(第1実施形態)
図1は、本発明にかかる車両用蒸気圧縮式冷凍機の全体構成図である。本実施形態の蒸気圧縮式冷凍機は冷熱および温熱を発生させて車室内の空調を行うとともに、エンジン1で発生した廃熱から熱エネルギの回収を行うランキンサイクル併用型になっている。
まず、膨脹機一体型流体機械2は、車両エンジンルーム内に搭載されており、圧縮膨張部3、駆動発電部4、冷媒ポンプ5およびオイル供給通路6等によって構成される流体機械である。圧縮膨張部3、駆動発電部4および冷媒ポンプ5等は一体構造に結合され、膨脹機一体型流体機械2は全体として円筒状の形状になっている。
圧縮膨張部3は、車室内空調を行う際に駆動力を与えられることによって冷媒を圧縮および吐出する圧縮機(以下、圧縮機モードという)の機能と、熱エネルギ回収を行う際に冷媒の膨張により機械的エネルギを出力する膨張機(以下、膨張機モードという)の機能とを兼ね備える圧縮膨張手段である。圧縮膨張部3には、低圧の気相冷媒を吸入および流出させる低圧ポート3aと高圧の冷媒を吐出および流入させる高圧ポート3bとが設けられている。
駆動発電部4は、車室内空調を行う際に圧縮膨張部3に駆動力を与える機能と熱エネルギ回収を行う際に圧縮膨張部3の出力した機械的エネルギにより発電を行う機能とを兼ね備える駆動発電手段である。
冷媒ポンプ5は、熱エネルギ回収を行う際に液相冷媒を圧縮膨張部3の側に圧送する冷媒圧送手段である。冷媒ポンプ5には、液相冷媒を吸入させる冷媒吸入ポート5aと液相冷媒を吐出させる冷媒吐出ポート5bとが設けられている。
オイル供給通路6は、低圧ポート3aと冷媒吸入ポート5aとの間を連通させる連通手段である。オイル供給通路6には、気相冷媒から潤滑用のオイルを分離して貯めておく貯油室6aと低圧ポート3a側から冷媒吸入ポート5a側にのみオイルが流れることを許容する逆止弁6c等が設けられている。その他の膨張機一体型流体機械2の詳細については後述する。
次に、放熱器7は、冷媒の有する熱量を放熱させて冷媒を冷却するものであり、放熱器7の冷媒入口と膨張機一体型流体機械2の高圧ポート3bとは冷媒配管8により接続されている。
気液分離器9は、放熱器7の冷媒出口側に接続され、放熱器7から流出した冷媒を気相冷媒と液相冷媒とに分離するレシーバである。また、気液分離器9は、第1バイパス通路10により冷媒吸入ポート5aとも接続されている。
第1バイパス通路10は、気液分離器9で分離された液相冷媒を冷媒ポンプ5に供給するための冷媒配管であり、第1バイパス通路10には、気液分離器9側から冷媒ポンプ5側にのみ冷媒が流れることを許容する逆止弁10aが設けられている。また、冷媒ポンプ5に供給された冷媒は冷媒吐出ポート5bより吐出されるが、冷媒吐出ポート5bは、冷媒配管8に接続されている。
膨張弁11は気液分離器9の液相冷媒出口側に接続され、分離された液相冷媒を減圧膨張させるものである。本実施形態では、冷媒を等エンタルピ的に減圧するとともに、圧縮機モードで膨張機一体型流体機械2の低圧ポート3aに吸入される冷媒の過熱度が所定値となるように絞り開度を制御する温度式膨張弁を採用している。
蒸発器12は膨張弁11に接続され、膨張弁11で減圧された冷媒を蒸発させて吸熱作用を発揮させる吸熱器である。蒸発器12の冷媒出口側は膨張機一体型流体機械2の低圧ポート3aに接続されている。蒸発器12と膨張機一体型流体機械2を接続する冷媒配管には逆止弁12aが設けられ、逆止弁12aは、蒸発器12の冷媒出口側から低圧ポート3a側にのみ冷媒が流れることを許容している。
加熱器13は、冷媒配管8の高圧ポート3bと冷媒吐出ポート5b接続部との間に配置されており、冷媒配管8を流れる冷媒とエンジン冷却水とを熱交換させることで、冷媒を加熱する熱交換器である。
ここで、エンジン冷却水はエンジン1を冷却するために図1の破線部で示す温水回路14を循環している。温水回路14の、ウォータポンプ15はエンジン冷却水を循環させるための電動ポンプであり、三方弁16はエンジン1から流出したエンジン冷却水を加熱器13に導入させる回路と加熱器13に導入させずにバイパスさせる回路とを切り替えるための電磁バルブである。また、ラジエータ17はエンジン冷却水と外気とを熱交換させることで、エンジン冷却水を冷却する熱交換器である。
次に、開閉弁18は、冷媒配管8の冷媒吐出ポート5b接続部と放熱器7との間に配置されており、冷媒配管8を開閉する電磁式のバルブである。また、制御弁19は、冷媒配管8の高圧ポート3bと加熱器13との間に配置されており、圧縮機モードでは吐出弁、すなわち高圧ポート3b側から加熱器13側にのみ冷媒が流れることを許容する逆止弁として機能し、膨張機モードでは開弁状態となる電磁式のバルブである。
第2バイパス通路20は、膨張機一体型流体機械2の低圧ポート3aと放熱器7冷媒入口とを接続するための冷媒配管であり、第2バイパス通路20には、低圧ポート3a側から放熱器7側にのみ冷媒が流れることを許容する逆止弁20aが設けられている。
制御装置21は、膨張機一体型流体機械2の作動モードに応じて、駆動発電部4への電源供給、駆動発電部4と蓄電用バッテリ22の接続、さらに、三方弁16の切替制御、開閉弁18の制御および制御弁19の制御を行うものである。
次に、膨張機一体型流体機械2の詳細について図2の断面図により説明する。なお、図中に示す矢印は膨張機一体型流体機械2が車両エンジンルーム内に搭載される時の上下(天地)方向を示している。
まず、圧縮膨張部3について説明すると、圧縮膨張部3は膨張機一体型流体機械2の最上部に配置され、冷媒の圧縮膨張させる機構を備えている。この圧縮膨張機構は周知のスクロール型圧縮機構と同一の構造である。
具体的には、アッパハウジング301、ミドルハウジング302、シャフト303、アッパハウジング301と一体に構成された固定部材である固定スクロール(シェル)304、ミドルハウジング302と固定スクロール304との間の空間で旋回変位する可動部材である旋回スクロール305、固定スクロール304と旋回スクロール305との間の空間で冷媒の圧縮および膨張がなされる作動室306、作動室306と連通して冷媒の吸入および流出がなされる低圧ポート3aおよび冷媒の吐出および流入がなされる高圧ポート3b等により構成される。
