JP4725347B2 - リン含有グアナミン樹脂及び、これを用いた熱硬化性樹脂組成物並びに、これを用いたプリプレグ及び積層板 - Google Patents
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しかしながら、これらの樹脂組成物は、有機溶剤への溶解性は改良されているものの、熱分解温度が低く、近年要求される鉛フリーはんだへの耐熱性や銅付き耐熱性に不足する。また微細な加工処理・配線形成において、銅箔接着性や可とう性、靭性が不足し、回路パターンが断線や剥離を生じたり、ドリルや打ち抜きにより穴あけ等の加工をする際にクラックが発生する等の不具合が生じる。
なお、臭素含有難燃剤に代わるハロゲンフリーの難燃剤として、リン化合物が広く検討されている。しかし、リン酸又はリン酸エステル等を用いる場合、ブリードや加水分解性、耐熱性及び電気的信頼性の低下等の問題から、その使用量が限られ十分な難燃性が得られない等の問題がある。また、赤リンは、打撃衝撃による発火等の安全上の理由や耐電食性等の信頼性を著しく劣化させる等の問題がある。
1.(a)下記一般式(1)に示す6−置換グアナミン化合物、(b)無水マレイン酸を含むカルボン酸無水物及び(c)1分子中に少なくとも1個のP−H結合を有する芳香族化合物の反応生成物であることを特徴とするリン含有グアナミン樹脂。
2.更に、(d)下記一般式(2)に示すN−置換マレイミド化合物を反応成分とする反応生成物である上記1のリン含有グアナミン樹脂。
3.(A)上記1又は2のリン含有グアナミン樹脂と(B)1分子中に少なくとも2個のエポキシ基を有するエポキシ樹脂を含有することを特徴とする熱硬化性樹脂組成物。
4.上記3の熱硬化性樹脂組成物を、基材に含浸又は塗工した後、Bステージ化して得られるプリプレグ。
5.上記4のプリプレグを1枚以上重ね、加熱加圧成形して得られる積層板。
6.重ねたプリプレグの少なくとも一方に金属箔を重ねた後、加熱加圧成形して得られた金属張積層板である上記5の積層板。
このため該熱硬化性樹脂組成物を用いて、優れた性能を有するプリプレグや積層板などを提供することができる。
先ず、本発明の熱硬化性グアナミン樹脂は(a)下記一般式(1)に示す6−置換グアナミン化合物、(b)無水マレイン酸を含むカルボン酸無水物及び(c)1分子中に少なくとも1個のP−H結合を有する芳香族化合物の反応生成物である。
(a)の一般式(1)に示す6−置換グアナミン化合物は、例えばベンゾグアナミン、
アセトグアナミン、置換メラミン誘導体等が挙げられ、これらの中で、反応時の反応率が高く、より高耐熱性化できる点からベンゾグアナミン、アセトグアナミンがより好ましく、低毒性である点からベンゾグアナミンが特に好ましい。
併用されるカルボン酸無水物としては、例えば、無水コハク酸、テトラヒドロ無水フタル酸等の脂肪族カルボン酸無水物、無水フタル酸、無水トリメリット酸、無水ピロメリット酸等の芳香族カルボン酸無水物等が挙げられる。これらの中で、反応率が高く、より高耐熱性化できる無水コハク酸、テトラヒドロ無水フタル酸、無水フタル酸が好ましく、溶解性に優れる点から無水コハク酸、テトラヒドロ無水フタル酸がより好ましく、難燃性の点から無水コハク酸が特に好ましい。
(b)成分中の無水マレイン酸の割合は10モル%以上とすることが好ましい。
炭素数1〜5のアルキル基としては、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基等が挙げられる。置換基を有するフェニル基としては、ヒドロキシフェニル基やカルボキシフェニル基等が挙げられる。
具体的には、例えば一般式(1)に示す6−置換グアナミン化合物と有機溶剤を混合させたものに、無水マレイン酸、及び必要により一般式(2)に示すN−置換マレイミド化合物を少量づつ添加し、70℃以上で0.5時間から10時間反応させ、更に1分子中に少なくとも1個のP−H結合を有する芳香族化合物を添加し70℃以上で0.5時間から10時間反応させることによって、本発明のリン含有グアナミン樹脂が得られる。
