JP4724587B2 - 吸収性物品 - Google Patents

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Description

本発明は、吸収要素として、トウを開繊したフィラメントの集合体及び高吸収性ポリマー粒子を備えた吸収性物品に関するものである。
幼児や大人のテープ式やパンツ型の使い捨ておむつ、生理用ナプキンなどの吸収性物品は、使用面側のトップシートと、背面側の液の透過を防止するバックシートと、これらのシート間に介在され、前記トップシートを透過した排泄された液を受け入れ保持する吸収要素とを基本要素としている。
この基本要素に対し、前記バックシートの裏面側にたとえば不織布などからなる外装シートを設け、前記バックシートとしてプラスチックシートを使用した場合における肌触りを改良する形態、製品の両側にいわゆるバリヤーカフスを形成する形態など、ウエスト周りや腹周りのフィット性を改良するために弾性伸縮性を付与する形態などが、適宜付加される。
使用面側のトップシートを透過した液を受け入れ保持する吸収要素としては、従来は、パルプ短繊維の積繊体が一般的に使用されている。また、液に吸収量を高めるために高吸収性ポリマー粒子(SAPとも呼ばれる)を使用することも知られている。
SAPはパルプ短繊維の積繊体上に散布する場合のほか、パルプ短繊維のSAPを分散保持させ積繊体させる場合(特許文献1)がある。
また、近年では、特表2002−524399号(WO99/27879:特許文献2)及び特表2004−500165号(米国特許第6,646,180号:特許文献3)に示されるように、連続繊維を吸収要素として使用することが提案されている。
特開2004−65300号公報 特表2000−524399号(WO99/27879)公報 特表2004−500165号(米国特許第6,646,180号)公報
しかしながら、従来の製品では吸収体の全体にわたり一様に高吸収性ポリマー粒子を含有していたため、股間部において高吸収性ポリマー粒子が排泄液を吸収すると、股間部が幅方向において一様に膨張し、装着感を悪化させるという問題点があった。
また、吸収性物品では、脚回りからのいわゆる横漏れを防止するために、トップシートの両側に、使用面側に起立するバリヤーカフスを備えたものが多いが、このような吸収性物品において股間部の両側部が膨張すると、バリヤーカフスの実質的な起立高さが減少し、単なる堰き止め量の低下だけでなく、身体表面に対する追従性能も低下する。
そこで、本発明の主たる課題は、これらの問題点を解決することにある。
上記課題を解決した本発明は次記のとおりである。
<請求項1記載の発明>
使用面側の液透過性トップシートと、トップシートを透過した液を受け入れ保持する吸収要素と、吸収要素の裏側に設けられた液不透過性シートとを備え、
前記トップシートの幅方向両側部から身体側に起立するバリヤーカフスが股間部の前側から後側に延在するように設けられており、
前記吸収要素は、トウを開繊したフィラメントの集合体及び高吸収性ポリマー粒子を有する吸収体と、この吸収体を包む包被シートとを含み、
前記吸収体は、股間部と、股間部の前側部分および股間部の後側部分を有しており、
前記吸収体の股間部、股間部の前側部分および股間部の後側部分のうち、股間部の両側部以外の部分である主吸収部分に高吸収性ポリマー粒子を有するとともに、前記股間部の両側部における高吸収性ポリマー粒子の目付けが前記主吸収部分よりも少な
前記フィラメントの集合体の繊維は繊度が1〜16dtexのセルロースエステルの捲縮繊維からなり、
前記高吸収性ポリマー粒子の粒径は100〜1000μmであり、
前記フィラメントの集合体の繊維目付けが30〜300g/m 2 であり、前記高吸収性ポリマー粒子の目付けが前記吸収要素全体での平均で50〜350g/m 2 であり、かつ前記股間部の両側部における高吸収性ポリマー粒子の目付けが100g/m 2 以下であり、
前記股間部の両側部は、片側あたりの幅が前記吸収体の幅の5〜40%である、
ことを特徴とする吸収性物品。
(作用効果)
本発明の吸収体では、股間部の両側部以外の部分である主吸収部分に高吸収性ポリマー粒子を有しており、この主吸収部分で吸収量を確保しつつ、股間部の両側部における高吸収性ポリマー粒子の目付けを主吸収部分よりも少なく構成し、排泄液の吸収時において股間部の両側部における膨張を抑制するものである。これにより、排泄液の吸収時において股間部の両側部が柔軟に脚回りにフィットするようになる。そして、本発明では、股間部の両側部の膨張が抑制されるため、バリヤーカフスの実質的な起立高さが減少せず、堰き止め量の低下や、身体表面に対する追従性能の低下が発生し難くなる。
また、フィラメントの集合体の繊維目付けが本項記載の範囲内にあると、復元性や柔軟性の点で有利であり、また高吸収性ポリマー粒子の目付け量が本項記載の範囲内にあると、吸収量を十分に確保でき、その上で股間部の両側部における高吸収性ポリマー粒子の目付けが本項記載の範囲内にあることで、前述した本発明の効果が顕著に発現する。
<請求項記載の発明>
前記高吸収性ポリマー粒子の粒径は100〜1000μmであり、
前記高吸収性ポリマー粒子が、前記主吸収部分にのみ配された接着剤により前記フィラメントの集合体に接着されている、請求項記載の吸収性物品。
(作用効果)
前述のとおり、本発明は、股間部の両側部とそれ以外の部位との間で高吸収性ポリマー粒子の目付けが異なることを特徴とするものである。したがって、高吸収性ポリマー粒子が自由に移動してしまうと、前述の本発明の効果が薄れるおそれがある。よって本項記載のように高吸収性ポリマー粒子をフィラメント集合体に接着するのは好ましい。また、本項記載のように接着剤が配されていると、主吸収部分から股間部両側への高吸収性ポリマー粒子の移動を効率良く抑制できるだけでなく、高吸収性ポリマー粒子を接着するための接着剤が股間部両側に無いことにより、股間部両側における剛性増加を抑制でき、高吸収性ポリマー粒子の移動を接着により抑制しつつも、装着時におけるフィット性が悪化しないため特に好ましい。
<請求項記載の発明>
前記高吸収性ポリマー粒子の粒径は100〜1000μmであり、
前記高吸収性ポリマー粒子が、前記主吸収部分と重なる部位にのみ配された接着剤により前記包被シートに接着されている、請求項1または2記載の吸収性物品。
(作用効果)
多くの吸収性物品では、フィラメント集合体のワレ、変形を防止する、あるいはフィラメント集合体と高吸収性ポリマー粒子との一体性を高める等の目的で、吸収体をティッシュペーパー(クレープ紙)等の包被シートで包むのが好ましく、この場合、本項記載のように高吸収性ポリマー粒子を包被シートに接着し、移動を抑制するのが好ましい。また、本項記載のように接着剤が配されていると、主吸収部分から股間部両側への高吸収性ポリマー粒子の移動を効率良く抑制できるだけでなく、高吸収性ポリマー粒子を接着するための接着剤が股間部両側に無いことにより、股間部両側における剛性増加を抑制でき、高吸収性ポリマー粒子の移動を接着により抑制しつつも、装着時におけるフィット性が悪化しないため特に好ましい。
<請求項記載の発明>
前記高吸収性ポリマー粒子の粒径は100〜1000μmであり、
前記高吸収性ポリマー粒子を保持する保持シートを前記吸収体の裏面側に備えており、前記高吸収性ポリマー粒子が、前記主吸収部分と重なる部位にのみ配された接着剤により前記保持シートに接着されている、請求項1〜のいずれか1項に記載の吸収性物品
(作用効果)
高吸収性ポリマーの移動を抑制するための手段としては、前述の接着の他、本項記載のような保持シートを採用することもできる。
そして、保持シートを用いる場合、高吸収性ポリマーを保持シートに接着することで、より効果的に高吸収性ポリマー粒子の移動を抑制できる。また、本項記載のように接着剤が配されていると、主吸収部分から股間部両側への高吸収性ポリマー粒子の移動を効率良く抑制できるだけでなく、高吸収性ポリマー粒子を接着するための接着剤が股間部両側に無いことにより、股間部両側における剛性増加を抑制でき、高吸収性ポリマー粒子の移動を接着により抑制しつつも、装着時におけるフィット性が悪化しないため特に好ましい。
<請求項記載の発明>
前記高吸収性ポリマー粒子の粒径は100〜1000μmであり、
前記高吸収性ポリマー粒子の保持孔を多数散点状に有する保持シートを、前記吸収体の裏面側における前記主吸収部分と重なる部位にのみ備えている、請求項1〜のいずれか1項に記載の吸収性物品。
