JP4729227B2 - 屈折率を測定するための方法 - Google Patents
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Description
(発明の背景)
本発明は、特に請求項1に記載の、材料の量または材料の構造が最小となる屈折率を測定するための方法、および請求項13に記載の方法を実施するための装置を対象とするものである。
【0002】
屈折率を測定するための方法については既に知られており、それらの方法においては、屈折率は一般的に偏光解析法を用いて、又は層における全反射の臨界角度を測定することによって、あるいは光の屈折に基づく他の方法を用いることによって測定されている。
【0003】
屈折率を測定するための知られている方法では、構造の寸法がマイクロメートルあるいはナノメートルの範囲内で変化する最少量の材料の屈折率を測定することはできない。既存の方法は、例えば励起放射の集中が十分でないため、あるいは散乱放射または偏向放射の測定が適切でないため、ロッドとして構成された、直径が50マイクロメートル未満の物質の量に対しては不適切である。寸法が波長未満の量しか存在しない物質の場合、屈折率の測定は特に困難である。このことは、粒子ビーム誘導蒸着法を始めとするアディティブ・ナノリソグラフィを用いて製造される光結晶などの新しいタイプの材料についても同様である。
【0004】
したがって本発明の目的は、とりわけ、材料の量または材料の構造がマイクロメートル範囲内である屈折率の測定に適した装置および特に方法を提供することである。
【0005】
この目的は、請求項1に記載の方法の特徴によって、最も驚くべき方法で既に実現されている。
請求項13に上記の方法を実施するための装置が定義されており、また、従属請求項に、本発明による方法のさらに有益な改善が描写されている。
【0006】
本発明による方法のコンテキストにおいては、屈折率を測定する物質は、理論的に測定可能な散乱パターンまたは回折パターンの形を利用することができるようにできている。複数の回折次数が定義され、少なくとも1つの強度比率が形成される。定義された形状をした1本の光ビームを用いて散乱パターンを照射することにより、少なくとも1つの強度分布が形成される。続いて、強度分布の回折次数に基づいて強度比率が形成される。さらに、強度比率の屈折率への依存性を表す、特性曲線の少なくとも一部が決定され、それを基に、対応する屈折率が特定の強度比率が割り当てられる。
【0007】
さらに、屈折率に強度比率が割り当てられると、特性曲線を用いて、形成された強度比率を屈折率に一意的に割り当てることができるかどうかチェックされる。強度比率を屈折率に一意的に割り当てることができない場合、ステップb)はそのままの状態で、他の光学濃度の一定量またはそれ以上の量の物質に対する強度比率が形成されるまで、本発明によるステップをさらに実施しなければならない。その場合においても、特性曲線を用いて、対応する屈折率が、同様に、他の量の物質の強度比率に割り当てられる。対応する屈折率が他の量の物質の強度比率に割り当てられると、他の測定ポイントと、一意的に割り当てられていない測定ポイントとを比較することにより、求める屈折率が選択され、あるいは決定される。
【0008】
上で説明した方法により、初めて、屈折率、詳細には材料の量すなわち構造が最小の物質の屈折率を簡単に測定することができる。
また、上で説明した方法により、光ビームをガウス・ビームの形で有利に使用することができる。ガウス・ビームの局部作用によってのみ、最大回折の強度が、回折構造を構成している物質の特性に対する強い依存性を示す、という高度な正の効果が発揮される。これは、散乱または回折が、物質の幾何学的構造に依存しているだけでなく、物質の光学濃度にも依存している、という物理的事実によるものである。
【0009】
したがって2つの最大回折間の強度比率を決定するためには、より次数の高い回折を使用することが好ましいが、それには、非回折散乱光があったとしても、次数が高い程、回折強度に対する非回折散乱光の占める割合が小さいという別の理由もある。しかしながらこのことは、測定精度の範囲内においては、屈折率の測定に必要な強度比率の1つを引き出すためのゼロ次数および第1次数の最大回折の使用を妨げることはない。
【0010】
また、本発明による方法の範囲内において、使用する光が定義済み偏光方向を有している場合、本発明による方法が有利であることが証明される。そのために、特に回折強度またはそれらの比率の理論的な測定が極めて単純化される。本発明によるこのコンテキストにおいては、TE偏光またはTM偏光のいずれか、すなわち水平偏光または垂直偏光のいずれかが使用されている。
【0011】