また、この反応には、必要により任意に反応触媒を使用することができる。反応触媒の例としては、トリエチルアミン、ピリジン、トリブチルアミン等のアミン類、メチルイミダゾール、フェニルイミダゾール等のイミダゾール類、トリフェニルホスフィン等のリン系触媒等が挙げられ、これらの1種又は2種以上を混合して使用できる。
本発明の熱硬化性樹脂組成物に使用するエポキシ樹脂は、1分子中に2個以上のエポキシ基を有するエポキシ樹脂であれば、特に限定されず、例えば、ビスフェノールA系、ビスフェノールF系、ビフェニル系、ノボラック系、多官能フェノール系、ナフタレン系、脂環式系及びアルコール系等のグリシジルエーテル、グリシジルアミン系並びにグリシジルエステル系等が挙げられ、これらの1種又は2種以上を混合して使用することができる。これらの中で、誘電特性、耐熱性、耐湿性及び銅箔接着性の点からビスフェノールF型エポキシ樹脂、ジシクロペンタジエン型エポキシ樹脂、ビスフェノールAノボラック型エポキシ樹脂、ビフェニル型エポキシ樹脂、ビフェニルアラルキル型エポキシ樹脂、フェノールノボラック型エポキシ樹脂及びクレゾールノボラック型エポキシ樹脂等が好ましく、難燃性や成形加工性の点からビスフェノールF型エポキシ樹脂、ビフェニルアラルキル型エポキシ樹脂、ビフェニル型エポキシ樹脂、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂がより好ましく、安価であることからフェノールノボラック型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂が特に好ましい。
また、本発明の熱硬化性樹脂組成物には、エポキシ樹脂の硬化促進剤を併用してもよく、硬化促進剤の例としては、イミダゾール類及びその誘導体、第三級アミン類及び第四級アンモニウム塩等が挙げられる。
熱可塑性樹脂の例としては、ポリテトラフルオロエチレン、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレン、ポリフェニレンエーテル樹脂、フェノキシ樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリエステル樹脂、ポリアミド樹脂、ポリイミド樹脂、キシレン樹脂、石油樹脂及びシリコーン樹脂等が挙げられる。
基材の厚さは、特に制限されず、例えば、約0.03〜0.5mmのものを使用することができ、シランカップリング剤等で表面処理したもの又は機械的に開繊処理を施したものが、耐熱性や耐湿性、加工性の面から好適である。該基材に対する樹脂組成物の付着量が、乾燥後のプリプレグの樹脂含有率で、20〜90質量%となるように、基材に含浸又は塗工した後、通常、100〜200℃の温度で1〜30分加熱乾燥し、半硬化(Bステージ化)させて、本発明のプリプレグを得ることができる。
なお、以下の実施例で得られた銅張積層板は、以下の方法で性能を測定・評価した。
銅張積層板を銅エッチング液に浸漬することにより、1cm幅の帯部分を残して銅箔を取り除いた評価基板を作製し、オートグラフ(島津製作所(株)製AG−100C)を用いて帯部分のピール強度を測定した。
(2)ガラス転移温度(Tg)の測定
銅張積層板を銅エッチング液に浸漬することにより銅箔を取り除いた5mm角の評価基板を作製し、TMA試験装置(デュポン(株)製TMA2940)を用い、評価基板の熱膨張特性を観察することにより評価した。
(3)はんだ耐熱性の評価
銅張積層板を銅エッチング液に浸漬することにより銅箔を取り除いた5cm角の評価基板を作製し、プレッシャー・クッカー試験装置(平山製作所(株)製)を用いて、121℃、0.2mPaの条件で4時間までプレッシャー・クッカー処理を行った後、温度288℃のはんだ浴に、評価基板を20秒間浸漬した後、外観を観察することによりはんだ耐熱性を評価した。