アッパハウジング301とミドルハウジング302は圧縮膨張部3を保護する保護部材の役割を果たし、さらに、アッパハウジング301には固定スクロール304、高圧ポート3bおよび低圧ポート3a等が一体に構成されている。また、アッパハウジング301とミドルハウジング302とは図示しないガスケットおよびOリング等のシール材を介してネジ止めされており、結合部から冷媒が漏れないようになっている。
シャフト303は、ボールベアリング307を介してミドルハウジング302に軸支されており、軸方向上端側に回転中心軸に対して偏心した偏心部308を有するクランクシャフトになっている。偏心部308には旋回スクロール305がニードルベアリング309を介して回転可能に連結されている。
固定スクロール304は、板状の基板部304aおよび基板部304aからミドルハウジング302側(下方向)に突出した渦巻状の歯部304bによって構成される。一方、旋回スクロール305は、固定スクロール304の歯部304bに接触して噛み合う渦巻状の歯部305bおよび歯部305bが形成された基板部305aによって構成されている。
さらに、旋回スクロール305とミドルハウジング302との間には図示しない自転防止機構が設けられている。自転防止機構は、シャフト303が1回転する間に旋回スクロール305を偏心部308周りに1回転させるためのもので、シャフト303が回転すると旋回スクロール305は自転せずにシャフト303の回転中心軸周りを公転旋回する。なお、本実施形態では、自転防止機構としてピン−リング(ピン−ホール)式を採用している。
低圧ポート3aはアッパハウジング301の外周部に設けられた低圧冷媒の出入口であり、作動室306の最外径部と連通している。また、高圧ポート3bはアッパハウジング301の上部に設けられた高圧冷媒の出入口であり、最小体積状態の作動室306と連通する位置に設けられている。
次に、駆動発電部4について説明する。駆動発電部4はミドルハウジング302の内部で圧縮膨張部3の下方に配置され、圧縮膨張部3の駆動および発電を行う機構を備えている。この駆動発電機構は周知の直流電動機と同一の構造である。
具体的には、ミドルハウジング302、シャフト303、ステータ401、ステータ401内で回転するロータ402、シャフト303を軸支する結合部ハウジング403等により構成される。
ミドルハウジング302と結合部ハウジング403は駆動発電部4の保護部材の役割を果たし、ミドルハウジング302と結合部ハウジング403とは図示しないガスケットおよびOリング等のシール材を介してネジ止めされており、結合部から冷媒が漏れないようになっている。また、ミドルハウジング302とシャフト303は流体機械の小型化のため圧縮膨張部3の構成部材と共通化している。
ステータ401は巻き線が巻かれたステータコイルであり、ミドルハウジング302の内面壁に固定されている。ロータ402は永久磁石が埋設されたマグネットロータで、内周側にはキー溝404があり、キーにてシャフト303に固定されている。
結合部ハウジング403は、ミドルハウジング側(上方向)に尖頭状に突出した突出部403aを有している。この突出部403aにシャフト303の偏心部308側と反対(軸方向下端)側の端部がボールベアリング405を介して軸支されている。また、ボールベアリング405と結合部ハウジング403の間には、駆動発電部4側と冷媒ポンプ5側との間の冷媒およびオイルの漏れを防止するためのリップシール406が設けられている。
ミドルハウジング302の内壁面と結合部ハウジング403の突出部403a側の壁面とにより構成される空間は、シャフト303、ステータ401およびロータ402が配置する空間を構成すると同時に、これらが配置されていない残余空間に貯油室6aを構成している。貯油室6aは、気相冷媒からオイルを分離し、分離されたオイルを貯める貯油手段である。
さらに、突出部403aには貯油室6aと冷媒ポンプ5の冷媒吸入ポート5a側とを連通する連通孔6bが設けられ、連通孔6bには、貯油室6aから冷媒ポンプ5側にのみオイルが流れることを許容するオイル用の逆止弁6cが設けられている。また、連通孔6bのオイルの流れ方向の逆止弁6c下流側には、オリフィス6dが設けられている。オリフィス6dは貯油室6aから冷媒ポンプ5へ供給されるオイルの量を適正に調整するための絞り機構である。
本実施形態では、オリフィス6dをオイル流れ方向の逆止弁6c下流側に設けているが、逆止弁6c上流側に設けてもよい。なお、本実施形態では、冷媒ポンプ5への適正なオイル供給量を実現するために、最小開口直径0.5mmのオリフィスを用いている。
次に、冷媒ポンプ5について説明する。冷媒ポンプ5は膨張機一体型流体機械2の最下部に配置され、冷媒を圧送する機構を備える冷媒圧送手段である。本実施形態では冷媒ポンプ5の冷媒圧送機構も周知のスクロール型圧送機構と同一構造である。
具体的には、ロワハウジング501、結合部ハウジング403、ポンプシャフト502、ロワハウジング501と一体に構成された固定部材である固定スクロール(シェル)503、結合部ハウジング403と固定スクロール503との間の空間で旋回変位する可動部材である旋回スクロール504、固定スクロール503と旋回スクロール504との間の空間で冷媒の搬送を行う作動室505、作動室505と連通して冷媒が吸入される冷媒吸入ポート5aおよび冷媒が吐出される冷媒吐出ポート5b等により構成される。
ロワハウジング501と結合部ハウジング403は冷媒ポンプ5を保護する保護部材の役割を果たし、さらに、ロワハウジング501には固定スクロール503、冷媒吐出ポート5bおよび冷媒吸入ポート5a等が一体に構成される。また、ロワハウジング501と結合部ハウジング403とは図示しないガスケットおよびOリング等のシール材を介してネジ止めされており、結合部から冷媒が漏れないようになっている。また、結合部ハウジング403は流体機械の小型化のため駆動発電部4の構成部材と共通化している。
ポンプシャフト502は、ボールベアリング506を介して結合部ハウジング403に軸支されている。また、ポンプシャフト502はシャフト303とワンウェイクラッチ507で結合されている。ワンウェイクラッチ507は膨張機モードにおいてのみ、シャフト303の回転駆動力をポンプシャフト502に伝える機能を有する動力伝達手段である。
さらに、ポンプシャフト502は軸方向下端側に回転中心軸に対して偏心した偏心部508を有するクランクシャフトになっており、旋回スクロール504がニードルベアリングを介して偏心部508に回転可能に連結されている。
