JP4727363B2 - 磁気加温素子及びその温度制御方法 - Google Patents

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Description

本発明は、主として医療分野の癌治療における温熱療法のインプラント加温に適用される磁気加温素子であって、詳しくは感温磁性体と電気良導体とを複合して成ると共に、交流励磁が印加されることにより発熱する加熱上限温度調整機能を持った磁気加温素子及びその温度制御方法に関する。
従来、一般に医療分野の癌治療法としては、外科療法,放射線療法,免疫療法,薬物療法,凍結療法,温熱療法等が知られているが、医療現場では病状に応じてそれらの特徴を活かして適用し、ときには幾つかを併用して集学的に治療を行う等、様々な手法が実施されている。
このうち、特に温熱療法は、癌細胞が42.5℃以上になると急速に生存率の低下する性質を利用し、正常組織の生存上限温度45℃との温度差を利用して加温により癌腫瘍のみを選択的に壊死させる手法である。この温熱療法は、ハイパーサーミアとも呼ばれ、局所進行癌や再発癌に特に有用とされている。この温熱療法における加温手段としては、温浴加温,マイクロ波加温,RF(ラジオ周波数)誘電加温,RF誘導加温,超音波加温,強磁性体励磁加温,インプラント加温等の手法が挙げられる。中でもインプラント加温には感温磁性体と電気良導体とを複合して成ると共に、交流励磁が印加されることにより発熱する磁気加温素子が適用されている。インプラント加温は、体外から非接触で加温を行うことができるので、磁気加温素子を癌腫瘍に埋め込む必要があるものの、外科療法の手法と比べると、低侵襲性であること、感染症を防止できること、再治療がし易いこと、局所的な加温を行うことができること等の諸点で極めて有用である。
ところで、これまでの温熱療法は、組織の温度を精度良く制御するのが難しかったり、或いは組織を局所的に加温することが難しいといった問題があることにより、最近では発熱素子を体内に埋め込んで発熱させるインプラント加温が再び見直されてきている。
このインプラント加温として、感温磁性材料のキュリー温度Tcで制約される加熱上限温度を制御するために感温磁性体を加温素子として体内に埋め込み、周囲から高周波磁界で励磁することにより発熱させる電磁誘導式の加温方法であるソフトヒーティング法が提案されている(非特許文献1参照)。その他、フェライトの中でもマグネタイトフェライト粒子を励磁して加熱する手法も古くから提案されている(非特許文献2参照)。
「ソフトヒーティング法によるハイパーサーミア」電気学会マグネティックス研究会資料,MAG−87−26(1987) 「感温フェライトロッドを用いたソフトヒーティング法のハイパーサーミアヘの応用」電気学会論文誌A,Vol.111,No.9(1991)
上述した非特許文献1に係るソフトヒーティング法に用いられる加温素子の場合、感温磁性体と電気良導体である金属管とを複合して成るものであるが、感温磁性体は磁束の収束及び温度制御に寄与し、金属管は渦電流による発熱に専ら寄与している。この加温素子の発熱原理は、交流印加磁界中で磁性体の温度がキュリー温度Tcよりも低いときに感温磁性体が周囲より高い透磁率を持つために感温磁性体に磁束が収束されて高い磁束密度となることにより、隣接する金属管に大きい短絡電流が流れて発熱が顕著となり、この発熱によって感温磁性体の温度がキュリー温度Tcよりも高くなると、感温磁性体への磁束の収束が無くなって温度上昇に寄与しない程度に著しく発熱が減少するもので、現実的には加温素子の発熱が停止した状態となることにより、感温磁性体のキュリー温度Tcを参照温度とした温度制御を行うもの(但し、同一なキュリー温度Tcの磁性材料を用いた場合の加温温度調整に関する記述は見られない)である。
