JP4722372B2 - 相電流検出装置 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
この発明は、PWMインバータからの出力をモータに供給してモータを駆動するモータ駆動装置において、DCリンクの電流および加えるベクトルパターンに基づいてモータの相電流を検出する相電流検出装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来から、インバータによりモータを駆動するモータ駆動装置において、モータの相電流を検出する装置として、出力パルスを変形して測定可能な出力に変えるものが提案されている。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
前記の構成を採用した場合には、リンギングによる電流測定誤差、パルス出力時間の延長による波形歪、運転範囲の縮小、異音の発生などの不都合が発生する。
【0004】
特に、リンギングについては、解析的な手法が全く提案されていなかったため、リンギングの削減が困難であり、高速な反応ができず、または、測定精度を高めることができないという不都合がある。
【0005】
また、DCリンクを流れるパルス電流をシャント抵抗を用いて検出することも可能であると考えられる。具体的には、図6に示すように、交流電源31に整流回路32を接続し、整流回路32の出力端子間に第1コンデンサ32aを接続し、第1コンデンサ32aにより平滑化された直流電圧をインバータ33に供給し、インバータ33の入力端子間に第2コンデンサ33aを接続し、インバータ33の出力をモータ34に供給している。そして、第1コンデンサ32aと第2コンデンサ33aとの間にシャント抵抗35aを接続し、シャント抵抗35aの端子間電圧を増幅器35bにより増幅して電流検出出力とすることが考えられる。
【0006】
この構成を採用した場合には、ノイズの影響を低減し、測定精度を高めることが困難であり、しかも、シャント抵抗35aのインダクタンスによるピーク電圧のため、長いパルス以外は電流検出を行うことができないという不都合がある。
【0007】
しかも、整流出力を平滑化する第1コンデンサ32a、第2コンデンサ33a、シャント抵抗35a、および配線インダクタンスで構成される回路に共振電流が発生するので(図7参照)、インバータ33のスイッチング後、直ちに電流検出を行うと電流検出精度が低下し、電流検出精度を高めようとすれば共振が収束するまでの長時間の待ち時間が必要になる。
【0008】
さらに、シャント抵抗35aを用いてモータ34の相電流を検出する場合には、運転状態によってはパルス幅が非常に細かくなる場合があり、回路の過渡応答が悪いと電流を取る為に大きなパルスが必要になり、波形が乱れる、異音が発生する、回転速度制御範囲が狭まるなどの不都合の発生を招く原因になっていた。
【0009】
したがって、シャント抵抗35aを用いて相電流を検出することは実用化されていなかった。
【0010】
【発明の目的】
この発明は上記の問題点に鑑みてなされたものであり、インバータのスイッチングに起因する共振電流の影響を排除して、迅速かつ高精度に相電流を検出することができる相電流検出装置を提供することを目的としている。
【0011】
【課題を解決するための手段】
請求項1の相電流検出装置は、PWMインバータからの出力をモータに供給して当該モータを駆動するモータ駆動装置において、DCリンクの電流および加えるベクトルパターンに基づいて前記モータの相電流を検出するものであって、前記PWMインバータと並列に接続される平滑用の第1コンデンサ(2a)と、前記PWMインバータの入力側に並列に接続される第2コンデンサ(3a)と、前記第1コンデンサと前記第2コンデンサとの間に設けられ、前記DCリンクの電流を検出する電流検出器(5)と、前記第1コンデンサと前記第2コンデンサとの間で前記第1コンデンサと並列に接続され、前記PWMインバータのスイッチングにより発生するDCリンク部の共振電流を抑制するためのスナバ回路(6)を設けたものである。
【0012】
請求項2の相電流検出装置は、前記スナバ回路として抵抗(6a)と第3コンデンサ(6b)との直列接続回路を採用するものである。
【0013】
【作用】
請求項1の相電流検出装置であれば、PWMインバータからの出力をモータに供給してモータを駆動するモータ駆動装置において、DCリンクの電流および加えるベクトルパターンに基づいてモータの相電流を検出するに当たって、
スナバ回路によって、インバータのスイッチングにより発生するDCリンク部の共振電流を収束させることができる。
【0014】
したがって、相電流を安定に検出することができるとともに、電流検出波形の歪みを小さくすることができ、しかも異音の発生を大幅に抑制することができる。
【0015】
請求項2の相電流検出装置であれば、前記スナバ回路としてRC回路を採用するのであるから、簡単な回路構成で、請求項1と同様の作用を達成することができる。
【0016】
【発明の実施の形態】
以下、添付図面を参照して、この発明の相電流検出装置の実施の形態を詳細に説明する。
【0017】
図1はこの発明の相電流検出装置が組み込まれたモータ駆動装置の構成を示す図であり、表1はインバータ(パワーデバイス)の出力電圧ベクトルとスイッチング素子のスイッチング状態との関係を示すものである。
【0018】
【表1】
Figure 0004722372
【0019】
なお、Tu +、Tv +、Tw +は、それぞれu相、v相、w相の上アームのスイッチング素子、Tu -、Tv -、Tw -は、それぞれu相、v相、w相の下アームのスイッチング素子を示し、表1において、ONは、上アームのスイッチング素子がONで、かつ、下アームのスイッチング素子がOFFである状態を示し、OFFは、上アームのスイッチング素子がOFFで、かつ、下アームのスイッチング素子がONである状態を示している。
【0020】