固定スクロール503は、板状の基板部503aおよび基板部503aから結合部ハウジング403側(上方向)に突出した渦巻状の歯部503bによって構成される。一方、旋回スクロール504は、固定スクロール503の歯部503bに接触して噛み合う渦巻状の歯部504b、および歯部504bが形成された基板部504aによって構成されている。
さらに、旋回スクロール504と結合部ハウジング403との間には図示しない自転防止機構が設けられている。自転防止機構は、ポンプシャフト502が1回転する間に旋回スクロール504を偏心部508周りに1回転させるためのもので、ポンプシャフト502が回転すると旋回スクロール504は自転せずにポンプシャフト502の回転中心軸周りを公転旋回する。なお、本実施形態の自転防止機構は、圧縮膨張部3と同様にピン−リング(ピン−ホール)式を採用している。
冷媒吸入ポート5aはロワハウジング501の外周部に設けられた液相冷媒の吸入口であり、作動室505の最外径部と連通している。また、冷媒吐出ポート5bはロワハウジング501の下部に設けられた冷媒の吐出口であり、作動室505と連通する位置に設けられている。
次に、オイル供給通路6について説明する。オイル供給通路6は、図3の矢印で示すように、低圧ポート3a→ミドルハウジング302と旋回スクロール305との間の隙間→ボールベアリング307内部の隙間→貯油室6a→連通孔6b→ボールベアリング405内部の隙間→ボールベアリング506内部の隙間→結合部ハウジング403と旋回スクロール504との間の隙間→冷媒吸入ポート5aの順に連通するように構成されている。
次に、上述構成において本実施形態の作動について説明する。まず、車室内空調を行う圧縮機モードでは、制御装置21が駆動発電部4に電源を供給し、開閉弁18を開放し、制御弁19を逆止弁として機能させ、三方弁16を加熱器13バイパス通路側に切り替える。
駆動発電部4に電源が供給されると、ロータ402と結合されたシャフト303が回転するので、圧縮膨張部3に回転駆動力が与えられる。ここで、圧縮膨張部3では、旋回スクロール305が固定スクロール304に対して一方向に回転すると作動室306の体積は縮小し、逆方向に回転すると作動室306の体積は拡大するようになっているので、この回転駆動力の回転方向は作動室306の体積を縮小させる方向(以下、圧縮方向という)になっている。よって、圧縮機モードでは、低圧ポート3aから吸入された冷媒が作動室306に入り、作動室306で圧縮されて高圧ポート3bより吐出される。
そして、低圧ポート3aより吸入される気相冷媒の一部は低圧ポート3aに連通する貯油室6aに流入する。さらに、冷媒には機械的摺動部潤滑用のオイルが混入しているので、オイルも気相冷媒とともに貯油室6aに流入する。このオイルは気相冷媒に対して比重が大きいので、重力によって気相冷媒から分離し、下方に移動して貯油室6aの最下部に貯まる。なお、図3の波線407は通常運転時に貯まるオイルの油面を示している。
また、貯油室6aにオイルが充満して、図3の波線407aのように油面が上昇すると、気相冷媒は貯油室6aに流入しにくくなり、オイルも分離されにくくなるので、必要以上のオイル分離を防止できるようになっている。さらに、貯油室6aに貯まったオイルはステータ401、ロータ402等と同じ空間に存在するので、駆動発電部4を冷却する効果をも発揮している。
高圧ポート3bから吐出された冷媒は制御弁19、加熱器13および開閉弁18を通過して放熱器7へ圧送される。ここで、圧縮機モードでは開閉弁18を開放し、三方弁16を加熱器13バイパス通路に切り替えているので、温水回路14のエンジン冷却水はウォータポンプ15→エンジン1→三方弁16→ラジエータ17→ウォータポンプ15の順で加熱器13をバイパスして循環する。よって、冷媒は加熱されず、加熱器13および開閉弁18は単なる冷媒通路として機能する。
放熱器7にて熱量を放熱した冷媒は気液分離器9で気相冷媒と液相冷媒に分離される。ここで、圧縮機モードでは、ワンウェイクラッチ507の作用により、シャフト303の回転しても、ポンプシャフト502に回転駆動力が伝達されない。その結果、ロータ402冷媒ポンプ5は作動しないので、気液分離器9内の液相冷媒が冷媒ポンプ5に吸入されることはない。
気液分離器9で分離された液相冷媒は膨張弁11で減圧されて、蒸発器12にて熱量を吸熱して、膨張機一体型流体機械2の低圧ポート3aより吸入される。これにより、圧縮機モードでは、膨張機一体型流体機械2→放熱器7→気液分離器9→膨張弁11→蒸発器12→膨張機一体型流体機械2の順で冷媒を循環させることができ、蒸発器12で吸熱した熱量を放熱器7へ移動させて放熱する蒸気圧縮式冷凍機を構成できる。
ここで、貯油室6a側の背圧は低圧ポート3aの圧力と同じであるが、冷媒吸入ポート5a側の背圧は気液分離器9と連通しているので低圧ポート3aの圧力よりも高くなっている。この圧力差によって気液分離器9の冷媒がオイル供給通路6を介して貯油室6a側に逆流すると、低圧ポート3aに高圧冷媒が再吸入されることとなり、蒸気圧縮式冷凍機の冷凍能力を低下させる原因となる。そこで、本実施形態では逆止弁6cによって冷媒の逆流を防止している。
次に、廃熱から熱エネルギの回収を行う膨張機モードでは、制御装置21は駆動発電部4と蓄電用バッテリ22を接続し、開閉弁18を閉鎖し、制御弁19を開放し、三方弁16を加熱器13側に切り替える。
三方弁16を加熱器13側に切り替えると、温水回路14のエンジン冷却水がウォータポンプ15→エンジン1→加熱器13→三方弁16→ラジエータ17→ウォータポンプ15の順で循環するので、エンジン1の廃熱によって加熱器13内部の冷媒が加熱される。
加熱された冷媒は、開閉弁18が閉鎖されているので、加熱器13から制御弁19を通過して高圧ポート3b側へ流出し、高圧ポート3bより圧縮膨張部3の作動室306に流入する。
作動室306に流入した冷媒は気化膨張して作動室306の体積を拡大させるので、旋回スクロール305およびシャフト303を作動室306の体積が拡大する方向(以下、膨張方向という)に回転させる。さらに、膨張した冷媒は低圧ポート3aより流出する。
この回転によってシャフト303に結合されたロータ402も回転し、ステータ401のコイルを通過する磁束量を変化させるので、駆動発電部4を発電機として作動させることができる。