ところが、ソフトヒーティング法において、加温素子に感温磁性体を使用して温度制御を行うと、感温磁性体のキュリー温度Tcが加温上限温度を決定することになるが、実際の癌治療に適用する場合には、患者における個体差,血流等による腫瘍への冷却効果,癌細胞の熱耐性の変化等を伴う条件下で治療効果を上げるためには多少の温度調整が必要となる場合が多いものの、従来の対処ではその都度状況に応じて適合する加熱温度の加温素子を選択して使用するようにしたり、或いは代替する等の手法によっているため、利便性を損なうばかりでなく、患者に肉体的負担を強いる結果となるため、好ましくないものとなっており、結果として、一度体内に埋め込まれたソフトヒーティング用加温素子において交流励磁により発熱する温度制御を素子変更なしで合理的に行うことができないという問題がある。
又、非特許文献2のフェライト粒子を励磁して加熱する技術の場合、キュリー温度Tcが585℃と極めて高温であることにより、人体への適用を考慮すれば過熱暴走を容易に阻止できる構成を構築することが困難であるという難点を抱えている上、発熱状態にするためには高い交流磁束密度が必要となり、医療設備としては困難が予測される著しく過大な励磁設備を要するため、未だに実用化の見通しが立っていないのが実情である。
本発明は、このような問題点を解決すべくなされたもので、その技術課題は、ソフトヒーティング用加温素子において交流励磁により発熱する温度制御を感温磁性材料を適宜選択した上で素子変更なしで容易にして適確に行うことができる磁気加温素子及びその温度制御方法を提供することにある。
本発明によれば、感温磁性体と電気良導体とを複合して成ると共に、交流励磁が印加されることにより発熱する磁気加温素子において、前記感温磁性体の材料としてNiCuZn系フェライトを使用し、前記NiCuZn系フェライトの組成は、組成式をx(Ni1−a・Cu)O・yZnO・zFeとし、x+y+z=100、a=0〜0.8(但し0は含まず)、x=15〜25、y=35.5〜38、z=48〜52としたものであり、前記感温磁性体は、初透磁率の温度上昇に伴う減少曲線にあって、減少が顕著な曲線部からの延長による外挿で求めた強磁性喪失温度Tfと、常磁性となる温度Tpとの温度差(△T=Tp−Tfであり、常時Tp≧Tfの関係にある)が1〜10℃の範囲にある特性を有するものであることを特徴とする磁気加温素子が得られる。
又、本発明によれば、上記磁気加温素子を交流励磁を印加することにより発熱させる際、該磁気加温素子における加温温度を調整するために印加する交流磁界の強度(交流磁束密度)を0.5〜10mTの範囲で変化させて温度制御を行う磁気加温素子の温度制御方法が得られる。
更に、本発明によれば、上記磁気加温素子を交流励磁を印加することにより発熱させる際、該磁気加温素子における加温温度を調整するために印加する交流磁界に対して直流磁界を重畳すると共に、該直流磁界の強度(直流磁束密度)を0.5〜20mTの範囲で変化させて温度制御を行う磁気加温素子の温度制御方法が得られる。
加えて、本発明によれば、上記磁気加温素子を交流励磁を印加することにより発熱させる際、該磁気加温素子における加温温度を調整するために印加する交流磁界の周波数を50〜1000kHzの範囲で変化させて温度制御を行う磁気加温素子の温度制御方法が得られる。
本発明の磁気加温素子の場合、ソフトヒーティング用加温素子において交流励磁により発熱する温度制御を感温磁性体(その感温磁性材料)をキュリー温度の異なるものを使用することなく選択した上で素子変更なしで数℃程度可変するだけで容易にして適確に行うことができ、その温度制御方法として、磁気加温素子における加温温度を調整するために印加する交流磁界の強度(交流磁束密度)を0.5〜10mTの範囲で変化させて温度制御を行うか、又は交流磁界に対して直流磁界を重畳すると共に、直流磁界の強度(直流磁束密度)を0.5〜20mTの範囲で変化させて温度制御を行うか、或いは交流磁界の周波数を50〜1000kHzの範囲で変化させて温度制御を行うだけで良いため、特に医療分野における温熱療法に適用すれば、癌腫瘍を壊死させるために重要な温度上昇機能を有効に活用でき、治療効果を上げるための利便性が図られるようになり、従来必要であった素子変更に伴う患者の負担を顕著に軽減させることができるようになる。