(4)銅付き耐熱性(T−288)の評価
銅張積層板から5mm角の評価基板を作製し、TMA試験装置(デュポン(株)製TMA2940)を用い、288℃で評価基板の膨れが発生するまでの時間を測定することにより評価した。
銅張積層板を銅エッチング液に浸漬することにより銅箔を取り除いた評価基板を作製し、プレッシャー・クッカー試験装置(平山製作所(株)製)を用いて、121℃、2atmの条件で4時間までプレッシャー・クッカー処理を行った後、評価基板の吸水率を測定した。
(6)難燃性の評価
銅張積層板を銅エッチング液に浸漬することにより銅箔を取り除いた評価基板から、長さ127mm、幅12.7mmに切り出した評価基板を作製し、UL94の試験法(V法)に準じて評価した。
(7)比誘電率及び誘電正接の測定
得られた銅張積層板を銅エッチング液に浸漬することにより銅箔を取り除いた評価基板を作製し、比誘電率測定装置(Hewllet・Packerd社製HP4291B)を用いて、周波数1GHzでの比誘電率及び誘電正接を測定した。
温度計、攪拌装置、還流冷却管付き水分定量器の付いた加熱及び冷却可能な容積2リットルの反応容器に、ベンゾグアナミン:187.00gとシクロヘキサノン:562.00gを入れ、次いで無水マレイン酸:196.00gを添加して140℃に昇温して均一に溶解した。溶解後、160℃で8時間、還流脱水反応を行った。 次いで、9,10−ジヒドロ−9−オキサ−10−ホスファフェナントレン−10−オキシド:215.00gを添加し、更に160℃で5時間反応を行い、リン含有グアナミン樹脂(1−1)の溶液を得た。
温度計、攪拌装置、還流冷却管付き水分定量器の付いた加熱及び冷却可能な容積2リットルの反応容器に、ベンゾグアナミン:187.00gとシクロヘキサノン:655.00gを入れ、次いでN−フェニルマレイミド:173.00gと無水マレイン酸:98.00gを添加して140℃に昇温して均一に溶解した。溶解後、160℃で8時間、還流脱水反応を行った。次いで、9,10−ジヒドロ−9−オキサ−10−ホスファフェナントレン−10−オキシド:215.00gを添加し、更に160℃で5時間反応を行い、リン含有グアナミン樹脂(1−2)の溶液を得た。
温度計、攪拌装置、還流冷却管付き水分定量器の付いた加熱及び冷却可能な容積2リットルの反応容器に、ベンゾグアナミン:187.00gとシクロヘキサノン:564.00gを入れ、次いで無水コハク酸:100.00gと無水マレイン酸:98.00gを添加して140℃に昇温して均一に溶解した。溶解後、160℃で8時間、還流脱水反応を行った。 次いで、9,10−ジヒドロ−9−オキサ−10−ホスファフェナントレン−10−オキシド:215.00gを添加し、更に160℃で5時間反応を行い、リン含有グアナミン樹脂(1−2)の溶液を得た。
温度計、攪拌装置、還流冷却管付き水分定量器の付いた加熱及び冷却可能な容積2リットルの反応容器に、ベンゾグアナミン:187.00gとシクロヘキサノン:533.00gを入れ、次いで無水マレイン酸:196.00gを添加して140℃に昇温して均一に溶解した。溶解後、160℃で8時間、還流脱水反応を行った。 次いで、ジフェニルホスフィン:186.00gを添加し、更に160℃で5時間反応を行い、リン含有グアナミン樹脂(1−4)の溶液を得た。
(A)成分として製造例1で得られたリン含有グアナミン樹脂(1−1)30質量部、(B)成分としてクレゾールノボラック型エポキシ樹脂(大日本インキ化学工業株式会社製、商品名:エピクロンN−673)30質量部、エポキシ硬化剤としてクレゾールノボラック型フェノール樹脂(大日本インキ化学工業株式会社製、商品名:KA−1165)30質量部、難燃剤として水酸化アルミニウム50質量部を、溶剤としてメチルエチルケトンを使用して混合して樹脂分70質量%の均一なワニスを得た。次に、上記ワニスを厚さ0.2mmのEガラスクロスに含浸塗工し、160℃で10分加熱乾燥して樹脂含有量55質量%のプリプレグを得た。このプリプレグを4枚重ね、18μmの電解銅箔を上下に配置し、圧力2.5mPa、温度185℃で90分間プレスを行って、銅張積層板を得た。