また、発電された電力は制御装置21を介して接続された蓄電用バッテリ22に蓄電される。すなわち、エンジン1の廃熱によって冷媒を膨張させ、膨張機一体型流体機械2に機械的エネルギを出力させ、駆動発電部4で電気エネルギに変換することで熱エネルギの回収を行うことができる。
さらに、この機械的エネルギの一部はワンウェイクラッチ507を介して冷媒ポンプ5の駆動力としてポンプシャフト502に伝達される。ここで、冷媒ポンプ5では、ポンプシャフト502が膨張方向に回転すると、旋回スクロール504が固定スクロール503に対して回転し、作動室505が冷媒吸入ポート5a側に連通する位置から冷媒吐出ポート5b側に連通する位置へ移動するようになっている。
よって、膨張機モードでは、冷媒吸入ポート5aから吸入された液相冷媒が冷媒吐出ポート5bより加熱器13に圧送され、圧送された冷媒が加熱されて膨張することで、圧縮膨張部3はさらに機械的エネルギを出力することができる。
なお、冷媒ポンプ5のスクロール型圧縮機構の圧縮率は1になっており、作動室505に液相冷媒が吸入されても、液相冷媒は圧縮されないので、液圧縮による冷媒ポンプ5の動作不良は生じない。なお、圧縮機モードでは、ワンウェイクラッチ507によって冷媒ポンプ5に駆動力が伝達されないので、冷媒ポンプ5は作動しない。
一方、低圧ポート3aから流出した冷媒は逆止弁12aの機能によって第2バイパス通路20を通過し、放熱器7で放熱して気液分離器9へ移動する。ここで、低圧ポート3aより流出する冷媒の一部は貯油室6aに流入するので、圧縮機モードと同様にオイルが分離されて貯油室6aに貯まる。
これにより、膨張機モードでは、冷媒ポンプ5→加熱器13→膨張機一体型流体機械2→第2バイパス通路20→放熱器7→気液分離器9→第1バイパス通路10→冷媒ポンプ5の順で冷媒を循環させることができ、加熱器13で吸熱した熱量により冷媒が膨張する際、膨張機一体型流体機械2より機械的エネルギを取り出すランキンサイクルを構成できる。
ここで、貯油室6a側の背圧は低圧ポート3aの圧力と同じであり、冷媒吸入ポート5a側の背圧は放熱器7および冷媒配管等を通過する際の圧力損失と冷媒ポンプ5の吸入負圧によって低圧ポート3aの圧力よりも低くなっている。
この圧力差によって、貯油室6aに貯まったオイルはオイル供給通路6を介して冷媒ポンプ5の冷媒吸入ポート5aへ供給される。このオイルは液相冷媒に溶けやすい性質を有するが、冷媒吸入ポート5aから機械的摺動部までの距離は短く、かつ、さらに十分な量を供給できるので、オイルが液相冷媒に溶け切ることなく機械的摺動部に到達できる。これによって、冷媒ポンプ5の機械的摺動部を十分に潤滑することができる。
(第2実施形態)
第1実施形態では、潤滑用のオイルの連通孔6bに逆止弁6cとオリフィス6dを設けた膨張機一体型流体機械2について説明したが、本実施形態では図4の断面図に示すように連通孔6bに、オリフィス6dのみを設けて逆止弁6cを設けていない。その他の構成は第1実施形態と同じである。
膨張機一体型流体機械2が圧縮機モードで作動する場合は、貯油室6a側の背圧と冷媒吸入ポート5a側の背圧との圧力差により冷媒が連通孔6bを介して貯油室6a側に逆流するが、この逆流による蒸気圧縮式冷凍機の冷凍能力の低下は、車両用空調機能を損なわない程度であれば許容できるものである。
そこで、オイル供給通路6を構成するオリフィス6d、ボールベアリング405、506内部の隙間および結合部ハウジング403と旋回スクロール504との間の隙間によりオイル供給通路6の通路抵抗を調整して、オイル供給量の決定および冷媒逆流量の制限を両立させることで、逆止弁6cを設けなくても第2実施形態と同様の効果を得ることができる。
(第3実施形態)
第1実施形態および第2実施形態では、連通孔6bを結合部ハウジング403に設けてオイル供給通路6を構成したが、本実施形態ではオイル供給通路6に代えて、図5の断面図に示すように、シャフト303の下端側内部にオリフィス61dを備える連通孔61bを設けてオイル供給通路61を構成している。その他の構成は第2実施形態と同じである。
シャフト303の下端側内部に連通孔61bを設けても、第2実施形態と同様の効果を得ることができる。さらに、オイル供給通路61は、図6の矢印で示すように、低圧ポート3a→ミドルハウジング302と旋回スクロール305との間の隙間→ボールベアリング307内部の隙間→貯油室6a→連通孔61b→ワンウェイクラッチ507内部の隙間→ボールベアリング506内部の隙間→結合部ハウジング403と旋回スクロール504との間の隙間→冷媒吸入ポート5aの順に連通するように構成されているので、ワンウェイクラッチ507の機械的摺動部を潤滑することもできる。
(第4実施形態)
第1実施形態、第2実施形態および第3実施形態では、圧縮膨張部3、駆動発電部4、冷媒ポンプ5およびオイル供給通路6等を一体に構成した膨張機一体型流体機械2を用いた蒸気圧縮式冷凍機について説明したが、本実施形態では図7の全体構成図に示すように冷媒ポンプ5およびオイル供給配管62を別体として構成し、膨張機一体型流体機械2に冷媒ポンプ5およびオイル供給通路6を一体に構成していない。
冷媒ポンプ5は、車両エンジンルーム内に搭載された電動式のポンプであり、制御装置21より膨張機モードにおいてのみ電源供給を受けて作動する。よって、本実施形態では、圧縮膨張部3から駆動力を伝達するための動力伝達手段も設けられていない。ただし、この冷媒ポンプ5は膨張機モードのみに作動するようになっていれば、動力伝達手段を介してエンジン1や圧縮膨張部3から駆動力を得て作動するポンプを用いてもよい。
オイル供給配管62は、低圧ポート3aと冷媒吸入ポート5aとの間を接続する配管であり、本実施形態における連通手段である。オイル供給配管62には、オイルタンク62a、低圧ポート3a側から冷媒吸入ポート5a側にのみオイルが流れることを許容する逆止弁62cおよびオイル流れ方向逆止弁62c下流側に供給オイル量を調整するための絞り機構であるオリフィス62dが設けられている。
オイルタンク62aは、内部に空間を有し、気相冷媒から潤滑用のオイルを重力によって分離して貯めておくレシーバ機能付容器であり、本実施形態における貯油手段である。その他の構成は第1実施形態と同じである。
上記の構成において、圧縮機モードでは、制御装置21は冷媒ポンプ5に電源供給をしないので、第1実施形態と同様の蒸気圧縮式冷凍機が構成される。また、膨張機モードでは、制御装置21は冷媒ポンプ5に電源供給をするので、第1実施形態と同様のランキンサイクルが構成される。