上記のモータ駆動装置は、交流電源1を入力とする整流回路2の出力端子間に第1コンデンサ(平滑用コンデンサ)2aを接続し、第1コンデンサ2aと並列に3相インバータ3を接続し、3相インバータ3の出力をモータ4に供給している。そして、3相インバータ3の入力側に並列に第2コンデンサ3aを接続し、第1コンデンサ2aと第2コンデンサ3aとの間に電流検出器5を接続し、電流検出器5よりも電源側に、抵抗6aと第3コンデンサ6bとの直列接続回路(スナバ回路)6を第1コンデンサ2aと並列に接続している。
【0021】
この電流検出器5は、第1コンデンサ2aと第2コンデンサ3aとの間の配線に介挿されたシャント抵抗5aと、シャント抵抗5aの端子間電圧を入力とし、検出電流として出力する増幅器5bとを有している。なお、第2コンデンサ3aの容量を、スイッチングに起因するサージ電圧によりパワーデバイスが破損しない範囲で極力小さく設定している。もちろん、サージ電圧によるパワーデバイスの破損のおそれがない場合には、第2コンデンサ3aを省略することができる。
【0022】
したがって、電圧ベクトルがV0、V7の場合には、モータ4の全ての端子が電源の−ライン、または+ラインに接続されることになり、モータ4には、電流を増減させる電圧(以下、単に電圧と称する)がかからない。また、電圧ベクトルが例えばV1の場合には、モータのw相の端子が電源の+ラインに、他の相の端子が電源の−ラインに接続されることになり、w相電流を増加させる方向(u相、v相は負の方向)に電圧がかかることになる。
【0023】
PWMの場合、電圧の大きさは、キャリア内で電圧ベクトルが出力される時間の割合によって決まるため、各相の電圧がほぼ等しい場合には、相間の電圧差に相当するきわめて短い期間の電圧ベクトルが出力されることになる(以下、これを電圧ベクトルが短いと称する)。また、出力電圧が低い時は、特に短い電圧ベクトルが出力され、モータ4に電圧のかからない電圧ベクトルV0、V7がキャリア内の殆どの期間を占めることになる。
【0024】
第2図はモータ4への印加電圧を2次元で表したものであり、u相に正、v相、w相に負の電圧がかけられる場合をu相方向と定義し、同様にv相方向、w相方向を定義し、電圧の大きさをベクトルの長さで表している。
【0025】
この場合、電圧ベクトルV0〜V7は第2図のように配置され、例えば、電圧ベクトルV1と電圧ベクトルV3とで挟まれるaベクトルを出力する場合には、一般的な空間ベクトル法では、例えば、V0、V1、V3、V7の順に適宜電圧ベクトルを変えながら出力する。
【0026】
出力電圧を小さくする(ベクトルの長さを短くする)場合には、電圧ベクトルV0、V7の出力時間を長くし、aベクトルの向きを保存するためには、電圧ベクトルV1、V3の出力時間の比率を一定に保てばよい。
【0027】
DCリンクから相電流を検出するに当たっては、例えば、aベクトルを出力する際に、電圧ベクトルV1を出力している期間はw相電流がDCリンクを流れ(第3図中の矢印参照)、電圧ベクトルV3を出力している期間はu相電流の正負逆の電流がDCリンクに流れるという性質を用いて、DCリンクから相電流を検出することができる{第4図、および「PWMインバータの三相出力電流の直流側での検出法」、谷沢ほか、IEa−94−17(以下、参考文献と称する)、参照}。
【0028】
実際の電流検出を考えると、スナバ回路6を設けていない場合には、インバータ3のスイッチングにより電流値が変化してから回路が安定するまでの過渡状態では測定できない期間がある(第7図参照)。しかし、この実施形態では、スナバ回路6を設けているので、共振電流の影響を殆ど受けない状態にすることができる(図5参照)。具体的には、 例えば抵抗6aを3Ω、第3コンデンサ6bを680nFに設定することにより、共振電流の影響を殆ど受けない状態にすることができた。換言すれば、過渡状態を著しく短くし、不要なパルス制限なしに電流を測定することができる。
【0029】
【発明の効果】
請求項1の発明は、相電流を安定に検出することができるとともに、電流検出波形の歪みを小さくすることができ、しかも異音の発生を大幅に抑制することができるという特有の効果を奏する。
【0030】
請求項2の発明は、簡単な回路構成で、請求項1と同様の効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【図1】この発明の相電流検出装置が組み込まれたモータ駆動装置の構成を示す図である。
【図2】モータへの印加電圧を2次元で表す図である。
【図3】V1ベクトル出力時の電流の流れを説明する図である。
【図4】DCリンクに流れる電流を説明する図である。
【図5】DCリンクに流れる電流の実測例を示す図である。
【図6】従来の相電流検出装置が組み込まれたモータ駆動装置の構成を示す図である。
【図7】図6の装置のDCリンクに流れる電流の実測例を示す図である。
【符号の説明】
3 3相インバータ 4 モータ
6 スナバ回路

Claims (2)

  1. PWMインバータ(3)からの出力をモータ(4)に供給して当該モータを駆動するモータ駆動装置において、DCリンクの電流および加えるベクトルパターンに基づいて前記モータの相電流を検出するものであって、
    前記PWMインバータと並列に接続される平滑用の第1コンデンサ(2a)と、
    前記PWMインバータの入力側に並列に接続される第2コンデンサ(3a)と、
    前記第1コンデンサと前記第2コンデンサとの間に設けられ、前記DCリンクの電流を検出する電流検出器(5)と、
    前記第1コンデンサと前記第2コンデンサとの間で前記第1コンデンサと並列に接続され、前記PWMインバータのスイッチングにより発生するDCリンク部の共振電流を抑制するためのスナバ回路(6)
    を設けたことを特徴とする相電流検出装置。
  2. 前記スナバ回路(6)は抵抗(6a)と第3コンデンサ(6b)との直列接続回路(6)である請求項1に記載の相電流検出装置。
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