本発明の主題のさらに有益な特定の一改善においては、散乱パターンとして回折格子を用いて屈折率を測定することが実際的である。回折格子には、一方においては実験に基づく製造が可能であり、また一方においては、理論的測定すなわち数学的表現が比較的容易に可能である、という利点がある。したがって本発明によれば、格子ロッドに屈折率を調査する材料が含有されている。また、既に説明した実験による利点の他に、ガウス強度プロファイルを有する光を使用することにより、回折強度分布の数学的測定すなわち数値的測定が容易になるため、このコンテキストにおいては、ガウス強度プロファイルを有する光の使用についても言及されている。したがって回折格子を使用することにより、特に何よりも、理論的定義値と実験値との真の比較が可能になる。
【0012】
本発明によれば、回折強度は、回折構造すなわち回折格子のファー・フィールドで測定される。このコンテキストにおいては、測定精度の範囲内では、格子の形の散乱パターンは本質的に二次元構造である、という仮定が正当化されることが、本発明の範囲内において確認されている。言い換えると、長さが無限大の線形ロッドを仮定することから開始することができ、それにより回折強度分布の理論的測定すなわち数値的測定が実質的に簡略化される。このコンテキストにおいては、ファー・フィールドとは、最大強度又は強度分布を測定する測定距離よりも格子のサイズがはるかに小さいことを意味している。
【0013】
本発明による方法のフレームワーク内で実施される強度比率すなわち回折分布の測定は、散乱パターンによって透過する光が測定あるいは検出される好ましい特定の一実施形態によれば、透過中および反射中に極めて有利に実行される。
また、本発明のさらに有利な実施形態では、本発明による方法を使用することにより、基本的に、調査する物質の物質分布が均質であるか、あるいは不均質であるかを測定することもできる。このことは、例えば、特に格子ロッドを故意に不均質に成長させようとする場合、考慮しなければならない。したがって本発明による方法を適用することにより、ロッド中の物質分布に関する実験操作が成功であったか否かを検証することができる。
【0014】
本発明による方法を適用することにより、屈折率の実数部を測定することができるばかりでなく、同じやり方で、最大の利点である複素屈折率の虚数部を検証することができる。そのために、本発明によれば、2つの未知の複素数の各々を決定するために、2つの異なる強度比率が考慮されている。
【0015】
この事例の場合、上で既に説明した事例とは区別しなければならず、実験的に決定された強度比率の理論的割当てによっては、1つの屈折率に割り当てるための固有の方法は何ら引き出されない。本発明は、異なる物質分布を有する、異なる散乱パターンに対して強度比率を実行することにより、このような曖昧性を簡単に排除することができる。
【0016】
また、上で説明した方法を実施するために適した装置、詳細にはその目的を達成するために、回折物質および/または散乱物質を照射するための定義済み光ビームを供給するデバイス、物質から放射される回折強度分布を記録するための検出デバイス、回折強度分布から少なくとも2つの最大検出回折間の強度比率を決定するためのデバイス、および強度比率と屈折率の間の関数関係を少なくとも部分的に決定し、かつ、屈折率に強度比率を割り当てるためのコンピュータ・デバイスを備えた装置も、当然、本発明の範囲内である。
【0017】
以下、本発明について、例示的実施形態に基づいて、添付の図面に照らして説明する。
【0018】
図1において、測定セットアップの図式表現を、本発明のフレームワーク内における回折の次数強度の測定に使用することができることは明らかである。このコンテキストにおいては、図1には、例えばレーザである光源107が示されており、その単色光が、部分制限波108として、例えばガウス・ビーム206(図2)の形で光ファイバを介して回折材料103に伝送されている。図1に示されている物質103は、物質がその幾何学配列で、測定あるいは数学的表現が容易な回折格子を形成するようなやり方で、本発明に従って成長させたものである。物質103の空間分布量のタイプは、しばしばモチーフ関数と呼ばれている。モチーフ関数は、例えば格子配列103に関しては、1格子周期内における物質の空間分布として理解することができる。格子ロッド105は、それぞれ格子周期の中心に配置され、1周期の長さは、2つのロッド105間の距離に対応している。物質103での散乱または回折の結果、ファー・フィールド104に光の強度分布が生成され、空間的分解能が優れた検出器を使用して、ファー・フィールド104に生成された光の強度分布が測定される。このコンテキストにおいては、ファー・フィールドとは、検出器と回折物質の間の距離が、物質によって形成される格子の幅よりはるかに大きいことを意味している。いま説明した測定は、いわゆる透過測定であるが、反射測定に置き換えることもできる。