よって、冷媒ポンプ5およびオイル供給配管62を膨張機一体型流体機械2と別体に構成しても、低圧ポート3a側と冷媒吸入ポート5a側の圧力差によって、オイルタンク62aに貯まったオイルが冷媒吸入ポート5aへ供給されるので、冷媒ポンプ5の機械的摺動部を十分に潤滑することができる。
(第5実施形態)
上述の第1〜第4実施形態においては、ランキンサイクル併用型の蒸気圧縮式冷凍機について説明したが、本実施形態ではランキンサイクル専用機について説明する。
図8は、車両エンジン1の廃熱を回収するランキンサイクル専用機の全体構成図である。まず、膨張機として機能する膨張機一体型流体機械2は第1実施形態と同様の構成であるが、第1実施形態における圧縮膨張部3は冷媒の膨張により機械的エネルギを出力する膨張手段としてのみ機能し、駆動発電部4は機械的エネルギにより発電を行う発電手段としてのみ機能する。
なお、ランキンサイクル専用機において、流体機械2は圧縮機として作動しないので、シャフト303は前述の膨張方向にしか回転しない。よってシャフト303とポンプシャフト502とは、ワンウェイクラッチ507を介さずに、一体に回転するように結合してもよい。
次に、放熱器70は、冷媒の有する熱量を放熱させて冷媒を冷却するものであり、放熱器70の冷媒入口と流体機械2の低圧ポート3aとは冷媒配管により接続されている。気液分離器90は、放熱器70から流出した冷媒を気相冷媒と液相冷媒とに分離するレシーバである。
また、気液分離器90の液相冷媒側と冷媒ポンプ5の冷媒吸入ポート5aとは、分離された液相冷媒が冷媒吸入ポート5aに供給されるように冷媒配管で結合されている。なお、冷媒ポンプ5の冷媒吐出ポート5bは加熱器13と結合されている。
加熱器13は、冷媒ポンプ5より圧送された冷媒とエンジン冷却水とを熱交換させることで、冷媒を加熱する熱交換器である。なお、エンジン冷却水は第1実施形態と同様の温水回路14を循環している。また、加熱器13の冷媒出口側は流体機械の高圧ポート3bに冷媒配管で結合されている。
制御装置21は、流体機械2の発電手段と蓄電用バッテリ22の接続、三方弁16の切替制御を行うものである。
上述の構成において、制御装置21が発電手段と蓄電用バッテリ22とを接続し、三方弁16を加熱器13側に切り替えることで、加熱器13→膨張機一体型流体機械2の圧縮膨張部3→放熱器70→気液分離器90→膨張機一体型流体機械2の冷媒ポンプ5→加熱器13の順で冷媒を循環させるランキンサイクルを構成でき、第1実施形態と同様に蓄電用バッテリ22に電気的エネルギを蓄えることができる。
さらに、第1実施形態と同様に、貯油室6aに貯まったオイルを、オイル供給通路6を介して冷媒ポンプ5の冷媒吸入ポート5aへ供給できるので、冷媒ポンプ5の機械的摺動部を十分に潤滑することができる。
(第6実施形態)
上述の第5実施形態と同様に、本実施形態も図11に示すように、ランキンサイクル専用機について説明する。図11は車両エンジン1の廃熱を回収するランキンサイクル専用機の全体構成図であり、第5実施形態の膨張機一体型流体機械2を廃止して、流体機械200を採用している。その他のサイクルの全体構成は、第5実施形態と同様である。
流体機械200の詳細については、図12の断面図により説明する。なお、図12では第1実施形態の膨張機一体型流体機械2(図2)と同一もしくは均等の機能を有する部分には同一の符号を付している。
流体機械200は、車両エンジンルーム内に搭載されており、膨張部3’、発電部4’、冷媒ポンプ51およびオイル供給通路63等によって構成される。膨張部3’、発電部4’および冷媒ポンプ51等は一体構造に結合され、流体機械200は全体として略円筒状の形状になっている。
また、図12の図中に示す矢印は流体機械200が車両エンジンルーム内に搭載される時の上下(天地)方向を示している。従って、流体機械200は、第1実施形態の膨張機一体型流体機械2とは逆に、上から冷媒ポンプ51→発電部4’→膨張部3’の順に配置される。
まず、膨張部3’は、流体機械200の最下部に配置され、冷媒の膨張により機械的エネルギを出力する膨張手段である。この膨張部3’の基本的構成は第1実施形態の圧縮膨張部3と同様である。従って、駆動力を与えられれば、低圧ポート3aから吸入した冷媒を圧縮して高圧ポート3bから吐出する圧縮機としての機能を果たすこともできる。
流体機械200の膨張部3’では、第1実施形態の圧縮膨張部3に対して、膨張後の低圧冷媒を流出させる低圧ポート3aの配置が異なっている。具体的には、本実施形態の低圧ポート3aはミドルハウジング302の外周部に設けられる。
このため、アッパハウジング301には、作動室306と連通して膨張後の冷媒を流出させる低圧冷媒流出口301aが、ミドルハウジング302との結合部に設けられる。一方、ミドルハウジング302には、低圧冷媒流出口301aとミドルハウジング302の内部空間とを連通させる低圧冷媒連通路302aが設けられる。
低圧冷媒連通路302aは、ミドルハウジング302の外周部において上下方向に伸びるように設けられており、膨張部3’で膨張した低圧冷媒は下側端部から流入して、上側端部から低圧冷媒がミドルハウジング302の内部へ流出するようになっている。
さらに、低圧ポート3aは、シャフト303の中心軸に対して低圧冷媒連通路302a上側端部の略軸対象の位置に設けられている。従って、作動室306から流出した冷媒は低圧冷媒流出口301a→低圧冷媒連通路302a→ミドルハウジング302の内部の順に通過して低圧ポート3aから流出するようになっている。
また、本実施形態のシャフト303には、後述するオイル供給通路63の一部を構成するオイル連通路303aが設けられている。このオイル連通路303aはシャフト303と同軸上にシャフト303および偏心部308を貫通して、偏心部308の底面側とシャフト303の上端側とを連通するように構成されている。
さらに、オイル連通路303aには、偏心部308の底面側からシャフト303の上端側にのみ流体(オイル)が流れることを許容する逆止弁63cが設けられている。その他の膨張部3’の構成は第1実施形態の圧縮膨張部3と同様である。
次に、発電部4’について説明する。発電部4’はミドルハウジング302の内部であって膨張部3’の上方に配置されており、膨張部3’から出力された機械的エネルギによって発電する発電手段である。この発電部4’の基本的構成は第1実施形態の駆動発電部4と同様である。従って、電力の供給を受ければ、膨張部3’を圧縮機として駆動させる駆動手段としての機能を果たすこともできる。