(作用効果)
このような保持孔を有する保持シートを備えていると、高吸収性ポリマー粒子が保持孔内に捕捉されることにより、移動が抑制される。なお、用語「保持孔」とは、窪み孔および貫通孔の少なくとも一方を含むものであるが、不織布の繊維間空隙のようなシート自体の形状によらないものは含まない意味である(以下同じ)。
また、本項記載のように、保持孔を有する保持シートを主吸収部分と重なる部位のみ配置することで、主吸収部分から股間部両側への高吸収性ポリマー粒子の移動を効率良く抑制できる。
<請求項記載の発明>
前記高吸収性ポリマー粒子の粒径は100〜1000μmであり、
前記吸収体の裏面側全体わたるとともに、前記高吸収性ポリマー粒子の保持孔を前記主吸収部分と重なる部位にのみ多数散点状に有する保持シートを備えている、請求項1〜のいずれか1項に記載の吸収性物品。
(作用効果)
本項記載のように、保持孔は保持シートにおける主吸収部分と重なる部位のみ設けることでも、主吸収部分から股間部両側への高吸収性ポリマー粒子の移動を効率良く抑制できる。
<請求項7記載の発明>
使い捨ておむつである、請求項1〜6のいずれか1項に記載の吸収性物品。
以上のとおり、本発明によれば、吸収体の股間部が幅方向において一様に膨張することがなく、装着感が悪化し難くなる等の利点がもたらされる。
以下、本発明の一実施形態について、吸収要素にトウを用いた紙おむつ並びにその製造設備を参照しつつ詳説する。
<パンツ型使い捨ておむつの例>
図1には、パンツ型使い捨ておむつの例が示されている。このパンツ型使い捨ておむつ10は、外面(裏面)側の外装シート12と内面(表面)側の吸収性本体20とを備え、外装シート12に吸収性本体20が固定されている。吸収性本体20は、尿や軟便などの液(後述する生理用ナプキンでは経血)を受け止めて吸収保持する部分である。外装シート12は着用者に装着するための部分である。
外装シート12はたとえば図示のように砂時計形状となり、両側が括れており、ここが着用者の脚を入れる部位となる。吸収性本体20は任意の形状を採ることができるが、図示の形態では長方形である。
外装シート12は、図2に示すように、吸収性本体20が所定位置に設置され固定された後、前後に折り畳まれ、外装シート12の前身頃12F及び後身頃12Bの両側部の接合領域12Aが熱融着などにより接合される。これによって、図1に示す構造の、ウエスト開口部WOと一対のレッグ開口部LOを有するパンツ型使い捨ておむつが得られる。
図示の吸収性本体20の長手方向(すなわち図2の上下方向。製品の前後方向でもある。)の中間の幅は、外装シート12の括れた部分を繋ぐ幅より短い形態が示されている。この幅の関係は逆でもよいし、同一の幅でもよい。
外装シート12は望ましくは2枚のたとえば撥水性不織布のシートからなり、これらのシート間に弾性伸縮部材を介在させて、その収縮力により着用者にフィットさせる形態が望ましい。前記弾性伸縮部材としては、糸ゴムや弾性発泡体の帯状物などを使用できるが、多数の糸ゴムを使用するのが望ましい。図示の形態では、糸ゴム12C,12C…が、ウエスト領域Wにおいては幅方向に連続して設けられ、腰下領域Uにおいては両側部分のみに設けられ、股下領域Lにおいては設けられていない。糸ゴム12C,12C…が、ウエスト領域W及び腰下領域Uの両者に設けられていることで、糸ゴム12C自体の収縮力が弱いとしても、全体としては腰下領域Uにおいても着用者に当たるので、製品が着用者に好適にフィットする。
(吸収性本体)
実施の形態の吸収性本体20は、図3に示されるように、液を透過させるたとえば不織布などからなるトップシート30と、中間シート(セカンドシート)40と吸収要素50とを備えている。また、吸収体56の裏面側にはプラスチックシートなどからなる液不透過性シート70が設けられている。この液不透過性シート70の裏面側には外装シート12が設けられている。さらに、両側にバリヤーカフス60、60を備えている。
(トップシート)
トップシート30は、液を透過する性質を有する。したがって、トップシート30の素材は、この液透過性を発現するものであれば足り、例えば、有孔又は無孔の不織布や、多孔性プラスチックシートなどを例示することができる。また、このうち不織布は、その原料繊維が何であるかは、特に限定されない。例えば、ポリエチレンやポリプロピレン等のオレフィン系、ポリエステル系、ポリアミド系等の合成繊維、レーヨンやキュプラ等の再生繊維、綿等の天然繊維などや、これらから二種以上が使用された混合繊維などを例示することができる。さらに、不織布は、どのような加工によって製造されたものであってもよい。加工方法としては、公知の方法、例えば、スパンレース法、スパンボンド法、サーマルボンド法、メルトブローン法、ニードルパンチ法等を例示することができる。例えば、柔軟性、ドレープ性を求めるのであれば、スパンレース法が、嵩高性、ソフト性を求めるのであれば、サーマルボンド法が、好ましい加工方法となる。
また、トップシート30は、1枚のシートからなるものであっても、2枚以上のシートを貼り合せて得た積層シートからなるものであってもよい。同様に、トップシート30は、平面方向に関して、1枚のシートからなるものであっても、2枚以上のシートからなるものであってもよい。
(中間シート)
トップシート30を透過した液を速やかに吸収体へ移行させるために、トップシート30より液の透過速度が速い、通常「セカンドシート」と呼ばれる中間シート40を設けることができる。この中間シートは、液を速やかに吸収体へ移行させて吸収体による吸収性能を高めるばかりでなく、吸収した液の吸収体からの「逆戻り」現象を防止し、トップシート30上を常に乾燥した状態とすることができる。
中間シート40としては、トップシート30と同様の素材や、スパンレース、パルプ不織布、パルプとレーヨンとの混合シート、ポイントボンド又はクレープ紙を例示できる。特にエアスルー不織布及びスパンボンド不織布が好ましい。
中間シート(セカンドシート)40は、トップシート30と包被シート58との間に介在されている。図5に示すように、中間シート(セカンドシート)40を設けない形態も使用可能である。また、図示しないが、包被シート58と吸収体56との間に配置しても良い。
図示の形態の中間シート40は、吸収体56の幅より短く中央に配置されているが、全幅にわたって設けてもよい。中間シート40の長手方向長さは、吸収体56の長さと同一でもよいし、液を受け入れる領域を中心にした短い長さ範囲内であってもよい。中間シート40の代表的な素材は液の透過性に優れる不織布である。
(液不透過性シート)
液不透過性シート70は、吸収体56の裏面側に配されるシートである。液不透過性シートは、その素材が特に限定されるものではないが、例えば、ポリエチレンやポリプロピレン等のオレフィン系樹脂や、ポリエチレンシート等に不織布を積層したラミネート不織布、防水フィルムを介在させて実質的に不透液性を確保した不織布(この場合は、防水フィルムと不織布とで液不透過性シートが構成される。)などを用いることができる。もちろん、このほかにも、近年、ムレ防止の観点から好まれて使用されている不透液性かつ透湿性を有する素材も用いることができる。この不透液性かつ透湿性を有する素材のシートとしては、例えば、ポリエチレンやポリプロピレン等のオレフィン系樹脂中に無機充填剤を混練して、シートを成形した後、一軸又は二軸方向に延伸して得られた微多孔性シートを例示することができる。
液不透過性シート70は、いわゆる横漏れを防止するために、吸収体56の両側を回り込ませて使用面側に延在させる(図示せず)ことができるが、実施の形態においては、横漏れについては、バリヤーカフス60を形成する二重のバリヤーシート64間に第2液不透過性シート72を介在させることにより防止している。この形態によれば、バリヤーカフス60の起立まで第2液不透過性シート72が延在しているので、トップシート30を伝わって横に拡散した液やバリヤーカフス60、60間の軟便の横漏れを防止できる利点もある。
(バリヤーカフス)
製品の両側に設けられたバリヤーカフス60、60は、トップシート30上を伝わって横方向に移動する尿や軟便を阻止し、横漏れを防止するために設けられている
図示のバリヤーカフス60は、撥水性不織布シートを二重にして形成したものであり、吸収体56の裏面側からトップシート30の下方への折り込み部分を覆って、表面側に突出するように形成されている。トップシート30上を伝わって横方向に移動する尿を阻止するために、特に、二重の不織布シート間に液不透過性シート70の側部が挿入され、表面側に突出するバリヤーカフス60の途中まで延在している。