得られた銅張積層板を用いて、前述の方法により、銅箔接着性(銅箔ピール強度)、ガラス転移温度、はんだ耐熱性、吸湿性(吸水率)、難燃性、比誘電率(1GHz)、誘電正接(1GHz)を測定・評価し、その結果を第1表に示す。
(A)成分として製造例2で得られたリン含有グアナミン樹脂(1−2)30質量部を用いた他は、実施例1と同様とした。得られた銅張積層板の性能の測定・評価結果を第1表に示す。
(A)成分として製造例3で得られたリン含有グアナミン樹脂(1−3)30質量部を用いた他は、実施例1と同様とした。得られた銅張積層板の性能の測定・評価結果を第1表に示す。
(A)成分として製造例4で得られたリン含有グアナミン樹脂(1−4)30質量部を用いた他は、実施例1と同様とした。得られた銅張積層板の性能の測定・評価結果を第1表に示す。
(B)成分としてフェノールノボラック型エポキシ樹脂(大日本インキ化学工業
株式会社製、商品名:エピクロンN−770)30質量部を用いた他は、実施例1と同様とした。得られた銅張積層板の性能の測定・評価結果を第1表に示す。
(B)成分としてフェノールノボラック型エポキシ樹脂(大日本インキ化学工業
株式会社製、商品名:エピクロンN−770)30質量部を用いた他は、実施例2と同様とした。得られた銅張積層板の性能の測定・評価結果を第1表に示す。
(A)成分としてベンゾグアナミン30質量部および、難燃剤として更にトリフェニルホスフェート10質量部を用いた他は、実施例1と同様とした。得られた銅張積層板の性能の測定・評価結果を第2表に示す。
(A)成分としてベンゾグアナミンとホルムアルデヒドの縮合物(日本触媒株式会社製、商品名:FP−100B)30質量部を用いた他は、比較例1と同様とした。得られた銅張積層板の性能の測定・評価結果を第2表に示す。
(A)成分としてヘキサメトキシメチロール化メラミン樹脂(三井サイアナミッド株式会社製、商品名:C−300)30質量部を用いた他は、比較例1と同様とした。得られた銅張積層板の性能の測定・評価結果を第2表に示す。
(A)成分を使用せずに、(B)成分のエポキシ樹脂45質量部、硬化剤45質量部を用いた他は、比較例1と同様とした。得られた銅張積層板の性能の測定・評価結果を第2表に示す。
(B)成分をフェノールノボラック型エポキシ樹脂(大日本インキ化学工業株式会社製、商品名:エピクロンN−770)45質量部とした他は、比較例4と同様とした。得られた銅張積層板の性能の測定・評価結果を第2表に示す。
難燃性、銅付き耐熱性(T−288)、低誘電特性、低誘電正接性の全てに優れている。
一方、比較例では、銅箔ピール強度、耐熱性、耐湿性、難燃性、銅付き耐熱性(T−288)、低誘電特性、低誘電正接性の全てを満たすものは無く、いずれかの特性に劣っている。
本発明のリン含有グアナミン樹脂を含有する熱硬化性樹脂組成物を、基材に含浸または塗工して得たプリプレグ、及び該プリプレグを積層成形することにより製造した積層板は、銅箔接着性、耐熱性、耐湿性、難燃性、銅付き耐熱性(T−288)、低誘電特性、低誘電正接性に優れ、電子機器用プリント配線板として極めて有用である。
Claims (6)
- (A)請求項1又は2に記載のリン含有グアナミン樹脂と、(B)1分子中に少なくとも2個のエポキシ基を有するエポキシ樹脂とを含有することを特徴とする熱硬化性樹脂組成物。
- 請求項3に記載の熱硬化性樹脂組成物を、基材に含浸又は塗工した後、Bステージ化して得られるプリプレグ。
- 請求項4に記載のプリプレグを1枚以上重ね、加熱加圧成形して得られる積層板。
- 重ねたプリプレグの少なくとも一方に金属箔を重ねた後、加熱加圧成形して得られた金属張積層板である請求項5に記載の積層板。
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