また、本実施形態では、低圧冷媒連通路302aを流出した低圧冷媒が、ミドルハウジング302の内部を通過して低圧ポート3aから流出するように構成されているので、低圧冷媒連通路302aから流出した低圧冷媒はステータ401、ロータ402等の配置された内部空間を通過して低圧ポート3aから流出することになる。
さらに、第1実施形態と同様に、ミドルハウジング302の内壁面、ミドルハウジングの内壁面、旋回スクロール305のミドルハウジング302側背面によって構成される空間が、シャフト303、ステータ401およびロータ402が配置される空間と貯油手段である貯油室63aとを構成している。
次に、冷媒ポンプ51について説明する。冷媒ポンプ51は流体機械200の最上部に配置され、熱エネルギ回収を行う際に液相冷媒を膨張部3’側に圧送する冷媒圧送手段である。なお、本実施形態では、冷媒ポンプ51の冷媒圧送機構として周知のローリングピストン型の圧送機構を採用している。
冷媒ポンプ51の詳細については、図12および図13により説明する。なお、図13は図12のA−A断面図である。冷媒ポンプ51は、ポンプハウジング511、結合部ハウジング403、ポンプシャフト512、フロントプレート513、リアプレート514、シリンダ515、ポンプロータ516等により構成される。
ポンプハウジング511と結合部ハウジング403は冷媒圧送機構を保護する保護部材の役割を果たし、さらに、ポンプハウジング511には冷媒吐出ポート5bおよび冷媒吸入ポート5a等が一体に構成される。また、ポンプハウジング511と結合部ハウジング403とは図示しないガスケットおよびOリング等のシール材を介してネジ止めされており、結合部から冷媒が漏れないようになっている。
ポンプシャフト512は、ボールベアリング517を介してフロントプレート513およびリアプレート514に回転可能に軸支されており、軸方向上側に回転中心軸に対して偏心した偏心部518を有するクランクシャフトになっている。この偏心部518にはポンプロータ516が回転可能に連結される。
フロントプレート513およびリアプレート514は、略円形板状の形状で、中空円柱状のシリンダ515をそれぞれ上下から挟み込むように配置されている。これにより、シリンダ515の内周側にポンプロータ516の作動空間が形成される。
また、リアプレート514には、冷媒吸入ポート5aの冷媒を作動空間に導く冷媒吸入通路514aが構成され、フロントプレート513には作動空間の冷媒を冷媒吐出ポート5bに導く冷媒吐出通路513aが構成されている。さらに、冷媒吐出通路513aの出口部には、冷媒吐出通路513a側から冷媒吐出ポート5b側へ冷媒が流れることのみを許容する冷媒用逆止弁513b(具体的には、リード弁)が設けられている。
さらに、本実施形態のフロントプレート513には、冷媒ポンプ51吸入側(具体的には冷媒吸入ポート5a側)と機械的摺動部B(具体的には偏心部518の配置される空間)とを連通させる吸入側連通路513cが設けられている。
この吸入側連通路513cは、機械的摺動部Bに冷媒ポンプ51吸入側の圧力を作用させて、機械的摺動部Bの背圧を冷媒吸入ポート5aの圧力と同等にするものである。従って、本実施形態では、吸入側連通路513cが吸入側連通手段となる。
ポンプロータ516は、偏心部518との連結部になる内周部に滑り軸受け519を有しており、ポンプシャフト512が回転すると偏心部518が滑り軸受け519と機械的に摺動しながら回転する。さらに、この偏心部519の回転によって、ポンプロータ516が前述の作動空間内部をポンプシャフト512の軸を中心に回転運動する。
従って、本実施形態では、ポンプロータ516が可動部材であり、ポンプシャフト512が動力伝達部材となる。そして、ポンプシャフト512(具体的には偏心部518)と滑り軸受け519の摺動部が機械的摺動部B(図12の偏心部518と滑り軸受け519の間に示す太線部)となる。なお、本実施形態では、偏心部518の外径と滑り軸受け519の内径との隙間量は20〜40ミクロン程度になっている。
一方、ポンプロータの外周部は、図13に示すように、シリンダ515の内周面に接触しながら回転運動するようになっている。さらに、シリンダ515の内周側には、軸方向の切欠き部515aが設けられており、切欠き部515aの内部にはスプリング515bおよびベーン515cが配置されている。ベーン515cはスプリング515bの荷重によって常に、ポンプロータ516の外周面に押しつけられている。
これにより、シリンダ515とポンプロータ516との接触部、ベーン515cとポンプロータ516との接触部、フロントプレート513およびリアプレート514によって冷媒を圧送するための冷媒圧送空間が構成される。
さらに、シリンダ515の内周側には、リアプレート514の冷媒吸入通路514aと連通して、冷媒圧送空間に冷媒を流入させる冷媒吸入口515d、フロントプレート513の冷媒吐出通路513aと連通して冷媒圧送空間から冷媒を流出させる冷媒吐出口515eが設けられている。
従って、ポンプシャフト512の回転に伴って、上述の冷媒圧送空間が冷媒吸入口515d側から冷媒吐出口515e側へ移動することによって冷媒が圧送されるようになっている。なお、図12の冷媒ポンプ51の断面については、冷媒吸入口515dおよび冷媒吐出口515eを図示する都合上、図13のC−C断面を示している。
なお、ポンプシャフト512は結合部ハウジング403側(図12の下側)に突き出すように配置されており、ポンプシャフト512の結合部ハウジング403側の端部は、シャフト303と連結されている。これにより、シャフト303から回転駆動力が伝達されてポンプシャフト512が回転するようになっている。
具体的には、ポンプシャフト512の結合部ハウジング403側の端部を軸方向から見て多角形状に構成し、さらに、シャフト303にポンプシャフト512下側端部に適合する多角形状凹部を構成し、ポンプシャフト512の下側端部をシャフト303の多角形状凹部に嵌合させることによって連結している。
もちろん、膨張部3’が機械的エネルギを出力する時のみにシャフト303からポンプシャフト512へ駆動力を伝達できる伝達手段(例えば、ワンウェイクラッチ)を用いて、シャフト303とポンプシャフト512とを連結してもよい。これにより、不必要な冷媒ポンプ51の作動を抑制できるとともに、流体機械200をランキンサイクル併用型の蒸気圧縮式冷凍機に適用することも可能となる。