バリヤーカフス60自体の形状は適宜に設計可能であるが、図示の例では、バリヤーカフス60の突出部の先端部及び中間部に弾性伸縮部材、たとえば糸ゴム62が伸張下で固定され、使用状態においてその収縮力により、バリヤーカフス60が起立するようになっている。中間部の糸ゴム62が先端部の糸ゴム62、62よりも中央側に位置してトップシート30の前後端部に固定される関係で、図3のように、バリヤーカフス60の基部側は中央側に向かって斜めに起立し、中間部より先端部は外側に斜めに起立する形態となる。
特に、図3等に示すバリヤーカフス60においては、股間部の伸縮性を高めるため、吸収体56の股間部両側部56Sの裏面側部位に糸ゴム63等の細長状弾性部材が前後方向に沿って伸張状態で固定されているが、本発明では吸収後においても股間両側部56Sの剛性増加が抑制されるため、糸ゴム63による伸縮性が十分に発揮され、脚回りにおいて良好なフィット性が得られる。
(エンボス加工)
トップシート30の表面側から厚み方向にエンボスによる凹部Eを形成してもよい。この場合、トップシート30のみにエンボスによる凹部Eを形成するほか、図7に示すように、トップシート30と中間シート40との両者にエンボスによる凹部Eを形成方したり、トップシート30の表面側から吸収体56の厚さ方向一部または略全体に達するようにエンボスによる凹部を形成したり(図示せず)することができる。トップシート30と中間シート40との両者にエンボスによる凹部Eを形成させるためには、中間シート40としては、坪量が8〜40g/m2、厚さ0.2〜1.5mm、トップシート30としては、坪量が15〜80g/m2、厚さ0.2〜3.5mmの範囲にあるのが、透液性を阻害しない条件で、エンボス加工を充分に行える点で望ましい。
また、トップシート30に凹部を形成することなく、中間シート40のみにエンボスによる凹部を形成してもよく、さらにトップシート30及び中間シート40に凹部を形成することなく、吸収要素56のみにエンボスによる凹部を形成しても、また、トップシート30、中間シート40および包被シート58に凹部を形成することなく、吸収体58のみにエンボスによる凹部を形成してもよい。
凹部Eはこれが延在する方向に、液を誘導し拡散させる効果がある。よって、凹部Eを実質的に溝状に連続させる(複数の凹部が間隔を空けて列なり一つの溝を形成する場合を含む)と、液は、吸収体に到達する前に表面側層の凹部Eを伝って拡散するようになり、吸収体のより広範な部分を吸収に利用できるようになる。よって、製品全体の吸収容量が増大し、吸収容量不足に基づく側方からの漏れや逆戻りが発生し難い吸収性物品となる。
一方、トウからなる吸収体56は従来のパルプ物と比べて剛性が低下し易いが、吸収体56にエンボスによる凹部を形成すると剛性を高めることができるため好ましい。図示しないが、吸収要素50の剛性を高めるために、吸収体56の裏面側(トップシート30側に対して反対側)から厚み方向にエンボスによる凹部を形成するのも好ましい形態である。この裏面側の凹部を形成するために、保持シート80、包被シート58、液不透過性シート70または外装シート12の裏面側から、吸収体56まで達するように一体的にエンボス加工を施すことができる。また、このような裏面側の凹部は、表面側の凹部Eとともに形成するのが好ましいが、表面側の凹部Eを形成せずに裏面側の凹部のみ形成することもできる。凹部を表裏両側に設ける場合には、凹部の形態を表裏共通にしても良く、また表裏異なるものとしても良い。
エンボスによる凹部はその延在方向に液を誘導し拡散させる効果がある。また剛性を高める効果もある。よって、エンボスによる凹部の形態はこれらの効果を考慮して決定するのが望ましい。例えば、凹部は、実質的に溝状に連続するもの(複数の凹部が間隔を空けて列なり一つの溝を形成する場合を含む)の他、複数の凹部が間隔を空けて点状に配置されるものであっても良い。また、平面パターンとしては、溝状または点状の凹部が、製品の長手方向、幅方向、これらを組み合わせた格子状、幅方向に往復するジグザグ状(千鳥状)、あるいは不規則に配置された形態等を採ることができる。さらに、ピン状、富士山状、蛇腹状等、適宜の形態を採用することができる。
(吸収要素)
吸収要素50は、トウを開繊したフィラメント52,52…の集合体及び高吸収性ポリマー粒子54,54…を有する吸収体56と、この吸収体56の少なくとも裏面及び側面を包む包被シート58とを有する。さらに、吸収体56と包被シート58の裏面側部位(下側の部分)との間に保持シート80が設けられている。
(フィラメントの集合体)
吸収体56は、トウを開繊したフィラメント52,52…の集合体を有する。フィラメント52,52…の集合体は、実質的に連続するフィラメントの束であるトウを開繊したものである。トウ構成繊維としては、セルロースエステルが用いられる
好適に採用できるセルロースエステルとしては、例えば、セルロースアセテート、セルロースブチレート、セルロースプロピオネートなどの有機酸エステル;セルロースアセテートプロピオネート、セルロースアセテートブチレート、セルロースアセテートフタレート、硝酸酢酸セルロースなどの混酸エステル;およびポリカプロラクトングラフト化セルロースエステルなどのセルロースエステル誘導体などを用いることができる。これらのセルロースエステルは単独で又は二種類以上混合して使用できる。セルロースエステルの粘度平均重合度は、例えば、50〜900、好ましくは200〜800程度である。セルロースエステルの平均置換度は、例えば、1.5〜3.0(例えば、2〜3)程度である。
セルロースエステルの平均重合度は、例えば10〜1000、好ましくは50〜900、さらに好ましくは200〜800程度とすることができ、セルロースエステルの平均置換度は、例えば1〜3程度、好ましくは1〜2.15、さらに好ましくは1.1〜2.0程度とすることができる。セルロースエステルの平均置換度は、生分解性を高める等の観点から選択することができる。
セルロースエステルとしては、有機酸エステル(例えば、炭素数2〜4程度の有機酸とのエステル)、特にセルロースアセテートが好適である。セルロースアセテートの酢化度は、43〜62%程度である場合が多いが、特に30〜50%程度であると生分解性にも優れるため好ましい。特に好ましいセルロースエステルは、セルロースジアセテートである。
トウ構成繊維は、種々の添加剤、例えば、熱安定化剤、着色剤、油剤、歩留り向上剤、白色度改善剤等を含有していても良い。
トウ構成繊維の繊度は、例えば、1〜16dex、好ましくは1〜10dex、さらに好ましくは1〜5dexが望ましい。トウ構成繊維は、非捲縮繊維ではなく、捲縮繊維を用いる。捲縮繊維の捲縮度は、例えば、1インチ当たり5〜75個、好ましくは10〜50個、さらに好ましくは15〜50個程度とすることができる。また、均一に捲縮した捲縮繊維を用いる場合が多い。捲縮繊維を用いると、嵩高で軽量な吸収体を製造できるとともに、繊維間の絡み合いにより一体性の高いトウを容易に製造できる。トウ構成繊維の断面形状は、特に限定されず、例えば、円形、楕円形、異形(例えば、Y字状、X字状、I字状、R字状など)や中空状などのいずれであってもよい。トウ構成繊維は、例えば、3,000〜1,000,000本、好ましくは5,000〜1,000,000本程度の単繊維を束ねることにより形成されたトウ(繊維束)の形で使用することができる。繊維束は、3,000〜1,000,000本程度の連続繊維を集束して構成するのが好ましい。
トウは、繊維間の絡み合いが弱いため、主に形状を維持する目的で、繊維の接触部分を接着または融着する作用を有するバインダーを用いることができる。バインダーとしては、トリアセチン、トリエチレングリコールジアセテート、トリエチレングリコールジプロピオネート、ジブチルフタレート、ジメトキシエチルフタレート、クエン酸トリエチルエステルなどのエステル系可塑剤の他、各種の樹脂接着剤、特に熱可塑性樹脂を用いることができる。
バインダーとして使用する熱可塑性樹脂には、溶融・固化により接着力が発現する樹脂であり、水不溶性または水難溶性樹脂、および水溶性樹脂が含まれる。水不溶性または水難溶性樹脂と水溶性樹脂とは、必要に応じて併用することもできる。