本発明の最良の形態に係る磁気加温素子は、感温磁性体と電気良導体とを複合して成ると共に、交流励磁が印加されることにより発熱するソフトヒーティング用加温素子となるもので、具体的には感温磁性体として、初透磁率の温度上昇に伴う減少曲線にあって、減少が顕著な曲線部からの延長による外挿で求めた強磁性喪失温度Tfと、常磁性となる温度Tpとの温度差(△T=Tp−Tfであり、常時Tp≧Tfの関係にある)が1〜10℃の範囲にある特性を有するものを用いたものである。
図1は、本発明の最良の形態に係る磁気加温素子における感温磁性体の磁気特性として、感温磁性材料をリング状フェライト材料としたときの測定温度に対する初透磁率μiの特性を示したものである。
図1では、フェライト材料の初透磁率μiの温度上昇に伴う減少曲線にあって、上述したように減少が顕著な曲線部からの延長による外挿で求めた強磁性喪失温度Tfと実質的に常磁性となる温度Tpとの温度差△T(△T=Tp−Tfであり、常時Tp≧Tfの関係が成立する)を適正範囲として有するものとすることを示している。この温度差△Tが有用な範囲は、1〜10℃の範囲である。即ち、温度差△Tが1℃以上であれば温度調整の機能が明らかに認められ、10℃以上であればキュリー温度Tcによる加熱温度の参照精度が明らかに低下するからである。このように加熱温度の参照精度が低下すると、適合する温度に対する加温素子の選択選定が困難となってしまい、治療に支障を来すことになるので、好ましくない。
そこで、このような温度差△T=1〜10℃の範囲の感温磁性体と電気良導体とを複合して成る磁気加温素子を交流励磁により発熱させる際、磁気加温素子における加温温度を調整する方法の一つ(磁気加温素子の温度制御方法の一つ)として、磁気加温素子における加温温度を調整するために印加する交流磁界の強度(交流磁束密度)を変化させて温度制御を行う場合が挙げられる。この交流磁束密度が有用な範囲は、0.5〜10mTの範囲である。即ち、交流磁束密度が0.5mT以下では発熱効果が低く、10mT以上では人体に挿入できる大きさでの磁界発生設備が過大となって、その費用や形状についても不適切となってしまうからである。
又、同様に磁気加温素子における加温温度を調整する方法の他の一つ(磁気加温素子の温度制御方法の他の一つ)として、磁気加温素子における加温温度を調整するために印加する交流磁界に対して直流磁界を重畳すると共に、直流磁界の強度(直流磁束密度)を変化させて温度制御する場合が挙げられる。この直流磁束密度が有用な範囲は、0.5〜20mTの範囲である。即ち、直流磁束密度が0.5mT以上では温度変化への寄与が明らかに認められ、20mT以上では人体に挿入できる大きさでの磁界発生設備が過大となって、その費用や形状についても不適切となってしまうからである。
更に、同様に磁気加温素子における加温温度を調整する方法の別の一つ(磁気加温素子の温度制御方法の別の一つ)として、磁気加温素子における加温温度を調整するために印加する交流磁界の周波数を変化させて温度制御する場合が挙げられる。この交流磁界の周波数が有用な範囲は、50〜1000kHzの範囲である。即ち、交流磁界の周波数が50kHz以上では明らかに発熱への寄与が認められ人体への悪影響がなく(20kHzが人の可聴上限領域であって不快音とならない)、1000kHz以上では人体への加温効果(人体が発熱する)があって健康阻害が懸念されるからである。
以下は、幾つかの実施例を挙げて、本発明の磁気加温素子及びその温度制御方法について、磁気加温素子の製造工程を含めて具体的に説明する。