また、ポンプシャフト512と結合部ハウジング403との間には、発電部4’側と冷媒ポンプ51側との間の冷媒およびオイルの漏れを防止するためのリップシール406が設けられている。
さらに、本実施形態のポンプシャフト512には、後述するオイル供給通路63の一部を構成するオイル連通用の連通孔520が設けられている。この連通孔520はポンプシャフト512の結合部ハウジング403側端部と機械的摺動部Bとを連通するように構成されている。これにより、連通孔520の結合部ハウジング403側端部は、前述のシャフト303に設けられたオイル連通路303aに連通するようになっている。
次に、オイル供給通路63について説明する。オイル供給通路63は、低圧ポート3aと機械的摺動部Bとの間を連通させる連通手段である。本実施形態では、図14の矢印で示すように、低圧ポート3aに連通するミドルハウジング302の貯油室63a→シャフト303のオイル連通路303a→逆止弁63c→ポンプシャフト512の連通孔520→機械的摺動部B(偏心部518と滑り軸受け519との間)の順に連通するように構成される。
従って、オイル供給通路63は、気相冷媒から潤滑用のオイルを分離して貯めておく貯油室63aと低圧ポート3a側から機械的摺動部B側にのみオイルが流れることを許容する逆止弁63cとを有することになる。その他の流体機械の構成は、第1実施形態と同様である。
上述の構成において、制御装置21が発電手段と蓄電用バッテリ22とを接続し、三方弁16を加熱器13側に切り替えることで、加熱器13→流体機械200の膨張部3’→放熱器70→気液分離器90→流体機械200の冷媒ポンプ51→加熱器13の順で冷媒を循環させるランキンサイクルを構成でき、第5実施形態と同様に蓄電用バッテリ22に電気的エネルギを蓄えることができる。
さらに、本実施形態では、ランキンサイクルを作動させると、ミドルハウジング302の低圧冷媒流出口301aから流出した気相冷媒が、低圧ポート3a側へ移動する際に、ミドルハウジング302内部に配置された発電部4’のステータ401、ロータ402等と衝突する。この衝突によって気相冷媒から分離されたオイルは重力によって貯油室63aに貯まる。
ここで、貯油室63a側の背圧は低圧ポート3aの圧力と同じ値となり、機械的摺動部B側の背圧は、フロントプレート513に吸入側連通路513cが構成されていることによって、冷媒吸入ポート5a側冷媒の圧力と同じ値になる。さらに、冷媒吸入ポート5a側の冷媒は放熱器70および冷媒配管等を通過する際の圧力損失と冷媒ポンプ5の吸入負圧によって低圧ポート3aの圧力よりも低くなっている。
このため、この圧力差によって貯油室6aに貯まったオイルがオイル供給通路63を介して冷媒ポンプ51の機械的摺動部Bへ供給される。その結果、機械的摺動部Bを十分に潤滑することができる。
特に、冷媒ポンプ51において、動力伝達部材をなすポンプシャフト512と可動部材をなすポンプロータ516との摺動部である機械的摺動部Bは、冷媒加圧時の冷媒圧力を支持しながら動力伝達を行うので摩耗しやすい。本実施形態では、この機械的摺動部Bに直接オイルを供給しているので、冷媒ポンプ51の長寿命化が図れる。
また、この機械的摺動部Bには、滑り軸受け519が採用されているので、機械的摺動部Bにオイルを確実に供給することで、転がり軸受けを採用する場合に対して転動疲労寿命を長期化させ、より一層、冷媒ポンプ51の長寿命化が図れる。
さらに、シャフト303に設けられたオイル連通路303aおよびポンプシャフト512に設けられた連通孔520によってオイル供給通路63を構成しているので、流体機械200の大型化を抑制している。
さらに、本実施形態では、機械的摺動部Bにおける偏心部518の外径と滑り軸受け519の内径との隙間量(クリアランス量)を20〜40ミクロン程度にしている。このように隙間量を調整することで、オイルが機械的摺動部Bに供給される際の通路抵抗を変更して適切な量のオイルを供給することができる。
ところで、本実施形態のように、冷媒ポンプ51にローリングピストン型の圧送機構を採用している場合、ポンプロータ516を回転運動をさせるために、フロントプレート513とポンプロータ516との間およびリアプレート514とポンプロータ516との間に所定の隙間を設ける必要がある。例えば、本実施形態では、それぞれ5〜20ミクロンの隙間を設けている。
このため、冷媒圧送空間からフロントプレート513およびリアプレート514とポンプロータ516との隙間を通過して機械的摺動部Bへ液相冷媒が流入することがある(以下、この液相冷媒をブローバイ冷媒と呼ぶ)。このように、機械的摺動部Bにブローバイ冷媒が流入してしまうと、オイル供給通路63から機械的摺動部Bに供給されるオイルがブローバイ冷媒に溶け込んでしまい機械的摺動部を充分に潤滑できなくなることも考えられる。
そこで、本発明者は機械的摺動部Bに流入するブローバイ冷媒流量に対する適切なオイル供給量について検討を行った。その結果、機械的摺動部Bに流入するブローバイ冷媒流量(質量流量)に対して、オイル供給流量を液相冷媒流量の30%以上確保すれば、オイルがブローバイ冷媒に溶け切ってしまうことなく機械的摺動部Bを充分に潤滑できることが判った。
そこで、本実施形態では、偏心部518の外径と滑り軸受け519の内径との隙間量(クリアランス量)を20〜40ミクロン程度にして、液相冷媒流量の30%以上のオイル供給量を確保している。
(第7実施形態)
上述の第6実施形態では、流体機械200の冷媒ポンプ51に吸入側連通路513cが構成されたフロントプレート513を採用しているが、本実施形態では図15に示すように、冷媒ポンプ51にフロントプレート523を採用している。その他の流体機械200の構成は第6実施形態と同様である。また、サイクル全体構成についても第6実施形態の構成(図11)と同様である。
フロントプレート523の詳細については、図15の断面図により説明する。フロントプレート523は、第6実施形態のフロントプレート513と基本的に同様の構成になっており、冷媒ポンプ51において、ボールベアリング517を介してポンプシャフト512を回転可能に軸支し、リアプレート514およびシリンダ515とともにポンプロータ516の作動空間を形成するものである。