水不溶性または水難溶性樹脂としては、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン−プロピレン共重合体、エチレン−酢酸ビニル共重合体などのオレフィン系の単独又は共重合体、ポリ酢酸ビニル、ポリメタクリル酸メチル、メタクリル酸メチル−アクリル酸エステル共重合体、(メタ)アクリル系モノマーとスチレン系モノマーとの共重合体などのアクリル樹脂、ポリ塩化ビニル、酢酸ビニル−塩化ビニル共重合体、ポリスチレン、スチレン系モノマーと(メタ)アクリル系モノマーとの共重合体などのスチレン系重合体、変性されていてもよいポリエステル、ナイロン11、ナイロン12、ナイロン610、ナイロン612などのポリアミド、ロジン誘導体(例えば、ロジンエステルなど)、炭化水素樹脂(例えば、テルペン樹脂、ジシクロペンタジエン樹脂、石油樹脂など)、水素添加炭化水素樹脂などを用いることができる。これらの熱可塑性樹脂は一種又は二種以上使用できる。
水溶性樹脂としては、種々の水溶性高分子、例えば、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、ポリビニルエーテル、ビニル単量体と、カルボキシル基、スルホン酸基又はそれらの塩を有する共重合性単量体との共重合体などのビニル系水溶性樹脂、アクリル系水溶性樹脂、ポリアルキレンオキサイド、水溶性ポリエステル、水溶性ポリアミドなどを用いることができる。これらの水溶性樹脂は、単独で使用できるとともに二種以上組合せて使用してもよい。
熱可塑性樹脂には、酸化防止剤、紫外線吸収剤などの安定化剤、充填剤、可塑剤、防腐剤、防黴剤などの種々の添加剤を添加してもよい。
しかし、可能な限り、高吸収性ポリマー粒子の侵入を阻害するバインダー成分の使用は避けるべきである。高吸収性ポリマー粒子の侵入を阻害するバインダー成分は使用しないのが最善である。
トウは公知の方法により製造できるので詳説はしない。吸収要素50に好適に使用できるセルロースジアセテートのトウのベールは、セラニーズ社やダイセル化学工業などにより市販されている。セルロースジアセテートのトウのベールは、密度は約0.5g/cm3であり、総重量は400〜600kgである。
このベールから、トウを引き剥がし、所望のサイズ、嵩となるように広い帯状に開繊する。トウの開繊幅は任意であり、例えば、幅100〜2000mm、好ましくは製品の吸収体の幅の100〜300mm程度とすることができる。また、トウの開繊度合いを調整することにより、吸収体の密度を調整することができる。
トウの開繊方法としては、例えば、トウを複数の開繊ロールに掛け渡し、トウの進行に伴って次第にトウの幅を拡大して開繊する方法、トウの緊張(伸長)と弛緩(収縮)とを繰返して開繊する方法、圧縮エアーを用いて拡幅・開繊する方法などを用いることができる。
(高吸収性ポリマー粒子)
吸収体56は高吸収性ポリマー粒子54,54…を有する。高吸収性ポリマー粒子54とは、「粒子」以外に「粉体」も含む意味である。高吸収性ポリマー粒子54の粒径は、この種の吸収性物品に使用されるものをそのまま使用でき、100〜1000μm、特に150〜400μmのものが望ましい。粒径が小さ過ぎると吸収体56内を移動し易くなるとともに製造ラインにおける飛散ロスも多くなるため好ましくない。また、粒径が大き過ぎると、じゃりじゃりした手触りが目立つようになり、商品価値を低下させるおそれがある。高吸収性ポリマー粒子の材料としては、特に限定無く用いることができるが、吸水量が60g/g以上のものが好適である。高吸収性ポリマー粒子としては、でんぷん系、セルロース系や合成ポリマー系などのものがあり、でんぷん−アクリル酸(塩)グラフト共重合体、でんぷん−アクリロニトリル共重合体のケン化物、ナトリウムカルボキシメチルセルロースの架橋物やアクリル酸(塩)重合体などのものを用いることができる。高吸収性ポリマー粒子の形状としては、通常用いられる粉粒体状のものが好適であるが、他の形状のものも用いることができる。
高吸収性ポリマー粒子54としては、吸水速度が40秒以下のものが好適に用いられる。吸水速度が40秒を超えると、吸収体内に供給された液が吸収体外に戻り出てしまう所謂逆戻りを発生し易くなる。
また、高吸収性ポリマー粒子54としては、ゲル強度が1000Pa以上のものが好適に用いられる。これにより、トウを用いることにより嵩高な吸収体とした場合であっても、液吸収後のべとつき感を効果的に抑制できる。
高吸収性ポリマー粒子54の目付け量は、当該吸収体の用途で要求される吸収量に応じて適宜定めることができる。したがって一概には言えないが、吸収要素50全体での平均で50〜350g/m2とすることができる。ポリマーの目付け量を50g/m2以上とすることにより、ポリマーの吸収力によって、トウからなるフィラメントの集合体を採用することにより得られる、薄型化・軽量化効果が発揮されにくくなるのを防止できる。350g/m2を超えると、効果が飽和するばかりでなく、高吸収性ポリマー粒子の過剰により、ジャリジャリした手触りを与えるようになる。
(吸収体のサイズ・重量)
他方、吸収体56のサイズは、平面投影面積が400cm2以上であり、かつ厚さが1〜10mm、特に1〜5mmであるのが好ましい。吸収体のサイズがこの範囲内にあると、重量や厚さ、コストの増加を来たさずに復元性を向上する上で、極めて有利である。また、吸収体の重量は25g以下、特に10〜20gとなるように構成するのが好ましい。吸収体の重量がこの範囲内にあると、専用部材を用いないことによる利点が特に顕著になる。
(吸収体の圧縮特性)
吸収体56の圧縮レジリエンスRCは、40〜60%、特に50〜60%とするのが好ましい。これにより、吸収体自体で十分な復元性を発揮できるようになる。
さらに、吸収体56の圧縮エネルギーWCは4.0〜10.0gf・cm/cm2であると、包装に際して従来と同レベルあるいはそれ以上にコンパクトに圧縮することができるため好ましい。
これらの圧縮特性は、開繊等によるフィラメントの集合体の繊維密度の調整、繊維素材の選定、可塑剤等のバインダーの種類の選定・処理の程度の調整、あるいはこれらの組み合わせ等により調整できる。
ここで、圧縮エネルギー(WC)とは、長さ200mm、幅50mmに断裁した試験片(保持シート)の中央部を、50gまで押す場合のエネルギー消費量である。
この圧縮エネルギーは、ハンディー圧縮試験機(KES−G5、カトーテック社製)によって、測定することができる。この試験機による場合の測定条件は、SENS:2、力計の種類:1kg、SPEED RANGE:STD、DEF感度:20、加圧面積:2cm2、取り込間隔:0.1(標準)、STROKE SET:5.0、上限荷重:50gf/cm2である。
一方、圧縮レジリエンス(RC)とは、繊維が圧縮されたときの回復性を表すパラメータである。したがって、回復性がよければ、圧縮レジリエンスが大きくなる。この圧縮レジリエンスは、ハンディー圧縮試験機(KES−G5、カトーテック社製)によって、測定することができる。この試験機による場合の測定条件は、上記圧縮エネルギーの場合と同様である。
(包被シート)
包被シート58としては、ティッシュペーパー、特にクレープ紙、不織布、ポリラミ不織布、小孔が開いたシート等を用いることができる。ただし、高吸収性ポリマー粒子が抜け出ないシートであるのが望ましい。クレープ紙に換えて不織布を使用する場合、親水性のSMMS(スパンボンド/メルトブローン/メルトブローン/スパンボンド)不織布が特に好適であり、その材質はポリプロピレン、ポリエチレン/ポリプロピレンなどを使用できる。目付けは、8〜20g/m2、特に10〜15g/m2のものが望ましい。
この包被シート58は、図3のように、フィラメント52,52…の集合体及び高吸収性ポリマー粒子54,54…の層全体を包む形態のほか、たとえば図4に示すように、その層の裏面及び側面のみを包被するものでもよい。また図示しないが、吸収体56の上面及び側面のみをクレープ紙や不織布で覆い、下面をポリエチレンなどの液不透過性シートで覆う形態、吸収体56の上面をクレープ紙や不織布で覆い、側面及び下面をポリエチレンなどの液不透過性シートで覆う形態などでもよい(これらの各素材が包被シートの構成要素となる)。必要ならば、フィラメント52,52…の集合体及び高吸収性ポリマー粒子54,54…の層を、上下2層のシートで挟む形態や下面のみに配置する形態でもよい。
(高吸収性ポリマーの分布等)
本発明では、股間部の両側部56S,56S以外の部分である主吸収部分56Cに高吸収性ポリマー粒子54,54…を有するとともに、この主吸収部分56Cと比べて、股間部の両側部56S,56Sが高吸収性ポリマー粒子の目付けの少ない部分とされている。股間部、股間部の前側部分及び後側部分は、例えば吸収体56を前後方向に三分割したときの真中、前側、後側とすることができる。股間部の両側部56Sは、片側が例えば吸収体56幅の5〜40%の幅を有する部分でる。