【0019】
図3は、ファー・フィールドで測定した回折強度分布を示したものである。図3の線図は、様々な強度の照射光に対する最大回折の曲線形状を示している。この例では、強度は、回折角度に対して任意の単位でプロットされている。回折パターンは、互いに4μmの間隔を隔てて配置された、半径290nmの合計11本の格子ロッドを有するシリコン・プローブ上で測定されたものである。プローブまでの測定距離は、18.5cmである。図3の右側から左側へかけて、第1次数における最大回折301および第2次数における最大回折302が示されている。このケースでは、プローブは、光ファイバ中を導波され、また、図2からその角強度プロファイルを推定することができるレーザ・ビームによって照射されたものである。図2のガウス・プロファイルも、同じく距離18.5cmで測定されたものである。ガウス・ビームの波長は1.5μmであり、半値幅は5.4μmである。
【0020】
本発明による方法のフレームワーク内においては、図3に示す最大強度の数値解析により、なかんずくそれらの強度比率が得られる。大抵の場合不要ではあるが、例えば、場合によってはより高い精度を実現するために、ゼロ次数における最大と第1次数における最大の間の比率を引き出すこともできる。
【0021】
本発明によれば、回折強度に対する屈折率の影響に関する情報を引き出すための数値シミュレーションの使用が提供され、周期的に屈折する構造に対する回折強度が測定される。
【0022】
このコンテキストにおいては、シミュレーションは、境界条件を有するヘルムホルツの式のすべての解を求める手法に基づいている。そのために、入射ガウス・ビームについて説明するためには、以下の式が使用される。
【数1】
λ...光の波長である
WO...スポット幅
XG、YG...ガウス・ビームの中心座標
【0023】
また、散乱光フィールドに対しては、次の式が選択される。
【数2】
円筒内すなわち格子ロッドの光フィールドに対しては、その形態が円筒状であるため、フーリエ−ベッセル関数を含む手法が使用されている。
【数3】
手法の各々において、添え字mは、すべての円筒に渡って連続的に推移する。円筒の総数は、この例示的実施形態では、M=11に制限されている。
【0024】
手法の中で使用されている他の変数は、次のように割り当てられる。
rm、ψm....m番目の円筒の局部極座標
nc....測定する屈折率
JlおよびHl (1)......第1次数のベッセル関数およびハンケル関数ul (m)、tl (m).....複素未知変数
【0025】
光フィールドの外部から円筒内への遷移は、連続的かつ微分可能に生じる、という物理的事実から、次の境界条件が引き出される。
【数4】
この場合、境界条件の総数が2M、すなわち各円筒リムに対する境界条件が2つの問題である。上述の式をこれらの境界条件に挿入し、何回か変換を繰り返すことにより、未知のul (m)、tl (m)に対する式の膨大な線形複素系が得られる。式の系は、未知のtl (m)に対して解くことができる。このように、様々な値の屈折率ncに対して、ファー・フィールドにおける所望の強度Is=Es 2を計算することができる。
【0026】
最後に、本発明によるシミュレーション後に、ファー・フィールドにおける、回折角度を関数とした回折強度が得られる。図4は、この方法で計算された回折パターンを示したものである。また、このシミュレーションにおいては、照射光はTE光であることが仮定されている。光の波長および半値幅は、上で示したガウス・プロファイルと一致している。上述の手法は、調査すべき格子に対しても適用することができる。この時点で、前述のシミュレーションから、基準として使用する屈折率に対する比率が、第1次数の回折強度401および第2次数の回折強度402から引き出される。シミュレーションを異なる様々な屈折率に対して繰り返すことにより、最大回折強度401、402の比率と対応する屈折率の間の特定の関数関係を、上述の方法を用いて決定することができる。
【0027】
図5の線図は、この比率の依存性を正確に示したものである。図が示す曲線形状は、詳細には様々な屈折率を関数とした第1次数および第2次数の回折の最大比率401、402(図4)に関するものである。曲線形状から推定されるように、屈折率への特定の強度比率の割当てには多数の方法が存在している。したがって本発明によれば、特定量の材料の屈折率を一意的に定義するためには、光学濃度が異なるプローブ上での複数の測定が必要となる。測定を追加する目的は、本質的には、関数関係によって画定される曲線の曲率特性を決定し、それにより屈折率への測定強度比率の一意的な割当てを可能にすることである。