さらに、フロントプレート523には、冷媒ポンプ51吸入側(具体的には冷媒吸入ポート5a側)とポンプロータ516側隙間(具体的には、フロントプレート523とポンプロータ516との隙間)との間を連通させる吸入側連通路523cが設けられている。
この吸入側連通路523cは、冷媒ポンプ吸入側と連通する斜め穴523dと、この斜め穴523dと連通してフロントプレート523の両面(上下面)を貫通する垂直穴523eとよって構成される。
垂直穴523eの冷媒ポンプ51吐出側(フロントプレート523の上面側)の端部はネジ、プラグ等の閉塞手段によって閉塞されており、ポンプロータ側(フロントプレート523の下面側)端部は、フロントプレート523とポンプロータ516との隙間に開口している。
さらに、垂直穴523eのポンプロータ側端部は、フロントプレート523とポンプロータ516との隙間を介して、第6実施形態の機械的摺動部Bおよびフロントプレート523側に配置されたボールベアリング517の機械的摺動部D(図15の太線に示すボールベアリング517の転動体であるボールが摺動する部位)に連通している。
従って、本実施形態では、吸入側連通路523cが機械的摺動部B、Dに冷媒ポンプ51吸入側の圧力を作用させて、機械的摺動部B、Dの背圧を冷媒吸入ポート5aの圧力と同等に近づける吸入側連通手段となる。
また、本実施形態では、連通手段であるオイル供給通路63は、図15の矢印で示すように、低圧ポート3aに連通するミドルハウジング302の貯油室63a→シャフト303のオイル連通路303a→逆止弁63c→ポンプシャフト512の連通孔520→機械的摺動部B→機械的摺動部D(ボールベアリング517のボールの摺動部)の順に連通するように構成される。
上述の構成においても、第6実施形態と同様に、ランキンサイクルを構成することができ、蓄電用バッテリ22に電気的エネルギを蓄えることができる。また、機械的摺動部Bを充分に潤滑することもできる。
さらに、本実施形態では、吸入側連通路523cをフロントプレート523とポンプロータ516との隙間に開口させているので、この隙間の開口部近傍の背圧が冷媒ポンプ51吸入側圧力と同等になる。一方、第6実施形態で述べたように、ローリングピストン型の圧送機構ではフロントプレート523とポンプロータ516との隙間は極めて小さい(例えば、5〜20ミクロン)ので、ブローバイ冷媒およびオイルがこの隙間を通過する際に圧力損失が発生する。
従って、開口部近傍の背圧は、冷媒圧送空間および機械的摺動部Dの背圧に対して、少なくとも上記の圧力損失分だけは低圧になる。このため、ブローバイ冷媒は、冷媒圧送空間からフロントプレート513とポンプロータ516との隙間を通過して開口部近傍に向かって流れ、機械的摺動部D側に流入しにくくなる。
その結果、オイル供給通路63から機械的摺動部Dに流入したオイルがブローバイ冷媒によって希釈されてしまうことを抑制できるので、機械的摺動部Dについても充分に潤滑できる。
なお、本実施形態では、フロントプレート523側に吸入側連通路523cを設けて、フロントプレート523側のボールベアリング517の機械的摺動部Dを潤滑する例を示したが、以下の手段によれば、リアプレート514側のボールベアリング517の機械的摺動部も充分に潤滑することができる。
例えば、本実施形態の構成において、リアプレート514に、冷媒ポンプ51吸入側とポンプロータ516側隙間(具体的には、リアプレート514とポンプロータ516との隙間)との間を連通させるための吸入側連通路を設ければよい。
また、本実施形態の構成において、ポンプロータ516の両面(上下面)を貫通する単数または複数の貫通穴を設けて、この貫通穴を吸入側連通路523cの開口部に適合する位置に配置することで、リアプレート514とポンプロータ516との隙間を上記の貫通穴を介して吸入側連通路523cの開口部に連通させるようにしてもよい。
(その他の実施形態)
本発明は上述の実施形態に限定されることなく、以下のように種々変形可能である。
(1)上述の第1〜4実施形態では、圧縮膨張部3を駆動発電部4より回転駆動力を得て、駆動させているが、電磁クラッチ、プーリおよびベルトによって構成される動力伝達機構を用いて、エンジン1より回転駆動力を得てもよい。
(2)上述の第6、7実施形態では、流体機械200をランキンサイクル専用機に適用した例を示したが、流体機械200をランキンサイクル併用型の蒸気圧縮式冷凍機に適用してもよい。この場合は、膨張部3’が機械的エネルギを出力する時のみにシャフト303からポンプシャフト512へ駆動力を伝達できるような伝達機構(例えば、ワンウェイクラッチ)を用いてシャフト303とポンプシャフト512を連結すればよい。
(3)上述の第6、7実施形態では、膨張部3’、駆動発電部4’、冷媒ポンプ51およびオイル供給通路63等を一体に構成した流体機械200を用いたランキンサイクル専用機について説明したが、第4実施形態と同様に、冷媒ポンプおよびオイル供給配管を別体に構成してもよい。この場合は、オイル供給配管からポンプシャフト512の連通孔520へオイルを流入させれば、第6、7実施形態と同様に機械的摺動部B、Dを充分に潤滑できる。
(4)上述の第6実施形態では、ポンプシャフト512(具体的には偏心部518)と滑り軸受け519の摺動部を機械的摺動部Bとしているが、機械的摺動部はこれに限定されない。例えば、フロントプレート513とポンプシャフト512との機械的摺動部やリアプレート514とポンプシャフト512との機械的摺動部にオイルを供給するようにしてもよい。
(5)上述の実施形態では、圧縮膨張部3(膨張部3’)にスクロール型の圧縮機構を採用しているが、ロータリ型、ピストン型、ベーン型等のその他の形式の圧縮機構を採用してもよい。また、冷媒ポンプ5、51にスクロール型、ローリングピストン型の圧送機構を採用しているが、ベーン型、トロコイド型等のその他の形式の圧送機構を採用してもよい。
(6)上述の実施形態では、膨張機一体型流体機械2にて回収したエネルギを蓄電用バッテリ22に電気エネルギとして蓄えたが、フライホイールにより運動エネルギまたはバネにより弾性エネルギなどの機械的エネルギとして蓄えてもよい。さらに、エンジン1の回転駆動力をアシストするために用いてもよい。
(7)上述の実施形態では、重力を利用してオイル分離を行っているが、冷媒の通路を円弧状に設け、遠心力を利用してオイル分離を行ってもよい。