実施例1では、先ず組成比が15(Ni0.7・Cu0.3)O・35.5ZnO・49.5Feとなるように、酸化鉄,酸化ニッケル,酸化第2銅,及び酸化亜鉛を原料としてボールミルで混合し、予備焼成を経て粉砕して成形を行った後、大気中の1050℃の温度条件下で焼成することによりリング状のフェライト焼結体を作成した。尚、このリング状のフェライト焼結体の場合、100kHzにおける初透磁率μiは25℃において約3500であり、キュリー温度Tcは約45℃であった。又、温度変化に対する初透磁率μiの最大値は42℃近傍にあり、dμi/dTempの値は約600であった。
次に、得られたリング状のフェライト焼結体を切断加工し、それぞれ断面が1mmの正方形で長さが10mmの所定数の棒状フェライトを作成し、これらの各棒状フェライトの側面に対して厚さが35μmで幅が10mmとなるように銅箔を貼り付けることにより、棒状フェライトが軸部となり、その側面部に銅箔を有する実施例1に係る複合型磁気加温素子の試料をそれぞれ作製した。
図2は、この実施例1に係る複合型磁気加温素子の外観構成を示した斜視図である。この複合型磁気加温素子は、上述したように棒状フェライトの軸部による感温磁性体1の側面部に銅箔による電気良導体2を配備して成るものである。
そこで、槽内温度を37℃に保持した恒温槽中で実施例1に係る磁気加温素子をその長手方向が磁界印加方向と同じ方向になるように配置し、磁気加温素子に対して印加する交流磁界の周波数を100kHzとし、且つ交流磁界の強度である交流磁束密度を0〜10mTの範囲で変化させて発熱による温度を制御しつつ、光学式温度計を用いて素子表面の温度を測定した。尚、交流励磁の3分後には、素子表面の温度は上限に到達していた。
素子表面の温度の測定結果では、印加する交流磁界の強度である交流磁束密度(mT)を0,0.5,1,2,4,6,8,10と変化させた場合にそれぞれ素子表面の温度(℃)は、37.0,41.1,43.5,45.0,46.1,47.2,48.2,49.2となった。この結果によれば、磁気加温素子の表面温度は、交流磁束密度が0.5mT以上で上昇が明瞭となり、交流磁界の強度が増加するに伴って素子表面の到達温度が上昇することが判る。
従って、交流磁界の強度(交流磁束密度)を変化させることにより、磁気加温素子の温度を制御でき、その加熱機能や励磁磁界発生設備(費用、大きさ等)を考慮すると、交流磁界の強度(交流磁束密度)を0.5〜10mTの範囲にすれば有用であると言える。
因みに、図2に示した素子形状の棒状フェライトの軸部による感温磁性体1と角筒状銅による電気良導体2とをそれぞれ単独で印加する交流磁界の強度(交流磁束密度)を2mTとして表面温度を測定したところ、感温磁性体1については37.3℃、電気良導体2については37.1℃であることが判り、結果的に磁気加温素子として、感温磁性体1と電気良導体2とを複合した構成とすることによって高い発熱性能を有することが判った。
実施例2では、実施例1の場合と同様な手順で作製した同じ構造の複合型磁気加温素子に対し、印加する交流磁界については周波数を100kHz、交流磁束密度を1mTとし、且つ交流磁界に対して重畳する直流磁界の強度(直流磁束密度)を0〜20mTの範囲で変化させて発熱による温度を制御しつつ、光学式温度計を用いて素子表面の温度を測定した。
素子表面の温度の測定結果では、印加する直流磁界の強度である直流磁束密度(mT)を0,0.5,1,2,4,6,10,15と変化させた場合にそれぞれ素子表面の温度(℃)は、43.5,44.1,44.5,45.0,46.1,47.1,48.2,49.2となった。この結果によれば、磁気加温素子の表面温度は、印加する交流磁界に重畳する直流磁界の強度が増加するに伴って到達温度が上昇することが判る。
従って、印加する交流磁界に重畳する直流磁界の強度(直流磁束密度)を変化させることにより、磁気加温素子の温度を制御でき、その加熱機能や直流磁界発生設備(費用、大きさ等)を考慮すると、重畳する直流磁界の強度(直流磁束密度)を0.5〜20mTの範囲にすれば有用であると言える。