このように本発明では、高吸収性ポリマー粒子54の分散密度が主吸収部分56Cと股間部の両側部56S,56Sとで異なるため、以下では、主吸収部分56Cを高密度部分ともいい、股間部の両側部56S,56Sを低密度部分ともいう。
この低密度部分56S,56Sの位置、寸法、形状は本発明の範囲内で適宜定めれば良いが、例えば前後方向位置は物品の前後方向中央線を跨ぐ位置とするのが好ましく、寸法は、長さmが50〜300mm、幅nが10〜100mmであるのが好ましい。
また、低密度部分56S,56Sの形状としては、前後方向両端よりも前後方向中央側が幅方向中央側に張り出す線により囲まれる部分とするのが好ましく、例えば図2に示すような脚周りに沿う略弧状の曲線により囲まれる部分としたり、あるいは図8に示すような略台形の部分としたりすることができる。
低密度部分56Sにおける高吸収性ポリマー粒子54の目付けは、フィラメント52の集合体の繊維目付けを30〜300g/m2とし、かつ高吸収性ポリマー粒子54の目付けを吸収要素50全体での平均で50〜350g/m2とした場合、100g/m2以下とされ。特に低密度部分56Sは、製造時に高吸収性ポリマー粒子54を配置しない等により、実質的に全く含まない構成とするのが好ましい。
高吸収性ポリマー粒子54は非固定であっても良いが、その場合、製品の製造、搬送、使用によって、股間部の両側部56S,56Sに対して他の部位の高吸収性ポリマー粒子54が移動し、効果が薄れるおそれがある。よって、高吸収性ポリマー粒子54の一部または全部を、フィラメント52の集合体や包被シート58に接着固定するのが好ましい。図18は、接着剤HMを介してフィラメント52の集合体に高吸収性ポリマー粒子54を接着する場合を想定したものである。高吸収性ポリマー粒子54を固定するための接着剤HMとしてはホットメルト接着剤を好適に用いることができる。また接着剤HMの塗布方法としてはカーテン塗布が好ましく、塗布量は2〜15g/m2であるのが好ましく、塗布領域は主吸収部分よりも若干広い範囲とするのが好ましい。
吸収体56の厚み方向における高吸収性ポリマー粒子54の分布は特に限定されず、フィラメント52の集合体内ではなくフィラメント52の集合体の裏面側に設けても良いが、図3に示すように、吸収体56における実質的に厚み方向全体にわたり、高吸収性ポリマー粒子54が分散されているものが望ましい。この実質的に厚み方向全体に分散されている状態を図3の要部拡大図として概念的に示した。
吸収体56の上部、下部、及び中間部にSAP粒子が無い、あるいはあってもごく僅かである場合には、「厚み方向全体に分散されている」とは言えない。したがって、「厚み方向全体に分散されている」とは、フィラメント52の集合体に対し、厚み方向全体に「均一に」分散されている形態のほか、上部、下部及び又は中間部に「偏在している」が、依然として上部、下部及び中間部の各部分に分散している形態も含まれる。また、一部のSAP粒子がフィラメント52,52…の集合体中に侵入しないでその表面に残存している形態や、一部のSAP粒子がフィラメントフィラメント52,52…の集合体を通り抜けて包被シート58上にある形態や図6に示されるように保持シート80上にある形態も排除されるものではない。
(保持シート)
吸収体56の裏面側は、高吸収性ポリマー粒子54を保持する保持シート80を設けるのが好ましい。前述のとおり、高吸収性ポリマー粒子54は、製造時あるいは消費者が使用するまでの流通過程で、フィラメント52の集合体を通り抜けたり、フィラメント52の集合体と包被シート58との間を通り抜けたりする等により、吸収体56内で移動することがある。また、高吸収性ポリマー粒子群の凹凸は、消費者が使用する際に手で触ったときジャリジャリした違和感を与える。そこで、吸収体56の裏面側吸収性ポリマー粒子54を保持する保持シート80を介在させるのである。
なお、図6には、吸収体56の下方に高吸収性ポリマー粒子を設けた場合、あるいは吸収体56中に含ませた高吸収性ポリマー粒子が、製造から消費者が使用するまでの段階で、フィラメント52の集合体から抜け出て、保持シート80上に集まった場合を概念的に示した。
保持シート80は、図3等に示すように吸収体56の下方にのみ設けても、また図6に示すように、吸収体56の側面を通り吸収体56の上面にまで巻き上げて延在させてもよい。た、保持シート80を複数枚重ねて使用することも可能である。ただし、保持シート80はポリマー粒子54を保持するものであるため、包被シート58を有する場合、包被シート58の外側にあってはならず、吸収体56と包被シート58との間に保持シート80を設ける。
特に、高吸収性ポリマー粒子の移動を最も効果的に抑制できる構造としては、保持シート80とフィラメント52の集合体との間に高吸収性ポリマー粒子54が偏在し、高吸収性ポリマー粒子54が接着剤HMにより保持シート80及びフィラメント集合体の少なくとも一方に固着されている構造を挙げることができる。
保持シート80の素材は、特に限定されず、吸収性ポリマー粒子の保持能力を有するものであれば足りる。具体的には、不織布、捲縮パルプ、低吸収性のコットン繊維(例えば、未脱脂のコットン繊維、脱脂されたコットン繊維、レーヨン繊維を撥水剤や疎水化剤で処理したものなど。)、ポリエチレン繊維、ポリエステル繊維、アクリル繊維、ポリプロピレン繊維、絹、綿、麻、ナイロン、ポリウレタン、アセテート繊維等の他、樹脂フィルムや紙等も用いることができる。
保持シート80を不織布とする場合、その保持シート80は、KES試験に基づく圧縮エネルギーが0.01〜10.00gfcm/cm2、好ましくは、0.01〜1.00gfcm/cm2で、かつ圧縮レジリエンスが10〜100%、好ましくは、70〜100%の不織布であるとよい。
特に、保持シート80上を高吸収性ポリマー粒子54が移動するのを防止するために、予めホットメルト接着剤などを保持シート80上に塗布し、高吸収性ポリマー粒子54を保持シート80に接着するのは好ましい。
また、保持シート80の上面(使用面側に向かう面)を粗面あるいは毛羽立ち面とすることで、保持能力を向上させることもできる。このための粗面化又は毛羽立ち化手法としては、マーブル加工やブラシッング加工などを挙げることができる。
さらに、図19に示すように、保持シート80に多数の保持孔81を散点状に形成するのも好ましい形態である。保持孔81は規則的に配列されていても、また不規則に配されていても良い。保持孔81はシート80を貫通しない窪み孔であっても、また貫通孔であっても良い。このような保持孔81を有すると、高吸収性ポリマー粒子54が保持孔81内に捕捉されることにより、移動が抑制される。
保持孔81の寸法や数は適宜定めることができるが、保持孔81の開口面積としては3〜25mm2であるのが好ましく、単位面積あたりの個数は5000〜50000個/m2であるのが好ましい。
保持孔の形成手法としては、シート素材に依存しないものとしてニードルパンチ加工やエンボス加工を挙げることができる。また、シートが不織布である場合、製造に用いるメッシュのパターンとして大小異なる開口を平面方向に交互に並べたものを用いると、図19に示すように、相対的に大きな開口の部分により窪み孔形状の保持孔81が形成された保持シート80を製造することができる。
保持孔を有する保持シートを用いる場合、全体に保持孔が形成された保持シートを主吸収部分56Cと重なる部位のみ配置することで、主吸収部分56Cから股間部両側56S,56Sへの高吸収性ポリマー粒子54の移動を効率良く抑制できる。また、保持シート80における主吸収部分56Cと重なる部位にのみ保持孔を形成しても同様である。
(吸収体内における接着剤の使用について)
高吸収性ポリマー粒子54を接着剤によりフィラメント52の集合体や保持シート80に接着する場合、その接着剤が股間部両側56S,56Sに存在すると、接着剤により剛性が増加して股間部のフィット性を損ねるおそれがある。よって、図18に示すように、高吸収性ポリマー粒子54を固定するための接着剤HMは主吸収部分52Cにのみ塗布するのが好ましい。高吸収性ポリマー粒子54の移動を接着により抑制しつつも、股間部におけるフィット性を損ね難い。なお、この場合における接着剤HMは、主吸収部分52Cだけに塗布する限り、主吸収部分52Cの実質的に全体に塗布しても、また一部に塗布しても良い。
