるものや複数の遊星歯車機構を組み合わせて4以上の軸に接続されるものやデファレンシャルギヤのように遊星歯車とは異なる作動作用を有するものなど、駆動軸と内燃機関の出力軸と電動機の回転軸との3軸に接続され、3軸のうちのいずれか2軸に入出力される動力に基づいて残余の軸に動力を入出力するものであれば如何なるものとしても構わない。「第2の電動機」としては、同期発電電動機として構成されたモータMG2に限定されるものではなく、誘導電動機など、駆動軸に動力を入出力可能なものであれば如何なるタイプの電動機としても構わない。なお、実施例の主要な要素と課題を解決するための手段の欄に記載した発明の主要な要素との対応関係は、実施例が課題を解決するための手段の欄に記載した発明を実施するための最良の形態を具体的に説明するための一例であることから、課題を解決するための手段の欄に記載した発明の要素を限定するものではない。即ち、課題を解決するための手段の欄に記載した発明についての解釈はその欄の記載に基づいて行なわれるべきものであり、実施例は課題を解決するための手段の欄に記載した発明の具体的な一例に過ぎないものである。
以上、本発明を実施するための最良の形態について実施例を用いて説明したが、本発明はこうした実施例に何等限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において、種々なる形態で実施し得ることは勿論である。
本発明は、動力出力装置や車両の製造産業などに利用可能である。
本発明の一実施例であるハイブリッド自動車20の構成の概略を示す構成図である。 エンジン22の構成の概略を示す構成図である。 バッテリ50における電池温度Tbと入出力制限Win,Woutとの関係の一例を示す説明図である。 バッテリ50の残容量(SOC)と入出力制限Win,Woutの補正係数との関係の一例を示す説明図である。 実施例のハイブリッド用電子制御ユニット70により実行される冷間時始動制御ルーチンの一例を示すフローチャートである。 エンジン22の始動時にモータMG1から出力すべきトルクを設定する際のトルクマップの一例とエンジン22の回転数Neの変化の様子の一例とを示す説明図である。 始動予定時間が経過するまでにエンジン22の回転数Neが始動最低回転数Nref以上に至らない場合のモータMG1の出力トルクTm1とエンジン22の回転数Neの時間変化の一例を示す説明図である。 トルク制限設定用マップの一例を示す説明図である。 エンジン22を再始動する際のモータMG1の出力トルクTm1とエンジン22の回転数Neの時間変化の一例を示す説明図である。 変形例のハイブリッド自動車120の構成の概略を示す構成図である。 変形例のハイブリッド自動車220の構成の概略を示す構成図である。
符号の説明
20,120,220 ハイブリッド自動車、22 エンジン、24 エンジン用電子制御ユニット(エンジンECU)、24a CPU、24b ROM、24c RAM、26 クランクシャフト、28 ダンパ、30 動力分配統合機構、31 サンギヤ、32 リングギヤ、32a リングギヤ軸、33 ピニオンギヤ、34 キャリア、35 減速ギヤ、40 モータ用電子制御ユニット(モータECU)、41,42 インバータ、43,44 回転位置検出センサ、50 バッテリ、51a 電圧センサ、51b 電流センサ、51c 温度センサ、52 バッテリ用電子制御ユニット(バッテリECU)、54 電力ライン、60 ギヤ機構、62 デファレンシャルギヤ、63a,63b 駆動輪、64a,64b 車輪、70 ハイブリッド用電子制御ユニット、72 CPU、74 ROM、76 RAM、80 イグニッションスイッチ、81 シフトレバー、82 シフトポジションセンサ、83 アクセルペダル、84 アクセルペダルポジションセンサ、85 ブレーキペダル、86 ブレーキペダルポジションセンサ、88 車速センサ、89 外気温センサ、122 エアクリーナ、124 スロットルバルブ、126 燃料噴射弁、128 吸気バルブ、130 点火プラグ、132 ピストン、134 浄化装置、135a 空燃比センサ、135b 酸素センサ、136,スロットルモータ、138 イグニッションコイル、140 クランクポジションセンサ、142 水温センサ、143 圧力センサ、144 カムポジションセンサ、146 スロットルバルブポジションセンサ、148 エアフローメータ、149 温度センサ、150 可変バルブタイミング機構、230 対ロータ電動機、232 インナーロータ、234 アウターロータ、MG1,MG2 モータ。

Claims (5)

  1. 駆動軸に動力を出力する動力出力装置であって、
    前記駆動軸への動力の出力に用いられる内燃機関と、
    前記内燃機関のクランキングに用いる電動機と、
    前記電動機に電力を供給する二次電池と、
    前記二次電池の温度と前記二次電池の残容量とに基づいて該二次電池から放電可能な許容放電最大電力である出力制限を設定する出力制限設定手段と、
    冷間時に前記内燃機関の始動指示がなされたときに前記二次電池の出力電圧が所定の下限電圧未満のときには、前記出力電圧と前記所定の下限電圧とによって前記出力制限に補正を施して得られる補正後の出力制限の範囲内で前記電動機を駆動することにより前記内燃機関をクランキングして前記内燃機関を始動するよう前記内燃機関と前記電動機とを制御する通常時始動制御を実行し、該通常時始動制御を実行しても前記内燃機関を始動することができなかったときには前記出力電圧と前記所定の下限電圧とによって前記出力制限に補正を施すことなく前記出力制限設定手段により設定された出力制限の範囲内で前記電動機を駆動することにより前記内燃機関をクランキングして前記内燃機関を始動するよう前記内燃機関と前記電動機とを制御する始動制御手段と、
    を備える動力出力装置。
  2. 前記補正後の出力制限は、前記出力電圧と前記所定の下限電圧との差が大きいほど制限が課される傾向に前記出力制限を補正する補正を施して得られる請求項1記載の動力出力装置。
  3. 請求項1または2記載の動力出力装置であって、
    前記駆動軸と前記内燃機関の出力軸と前記電動機の回転軸との3軸に接続され、該3軸のうちのいずれか2軸に入出力される動力に基づいて残余の軸に動力を入出力する3軸式動力入出力手段と、
    前記駆動軸に動力を入出力可能な第2の電動機と、
    を備える動力出力装置。
  4. 請求項1ないし3いずれか記載の動力出力装置を搭載し、車軸が前記駆動軸に連結されてなる車両。
  5. 駆動軸への動力の出力に用いられる内燃機関と、前記内燃機関のクランキングに用いる電動機と、前記電動機に電力を供給する二次電池と、前記二次電池の温度と前記二次電池の残容量とに基づいて該二次電池から放電可能な許容放電最大電力である出力制限を設定する出力制限設定手段と、を備える動力出力装置の制御方法であって、
    冷間時に前記内燃機関の始動指示がなされたときに前記二次電池の出力電圧が所定の下限電圧未満のときには、前記出力電圧と前記所定の下限電圧とによって前記出力制限に補正を施して得られる補正後の出力制限の範囲内で前記電動機を駆動することにより前記内燃機関をクランキングして前記内燃機関を始動するよう前記内燃機関と前記電動機とを制御する通常時始動制御を実行し、該通常時始動制御を実行しても前記内燃機関を始動することができなかったときには前記出力電圧と前記所定の下限電圧とによる補正を施すことなく前記出力制限の範囲内で前記電動機を駆動することにより前記内燃機関をクランキングして前記内燃機関を始動するよう前記内燃機関と前記電動機とを制御する
    ことを特徴とする動力出力装置の制御方法。
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