実施例3では、実施例1の場合と同様な手順で作製した同じ構造の複合型磁気加温素子に対し、印加する交流磁界(励磁磁界)については交流磁束密度を1mTとなるようにし、周波数を50〜1000kHzの範囲で変化させて発熱による温度を制御しつつ、光学式温度計を用いて素子表面の温度を測定した。
素子表面の温度の測定結果では、周波数(kHz)を50,100,200,500,800,1000と変化させた場合、並びに励磁なしである場合とについて、それぞれ素子表面の温度(℃)は43.0,43.5,44.3,45.1,46.0,47.2,37.0となった。この結果によれば、磁気加温素子の表面温度は、印加する交流磁界の周波数が増加するに伴って上昇する傾向となることが判る。
従って、印加する交流磁界の周波数を変化させることにより、磁気加温素子の温度を制御でき、その人体への悪影響(不快音発生領域及び人体の発熱)とその加温機能とを考慮すると、交流磁界の周波数を50〜1000kHzの範囲にすれば有用であると言える。
実施例4では実施例1の場合と同様な手順で作製した成形体を1000〜1100℃の範囲の温度条件下で大気中において焼成することによりリング状のフェライト焼結体を作成した。尚、このリング状のフェライト焼結体の場合、100kHzにおける初透磁率μiは25℃において2500〜4000程度の範囲であり、キュリー温度Tcは約45℃であった。又、このフェライト焼結体における初透磁率μiの温度による減少率は41〜43℃近傍で最も顕著であり、dμi/dTempは300〜1000の範囲であった。更に、温度上昇による初透磁率μiの減少曲線部にあって、減少が顕著な曲線部からの延長による外挿で求めた強磁性喪失温度Tfと、実質的に常磁性となる温度Tpとの温度差△T=Tp−Tfは1〜10℃であった。
次に、このフェライト焼結体からそれぞれ所定数のフェライト角棒を切り出して加温用複合素子を作製し、得られた加温用複合素子に対して印加する交流磁界の周波数を100kHzとし、且つ交流磁界の強度(交流磁束密度)を0.5mT,2mTとした異なる条件下でそれぞれ光学式温度計を用いて素子表面の温度を測定した。
素子表面の温度の測定結果では、温度差△T(℃)が1,2,3,5,7,10である場合、印加した交流磁場の強度(交流磁束密度)が0.5mTであるときにはそれぞれ素子表面の温度(℃)は40.0,40.5,41.0,41.8,42.7,44.0となり、印加した交流磁場の強度(交流磁束密度)が2mTであるときにはそれぞれ素子表面の温度(℃)は43.5,44,3,45.0,46.5,48.0,50.0となり、更に励磁なしのときの素子表面の温度(℃)は37.0となった。この結果によれば、磁気加温素子の表面温度における温度上昇は、印加した交流磁場の強度(交流磁束密度)が大きく、且つ温度差△Tが大きい程、温度上昇幅が大きくなる傾向となることが判る。
従って、温度差△Tを1℃以上とすることにより、印加する交流磁界(励磁磁界)による磁気加温素子の発熱に伴う温度を制御できると言える。
尚、上述した各実施例では、磁気加温素子における感温磁性体1の感温磁性材料としてNiCuZn系フェライト、電気良導体2として銅箔を用いた場合を説明したが、各部の材料はこれらに限定されない。例えば感温磁性体1の感温磁性材料としては、目標とするキュリー温度Tcを有するものであれば、FeNi等の金属磁性材料、MnZn系フェライト等の酸化物磁性材料、或いはその他の磁性材料を用いても同様な機能が得られるし、電気良導体2の材料としては、金,銀,チタン等の金属材料、酸化物材料、有機物材料、或いは半金属材料等としても、低い電気比抵抗(約10−6Ω・m以下)を有するものであれば同様な機能が得られるため、これらを代用することが可能である。