(その他)
なお、図示しないが、吸収性本体20の各構成部材は、ホットメルト接着剤などのベタ、ビード、スパイラルまたはサミット塗布などにより相互に固定される。
(テープ式使い捨ておむつの例)
一方、図8及び図9はテープ式使い捨ておむつの例を示している。図9は図8における9−9線矢視図であるが、吸収性本体20についてはやや誇張して図示してある。
テープ式使い捨ておむつ10Aは、おむつの背側両側端部に取り付けられたファスニング片を有し、このファスニング片の止着面にフック要素を有するとともに、前記おむつの裏面を構成するバックシートを不織布積層体とし、おむつの装着に当り、前記ファスニング片のフック要素を前記バックシートの表面の任意個所に係合可能となしたおむつである。
吸収性本体20は、トップシート30と、液不透過性シート70との間に、吸収体56を介在させたものとなっている。この吸収体56は、ティッシュペーパーによる包被シート58により全体が包まれており、平面的に視て長方形をなしている。吸収体56と包被シート58との間には保持シート80が設けられている。
さらに、トップシート30と吸収体56との間には、中間シート40が介在されている。液不透過性シート70は吸収体56より幅広の長方形をなし、その外方に砂時計形状の不織布からなるバックシート12Aが設けられている。
トップシート30は吸収体56より幅広の長方形をなし、吸収体56の側縁より若干外方に延在し、液不透過性シート70とホットメルト接着剤などにより固着されている。
おむつの両側部には、使用面側に突出するバリヤーカフス60Aが形成され、このバリヤーカフス60Aは、実質的に幅方向に連続した不織布からなるバリヤーシート64と、弾性伸縮部材、例えば糸ゴムからなる1本の又は複数本の脚周り用弾性伸縮部材としての糸ゴム62とにより構成されている。130は面ファスナーによるファスニング片である。
バリヤーシート64の内面は、トップシート30の側縁と離間した位置において固着始端を有し、この固着始端から液不透過性シート70の延在縁にかけて、幅方向外方部分がホットメルト接着剤などにより固着されている。バリヤーシート64の外面は、その下面においてバックシート12Aにホットメルト接着剤などにより固着されている。さらに、ガスケットカフス用弾性伸縮部材、たとえば糸ゴム66が設けられている。
バリヤーシート64の内面の、液不透過性シート70への固着始端は、バリヤーカフス60Aの起立端を形成している。脚周りにおいては、この起立端より内側は、製品本体に固定されていない自由部分であり、この自由部分が糸ゴム62の収縮力により起立するようになる。
本例では、ファスニング片130として、面ファスナーを用いることで、バックシート12Aに対して、メカニカルに止着できる。したがって、いわゆるターゲットテープを省略することもでき、かつ、ファスニング片130による止着位置を自由に選択できる。
ファスニング片130は、プラスチック、ポリラミ不織布、紙製などのファスニング基材の基部がバックシート12Aに、例えば接着剤により接合されており、先端側にフック要素130Aを有する。フック要素130Aはファスニング基材に接着剤により接合されている。フック要素130Aは、その外面側に多数の係合片を有する。フック要素130Aより先端側に仮止め接着剤部130Bを有する。製品の組立て末期において、仮止め接着剤部130Bがバリヤーシート64に接着されることによりファスニング片130の先端側の剥離を防止するようにしている。使用時には、その接着力に抗して剥離し、ファスニング片130の先端側を前身頃に持ち込むものである。仮止め接着剤部130Bより先端側はファスニング基材が露出して摘みタブ部とされている。
前身頃の開口部側には、バックシート12Aの内面側に、デザインシートとしてのターゲット印刷シート74が設けられ、ファスニング片130のフック要素130Aを止着する位置の目安となるデザインが施されたターゲット印刷がなされ、外部からバックシート12Aを通して視認可能なように施されている。
おむつの、装着時には、おむつが舟形に体に装着されるので、そして糸ゴム62の収縮力が作用するので、脚周りでは、糸ゴム62の収縮力によりバリヤーカフス60Aが起立する。
起立部で囲まれる空間は、尿又は軟便の閉じ込め空間を形成する。この空間内に排尿されると、その尿はトップシート30を通って吸収体56内に吸収されるとともに、軟便の固形分については、バリヤーカフス60Aの起立部がバリヤーとなり、その乗り越えが防止される。万一、起立部の起立遠位側縁を乗り越えて横に漏れた尿は、平面当り部によるストップ機能により横漏れが防止される。
本形態において、各起立カフスを形成するバリヤーシート64は、透液性でなく実質的に不透液性(半透液性でもよい)であるのが望ましい。また、本発明の表面シート(不織布積層体)に対してシリコン処理などにより液体をはじく性質となるようにしてもよい。いずれにしても、バリヤーシート64及びバックシート12Aは、それぞれ通気性があり、かつバリヤーシート64及びバックシート12Aは、それぞれ耐水圧が100mmH2O以上のシートであるのが好適である。これによって、製品の幅方向側部において通気性を示すものとなり、着用者のムレを防止できる。
その他の点、例えば各部の使用素材等については、前述のパンツ型紙おむつの場合と同じであるため、敢えて説明を省略する。
<紙おむつの製造方法例>
次に、上述の紙おむつの製造例について説明する。図10及び図11に示す例は、図1、図2及び図6に示すパンツ型の使い捨ておむつの製造設備例を示している。
ラインに上流側から包被シート58が供給され、次いで保持シート80が供給される。この保持シート80に対しては、後に供給される高吸収性ポリマー粒子の移動を防止するために、予め粘着性を有するホットメルト接着剤などを塗布することができる。図11にはこのための粘着剤塗布装置104が図示されている。
続いて、トウを開繊してなる(開繊工程の詳細は後述する)フィラメント52の集合体52Zが上方から供給され、その上に、高吸収性ポリマー粒子散布手段90により高吸収性ポリマー粒子54が散布供給される。その後、セーラ92を通すことにより包被シート58により包み込まれ、吸収要素50とされる。次に、カッター装置94によりライン方向に分割され、個別の吸収要素50とされる。
さらに、中間シート(セカンドシート)40が上方から、実施の形態では吸収要素50全長に対して短い構造であるので、間欠的に供給される。
続いて上方からバリヤーカフス60の構成要素及びトップシート30が、下方から液不透過性シート70がそれぞれ供給される。ここで、バリヤーカフス60を構成するバリヤーシート64の供給ラインでは、予め、図示しない装置により2枚の不織布間に糸ゴム62が伸張下で、かつ第2液不透過性シート72が固定された状態での供給がなされ、トップシート30と共に主ラインに供給される。主ラインに供給されたバリヤーカフス60の構成要素、トップシート30及び液不透過性シート70は、図6に示す形状に、セーラ96により折り畳みがなされる。
吸収性本体20のラインの最後では、カッター装置98により切断され、長手方向をラインに沿わせた長方形の吸収性本体20が得られる。
得られた吸収性本体20は、転回装置100により吸収性本体20の長手方向がラインと直交するように90度転回される。
一方、外装シート12のラインでは、予め2枚の不織布シート間に糸ゴム12Cが介在された(図10では図示を省略してある)状態で流れ、かつ、脚周り部分を形成するためにカッター(図示せず)により楕円形にくりぬかれ、組合せステーション102に達すると、その上で、かつ、くりぬき部位間に転回済みの吸収性本体20が設置され、ホットメルト接着剤などにより固定され、外装シート12と結合される。その後、図10の水平ラインを境にして上下に折り畳まれ、外装シート12の前身頃12F及び後身頃12Bの両側部の接合領域12Aが熱融着などにより接合される。その後、ライン方向に分断して(分断手段は図示していない)個別製品を得る。
開繊工程は、例えば図11に示す形態のラインにより実施できる。すなわち、ベール52Xからトウ52Yが引き出され、拡幅装置120を介して段階的に拡幅されながら第1ニップ126A、第2ニップ126B、及び第3ニップ126Cを通り、拡厚装置110に導かれ、ここで厚さが拡大され、略最終的なフィラメントの集合体52Zとされた後、その上に、高吸収性ポリマー粒子散布手段90により高吸収性ポリマー粒子54が散布供給され、しかる後にセーラ92へと送り込まれる。ベール52Xからのトウの引き出しは、第1ニップ126A(駆動ニップロールに相当)による引き込みにより行われるようになっている。