【0028】
図5の線図から推定されるように、図5で調査した量の材料の場合、第1次数および第2次数の強度比率として約2.15が与えられると、屈折率は、n=1.55であることが検証される。
【図面の簡単な説明】
【図1】回折の次数強度を測定するための測定セットアップを示す略図である。
【図2】測定に使用される光のガウス強度プロファイルを示す図である。
【図3】ロッドがシリコン製の回折格子上で測定された測定回折パターンを示す図である。
【図4】図3の回折パターンのシミュレーションを示す図である。
【図5】第1次数の最大強度および第2次数の最大強度から引き出された比率の、格子ロッドの屈折率に対する依存性を示す図である。
Claims (13)
- 物質の量または構造がマイクロメートル範囲内である物質の屈折率を測定するための方法であって、
a)一定量の物質を、理論的に測定可能な回折パターンおよび/または散乱パターンの形で提供するステップと、
b)少なくとも1つの強度比率を形成するために、複数の回折パターンを画定するステップと、
c)定義済み形態の光ビームを該一定量の物質に照射することにより、少なくとも1つの強度分布を生成するステップと、
d)強度分布の回折次数を用いて強度比率を形成するステップと、
e)強度比率と屈折率の間の関数関係の特性曲線の少なくとも一部を画定するステップと、
f)特性曲線を用いて該導き出された強度比率を屈折率に割り当てるステップとを含む方法。 - ステップf)において、該形成された強度比率を屈折率に一意的に割り当てることができるかどうかをチェックし、一意的に割り当てることができない場合、
a)光学密度が異なるさらに一定量またはそれ以上の量の物質に対して、ステップb)はそのままの状態で、前記方法のステップa)からd)を実行するステップと、
f)特性曲線を用いて、強度比率をそれらの屈折率にさらに割り当てるステップと、
c)屈折率を物質の量に変換するステップがさらに実施される、請求項1に記載の方法。 - 光ビームの形状がガウス・ビーム形状である、請求項1または2に記載の方法。
- 光が単色光および/または偏光を含む、請求項1、2または3に記載の方法。
- 強度比率がより高次数の最大回折から引き出される、請求項1乃至4のいずれか1項に記載の方法。
- 散乱パターンが回折格子を含む、請求項1乃至5のいずれか1項に記載の方法。
- 強度比率が、ファー・フィールドにおける回折分布から決定される、請求項1乃至6のいずれか1項に記載の方法。
- 散乱パターンが本質的に二次元配列のロッドを含む、請求項1乃至7のいずれか1項に記載の方法。
- 強度比率又は回折分布が、透過中および反射中に測定される、請求項1乃至8のいずれか1項に記載の方法。
- 物質の物質分布が均質または不均質である、請求項1乃至9のいずれか1項に記載の方法。
- 前記方法を適用することにより、虚数部および実数部から複素屈折率を決定することができる、請求項1乃至10のいずれか1項に記載の方法。
- 1波長のガウス光ビームが、数学的に表現することができる、例えば回折に関するモチーフ関数を有する幾何学配列の回折物質量として導かれ、
また、透過中にファー・フィールドにおける回折−強度分布が測定され、
非回折ビームとは別に、第1次数に対するゼロ次数の最大強度および第2次数に対する第1次数の最大強度のうちのいずれか最大のものが、さらに少なくとも1つ形成され、
また、それらの値が、数学的に画定された構造に対する回折強度を計算することによって得られた強度比率の計算関数値と比較され、
物質の屈折率がモチーフ関数を使用して変更され、
また、屈折率に対する回折次数の強度比率が一意的な依存性を有し、
かつ、測定強度比率と次数の強度比率の計算値とを比較することにより、当該物質の屈折率が決定される、請求項1乃至11のいずれか1項に記載の方法。 - 特に材料の量又は物質の構造がマイクロメートル範囲内である物質の屈折率を測定するための、特に請求項1乃至12のいずれかに記載の方法を実施するための装置であって、
a)回折物質および/または散乱物質を照射するための定義済み光ビームを供給するデバイスと、
b)物質から放射される回折強度分布を記録するための検出デバイスと、
c)定義済み回折次数の回折強度分布から、少なくとも2つの最大検出回折の間の強度比率を決定するためのデバイスと、
d)強度比率と屈折率の間の関数関係を少なくとも部分的に決定し、かつ、特定の強度比率を対応する屈折率に割り当てるためのコンピュータ・デバイスとを備えた装置。
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