又、各実施例では、感温磁性材料としてNiCuZn系フェライトを使用し,癌腫瘍のみを壊死させる効果がある42.5〜45℃近傍の温度制御について説明したが、本発明の磁気加温素子における技術的効果は、感温磁性材料のキュリー温度Tc近傍で印加する励磁磁界により温度を制御するものであるため、異なる温度設定の感温磁性材料(即ち、キュリー温度Tcが異なる材料)であっても、温度制御を行うことができる。因みに、温度制御の範囲を42.5〜45℃近傍に設定した場合、NiCuZn系フェライトの組成は、組成式をx(Ni1−a・Cu)O・yZnO・zFeとし、x+y+z=100、a=0〜0.8(但し0は含まず)、x=8〜25、y=32〜38、z=48〜52の範囲とすることが有用となる。この組成比のNiCuZn系フェライト焼結体における比抵抗は10〜1013Ω・m程度であり、複合化する電気良導体2と比べて10桁程度高い状態となり、加温に使用される短絡電流は専ら電気良導体2での発熱となるため、一層精密な温度制御を行うことができる。
更に、各実施例で説明した感温磁性体1と電気良導体2とを複合して成る磁気加温素子の構成は、図2に示したものに限定されるものでなく、感温磁性体1の感温磁性材料に対して収束された磁界により発生した短絡電流を熱源として使用できる形態であれば、例えば部分的な配置等を行った構造であっても、本発明の技術的範囲内にあるものである。
加えて、各実施例で説明した磁気加温素子における感温磁性体1は、断面が1mmの正方形で長さ10mmの角棒状として説明したが、その構造はこれに限定されるものでなく、使用状況に応じて異なる形状(寸法や形態等)を選択選定することが可能である。但し、温度制御を容易に実現するためには、印加する交流磁界(励磁磁界)の印加方向に対して磁気加温素子の実効透磁率が5以上で機能するような形状及び素子配置とすることが望ましい。
本発明の最良の形態に係る磁気加温素子における感温磁性体の磁気特性として、感温磁性材料をリング状フェライト材料としたときの測定温度に対する初透磁率の特性を示した図である。 本発明の実施例1に係る複合型磁気加温素子の外観構成を示した斜視図である。
符号の説明
1 感温磁性体
2 電気良導体

Claims (4)

  1. 感温磁性体と電気良導体とを複合して成ると共に、交流励磁が印加されることにより発熱する磁気加温素子において、前記感温磁性体の材料としてNiCuZn系フェライトを使用し、前記NiCuZn系フェライトの組成は、組成式をx(Ni1−a・Cu)O・yZnO・zFeとし、x+y+z=100、a=0〜0.8(但し0は含まず)、x=15〜25、y=35.5〜38、z=48〜52としたものであり、前記感温磁性体は、初透磁率の温度上昇に伴う減少曲線にあって、減少が顕著な曲線部からの延長による外挿で求めた強磁性喪失温度Tfと、常磁性となる温度Tpとの温度差(△T=Tp−Tfであり、常時Tp≧Tfの関係にある)が1〜10℃の範囲にある特性を有するものであることを特徴とする磁気加温素子。
  2. 請求項1記載の磁気加温素子を交流励磁を印加することにより発熱させる際、該磁気加温素子における加温温度を調整するために印加する交流磁界の強度を0.5〜10mTの範囲で変化させて温度制御を行うことを特徴とする磁気加温素子の温度制御方法。
  3. 請求項1記載の磁気加温素子を交流励磁を印加することにより発熱させる際、該磁気加温素子における加温温度を調整するために印加する交流磁界に対して直流磁界を重畳すると共に、該直流磁界の強度を0.5〜20mTの範囲で変化させて温度制御を行うことを特徴とする磁気加温素子の温度制御方法。
  4. 請求項1記載の磁気加温素子を交流励磁を印加することにより発熱させる際、該磁気加温素子における加温温度を調整するために印加する交流磁界の周波数を50〜1000kHzの範囲で変化させて温度制御を行うことを特徴とする磁気加温素子の温度制御方法。
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