すなわち、ベール52Xから引き出されたトウ52Yは、ターン部122により角度変えが行われた後、回転自由に構成された一対のニップロールからなるフリーニップロール124のニップを介して、第1ニップ126Aにより引き込まれるようになっている。このような構成では、フリーニップロール124の移送抵抗(ニップ圧力やロール自重に応じて定まる)があたかもトウ52Yの引き込み速度を抑えるブレーキとして機能し、フリーニップロール124以降における張力が安定するようになる。これは、フリーニップロール124の回転がトウの通過のみで発生するようになっていることに起因するものである。
フリーニップロール124のニップ圧や自重は適宜定めればよいが、通常の場合、ニップ圧は0MPa超5MPa以下とするのが好ましく、また、ロール自重は、ロール一本あたり0kg超10kg以下とするのが好ましい。この範囲内であれば、張力の安定化を容易に実現できる。
かくして、トウの供給量を支配する第1ニップ126Aに対するトウ52Yの供給量が安定するようになり、もって吸収体のサイズ、重量、品質が安定するようになる。
また、ベール52Xから引き出されたトウ52Yは、ベール52Xとフリーニップロール124との間、フリーニップロール124と第1ニップ126Aとの間、第1ニップ126Aと第2ニップ126Bとの間、ならびに第2ニップ126Bと第3ニップ126Cとの間にそれぞれ設けられた拡幅装置120により、段階的に所望の幅まで拡幅される。この際、併せて厚さ方向にも拡大することができる。
図12及び図13は、この拡幅装置120を示しており、トウを通す所定幅Xの角筒状通路120Aと、この通路120A内面における幅方向に沿う面に形成された圧縮エアーの噴出口120Bとを有し、通路120A内に導入されるトウ52Yを圧縮エアーの力により通路幅一杯に拡幅するものである。通路の高さは、導入されるトウ52Yの厚さ以上とされており、トウ52Yの厚さよりも高い場合には、トウ52Yは厚さ方向にも拡大される。
噴出口120Bは、図13に示されるように、通路120Aの幅方向中央に関して線対称をなし且つ通路120Aの幅方向中央に向かうにつれてトウ通過方向下流側に位置するくの字状(もしくはV字状)スリットとされている。
このようなスリット120Bからエアーを噴出させた状態で、トウが通路120A内に進入すると、進入位置が幅方向中央からずれていたとしても、トウ52Yが圧縮エアーの力をバランス良く受けるように幅方向中央側(図13中の矢印方向)に逃げ、自然にトウ52Yが通路120Aの幅方向中央に案内される。つまり、拡幅のための圧縮エアーを利用してトウ52Yの導入位置のセンタリングも可能になるのである。また、この形態では、トウ52Yを非接触で案内するため、ガイド部材等のように接触により案内するのと比べて、トウの傷みや崩れも発生し難い利点もある。また、このようなセンタリング機能を有する拡幅装置120は、拡幅におけるセンタリングだけでなく移送位置の補正機能をも発揮する。
上述のような圧縮エアーを利用したセンタリングを行う場合、スリットの形状はくの字状に限られず、通路120Aの幅方向中央に関して線対称をなし且つ通路120Aの幅方向中央に向かうにつれてトウ通過方向下流側に位置する条件を満足する限り、曲線状、円弧状等に形成することもできる。
一方、第1ニップ126Aと第2ニップ126Bとの間では、トウ52Yにテンションをかけるように張力が付与されており、逆に第2ニップ126Bと第3ニップ126Cとの間は弛緩されるように、各ニップロールの周速度が設定されている。この結果、第1ニップ126Aと第2ニップ126Bとの間でトウ52Yにテンションがかけられることで、フィラメント相互の絡み合い等がある程度まで強制的に除去され、フィラメントの分離が促進されるとともに、この分離に伴って拡幅装置120によりトウ52Yを拡幅することで、トウ52Yの更なる均一な拡幅が可能となっている。また、第2ニップ126Bと第3ニップ126Cとの間でトウ52Yの弛緩を行いつつ、拡幅装置120によりトウ52Yを拡幅することで、トウ52Yの更なる均一な拡幅が可能となっている。
より好ましい形態では、第2ニップ126Bの一方のローラは、長手方向に小さな間隔を置いて周方向に連続する溝が多数形成される。この溝は、フィラメントが多数の溝内に入り込むことで、トウの解しを促進させる機能がある。さらに、この場合、溝の効果を高めるために、第2ニップ126Bの一方の溝付ローラにおけるトウ52Yの抱き角度(トウ接触部分の回転方向角度)を大きくし、トウ52Yと溝付ローラとの接触面積を大きくするのも好ましい形態である。具体的には、第2ニップ126B上流側のトウ52Yと下流側のトウ52Yとのなす角度、つまり溝付ローラによる方向転換角度が180度未満、特に鋭角(90度よりも小)となるように構成することのが好ましい。
また、第1ニップ126A、第2ニップ126B及び第3ニップ126Cは、対をなすロールの径の組み合わせが相違しても良いが、その場合、周速度差によりロール間でトウ52Yに加わる張力やロールとトウ52Yとの接触抵抗などが、トウ幅方向において不均一になるおそれがあるため、全て共通するように構成するのが好ましい。
次に、第3ニップ126Cを通過したトウは、拡厚装置110に導かれる。拡厚装置110は、たとえば、特開昭59−500422号公報(WO 83/03267)に開示されたものと同様な構造であり、概略的には図14に示すように、入口110Aと出口110Bとの間にベンチュリー部110bが形成されるとともに、入口側に圧空の吹き込み口110aを備えるとともに、ベンチュリー部110bに空気の排気孔110cを有するものである。平面的にはほぼ長方形をなし、図14の紙面を貫通する方向に扁平な形状である。
吹き込み口110aからの圧空の吹き込みによって、エジェクター効果によって入口110Aから空気が入り込み、その結果、トウ52Yは引き込まれ、前進力が与えられる。トウ52Yがベンチュリー部110bに至ると、空気の排気孔110cから排気が行われ、かつ、ベンチュリー部110bの空間が拡大するために、主にトウ52Yの嵩が厚み方向に増加し、厚さが拡大される。なお、通路の幅を、導入されるトウ52Yの幅よりも広くすることにより、図14の下方に示すように拡幅も可能である。
高吸収性ポリマー粒子散布手段90としては、フィラメントの集合体に対して高吸収性ポリマー粒子を実質的に厚み方向全体に分散させるものが好ましい。このような高吸収性ポリマー粒子散布手段90としては、高吸収性ポリマー粒子自体の自重よる落下力のみならず、加速力を与える手段が望ましい。この例を図15に示した。すなわち、下部に開口を有するケーシング90a内に投射孔90dを有する回転ドラム90bがウェブの移動方向(図16での反時計方向)に回転するように構成され、その内部にシャッタドラム90cが設けられたものである。これらを要素とする投射部90Aは、ホッパー90Bと連結され(図11参照)、高吸収性ポリマー粒子散布手段90が構成されている。
ホッパー90Bからの高吸収性ポリマー粒子54は回転ドラム90b内に供給されるように構成されている。ここに、予め、ケーシング90aの開口位置に対し、シャッタドラム90cの開口の位置調整が行われる。図15の状態では完全一致した全開状態を示してある。また、回転ドラム90bの投射孔90dは、周方向に分割された群として、図示では周方向に4つの群として分割され、したがって図示では回転ドラム90bが一回転する過程で、4枚分の紙おむつに対して高吸収性ポリマー粒子を散布・投射するようにしてある。
フィラメント52の集合体上に高吸収性ポリマー粒子54を連続的に散布・投射してもよいが、図10が参照されるように、吸収要素50をカッター装置94によりライン方向に分割し、個別の吸収要素50とするときに、高吸収性ポリマー粒子54の存在によりカッター装置94の刃が短時間のうちに磨耗してしまう。そこで、高吸収性ポリマー粒子54を連続的に散布・投射するのではなく、図15に示すように、ゾーンZのみに間欠的に散布・投射するようにすることが望ましい。
このために、前述のように、回転ドラム90bの投射孔90dは、周方向に分割された群として、図示では周方向に4つの群として分割して形成することにより、高吸収性ポリマー粒子54をゾーンZのみに間欠的に散布・投射するようにしてあるのである。その結果、ゾーンZ、Z間でカッター装置94により分断でき、カッター装置94の刃の磨耗を抑制できる。
なお、本発明では、高吸収性ポリマー粒子54の分散密度が主吸収部分56Cと股間部の両側部56S,56Sとで異なるが、このような分布は、高吸収性ポリマー粒子54の散布量を部位に応じて調節したり、股間部両側には散布しないような散布パターンを採用したりすることで製造できる。高吸収性ポリマー粒子の散布量は、主に投射孔90dの孔径の大小、ケーシング90aの開口位置に対するシャッタドラム90cの開口の位置調整によって調節でき、高吸収性ポリマー粒子の散布パターンは、投射孔90dの配置によって調節できる。
一方、必要ならば、高吸収性ポリマー粒子54を圧力空気とともに、フィラメント52の集合体上に散布・投射することで、フィラメントの集合体に対して高吸収性ポリマー粒子が実質的に厚み方向全体に分散させることも可能である。しかし、フィラメント52の集合体上に散布・投射した高吸収性ポリマー粒子が、圧力空気によって散乱し、所定領域外に散布される難点があるので、あまり推奨できない。
さらに、高吸収性ポリマー粒子散布手段90と共に、あるいはこれに換えて、フィラメントの集合体上に散布された高吸収性ポリマー粒子54をフィラメントの集合体の下方から、吸引するようにしてもよい。
また、図16に示すように、図10の転回ロールをバキュームロール106に換え、前述の遠心分力をも加えて高吸収性ポリマー粒子を散布する散布手段90でなく、単に高吸収性ポリマー粒子を自重により落下させる形式の高吸収性ポリマー粒子散布手段により、バキュームロール106上方からフィラメント52の集合体52Z上に、高吸収性ポリマー粒子54を散布することもできる。この場合には、バキュームロール106による吸引力によりフィラメント52の集合体を高吸収性ポリマー粒子が侵入するので、製品段階では、吸収体56の下部に高吸収性ポリマー粒子が分散される。なお、本発明の吸収体を製造するために、高吸収性ポリマー粒子54の散布量を部位に応じて調節したり、股間部両側には散布しないような散布パターンを採用したりする点は、前述の散布手段90と同様である。
他方、図17は、図8及び図9に示すテープ式の使い捨ておむつの製造方法例を示している。中間シート(セカンドシート)40の供給までは、パンツ型の場合と同様である。中間シート40が間欠供給された後は、続いて上方からトップシート30が、下方から液不透過性シート70がそれぞれ供給され、その後にバリヤーカフス60を構成するバリヤーシート64が供給される。バリヤーシート64の供給ラインでは、予め、図示しない装置により2枚の不織布間に糸ゴム62が伸張下で固定された状態での供給がなされる。ラインの最後では、吸収性本体を備える半製品がカッター装置98により分断され、製品10が得られる。
図20は、吸収体の股間部の両側部における高吸収性ポリマー粒子の目付けが主吸収部分よりも少ない本発明に係る吸収性物品200と、吸収体全体に一様に高吸収性ポリマー粒子を散布した比較例201とに、150gの人孔尿を吸収させ、バリヤーカフス60の立ちと製品の丸まりを比較したものである。本発明に係る吸収性物品200の方が、バリヤーカフス60が高く立ち上がり、製品も体にフィットするように丸まることが判る。
本発明は、紙おむつ、生理用ナプキン、失禁パッド、おむつカバーと併用する吸収パッド等の吸収性物品における吸収体の製造に好適なものである。
パンツ型使い捨ておむつの斜視図である。 パンツ型使い捨ておむつの展開状態平面図である。 図2の3−3線矢視断面図である。 他の例の3−3線矢視相当断面図である。 別の例の3−3線矢視相当断面図である。 変形例の3−3線矢視相当断面図である。 さらに別の例の3−3線矢視相当断面図である。 テープ式使い捨ておむつの展開状態平面図である。 図8の9−9断面図である。 パンツ型紙おむつの製造設備例を示す概要図である。 その要部概要図である。 拡幅装置の概要図である。 図12のXIII−XIII断面図である。 開繊装置の概要図である。 高吸収性ポリマー粒子散布手段例の概要図である。 他の高吸収性ポリマー粒子散布形態の概要図である。 テープ式使い捨て紙おむつの製造設備例を示す概要図である。 吸収体におけるSAPおよび接着剤の平面配置を示す概要図である。 保持シートの一例を示す図である。 実験結果を示す図である。
10…パンツ型使い捨ておむつ、10A…テープ式使い捨ておむつ、12…外装シート、12A…バックシート、20…吸収性本体、30…トップシート、40…中間シート、50…吸収要素、52…フィラメント、52X…ベール、52Y…トウ、52Z…フィラメントの集合体、54…高吸収性ポリマー粒子、56…吸収体、58…包被シート、60、60A…バリヤーカフス、64…バリヤーシート、70…液不透過性シート、72…第2液不透過性シート、80…保持シート、90…高吸収性ポリマー粒子散布手段、90A…投射部、90a…ケーシング、90b…回転ドラム、90c…シャッタドラム、92…セーラ、94…カッター装置、98…カッター装置、100…転回装置、102…組合せステーション、104…粘着剤塗布装置、110…拡厚装置、110a…圧空の吹き込み口、110b…ベンチュリー部、120…拡幅装置、124…フリーニップロール、126A…第1ニップ、126B…第2ニップ、126C…第3ニップ、130…ファスニング片、E…凹部、Z…高吸収性ポリマー粒子散布ゾーン。

Claims (7)

  1. 使用面側の液透過性トップシートと、トップシートを透過した液を受け入れ保持する吸収要素と、吸収要素の裏側に設けられた液不透過性シートとを備え、
    前記トップシートの幅方向両側部から身体側に起立するバリヤーカフスが股間部の前側から後側に延在するように設けられており、
    前記吸収要素は、トウを開繊したフィラメントの集合体及び高吸収性ポリマー粒子を有する吸収体と、この吸収体を包む包被シートとを含み、
    前記吸収体は、股間部と、股間部の前側部分および股間部の後側部分を有しており、
    前記吸収体の股間部、股間部の前側部分および股間部の後側部分のうち、股間部の両側部以外の部分である主吸収部分に高吸収性ポリマー粒子を有するとともに、前記股間部の両側部における高吸収性ポリマー粒子の目付けが前記主吸収部分よりも少な
    前記フィラメントの集合体の繊維は繊度が1〜16dtexのセルロースエステルの捲縮繊維からなり、
    前記フィラメントの集合体の繊維目付けが30〜300g/m 2 であり、前記高吸収性ポリマー粒子の目付けが前記吸収要素全体での平均で50〜350g/m 2 であり、かつ前記股間部の両側部における高吸収性ポリマー粒子の目付けが100g/m 2 以下であり、
    前記股間部の両側部は、片側あたりの幅が前記吸収体の幅の5〜40%である、
    ことを特徴とする吸収性物品。
  2. 前記高吸収性ポリマー粒子の粒径は100〜1000μmであり、
    前記高吸収性ポリマー粒子が、前記主吸収部分にのみ配された接着剤により前記フィラメントの集合体に接着されている、請求項記載の吸収性物品。
  3. 前記高吸収性ポリマー粒子の粒径は100〜1000μmであり、
    前記高吸収性ポリマー粒子が、前記主吸収部分と重なる部位にのみ配された接着剤により前記包被シートに接着されている、請求項1または2記載の吸収性物品。
  4. 前記高吸収性ポリマー粒子の粒径は100〜1000μmであり、
    前記高吸収性ポリマー粒子を保持する保持シートを前記吸収体の裏面側に備えており、前記高吸収性ポリマー粒子が、前記主吸収部分と重なる部位にのみ配された接着剤により前記保持シートに接着されている、請求項1〜のいずれか1項に記載の吸収性物品
  5. 前記高吸収性ポリマー粒子の粒径は100〜1000μmであり、
    前記高吸収性ポリマー粒子の保持孔を多数散点状に有する保持シートを、前記吸収体の裏面側における前記主吸収部分と重なる部位にのみ備えている、請求項1〜のいずれか1項に記載の吸収性物品。
  6. 前記高吸収性ポリマー粒子の粒径は100〜1000μmであり、
    前記吸収体の裏面側全体わたるとともに、前記高吸収性ポリマー粒子の保持孔を前記主吸収部分と重なる部位にのみ多数散点状に有する保持シートを備えている、請求項1〜のいずれか1項に記載の吸収性物品。
  7. 使い捨ておむつである、請求項1〜6のいずれか1項に記載の吸収性物品。
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